(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
V1a受容体拮抗作用に関連する、疾患及び障害の治療的及び/又は予防的処置用の治療活性物質として使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
月経困難症、男性又は女性の性的機能不全、高血圧、慢性心不全、バソプレシンの分泌異常、肝硬変、ネフローゼ症候群、不安、抑鬱障害、強迫性障害、自閉症スペクトル障害、統合失調症、及び攻撃的行動の症状において末梢及び中枢に作用する治療活性物質として使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
月経困難症、男性又は女性の性的機能不全、高血圧、慢性心不全、バソプレシンの分泌異常、肝硬変、ネフローゼ症候群、不安、抑鬱障害、強迫性障害、自閉症スペクトル障害、統合失調症、及び攻撃的行動の症状において末梢及び中枢に作用する医薬の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の使用。
月経困難症、男性又は女性の性的機能不全、高血圧、慢性心不全、バソプレシンの分泌異常、肝硬変、ネフローゼ症候群、不安、抑鬱障害、強迫性障害、自閉症スペクトル障害、統合失調症、及び攻撃的行動の症状において末梢及び中枢に作用する、請求項10に記載の医薬組成物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、V1a受容体モジュレーターとして、そして特にV1a受容体アンタゴニストとして作用する、4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン類、これらの製造法、これらを含有する医薬組成物及び医薬としてのこれらの使用に関する。本化合物は、月経困難症、男性又は女性の性的機能不全、高血圧、慢性心不全、バソプレシンの分泌異常、肝硬変、ネフローゼ症候群、不安、抑鬱障害、強迫性障害、自閉症スペクトル障害、統合失調症、及び攻撃的行動の症状において末梢及び中枢に作用する治療薬として有用である。
【0002】
技術分野
本発明は、式(I):
【化1】
[式中、置換基及び変数は、後述及び請求の範囲のとおりである]で示される化合物、又は薬学的に許容しうるその塩を提供する。
【0003】
本化合物は、V1a受容体アンタゴニストであり、鬱病の処置に有用である。
【0004】
背景技術
バソプレシンは、視床下部の室傍核により主として産生される9アミノ酸ペプチドである。末梢でバソプレシンは、神経ホルモンとして作用し、そして血管収縮、グリコーゲン分解及び抗利尿作用を促進する。
【0005】
全てI型Gタンパク質共役受容体に属する3種のバソプレシン受容体が知られている。V1a受容体は、脳、肝臓、血管平滑筋、肺、子宮及び精巣で発現され、V1b又はV3受容体は、脳及び下垂体で発現され、V2受容体は、腎臓で発現され、そこで水の再吸収を調節して、バソプレシンの抗利尿作用を仲介する(Robben, et al. (2006). Am J Physiol Renal Physiol. 291, F257-70, "Cell biological aspects of the vasopressin type-2 receptor and aquaporin 2 water channel in nephrogenic diabetes insipidus")。よってV2受容体に活性を持つ化合物は、血液の恒常性に副作用を及ぼすかもしれない。
【0006】
オキシトシン受容体は、バソプレシン受容体ファミリーに関連しており、そして脳及び末梢における神経ホルモンのオキシトシンの作用を仲介する。オキシトシンは、中枢性抗不安作用を有すると考えられている(Neumann (2008). J Neuroendocrinol. 20, 858-65, "Brain oxytocin: a key regulator of emotional and social behaviours in both females and males")。よって中枢性オキシトシン受容体拮抗作用は、不適切な副作用と見なされる、不安惹起作用をもたらす恐れがある。
【0007】
脳においてバソプレシンは、神経モジュレーターとして作用し、ストレス時の扁桃体において上昇する(Ebner, et al. (2002). Eur J Neurosci. 15, 384-8., "Forced swimming triggers vasopressin release within the amygdala to modulate stress-coping strategies in rats")。ストレスになる生活の出来事は、大鬱病及び不安を誘発させうること(Kendler, et al. (2003). Arch Gen Psychiatry. 60, 789-96, "Life Event Dimensions of Loss, Humiliation, Entrapment, and Danger in the Prediction of Onsets of Major Depression and Generalized Anxiety")、そして両者は、非常に高い併存罹患率を有しており、不安がしばしば大鬱病に先行すること(Regier, et al. (1998). Br J Psychiatry Suppl. 24-8, "Prevalence of anxiety disorders and their comorbidity with mood and addictive disorders")が知られている。V1a受容体は、脳において広く、そして詳しくは不安の調節において重要な役割を果たしている、扁桃体、外側中隔及び海馬のような辺縁領域において発現する。実際V1aノックアウトマウスは、十字迷路、オープンフィールド及び明暗箱において不安行動の減少を示す(Bielsky, et al. (2004). Neuropsychopharmacology. 29, 483-93, "Profound impairment in social recognition and reduction in anxiety-like behavior in vasopressin V1a receptor knockout mice")。中隔へのアンチセンスオリゴヌクレオチド注入を用いるV1a受容体のダウンレギュレーションもまた、不安行動の減少を引き起こす(Landgraf, et al. (1995). Regul Pept. 59, 229-39., "V1 vasopressin receptor antisense oligodeoxynucleotide into septum reduces vasopressin binding, social discrimination abilities, and anxiety-related behavior in rats")。バソプレシン又はV1a受容体はまた、他の神経精神障害にも関与している:遺伝子研究により最近ヒトV1a受容体のプロモーターにおける配列多型が、自閉症スペクトル障害に関係づけられ(Yirmiya, et al. (2006). 11, 488-94, "Association between the arginine vasopressin 1a receptor (AVPR1a) gene and autism in a family-based study: mediation by socialization skills")、バソプレシンの鼻内投与が、人間男性の攻撃性に影響を及ぼすことが証明され(Thompson, et al. (2004). Psychoneuroendocrinology. 29, 35-48, "The effects of vasopressin on human facial responses related to social communication")、そしてバソプレシンレベルが、統合失調症患者(Raskind, et al. (1987). Biol Psychiatry. 22, 453-62, "Antipsychotic drugs and plasma vasopressin in normals and acute schizophrenic patients")及び強迫性障害の患者(Altemus, et al. (1992). Arch Gen Psychiatry. 49, 9-20, "Abnormalities in the regulation of vasopressin and corticotropin releasing factor secretion in obsessive-compulsive disorder")において上昇することが見い出された。
【0008】
V1a受容体はまた、孤束核で中枢性に血圧及び心拍数を調節することにより脳におけるバソプレシンの心血管作用を仲介している(Michelini and Morris (1999). Ann N Y Acad Sci. 897, 198-211, "Endogenous vasopressin modulates the cardiovascular responses to exercise")。末梢では、これは血管平滑筋の収縮を誘導し、そしてV1a受容体の慢性的阻害は、心筋梗塞ラットにおいて血行動態パラメーターを改善させる(Van Kerckhoven, et al. (2002). Eur J Pharmacol. 449, 135-41, "Chronic vasopressin V(1A) but not V(2) receptor antagonism prevents heart failure in chronically infarcted rats")。よって、血液脳関門を介しての浸透が改善されたV1aアンタゴニストは、有益であることが期待される。
【0009】
バソプレシンV1a受容体アンタゴニストは、臨床で月経困難症を軽減させるのに有効であることが証明された(Brouard, et al. (2000). Bjog. 107, 614-9, "Effect of SR49059, an orally active V1a vasopressin receptor antagonist, in the prevention of dysmenorrhoea")。V1a受容体拮抗作用はまた、女性の性的機能不全の処置に関係している(Aughton, et al. (2008). Br J Pharmacol. doi:10.1038/bjp.2008.253, "Pharmacological profiling of neuropeptides on rabbit vaginal wall and vaginal artery smooth muscle in vitro")。最新の研究では、V1a受容体アンタゴニストは、勃起不全及び早漏の両者において治療的役割を有することが示唆された(Gupta, et al. (2008). Br J Pharmacol. 155, 118-26, "Oxytocin-induced contractions within rat and rabbit ejaculatory tissues are mediated by vasopressin V(1A) receptors and not oxytocin receptors")。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明の目的は、式(I)の化合物及び薬学的に許容しうるこれらの塩、上記化合物の調製法、これらを含有する医薬及びこれらの製造法、更にはV1a受容体の調整に関連する、そして特にV1a受容体拮抗作用に関連する、疾患及び障害の治療的及び/又は予防的処置における上記化合物の使用である。V1a受容体に対する高い選択性は、上述のような望ましくないオフターゲット関連副作用を引き起こす可能性を低くすると期待されるため、本発明の更なる目的は、V1a受容体の選択的インヒビターを提供することである。
【0011】
本化合物は、月経困難症、男性又は女性の性的機能不全、高血圧、慢性心不全、バソプレシンの分泌異常、肝硬変、ネフローゼ症候群、不安、抑鬱障害、強迫性障害、自閉症スペクトル障害、統合失調症、及び攻撃的行動の症状において末梢及び中枢に作用する治療薬として有用である。本発明に関して特定の適応は、不安、抑鬱障害、強迫性障害、自閉症スペクトル障害、統合失調症、及び攻撃的行動の処置である。
【0012】
本説明に使用される一般用語の以下の定義は、問題の用語が、単独で出現するか、他の群と組合せて出現するかに関わらず適用される。
【0013】
「C
1−6−アルキル」という用語は、単独で又は他の基との組合せで、アルキル基が一般に1〜6個の炭素原子を含む、直鎖であっても又は分岐(単分岐又は多分岐)していてもよい炭化水素ラジカル、例えば、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル、イソプロピル(i−プロピル)、n−ブチル、i−ブチル(イソブチル)、2−ブチル(sec−ブチル)、t−ブチル(tert−ブチル)、イソペンチル、2−エチル−プロピル、1,2−ジメチル−プロピルなどを表す。特定の「C
1−6−アルキル」基は、1〜4個の炭素原子を有する。具体的な基は、イソプロピル及びsec−ブチルである。
【0014】
「ハロゲン−C
1−6−アルキル」という用語は、単独で又は他の基との組合せで、1個又は複数のハロゲン、特に1〜5個のハロゲン、更に特定して1〜3個のハロゲン(「ハロゲン−C
1−3−アルキル」)、具体的には1個のハロゲン又は3個のハロゲンにより置換されている、本明細書中と同義のC
1−6−アルキルのことをいう。特定のハロゲンは、フルオロである。特定の「ハロゲン−C
1−6−アルキル」は、フルオロ−C
1−6−アルキルである。
【0015】
「ヒドロキシ−C
1−6−アルキル」という用語は、単独で又は他の基との組合せで、1個又は複数の−OH、特に1〜2個の−OH、更に特定して1個の−OHにより置換されている、本明細書中と同義のC
1−6−アルキルのことをいう。
【0016】
「C
1−6−アルコキシ−C
1−6−アルキル」という用語は、単独で又は他の基との組合せで、1個又は複数の本明細書中と同義のC
1−6−アルコキシ基、特に1〜2個のC
1−6−アルコキシ基、更に特定して1個のC
1−6−アルコキシ基により置換されている、本明細書中と同義のC
1−6−アルキルのことをいう。
【0017】
「シアノ」という用語は、単独で又は他の基との組合せで、N≡C−(NC−)のことをいう。
【0018】
「ヒドロキシ」という用語は、単独で又は他の基との組合せで、−OHのことをいう。
【0019】
「ハロゲン」という用語は、単独で又は他の基との組合せで、クロロ(Cl)、ヨード(I)、フルオロ(F)及びブロモ(Br)を意味する。特定の「ハロゲン」は、Cl及びFである。具体的にはClである。
【0020】
「アリール」という用語は、単独で又は他の基との組合せで、6〜14個、特に6〜10個の炭素原子を含有し、そして少なくとも1個の芳香環又は複数の縮合環(ここで、少なくとも1個の環は芳香族である)を有する、芳香族炭素環基のことをいう。「アリール」基の例は、ベンジル、ビフェニル、インダニル、ナフチル、フェニル(Ph)などを包含する。特定の「アリール」基はフェニルである。
【0021】
「ヘテロアリール」という用語は、単独で又は他の基との組合せで、単一の4〜8員環又は6〜14個、特に6〜10個の環原子を含有する複数の縮合環を有しており、そしてN、O及びS、特にN及びOから個々に選択される、1個、2個又は3個のヘテロ原子を含有する、芳香族炭素環基(この基において、少なくとも1個の複素環は、芳香族である)のことをいう。「ヘテロアリール」基の例は、ベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル、1H−ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアジニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、フリル、イミダゾリル、インダゾリル、1H−インダゾリル、インドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル(ピラジル)、1H−ピラゾリル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、キノリニル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、6,7−ジヒドロ−5H−[1]ピリジニルなどを包含する。特定の「ヘテロアリール」基は、ピリジニル及びピラジニルであり、具体的には、ピリジン−2−イル及びピラジン−2−イルである。
【0022】
「C
1−6−アルコキシ」という用語は、単独で又は他の基との組合せで、アルキル基が一般に1〜6個の炭素原子を含む、直鎖であっても又は分岐(単分岐又は多分岐)していてもよい−O−C
1−6−アルキルラジカル、例えば、メトキシ(OMe、MeO)、エトキシ(OEt)、プロポキシ、イソプロポキシ(i−プロポキシ)、n−ブトキシ、i−ブトキシ(イソ−ブトキシ)、2−ブトキシ(sec−ブトキシ)、t−ブトキシ(tert−ブトキシ)、イソペンチルオキシ(i−ペンチルオキシ)などを表す。特定の「C
1−6−アルコキシ」基は、1〜4個の炭素原子を有する(「C
1−4−アルコキシ」)。
【0023】
「ハロゲン−C
1−6−アルコキシ」という用語は、単独で又は他の基との組合せで、1個又は複数のハロゲン、特にフルオロにより置換されている、本明細書中と同義のC
1−6−アルコキシのことをいう。特定の「ハロゲン−C
1−6−アルコキシ」基は、フルオロ−C
1−6−アルコキシである。
【0024】
「C
3−7−シクロアルキル」という用語は、3〜6個の環炭素原子の一価の飽和の単環式又は二環式炭化水素基を意味する。二環式とは、1個以上の炭素原子を共通に有する2個の飽和炭素環からなることを意味する。特定のC
3−6−シクロアルキル基は、単環式である。単環式シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブタニル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルである。二環式シクロアルキル基の例は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、又はビシクロ[2.2.2]オクタニルである。「C
3−7−シクロアルキル」基の具体的には、シクロプロピルである。
【0025】
「薬学的に許容しうる塩」という用語は、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した塩のことをいう。無機及び有機酸との適切な塩の例は、特に限定されないが、酢酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、コハク酸、硫酸、硫酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸などである。特定の酸は、ギ酸、トリフルオロ酢酸及び塩酸である。特に塩酸、トリフルオロ酢酸及びフマル酸である。
【0026】
「薬学的に許容しうる担体」及び「薬学的に許容しうる補助物質」という用語は、製剤の他の成分と併用できる、希釈剤又は賦形剤のような担体及び補助物質のことをいう。
【0027】
「医薬組成物」という用語は、所定量又は所定比率の特定成分を含む生成物、更には特定量の特定成分を合わせることにより直接的又は間接的に生じる任意の生成物を包含する。特にこれは、1種以上の活性成分、及び不活性成分を含むオプションの担体を含む生成物、更には任意の2種以上の成分の組合せ、複合体形成若しくは凝集によるか、又は1種以上の成分の解離によるか、又は1種以上の成分の他のタイプの反応若しくは相互作用により、直接的又は間接的に生じる任意の生成物を包含する。
【0028】
「半数阻害濃度」(IC
50)という用語は、インビトロで生物学的プロセスの50%阻害を得るのに必要な特定化合物の濃度を意味する。IC
50値は、pIC
50値(-log IC
50)に対数変換することができるが、この値が高ければ、効力は指数的に大きくなることを示している。IC
50値は、絶対値ではないが、実験条件、例えば、使用した濃度に依存する。IC
50値は、Cheng-Prusoff式(Biochem. Pharmacol. (1973) 22:3099)を用いて絶対阻害定数(Ki)に変換できる。「阻害定数」(Ki)という用語は、ある受容体への特定インヒビターの絶対結合親和性を意味する。これは、競合結合アッセイを用いて測定されるが、競合リガンド(例えば、放射性リガンド)が存在しなかった場合に特定インヒビターが受容体の50%を占めるであろう濃度に等しい。Ki値は、pKi値(-log Ki)に対数変換することができるが、この値が高ければ、効力は指数的に大きくなることを示している。
【0029】
「アンタゴニスト」という用語は、例えば、Goodman and Gilman's “The Pharmacological Basis of Therapeutics, 7th ed.” in page 35, Macmillan Publ. Company, Canada, 1985に定義されるように、別の化合物の作用を低下させるか阻止する化合物を意味する。特に、アンタゴニストとは、アゴニストの効果を弱める化合物のことをいう。「競合的アンタゴニスト」は、アゴニストと同じ受容体の部位に結合するが、受容体を活性化せず、よってアゴニストの作用をブロックする。「非競合的アンタゴニスト」は、受容体上のアロステリック(非アゴニスト)部位に結合することにより、受容体の活性化を阻止する。「可逆的アンタゴニスト」は、受容体に非共有結合するため、「ウォッシュアウト」できる。「不可逆的アンタゴニスト」は、受容体に共有結合して、競合リガンドによっても洗浄によっても排除できない。
【0030】
「治療有効量」は、病状を処置するために対象に投与するとき、その病状の処置を達成するのに充分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、処置される病状、処置される疾患の重症度、対象の年齢及び相対的健康度、投与の経路及び剤形、担当医又は獣医の判断、並びに他の要因に依存して変化するだろう。
【0031】
変数に言及するとき「本明細書中と同義」及び「本明細書中に記載のとおり」という用語は、変数の広い定義、更にはもしあれば、好ましい、更に好ましい及び最も好ましい定義を参照することにより取り込む。
【0032】
化学反応に言及するとき「処理」、「接触」及び「反応」という用語は、指示及び/又は所望の生成物を生み出すために適切な条件下で2種以上の試薬を添加又は混合することを意味する。当然のことながら、指示及び/又は所望の生成物を生み出す反応は、必ずしも最初に加えられた2種の試薬の組合せに直接起因するとは限らず、即ち、混合物として生成する1種以上の中間体が存在してもよく、そしてこれが最終的に指示及び/又は所望の生成物の形成につながる。
【0033】
「芳香族」という用語は、文献に、特にIUPAC - Compendium of Chemical Terminology, 2nd, A. D. McNaught & A. Wilkinson (Eds). Blackwell Scientific Publications, Oxford (1997)に定義されるような芳香族性の従来の考え方を意味する。
【0034】
「薬学的に許容しうる賦形剤」という用語は、医薬品の製剤化に使用される、崩壊剤、結合剤、充填剤、溶媒、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、酸化防止剤、界面活性剤又は滑沢剤のような、治療活性を持たず、かつ非毒性である任意の成分を意味する。
【0035】
詳細には、本発明は、一般式(I):
【化2】
[式中、
R
1は、ハロゲンであり、そして
R
2は、i)〜iv):
i) 非置換であるか、又はOH、ハロゲン、シアノ、C
1−6−アルキル、C
1−6−アルコキシ、ハロゲン−C
1−6−アルキル、ハロゲン−C
1−6−アルコキシ、C
1−6−アルコキシ−C
1−6−アルキル及びヒドロキシ−C
1−6−アルキルよりなる群から個々に選択される1〜3個の置換基により置換されている、ヘテロアリール;
ii) 非置換であるか、又はOH、ハロゲン、シアノ、C
1−6−アルキル、C
1−6−アルコキシ、ハロゲン−C
1−6−アルキル、ハロゲン−C
1−6−アルコキシ、C
1−6−アルコキシ−C
1−6−アルキル及びヒドロキシ−C
1−6−アルキルよりなる群から個々に選択される1〜3個の置換基により置換されている、アリール;
iii) 非置換であるか、又はOH、ハロゲン、シアノ、C
1−6−アルキル、C
1−6−アルコキシ、ハロゲン−C
1−6−アルキル、ハロゲン−C
1−6−アルコキシ、C
1−6−アルコキシ−C
1−6−アルキル及びヒドロキシ−C
1−6−アルキルよりなる群から個々に選択される1〜3個の置換基により置換されている、C
3−7−シクロアルキル;並びに
iv) 非置換であるか、又はOH、ハロゲン、シアノ、C
1−6−アルコキシ及びハロゲン−C
1−6−アルコキシよりなる群から個々に選択される1〜3個の置換基により置換されている、C
1−6−アルキル;
よりなる群から選択される]で示される化合物、又は薬学的に許容しうるその塩を提供する。
【0036】
本発明の1つの実施態様は、R
1がクロロである、式(I)の化合物である。
【0037】
本発明の1つの実施態様は、R
2が、非置換ヘテロアリール、非置換アリール、非置換C
3−7−シクロアルキル及び非置換C
1−6−アルキルよりなる群から選択される、式(I)の化合物である。
【0038】
本発明の1つの実施態様は、R
2が、ピリジニル、ピラジニル、フェニル、シクロペンチル、イソプロピル及びsec−ブチルから選択される、式(I)の化合物である。
【0039】
本発明の1つの実施態様は、R
2が、ピリジン−2−イル、ピラジン−2−イル、フェニル、シクロペンチル、イソプロピル及びsec−ブチルから選択される、式(I)の化合物である。
【0040】
本発明の1つの実施態様は、R
2がヘテロアリールである、式(I)の化合物である。
【0041】
本発明の1つの実施態様は、R
2がピリジニルである、式(I)の化合物である。
【0042】
本発明の1つの実施態様は、R
2がピラジニルである、式(I)の化合物である。
【0043】
本発明の1つの実施態様は、R
2がアリールである、式(I)の化合物である。
【0044】
本発明の1つの実施態様は、R
2がフェニルである、式(I)の化合物である。
【0045】
本発明の1つの実施態様は、R
2がC
3−7−シクロアルキルである、式(I)の化合物である。
【0046】
本発明の1つの実施態様は、R
2がシクロペンチルである、式(I)の化合物である。
【0047】
本発明の1つの実施態様は、R
2がC
1−6−アルキルである、式(I)の化合物である。
【0048】
本発明の1つの実施態様は、R
2がイソプロピルである、式(I)の化合物である。
【0049】
本発明の1つの実施態様は、R
2がsec−ブチルである、式(I)の化合物である。
【0050】
本発明の1つの実施態様は、以下:
8−クロロ−1−(4−イソプロポキシ−シクロヘキシル)−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン、
1−(4−sec−ブトキシ−シクロヘキシル)−8−クロロ−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン、
8−クロロ−1−(4−シクロペンチルオキシ−シクロヘキシル)−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン、
8−クロロ−1−(4−フェノキシ−シクロヘキシル)−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン、
8−クロロ−1−[4−(ピリジン−2−イルオキシ)−シクロヘキシル]−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン、及び
8−クロロ−1−[4−(ピラジン−2−イルオキシ)−シクロヘキシル]−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン、
よりなる群から選択される、式(I)の化合物、又は薬学的に許容しうるその塩である。
【0051】
本発明の1つの実施態様は、8−クロロ−1−(4−イソプロポキシ−シクロヘキシル)−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレンである、式(I)の化合物である。
【0052】
本発明の1つの実施態様は、1−(4−sec−ブトキシ−シクロヘキシル)−8−クロロ−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレンである、式(I)の化合物である。
【0053】
本発明の1つの実施態様は、8−クロロ−1−(4−シクロペンチルオキシ−シクロヘキシル)−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレンである、式(I)の化合物である。
【0054】
本発明の1つの実施態様は、8−クロロ−1−(4−フェノキシ−シクロヘキシル)−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレンである、式(I)の化合物である。
【0055】
本発明の1つの実施態様は、8−クロロ−1−[4−(ピリジン−2−イルオキシ)−シクロヘキシル]−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレンである、式(I)の化合物である。
【0056】
本発明の1つの実施態様は、8−クロロ−1−[4−(ピラジン−2−イルオキシ)−シクロヘキシル]−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレンである、式(I)の化合物である。
【0057】
本発明の1つの実施態様は、本明細書中に記載のとおりの式(I)の化合物の合成方法であって、式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させることにより、式(I)の化合物にすることを含む方法である:
【0058】
【化3】
[式中、R
1及びR
2は、本明細書中と同義である]。
【0059】
本発明の1つの実施態様は、本明細書中と同義の方法により調製される、式(I)の化合物である。
【0060】
本発明の1つの実施態様は、治療活性物質として使用するための式(I)の化合物である。
【0061】
本発明の1つの実施態様は、V1a受容体拮抗作用に関連する、疾患及び障害の治療的及び/又は予防的処置用の治療活性物質として使用するための、式(I)の化合物である。
【0062】
本発明の1つの実施態様は、月経困難症、男性又は女性の性的機能不全、高血圧、慢性心不全、バソプレシンの分泌異常、肝硬変、ネフローゼ症候群、不安、抑鬱障害、強迫性障害、自閉症スペクトル障害、統合失調症、及び攻撃的行動の症状において末梢及び中枢に作用する治療活性物質として使用するための、式(I)の化合物である。
【0063】
本発明の1つの実施態様は、本明細書中に記載のとおりの式(I)の化合物、並びに薬学的に許容しうる担体及び/又は薬学的に許容しうる補助物質を含む、医薬組成物である。
【0064】
本発明の1つの実施態様は、月経困難症、男性又は女性の性的機能不全、高血圧、慢性心不全、バソプレシンの分泌異常、肝硬変、ネフローゼ症候群、不安、抑鬱障害、強迫性障害、自閉症スペクトル障害、統合失調症、及び攻撃的行動の症状において末梢及び中枢に作用する医薬の製造のための、本明細書中に記載のとおりの式(I)の化合物の使用を提供する。
【0065】
本発明の1つの実施態様は、月経困難症、男性又は女性の性的機能不全、高血圧、慢性心不全、バソプレシンの分泌異常、肝硬変、ネフローゼ症候群、不安、抑鬱障害、強迫性障害、自閉症スペクトル障害、統合失調症、及び攻撃的行動の症状において末梢及び中枢に作用する、本明細書中に記載のとおりの化合物の使用方法であって、該式(I)の化合物をヒト又は動物に投与することを含む方法を提供する。
【0066】
更に、本発明は、式(I)の化合物の全ての光学異性体、即ち、ジアステレオ異性体、ジアステレオマー混合物、ラセミ混合物、全てのこれらの対応するエナンチオマー及び/又は互変異性体、更にはこれらの溶媒和物を包含する。
【0067】
式(I)の化合物は、1個以上の不斉中心を含有してもよく、そしてそのため、ラセミ体、ラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして存在することができる。分子上の種々の置換基の性質に応じて、追加の不斉中心が存在してもよい。それぞれこのような不斉中心は、独立に2個の光学異性体を生み出し、そして混合物、及び純粋な化合物又は部分精製化合物としての、全てのあり得る光学異性体及びジアステレオマーは、本発明に包含されることを目的とする。本発明は、これらの化合物の全てのこのような異性体を包含するものである。これらのジアステレオマーの独立合成法又はこれらのクロマトグラフィー分離法は、本明細書に開示される方法の適切な変法により、当該分野において知られているように達成できる。これらの絶対立体化学は、必要に応じて、既知の絶対立体配置の不斉中心を含有する試薬で誘導体化される、結晶性生成物又は結晶性中間体のX線結晶学により測定することができる。所望であれば、本化合物のラセミ混合物は、個々のエナンチオマーが単離できるように分離してもよい。この分離は、エナンチオマーとして純粋な化合物に化合物のラセミ混合物をカップリングさせて、ジアステレオマー混合物を形成し、続いて分別結晶法又はクロマトグラフィーのような標準法により個々のジアステレオマーを分離するというような、当該分野において周知の方法により実施することができる。
【0068】
これは、特に式(I)の化合物のアルキルシクロヘキシルエーテル−頭部基(HG)、即ち、下記式:
【化4】
[式中、少なくとも炭素原子1及び4は、不斉炭素原子であり、そしてR
2は、更に不斉炭素原子を含むこともある]で示される基に当てはまる。当然のことながら、本発明は、全ての個々の頭部基の立体異性体及びこれらの混合物を包含する。
【0069】
これらの頭部基HGの例は、以下に描かれるが、具体例はHG−4である。
【0070】
【化5】
【0071】
更に当然のことながら、本明細書中に記載されるとおりの本発明の全ての実施態様は、互いに組合せることができる。
【0072】
光学的に純粋なエナンチオマーが提供される実施態様において、光学的に純粋なエナンチオマーとは、この化合物が>90重量%の所望の異性体、特に>95重量%の所望の異性体、又は更に特定して>99重量%の所望の異性体を含有することを意味する(該重量パーセントは化合物の異性体の総重量に基づく)。キラルとして純粋な化合物又はキラル濃縮化合物は、キラル選択的合成法によるか、又はエナンチオマーの分離により調製することができる。エナンチオマーの分離は、最終生成物で、あるいは適切な中間体で実施することができる。
【0073】
式(I)の化合物は、以下のスキームにより調製することができる。出発物質は、市販されているか、又は既知の方法により調製することができる。任意の前記と同義の残基及び変数は、特に断りない限り前記の意味を持ち続ける。
【0074】
式(I)の化合物は、例えば以下のスキームに例証されるような、幾つかの合成経路により調製することができる。本発明の式(I)の化合物の調製は、逐次又は収束合成経路で実施することができる。本発明の化合物の合成は、以下のスキームに示される。本反応及び生じる生成物の精製を実施するのに必要な技能は、当業者には知られている。以下の製造法の説明に使用される置換基及び指数は、特に断りない限り、本明細書に前記の意味を有する。
【0075】
更に詳細には、式(I)の化合物は、後述の方法によるか、実施例に与えられる方法によるか、又は類似の方法によって、製造することができる。個々の反応工程に適切な反応条件は、当業者には知られている。反応順序は、後述のスキームに表示されるものに限定されず、出発物質及びこれらそれぞれの反応性に応じて、反応工程の順序は自由に変更できる。出発物質は、市販されているか、あるいは後述の方法と類似の方法によるか、説明中又は実施例中に引用される文献に記載される方法によるか、又は当該分野において既知の方法により、調製することができるかのいずれかである。
【0076】
ある種の実施態様において、本発明の式(I)の化合物は、式(II):
【化6】
で示される化合物を、式(III):
【化7】
で示される化合物と反応させることにより、式(I)[式中、R
1及びR
2は、式(I)に関しての本明細書中と同義である]の化合物が得られる工程を含む方法によって、製造することができる。
【0077】
本方法は、以下の一般スキーム及び手順A〜Gにより更に詳細に記述される。
【0078】
【化8】
【0079】
式(I)の化合物は、式(II)のヒドラジド誘導体と式(III)のチオラクタム誘導体との熱縮合により調製することができる。式(II)の化合物の合成は、本明細書に後述の一般スキームC〜Gに略述される。式(III)の化合物は、本明細書に後述されるように一般スキームBにより調製することができる。一般スキームAは、一般手順Vにより本明細書中に後で更に例証される。
【0080】
【化9】
【0081】
式(III-1)のチオラクタム誘導体は、以下のとおり得ることができる:式(b)のブロモアセトアミド(BrCOCH
2Br)への式(a)の2−アミノベンジルアルコールのアシル化は、ショッテン・バウマン(Schotten-Baumann)条件(二相性水性塩基性条件、例えば、炭酸ナトリウム水溶液(Na
2CO
3水溶液))下で定量的収率で達成できる。低温で2−プロパノール(2−PrOH)中でカリウムtert−ブトキシド(KOtBu)による式(b)の化合物の環化によって、式(c)の化合物が得られる。式(III)のチオラクタム誘導体は、式(c)の化合物を高温で適切な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF))中ローソン(Lawesson's)試薬(2,4−ビス−(4−メトキシフェニル)−1,3,2,4−ジチアジホスフェタン−2,4−ジスルフィド)又は五硫化二リンで処理することによって得られる。
【0082】
【化10】
【0083】
式(VII-1)の4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体は、以下のとおり還元的エーテル化により得ることができる:4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル(IV)は、当該分野において既知のO−シリル化法により、例えば、イミダゾール又は2,6−ルチジンのような塩基の存在下で、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)又はジクロロメタン(CH
2Cl
2)のような適切な溶媒中で、塩化トリメチルシリル(TMSCl)又はトリメチルシリルトリフラート(TMSOTf)のようなシリル化剤での処理により、4−トリメチルシラニルオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル(V)に変換される。ジクロロメタン中トリメチルシリルトリフラート及びトリエチルシラン(Et
3SiH)のような還元剤での、4−トリメチルシラニルオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル(V)及び式(VI)のケトン又はアルデヒドの連続処理により、室温(RT)で式(VII-1)の4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体が得られる。式(VII-1)の化合物は、通常cis−及びtrans−異性体の混合物として得られ、そしてこれはある場合には、クロマトグラフィーで分離することにより、純粋な式(VII-1a)のtrans−4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル及び式(VII-1b)のcis−4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルを得ることができる。一般スキームCは、一般手順Iにより本明細書中に後で更に例証される。
【0084】
【化11】
【0085】
あるいは、式(VII-1)の4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体は、以下のとおり還元的エーテル化により得ることができる:ジクロロメタン中トリメチルシリルトリフラート及びトリエチルシランのような還元剤での、式(IX)のアルコキシ−トリメチル−シラン及び4−シクロヘキサノンカルボン酸エチルエステル(X)の連続処理により、式(VII-1)の4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体が得られる。式(VII-1)の化合物は、通常cis−及びtrans−異性体の混合物として得られ、そしてこれはある場合には、クロマトグラフィーで分離することにより、純粋な式(VII-1a)のtrans−4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル及び式(VII-1b)のcis−4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルを得ることができる。式(IX)のアルコキシ−トリメチル−シラン誘導体は、市販されているか、あるいは当該分野において既知のO−シリル化法を用いて、例えば、イミダゾール又は2,6−ルチジンのような塩基の存在下で、N,N−ジメチルホルムアミド又はジクロロメタンのような適切な溶媒中で、塩化トリメチルシリル又はトリメチルシリルトリフラートのようなシリル化剤で一般式(VIII)のアルコールを処理することにより調製されるかのいずれかである。あるいは、式(IX)のアルコキシ−トリメチル−シラン誘導体は、一般式(VIII)のアルコールをジクロロメタン中トリメチルシリルトリフラート及び2,6−ルチジンで処理することにより、4−シクロヘキサノンカルボン酸エチルエステル(X)での還元的エーテル化工程の前に単離することなくその場で調製することができる。一般スキームDは、一般手順IIA及びIIBにより本明細書中に後で更に例証される。
【0086】
【化12】
【0087】
Mitsunobu条件(アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)及びトリフェニルホスフィン(PPh
3))下での式(XI)のフェノール誘導体による式(IV)の4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルのエーテル化により、立体配置の反転下で式(VII-2)の4−アリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルが得られる。即ち、式(IV-a)のcis−4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルから式(VII-2a)のtrans−4−アリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルが得られ、一方式(IV-b)のtrans−4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルから式(VII-2b)のcis−4−アリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルが得られる。一般スキームEは、一般手順IIIAにより本明細書中に後で更に例証される。
【0088】
【化13】
【0089】
式(VII-3)の化合物(R
2がヘテロアリールである、式(VII)の化合物)は、式(IV)の4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル及び式(XII)のヘテロアリール塩化物から、触媒量又は化学量論量のメタンスルフィン酸ナトリウム及び炭酸カリウム(K
2CO
3)のような塩基の存在下でジメチルホルムアミド(DMF)中120℃で、あるいはヨウ化第一銅(CuI)及び1,10−フェナントロリンから形成される触媒系並びに炭酸セシウム(Cs
2CO
3)のような塩基の存在下でトルエン中還流下で調製することができる。一般スキームFは、一般手順IIIB及びIIICにより本明細書中に後で更に例証される。
【0090】
【化14】
【0091】
式(VII)の4−アルコキシ−又はアリールオキシシクロヘキサンカルボン酸エステルは、n−ブタノール(n−BuOH)のような適切な溶媒中でヒドラジン水和物と共に加熱することにより、式(II)のヒドラジド誘導体に変換することができる。あるいは、式(VII)のエステル誘導体は、水酸化ナトリウム又はカリウム水溶液(NaOH又はKOH)とジオキサンのようなエーテル系溶媒との二相混合物を使用して、式(XIII)のカルボン酸誘導体に加水分解することができる。式(II)のヒドラジド誘導体は、式(XIII)の酸中間体を、例えば、クロロギ酸エチル、塩化チオニル、塩化オキサリル又はアミドカップリング試薬(トリエチルアミン(Et
3N)など)で活性化し、続いてヒドラジンとカップリングすることにより得ることができる。一般スキームGは、一般手順IVにより本明細書中に後で更に例証される。
【0092】
対応する薬学的に許容しうる酸との塩は、当業者には既知の標準法により、例えば、式(I)の化合物を適切な溶媒(例えば、ジオキサン又はTHFなど)に溶解して、適量の対応する酸を加えることにより得ることができる。生成物は、濾過によるか、又はクロマトグラフィーにより、通常単離することができる。薬学的に許容しうる塩基との塩への式(I)の化合物の変換は、かかる化合物をかかる塩基で処理することにより実施できる。かかる塩を形成するための1つの見込まれる方法は、例えば、適切な溶媒(例えば、エタノール、エタノール−水混合物、テトラヒドロフラン−水混合物)中の化合物の溶液への1/n当量の塩基性塩(例えば、M(OH)
n(式中、M=金属又はアンモニウムカチオンであり、そしてn=水酸化物アニオンの数である)など)の添加、そして、蒸発又は凍結乾燥により溶媒を除去するものである。特定の塩は、塩酸塩、ギ酸塩及びトリフルオロ酢酸塩である。
【0093】
その調製法が実施例に記載されない限り、式(I)の化合物、更には全ての中間体生成物は、類似法によるか、又は本明細書に記載される方法により調製できる。出発物質は、市販されているか、当該分野において既知であるか、又は当該分野において既知の方法によるか、若しくはそれと同様に調製することができる。
【0094】
当然のことながら、本発明における一般式(I)の化合物は、インビボで親化合物に変換して戻すことができる誘導体を提供するために官能基で誘導体化することができる。
【0095】
薬理学的試験
ヒトV1a受容体は、全ヒト肝臓RNAからRT−PCRによりクローン化した。コード配列は、増幅配列の同一性を確認するための配列決定後に発現ベクターにサブクローン化した。ヒトV1a受容体への本発明の化合物の親和性を証明するために、結合試験を実施した。発現ベクターで一時的にトランスフェクトしたHEK293細胞から細胞膜を調製して、以下のプロトコールにより20リットル発酵槽で増殖させた。
【0096】
50gの細胞を30mlの新たに調製した氷冷Lysis緩衝液(50mM HEPES、1mM EDTA、10mM MgCl
2(pH=7.4に調整)+プロテアーゼインヒビターのコンプリートカクテル(Roche Diagnostics))に再懸濁する。Polytronで1分間ホモジナイズして、氷上で2×2分間80%の強度で超音波処理する(Vibracell超音波発生装置)。この調製物を500gで20分間4℃で遠心分離し、ペレットを廃棄し、上清を43,000gで1時間4℃で遠心分離する(19,000rpm)。ペレットを、12.5mlのLysis緩衝液+12.5mlショ糖20%に再懸濁して、Polytronを用いて1〜2分間ホモジナイズする。タンパク質濃度を、Bradford法により求めて、使用まで−80℃でアリコートを保存する。結合試験には、60mgのケイ酸イットリウムSPAビーズ(Amersham)を結合緩衝液(50mM Tris、120mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl
2、10mM MgCl
2)中で膜のアリコートとミキシングにより15分間混合する。次に50μlのビーズ/膜混合物を96ウェルプレートの各ウェルに加え、続いて50μlの4nM 3H−バソプレシン(American Radiolabeled Chemicals)を加える。全結合測定には100μlの結合緩衝液をそれぞれのウェルに加え、非特異的結合には100μlの8.4mM冷バソプレシンを、そして化合物試験には100μlの2% DMSO中の各化合物の連続希釈液を加える。プレートを室温で1時間インキュベートし、1000gで1分間遠心分離して、Packard Top-Countでカウントする。非特異的結合のカウントを各ウェルから差し引き、そしてデータは100%と設定した最大特異的結合に対して正規化する。IC
50を算出するために、非線形回帰モデル(XLfit)を用いて曲線をフィットさせ、そしてKiはCheng-Prussoff式を用いて算出する。
【0097】
以下の代表的データは、本発明の化合物のヒトV1a受容体に対する拮抗作用を示す:
【0098】
【表1】
【0099】
医薬組成物
式(I)の化合物及び薬学的に許容しうる塩は、治療活性物質として、例えば、製剤の形で使用することができる。この製剤は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の剤形で、経口投与することができる。しかし投与はまた、例えば、坐剤の剤形で直腸内に、又は例えば、注射液の剤形で非経口的に達成することができる。
【0100】
式(I)の化合物及び薬学的に許容しうるその塩は、製剤の製造のために薬学的に不活性な無機又は有機担体と共に加工することができる。乳糖、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などは、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤用のこのような担体として使用できる。軟ゼラチンカプセル剤に適切な担体は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体及び液体ポリオールなどである。しかし活性物質の性質に応じて、軟ゼラチンカプセル剤の場合には通常担体を必要としない。液剤及びシロップ剤の製造に適切な担体は、例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油などである。坐剤に適切な担体は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪、半液体又は液体ポリオールなどである。
【0101】
本製剤は更に、保存料、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、香味料、浸透圧を変えるための塩、緩衝化剤、マスキング剤又は酸化防止剤のような、薬学的に許容しうる補助物質を含有することができる。これらはまた、更に他の治療有用物質を含有することができる。
【0102】
式(I)の化合物又は薬学的に許容しうるその塩及び治療上不活性な担体を含有する医薬もまた、本発明により提供され、同様に、1種以上の式(I)の化合物及び/又は薬学的に許容しうるその塩、及び必要に応じて1種以上の他の治療有用物質を、1種以上の治療上不活性な担体と一緒にガレヌス製剤の投与剤形にすることを含むこれらの製造方法も提供される。
【0103】
用量は、広い範囲内で変化させることができ、そして当然、各特定例における個々の要求で調整されなければならない。経口投与の場合に、成人の用量は、1日に約0.01mg〜約1000mgの一般式(I)の化合物、又は対応する量の薬学的に許容しうるその塩で変化させることができる。1日用量は、単回用量として、又は分割用量にして投与してもよく、そして更に、上限はまた、適応があると認められるときにはこれを超えることができる。
【0104】
以下の実施例は、本発明を限定することなく例証するものであるが、単にその代表例として役立つ。本製剤は、便利には約1〜500mg、特に1〜100mgの式(I)の化合物を含有する。本発明の組成物の例は以下である:
【0105】
実施例A
以下の組成の錠剤を常法で製造する:
【0106】
【表2】
【0107】
製造手順
1. 成分1、2、3及び4を混合して、精製水で造粒する。
2. 顆粒を50℃で乾燥する。
3. 顆粒を適切な粉砕装置に通す。
4. 成分5を加えて、3分間混合する;適切なプレス機で打錠する。
【0108】
実施例B−1
以下の組成のカプセル剤を製造する:
【0109】
【表3】
【0110】
製造手順
1. 成分1、2及び3を適切なミキサーで30分間混合する。
2. 成分4及び5を加えて、3分間混合する。
3. 適切なカプセルに充填する。
【0111】
式(I)の化合物、乳糖及びトウモロコシデンプンは最初にミキサーで、次に粉砕機で混合する。この混合物をミキサーに戻す;タルクをここに加え、充分に混合する。この混合物を機械で適切なカプセル、例えば、硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0112】
実施例B−2
以下の組成の軟ゼラチンカプセル剤を製造する:
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
製造手順
式(I)の化合物を他の成分の温溶融液に溶解して、この混合物を適切なサイズの軟ゼラチンカプセルに充填する。充填した軟ゼラチンカプセルは、常法により処理する。
【0116】
実施例C
以下の組成の坐剤を製造する:
【0117】
【表6】
【0118】
製造手順
坐剤基剤はガラス又はスチール容器中で溶融し、充分に混合して45℃に冷却する。その後すぐに、微粉化した式(I)の化合物をここに加えて、完全に分散するまで撹拌する。この混合物を適切なサイズの坐剤成形型に注ぎ入れ、冷却させる;次に坐剤を成形型から取り出し、個々にロウ紙又は金属箔に包装する。
【0119】
実施例D
以下の組成の注射液を製造する:
【0120】
【表7】
【0121】
製造手順
式(I)の化合物をポリエチレングリコール400及び注射用水(一部)の混合物に溶解する。酢酸によりpHを5.0に調整する。残量の水の添加により容量を1.0mlに調整する。この溶液を濾過し、適切な過剰量を用いてバイアルに充填して滅菌する。
【0122】
実施例E
以下の組成のサッシェ剤を製造する:
【0123】
【表8】
【0124】
製造手順
式(I)の化合物を乳糖、微結晶セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムと混合して、水中のポリビニルピロリドンの混合物により造粒する。この顆粒をステアリン酸マグネシウム及び香味添加剤と混合してサッシェに充填する。
【0125】
実験の部
以下の実施例は、本発明の例証のために提供される。これらは本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明を代表するものと考えるべきである。
【0126】
式(V)の中間体
cis/trans−4−トリメチルシラニルオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(2:1)
N,N−ジメチルホルムアミド(90ml)中のcis/trans−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(2:1)(5.0g、29mmol)及びイミダゾール(4.4g、64mmol)の溶液に、塩化トリメチルシリル(4.0ml、32mmol)を0〜5℃で加えた。室温で1時間撹拌し、次にtert−ブチルメチルエーテル(300ml)と水(150ml)とに分液した。層を分離した。有機層を2部の150mlの水及び1部の50mlの食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、真空下で濃縮することにより、標題化合物(6.7g、94%)を無色の油状物として得た。MS m/e:245([M+H]
+)。
【0127】
式(VII-1)の4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル中間体
還元的エーテル化
一般手順I:
ジクロロメタン中のcis/trans−4−トリメチルシラニルオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(2:1)の溶液(0.1M)に、式(VI)のケトン又はアルデヒド(0.85当量)及びトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(0.10当量)を−78℃で連続して加える。この反応混合物を1時間撹拌する。トリエチルシラン(1当量)の添加後、冷却浴を取り外して、反応混合物が室温まで温まるのを待つ。撹拌は一晩続ける。この混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチする。層を分離する。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して真空下で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、式(VII-1)の4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル中間体を得る。
【0128】
一般手順IIA:
式(IX)のアルコキシ−トリメチル−シラン中間体は、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(1当量)を、ジクロロメタン中の式(VIII)のアルコール誘導体(1当量)及び2,6−ルチジン(1当量)の溶液(0.1M)に−78℃で加えることにより、その場で形成する。1時間後、式(X)の4−シクロヘキサノンカルボン酸エステル(0.85当量)及びトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(0.1当量)を連続して加える。この反応混合物を1時間撹拌する。トリエチルシラン(2当量)の添加後、冷却浴を取り外して、反応混合物が室温まで温まるのを待つ。撹拌は一晩続ける。この混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチする。層を分離する。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して真空下で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、式(VII-1)の4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル中間体を得る。
【0129】
一般手順IIB:
市販されているか、又は当該分野で既知の方法により調製できる、式(IX)のトリメチルシリルオキシ中間体をジクロロメタンに溶解する(0.1M)。式(X)の4−シクロヘキサノンカルボン酸エステル(0.85当量)及びトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(0.1当量)を−78℃で連続して加える。この反応混合物を1時間撹拌する。トリエチルシラン(2当量)の添加後、冷却浴を取り外して、反応混合物が室温まで温まるのを待つ。撹拌は一晩続ける。この混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチする。層を分離する。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して真空下で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、式(VII-1)の4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル中間体を得る。
【0130】
4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル1
trans−4−イソプロポキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル
trans−4−イソプロポキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステルは、アセトンから一般手順Iにより、フラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製後に、無色の油状物として収率23%で得た。MS m/e:214(M
+)
【0131】
4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル2
(RS)−trans−4−sec−ブトキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル
(RS)−trans−4−sec−ブトキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステルは、2−ブタノンから一般手順Iにより、フラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製後に、無色の油状物として収率22%で得た。MS(EI) m/e:228(M
+,1%)、199([M−C
2H
5]
+,6%)、155([M−C
4H
9O]
+,100%)
【0132】
4−アルコキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル3
trans−4−シクロペンチルオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル
trans−4−シクロペントキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステルは、シクロペンタノンから一般手順Iにより、フラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製後に、無色の油状物として収率22%で得た。MS(EI) m/e:240(M
+,1%)、155([M−C
5H
9O]
+,30%)
【0133】
式(VII-2)及び(VII-3)の4−アリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル中間体
一般手順IIIA:Mitsunobu条件下のエーテル化
無水テトラヒドロフラン中のトリフェニルホスフィン(1.2当量)の溶液(0.1M)に、アゾジカルボン酸ジエチル(1.2当量)を0℃で加える。20分後、式(XI)のフェノール誘導体(1.2当量)及びテトラヒドロフラン中の式(IV)の4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルの溶液(1〜3M)を5℃で連続して加える。添加終了後、冷却浴を取り外して、反応混合物が室温まで温まるのを待ち、そして3〜18時間撹拌する。溶媒を留去して、残渣を酢酸エチルに溶解する。この酢酸エチル溶液を1〜2部の1M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄する。水層は1〜2部の酢酸エチルで抽出する。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して真空下で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、式(VII-2)の4−アリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルを得る。
【0134】
一般手順IIIB:メタンスルフィン酸ナトリウム介在性アリール化
無水N,N−ジメチルホルムアミド中の式(IV)の4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル(1当量)及び式(XII)のヘテロアリール塩化物誘導体(1当量)の溶液(1M)に、メタンスルフィン酸ナトリウム(85%、0.25〜1当量)及び炭酸カリウム(1.5当量)を連続して加える。添加終了後、反応混合物を120℃で3〜18時間撹拌する。室温まで冷却後、反応混合物をtert−ブチルメチルエーテルと水とに分液する。層を分離して、水層を1〜2部のtert−ブチルメチルエーテルで抽出する。合わせた有機層を1〜2部の水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して真空下で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、式(VII-3)の4−ヘテロアリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルを得る。
【0135】
一般手順IIIC:銅触媒アリール化
トルエン中のヨウ化第一銅(0.1当量)、1,10−フェナントロリン(0.2当量)及び式(XII)のヘテロアリール塩化物誘導体(1当量)の混合物(2M)に、式(IV)の4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル(1当量)及び炭酸セシウム(2当量)を加える。この反応混合物を20時間加熱還流する。室温まで冷却後、反応混合物を酢酸エチルと水とに分液する。層を分離して、水層を1〜2部の酢酸エチルで抽出する。合わせた有機層を1〜2部の0.5M塩化水素水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して真空下で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、式(VII-3)の4−ヘテロアリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルを得る。
【0136】
4−アリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル1
trans−4−フェノキシ−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル
標題化合物は、フェノール及びtrans−4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステルから一般手順IIIAにより、無色の油状物として収率23%で得た。MS m/e:234(M
+)。
【0137】
4−アリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル2
trans−4−(ピリジン−2−イルオキシ)−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル
標題化合物は、2−ヒドロキシピリジン及びtrans−4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステルから一般手順IIIAにより、明赤色の固体として収率36%で得た。MS m/e:236([M+H]
+)。
【0138】
4−アリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル3
cis/trans−4−(ピラジン−2−イルオキシ)−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(1:1)
標題化合物は、2−クロロピラジン及びcis/trans−4−ヒドロキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(2:1)から一般手順IIIBにより、白色の固体として収率15%で得た。MS m/e:251([M+H]
+)。
【0139】
式(II)のヒドラジド中間体
一般手順IV:4−アルコキシ−又は4−アリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステルからのヒドラジド形成
n−ブタノール中の式(VII)の4−アルコキシ−又は4−アリールオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エステル(1当量)及びヒドラジン水和物(2〜6当量)の混合物(0.2〜1M)を16〜72時間加熱還流する。室温まで冷却後、反応混合物を酢酸エチル又はジクロロメタンのような有機溶媒と水とに分液する。層を分離して、水層を2部の有機溶媒で抽出する。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して真空下で濃縮することにより、式(II)の粗ヒドラジド誘導体を得るが、これは通常更に精製することなく次の工程に使用することができる。
【0140】
ヒドラジド1
trans−4−イソプロポキシ−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
標題化合物は、trans−4−イソプロポキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステルから一般手順IVにより、オフホワイト色の固体として収率70%で得た。
MS m/e:201([M+H]
+)
【0141】
ヒドラジド2
(RS)−trans−4−sec−ブトキシ−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
標題化合物は、(RS)−trans−4−sec−ブトキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステルから一般手順IVにより、白色の固体として収率93%で得た。
MS(EI) m/e:214(M
+)
【0142】
ヒドラジド3
trans−4−シクロペンチルオキシ−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
標題化合物は、trans−4−シクロペンチルオキシ−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステルから一般手順IVにより、白色の固体として収率80%で得た。
MS(EI) m/e:226(M
+)
【0143】
ヒドラジド4
trans−4−フェノキシ−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
標題化合物は、trans−4−フェノキシ−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステルから一般手順IVにより、白色の固体として定量的収率で得た。
MS m/e:235([M+H]
+)
【0144】
ヒドラジド5
trans−4−(ピリジン−2−イルオキシ)−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
標題化合物は、trans−4−(ピリジン−2−イルオキシ)−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステルから一般手順IVにより、白色の固体として収率96%で得た。
MS m/e:236([M+H]
+)
【0145】
ヒドラジド6
trans−4−(ピラジン−2−イルオキシ)−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
cis/trans−4−(ピラジン−2−イルオキシ)−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(1.11g、4.41mmol)及びヒドラジン水和物(0.442g、8.83mmol)の混合物を120℃で72時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物を酢酸エチル(50ml)と水(30ml)とに分液した。有機層を分離した。水層を2部の50mlの酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を食塩水(30ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して真空下で濃縮した。この粗cis/trans−ヒドラジドを酢酸エチル(5ml)中で粉砕した。沈殿物を濾過により収集して、真空下で乾燥することにより、粗標題化合物(0.236g、23%)を白色の固体として得たが、これは更に精製することなく次の工程に使用した。MS m/e:237([M+H]
+)
【0146】
式(III)のチオラクタム中間体
7−クロロ−3,5−ジヒドロベンゾ[e][1,4]オキサゼピン−2(1H)−チオン
a) 2−ブロモ−N−(4−クロロ−2−(ヒドロキシメチル)フェニル)アセトアミド
ジクロロメタン(220ml)中の(2−アミノ−5−クロロフェニル)メタノール(4.30g、27.3mmol)の溶液に、0〜5℃で臭化2−ブロモアセチル(6.06g、2.61ml、30.0mmol)を加えた。5分間撹拌後、2M炭酸ナトリウム水溶液(130ml)をおよそ10分間かけて滴下により加えた。冷却浴を取り外して、撹拌を2時間続けた。真空下で溶媒を除去した。水性残渣を3部の100mlの酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を1部の50mlの食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して真空下で濃縮することにより、標題化合物(7.30g、96%)を明灰色の固体として得たが、これは精製することなく次の工程に使用した。MS m/e:276([M+H]
+)
【0147】
b) 7−クロロ−3,5−ジヒドロベンゾ[e][1,4]オキサゼピン−2(1H)−オン
2−プロパノール(129ml)中の2−ブロモ−N−(4−クロロ−2−(ヒドロキシメチル)フェニル)アセトアミド(3.60g、12.9mmol)の懸濁液に、0〜5℃でカリウムtert−ブトキシド(3.77g、33.6mmol)を少量ずつ加えた。この反応混合物を90分間撹拌し、次に氷/水(500ml)に注ぎ入れた。沈殿物を濾過により収集して水で洗浄した。残留水を2部の50mlのトルエンでの連続留去により除去して、標題化合物(2.34g、92%)を明黄色の固体として得た。MS m/e:196([M−H]
−)。
【0148】
c) 7−クロロ−3,5−ジヒドロベンゾ[e][1,4]オキサゼピン−2(1H)−チオン
テトラヒドロフラン(102ml)中の7−クロロ−3,5−ジヒドロベンゾ[e][1,4]オキサゼピン−2(1H)−オン(3.01g、15.2mmol)の懸濁液に、室温で2,4−ビス−(4−メトキシフェニル)−1,3,2,4−ジチアジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(3.45g、8.53mmol)を加えた。この反応混合物を4時間加熱還流した。室温に冷却後、溶媒を留去して、残渣を熱エタノールから結晶化させることにより、標題化合物(1.96g、60%)を明黄色の固体として得た。MS m/e:211.6([M−H]
−)。
【0149】
一般手順V:トリアゾールへのヒドラジドとチオラクタムとの縮合
n−ブタノール中の式(II)のヒドラジド誘導体(1〜1.5当量)及び式(III)のチオラクタム(1当量)の混合物(0.1〜0.2M)を16〜72時間加熱還流する。室温まで冷却後、溶媒を留去して、残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、式(I)の化合物を得る。
【0150】
実施例1
trans−8−クロロ−1−(4−イソプロポキシ−シクロヘキシル)−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン
標題化合物は、一般手順Vを用いて白色の固体として収率57%で得た。
ヒドラジド: trans−4−イソプロポキシ−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
チオラクタム: 7−クロロ−3,5−ジヒドロベンゾ[e][1,4]オキサゼピン−2(1H)−チオン
MS m/e:362([M+H]
+)
【0151】
実施例2
trans−1−(4−sec−ブトキシ−シクロヘキシル)−8−クロロ−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン
標題化合物は、一般手順Vを用いてオフホワイト色の固体として収率63%で得た。
ヒドラジド: (RS)−trans−4−sec−ブトキシ−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
チオラクタム: 7−クロロ−3,5−ジヒドロベンゾ[e][1,4]オキサゼピン−2(1H)−チオン
MS m/e:376([M+H]
+)
【0152】
実施例3
trans−8−クロロ−1−(4−シクロペンチルオキシ−シクロヘキシル)−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン
標題化合物は、一般手順Vを用いてオフホワイト色の固体として収率72%で得た。
ヒドラジド: trans−4−シクロペンチルオキシ−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
チオラクタム: 7−クロロ−3,5−ジヒドロベンゾ[e][1,4]オキサゼピン−2(1H)−チオン
MS m/e:388([M+H]
+)
【0153】
実施例4
trans−8−クロロ−1−(4−フェノキシ−シクロヘキシル)−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン
標題化合物は、一般手順Vを用いて白色の固体として収率75%で得た。
ヒドラジド: trans−4−フェノキシ−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
チオラクタム: 7−クロロ−3,5−ジヒドロベンゾ[e][1,4]オキサゼピン−2(1H)−チオン
MS m/e:396([M+H]
+)
【0154】
実施例5
trans−8−クロロ−1−[4−(ピリジン−2−イルオキシ)−シクロヘキシル]−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン
標題化合物は、一般手順Vを用いてオフホワイト色の固体として収率71%で得た。
ヒドラジド: trans−4−(ピリジン−2−イルオキシ)−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
チオラクタム: 7−クロロ−3,5−ジヒドロベンゾ[e][1,4]オキサゼピン−2(1H)−チオン
MS m/e:397([M+H]
+)
【0155】
実施例6
trans−8−クロロ−1−[4−(ピラジン−2−イルオキシ)−シクロヘキシル]−4H,6H−5−オキサ−2,3,10b−トリアザ−ベンゾ[e]アズレン
標題化合物は、一般手順Vを用いてオフホワイト色の固体として収率37%で得た。
ヒドラジド: trans−4−(ピラジン−2−イルオキシ)−シクロヘキサンカルボン酸ヒドラジド
チオラクタム: 7−クロロ−3,5−ジヒドロベンゾ[e][1,4]オキサゼピン−2(1H)−チオン
MS m/e:398([M+H]
+)