【実施例】
【0058】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0059】
参考例1
(サトウキビを原料とし、蔗糖分解酵素を有さない酵母を使った場合に清浄糖液を発酵させるプロセスの実証)
(1)圧搾工程
収穫後のサトウキビの蔗茎部3200gをロールミルで圧搾し、搾汁3130gを得た。
【0060】
尚、以下純糖率とは、清浄糖液に可溶性固形分(Brix)中に含まれる蔗糖の重量%をいう。
【0061】
(2)加熱及び清浄化工程
搾汁を5Lビーカーに移し、100℃で10分間加熱した。次いで、搾汁重量に対して0.085重量%の消石灰Ca(OH)
2を添加し、pH調整と浮遊物及び不純物の凝集をさせた。凝集した浮遊物及び不純物をフィルターろ過し、清浄糖液重量=3000g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=81g、純糖率=70%)を分離した。尚、加熱により搾汁に含まれていた微生物が殺菌されていた。
【0062】
(3)冷却工程
得られた清浄糖液を95℃から30℃まで冷却した。冷却に要したエネルギーは195kJであった。
【0063】
(4)発酵工程
得られた清浄糖液を5Lジャーファーメンターに移し、蔗糖分解酵素を有さない凝集性酵母Saccharomyces cerevisiae(STX347-1D)を湿重量で150g植菌し、30℃で4時間、エタノール発酵させた。酵母は予めYM培地で前培養しておいたものを用いた。発酵終了後、酵母及び凝集した不純物を沈降分離によって回収し、発酵液3100g(エタノール濃度1.1wt%、蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=0g)を分離した。
【0064】
(5)エタノール蒸留及び糖液濃縮工程
発酵液を減圧下で70℃まで加熱昇温し、蒸発したエタノール33gを冷却回収した後、引き続き水を蒸発させ、濃縮糖液468g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=0g、純糖率=90%)を得た。発酵液の昇温に要したエネルギーは124kJであった。
【0065】
(6)結晶化工程
糖液の1/2を引き抜き、更に減圧下で加熱し、蔗糖の過飽和度1.2まで濃縮した後、砂糖の種結晶(粒径250μm)23gを添加し、残りの濃縮糖液を少量ずつ添加しながら、約3時間結晶化させた。
【0066】
(7)粗糖・糖蜜分離工程
結晶化させた砂糖及び糖蜜の混合物を、50〜100μmメッシュの濾布を用いた有孔壁型遠心分離機にて3000rpm20分間遠心分離し、粗糖174g(蔗糖回収率=69%:種結晶添加分抜き)と糖蜜112gに分離した。
【0067】
生産プロセスのフロー図を
図1に、物質収支の結果を
図2に示す。
【0068】
比較例1
(サトウキビを原料とし、蔗糖分解酵素を有さない酵母を使った場合に搾汁を発酵させるプロセス実証)
(1)圧搾工程
収穫後のサトウキビ(NiF8)の蔗茎部3000gをシュレッダーで裁断後、4重ロールミルで圧搾し、搾汁2843mL(搾汁重量=2985g、蔗糖含有量=351g、転化糖含有量=112g、純糖率=63.9%)を得た。
【0069】
(2−1)発酵工程
得られた搾汁を5Lジャーファーメンターに移し、蔗糖分解酵素を有さない凝集性酵母Saccharomyces cerevisiae(STX347-1D)を湿重量で142g植菌し、嫌気条件下、30℃で24時間、エタノール発酵させた。酵母は予めYM培地で前培養しておいたものを用いた。発酵終了後、酵母及び凝集した不純物、計245gを沈降分離によって回収し、発酵液2822g(エタノール濃度2.16wt%、蔗糖含有量=281g、転化糖含有量=15g)を分離した。
【0070】
(2−2)加熱及び清浄化工程
発酵液を5Lビーカーに移し、100℃で10分間加熱した。次いで、搾汁重量に対して0.085重量%の消石灰Ca(OH)
2を添加し、pH調整と浮遊物及び不純物の凝集をさせた。凝集した浮遊物及び不純物をフィルターろ過し、清浄糖液2719g(エタノール濃度1.53wt%、蔗糖含有量=277g、転化糖含有量=15g、純糖率=68.6%)を分離した。実施例1と異なり、加熱工程において、エタノール19gが蒸発した。
【0071】
(3)エタノール蒸留及び糖液濃縮工程
清浄糖液を5Lエバポレーターに移し、減圧下で加熱し、蒸発したエタノール42gを冷却回収した後、引き続き水2104mLを蒸発させ、濃縮糖液573g(蔗糖含有量=277g、転化糖含有量=15g、純糖率=80.6%)を得た。
【0072】
(4)結晶化工程
糖液の1/2を引き抜き、更に減圧下で加熱し、蔗糖の過飽和度1.2まで濃縮した後、砂糖の種結晶(粒径250μm)29gを添加し、残りの濃縮糖液を少量ずつ添加しながら、約3時間結晶化させた。
【0073】
(5)粗糖・糖蜜分離工程
結晶化させた砂糖及び糖蜜の混合物を、50〜100μmメッシュの濾布を用いた有孔壁型遠心分離機にて3000rpm20分間遠心分離し、砂糖186g(蔗糖回収率=67%:種結晶添加分抜き)と糖蜜172g(蔗糖含有量=97g、転化糖含有量=12g、純糖率=61.3%)に分離した。
【0074】
比較例1の物質収支の結果を
図3に示す。
【0075】
実施例1
(サトウキビを原料とし、蔗糖分解酵素を有さない酵母を使った場合に濃縮糖液(Brix=20)を発酵させるプロセスの実証)
(1)圧搾工程
収穫後のサトウキビの蔗茎部3200gをロールミルで圧搾し、搾汁3130gを得た。
【0076】
(2)加熱、静置及び清浄化工程
搾汁を5Lビーカーに移し、100℃で10分間加熱した。次いで、搾汁重量に対して0.085重量%の消石灰Ca(OH)
2を添加し、pH調整と浮遊物及び不純物の凝集をさせた。その後、搾汁を3時間静置して凝集した浮遊物及び不純物を沈降させた。不純物等をフィルターろ過し、清浄糖液3000g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=81g、純糖率=70%)を分離した。フィルターろ過の際、不純物等が沈降していたため、ろ過速度が短縮された。尚、清浄糖液では、加熱により搾汁に含まれていた微生物が殺菌されている。
【0077】
(3)濃縮工程
清浄糖液を減圧下で加熱し、濃縮糖液1800g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=81g、純糖率=70%)を得た。
【0078】
(4)冷却工程
得られた濃縮糖液を95℃から30℃まで冷却した。冷却に要したエネルギーは117kJである。
(5)発酵工程
濃縮糖液の冷却後、5Lジャーファーメンターに移し、蔗糖分解酵素を有さない凝集性酵母Saccharomyces cerevisiae(STX347-1D)を湿重量で90g植菌し、30℃で5時間、エタノール発酵させた。酵母は予めYM培地で前培養しておいたものを用いた。発酵終了後、酵母及び凝集した不純物を沈降分離によって回収し、発酵液1840g(エタノール濃度=1.9wt%、蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=0g)を分離した。
【0079】
(6)エタノール蒸留及び糖液濃縮工程
発酵液を減圧下で30℃から70℃まで加熱昇温させ、蒸発したエタノール33gを冷却回収した後、引き続き水分を蒸発させ、濃縮糖液464g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=0g、純糖率=91%)を得た。発酵液の昇温に要したエネルギーは74kJである。
【0080】
(7)結晶化工程
糖液の1/2を引き抜き、更に減圧下で加熱し、蔗糖の過飽和度1.2まで濃縮した後、砂糖の種結晶(粒径250μm)23gを添加し、残りの濃縮糖液を少量ずつ添加しながら、約3時間結晶化させた。
【0081】
(8)粗糖・糖蜜分離工程
結晶化させた砂糖及び糖蜜の混合物を、50〜100μmメッシュの濾布を用いた有孔壁型遠心分離機にて3000rpm20分間遠心分離し、粗糖176g(蔗糖回収率=70%:種結晶添加分抜き)と糖蜜108gに分離した。尚、上記粗糖量176gは、回収された粗糖量199gから種結晶分23gを差し引いた値である。
【0082】
生産プロセスのフロー図を
図4に、物質収支の結果を
図5に示す。実施例1では濃縮糖液を発酵温度に冷却し、発酵後濃縮温度に加熱するために必要なエネルギー量が191kJであり、319kJを要した参考例1と比較して、エネルギー効率が実質的に向上した。
【0083】
実施例2
(サトウキビを原料とし、蔗糖分解酵素を有さない酵母を使った場合に濃縮糖液(Brix=50)を発酵させるプロセスの実証)
(1)圧搾工程
収穫後のサトウキビの蔗茎部3200gをロールミルで圧搾し、搾汁3130gを得た。
【0084】
(2)加熱、静置及び清浄化工程
搾汁を5Lビーカーに移し、100℃で10分間加熱した。次いで、搾汁重量に対して0.085重量%の消石灰Ca(OH)
2を添加し、pH調整と浮遊物及び不純物の凝集をさせた。その後、搾汁を3時間静置して凝集した浮遊物及び不純物を沈降させた。不純物等をフィルターろ過し、清浄糖液3000g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=81g、純糖率=70%)を分離した。フィルターろ過の際、不純物等が沈降していたため、ろ過速度が短縮された。尚、清浄糖液では、加熱により搾汁に含まれていた微生物が殺菌されている。
【0085】
(3)濃縮工程
清浄糖液を減圧下で加熱し、濃縮糖液720g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=81g、純糖率=70%)を得た。
【0086】
(4)冷却工程
得られた濃縮糖液を70℃から30℃まで冷却した。冷却に要したエネルギーは29kJである。
(5)発酵工程
濃縮糖液の冷却後、5Lジャーファーメンターに移し、蔗糖分解酵素を有さない凝集性酵母Saccharomyces cerevisiae(STX347-1D)を湿重量で36g植菌し、30℃で10時間、エタノール発酵させた。酵母は予めYM培地で前培養しておいたものを用いた。発酵終了後、酵母及び凝集した不純物を沈降分離および遠心分離によって回収し、発酵液736g(エタノール濃度=4.8wt%、蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=0g)を分離した。
【0087】
(6)エタノール蒸留及び糖液濃縮工程
発酵液を減圧下で30℃から70℃まで加熱昇温させ、蒸発したエタノール33gを冷却回収した後、引き続き水分を蒸発させ、濃縮糖液464g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=0g、純糖率=91%)を得た。発酵液の昇温に要したエネルギーは29kJである。
【0088】
(7)結晶化工程
糖液の1/2を引き抜き、更に減圧下で加熱し、蔗糖の過飽和度1.2まで濃縮した後、砂糖の種結晶(粒径250μm)23gを添加し、残りの濃縮糖液を少量ずつ添加しながら、約3時間結晶化させた。
【0089】
(8)粗糖・糖蜜分離工程
結晶化させた砂糖及び糖蜜の混合物を、50〜100μmメッシュの濾布を用いた有孔壁型遠心分離機にて3000rpm20分間遠心分離し、粗糖176g(蔗糖回収率=70%:種結晶添加分抜き)と糖蜜108gに分離した。尚、上記粗糖量176gは、回収された粗糖量199gから種結晶分23gを差し引いた値である。
【0090】
物質収支の結果を
図6に示す。実施例2では濃縮糖液を発酵温度に冷却し、発酵後濃縮温度に加熱するために必要なエネルギー量が58kJであり、319kJを要した参考例1と比較して、エネルギー効率が実質的に向上した。
【0091】
実施例3
(サトウキビを原料とし、蔗糖分解酵素を有さない酵母を使った場合に濃縮糖液(Brix=15)を発酵させるプロセスの実証)
(1)圧搾工程
収穫後のサトウキビの蔗茎部3200gをロールミルで圧搾し、搾汁3130gを得た。
【0092】
(2)加熱、静置及び清浄化工程
搾汁を5Lビーカーに移し、100℃で10分間加熱した。次いで、搾汁重量に対して0.085重量%の消石灰Ca(OH)
2を添加し、pH調整と浮遊物及び不純物の凝集をさせた。その後、搾汁を3時間静置して凝集した浮遊物及び不純物を沈降させた。不純物等をフィルターろ過し、清浄糖液3000g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=81g、純糖率=70%)を分離した。フィルターろ過の際、不純物等が沈降していたため、ろ過速度が短縮された。尚、清浄糖液では、加熱により搾汁に含まれていた微生物が殺菌されている。
【0093】
(3)濃縮工程
清浄糖液を減圧下で加熱し、濃縮糖液2400g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=81g、純糖率=70%)を得た。
【0094】
(4)冷却工程
得られた濃縮糖液を95℃から30℃まで冷却した。冷却に要したエネルギーは156kJである。
(5)発酵工程
濃縮糖液の冷却後、5Lジャーファーメンターに移し、蔗糖分解酵素を有さない凝集性酵母Saccharomyces cerevisiae(STX347-1D)を湿重量で120g植菌し、30℃で5時間、エタノール発酵させた。酵母は予めYM培地で前培養しておいたものを用いた。発酵終了後、酵母及び凝集した不純物を沈降分離によって回収し、発酵液2450g(エタノール濃度=1.5wt%、蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=0g)を分離した。
【0095】
(6)エタノール蒸留及び糖液濃縮工程
発酵液を減圧下で30℃から70℃まで加熱昇温させ、蒸発したエタノール33gを冷却回収した後、引き続き水分を蒸発させ、濃縮糖液464g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=0g、純糖率=91%)を得た。発酵液の昇温に要したエネルギーは98kJである。
【0096】
(7)結晶化工程
糖液の1/2を引き抜き、更に減圧下で加熱し、蔗糖の過飽和度1.2まで濃縮した後、砂糖の種結晶(粒径250μm)23gを添加し、残りの濃縮糖液を少量ずつ添加しながら、約3時間結晶化させた。
【0097】
(8)粗糖・糖蜜分離工程
結晶化させた砂糖及び糖蜜の混合物を、50〜100μmメッシュの濾布を用いた有孔壁型遠心分離機にて3000rpm20分間遠心分離し、粗糖176g(蔗糖回収率=70%:種結晶添加分抜き)と糖蜜108gに分離した。尚、上記粗糖量176gは、回収された粗糖量199gから種結晶分23gを差し引いた値である。
【0098】
物質収支の結果を
図7に示す。実施例3では濃縮糖液を発酵温度に冷却し、発酵後濃縮温度に加熱するために必要なエネルギー量が254kJであり、319kJを要した参考例1と比較して、エネルギー効率が実質的に向上した。
【0099】
実施例4
(サトウキビを原料とし、蔗糖分解酵素を有さない凝集性酵母を使った場合に濃縮糖液(Brix=40)を発酵させるプロセスの実証)
(1)圧搾工程
収穫後のサトウキビの蔗茎部3200gをロールミルで圧搾し、搾汁3130gを得た。
【0100】
(2)加熱、静置及び清浄化工程
搾汁を5Lビーカーに移し、100℃で10分間加熱した。次いで、搾汁重量に対して0.085重量%の消石灰Ca(OH)2を添加し、pH調整と浮遊物及び不純物の凝集をさせた。その後、搾汁を3時間静置して凝集した浮遊物及び不純物を沈降させた。不純物等をフィルターろ過し、清浄糖液3000g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=81g、純糖率=70%)を分離した。フィルターろ過の際、不純物等が沈降していたため、ろ過速度が短縮された。尚、清浄糖液では、加熱により搾汁に含まれていた微生物が殺菌されている。
【0101】
(3)濃縮工程
清浄糖液を減圧下で加熱し、濃縮糖液900g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=81g、純糖率=70%)を得た。
【0102】
(4)冷却工程
得られた濃縮糖液を95℃から30℃まで冷却した。冷却に要したエネルギーは45kJである。
(5)発酵工程
濃縮糖液の冷却後、5Lジャーファーメンターに移し、蔗糖分解酵素を有さない凝集性酵母Saccharomyces cerevisiae(NITE BP-1587)を湿重量で45g植菌し、30℃で5時間、エタノール発酵させた。酵母は予めYM培地で前培養しておいたものを用いた。発酵終了後、酵母及び凝集した不純物を沈降分離によって回収し、発酵液920g(エタノール濃度=3.8wt%、蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=0g)を分離した。
【0103】
(6)エタノール蒸留及び糖液濃縮工程
発酵液を減圧下で30℃から70℃まで加熱昇温させ、蒸発したエタノール33gを冷却回収した後、引き続き水分を蒸発させ、濃縮糖液464g(蔗糖含有量=253g、転化糖含有量=0g、純糖率=91%)を得た。発酵液の昇温に要したエネルギーは37kJである。
【0104】
(7)結晶化工程
糖液の1/2を引き抜き、更に減圧下で加熱し、蔗糖の過飽和度1.2まで濃縮した後、砂糖の種結晶(粒径250μm)23gを添加し、残りの濃縮糖液を少量ずつ添加しながら、約3時間結晶化させた。
【0105】
(8)粗糖・糖蜜分離工程
結晶化させた砂糖及び糖蜜の混合物を、50〜100μmメッシュの濾布を用いた有孔壁型遠心分離機にて3000rpm20分間遠心分離し、粗糖176g(蔗糖回収率=70%:種結晶添加分抜き)と糖蜜108gに分離した。尚、上記粗糖量176gは、回収された粗糖量199gから種結晶分23gを差し引いた値である。
【0106】
物質収支の結果を
図8に示す。実施例4では濃縮糖液を発酵温度に冷却し、発酵後濃縮温度に加熱するために必要なエネルギー量が82kJであり、319kJを要した参考例1と比較して、エネルギー効率が実質的に向上した。