特許第5909572号(P5909572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IROの特許一覧 ▶ 株式会社日立システムズの特許一覧 ▶ 京都機械工具株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5909572
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】検出用器具
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20160412BHJP
   H01Q 9/42 20060101ALI20160412BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   G06K7/10 168
   H01Q9/42
   H04B5/02
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-53835(P2015-53835)
(22)【出願日】2015年3月17日
【審査請求日】2015年10月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511238033
【氏名又は名称】株式会社IRO
(73)【特許権者】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 久仁浩
(72)【発明者】
【氏名】山内 繁
(72)【発明者】
【氏名】川添 徹
(72)【発明者】
【氏名】西岡 正晃
(72)【発明者】
【氏名】中田 祥吾
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−142687(JP,A)
【文献】 特表2007−515848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00− 7/14
H01Q 9/00− 9/46
H01Q 1/44− 1/46
H04B 5/02
G06K 19/00−19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物に設けられているICタグを検出するための検出用器具であって、
外部のリーダ装置からの電磁波に基づいて高周波電流を生じさせる通信路と、
前記通信路に対して導体間の接続または電磁結合によって接続されていると共に、前記ICタグを前記高周波電流に基づく電磁誘導に基づいて検出するコイル状のタグ検出部と、
前記タグ検出部に対して電気的に接続されると共に前記通信路に対して電気的に非接触であり、前記高周波電流に基づいて外部に電磁波を放射するアンテナ部と、
前記検査対象物に対して作用を行う作用部と、
を備えることを特徴とする検出用器具。
【請求項2】
請求項1記載の検出用器具であって、
前記アンテナ部は、複数回折り返された九十九折形状に設けられている、
ことを特徴とする検出用器具。
【請求項3】
請求項1記載の検出用器具であって、
前記アンテナ部は、ストレート形状に設けられていて、かつ前記通信路に対向するように設けられている、
ことを特徴とする検出用器具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の検出用器具であって、
前記タグ検出部に連続するように延長導体部が設けられていると共に、この延長導体部は、前記通信路に対して非接触の状態で対向して対向部位を形成し、前記高周波電流が流れる場合には、この対向部位で電磁結合を生じさせる、
ことを特徴とする検出用器具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の検出用器具であって、
前記作用部は、指示棒における対象物を指し示す先端取付部である、
ことを特徴とする検出用器具。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の検出用器具であって、
前記作用部は、打音ハンマーにおけるヘッドである、
ことを特徴とする検出用器具。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の検出用器具であって、
前記作用部は、六角レンチにおける先端側の嵌合部である、
ことを特徴とする検出用器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを組み込んだ各種の部材の個体識別を行い易くするための検出用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグの小型化に伴って、近年、種々のものにICタグを組み込んだものが考案されつつある。そのようなものとしては、たとえば、特許文献1および特許文献2に開示の技術内容がある。特許文献1には、小型ICタグと、リーダ装置の間が入り組んでいたり、電波が直接進入できない空間配置であっても、検出ができるような構成について開示されている。かかる構成においては、同軸ケーブルの小型ICタグ側の一端側には小型ループアンテナが接続されていて、小型ICタグを検出可能としていると共に、同軸ケーブルのリーダ装置側のアンテナ付近では、リーダ装置のアンテナと対向したダイポールアンテナが接続されていて、これらの間の通信を可能としている。
【0003】
ところで、電磁気学によれば、小型ICタグ側のコイル状の小型ループアンテナから離れる距離をRとすると、そのRの2乗または3乗に逆比例して感度が弱くなる。すなわち、特許文献1開示の構成では、小型ループアンテナの直近のICタグのみを検出するような、狙った被検出体をピンポイントで検出する能力を有していて、小型ICタグが密集していても、狙った1つの小型ICタグを検出可能としている。
【0004】
また、特許文献2には、代表的な伝送ケーブルを同軸ケーブルとし、その同軸ケーブルの端部に接続されるアンテナの種類を、ICタグの性能やリーダの装置の種類に整合させるように組み合わせ、リーダ装置のアンテナ部と離れた箇所に存在しているICタグを電磁的に接続するといった技術内容について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−90813号公報(図11A図12参照)
【特許文献2】特開2010−218537号公報(図23図26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような技術内容では、次のような問題がある。すなわち、小型ICタグを検出するための検出用器具に、例えば同軸ケーブルを適用する場合、その同軸ケーブルを内蔵するか、あるいは同軸ケーブル自身が検出用器具の筐体等の外部に露出するかのいずれかとなる。
【0007】
しかしながら、同軸ケーブルを内蔵する場合には、検出用器具の大掛かりな設計変更が必要となる。また、同軸ケーブルが検出用器具の筐体等の外部に露出する態様で取り付けられる場合には、その同軸ケーブルが邪魔になる場合がある。特に、検出用器具が金属製の指し棒の如き伸縮可能なタイプのものである場合には、その検出用器具が縮められた状態では、同軸ケーブルが弛んでしまい、その弛み部分が引っ掛かる等して、断線や落下等の不具合が生じてしまう場合がある。
【0008】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、ICタグを検出する検査対象物と外部のリーダ装置との間で、同軸ケーブルが邪魔になるという課題を解決することが可能な検出用器具を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、検査対象物に設けられているICタグを検出するための検出用器具であって、外部のリーダ装置からの電磁波に基づいて高周波電流を生じさせる通信路と、通信路に対して導体間の接続または電磁結合によって接続されていると共に、ICタグを高周波電流に基づく電磁誘導に基づいて検出するコイル状のタグ検出部と、タグ検出部に対して電気的に接続されると共に通信路に対して電気的に非接触であり、高周波電流に基づいて外部に電磁波を放射するアンテナ部と、検査対象物に対して作用を行う作用部と、を備えることを特徴とする検出用器具が提供される。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、アンテナ部は、複数回折り返された九十九折形状に設けられている、ことが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、アンテナ部は、ストレート形状に設けられていて、かつ通信路に対向するように設けられている、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、タグ検出部に連続するように延長導体部が設けられていると共に、この延長導体部は、通信路に対して非接触の状態で対向して対向部位を形成し、高周波電流が流れる場合には、この対向部位で電磁結合を生じさせる、ことが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、作用部は、指示棒における対象物を指し示す先端取付部である、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、作用部は、打音ハンマーにおけるヘッドである、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、作用部は、六角レンチにおける先端側の嵌合部である、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、検出用器具において、ICタグを検知する検知部と外部のリーダ装置との間で、同軸ケーブルが邪魔になるのを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る検出用器具の基本構成を示すブロック図である。
図2図1における信号中継部のアンテナ部がストレート形状に設けられ、かつ通信路に対してアンテナ部が直交するように設けられている構成例を示す図である。
図3図1における信号中継部のアンテナ部がストレート形状に設けられ、かつ通信路に対してアンテナ部が平行に設けられている構成例を示す図である。
図4図1における信号中継部のアンテナ部が九十九折(つづら折)形状に設けられている構成例を示す図である。
図5図1の信号中継部におけるアンテナ部の九十九折形状の別の構成例を示す図である。
図6図1の信号中継部の最小構成例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面断面図を示している。
図7図1の信号中継部において、通信路が、タグ検出部およびアンテナ部とは電気的な導通が取れる状態で直接接続されていない構成を示す図である。
図8図7に示す構成における感度パターンの一例を示す図である。
図9図3に示すような信号中継部において、ストレート形状のアンテナ部の角度配置を示す図である。
図10図9に示すストレート形状のアンテナ部と通信路を有する信号中継部の最小構成例を示す図である。
図11図9に示すストレート形状のアンテナ部を有する信号中継部において、通信路が、タグ検出部およびアンテナ部とは電気的な導通が取れる状態で直接接続されていない構成を示す図である。
図12図11に示す構成における感度パターンの一例を示す図である。
図13】本発明の一実施の形態に係る検出用器具としての指示棒をリーダ装置に装着して一体化した状態を示す図である。
図14】比較例に係り、同軸ケーブルを用いた指示棒をリーダ装置に装着して一体化した状態を示す図である。
図15図13の指示棒を装着したリーダ装置を用いて、検査対象物であるボルトに取り付けられているICタグを検出するイメージを示す図である。
図16】本発明の一実施の形態に係る検出用器具としての打音ハンマーを示す図である。
図17図16の打音ハンマーの更なる応用例(別の例)を示す斜視図である。
図18図17に示す打音ハンマーを用いて、ボルトの緩みや破断を判断する際に、ボルトのICタグと通信を行う際のイメージを示す側面図である。
図19】本発明の一実施の形態に係る検出用器具としての六角レンチを示す斜視図である。
図20図19の六角レンチのうち、タグ検出部が取り付けられている先端側を拡大して示す側断面図である。
図21図19とは異なる信号中継部の取付態様の六角レンチを示す図であり、(a)は部分的な断面を示す側面図、(b)は底面図である。
図22図21に示すアンテナ部の構造の詳細を説明するための側面図である。
図23図19および図22とは異なる信号中継部の取付態様の六角レンチを示す図であり、(a)は部分的な断面を示す側面図、(b)は底面図である。
図24図23に示すアンテナ部の構造の詳細を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る、検出用器具10について説明する。最初に、検出用器具10の基本構成について説明するものとし、その後に、検出用器具10の基本構成を適用した各種の検出用器具10について順次説明する。
【0019】
なお、以下の構成においては、通信路50の長手方向をX方向とし、図2における右側をX1側、それとは逆側をX2側とする。また、図2において、X方向に直交する方向をY方向とし、図2において奥側をY1側とし、それとは逆の手前側をY2側とする。ただし、これらを用いずに説明する場合もある。
【0020】
<1−1.検出用器具の基本構成について>
図1は、本実施の形態の検出用器具10の基本構成を示すブロック図である。この検出用器具10は、信号中継部11と、作用部20とを有していて、信号中継部11は、タグ検出部30と、アンテナ部40と、通信路50とを備えている。
【0021】
作用部20は、検査対象物100に対して仕事をする部分である。たとえば、検出用器具10が工具のドライバーであれば、作用部20は、先端側のプラス形状部分やマイナス形状部分が該当し、検出用器具10が工具の六角レンチであれば、作用部20は、六角穴付ボルトの六角穴に嵌め込まれる先端側の部分が該当する。また、検出用器具10が打音ハンマーであれば、作用部20は、検査対象物100を叩くためのヘッド部分が対応する。また、検出用器具10が確認用の指し棒であれば、先端側の検査対象物100を指し示す部分が該当する。
【0022】
なお、検査対象物100としては、ICタグ110を取り付けている各種のものが該当する。以下は、ICタグ110を取り付け可能な検査対象物100の例であるが、たとえば、ボルトやナット、マンホールの蓋、各種の配管、バルブ装置、分電盤のスイッチ部分等のような各種のスイッチ、定期的にメンテナンスする必要があるガス容器、はさみ、巻尺等が挙げられるが、列記した以外のものでも、ICタグ110を取り付け可能であれば、そのICタグ110が取り付けられたものが、検査対象物100に該当する。
【0023】
タグ検出部30は、巻数の少ないコイル状部分(ループアンテナ)であり、1ターンから2〜3ターン程度の巻数に設けられている。なお、図7他では1ターンの場合を示しているが、1ターンに限定されるものではなく、巻数は、ループアンテナの感度にあわせた巻き数が望ましく、幾つであっても良い。このタグ検出部30は、検査対象物100に取り付けられているICタグ110と近接して通信を行う部分であり、いわば磁界アンテナに相当する。
【0024】
また、アンテナ部40は、電界アンテナである放射アンテナに対応する部分であり、タグ検出部30により多くの高周波電流を誘起させる役割がある。この役割がリーダ装置200から放射される電磁波によって、アンテナ部40を含めた導体部分により多くの高周波電流が流れ、その高周波電流によってより大きな定在波が発生し、その定在波に基づいて、リーダ装置200との間で通信が可能となる。
【0025】
ここで、リーダ装置200から放射される電磁波の波長をλとすると、アンテナ部40は、λ/4程度の長さを有しているアンテナ部分であり、その一端側でタグ検出部30に電気的に接続されている。なお、通常は、タグ検出部30とアンテナ部40とは、同一の線材を用いて構成されている。しかしながら、タグ検出部30とアンテナ部40とは、別体的な線材であっても良く、それら別体的な線材を電気的に接続して構成されても良い。なお、λ/4程度とは、正確にλ/4の長さを有しているものも該当するが、概ねλ/4程度の長さであっても良い。すなわち、λ/4から長さがずれると、高周波電流の誘起が減少し最終的にタグ検出部30の感度を低下させる方向に影響を与える。この感度低下が実用限度内であれば多少のずれた長さであっても良い。
【0026】
また、通信路50は、リーダ装置200から放射される電磁波によって高周波電流が流れる部分である。かかる通信路50を流れる高周波電流により、上記のタグ検出部30およびアンテナ部40を含めた導体部分に、定在波を形成する。そして、所定の位置、例えば半波長の位置ごとに、定在波のヌル点(節目となる点;高周波電流の大きさが0または最小となる点)を形成する。
【0027】
リーダ装置200は、たとえば920MHzといった所定の周波数の電磁波を送受信する装置である。このリーダ装置200は、ハンディタイプであることが好ましい。また、リーダ装置200は、インターネットのようなコンピュータネットワークに接続可能なものが望ましい。そして、リーダ装置200で読み取った情報を、リーダ装置200とは異なる外部のデータベースに保存可能としていることが好ましい。いわば、リーダ装置200は、モノのインターネット(Internet of Things;IoT)の構成要素であることが好ましい。
【0028】
ところで、上述した図1に示す検出用器具10の信号中継部11を、より具体的に示すと、図2から図4に示すようなイメージとなる。図2は、信号中継部11のアンテナ部40がストレート形状に設けられ、かつ通信路50に対してアンテナ部40が直交するように設けられている構成例を示す図である。図3は、信号中継部11のアンテナ部40がストレート形状に設けられ、かつ通信路50に対してアンテナ部40が平行に設けられている構成例を示す図である。また、図4は、信号中継部11のアンテナ部40が九十九折(つづら折)形状に設けられている構成例を示す図である。
【0029】
図2に示す構成においては、アンテナ部40は、ストレート形状に設けられていて、その線長は、λ/4となるように設けられている。かかる図2に示す構成では、アンテナ部40は、モノポールアンテナに相当するものであり、アンテナ部40は、通信路50の長手方向(X方向)に対して直交するY方向に延伸する配置となっている。
【0030】
また、図3に示す構成も、図2に示す構成と同様に、アンテナ部40は、ストレート形状に設けられていて、その線長は、λ/4となるように設けられている。また、アンテナ部40は、通信路50に対しては電気的に直接接触しない構成とすることが必要である。ただし、図3に示す構成では、アンテナ部40は、通信路50に対して平行に設けられていて、しかも互いに近接対向するように設けられている。このようにすることで、図3に示す構成では、図2に示す構成と比較して、幅方向に突出する部位が存在しない構成とすることが可能となっている。そのため、狭い場所に挿入しながら、ICタグ110を検出することが可能となる。
【0031】
かかる図3に示す構成においては、アンテナ部40と通信路50とが対向している部分では、その電流が必ず平行で逆向きとなる。しかも、図3に示す構成では、ヌル点T(0)とヌル点T(1)とは、近接した位置に位置していて、アンテナ部40および通信路50の長手方向では、概ね同じ位置に位置している。そのため、アンテナ部40に流れる電流は、このアンテナ部40と近接対向する通信路50を流れる逆方向の電流で打ち消され、アンテナ部40の放射アンテナとしての機能(より遠くまで感度を維持する機能)がなくなる、という問題がある。
【0032】
図4に示す構成においては、アンテナ部40が九十九折形状に曲げられている。この場合も、アンテナ部40の線長は、λ/4となるように設けられている。この図4に示す構成のように、アンテナ部40が九十九折形状に曲げられていることにより、全体的にコンパクトな構成とすることが可能となっている。しかも、九十九折形状のように、アンテナ部40の折り曲げ部位を多くすると、ヌル点T(0)とヌル点T(1)とは離れる。そのため、アンテナ部40側に流れる高周波電流と、通信路50に流れる高周波電流の位相が、図3に示す場合から変化し、上記したような電流の打ち消し効果が減じられる。
【0033】
また、図4に示す構成では、高周波電流が流れる方向が、通信路50に対して直交する部分を長くすることができる。ここで、電磁気学においては、直交関係の電流では、相互干渉がなくなるので、アンテナ部40のアンテナ機能がさほど弱くならずにタグ検出部30周辺の構造を出っ張りの少ないコンパクト構造にまとめることができる。
【0034】
ここで、アンテナ部40は、通信路50に対しては電気的に直接接触しない構成とすることが必要である。そのような構成とするために、アンテナ部40と通信路50の間に、樹脂等のような絶縁部材を配置する構成としても良い。また、アンテナ部40と通信路50を構成する線材のうち少なくとも一方を、エナメル線のような絶縁被膜で覆われた線材によって構成しても良い。
【0035】
<1−2.基本構成に関する効果>
以上のような構成の信号中継部11を備えた検出用器具10によると、信号中継部11は、通信路50と、タグ検出部30と、アンテナ部40とを備えているが、通信路50では、外部のリーダ装置200からの電磁波に基づいて高周波電流を生じさせる。この高周波電流の効果的な発生の方法は、リーダ装置200を通信路50に近接させ、さらにリーダ装置200からの放射電磁波方向が通信路50の長手方向(X方向)に向くように配置する。また、タグ検出部30は、通信路50に対して電気的に接続されていると共に、ICタグ110を高周波電流に基づく電磁誘導に基づいて検出するコイル状の部分である。また、アンテナ部40は、タグ検出部30に対して電気的に接続されると共に通信路50に対して電気的に非接触であり、外部空間に向けて、高周波電流に基づいて電磁波を放射している。また、検出用器具10は、作用部20を備えていて、その作用部20は、ICタグ110を備える検査対象物100に対して仕事をする部分である。
【0036】
このような構成を採用することにより、通信路50は同軸ケーブルに代わり、外部のリーダ装置200から放射される電磁波に基づいて、高周波電流を導通させるので、同軸ケーブルを用いずに済む。そのため、通信路50を同軸ケーブルとした場合、ICタグ110を検出する検査対象物100と外部のリーダ装置200との間で、作用部20が仕事をするのに同軸ケーブルが邪魔になるという課題を根本から解決することが可能となる。また、同軸ケーブルを内蔵する場合のような、検出用器具の大掛かりな設計変更が不要となる
【0037】
また、図4に示すように、アンテナ部40は、複数回折り返された九十九折形状に設けることも可能である。この場合には、九十九折の分だけアンテナ部40を全体的にコンパクトな構成とすることが可能となる。しかも、九十九折形状のように、アンテナ部40がコンパクトになると、アンテナ部40側のヌル点T(0)と通信路50側のヌル点T(1)とは離れるので、それらの間での電流の打ち消し効果が減じられる。また、アンテナ部40を九十九折形状とすると、アンテナ部40には通信路50に対して直交する成分が多くなるので、アンテナ部40のアンテナ機能がさほど弱くならずに済む。しかしながらアンテナ部40は、コンパクトになるほどアンテナ感度が低い方向に向かうので、作用部20の邪魔にならない程度とするのが好ましい。
【0038】
また、図3に示すように、アンテナ部40は、ストレート形状に設けられていて、かつ通信路50に対向するように設けることも可能である。この場合には、図2に示すような構成と比較して、幅方向に突出する部位が存在しない構成とすることが可能となる。そのため、狭い場所に挿入しながら、ICタグ110を検出することが可能となる。なお、この場合は、アンテナ部40のまわりの外部空間に対するアンテナ機能が無くなるので、ICタグ110を検出する領域が減少する。
【0039】
<2−1.九十九折形状のアンテナ部の応用例について>
続いて、図4で説明した信号中継部11における九十九折形状のアンテナ部40の応用例を以下に説明する。図5は、信号中継部11におけるアンテナ部40の九十九折形状の別の構成例を示す図である。なお、図5に示す構成では、アンテナ部40を90度倒すことによって、図4に示す構成となる。ただし、九十九折部分のアンテナ部40が、図4に示す構成よりも、Y方向に突出する長さが短い場合には、図5に示すような九十九折部分のアンテナ部40を採用するのが有利な場合がある。
【0040】
また、図6は、信号中継部11の保護カバー60で保護する構成例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面断面図を示している。この図6に示す構成では、通信路50は、λ/4の長さかそれ以上の長さを有している。また、少なくともアンテナ部40は、樹脂等のような電気的な絶縁性を有する材質で形成された保護カバー60で覆われていて、通信路50の一部も、その保護カバー60で覆われている。
【0041】
通信路50の長さが、λ/4といった短い長さであっても、アンテナ部40と通信路50とで共振を生じ、タグ検出部30におけるICタグ110の検出と、アンテナ部40における放射アンテナとしての機能を発揮させることができる。
【0042】
また、図7は、信号中継部11において、通信路50が、タグ検出部30およびアンテナ部40とは電気的な導通が取れる状態で直接接続されていない構成を示す図である。この構成では、タグ検出部30から更にX1側に向かい、延長導体部70が延伸している。延長導体部70は、通信路50に対して、互いに近接対向するように設けられている。そのため、延長導体部70と通信路50は、電磁結合によって、電気的に接続された状態となっている。このとき、コンデンサと同様に、延長導体部70と通信路50の間が狭いほど、電磁結合が強くなる。このように、延長導体部70と通信路50が物理的に別体とすることで、タグ検出部30とこれに続くアンテナ部40を1つの部品化ができ、故障時などの部品交換をし易くすることができる。
【0043】
かかる図7に示すような構成を採用する場合には、タグ検出部30と通信路50との接続を、たとえばはんだ接合や、接点を設けた接合とする場合と比べて、電気的な接続のための手間を省略することが可能となる。また、図7に示すような構成は、延長導体部70と通信路50の間が機械的に接続されていないので、たとえば伸縮式の差し棒といった伸縮可能な検出用器具10への適用が容易となる。
【0044】
なお、上述した九十九折形状のアンテナ部40と同様に、延長導体部70と通信路50とは、電気的に直接接触しない構成とすることが必要である。そのような構成とするために、延長導体部70と通信路50の間に、樹脂等のような絶縁部材を配置する構成としても良く、延長導体部70と通信路50を構成する線材のうち少なくとも一方を、エナメル線のような絶縁被膜で覆われた線材によって構成しても良い。
【0045】
ここで、図7に示すような構成の感度パターンの一例を図8に示す。図8に示すように、タグ検出部30の感度領域S1は、この部分が磁界アンテナであるため、非常に狭い領域となっている。一方、遠くまで感度を維持した通信が可能な放射電磁波で動作するアンテナ部40と通信路50と延長導体部70のそれぞれの感度領域は重ね合わされて、感度領域S1と比較して非常に広い領域を有する感度領域S2が形成される。
【0046】
なお、上述した各構成のうち、図7に示す構成では、タグ検出部30に連続するように延長導体部70が設けられていると共に、この延長導体部70は、通信路50に対して非接触の状態で対向して対向部位を形成し、高周波電流が流れる場合には、この対向部位で電磁結合を生じさせている。このため、タグ検出部30と通信路50との接続を、たとえばはんだ接合や、接点を設けた接合とする場合と比べて、電気的な接続のための手間を省略することが可能となる。また、延長導体部70と通信路50の間が機械的に接続されていないので、たとえば伸縮式の差し棒といった伸縮可能な検出用器具10への適用が容易となる。
【0047】
<2−2.ストレート形状のアンテナ部の応用例について>
続いて、図3で説明したストレート形状のアンテナ部40の応用例を以下に説明する。図9は、図3に示すような信号中継部11において、ストレート形状のアンテナ部40の角度配置を示す図である。図9のようなストレート形状のアンテナ部40を有する検出用器具10においては、通信路50をグランドアースと見た場合に、X方向に対して90度をなすようにアンテナ部40が配置されている場合に、モノポールアンテナとして最大の能力を発揮する。この90度の角度配置の場合が、図3において破線で示されている。
【0048】
これに対して、図9において実線で示すように、X方向に対してなす角度が0度となる位置までアンテナ部40を倒すと、アンテナ部40はY方向に突出しなくなるので、検出用器具10は、突出部分の存在しない、スマートな構成とすることが可能となる。
【0049】
しかしながら、この場合には、上述したように、アンテナ部40と通信路50とが対向している部分では、同じ大きさの電流が平行で逆向きとなっている。そのため、この対向部分では、電磁波を放射する能力が大きく減じられ、モノポールアンテナとしての機能を発揮できなくなってしまう。そのため、Y方向においてアンテナ部40から離れると、ほとんど通信不能となる。すなわち、アンテナ部40付近での通信は困難になる。しかしながら、通信路50は、電磁波の波長よりも長く設けることができ、その電磁波によって通信路50の軸方向(X方向)で表面を伝達する高周波電流が生じ、その高周波電流により定在波が形成され、通信路50の一端に接続点Pで接続されるタグ検出部30と、λ/4の長さのアンテナ部40が配置されることで、電磁気学で知れるように、その根元にあたる検出部30で最大の高周波電流となる。そのためタグ検出部30の直近のICタグ110と最良の通信を確保することが可能になる。
【0050】
アンテナ部40と通信路50が平行に対向している部分では、アンテナ機能を失っているのでもはやアンテナという呼び方よりも平行二線式の伝送線と呼ぶほうがふさわしく、この平行部分は、損失の少ない状態で電磁波の伝送を行うことができる。また、この平行二線式のX2側の終端には、タグ検出部30が設けられているので、タグ検出部30がICタグ110の情報を検出することで、平行二線式の伝送線となる部分(対向している部分)を介して通信路50を伝わって、リーダ装置200側へと読み取った情報を伝えることができる。
【0051】
なお、図10は、図9に示すストレート形状のアンテナ部40と通信路50を有する信号中継部11の最小構成例を示す図である。図10に示す構成では、アンテナ部40は、λ/4の長さを有していると共に、通信路50は、アンテナ部40と対向している部分の長さがλ/4であり、さらにその対向部分からX1側に向かってλ/4の長さを有している。
【0052】
また、図11は、図9に示すストレート形状のアンテナ部40を有する信号中継部11において、通信路50が、タグ検出部30およびアンテナ部40とは電気的な導通が取れる状態で直接接続されていない構成を示す図である。この構成でも、図7に示す構成と同様に、タグ検出部30から更にX1側に向かい、延長導体部70が延伸していて、この延長導体部70は、通信路50に対して近接対向するように設けられ、これらの間で電磁結合を生じさせ、それによって、電気的に接続された状態となっている。
【0053】
なお、この図11に示す構成においても、アンテナ部40と延長導体部70と通信路50とは、電気的には、互いに直接接触しない構成とすることが必要である。そのために、アンテナ部40と延長導体部70の間、および延長導体部70と通信路50の間に、樹脂等のような絶縁部材を配置する構成としても良く、アンテナ部40と延長導体部70のうち少なくとも一方、および延長導体部70と通信路50を構成する線材のうち少なくとも一方を、エナメル線のような絶縁被膜で覆われた線材によって構成しても良い。
【0054】
かかる図11に示す構成においても、タグ検出部30と通信路50との接続を、たとえばはんだ接合や、接続点Pを設けた接合とする場合と比べて、電気的な接続のための手間を省略することが可能となる。
【0055】
また、図11に示すような構成の感度パターンの一例を図12に示す。図12に示すように、タグ検出部30の感度領域S3は、上述した図8に示す感度領域S1と同程度の領域となっている。しかしながら、アンテナ部40、通信路50および延長導体部70とが重ね合わされた感度領域S4は、非常に狭いか、またはアンテナ部40と通信路50との間の打ち消しによって事実上ゼロとなる。図12では、感度領域S4が非常に狭い状態のイメージを示している。
【0056】
なお、図9から図11に示す構成では、アンテナ部40に代わり、通信路50によって種々の方向に位置可能なリーダ装置200との間の通信が可能であるが、上述したように感度領域S4の幅が狭く、X2方向とX1方向に長く分布している。また、九十九折形状のアンテナ部40ではなく、ストレート形状のアンテナ部40が存在する構成のため、検出用器具10の先端側を細くすることが可能となる。
【0057】
<3.検出用器具の具体例について>
次に、上述したような各構成を適用した検出用器具10の具体例について、図面に基づいて説明する。
【0058】
図13は、検出用器具10としての指示棒10Aを示す図である。かかる指示棒10Aの最も先端側には、先端取付部60Aが取り付けられている。先端取付部60Aの内部には、上述したタグ検出部30と、アンテナ部40とが配置されている。すなわち、信号中継部11の一部が指示棒10Aの先端側に取り付けられているとみなすこともできるし、通信路50が指示棒10Aの把持部80Aまで連続していると見ることができる。
【0059】
また、図13に示す構成では、指示棒10Aは、通信路50を構成する導体製の伸縮ポール部50Aを備えている。伸縮ポール部50Aは、直径の大きな筒状の導体部に、直径の小さな導体部を収納することで、複数段階に延長可能に設けられている。そして、この伸縮ポール部50Aの一端側(先端側)には、信号中継部11が取り付けられている。なお、図13に示す構成では、信号中継部11は、キャップ状の保護カバー60を介して伸縮ポール部50Aの先端側に取り付けられている。なお、リーダ装置200と指示棒10Aは一体的に片手で操作できるように互いに装着可能とすることが望ましい。
【0060】
なお、かかる先端取付部60Aが、作用部20としても機能する。そして、リーダ装置200から電磁波が放射されている状況下で、先端取付部60A(作用部20)で検査対象物100のICタグ110を指し示すことで、リーダ装置200とICタグ110との間で通信を行うことを可能としている。なお、リーダ装置200Aと指示棒10Aは片手で一体的に操作できるよう互いに付着可能な構成とすることが望ましい。
【0061】
また、伸縮ポール部50Aの他端側には、ユーザが把持するための把持部80Aが設けられている。そして、この把持部80Aを把持したとき、リーダ装置200に設けられるトリガレバー81を引く動作が、他の部分によって妨げられずに行うことができ、このトリガレバー81を引いたとき、リーダ装置200から電磁波が放射される構成となっている。なお、リーダ装置200は、把持部80Aに一体的に設けられていても良く、把持部80Aとは別体的に設けられていても良い。
【0062】
図14は、比較例に係り、同軸ケーブル50Sを用いた指示棒10Sを示す図である。図14に示す指示棒10Sでは、同軸ケーブル50Sは、伸縮ポール部50Aに対して弛んだ状態で配置されることがある。特に、伸縮ポール部50Aが縮んでいる状態では、この同軸ケーブル50Sの弛みが顕著となる。
【0063】
これに対して、図13に示す指示棒10Aでは、伸縮ポール部50Aを通信路50として利用しているので、同軸ケーブル50Sを別途設ける場合のように、弛む等の問題が生じることがない。したがって、同軸ケーブル50Sの弛み部分が引っ掛かる等して、断線や落下等の不具合が生じるのを防止可能となる。
【0064】
なお、図15は、指示棒10Aを用いて、検査対象物100であるボルト100Aに取り付けられているICタグ110(図示省略)を検出するイメージを示す図である。このように、指示棒10Aの先端側のタグ検出部30をボルト100Aに近接させることにより、ボルト100AのICタグ110と通信を行うことを可能としていて、通信を行った特定のボルト100Aに関する情報が、リーダ装置200側に送信される。なお、図15では、ボルト100Aと、そのボルト100Aが取り付けられている設置部位との間で、マーキングM1,M2がされている状態を示しており、図15の左側のボルト100Aでは、ボルト100Aの緩みにより、ボルト100A側のマーキングM1と設置部位側のマーキングM2がずれた状態を示している。目視でボルト100Aの緩みをマーキングM1,M2のずれで発見したとき、このずれたボルト100Aに指示棒10Aの検出部30をタッチさせるなどの近接操作を行う。そして、最終的にリーダ装置200の情報処理機能などにより、ボルト100Aの情報検索など自動認識が実現できる。
【0065】
また、図16は、検出用器具10としての打音ハンマー10Bを示す図である。打音検査の際には、図16に示すような打音ハンマー10Bが用いられる。かかる打音ハンマー10Bは、たとえば鋼鉄のような硬い金属材質から形成されているヘッド20Bを備えていて、このヘッド20Bが作用部20に相当する。また、打音ハンマー10Bは、木製の柄部80Bを有していて、この柄部80Bには、通信路50に相当する導電路50Bが設けられている。導電路50Bは、柄部80Bの表面にたとえばアルミ箔を貼付することによって形成しても良く、柄部80Bの内部に埋め込む構成としても良い。導電路50Bは、タグ検出部30に対して接続点Pを介して電気的に接続されている。
【0066】
なお、図16においては、アンテナ部82を有するリーダ装置200を、打音ハンマー10Bに対して一体的に装着可能な状態が示されている(リーダ装置200は破線で示されている)。
【0067】
また、図17は、打音ハンマー10Bの更なる応用例を示す斜視図である。また、図18は、図17に示す打音ハンマー10Bを用いて、ボルト100Bの緩みや破断を判断する際に、ボルト100BのICタグ110と通信を行う際のイメージを示す側面図である。なお、図17および図18では、ボルト100Bのネジ部の先端が、締結の対象物から突出している状態が示されているものの、ボルト100Bの頭部は、締結の対象物の裏面側に位置しているので、図示はされていない。また、図17および図18では、締結の対象物の表面側において、ボルト100Bのネジ部にナット120Bが捻じ込まれている状態が示されている。
【0068】
ICタグ110が、導電路50Bからヘッド20Bを経てボルト100Bに伝わる高周波電流(不図示)で動作する高感度タイプのICタグである場合には、タグ検出部30やアンテナ部40に近接しないで、ヘッド20Bをボルト100Bに直接タッチさせて高周波電流を流すことにより、通信することができる。
【0069】
この打音ハンマー10Bでは、ヘッド20Bに切欠部21Bが設けられている。切欠部21Bは、その内部にボルト100Bを位置させて、いわばボルト100Bを引っ掛けることを可能としている。それにより、ボルト100BのICタグ110との通信を行う際に、その位置決めを容易に行うことができる。
【0070】
また、図19は、検出用器具10としての六角レンチ10Cを示す斜視図である。図20は、六角レンチ10Cのうち、タグ検出部30が取り付けられている先端側を拡大して示す側断面図である。この六角レンチ10Cは、検査対象物100としての六角ボルト100Cに先端側の嵌合部20Cが嵌合する。そして、六角レンチ10Cを回転させることで、六角ボルト100Cを締め付けたり緩めたりすることが可能となっている。このため、先端側の嵌合部20Cは、作用部20に相当する。
【0071】
図19に示すように、アンテナ部40は、ストレート形状に設けられているが、六角レンチ10Cの金属製の本体部50Cの形状に合わせて、適宜曲げられている。かかるアンテナ部40が、六角レンチ10Cの側面部に露出する状態で取り付けられている。
【0072】
ここで、六角レンチ10Cの金属製の本体部50Cは、通信路50として機能する部分である。そのため、アンテナ部40は、金属製の本体部50Cと接触しない状態にする必要があるので、金属製の本体部50Cの側面に長細いスリット状溝51を形成し、そのスリット状溝51に樹脂等の絶縁部材52を配置し、その絶縁部材52を介してアンテナ部40が取り付けられている。
【0073】
また、本体部50Cの先端側には、凹部53が設けられていて、この凹部53にはタグ検出部30が取り付けられている。ただし、金属製の本体部50Cと直接接触するのを防ぐため、凹部53に樹脂等の絶縁部材54を配置し、その絶縁部材54を介してタグ検出部30が取り付けられている。また、タグ検出部30は、金属製の本体部50Cに対して接続点Pを介して電気的に接続されている。
【0074】
このような六角レンチ10Cを用いる場合、検査対象物100としての六角ボルト100Cを締結する際に、六角ボルト100CのICタグ110(図示省略)と通信を行うことが可能となり、通信を行った特定の六角ボルト100Cに関する情報が、リーダ装置200側に送信される。
【0075】
図21は、図19とは異なる信号中継部11の取付態様の六角レンチ10Cを示す図であり、(a)は部分的な断面を示す側面図、(b)は底面図である。この図21(a)、(b)に示す構成では、本体部50Cの先端側に凹部53が設けられていて、この凹部53にタグ検出部30を配置して、タグ検出部30が絶縁部材54で埋め込まれるようにして固定する。また、金属製の本体部50Cの先端側には、渦電流を防止するための切欠57が形成されている。なお、タグ検出部30のコイルからは、その一端から延伸する導線と、もう一端から延伸する導線という、2本の導線が非接触で絡み合いながら溝部55内を這って進む。コイルの一端から延伸する導線は、溝部55の側面に接続点Pを介して電気的に接続される。コイルのもう一端から延伸する導線は、アンテナ部40に連続してつながるように配線され、絶縁部材52で固定される。
【0076】
図22は、図21に示すアンテナ部40の構造の詳細を説明するための側面図である。図22においては、信号中継部11のアンテナ部40が九十九折(つづら折)形状に設けられ、そのアンテナ部40が溝部55に埋め込まれている。なお、溝部55には、樹脂を材質とする絶縁部材52が充填され、さらにアンテナ部40全体を絶縁部材56で覆うことで、アンテナ部40が保持されている。図22に示す構成では、アンテナ部40は、外部から見えるように露出している状態が示されている。ここで、アンテナ部40はストレート形状ではなく、九十九折形状に設けられている。そのため、アンテナ部40の九十九折部分では、スリット状溝51の幅が広く設けられている。
【0077】
なお、図21(a)に示すように、タグ検出部30の接続点Pは、溝部55の内部で六角レンチ10Cの金属製の本体と電気的に接続されている。
【0078】
図23は、図19および図22とは異なる信号中継部11の取付態様の六角レンチ10Cを示す図であり、(a)は部分的な断面を示す側面図、(b)は底面図である。この図23に示す構成では、六角レンチ10Cのボルトとの嵌合部20Cの機械的強度を高めるための工夫が施されている。すなわち、六角レンチ10Cを用いて、六角ボルト100Cを捻じ込む場合、溝部55のような切欠部を六角レンチ10Cの側面に設けると、機械的強度が低下してしまう場合も考えられる。
【0079】
そこで、図23に示す構成では、六角レンチ10Cには、貫通孔58が設けられている。具体的には、六角レンチ10Cの底面側(六角ボルト100Cの六角穴に入り込む面側)の凹部53から、六角レンチ10CのL字状の曲がり部に到達するように、貫通孔58が設けられている。この貫通孔58は、六角レンチ10Cの中心部分(断面六角形の中心)を貫くように設けられている。そして、この貫通孔58の内部に、アンテナ部40の一部を配置し、その貫通孔58に樹脂を材質とする絶縁部材52が充填されることで、アンテナ部40の一部が保持されている。
【0080】
なお、図23(a)、(b)に示す構成では、タグ検出部30の接続点Pは、凹部53のいずれの場所でも良いが、例えば図23(b)では凹部53近傍の切欠57の内部にて、六角レンチ10Cの金属製の本体と電気的に接続点Pで接続されている。
【0081】
図24は、図23に示すアンテナ部40の構造の詳細を説明するための側面図である。図24においては、貫通孔58の開口端部が示されている。そして、アンテナ部40は、この開口端部から引き出されているが、そのアンテナ部40は、絶縁部材56で覆われている。なお、引き出されたアンテナ部40は、六角レンチ10Cの金属製の本体とは接触しない状態で、その外周側で九十九折に折り曲げられ、その九十九折の状態を維持しながら、絶縁部材56で覆われている。
【0082】
なお、タグ検出部30は、図21で説明したのと同様に、絶縁部材56で覆われる状態で凹部53に配置されているので、その詳細についての説明は省略する。
【0083】
このように構成することで、貫通孔58は、六角レンチ10Cの金属部分によって、特に嵌合部20Cの全周が覆われた構成を実現可能となる。そのため、六角レンチ10Cがタグ検出部30およびアンテナ部40を取り付けていながらも、機械的強度を確保可能となる。なお、貫通孔58は、六角レンチ10Cの中心から多少ずれた位置に設けられていても良い。
【0084】
また、上述した図21から図24に示す六角レンチ10Cを用いる場合、ストレート形状のアンテナ部40ではなく、九十九折形状のアンテナ部40を用いることができるので、リーダ装置200との間での通信可能な距離を大きくすることが可能となる。
【0085】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0086】
上述の実施の形態においては、リーダ装置200は、検出用器具10とは別途の部位に存在するものとしている。しかしながら、リーダ装置200は、検出用器具10と一体的に設けられる構成を採用しても良い。たとえば、図13に点線で示したように一体的に装着できるように構成してもよい。この場合、指示棒10Aにおいて、リーダ装置200を把持部80Aに取り付けるように構成しても良い。
【0087】
また、上述の実施の形態では、図7に示すように、延長導体部70は、通信路50に対して、互いに近接対向することで、コンデンサと同様な電磁結合を生じさせている。しかしながら、電磁結合は、たとえばコンデンサ方式ではなくトランス方式で実現するようにしても良い。なお、トランス方式やコンデンサ方式においては、必要に応じて、位相を調整する位相調整用の回路を用いるようにしても良い。
【0088】
また、上述の実施の形態においては、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数として920MHzが挙げられている。しかしながら、RFID通信にて用いられるUHF帯の周波数としては、たとえば860MHzから960MHzの帯域であれば、どのような周波数であっても良い。また、RFID通信にて用いられる周波数としては、UHF帯の周波数には限られず、2.45GHzを中心とする周波数であっても良く、433MHzを中心とする周波数であっても良く、その他の周波数であっても良い。
【符号の説明】
【0089】
10…検出用器具、10A…指示棒、10B…打音ハンマー、10C…六角レンチ、10S…指示棒、11…信号中継部、20…作用部、20B…ヘッド、20C…嵌合部、21B…切欠部、30…タグ検出部、40…アンテナ部、50…通信路、50A…伸縮ポール部、50B…導電路、50C…本体部、50S…同軸ケーブル、51…スリット状溝、52,54…絶縁部材、53…凹部、55…溝部、56…絶縁部材、57…切欠、58…貫通孔、60…保護カバー、60A…先端取付部、61…取付部材、70…延長導体部、80A…把持部、80B…柄部、81…トリガレバー、82…アンテナ部、100…検査対象物、100A,100B…ボルト、100C…六角ボルト、110…ICタグ、200…リーダ装置、M1,M2…マーキング、S1〜S4…感度領域
【要約】
【課題】同軸ケーブルが邪魔になるのを防ぐことが可能な検出用器具を提供する。
【解決手段】検査対象物100に設けられているICタグ110を検出するための検出用器具10であって、外部のリーダ装置200からの電磁波に基づいて高周波電流を生じさせる通信路50と、通信路50に対して導体間の接続または電磁結合によって接続されていると共に、ICタグ110を高周波電流に基づく電磁誘導に基づいて検出するコイル状のタグ検出部30と、タグ検出部30に対して電気的に接続されると共に通信路50に対して電気的に非接触であり、高周波電流に基づいて外部に電磁波を放射するアンテナ部40と、検査対象物100に対して作用を行う作用部20と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図20
図21
図23
図24
図15
図16
図17
図18
図19
図22