(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されず、車両の駐車時に用いられる駐車バネブレーキ機構を有するブレーキ装置に用いられ、駐車バネブレーキ機構の作動状態を検知する、駐車ブレーキ作動状態検知装置に関して、広く適用することができるものである。また、本発明は、その駐車ブレーキ作動状態検知装置を備えるブレーキ装置に関して、広く適用することができるものである。
【0024】
尚、本実施形態の駐車ブレーキ作動状態検知装置及びブレーキ装置については、鉄道車両用として用いられる場合を例にとって説明する。また、本実施形態では、ブレーキ装置が踏面ブレーキ装置として構成された形態を例にとって説明するが、この通りでなくてもよい。即ち、本発明は、踏面ブレーキ装置以外のブレーキ装置に対しても適用することができる。例えば、本発明は、ディスクブレーキ装置として構成されたブレーキ装置に対しても適用することができる。
【0025】
(第1実施形態)
[ブレーキ装置]
図1は、本発明の第1実施形態に係るブレーキ装置1の一部断面を含む図である。
図1に示すブレーキ装置1には、本発明の第1実施形態に係る駐車ブレーキ作動状態検知装置3が設置されている。また、
図2は、駐車ブレーキ作動状態検知装置3が付加されていない既存のブレーキ装置1aの一部断面を含む図である。
図3は、
図1に示すブレーキ装置1の一部を拡大して示す図であって、ブレーキ装置1に設けられるブレーキシリンダ装置2を示す図である。
図1及び
図3に示すブレーキ装置1、
図2に示すブレーキ装置1aは、図示が省略された鉄道車両(本実施形態における車両)に設置される。尚、
図1は、ブレーキ装置1が鉄道車両に設置された状態で、鉄道車両の車輪100の車軸方向からブレーキ装置1を見た図である。同様に、
図2は、ブレーキ装置1aが鉄道車両に設置された状態で、鉄道車両の車輪100の車軸方向からブレーキ装置1aを見た図である。
【0026】
ブレーキ装置1及びブレーキ装置1aは、踏面ブレーキ装置として構成されている。そして、
図2に示す既存のブレーキ装置1aに対して、駐車ブレーキ作動状態検知装置3が新たに設置されて付加されることで、
図1及び
図3に示すブレーキ装置1が構成される。また、
図1及び
図3に示すように、ブレーキ装置1には、ブレーキシリンダ装置2が設けられている。一方、
図2に示すように、ブレーキ装置1aには、ブレーキシリンダ装置2aが設けられている。
【0027】
ブレーキ装置1のブレーキシリンダ装置2は、ブレーキ装置1aのブレーキシリンダ装置2aと同様に構成されている。しかし、ブレーキシリンダ装置2は、駐車ブレーキ作動状態検知装置3が設けられている点において、ブレーキシリンダ装置2aとは異なっている。即ち、
図2に示す既存のブレーキシリンダ装置2aに対して、駐車ブレーキ作動状態検知装置3が新たに設置されて付加されることで、
図1及び
図3に示すブレーキシリンダ装置2が構成される。尚、ブレーキシリンダ装置2aに対して駐車ブレーキ作動状態検知装置3が付加される際には、ブレーキシリンダ装置2aのカバー(既存のカバー)23aが取り外される(
図2を参照)。そして、ブレーキシリンダ装置2aに対して、カバー23aの替わりに、カバー60を含む駐車ブレーキ作動状態検知装置3が設置される。これにより、ブレーキシリンダ装置2が構成されることになる。
【0028】
尚、上記においては、既存のブレーキ装置1aに対して駐車ブレーキ作動状態検知装置3が新たに設置されることで、ブレーキ装置1が構成される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。既存のブレーキ装置1aに対する駐車ブレーキ作動状態検知装置3の付加ではなく、駐車ブレーキ作動状態検知装置3が既に付加されたブレーキ装置1が新設される形態が実施されてもよい。
【0029】
以下、ブレーキ装置1について詳しく説明する。尚、
図2に示すブレーキ装置1aは、前述のように、駐車ブレーキ作動状態検知装置3が設けられておらずにカバー23aが設けられている点のみにおいて、ブレーキ装置1と異なっている。このため、ブレーキ装置1aについては、ブレーキ装置1と共通する構成要素について図面において同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0030】
図1及び
図3に示すように、ブレーキ装置1は、ブレーキシリンダ装置2、ブレーキ出力部11、ロッド12、ロッド支持機構13、ロッド駆動部14、等を備えて構成されている。そして、ブレーキ装置1は、ブレーキシリンダ装置2が作動することで、ブレーキシリンダ装置2に対して相対移動可能に支持されたブレーキ出力部11が、ロッド駆動部14及びロッド12を介して駆動され、ブレーキ力を出力するように構成されている。
【0031】
尚、ロッド12は、車輪100の車軸方向に対して直交する方向に沿って延びるように設置されている。一方、ブレーキシリンダ装置2は、そのシリンダ本体23及びカバー60の軸方向が、ロッド12が延びる方向に対して略直交する方向に沿って延びるように、設置されている。そして、本実施形態では、ブレーキシリンダ装置2は、そのシリンダ本体23及びカバー60の軸方向が、車輪100が設けられる鉄道車両の上下方向に沿って延びるように、設置されている。
【0032】
ブレーキ出力部11は、制輪子として設けられ、ブレーキ出力部11は、ロッド12に連動して駆動されてブレーキ力を出力するように設けられている。そして、ブレーキ出力部11は、ライニング15、ライニング保持部16、等を備えて構成されている。
【0033】
ライニング15には、車輪100の踏面100aに対して当接可能な制動面15aが設けられている。ブレーキ出力部11がロッド12によって駆動されることで、ライニング15の制動面15aが車輪100の踏面100aに当接して押し付けられる。そして、制動面15aが踏面100aに押し付けられることによって生じる摩擦により、車輪100の回転が制動される。
【0034】
ライニング保持部16は、ライニング15が固定され、ライニング15を保持する部材として設けられている。また、ライニング保持部16は、ロッド12の先端側の端部に対して、揺動自在に連結されている。尚、ロッド12の先端側は、ブレーキシリンダ装置2のシリンダ本体23から突出した状態で配置されている。また、ライニング保持部16は、シリンダ本体23に対して揺動自在に連結されたハンガー部材17に対しても揺動可能に連結されている。
【0035】
ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2の作動に伴って駆動され、ブレーキシリンダ装置2からの出力をブレーキ出力部11に伝達する軸部材として設けられている。ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2がブレーキ力を出力する際の作動に伴って、シリンダ本体23から突出する方向(
図3にて矢印Aで示す方向)に移動する。これにより、ロッド12は、ライニング15を車輪100に押し付けてブレーキ力を発生させる。また、ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2がブレーキ力を解除する際の作動に伴ってシリンダ本体23に退避する方向(
図3にて矢印Bで示す方向)に移動する。これにより、ロッド12は、ライニング15を車輪100から離間させてブレーキ力を解除する。
【0036】
また、ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2における後述の流体ブレーキ機構24の作動によって、
図3の矢印A方向に移動する。更に、ロッド12は、ブレーキシリンダ装置2における後述の駐車バネブレーキ機構25の作動に伴って付勢されることが可能に構成されている。尚、本実施形態のブレーキシリンダ装置2においては、駐車バネブレーキ機構25の作動は、流体ブレーキ機構24が作動したまたままの状態で行われる。そして、駐車バネブレーキ機構25が一旦作動した状態では、流体ブレーキ機構24の作動の状態によらず、ロッド12は、駐車バネブレーキ機構25からの付勢力によって付勢される状態が維持されることになる。
【0037】
ロッド支持機構13は、シリンダ本体23の内部に設置されている。このロッド支持機構13は、ロッド12をシリンダ本体23に対して揺動可能且つ変位可能に支持する機構として設けられている。そして、ロッド支持機構13には、外側ケース部18、内側ケース部19、固定ローラ20、可動ローラ21、戻しバネ22、等が備えられている。
【0038】
外側ケース部18は、筒状の部分を備えて構成されており、本実施形態では、2つの筒状の部材が直列に組み合わされて構成されている。外側ケース部18の内側には、内側ケース部19、ロッド12のブレーキ出力部11に連結される先端側と反対側の端部、等が収納されている。そして、外側ケース部18は、シリンダ本体23に対して、ロッド12の軸方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。尚、ロッド12は、その軸方向が車輪100の車軸方向に対してほぼ直交する方向に沿って延びるように、配置されている。
【0039】
内側ケース部19は、外側ケース部18の内側に収納されている。そして、内側ケース部19には、ロッド12の先端側と反対側の端部の外周に設けられた外周ねじ部12aに螺合するねじ溝が内周に形成されたねじ穴19aが設けられている。尚、ロッド支持機構13には、外周ねじ部12aのねじ穴19aに対する螺合位置を変位させることで、ロッド12の内側ケース部19に対する相対位置を変位させる、位置調整機構が設けられている。
【0040】
また、内側ケース部19には、その外周に、球面の一部を成すような球面状の外周曲面19bが設けられている。そして、外側ケース部18には、内側ケース部19の外周曲面19bに対して摺動自在な内周曲面18aが設けられている。内周曲面18aは、球面の一部を成すような凹み球面状の曲面として形成されるとともに、外周曲面19bの曲率に対応する曲率の曲面として構成されている。摺動する外周曲面19bと内周曲面18aとにより、内側ケース部19と外側ケース部18とにおいては、球面軸受が構成されている。この球面軸受により、内側ケース部19が外側ケース部18に対して揺動自在に支持され、ロッド12がシリンダ本体23に対して揺動可能に支持されている。
【0041】
固定ローラ20は、シリンダ本体23に対する相対位置が固定されるとともにシリンダ本体23に回転自在に支持された円筒状のローラとして構成されている。固定ローラ20は、例えば、ロッド12の軸方向と平行な方向である外側ケース部18の軸方向に直交する方向において、外側ケース部18の両側に一対で設けられている。
【0042】
可動ローラ21は、外側ケース部18の壁部に対して外側で回転自在に支持された円筒状のローラとして構成されている。可動ローラ21は、例えば、外側ケース部18の軸方向に直交する方向において、外側ケース部18の両側に一対で設けられている。そして、各可動ローラ21は、その外周が各固定ローラ20に対向する位置で、各固定ローラ20に対して離間して配置されている。
【0043】
更に、可動ローラ21は、回転することで、シリンダ本体23に対して転動して相対変位可能に支持されている。また、シリンダ本体23には、ロッド12の軸方向とほぼ平行な方向に沿って可動ローラ21を転動させるガイド部(図示省略)が設けられている。尚、可動ローラ21は、外側ケース部18に回転自在に支持されていなくてもよい。例えば、外側ケース部18に開口が設けられ、その開口を介して、可動ローラ21が内側ケース部19に対して回転自在に支持されていてもよい。
【0044】
戻しバネ22は、一端側の端部がシリンダ本体23の内側の段部に対して当接し、他端側の端部が外側ケース部18の内側の段部に対して当接するコイルバネとして設けられている。そして、戻しバネ22は、圧縮された状態で設置されている。
【0045】
戻しバネ22は、上記のように設置されていることで、ロッド12の軸方向と略平行な方向に沿って、シリンダ本体23に対して外側ケース部18を車輪100から離間する方向(
図3における矢印B方向)に付勢するように構成されている。戻しバネ22が、車輪100から離間する方向に外側ケース部18を付勢することで、外側ケース部18とともに、内側ケース部19及びこれに螺合するロッド12が、車輪100から離間する方向に付勢されることになる。この戻しバネ22の付勢力により、ブレーキシリンダ装置2がブレーキ力を解除する際の作動に伴う後述のロッド駆動部14の変位に伴って、ロッド12が、シリンダ本体23に退避する方向に移動することになる。
【0046】
ロッド駆動部14は、ブレーキシリンダ装置2の作動に伴ってロッド支持機構13を介してロッド12を駆動する部材として設けられている。ロッド駆動部14は、シリンダ本体23の内部に収納されている。そして、ロッド駆動部14は、楔状に形成された楔状部分14aを有する楔体として設けられている。また、ロッド駆動部14は、楔状部分14aが突出する基端部14bにおいて、ブレーキシリンダ装置2における後述の第1ピストン31に対して固定されている。
【0047】
楔状部分14aは、基端部14bからロッド支持機構13に向かって突出するように設けられている。そして、楔状部分14aは、基端部14b側からロッド支持部13側に向かって先細り形状の楔状に形成されている。楔状部分14aの先端側、即ち、楔状部分14aにおける基端部14b側と反対側は、固定ローラ20と可動ローラ21との間に挿入された状態で配置されている。また、楔状部分14aにおける固定ローラ20と可動ローラ21との間に挿入された先端側は、固定ローラ20の外周と可動ローラ21の外周とに接触するように、配置されている。尚、楔状部分14aは、固定ローラ20及び可動ローラ21の各組合せに対応して複数設けられていてもよい。また、楔状部分14aは、固定ローラ20及び可動ローラ21の複数の組み合わせのうちのいずれか1つの組み合わせに対応して1つ設けられていてもよい。
【0048】
ブレーキシリンダ装置2のブレーキ力を出力する際の作動に伴って第1ピストン31がロッド支持機構13に向かって移動すると、第1ピストン31とともに、ロッド駆動部14もロッド支持機構13に向かって移動する。そして、ロッド駆動部14の移動に伴って、楔状部分14aに接触する固定ローラ20は、シリンダ本体23に対して同じ位置で回転する。一方、楔状部分14aに接触する可動ローラ21は、ロッド駆動部14の移動に伴って、楔状部分14aによって車輪100側に向かって(
図3の矢印A方向にむかって)付勢される。
【0049】
上記により、可動ローラ21は、回転しながら、シリンダ本体23に対して転動しながら車輪100側に向かって相対移動する。即ち、ロッド駆動部14の移動に伴って、楔状部分14aによって、固定ローラ20と可動ローラ21との間の間隔が広がるように、可動ローラ21が駆動される。そして、可動ローラ21とともに、外側ケース部18、内側ケース部19及びロッド12が、車輪100側に向かって移動することになる。これにより、ロッド12とともに移動するブレーキ出力部11のライニング15が車輪100の踏面100aに当接し、車輪100の回転が制動されることになる。
【0050】
[ブレーキシリンダ装置]
次に、ブレーキシリンダ装置2について詳しく説明する。
図4は、
図3に示すブレーキシリンダ装置2の一部を拡大して示す図であって、本実施形態の駐車ブレーキ作動状態検知装置3の断面を含む図である。ブレーキシリンダ装置2は、ブレーキ装置1に組み込まれた状態で、鉄道車両に設置される。そして、
図1、
図3及び
図4に示すように、ブレーキシリンダ装置2は、シリンダ本体23、流体ブレーキ機構24、駐車バネブレーキ機構25、軸部26、伝達機構27、ロック機構28、本発明の第1実施形態に係る駐車ブレーキ作動状態検知装置3、等を備えて構成されている。ブレーキシリンダ装置2における上記の各機構等は、例えば、鉄系材料等の金属材料を素材とする構成要素を主要な構成要素として形成されている。
【0051】
また、本実施形態では、ブレーキシリンダ装置2は、圧力流体としての圧縮空気によって作動するように構成されている。即ち、流体ブレーキ機構24及び駐車バネブレーキ機構25は、圧力流体として圧縮空気の供給及び排出が行われることで作動するように構成されている。そして、ブレーキシリンダ装置2は、流体ブレーキ機構24及び駐車バネブレーキ機構25の両方が作動可能な装置として構成されている。
【0052】
シリンダ本体23は、筒状に形成された部分を有し、内側に流体ブレーキ機構24、前述のロッド支持機構13、前述のロッド駆動部14、等を収納している。そして、シリンダ本体23には、ロック機構28、前述のブレーキ出力部11、前述のロッド12、等が設置されている。また、シリンダ本体23には、駐車ブレーキ作動状態検知装置3におけるカバー60が固定されている。尚、カバー60の内側には、駐車バネブレーキ機構25、軸部26、伝達機構27、等が収納されている。
【0053】
また、シリンダ本体23は、例えば、鉄道車両の台車に固定されて設置されている。尚、シリンダ本体23及びカバー60の軸方向と、後述する流体ブレーキ機構24の第1ピストン31の軸方向と、後述する駐車バネブレーキ機構25の第2ピストン35の軸方向と、後述する軸部26のスピンドル38の軸方向とは、一致する方向として又は互いに平行な方向として構成されている。
【0054】
また、シリンダ本体23には、第1ポート37a及び第2ポート37bが設けられている。第1ポート37aは、圧力流体供給源としての第1の圧縮空気供給源(図示省略)に接続されている。第2ポート37bは、圧力流体供給源である第2の圧縮空気供給源(図示省略)に接続されている。
【0055】
第1の圧縮空気供給源から供給される圧縮空気(圧力流体)は、上位のコントローラ(図示省略)からの指令に基づいて作動するブレーキ制御装置(図示省略)を介して第1ポート37aに供給される。そして、第1ポート37aからシリンダ本体23内に供給された圧縮空気は、上記のコントローラからの指令に基づいて上記のブレーキ制御装置を介して排出される。また、第2の圧縮空気供給源から供給される圧縮空気(圧力流体)は、上記のコントローラからの指令に基づいて作動する駐車バネブレーキ制御電磁弁(図示省略)を介して第2ポート37bに供給される。そして、第2ポート37bからシリンダ本体23内に供給された圧縮空気は、上記のコントローラからの指令に基づいて上記の駐車バネブレーキ制御電磁弁を介して排出される。
【0056】
流体ブレーキ機構24は、圧力流体としての圧縮空気の給排によって作動する。この流体ブレーキ機構24は、鉄道車両の運転時のブレーキ動作のために用いられる常用ブレーキ機構として設けられている。そして、流体ブレーキ機構24は、第1圧力室29、第1バネ30、第1ピストン31、等を備えて構成されている。
【0057】
第1圧力室29は、シリンダ本体23内において第1ピストン31によって区画されることで形成されている。そして、第1圧力室29は、第1ポート37aに連通しており、前述の第1の圧縮空気供給源からの圧縮空気が供給される。また、第1圧力室29に供給された圧縮空気は、第1ポート37aから排出される。
【0058】
第1バネ30は、シリンダ本体23内において第1ピストン31によって区画された領域に配置されており、第1ピストン31を介して第1圧力室29に対向するように配置されている。第1バネ30は、本実施形態では、圧縮された状態でシリンダ本体23内に配置されて第1ピストン31を付勢するコイルバネとして設けられている。そして、第1バネ30は、その一端側の端部が第1ピストン31に当接してこの第1ピストン31を付勢するように配置されている。また、第1バネ30は、その他端側の端部がシリンダ本体23の内壁に固定されたバネ受けプレート32に当接して支持されている。
【0059】
第1ピストン31は、その軸方向と平行にシリンダ本体23内で往復動自在に配置されるとともに、シリンダ本体23の内壁に対して摺動自在に配置されている。そして、第1ピストン31は、第1ポート37aから第1圧力室29に圧縮空気が供給されることで、圧縮された第1バネ30の弾性回復による付勢力に抗して移動するように構成されている。従って、流体ブレーキ機構24は、第1圧力室29と第1バネ30とが対向して作用する第1ピストン31を有し、第1圧力室29に圧縮空気が供給されることで第1バネ30の付勢力に抗して第1ピストン31が所定のブレーキ作動方向(
図4にて矢印Cで示す方向)に移動するように構成されている。
【0060】
また、第1ピストン31には、第1圧力室29側と反対側において、ロッド駆動部14の基端部14bが固定されている。これにより、第1ピストン31が上記のブレーキ作動方向に移動すると、ロッド駆動部14は、第1ピストン31とともに、そのブレーキ作動方向に移動する。そして、ロッド駆動部14が第1ピストン31とともにブレーキ作動方向に移動することで、前述のロッド支持機構13を介してロッド12が駆動される。これにより、ロッド12によって駆動されるブレーキ出力部11からブレーキ力が出力される。
【0061】
駐車バネブレーキ機構25は、鉄道車両の駐車時にブレーキ状態を維持するために用いられる駐車用のブレーキ機構として設けられている。そして、駐車バネブレーキ機構25は、第2圧力室33、第2バネ34、第2ピストン35、等を備えて構成されている。第2バネ34は、本実施形態における駐車バネを構成している。そして、第2ピストン35は、本実施形態における駐車ピストンを構成している。
【0062】
第2圧力室33は、後述するカバー60内において第2ピストン35によって区画されることで形成されている。そして、第2圧力室33は、第2ポート37bに連通しており、前述の第2の圧縮空気供給源からの圧縮空気が供給される。また、第2圧力室33に供給された圧縮空気は、第2ポート37bから排出される。
【0063】
第2バネ34は、カバー60内において第2ピストン35によって区画された領域に配置されており、第2ピストン35を介して第2圧力室33に対向するように配置されている。第2バネ34は、本実施形態では、圧縮された状態でカバー60内に配置されて第2ピストン35を付勢するコイルバネとして設けられている。そして、第2バネ34は、その一端側の端部がカバー60の端部の内壁に当接して支持されている。また、第2バネ34は、その他端側の端部が第2ピストン35に当接してこの第2ピストン35を付勢するように配置されている。また、本実施形態では、第2バネ34は、複数(2つ)設けられている。そして、複数の第2バネ34は、同一の中心軸線を中心とした同心状に配置されている。尚、上記により、後述する駐車ブレーキ作動状態検知装置3のカバー60は、駐車バネである第2バネ34及び駐車ピストンである第2ピストン35を内部に収納するように設けられている。
【0064】
第2ピストン35は、その軸方向と平行にカバー60内で往復動自在に配置されるとともに、カバー60の内壁に対して摺動自在に配置されている。第2ピストン35は、第1ピストン31と同一の方向に移動可能に設けられている。そして、第2ピストン35は、第2ポート37bから第2圧力室33に圧縮空気が供給されることで、圧縮された第2バネ34の弾性回復による付勢力に抗して、前述のブレーキ作動方向とは反対方向のブレーキ解除方向(
図4にて矢印Dで示す方向)に移動するように構成されている。一方、第2ピストン35は、第2圧力室33内に供給された圧縮空気が第2ポート37bを通じて排出されることで、第2バネ34の付勢力により所定のブレーキ作動方向(
図4にて矢印Cで示す方向)に移動するように構成されている。
【0065】
上記のように、第2ピストン35は、第2圧力室33と第2バネ34とが対向して作用するように構成されている。そして、駐車バネブレーキ機構25は、第2圧力室33に圧縮空気が供給されている状態から排出される状態へと移行することで、第2バネ34の付勢力によって付勢された第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動することで作動するように構成されている。
【0066】
尚、第2ピストン35において第2圧力室33に対向する端部は、カバー60の周方向に沿って延びるリング状の端部として形成されている。また、シリンダ本体23には、第2ピストン35のリング状の端部の内側で周方向に沿って筒状に形成された内側筒状部36が設けられている。そして、第2ピストン35のリング状の端部は、カバー60の内壁に対して摺動するとともに内側筒状部36の外周に対しても摺動するように配置されている。
【0067】
軸部26は、スピンドル38、軸受39、等を備えて構成されている。そして、軸部26は、スピンドル38の端部において第1ピストン31に連結され、第1ピストン31とともに変位するように設けられている。
【0068】
スピンドル38は、第1ピストン31に対して、ロッド駆動部14がブレーキ作動方向に向かって突出するように固定される側と反対側であるブレーキ解除方向に向かって突出するように配置されている。このスピンドル38は、第1ピストン31とは別体に形成された軸状の部材として設けられている。そして、スピンドル38は、後述の伝達機構27とともに駐車バネブレーキ機構25からの付勢力を第1ピストン31に伝達するように構成されている。
【0069】
また、スピンドル38は、第1ピストン31に連結される側の端部において、外周に沿って周方向に延びる凸状の段部38aが設けられている。そして、第1ピストン31の径方向における中央部分には、凹み部分が設けられ、この凹み部分の内周には、段部38aに対して係合する縁状に形成されたスピンドル保持部31aが設けられている。第1ピストン31におけるスピンドル保持部31aは、第1ピストン31がブレーキ作動方向に移動するときに、スピンドル38の端部の段部38aと係合し、スピンドル38をブレーキ作動方向に付勢する。
【0070】
軸受39は、例えば、ボール状の部材として設けられ、駐車バネブレーキ機構25からの付勢力によってスピンドル38に作用するスラスト荷重を受ける軸受として構成されている。そして、軸受39は、第1ピストン31の中央部分に設けられた上記の凹み部分に配置され、スピンドル38の端部と第1ピストン31との間で両者に当接した状態で配置されている。駐車バネブレーキ機構25からの付勢力は、後述の伝達機構27、スピンドル38、及び軸受39を介して、第1ピストン31に伝達される。
【0071】
伝達機構27は、駐車バネブレーキ機構25における第2ピストン35のブレーキ作動方向の付勢力を第1ピストン31とともに変位する軸部26に伝達する機構として設けられている。伝達機構27は、噛み合い式のクラッチ機構を含む機構として構成されている。そして、伝達機構27は、ねじ部40、クラッチホイール41、クラッチスリーブ42、クラッチボックス43、等を備えて構成されている。
【0072】
尚、伝達機構27は、第2ピストン35の径方向における内側に配置されている。第2ピストン35には、径方向の内側において、流体ブレーキ機構24側と反対側が外部に対して閉じられた状態の筒状の領域を区画する内側筒状部35aが設けられている。そして、内側筒状部35aの内側の筒状の領域に、伝達機構27の一部が配置されている。
【0073】
ねじ部40は、スピンドル38における第1ピストン31に連結される側と反対側の部分の外周に形成されたおねじ部分として設けられている。クラッチホイール41は、内周に形成されためねじ部分にてねじ部40に螺合する筒状のナット部材として設けられ、スピンドル38に対して、同一の中心軸線を中心とした同心状に配置されている。また、クラッチホイール41は、筒状に形成されたクラッチボックス43の内側で、クラッチボックス43に対して一対の軸受44を介して回転自在に支持されている。これにより、クラッチホイール41は、スピンドル38とクラッチボックス43との相対移動に伴って、ねじ部40に対して螺合する相対位置を変えながら、スピンドル38に対して回転して軸方向に相対変位可能に構成されている。
【0074】
クラッチスリーブ42は、筒状に形成され、クラッチボックス43の内側で、クラッチボックス43に対して、スピンドル38の軸方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。クラッチスリーブ42のブレーキ作動方向における端部(第1ピストン31側の端部)は、クラッチホイール41のブレーキ解除方向における端部(第1ピストン31側と反対側の端部)に対して対向して配置されている。クラッチスリーブ42のブレーキ解除方向における端部、即ち、クラッチスリーブ42のクラッチホイール41に対向する側と反対側の端部は、スラスト軸受として設けられた軸受45を介して、第2ピストン35における内側筒状部35aの端部に対して支持されている。軸受45は、クラッチスリーブ42の端部を第2ピストン35に対してスピンドル38の中心軸線を中心として回転可能に支持している。
【0075】
クラッチスリーブ42及びクラッチホイール41には、凹凸歯46aと凹凸歯46bとで構成された回転止め機構46が設けられている。凹凸歯46aは、クラッチホイール41におけるクラッチスリーブ42に対向する側の端部に形成され、クラッチホイール41の端部の周方向に亘って設けられている。凹凸歯46bは、クラッチスリーブ42におけるクラッチホイール41に対向する側の端部に形成され、クラッチスリーブ42の端部の周方向に亘って設けられている。凹凸歯46a及び凹凸歯46bは、互いに対向するクラッチホイール41の端部とクラッチスリーブ42の端部とが当接することで、互いに噛み合う形状の歯として形成されている。
【0076】
第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動してスピンドル38に対して相対移動すると、クラッチスリーブ42も第2ピストン35とともにスピンドル38に対して相対移動する。そして、クラッチスリーブ42は、スピンドル38に螺合したクラッチホイール41に当接し、凹凸歯46aと凹凸歯46bとが、噛み合う。クラッチスリーブ42は、クラッチボックス43に対して、軸方向にのみ変位可能で回転方向の変位が規制されている。このため、凹凸歯46aと凹凸歯46bとが噛み合うと、クラッチボックス43に対するクラッチホイール41の相対回転が規制されて止められることになる。
【0077】
クラッチボックス43は、ねじ部40、クラッチホイール41、及びクラッチスリーブ42が内側に配置される筒状の部材として設けられている。クラッチボックス43は、内側筒状部36の内周と内側筒状部35aの内周とに対して、スピンドル38の軸方向と平行な方向に沿って摺動して変位可能に支持されている。また、クラッチボックス43は、後述のロック機構28のラッチ49が係合していない状態では、内側筒状部36の内周と内側筒状部35aの内周とに対して、周方向にも摺動して回転変位可能に支持されている。
【0078】
また、クラッチボックス43は、内側に、内周に沿って延びる段部43aが設けられ、この段部43aに取り付けられた一対の軸受44を介して、クラッチホイール41を回転自在に保持している。また、クラッチボックス43は、内側において、クラッチスリーブ42をスピンドル38の軸方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に支持している。尚、クラッチボックス43の内周から内側に突出した突出部43bの端部が、クラッチスリーブ42の外周に形成された溝に対して摺動自在に嵌め込まれ、クラッチスリーブ42のクラッチボックス43に対するスライド移動方向がガイドされている。また、クラッチボックス43のシリンダ本体23及び第2ピストン35に対する相対位置は、互いに逆方向にクラッチボックス43を付勢する位置調整バネ(47a、47b)によって調整されている。また、クラッチボックス43の段部43aとクラッチスリーブ42の端部との間には、凹凸歯46aと凹凸歯46bとを互いに離間させる方向に付勢する離間用バネ48が設置されている。
【0079】
ロック機構28は、シリンダ本体23から外側に一端側が突出するラッチ部材49を有している。そして、ロック機構28は、ラッチ部材49の他端側が伝達機構27のクラッチボックス43に係合することで、駐車バネブレーキ機構25の作動時に軸部26の第2ピストン35に対する相対変位を規制して駐車バネブレーキ機構25を作動させたままロック状態とする機構として構成されている。ラッチ部材49には、クラッチボックス43の端部の外周に沿って設けられたラッチ刃43cに対して係合する係合刃49aが設けられている。ラッチ刃43cに係合刃49aが係合していることで、クラッチボックス43の内側筒状部36及び内側筒状部35aの内側での回転が規制される。
【0080】
また、ロック機構28には、係合刃49aをラッチ刃43cに係合させるようにラッチ部材49をクラッチボックス43側に向かって付勢するラッチ付勢バネ50も設けられている。そして、ラッチ部材49における外側に突出した一端側の端部には、駐車バネブレーキ機構25の作動を手動で解放するために用いられる引き輪51が設けられている(
図1を参照)。引き輪51が作業者によって、外側に向かって引っ張り操作されることで、ラッチ付勢バネ50の付勢力に抗してラッチ部材49が外側に向かって引き出され、係合刃49aとラッチ刃43cとの係合が解除される。
【0081】
伝達機構27及びロック機構28は、上述のように構成される。これにより、第2圧力室33に圧縮空気が供給されている状態から排出される状態へと移行し、駐車バネブレーキ機構25が作動すると、第2バネ34の付勢力により第2ピストン35とともにクラッチスリーブ42がスピンドル38に対して移動し、凹凸歯46bと凹凸歯46aとが噛み合う。そして、クラッチホイール41の回転が止められてスピンドル38と第2ピストン35とが連結される。尚、駐車バネブレーキ機構25の作動は、流体ブレーキ機構24が作動した状態で行われる。即ち、第1圧力室29の圧縮空気が供給されて流体ブレーキ機構24が作動した状態で、第2圧力室33から圧縮空気が排出され、駐車バネブレーキ機構25が作動する。
【0082】
また、上記の状態では、ロック機構28によって、駐車バネブレーキ機構25のロック状態が維持される。即ち、係合刃49aとラッチ刃43cとの係合によりクラッチボックス43の回転が規制され、突出部43bとクラッチスリーブ42の溝との係合によりクラッチスリーブ42の回転が規制される。更に、凹凸歯46b及び凹凸歯46aの噛み合いによりクラッチホイール41回転が規制され、スピンドル38のクラッチホイール41に対する相対回転も規制される。尚、第2圧力室33に圧縮空気を供給して駐車バネブレーキ機構25の作動を解除することまでせずに鉄道車両の駐車位置を牽引車で少し移動させたい場合など、駐車バネブレーキ機構25の作動を手動操作によって解放したい場合には、引き輪51の引っ張り操作が行われる。
【0083】
一方、伝達機構27は、駐車バネブレーキ機構25の作動が解除されている状態、即ち、第2圧力室33に圧縮空気が供給されている状態では、スピンドル38と第2ピストン35との連結を解除する。即ち、第2圧力室33に圧縮空気が供給されている状態では、凹凸歯46bと凹凸歯46aとが離間して噛み合っていない。このため、クラッチホイール41がクラッチボックス43に対して回転自在な状態であり、スピンドル38と第2ピストン35との連結が解除されている。
【0084】
[駐車ブレーキ作動状態検知装置]
次に、駐車ブレーキ作動状態検知装置3について詳しく説明する。
図1、
図3及び
図4に示す駐車ブレーキ作動状態検知装置3は、ブレーキ装置1に用いられる。駐車ブレーキ作動状態検知装置3は、既存のブレーキ装置1aに対して新たに設置されて付加されてもよく、また、新設のブレーキ装置に付加されていてもよい。
【0085】
駐車ブレーキ作動状態検知装置3は、駐車バネブレーキ機構25の作動状態を検知する装置として設けられている。そして、駐車ブレーキ作動状態検知装置3は、カバー60と位置検知機構61とを備えて構成されている。
【0086】
図5は、カバー60を示す正面図である。
図6は、カバー60の平面図である。
図1、
図3乃至
図6に示すカバー60は、筒状の部分60aを備えている。筒状の部分60aは、円筒状の部分として設けられている。そして、カバー60は、その筒状の部分60aの内部に、駐車バネである第2バネ34と駐車ピストンである第2ピストン35とを収納するように設けられている。カバー60の内側に配置された第2ピストン35は、その外周部分において、筒状の部分60aの内壁に対して摺動自在に配置されている。また、第2バネ34は、第2ピストン35に当接する端部とは反対側の端部において、カバー60における一方の端部の内壁に当接している。
【0087】
カバー60における一方の端部の中央部分には、第2ピストン35の端部が露出する貫通孔62が設けられている。尚、貫通孔62の縁部と第2ピストン35の端部との間には、異物がカバー60の内側に侵入することを防止するためのリング状の塵除けシート66が取り付けられている。塵除けシート66は、例えば、ゴムシートで形成されている。
【0088】
また、カバー60における他方の端部は、開口するように形成されている。そして、カバー60は、他方の端部の縁部分において、周方向に亘って延びる段状の部分として形成された段部63と、段部63から壁状に突出するとともに周方向に亘って延びる嵌合部64とが設けられている。段部63は、カバー60がシリンダ本体23に固定される際に、シリンダ本体23の一方の端部の縁部分に当接する部分として設けられている。そして、嵌合部64は、段部63がシリンダ本体23の縁部分に当接した状態でカバー60がシリンダ本体23に取り付けられる際に、シリンダ本体23の縁部分の内側に嵌合する部分として設けられている。
【0089】
既存のブレーキ装置1aに駐車ブレーキ作動状態検知装置3が設置される際には、ブレーキ装置1aから、シリンダ本体23に取り付けられた既存のカバー23aが取り外される(
図2を参照)。そして、カバー23aが取り外されたシリンダ本体23に対して、カバー60が取り付けられて固定される。尚、カバー60には、複数のボルト挿通孔65が設けられている(
図6を参照)。そして、シリンダ本体23に対して、段部63が当接して嵌合部64が嵌め込まれてカバー60が取り付けられた状態で、ボルト挿通孔65に挿通されるボルト(図示省略)が、シリンダ本体23に螺合してカバー60をシリンダ本体23に対して締結するように取り付けられる。これにより、カバー60がシリンダ本体23に固定される。
【0090】
また、カバー60には、第2ピストン35の一部が露出する開口67aを区画する開口部67が設けられている。開口部67は、カバー60の筒状の部分60aの外周における一部に設けられており、本実施形態では、カバー60に1つ設けられている。また、カバー60における筒状の部分60aには、シリンダ本体23に取り付けられる側に向かって段状に拡径する部分が周方向に亘って延びるように設けられている。そして、開口部67は、筒状の部分60aにおける段状に拡径する部分の一部に設けられ、第2ピストン35の軸方向と平行な方向に向かって開口67aが開口するように形成されている。また、開口67aは、カバー60を第2ピストン35の軸方向と平行な方向に沿って貫通する貫通孔として設けられている。
【0091】
図7は、
図4の一部を拡大して示す図であって、駐車ブレーキ作動状態検知装置3における位置検知機構61とその近傍とを示す図である。位置検知機構61は、カバー60に取り付けられている。そして、位置検知機構61は、カバー60に対する第2ピストン35の位置を検知する機構として設けられ、検知ピストン68、変位センサ69、等を備えて構成されている。
【0092】
検知ピストン68は、円柱状の部材として設けられ、本実施形態における検知部を構成している。そして、検知ピストン68は、カバー60に設けられた開口部67の開口67aの内側に少なくとも一部が配置される。
【0093】
また、検知ピストン68は、その外周において、開口67aの内周に対して、摺動自在に配置されている。これにより、検知ピストン68は、開口67aの内側において、第2ピストン35の軸方向と平行な方向に沿って、開口部67に対して摺動して変位可能に設置されている。尚、開口67aは、円形断面の貫通孔として設けられている。即ち、開口67aにおける第2ピストン35の軸方向と平行な方向に対して直交する断面の形状は、円形に形成されている。そして、円柱状に形成された検知ピストン68の円柱軸方向に垂直な断面の形状も、開口67aの断面形状に対応する円形に形成されている。
【0094】
また、検知ピストン68は、円柱軸方向における一方の端部68aが、開口67aから外部に露出可能に配置されている。そして、検知ピストン68は、その一方の端部68aが後述する変位センサ69に当接した状態で、開口部67に設置されている。また、検知ピストン68は、円柱軸方向における他方の端部68bが、開口67aの奥側に配置されている。更に、検知ピストン68は、第2ピストン35に対して他方の端部68bにおいて当接可能に、開口部67に設置されている。そして、検知ピストン68は、第2ピストン35の一部に対して開口67a内において当接することで、カバー60に対する第2ピストン35の位置を検知可能に、開口部67に設置されている。
【0095】
尚、第2ピストン35は、第2ピストン35の外周部分における第2圧力室33側と反対側の端部である外周縁部35bの周方向における一部において、開口67aに露出するように配置されている。そして、検知ピストン68における他方の端部68bは、第2ピストン35に対して外周縁部35bにおいて当接可能に配置されている。
【0096】
変位センサ69は、検知ピストン68のカバー60に対する変位を検知するセンサとして設けられている。変位センサ69は、ケース69a、プランジャ69b、ケース69aに内蔵されたバネ(図示省略)及びマイクロスイッチ(図示省略)、等を備えて構成され、例えば、リミットスイッチとして設けられている。
【0097】
ケース69aは、円筒状に形成され、プランジャ69bの一部、前述のバネ及びマイクロスイッチ、等を収納している。ケース69aは、図示が省略された取付部を介して、カバー60に対して固定されて取り付けられている。また、ケース69aは、その円筒軸方向が第2ピストン35の軸方向と平行な方向に沿って延びるように、カバー60に対して設置されている。そして、ケース69aは、開口部67に対向する側の端部において、プランジャ69bがスライド移動自在に変位する開口が形成されている。尚、ケース69aにおける開口部67に対向する端部には、開口67aへの塵等の異物の接近を抑制するための塵除け部69cが取り付けられている。塵除け部69cは、例えば、開口67aを覆う傘状の部材として設けられている。
【0098】
プランジャ69bは、ケース69aの内側に一部が収納される円柱状の部分を有する部材として設けられている。プランジャ69bは、その先端部分が、ケース69aにおける開口部67に対向するように配置された開口から外部に突出した状態で、ケース69aに対して支持されている。そして、プランジャ69bは、ケース69aに対して、ケース69aの円筒軸方向と平行に、スライド移動自在に支持されている。ケース69aの端部から突出したプランジャ69bの先端部分は、検知ピストン68の一方の端部68aに当接している。
【0099】
また、プランジャ69bは、ケース69a内において、ケース69a内に配置された前述のバネによって、検知ピストン68に向かって突出する方向に付勢されている。また、ケース69a内のバネは、プランジャ69bを介して検知ピストン68も付勢するように構成されている。これにより、ケース69a内のバネは、駐車バネブレーキ機構25が作動して第2ピストン35が移動した際に、プランジャ69bを検知ピストン68に当接させた状態のまま、検知ピストン68及びプランジャ69bを第2ピストン35に追従させるように変位させるように構成されている。
【0100】
また、プランジャ69bは、上記のように第2ピストン35及び検知ピストン68とともに変位した際に、ケース69a内に配置された前述のマイクロスイッチを作動させるように構成されている。即ち、このマイクロスイッチは、駐車バネブレーキ機構25が作動して第2バネ34の付勢力により第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動し、第2ピストン35及び検知ピストン68とともにプランジャ69bが変位した際に、作動し、検知ピストン68の変位に関する電気信号を生成する。生成されたこの電気信号は、駐車バネブレーキ機構25が作動したことを検知した検知信号として、ケーブル70を介して、前述の上位のコントローラに対して送信される。
【0101】
[装置の作動]
次に、ブレーキ装置1、ブレーキシリンダ装置2、及び駐車ブレーキ手動解放装置3の作動について説明する。
図1、
図3及び
図4は、流体ブレーキ機構24と駐車バネブレーキ機構25とがいずれも作動しておらず緩められた状態にあるブレーキ装置1及びブレーキシリンダ装置2を示している。例えば、鉄道車両の運転中でブレーキ動作が行われていないときは、
図1、
図3及び
図4に示す状態となる。この状態では、前述したブレーキ制御装置(図示省略)によって、第1の圧縮空気供給源(図示省略)からブレーキ制御装置及び第1ポート37aを介した圧縮空気の第1圧力室29への供給は行われないように制御されている。そして、第1圧力室29内の圧縮空気はブレーキ制御装置及び第1ポート37aを介して自然に排出される。このため、シリンダ本体23内において第1バネ30によって第1ピストン31がブレーキ解除方向(
図4の矢印D方向)に付勢され、第1ピストン31がシリンダ本体23の内側の壁部であって第1圧力室29を区画する壁部に当接した状態となっている。
【0102】
一方、
図1、
図3及び
図4に示す状態においては、前述した駐車バネブレーキ制御電磁弁(図示省略)の制御に基づいて、第2の圧縮空気供給源(図示省略)から駐車バネブレーキ制御電磁弁及び第2ポート37bを介して圧縮空気が第2圧力室33に供給される。このため、第2圧力室33に供給された圧縮空気の作用による付勢力によって第2ピストン35が第2バネ34の付勢力に抗してブレーキ解除方向に移動した状態となっている。この状態では、クラッチホイール41の凹凸歯46aとクラッチスリーブ42の凹凸歯46bとは噛み合っておらず、空隙が形成された状態になっている。
【0103】
一方、上記のブレーキ制御装置の制御に基づいて第1の圧縮空気供給源から圧縮空気が第1ポート37aを介して第1圧力室29に供給されることで流体ブレーキ機構24が作動する。このとき、第1圧力室29に供給された圧縮空気の作用による付勢力によって第1ピストン31が第1バネ30の付勢力に抗してブレーキ作動方向(
図4の矢印C方向)に移動する。これにより、第1ピストン31とともにロッド駆動部14もブレーキ作動方向に移動する。これにより、ロッド駆動部14の楔状部分14aによって、可動ローラ21が、固定ローラ20から離間しながら車輪100側に向かって付勢される。そして、可動ローラ21とともに、外側ケース部18、内側ケース部19及びロッド12が、車輪100側に向かって移動する。これにより、ロッド12とともに移動するブレーキ出力部11のライニング15が車輪100の踏面100aに当接し、車輪100の回転が制動される。
【0104】
また、上記の作動の際、第1ピストン31とともにスピンドル38もブレーキ作動方向に移動するが、スピンドル38に設けられたねじ部40にはクラッチホイール41が螺合している。しかし、スピンドル38が第1ピストン31とともにブレーキ作動方向に移動するときは、クラッチホイール41がクラッチボックス43に対して軸受44で回転自在に支持されている。このため、スピンドル38のブレーキ作動方向への移動に伴って、クラッチホイール41がスピンドル38の周りで回転する。これにより、スピンドル38のみがブレーキ作動方向に移動することになる。
【0105】
次に、駐車バネブレーキ機構25の作動について説明する。駐車バネブレーキ機構25は、流体ブレーキ機構24が作動して完全に鉄道車両が停止した状態で、用いられる。そして、駐車バネブレーキ25の作動は、流体ブレーキ機構24が作動したままの状態で行われる。即ち、第1圧力室29に圧縮空気が供給されて第1ピストン31がブレーキ作動方向に付勢されている状態で、駐車バネブレーキ機構25の作動が開始される。
【0106】
駐車バネブレーキ機構25は、前述の駐車バネブレーキ制御電磁弁の制御に基づいて、第2圧力室33から第2ポート37b及び駐車バネブレーキ制御電磁弁を介して圧縮空気が排出されることで作動する。第2圧力室33内に供給されていた圧縮空気が第2ポート37b及び駐車バネブレーキ制御電磁弁を介して排出されると、第2バネ34の付勢力によって第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動する。第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動すると、第2ピストン35とともにクラッチスリーブ42もブレーキ作動方向に移動する。そして、クラッチスリーブ42がクラッチホイール41に当接し、クラッチホイール41の凹凸歯46aとクラッチスリーブ42の凹凸歯46bとが噛み合う。
【0107】
上記の状態では、ラッチ部材49の係合刃49aとクラッチボックス43のラッチ刃43cとが係合し、クラッチボックス43のシリンダ本体23に対する相対回転が規制されている。更に、クラッチボックス43に対してもクラッチスリーブ42の相対回転が規制されている。このため、凹凸歯46aと凹凸歯46bとが噛み合うと、シリンダ本体23に対して、クラッチボックス43及びクラッチスリーブ42を介して、クラッチホイール41の回転が規制されることになる。これにより、クラッチホイール41の回転が止められてスピンドル38と第2ピストン35とが連結された状態となる。そして、この状態では、ロック機構28により、駐車バネブレーキ機構25は、作動した状態のままロックされたロック状態となっている。このロック状態では、車輪100の回転が制動された状態、即ち、駐車バネブレーキ機構25が作動した状態が維持される。尚、駐車バネブレーキ機構25を一旦作動させた状態では、第1圧力室29への圧縮空気の供給が行われず、徐々に、第1圧力室29から圧縮空気が排出された状態となる。尚、前述のように、引き輪51が引っ張り操作された際には、上記のロック状態が解除され、駐車バネブレーキ機構25の作動が手動で解放される。
【0108】
次に、駐車ブレーキ作動状態検知装置3の作動について説明する。
図8は、
図7に示す位置検知機構61の作動を説明するための図であって、駐車バネブレーキ機構25が作動した状態における位置検知機構61の状態を示す図である。
【0109】
第2圧力室33に圧縮空気が供給されており、駐車バネブレーキ機構25が作動していない状態では、
図7に示すように、第2ピストン35に当接する検知ピストン68は、その一方の端部68aが、開口67aから突出した状態に位置している。即ち、圧縮空気の付勢力によって第2バネ34のバネ力に抗して付勢された第2ピストン35により、検知ピストン68が付勢され、検知ピストン68の一方の端部68aが開口から突出している。尚、このとき、検知ピストン68は、ケース69a内のバネからの付勢力に抗してプランジャ69bをケース69aに向かって付勢するように開口67aから突出し、プランジャ69bをケース69内に収縮させた位置に位置させている。
【0110】
一方、第2圧力室33から圧縮空気が排出されて駐車バネブレーキ機構25が作動すると、第2バネ34の付勢力により第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動する。そして、
図8に示すように、ケース69a内のバネの付勢力によって、プランジャ69b及び検知ピストン68が、第2ピストン35に追従して変位する。尚、検知ピストン68の第2ピストン35に追従する変位量は、カバー60の内壁に設けられて検知ピストン68の他方の端部68bに当接する段状の部分によって、規制されている。
【0111】
上記のように、第2ピストン35及び検知ピストン68とともにプランジャ69bがケース69aに対して変位することで、位置検知機構61において、カバー60に対する第2ピストン35の位置が、駐車バネブレーキ機構25の作動時における第2ピストン35の位置に変化したことが、検知される。そして、位置検知機構61において、ケース69a内のマイクロスイッチが作動する。これにより、位置検知機構61において、駐車バネブレーキ機構25が作動したことを検知した検知信号としての電気信号が生成され、この電気信号が、ケーブル70を介して、前述の上位のコントローラに対して送信される。
【0112】
[本実施形態の効果]
本実施形態によると、カバー60には、第2ピストン(駐車ピストン)35の一部が露出する開口67aが設けられ、位置検知機構61の検知ピストン(検知部)68の少なくとも一部が、開口67aの内側に配置される。そして、検知ピストン68は、第2ピストン35に対してアクセス可能に、開口部67に設置されている。即ち、検知ピストン68は、第2ピストン35に対して開口67a内で当接することで、第2ピストン35の位置を検知可能に、開口部67に設置される。このため、既存のブレーキ装置1aから、第2バネ(駐車バネ)34及び第2ピストン35を内部に収納する既存のカバー23aを取り外し、カバー60及び位置検知機構61を備える駐車ブレーキ作動状態検知装置3を既存のブレーキ装置1aに容易に設置することできる。即ち、駐車ブレーキ作動状態検知装置3によると、駐車バネブレーキ機構25の作動状態を確認可能な構成を既存のブレーキ装置1aに容易に付加することができる。よって、駐車ブレーキ作動状態検知装置3によると、既存のブレーキ装置1aに駐車バネブレーキ機構25の作動状態を確認可能な構成を付加するにあたり、既存のブレーキ装置1aを大幅に改造する必要がない。また、駐車ブレーキ作動状態検知装置3によると、駐車バネブレーキ機構25の作動状態を確認可能な構成を付加するために既存のブレーキ装置1aを新たなブレーキ装置に交換する必要もない。
【0113】
従って、本実施形態によると、駐車バネブレーキ機構25の作動状態を確認可能な構成を既存のブレーキ装置1aに容易に付加することができる、駐車ブレーキ作動状態検知装置3を提供することができる。
【0114】
また、本実施形態によると、第2ピストン35に当接する検知部が、開口67aの内側で開口部67に摺動する検知ピストン68として設けられるため、開口67aを介して異物がブレーキ装置1の内側に入り込んでしまうことが防止される。また、開口67aを介した異物の侵入が、開口部67aにおいて検知ピストン68が摺動するという簡素な構成で、効率よく防止される。よって、簡素な構成で、異物をブレーキ装置1の内側に入り込ませてしまうことなく、駐車バネブレーキ機構25の作動状態を検知することができる。
【0115】
また、本実施形態によると、変位センサ69によって検知ピストン68の変位を電気的に検知し、検知ピストン68の変位に関する電気信号を生成することができる。このため、この電気信号を用い、運転室で鉄道車両の運転操作を行う運転者が駐車バネブレーキ機構25の作動状態を確認可能な構成を容易に構築することができる。
【0116】
また、本実施形態によると、検知ピストン(検知部)68の少なくとも一部が配置される開口67aが、カバー60の外周における一部に設けられて第2ピストン35の軸方向と平行な方向に沿って延びる貫通孔として設けられ、簡素な構造で構成される。このため、カバー60及び位置検知機構61を備えて構成される駐車ブレーキ作動状態検知装置3の構成の簡素化を図ることができる。
【0117】
また、本実施形態によると、上述の効果を奏する駐車ブレーキ作動状態検知装置3が設けられたブレーキ装置1を提供することができる。また、駐車ブレーキ作動状態検知装置3が設けられたブレーキ装置1において、容易に駐車ブレーキ作動状態検知装置3の取り外し作業及び交換作業を行うことができる。これにより、駐車ブレーキ作動状態検知装置3が設けられたブレーキ装置1のメンテナンス性を向上をさせることができる。
【0118】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るブレーキ装置4及び駐車ブレーキ作動状態検知装置6について説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係るブレーキ装置4の一部断面を含む図である。
図9に示すブレーキ装置4には、本発明の第2実施形態に係る駐車ブレーキ作動状態検知装置6が設置されている。
図9に示すブレーキ装置4は、第1実施形態のブレーキ装置1と同様に、図示が省略された鉄道車両(本実施形態における車両)に設置される。
【0119】
ブレーキ装置4は、踏面ブレーキ装置として構成されている。そして、
図2に示す既存のブレーキ装置1aに対して、駐車ブレーキ作動状態検知装置6が新たに設置されて付加されることで、
図9に示すブレーキ装置4が構成される。また、
図9に示すように、ブレーキ装置4には、ブレーキシリンダ装置5が設けられている。
【0120】
ブレーキ装置4のブレーキシリンダ装置5は、第1実施形態のブレーキ装置1のブレーキシリンダ装置2と同様に構成されている。しかし、ブレーキシリンダ装置5は、駐車ブレーキ作動状態検知装置3ではなく駐車ブレーキ作動状態検知装置6が設けられている点において、ブレーキシリンダ装置2とは異なっている。よって、
図2に示す既存のブレーキシリンダ装置2aに対して、駐車ブレーキ作動状態検知装置6が新たに設置されて付加されることで、
図9に示すブレーキシリンダ装置5が構成される。尚、ブレーキシリンダ装置2aに対して駐車ブレーキ作動状態検知装置6が付加される際には、ブレーキシリンダ装置2aのカバー(既存のカバー)23aが取り外される(
図2を参照)。そして、ブレーキシリンダ装置2aに対して、カバー23aの替わりに、カバー80を含む駐車ブレーキ作動状態検知装置6が設置される。これにより、ブレーキシリンダ装置5が構成されることになる。
【0121】
尚、上記においては、既存のブレーキ装置1aに対して駐車ブレーキ作動状態検知装置6が新たに設置されることで、ブレーキ装置4が構成される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。既存のブレーキ装置1aに対する駐車ブレーキ作動状態検知装置6の付加ではなく、駐車ブレーキ作動状態検知装置6が既に付加されたブレーキ装置4が新設される形態が実施されてもよい。
【0122】
ブレーキ装置4及びブレーキシリンダ装置5における駐車ブレーキ作動状態検知装置6以外の要素については、第1実施形態のブレーキ装置1及びブレーキシリンダ装置2における駐車ブレーキ作動状態検知装置3以外の要素と同様に構成される。よって、以下の説明では、ブレーキ装置4及びブレーキシリンダ装置5における駐車ブレーキ作動状態検知装置6以外の要素については、図面において第1実施形態と同一の符号を付すことで又は第1実施形態と同一の符号を引用することで説明を省略し、駐車ブレーキ作動状態検知装置6のみについて説明する。
【0123】
[駐車ブレーキ作動状態検知装置]
次に、駐車ブレーキ作動状態検知装置6について詳しく説明する。
図9に示す駐車ブレーキ作動状態検知装置6は、ブレーキ装置4に用いられる。駐車ブレーキ作動状態検知装置6は、既存のブレーキ装置1aに対して新たに設置されて付加されてもよく、また、新設のブレーキ装置に付加されていてもよい。
【0124】
駐車ブレーキ作動状態検知装置6は、駐車バネブレーキ機構25の作動状態を検知する装置として設けられている。そして、駐車ブレーキ作動状態検知装置6は、カバー80と位置検知機構81とを備えて構成されている。
【0125】
カバー80は、第1実施形態のカバー60と略同様に構成されている。そして、カバー80は、第1実施形態の筒状の部分60aと同様に設けられた筒状の部分80aを備え、その筒状の部分80aの内部に、駐車バネである第2バネ34と駐車ピストンである第2ピストン35とを、第1実施形態と同様の形態で収納するように設けられている。また、カバー80におけるシリンダ本体23に取り付けられる部分の構造も、カバー60と同様に構成されている。そして、既存のブレーキ装置1aに駐車ブレーキ作動状態検知装置6が設置される際におけるカバー80のシリンダ本体23への取り付け方法も、カバー60のシリンダ本体23への取り付け方法と同様に行われる。
【0126】
図10は、
図9の一部を拡大して示す図であって、駐車ブレーキ作動状態検知装置6における位置検知機構81とその近傍とを示す図である。
図10に示すように、カバー80には、第2ピストン35の一部が露出する開口82aを区画する開口部82が設けられている。開口部82は、カバー80の筒状の部分80aの外周における一部に設けられており、本実施形態では、カバー80に1つ設けられている。また、筒状の部分80aには、シリンダ本体23に取り付けられる側に向かって段状に拡径する部分が周方向に亘って延びるように設けられている。そして、開口部82は、筒状の部分80aにおける段状に拡径する部分の一部に設けられ、第2ピストン35の軸方向と平行な方向に向かって開口82aが開口するように形成されている。また、開口82aは、カバー80を第2ピストン35の軸方向と平行な方向に沿って貫通する円形断面の貫通孔として設けられている。
【0127】
位置検知機構81は、カバー80に取り付けられている。そして、位置検知機構81は、カバー80に対する第2ピストン35の位置を検知する機構として設けられ、検知ピストン83、付勢バネ84、スライド支持部85、表示板86、塵除け部87、等を備えて構成されている。
【0128】
検知ピストン83は、円柱状の部分を有する部材として設けられ、本実施形態における検知部を構成している。そして、検知ピストン83は、カバー80に設けられた開口部82の開口82aの内側に少なくとも一部が配置される。
【0129】
また、検知ピストン83は、その円柱軸方向における少なくとも一部の外周において、開口82aの内周に対して摺動自在に配置されている。本実施形態では、検知ピストン83は、開口82aの奥側に配置された端部83aの外周にて、開口82aの内周に対して、摺動自在に配置されている。また、検知ピストン83において、円柱軸方向の中央部分である胴部83bは、端部83aよりも、円柱軸方向に垂直な断面の直径寸法が小さくなるように形成されている。即ち、胴部83bは、開口82aの内周に摺動する段部83aに対して、段状に縮径している。
【0130】
そして、検知ピストン83の胴部83bは、円筒状の部材として設けられて開口部82の内周82aに固定されたスライド支持部85に対して挿通されている。更に、胴部83bの外周は、スライド支持部85の内周に対して摺動自在に配置されており、胴部83bは、その円柱軸方向において、スライド支持部85に対して、スライド移動自在に支持されている。
【0131】
尚、スライド支持部85は、開口82a内において、検知ピストン83の端部83a側に配置された端部が、開口82aの内周に設けられた段部に係合するように、設置されている。そして、スライド支持部85における端部83a側と反対側の端部が、開口82aの内周に設けられた溝に嵌め込まれたスナップリング88と係合するように配置されている。これにより、スライド支持部85が、開口82aの内周において、開口部82に固定されている。そして、検知ピストン83は、開口82aの内側において、第2ピストン35の軸方向と平行な方向に沿って、開口部82及びスライド支持部85に対して摺動して変位可能に設置されている。
【0132】
また、検知ピストン83の胴部83bの周囲には、コイルバネとして設けられた付勢バネ84が配置されている。即ち、胴部83bは、付勢バネ84の内側を挿通している。そして、付勢バネ84における一方の端部は、スライド支持部85の端部に当接して支持されている。更に、付勢バネ84における他方の端部は、検知ピストン83における胴部83bから段部83aに拡径する段状の部分に対して当接している。また、付勢バネ84は、スライド支持部85と段部83aとの間で圧縮された状態で設置されている。これにより、付勢バネ84は、開口部82に固定されたスライド支持部85に対して検知ピストン83を開口82aの奥側に向かって付勢するように構成されている。
【0133】
また、検知ピストン83は、第2ピストン35に対して端部83aにおいて当接可能に、開口部82に設置されている。そして、検知ピストン83は、第2ピストン35の一部に対して開口82a内において当接することで、カバー80に対する第2ピストン35の位置を検知可能に、開口部82に設置されている。尚、第2ピストン35は、外周縁部35bの周方向における一部において、開口82aに露出するように配置されている。そして、検知ピストン83の端部83aは、第2ピストン35に対して外周縁部35bにおいて当接可能に配置されている。
【0134】
また、検知ピストン83は、前述の付勢バネ84によって、第2ピストン35の外周縁部35bに向かって付勢されている。これにより、少なくとも駐車バネブレーキ機構25が作動していない状態(
図9及び
図10に示す状態)では、付勢バネ84によって付勢された検知ピストン83は、開口82a内において、第2ピストン35の外周縁部35bに当接した状態となっている。
【0135】
また、検知ピストン83は、その円柱軸方向における第2ピストン35に当接する側の端部83aと反対側の端部83cが、開口82aから外部に突出した状態で露出するように配置されている。尚、開口部82において検知ピストン83が突出した部分と検知ピストン83の端部83cとの間には、開口82aへの塵等の異物の接近を抑制するための塵除け部87が取り付けられている。塵除け部87は、例えば、開口82aを覆うとともに伸縮自在な蛇腹状に形成された部材として設けられている。
【0136】
図11は、ブレーキ装置4の駐車バネブレーキ機構25が作動した状態を示す図である。また、
図12は、
図11の一部を拡大して示す図であって、駐車ブレーキ作動状態検知装置6における位置検知機構81とその近傍とを示す図である。
図11及び
図12に示すように、駐車ブレーキ作動状態検知装置6は、検知ピストン83の端部83cの端面83dが、駐車バネブレーキ機構25が作動して第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動した際に、カバー80におけるシリンダ本体23側と反対側の端部の端面80bと略同一平面上に位置するように移動するよう構成されている。
【0137】
また、検知ピストン83の端部83cには、端面83dの位置を外部に対してより明瞭に視認され易く表示するためのリング状の表示板86が取り付けられている。表示板86は、その端面86aが検知ピストン83の端面83dと略同一平面上に位置するように、検知ピストン83に設置されている。
【0138】
尚、本実施形態では、駐車ブレーキ作動状態検知装置6は、検知ピストン83の端面83dが、駐車バネブレーキ機構25の作動時に、カバー80の端面80bと略同一平面上に位置するように移動するよう構成されているが、この通りでなくてもよい。例えば、駐車ブレーキ作動状態検知装置6は、検知ピストン83の端面83dが、駐車バネブレーキ機構25の作動時に、ブレーキ作動方向と平行な方向に向かってカバー80の端面80bと同一平面上の位置を通過して変位するように移動するよう構成されていてもよい。この場合、カバー80内における第2ピストン35及び第2バネ34の配置形態に応じて、検知ピストン83の端面83dが、カバー80の端面80bよりも凹むように端面80bと同一平面上の位置を通過して変位してもよく、また、カバー80の端面80bよりも突出するように端面80bと同一平面上の位置を通過して変位してもよい。
【0139】
次に、駐車ブレーキ作動状態検知装置6の作動について説明する。第2圧力室33に圧縮空気が供給されており、駐車バネブレーキ機構25が作動していないときは、検知ピストン83は、
図9及び
図10に示す状態となっている。即ち、駐車バネブレーキ機構25が作動していない状態では、圧縮空気の付勢力によって第2バネ34のバネ力に抗して付勢された第2ピストン35により、第2ピストン35に当接した状態の検知ピストン83は付勢されている。そして、検知ピストン83は、付勢バネ84の付勢力に抗して開口82aから突出する方向に変位している。これにより、検知ピストン83は、その一方の端部83cの端面83dが、カバー80の端面80bから突出した位置に位置している。
【0140】
上記の場合、作業者は、カバー80の端面80bに対して検知ピストン83の端面83dの位置が突出した位置に位置していることを目視で確認することができる。よって、作業者は、駐車バネブレーキ機構25が作動していない状態であることを容易に確認することができる。
【0141】
一方、第2圧力室33から圧縮空気が排出されて駐車バネブレーキ機構25が作動すると、第2バネ34の付勢力により第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動する。そして、
図11及び
図12に示すように、付勢バネ84の付勢力によって、検知ピストン83が、第2ピストン35に追従して変位する。尚、検知ピストン83の第2ピストン35に追従する変位量は、カバー80の内壁に設けられて検知ピストン83の端部83aに当接する段状の部分によって、規制されている。
【0142】
上記の場合、作業者は、カバー80の端面80bに対して検知ピストン83の端面83dの位置が同一平面上に位置していることを目視で確認することができる。よって、作業者は、駐車バネブレーキ機構25が作動している状態であることを容易に確認することができる。
【0143】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。即ち、本実施形態によると、駐車バネブレーキ機構25の作動状態を確認可能な構成を既存のブレーキ装置1aに容易に付加することができる、駐車ブレーキ作動状態検知装置6を提供することができる。また、本実施形態によると、上記の効果を奏する駐車ブレーキ作動状態検知装置6が設けられたブレーキ装置4を提供することができる。また、駐車ブレーキ作動状態検知装置6が設けられたブレーキ装置4において、容易に駐車ブレーキ作動状態検知装置6の取り外し作業及び交換作業を行うことができる。これにより、駐車ブレーキ作動状態検知装置6が設けられたブレーキ装置4のメンテナンス性を向上をさせることができる。
【0144】
また、本実施形態によると、駐車ピストンである第2ピストン35がブレーキ作動方向に移動して駐車バネブレーキ機構25が作動した際に、検知ピストン83の端面83dが、カバー80の端面80bと同一平面上に位置するように、移動する。このため、作業者は、カバー80の端面80bを基準にして検知ピストン83の端面83dの位置を確認するだけで、駐車バネブレーキ機構25の作動状態を目視で容易に確認することができる。
【0145】
(変形例)
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例を実施することができる。
【0146】
(1)前述の実施形態では、ブレーキ装置が踏面ブレーキとして構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。本発明は、踏面ブレーキ装置以外のブレーキ装置に対して適用されてもよい。例えば、ディスクブレーキ装置として構成されたブレーキ装置に対して、本発明が適用されてもよい。
【0147】
本発明の駐車ブレーキ作動状態検知装置が適用されたディスクブレーキ装置としてのブレーキ装置は、例えば、その駐車ブレーキ作動状態検知装置、駐車バネブレーキ機構を備えるブレーキシリンダ装置、ロッド、ブレーキ出力部、キャリパボディ、等を備えて構成される。ロッドは、駐車バネブレーキ機構の作動に伴って付勢されることが可能に構成される。ブレーキ出力部は、ロッドに連動して駆動されてブレーキ力を出力する。キャリパボディは、一対のブレーキてこを備えて構成される。一対のブレーキてこの一方には、ブレーキシリンダ装置の端部が連結される。一対のブレーキてこの他方には、ブレーキ出力部が連結される。そして、一対のブレーキてこにおけるブレーキシリンダ装置及びブレーキ出力部に連結される側と反対側には、制輪子が設けられる。ブレーキシリンダ装置が作動することで、一対のブレーキてこが駆動され、上記の制輪子によって車両の車軸側のディスクが挟み込まれ、ブレーキ力が生じることになる。このようなディスクブレーキ装置に対しても、本発明を適用することができる。
【0148】
(2)前述の実施形態では、駐車バネブレーキ機構及び流体ブレーキ機構の両方が設けられた形態のブレーキ装置を例にとって説明したが、必ずしもこの通りでなくてもよい。流体ブレーキ機構が設けられていない形態のブレーキ装置が実施されてもよい。
【0149】
(3)前述の実施形態では、流体ブレーキ機構及び駐車バネブレーキ機構において用いられる圧力流体として、圧縮空気を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。圧縮空気以外の圧力流体が、流体ブレーキ機構及び駐車バネブレーキ機構において用いられてもよい。例えば、圧油が、流体ブレーキ機構及び駐車バネブレーキ機構において圧力流体として用いられてもよい。
【0150】
(4)前述の実施形態では、検知部が検知ピストンとして設けられた形態を例にとって説明したが、必ずしもこの通りでなくてもよい。検知部が、駐車ピストンに対して開口部の開口を介して対向することで、駐車ピストンに非接触の状態でカバーに対する駐車ピストンの位置を検知可能に設けられた形態が、実施されてもよい。この場合、検知部は、例えば、電磁誘導により検出対象となる金属体である駐車ピストンに発生する渦電流を利用する方式の近接センサとして構成されてもよい。