【氏名又は名称原語表記】Arizona Board of Regents on behalf of the University of Arizona
【文献】
B. S. Blaisse, A. Bouwers, H. W. Bulthuis,Catadioptric microscope objectives with concentric mirrors,Applied Scientific Research. Section B,1952年,第2巻、第1号,第453−466頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記部分透明面は、前記光軸側から周辺側に向けて順に、第1の反射率を有する第1の領域と、前記第1の反射率よりも高い第2の反射率を有する第2の領域と、前記第2の反射率よりも高い反射率を有する第3の領域と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学系。
前記物体からの光のうち、前記第1の領域を通過して前記全反射領域で反射される光は、前記第2の領域で反射されて前記第1の部分に到達する第1の光と、前記第3の領域で反射されて前記第2の部分に到達する第2の光と、を含むことを特徴とする請求項4に記載の光学系。
前記物体からの光のうち、前記第1の領域を通過して前記全反射領域で反射される光は、前記第2の領域で反射されて前記第1の部分に到達する第1の光と、前記第3の領域で反射されて前記第2の部分に到達する第2の光と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の光学系。
前記第1の反射屈折素子の前記物体側面は、前記物体側に向かって凸面であり、前記第2の反射屈折素子の前記像側面は、前記像側に向かって凸面であることを特徴とする請求項13に記載の光学系。
【背景技術】
【0002】
カトプトリック(反射)光学素子とディオプトリック(屈折)光学素子との組み合わせを含む反射屈折光学系は、顕微鏡の対物レンズ光学系又はリソグラフィ用投影光学系として使用可能である。そのような光学系において軸対称のミラーが使用される場合、光学系の光軸上に光遮断部分(即ち、遮蔽部分)が現れる。遮断される光の割合を表す遮蔽比は、以下の式(1)によって定義される。
【0003】
【0004】
式(1)において、θ
1は、必要とされる遮蔽比を実現するための最小角度であり(以下、θ
1は「最小遮蔽角度」と称する)、θ
mは、物体から出る周辺光線と周辺光線が入射する面に対する軸とがなす角度である(以下、θ
mは「周辺角度」と称する)。
【0005】
当業者には知られているように、画質の定量的尺度は、変調伝達関数(MTF)である。MTFは、レンズ又は光学系が物体からそのレンズ又は光学系によって生成される像までコントラストを伝達する能力を表す。光学顕微鏡の場合、MTFは、物体から像面まで特定の解像度でコントラストを伝達する顕微鏡の能力を測る尺度である。顕微鏡の結像光学系の光路に何らかの障害物がある場合、像コントラストが低下するだけではなく、像面で検出される光の強度分布においてエネルギーの損失も発生する。
【0006】
顕微鏡のMTFは、物体中に所定の距離だけ離間して配列され、且つ、形成される像に正弦状強度を発生させる周期的な線によって生成されるコントラストから取得できる。そのような正弦状強度は、空間周波数の関数として変化する。例えば、1μ(1mm当たり1000本の空間周波数)の空間周期を有する吸収線と透明線の対を複数含む物体を高NA顕微鏡で撮像した場合、個々の線は、中程度の像コントラストで撮像(解像)される。対の線の間の距離を0.5μ(1mm当たり2000本と等しい空間周波数)まで減少させると、最終像のコントラストは低下し、解像不可能になることもあるが、空間周波数を2μ(1mm当たり500本に等しい空間周波数)に増加させると、像コントラストは向上し、容易に解像可能になる。
【0007】
図1Aは、光学系の遮蔽比がMTFにどのように影響するかを示すグラフである。
図1Aから理解できるように、MTF、特に、空間周波数が低い場合及び中程度である場合のMTFは、遮蔽比が大きくなるにつれて劣化する。
【0008】
MTFを増加させるためには、反射屈折部を使用し続けながら、光学系の遮蔽比を減少させることが必要である。
【0009】
これまで、遮蔽の問題に取り組む試みがなされてきた。例えば、Phillips Jr.他の米国特許第5650877号公報は、特定の形状に構成された前面及び後面を有する反射屈折光学素子がレチクルの縮小像を基板上に高NA放射で投影するリソグラフィ用投影光学系を開示する。光学素子の後(最終)面(基板に最も近い面)は、凹面反射部分によって取り囲まれた中央開口部を有する。放射照明が通過する前面(後面の反対側)は、入射光束の一部を後面の凹面反射部分に向けて透過させる部分反射膜を有する。部分反射膜は、その面を通じて光を均一に部分透過させる。
【0010】
凹面反射部分が受けた光を前面に戻すと、部分反射膜は、戻された光の一部を凹面反射部分によって反射し、中央開口部を介して光の一部を基板に向かって収束光路に沿って透過する。米国特許第5650877号公報によれば、凹面反射部分で反射されないと考えられる直接光に対応する照明光束の一部を遮断するために前面の一部を被覆することによって、中央遮蔽を制御することができる。しかしながら、直接光を遮断することによって相対的に低い遮蔽が得られるが、前面の均一な部分透過及び部分反射によって、多大なエネルギー損失が生じる。特開2002−82285号公報も、半透明膜の使用に関連する同様の方法を開示する。
【0011】
B.S.Blaisse他は、「Catadioptric microscope objective with concentric mirrors」(APPLIED SCIECTIFIC RESEARCH、SECTION B、第2巻、第1号(1952年)、頁453−466)において、半透明膜を使用する別の方法を開示する。詳細には、Blaisseは、以下のような部分反射膜の使用を開示する。反射率が50%である半透明膜を面全体に被覆するのではなく、凸面の点P1と点P2との間の部分のみに被覆する。同一の凸面のP2−P2’の部分に100%の反射膜を被覆する。物体Oから入射した光は、
図1Bに示されるように、3つの光線群G1乃至G3に分割される。光線G1は、面4のP0とP1との間にあり、G2は、面4のP1とP2との間にあり、G3は、面4のP2とP3との間にある。G1の経路は、面4の領域P0−P1を通過し、面2の領域Q1−Q2で損失なく反射される。その後、領域P1−P2は、G1を50%の損失で反射する。光線G2は、領域P1−P2を50%の損失で通過し、部分Q2−Q3で反射される。その後、G2は、P2−P3で損失なく反射される。光線G3は、領域P2−P3を通過できない。換言すれば、領域P2−P3は、物体Oからの光の一部を遮断することによって、バッフルとして作用する。
【0012】
従って、以上の従来の技術から、反射屈折光学系において遮蔽比のレベルを制御するために、部分反射膜又は段階膜を使用できることがわかる。しかしながら、遮蔽比が光学系の変調伝達関数を劣化させることは避けられない。従って、変調伝達関数を最適化しながら遮蔽比を減少させることが必要である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、以下に本発明に係る実施形態を説明する。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することを目的としており、本発明を限定することを意図しない。本明細書で使用される場合の単数形は、明確な説明がない限り複数形も含むことが意図される。更に、本明細書において使用される用語「備える」及び/又は「備えている」は、そこに挙げられている特徴、数字、ステップ、動作、要素及び/又は構成要素の存在を示すが、1つ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、要素、構成要素及び/又はそれらの組み合わせの存在又は追加を除外しないと理解されるだろう。本明細書において使用される光学素子(レンズ、ミラー又はそれらからの光学系)の物体が結像されるべき側は、その光学素子の「物体面側」、「物体側」又は「前側」と互換性をもって呼ばれ、光学素子の像が形成される側は、その光学素子の「像面側」、「像側」又は「後側」と互換性をもって呼ばれる。従って、以下に説明される種々の図面において、レンズ、ミラー又はそれらの光学系を示す各図の左側は前側又は物体側と呼ばれ、その反対の側(右側)は後側又は像側と呼ばれる。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係る反射屈折部200、視野レンズ群300及び再結像部400を有する光学系100を示す全体概要図である。
図2において、上の部分は、例示的な光線軌跡とともに光学系100の横断面図を示し、下の部分は、反射屈折部200、視野レンズ群300及び再結像部400の光学素子の概要を、光線軌跡を含めずに示す。
【0019】
動作中、光学系100は、物体面OPに配置された物体Oの像IMを像面IPに形成する。像面IPは、例えば、CCDセンサ又はCMOSセンサなどの固体イメージセンサSの像面に対応する。光学系100は、リソグラフィ用投影光学系のように反転しても動作可能であり、その場合、物体面OPと像面IPは入れ替わる。特に、顕微鏡に適用される場合、反射屈折部200は、物体Oから出る光を集光し、集光した光を視野レンズ群300及び再結像部400を介して像面IPに向かって射出する。従って、光学系100は、物体面OPと像面IPとの間でリレー光学系として作用する。
図2に示すように、反射屈折部200は、集光した光を視野レンズ群300へ射出し、視野レンズ群300は、中間像面IMP1に中間像IIM1を形成する。再結像部400に対して、中間像IIM1は、物体として使用され、再結像部400は、像面IPに最終像IMを形成する。
【0020】
光学系100は、必ずしも
図2に示す素子に限定されない。例えば、光学系100は、再結像部400を含む構成に限定されず、最終像IMを形成する前にIMP1に中間像IIM1を形成する構成にも限定されない。視野レンズ群300又は再結像部400が取り除かれた場合でも、光学系100が本発明の趣旨及び範囲を逸脱せずに動作できることは当業者には理解されるだろう。更に、光学系100は、1つ以上の中間像を形成するかどうかにかかわらず、或いは、中間像をまったく形成しない場合であっても、最終像IMを提供するように構成されてもよい。
【0021】
<反射屈折部>
次に、
図3を参照して、反射屈折部2100及びレンズ部2200を含む光学系2000を詳細に説明する。
図3は、光軸AXに沿って配置された反射屈折部2100と、反射屈折部2100と軸方向に位置合わせされて配置されたレンズ部2200とを有する光学系2000を示す。本実施形態において、反射屈折素子CGは、反射屈折部2100として使用され、レンズ群LGは、レンズ部2200として使用される。光学系2000に関する例示的なレンズのデータは、「数値例」の章で説明されるとともに、表1a及び表1bにまとめて示される。物体空間テレセントリック光学系(即ち、入射瞳を無限遠に有する光学系)を形成するために、光学系の前方焦点面に開口絞りSTOが配置されるべきであると考えられる。これに関連して、入射瞳が物体面OPから少なくとも100000mmの距離に位置している場合、入射瞳は、有効に無限遠にある。しかしながら、実際の実施形態において、最も外側の視野の射出瞳面は、物体面OPから右側へ169mmの距離に配置されるように設計される。
【0022】
反射屈折素子CGは、光軸AXに沿って中心部分を除いて両面が反射膜で被覆された固体光学素子2110(必ずしも一体の部材でなくてもよい)によって形成されるのが好ましい。光軸AXに沿って、光軸に沿った直接光のフローを抑制するために使用される装置であるバッフル2300が配置される。動作中、光学系2000は、物体面OPの光軸AX上に配置された物体Oから発する光を集光し、且つ、像面IPに最終像IMを形成する。
図4Aは、反射屈折部2100の構造及び機能を詳細に示す図である。
【0023】
更に詳細には、
図4Aに示すように、反射屈折部2100は、本質的には、固体光学素子2110及びバッフル2300から構成される。固体光学素子2110は、物体側面2120及び像側面2130を有する。光学素子2100の物体側面2120に点線で示されている矩形は、セクションCXを表す。物体側面2120は、光軸AXを中心とする点P11と点P11’との間の中央透過領域2121(物体側透過領域)と、点P11と点P12及び点P11’と点P12’との間の透過領域2121と同心のゾーンにある湾曲した反射(又は半反射)領域2122と、透過部分2121及び湾曲した反射領域2122の周囲の回転対称形ゾーンにある平坦な反射領域2123(物体側平坦な反射領域)とを含む。光軸AXを中心とする透過部分2121は、光学的に透明な(透過)領域であり、光軸AX上に配置され、且つ、物体面OPに配置された物体Oから発した光を透過するように作用する。物体側面2120の反射部分2122及び2123は、入射する光の100%が完全に反射されるように、例えば、反射材料で面を被覆することによって100%の鏡面反射面として形成される。
【0024】
像側面2130は、光軸AXを中心とする点Q11と点Q11’との間の中央透過領域2131(像側透過領域)と、中央透過領域2131の周囲の回転対称形ゾーンの点Q11と点Q12との間及び点Q11’と点Q12’との間の湾曲した反射領域2132(像側反射領域)とを含む。中央透過領域2131は、所定の入射角で入射した光を透過するように、反射膜のない透明な面である。湾曲した反射領域2132は、像側面2130の一部領域を反射率の高い材料で被覆することによって、或いは、何らかの好適な周知の処理によって、鏡面反射面として形成されるのが好ましい。
【0025】
動作中、物体面OPの物体Oから発した光は、光軸AXの周囲の点P11と点P11’との間の透明部分2121を通って固体光学素子2110に入射する。光軸AXに沿って直接伝播する直接光は、バッフル2300によって遮断される。所定の角度で入射した光線は、バッフル230によって遮断されず、像側面2130に向かって進む。従って、入射光線は、像側面2130の点Q11と点Q12との間(Q11’とQ12’との間)の反射領域2132で1回目の反射を受ける。
図4に示す領域Q11−Q12、Q11’−Q12’、P11−P12及びP11’−P12’の反射は、使用される光の波長に合わせて最適化された反射膜を使用することによって、100%になるように設計されるのが好ましい。像側面2130の反射領域2132で反射された後、光線は、物体側に向かって進み、P11とP12との間及びP11’とP12’との間の平坦な反射領域2123及び湾曲した反射領域2122で反射されることによって、像側透過部分を通って光学素子2110から射出し、像面IPに最終像IMを形成する。
【0026】
このような構造の反射屈折部2100は、少なくとも1.65の開口数で光を集光できるが、約50%の遮蔽比を生じる。係る反射屈折部2100(以下、「構造I」)のMTFを
図4Bに示す。
図4Bから理解できるように、中間の空間周波数(マーク50からマーク200までの間)のMTFが特に低く、これは50%の遮蔽比に起因するものと考えられる。しかしながら、光効率が75%であるという利点もある。詳細には、本実施形態では、光学素子又はその光学系に入射する光は、入射瞳で均一な透過率を有するものと考えられる。これは100%であるとみなされ、光効率を判定するための基準値で使用される。従って、光学素子又はその光学系の光効率は、入射点で観測(測定)された100%の値と比較した場合の所定の平面(例えば、射出瞳面)で観測(測定)される光の透過の量である。
【0027】
<部分透明膜>
固体光学素子2110の物体側面2120に部分透明膜を導入することができる。
図5Aは、物体側面2120の関連する部分を示す固体光学素子2110のセクションCXの拡大図である。
図5Aにおいて、P24とP24’との間の領域の反射率が50%である場合、物体Oからの光線がP24とP24’との間の半透明面を通過することによって、50%の損失が発生する。上述したように、入射光線は、像側面2130のQ21とQ22との間(Q21’とQ22’との間)の100%の反射部分2132で1回目の反射を受け、物体側面2120に向かって戻る。従って、この時点で、光線の光の50%がP24とP24’との間の半透明面を通過し、光の50%はP24とP24’との間の半透明面で2回目の反射を受け、光学素子2110の透過領域に向かって進む。これにより、P24とP24’との間の半透明面における反射の間に50%の損失が発生し、これは、物体からの光について、合わせて75%が損失する可能性があることを意味する。従って、バッフル2300による遮蔽を考慮に入れると、光効率は、23%になる。P24とP24’との間の領域が50%の反射率を有する場合における、この構造(以下、「構造II」)のMTFが
図5Bに示され、これを構造IのMTFと比較する。
【0028】
図5Bから理解できるように、構造IIの構成は23%の光効率(即ち、構造Iよりも低い)を有するにもかかわらず、少なくとも空間周波数スペクトルの中央部分の空間周波数に関して、MTFは改善されている。この改善は、構造IIの遮蔽比が構造Iよりも低いことによるものと考えられる。従って、
図5Aに示す構造IIによれば、点P24と点P24’との間の領域全体を使用して、物体Oからの光を極めて高い開口数で、より効果的に集光することができる。光が効率的に集光された後、P24とP24’との間の半透明膜の面全体は、光を像側面に向かって反射するために使用されるため、遮蔽比は最小限に抑えられる。このように、バッフル2300によって光が極めて低い割合で遮断され、半透明膜によって光の相当の部分が失われたとしても、全体としての遮蔽は少ない。
【0029】
図6Aは、像側面2120の透過領域に代わる更なる構造として、セクションCX(
図4A)の別の図を示す。更に詳細には、
図6Aにおいて、点P32と点P32’との間の第1の領域は、0%の反射率を有するように光軸AXに沿って被覆されるか又は被覆されず、第1の領域の周囲にあり、且つ、第1の領域と同心である点P32と点P32’との間の第2の領域は、50%の反射率を有するように被覆され、点P34と点P34との間(点P33’と点P34’との間)の第3の領域は、100%の反射率を有するように被覆されるように、面2120の透過領域は被覆されている。以下、
図6Aの構造を「構造III」と称する。この構造において、点P32と点P32’との間の領域が0%の反射率を有し、P32とP33との間(P32’とP33’との間)の領域が50%の反射率を有し、P33とP34との間(P33’とP34’との間)の領域が100%の反射率を有する場合、物体Oから入射する光線は、3つの光線群G11、G12及びG13に分割される。
【0030】
図6Aにおいて、光線群G11は、光学素子2110の物体側面のP32とP33との間及びP32’とP33’との間にあり、光線群G12は、P31とP32との間及びP31’とP32’との間にあり、光線群G13は、P31とP31’との間にある。光線群G11の光線は、P32とP33との間の半透明面を50%の損失で通過し、反射領域2132によって損失なく反射される。物体側面に戻った後、光線群G11は、P33とP34との間の領域で反射面によって像側面に向かって反射される。
【0031】
一方、光線群G12は、P31とP32との間の透明領域を損失なく通過する。次に、反射領域2132によって反射された後、光線群G12は、P32とP33との間の領域によって50%の損失で像側に向かって反射される。
【0032】
最後に、光線群G13は、P31とP31’との間の領域を通過するが、直接光が像面IPに到達するのを防止するために、バッフル2300によって遮断される。従って、射出瞳面における光の総透過率は、遮蔽領域を除いて50%である。この場合の光効率は、46%である。この構造(以下、「構造III」)のMTFは、
図6Bに示される。
【0033】
従って、構造II(
図5A)及び構造III(
図6A)のような部分透明膜を使用することによって、遮蔽比を低くし、且つ、MTFを改善することができる。しかしながら、光効率は50%を超えないため、依然として低いと考えられる。従って、用途によっては、像コントラストが最適とはいえないままである。更に詳細には、
図5A、
図5B及び
図6A、
図6Bに示すような部分透明膜が使用される場合、バッフルによって遮蔽される中央部分を除き、射出瞳面における透過率分布(「アポダイゼーション」と呼ばれる)は均一である。構造II及び構造IIIの光軸の周囲の透過率分布が
図8A及び
図8Bにそれぞれ示される。
【0034】
次に、
図7A及び
図7Bを参照して、半径方向に透過率分布を有する半透明膜構造の別の構造(以下、「構造IV」)を説明する。
図7Aに示すように、射出瞳面の半径方向に透過率分布を変化させるために、半透明膜は、光軸AXに対して回転対称形になるように配置される。
図7Aを参照するに、固体光学素子2110(レンズ)の物体側面2120は、点P42とP42’との間の反射率が0%の円形領域(「第1の領域」)と、「第2の領域」と称する点P42と点P43との間(点P42’と点P43’との間)の反射率が40%の環状領域と、「第3の領域」と称する点P43と点P44との間(点P43’と点P44’との間)の反射率が100%の環状領域とに分割される。これにより、物体Oから入射する光線は、効果的に、4つの光線群G41、G42、G43及びG44に分割される。各光線群は、光学素子の中で、以下のように複数回の反射を受ける。
【0035】
第1の光線群G41(G41’)は、点P42と点P43との間(点P42’と点P43’との間)の領域を通過する光線から構成され、第2の光線群G42及び第3の光線群G43は、点P41と点P42との間(点P41’と点P42’との間)を通過する光線から構成され、光線群G44は、P41とP41’との間の領域を通過する光線から構成される。
【0036】
G41の光線は、P42とP43との間の領域を40%の損失で通過し、像側面2130の点Q41と点Q42との間の反射領域2132によって損失なく反射される。物体側面2120に戻った後、光線群G41は、点P43とP44との間の100%の反射領域で反射されることによって、像側に向かって進む。従って、光線群G41の光線が受ける実効損失は、40%以下である。
【0037】
光線群G42の光線は、点P41と点P42との間の100%の透過領域を損失なく透過し、その後、像側面2130の反射領域2132によって反射され、物体側面2120に向かって戻される。物体側面のP43とP44との間の領域で、光線群G42の光線は、損失なく像側面に向かって反射される。従って、光線群G42の光線は、100%の実効透過率(0%の損失)で、光学素子2110をほぼ妨げられることなく透過する。
【0038】
光線群G43の光線は、物体側面2120の点P41と点P42との間の透明領域を損失なく通過する。像側面2130の反射領域2132によって反射された後、光線群G43の光線は、P42とP43との間の半透明領域で60%の損失で反射される。
【0039】
光線群G44の光線は、P41とP41’との間の領域を損失なく通過するが、直接光が像面に到達するのを防止するために、バッフル2300によって遮断される。
【0040】
図8A、
図8B及び
図8Cは、構造II、構造III及び構造IVの射出瞳面における光の総透過率分布をそれぞれ示す。詳細には、構造IV(
図8C)では、光学素子2110の物体側面においてこの回転対称形可変透過率を使用することによって、光効率は68%になる。
【0041】
図9Aは、構造I乃至構造IVのMTFを示すグラフである。
図9Aにおいて、構造II及び構造IIIのグラフは、互いにほぼ重なり合っている。
図9Aから理解できるように、光学素子2110の物体側面2120に回転対称形の可変透過率を与えることによって、構造IVのMTFは、構造Iと比較して改善される。詳細には、光効率が50%のままであっても、40%の反射率の回転対称形半透明膜を導入することによって、MTFが改善される。
【0042】
P42とP43との間(P42’とP43’との間)の領域の透過率がそれぞれ20%、30%、40%、70%、80%である場合、光効率は、それぞれ65%、66%、66%、68%、69%になる。
図9Bに示すように、P42とP43との間の領域の透過率に応じて、MTFの特徴を変化させることができる。
図9Bは、種々の透過率レベルにおける構造IVのMTFを示す。
図9Bから理解できるように、光学素子2110の物体側面2120に回転対称形可変透過率を与えることによって、MTFは全体が改善されるが、P42とP43との間の領域において20%から80%という見かけ上大きな透過率の増加があっても、光効率は65%から69%に向上しただけである。
【0043】
部分透明膜は、面の対応する部分を反射材料で被覆することによって形成されてもよい。このような半透明膜は、例えば、化学蒸着又はエッチングによって実現されてもよい。
【0044】
部分透明膜は、例えば、アルミニウム及び銀などの金属膜又は多層膜から選択可能である。反射膜の厚さは、例えば、数十nm乃至数百μmの範囲で選択される。更に詳細には、反射膜の厚さ及び材料は、使用される光の波長に応じて選択される。反射屈折光学素子(レンズ)の材料は、例えば、クラウンガラス、鉛ガラス、異常分散ガラス、溶融シリカ、蛍石など、その同等物及びそれらの組み合わせから選択可能である。
【0045】
光学素子2110の物体側面2120の半径方向に被覆された領域に関する例示的なデータを表1にまとめて示す。表1において、半径方向の距離は、光軸AXから湾曲面の縁部(点P44又はP44’)に向かって測定されるものとする。
【0047】
以上の説明は、反射屈折部2100の構造及び機能の説明、特に、固体光学素子2100の物体側面2120の透過率特性及び反射率特性に向けられていた。次の章では、反射屈折部をどのようにして構成するかを詳細に説明する。
【0048】
リレー光学系の第1の部分は、固体ガラス光学素子(必ずしも一体の固体部材でなくてもよい)から構成され、光が屈折又は反射される4つの光学面を有するという特徴を備えた反射屈折部1201である。
【0049】
上述したように、反射屈折部2100は、固体光学材料、例えば、ガラスによって形成されてもよいが、必ずしも一体の固体部材でなくてもよい。重要なのは、光が屈折又は反射される4つの光学面(1211、1212、1213及び1214)を有する固体光学素子によって、反射屈折部2100が構成されるということである。
図10Aは、固体ガラスの反射屈折部1200の横断面図である。
図10Aにおいて、面1211は、物体に隣接し、液浸媒体は、物体空間の屈折率を反射屈折部1200の屈折率まで減少させるか、又は、反射屈折部1200の屈折率と等しくする。液浸媒体は、物体Oから発し、固体ガラスの反射屈折部1200の面1212に向かって伝播する光の屈折を減少させるか、又は、なくすように作用する。反射屈折素子のガラスと同一の屈折率を有する液浸媒体が使用される場合、屈折は起こらない。実際には、何らかの屈折率差が常にあるため、多少の屈折が起こる。
【0050】
面1211の光学的形状は、平面、球面又は非球面のいずれであってもよい。面1212は、光線を面1213に向かって集束させるように反射するために凹面であり、反射性であり、環状である。面1212が環状であることによって、約0.3の遮蔽が発生する。この遮蔽は重大であるが、0.3以下になる場合もある。面1213は、反射屈折部1200から射出する際に光線を面1214に向かって反射させるように、凸面の環状反射面である。面1214は、反射屈折部から光線を射出させる屈折面である。光学面1211、1212、1213及び1214は、それぞれ異なり(即ち、プロファイルが互いに異なり、互いに連続しない)、平面、球面又は非球面のいずれであってもよい。
【0051】
従って、この反射屈折部は、光が反射又は屈折する4つの明確に異なる面を有する。詳細には、面1212は、物体側に向かって凹面である環状ミラーと考えることができる面を形成し、面1213は、像側に向かって凸面である反射構造を形成する。この反射屈折部1200の直径は、25mm乃至500mmであるのが好ましい。製造に際しては、
図10Bに示すように、反射屈折部1200を2つ、3つ、4つ又は5つ以上の部分に分割することができる。反射屈折部1200は、点線(
図10Bに示す)に沿って組み立て及び分離が可能な部品として製造することができる。実際に、それらの部品は、屈折率が同一の液体、硬化性樹脂又は他の周知の媒体によって一体に組み立てられる。部品の間に狭い空隙が形成されていてもよく、カット面は、平面又は湾曲面のいずれであってもよい。色収差などの何らかの収差を補正するのに有用であるように、又は、製造を容易にし、且つ、製造コストを低減するように、部品は異なる材料(ガラス状)から製造されてもよい。
図10Bは、固体光学素子CGを形成するために、異なる部品A、B、C又はDを接合できる場所の接合断面が点線によって示されている一例である。
【0052】
反射屈折部1200は、軸対称形である。詳細には、軸対称形から僅かにずれている場合もあり、実装の便宜上、平坦な折りたたみ式ミラーを含むことも可能である。非球面は、形状が球面ではなく、且つ、レンズ設計の分野では、画質を向上させるか、或いは、実装を容易にするのに有用であるものとして知られている。反射屈折部1200は、−3乃至−20の負の倍率で動作することができる。
【0053】
反射屈折部1200の特定の顕著な態様は、液浸媒体と接触する入射面である。第1の面1211は、第3の面1213の内側部分と一致してもよい。2つの反射面、即ち、反射屈折部の像側の凹面(第2の面1212)と、反対の側の凸面(第3の面1213)とがあり、光軸(又は対称軸)に沿って射出面(第4の面)がある。第2の面、第3の面及び第4の面は、互いに明確に異なる。第1の面も異なる面であってよいが、第3の面の中央部分と一致していてもよい。
【0054】
屈折率が反射屈折部1200の入射側(物体空間)のガラスとほぼ同一である場合、所定の波長に対して、第1の面の光学的屈折は起こらない。製造、組み立て及び位置合わせを容易にするために、第1の面を第3の面と一致させるのが好ましい。そのような構成の反射屈折光学系は、第3の面の一部である第1の入射面部分を有することになる。第3の面として使用される面の部分は、環状の反射面であり、第1の面として使用される内側部分は、透過性であるか、又は、例えば、1%乃至40%の低い反射率を有する。
【0055】
反射屈折部1200は、第2の環状凹面(第2の面1212)及び第4の屈折面(第4の面1214)を有する。第4の面1214は、第2の反射凹面とは明確に異なる。光は、第2の環状面1212の中心を通過して、第4の屈折面1214へ進む。第2の環状面1212によって取り囲まれた反射屈折部1200の部分は、ほぼ透過性であり、光軸AXに向かう方向に多少の反射率、例えば、1%乃至45%の反射率を有してもよい。
【0056】
製造又は収差の補正に関連して上述したように、反射屈折部1200は、周知の方法で「一体に接合され」、且つ、境界面又は接合面として異なる光学面を有する幾つかの材料から構成されてもよい。しかしながら、いずれにしても、全体として反射屈折素子は、光/放射をほぼ透過する入射面1211と、環状部分では反射性であり、且つ、中央部分ではほぼ透過性である第2の凹面1212と、環状部分では反射性であり、且つ、中央部分ではほぼ透過性である第3の凸面1213と、射出面として作用し、且つ、上述の3つの面とは異なる第4の屈折面1214とを有する。
【0057】
図11は、a、b、c及びdとして示される4つの部品から製造可能な反射屈折部1200を示す。これらの4つの部品は、点線として示される所定の接合面で一体に組み立てられる。4つの光学面があり、1は、液浸液と接触する光学入射面であり、2a及び2bは、第2の光学面であり、3a及び3bは、第3の光学面であり、4は、射出面である。第2の面の部分2aは、全反射面又は反射率の高い面であり、部分2bは、透明であるか、或いは、低い反射率及び高い透過率、例えば、20%の反射率及び80%の透過率を有する面である。第3の面の部分3aは、全反射面又は反射率の高い面であり、部分3bは、透明であるか、或いは、低い反射率及び高い透過率、例えば、20%の反射率及び80%の透過率を有する面である。面4は、射出面である。点線で示す面部分2b、3b及び5は、反射屈折部を形成する部品の間の接合面である。面部分2b及び3bが部分反射(又は反射率勾配を有する)及び部分透過の面であることによって、MTFの著しい劣化が防止される。
【0058】
図12は、第1の面及び第3の面が一致し、且つ、半透明膜で被覆されている反射屈折部1200の一例を示す。点線は、反射屈折部の異なる部品の間の接合境界面、接合面を表す。点線は、1つの固体光学素子として形成された反射屈折部の異なる部品の間の境界面又は接合面を表す。環状凹面/反射面は、2として示され、第4の面(射出面)は、4として示される。第4の面は、第1の面、第2の面及び第3の面とは明確に異なり、且つ、それらの面から分離されている。
【0059】
部分膜の半透明部分に使用される実際の膜は、1)金属、2)誘電体、3)透明膜、4)半透明膜、5)反射膜、6)半反射膜、7)光遮断(光捕捉)膜などの各種膜の組み合わせであってもよい。
【0060】
<他の実施形態>
本発明の更なる実施形態に係るTIR(全反射)を使用する高NA光学系1300が
図13に示される。光学系1300の光学素子の詳細なレンズデータは、表2a及び表2bに示されている。物体空間テレセントリック光学系(即ち、入射瞳を無限遠に有する光学系)を形成するために、光学系の前方焦点面に開口絞りSTOが配置される。
図13に示す例示的な光学系において、最も外側の視野の射出瞳面は、物体面OPからその左側へ4875mm離間した位置にある。本実施形態では、反射屈折部CGは、互いに所定の距離だけ離間して配置された第1の反射屈折素子CG1及び第2の反射屈折素子CG2を含む。第1の反射屈折素子CG1と第2の反射屈折素子CG2との離間(距離)はブロックBKによって規定され、ブロックBKは、空の空間(空隙)を残すか、或いは、CG1とCG2との間にほぼ平行な光学的に透明な材料片(例えば、ガラス)を導入するかのいずれかの方法によって実現されてもよい。また、ブロックBKは、光学フィルタ、位相板などに対応してもよい。特に、CG1とCG2とを離間させることは、光学系の位置合わせを容易にするのに効果的である。
【0061】
図13における第1の光学素子(反射屈折素子CG1)及び第2の素子(反射屈折素子CG2)は、遮蔽を減少させ、且つ、MTFを最適にするために選択的に膜で被覆されてもよい。CG2は、内側で2回の反射が起こるように設計され、第1の素子(CG1)と第2の素子(CG2)との間に僅かな間隙がある。第1の素子CG1は、物体Oから入射する光を集光し、集光した光をほぼ色収差なく第2の素子CG2へリレーする。第2の素子CG2は、集光した光を第1の中間像面IMP1に集束することによって、第1の中間像IIM1を形成する。更に詳細には、第1の素子CG1と第2の素子CG2との組み合わせは、特に、遮蔽を制御し、且つ、光学系1300のMTFを最適にする。
【0062】
第3の光学素子は、反射屈折群CG3であり、第1の中間像面IMP1からの第1の中間像IIM1を第2の中間像面IMP2に再結像することによって、第2の中間像IIM2を形成するように作用する。レンズ群LGに対して、第2の中間像IIM2は物体として使用され、レンズ群LGは、像面IPに最終像IMを生成する。
図13に示すように、反射屈折群CG3は、
図2の視野レンズ300として考えてもよく、レンズ群LGは、
図2の再結像部400として考えてもよい。
【0063】
図14は、
図13の反射屈折系CGにおける反射屈折素子CG2の構造を詳細に示す。第2の群(CG2)の左側の面(物体側面)は、第1の素子CG1の後側の面と同一の形状を有する外側領域(領域(a))1404と、凸面形状を有する内側領域(領域(b))1405とを含む2つの部分を有する。
【0064】
図15は、物体側湾曲面150(第1の面)及び像側平坦面151を有する固体レンズ1501から構成される第1の素子CG1の一例を示す。
図15の右側に、CG1の像側平坦面151(第2の面)の平面図が示される。物体側面150は、光軸AXを中心とする中央領域の透過部分と、その透過部分の周囲の領域にある凹面反射部分とを有する。透過部分及び凹面反射部分は、互いに同心である。像側面151は、ほぼ平坦であり、半透明(50%の透過率)の膜16で被覆されている。像側面151は、互いに同心であり、且つ、ともに光軸AXを中心とする全反射(TIR)領域P51及び中央遮蔽領域17を含む。物体Oから入射した光線は、第1の面150の透過部分を通過し、まず、像側面151に入射して、そこで反射される。更に詳細には、臨界角θ
cと限界角度θ
mとの間の入射角を有する光線R2及びR3は、第2の面151のTIR領域P51で全反射され、第1の面150の反射部分に向かって損失なく反射される。一方、最小遮蔽角度θ
1で像側面に入射した光線R1の一部は、光線R1’として半透明膜16を透過し、別の部分は物体側面に向かって反射される。物体側面150の反射部分は、それらの光線を第2の面151に向かって光線R2’及びR3’として反射する。この際、反射光線R1’’、R2’及びR3’の全ては、面151のTIR領域P51を50%の損失で透過する。
【0065】
図15において、第1の面150の透過領域を通って伝播し、第2の面151の領域17に入射した光線R1は、50%の損失で直接光線R1’として透過する。従って、上述したバッフル2300などのバッフルによって、それらの直接光線を遮断することができる。
【0066】
そこで、
図13に戻って説明すると、物体面OPに配置された物体から入射した光線は、第1の素子CG1の中央透過部分を通って第1の素子CG1に入射し、全反射(TIR)によって面(P1)で反射される。臨界角よりも大きい入射角で面P1に入射した光線のみが反射され、反対側(1301)へ進む。光線は、物体側面1301から像側面に向かって臨界角よりも小さい角度で反射される。
【0067】
光線が面(P1)に再び到達すると、光の角度が臨界角よりも小さいため、光線は反射されず、面P1によって屈折される。そして、光線は、
図14に示す領域(a)1404を通って第2の素子(CG2)に入射する。面(P1)の形状と領域(a)の形状とが同一であり、且つ、光の高さの差が極めて僅かであるため、光がCG1の面(P1)から射出して、CG2の領域(a)に入射する時点で、単色収差は、殆ど生じない。そして、光線は、凹面状反射面(像側凹面鏡)1302によって収束され、凸面状反射面(凸面鏡)1303によって反射される。
【0068】
従って、第2の素子CG2の中において、第1の中間像面IMP1に第1の中間像IIM1が形成される。中間像IIM1からの光は、ミラー1305の中空透過領域(孔)を通過し、ミラー1304によって反射される。ミラー1305によって反射された後、光線は、ミラー1304の中空透過領域(孔)を通過し、第2の中間像面IMP2に第2の中間像IIM2が形成される。IIM2は、レンズ群LGに対して物体として使用される。そして、レンズ群LGによって、像面IPに最終像が形成される。臨界角によって規定される遮蔽比は、66%である。光効率は、63.1%である。
【0069】
レンズ1501の像側面151が50%の反射率の半透明膜16で被覆されている場合(以下、「構造VI」)、面151が半透明膜で被覆されていない場合と比較してMTFは改善されるが、光効率は22%に低下する。構造V(不図示)は、像側面に膜を有していない構造である。
【0070】
図16Aを参照して、CG1の新たな構造(以下、「構造VII」)を説明する。
図16Aにおいて、光軸を中心とするP61とP61’との間の領域は、吸収領域であり、P61とP62との間(P61’とP62’との間)の領域は、100%の反射率を有し、P62とP63との間(P62’とP63’との間)の領域は、50%の反射率を有し、P63とP64との間(P63’とP64’との間)の領域は、0%の反射率を有し、P64とP65との間(P64’とP65’との間)の領域は、50%の反射率を有するように、第1の素子CG1は、回転対称可変膜を含むように変形されている。
【0071】
物体面OPの物体から入射した光線は、
図16に示すように、4つの光線群G61、G62、G63及びG64に分割される。光線群G61の光線は、点P63と点P64との間(P63’とP64’との間)にあり、G62の光線は、P62とP63との間(P62’とP63’との間)にあり、G63の光線は、P61とP62との間(P61’とP62’との間)にあり、G64の光線は、P61とP61’との間にある。
【0072】
G61の光線は、P63とP64との間の領域でTIRによって反射され、領域Q61及びQ62によって反射される。次いで、光線は、P64とP65との間の領域を50%の損失で通過する。G62の光線は、P62とP63との間の領域を50%の損失で通過し、Q61とQ62との間の領域によって損失なく反射される。そして、G62の光線は、P63とP64との間の領域を通過する。
【0073】
G63の光線は、P61とP62との間の領域で100%の反射膜によって反射され、領域Q61及びQ62によって損失なく元の方向へ反射される。そして、光線は、P62とP63との間の領域を50%の損失で通過する。G64の光線は、P61とP61’との間の領域によって吸収される。
【0074】
図16Bに示すように、半透明膜を使用することによって、構造VI及び構造VIIのMTFを改善することができる。構造VIの光効率は、22%であり、構造VIIの光効率は、42%である。
図17A及び
図17Bは、射出瞳面における構造VI及び構造VIIの透過率分布をそれぞれ示す。射出瞳面における透過率(透過率分布)は、構造VIでは25%、構造VIIでは50%である。
【0075】
図18に示すように、第1の素子及び第2の素子(CG1、CG2)の面に半透明膜構造が適用される(以下、「構造VIII」)。第1の素子CG1では、P72とP73との間(及びP72’とP73’との間)の領域に半透明膜(50%の反射率)が適用され、P71とP72との間(及びP71’とP72’との間)の領域に全反射膜(100%の反射率)が適用される。これが必要であるのは、MTFを大きくするために、遮蔽領域を拡大しなければならないからである。P71とP71’との間の領域は、像面に向かって進む光を反射屈折部によって反射されることなく阻止(遮断)するためのバッフルとして作用する吸収部分である。従って、構造VIIIによれば、第1の素子CG1は、その像側面に、光軸AXを中心とするバッフルとして作用する中央吸収領域(P71とP71’との間で0%の透過率)と、100%の反射率を有する第1の環状又はリング形領域(吸収領域の周囲のP71とP72との間の領域)と、50%の反射率を有する第2の環状又はリング形領域(第1のリング形領域の周囲のP72とP73との間の領域)と、0%の反射率を有し、臨界角θ
cよりも大きい入射角を有する光線を全内部反射させる透過領域(第2のリング形領域の周囲のP73とP74との間の領域)とを含む。
【0076】
第2の素子CG2の物体側では、50%の反射率を有するP72とP73との間(及びP72’とP73’との間)の領域に対応して、
図14におけるCG2の領域(b)1405の縁部のP81とP82との間(P81’とP82’との間)の領域に、50%の反射率を有する半透明膜が適用される。P81とP81’との間の領域は、鏡面反射領域として形成され(100%の反射率)、P82とP83との間(P82’とP83’との間)の領域は、0%の反射率である(透過領域)。
【0077】
構造VIIIの場合、
図19A乃至
図19Fに示すように、光線は、6つの光線群(G71、G72、G73、G74、G75及びG76)に分割される。P73とP74との間(P73’とP74’との間)の領域は、0%の反射率である(即ち、反射膜を有していない)。P72とP73との間(P72’とP73’との間)の領域は、50%の反射率を有し、P71とP72との間(P71’とP72’との間)の領域は、100%の反射率を有する。P71とP71’との間の領域は、吸収領域である。P82とP84との間(P82’とP84’との間)の領域は、0%の反射率を有し、P81とP82との間(P81’とP82’との間)の領域は、50%の反射率を有し、P81とP81’との間の領域は、100%の反射率を有する。
【0078】
G71の光線は、
図19AにおけるP81とP82との間(P81’とP82’との間)の領域によって反射された時点で50%のエネルギーを失う。G72の光線は、
図19BにおけるP73とP74との間の領域のTIR領域で反射された時点及びP81とP81’との間の領域によって反射された時点でエネルギーを失わない。G73の光線は、
図19CにおけるP72とP73との間(P72’とP73’との間)の領域によって50%のエネルギーを失う。
図19Dにおいて、G74の光線は、エネルギーを失わない。
図19Dにおいて、G75の光は、P72とP73との間(P72’とP73’との間)の領域及びP81とP82との間(P81’とP82’との間)の領域を通過するため、G75の損失は75%である。
図19Fに示すように、G76の光線は、P71とP71’との間の吸収領域によって遮断されるため、損失は100%である。
【0079】
射出瞳面における透過率分布(即ち、「アポダイゼーション」)が
図20Aに示される。G71の透過率は、0.50であり、G72の透過率は、1.00であり、G73の透過率は、0.50であり、G74の透過率は、1.00であり、G75の透過率は、0.25であり、G76の透過率は、0.00である。
図20Bに示すように、半透明膜を使用することによって、反射屈折部のMTFを改善することができる。構造VIIIの光効率は、58%である。
【0080】
<視野レンズ部>
図2に戻って、
図21を参照して視野レンズ200の一例を説明する。
図21において、視野レンズ部2200は、第1の中間像の近傍に配置された複数の屈折光学素子(レンズ)を備える。更に詳細には、
図21は、第1の中間像面IMP1に第1の中間像IIM1を形成するために、反射屈折部CG1(上述した通り)が物体面OPから視野レンズまでどのようにして光線をリレーするかを示す。
【0081】
<再結像部>
図22は、再結像部の一例を示す。再結像部は、幾つかのレンズを備え、第1の中間像IIM1を使用して最終像IM(第2の像)を生成する。リレー光学系の全体の倍率は、1乃至5倍、5乃至25倍及び25倍乃至無限大(無限遠に結像する)の範囲である。
【0082】
<数値例>
例1:
図2に示すリレー光学系の一例の構成データを付録Iに示す。この光学系の視野に沿った波面誤差は、0.025ミリ波長である。
【0083】
このリレー光学系の特性の概要は、以下の通りである。
【0084】
物体側開口数:1.65
物体視野:7mm
波長範囲:0.41〜0.68μm
最大直径:〜318mm
長さ:〜1477mm
倍率:20
遮蔽比:〜0.3
テレセントリック性:物体空間
視野に沿った多色RMS波面収差:0.025波長
例II:
図23Aに示すように、第2の数値例に関する構成データを付録IIに示す。
【0085】
物体側開口数:1.65
物体視野:7mm
波長範囲:0.46〜0.66μm
最大直径:〜318mm
長さ:〜1264mm
倍率:20
遮蔽比:〜0.3
テレセントリック性:物体空間
視野に沿った多色RMS波面収差:0.014波長
例III:
図23Bは、第3の例の配置構造を示す。
図23Bの例に関する構成データを付録IIIに示す。
【0086】
例IV:
図23Cは、−20の倍率を有するリレー光学系を示す。付録IVは、
図23Cに示す例に関する規定データを示す。視野に沿った多色RMS波面収差は、0.048波長である。開口数は、1.65であり、視野は、7.0mmであり、波面補正は、多色であり、リレー光学系は、物体空間においてテレセントリックである。
【0087】
例V:
図23Dは、負の倍率を有し、且つ、中間像を形成しないリレー光学系の一例を示す。この例の顕著な特徴は、光学系の長さが662mmであることである。
図23Dは、−20の倍率を有するリレー光学系の横断面を示す。付録Vは、
図23Dの例Vに関する規定データを示す。視野に沿った多色RMS波面収差は、0.048波長である。開口数は、1.65であり、視野は、7.0mmであり、波面補正は、多色であり、リレー光学系は、物体空間においてテレセントリックである。
【0088】
図3及び
図13に示す反射屈折光学系に対応するデータは、
図3に関しては表1a及び表1bに示され、
図13に関しては表2a及び表2bに示される。
図3及び
図13のそれぞれにおいて、図中の指標「i」(i=1,2,3・・・)は、物体面OPから像面IPに至るまでの光学系における面の順番を示す。この規定によれば、「半径」データRiは、(i番目の平面の)i番目の曲率半径に対応し、厚さTiは、i番目の面と(i+1)番目の面との間の軸上距離又は空間を示し、符号ndi及びνdiは、フラウンホファーd線に関するi番目の光学素子の材料の屈折率及びアッベ数をそれぞれ表す。ndi及びνdiの数値のない面番号は、その面番号が空間を表すことを示す。半径R=1.00E+18(1E+Xは、1×10
+Xと同等である)は、ほぼ無限大の半径、即ち、平坦な面を示す。更に、各数値例において、物体Oは、第1の光学面の物体側の物体面OPに配置され、且つ、光軸AX上に配置されるものとする。従って、物体Oは、光学系と軸方向に整列しているものとする。物体空間がほぼテレセントリックであるとみなすことができるように、開口絞りが物体Oから相対的に長い距離離間して配置されているものとする。各数値例において、物体Oは、第1の光学素子の屈折率と一致する屈折率を有する流体の中に浸漬されているものとする。
【0091】
各非球面において、円錐定数は、kによって表される(kは、円錐面を表す数であり、球面の場合は0、放物面の場合は−1であり、何らかの回転円錐を表す場合は他の数値が使用される)。非球面多項式次数係数は、それぞれ4次、6次、8次、10次、12次、14次、16次の係数であるA、B、C、D、E、F、G、J・・・によって示される。光軸から高さhの位置における光軸の方向への変位は、面の頂点に対してzによって示される。非球面の変位は、以下に示す式(2)に基づいている。
【0100】
例示的な実施形態を参照して本発明に係る実施形態を説明したが、本発明が上述した実施形態に限定されないことを理解すべきである。添付の特許請求の範囲は、全ての変形や同等の構造及び機能を含むように最も広い意味で解釈されるべきである。