【実施例】
【0051】
次に、実施例に基づいて、本発明についてさらに説明する。但し、本発明が以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
各元素の質量比率で、Mm:32.03%、Ni:59.30%、Mn:5.67%、Al:2.29%、Co:0.68%となるように原料(Ni、Mn、Al及びCoの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:62.4%、Ce:26.8%、Nd:8.2%、Pr:2.6%となるよう調整したものを原料として用いた。
【0053】
得られた混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10
−4〜10
−5Torrまで減圧した後、アルゴンガスを導入し、アルゴンガス雰囲気中で1450℃まで加熱し、次いで総質量200kgの水冷式銅鋳型に10kgの溶湯を4kg/秒で流し込み、水素吸蔵合金を得た。さらに、得られた水素吸蔵合金をステンレス鋼製容器に入れて真空熱処理装置にセットし、アルゴンガス雰囲気中で熱処理を行い、水素吸蔵合金(インゴット)を得た。
【0054】
この際、熱処理は、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で980℃まで昇温し、980℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで100℃以下まで自然冷却し、続いて、再度、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で980℃まで昇温し、980℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで室温まで自然冷却した。
【0055】
次に、Fuji Paudl社製ジョークラッシャー(型式1021−B)と吉田製作所製ブラウンミル(型式1025−HBG)とを用いて、上記の水素吸蔵合金(インゴット)を500μmの篩目を通過する粒子サイズ(−500μm)まで粗砕した。
【0056】
得られた水素吸蔵合金(サンプル)は、ICP分析により、MmNi
4.41Al
0.37Mn
0.45Co
0.05(ABx=5.28)であることが確認された。
【0057】
(実施例2)
実施例1において、実施例1で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも950℃とした。これ以外は、実施例1と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0058】
(実施例3)
実施例1において、実施例1で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも920℃とした。これ以外は実施例1と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0059】
(実施例4)
実施例1において、実施例1で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1020℃とした。これ以外は実施例1と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0060】
(実施例5)
実施例1において、実施例1で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1040℃とした。これ以外は実施例1と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0061】
(実施例6)
各元素の質量比率で、Mm:31.93%、Ni:58.49%、Mn:4.41%、Al:2.47%、Co:2.70%となるように原料(Ni、Mn、Al及びCoの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:78.3%、Ce:15.5%、Nd:4.7%、Pr:1.5%となるよう調整したものを原料として用いた。
【0062】
得られた混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10
−4〜10
−5Torrまで減圧した後、アルゴンガスを導入し、アルゴンガス雰囲気中で1450℃まで加熱し、次いで総質量200kgの水冷式銅鋳型に10kgの溶湯を4kg/秒で流し込み、水素吸蔵合金を得た。さらに、得られた水素吸蔵合金をステンレス鋼製容器に入れて真空熱処理装置にセットし、アルゴンガス雰囲気中で熱処理を行い、水素吸蔵合金(インゴット)を得た。
【0063】
この際、熱処理は、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1030℃まで昇温し、1030℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで100℃以下まで自然冷却し、続いて、再度、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1030℃まで昇温し、1030℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで室温まで自然冷却した。
【0064】
次に、Fuji Paudl社製ジョークラッシャー(型式1021−B)と吉田製作所製ブラウンミル(型式1025−HBG)とを用いて、上記の水素吸蔵合金(インゴット)を500μmの篩目を通過する粒子サイズ(−500μm)まで粗砕した。
【0065】
得られた水素吸蔵合金(サンプル)は、ICP分析により、MmNi
4.35Al
0.40Mn
0.35Co
0.20(ABx=5.30)であることが確認された。
【0066】
(実施例7)
実施例6において、実施例6で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1045℃とした。これ以外は実施例6と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0067】
(実施例8)
実施例6において、実施例6で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1050℃とした。これ以外は実施例6と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0068】
(実施例9)
実施例6において、実施例6で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1055℃とした。これ以外は実施例6と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0069】
(実施例10)
各元素の質量比率で、Mm:31.71%、Ni:55.43%、Mn:5.00%、Al:1.96%、Co:5.90%となるように原料(Ni、Mn、Al及びCoの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:78.8%、Ce:15.1%、Nd:4.6%、Pr:1.5%となるよう調整したものを原料として用いた。
【0070】
得られた混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10
−4〜10
−5Torrまで減圧した後、アルゴンガスを導入し、アルゴンガス雰囲気中で1450℃まで加熱し、次いで総質量200kgの水冷式銅鋳型に10kgの溶湯を4kg/秒で流し込み、水素吸蔵合金を得た。さらに、得られた水素吸蔵合金をステンレス鋼製容器に入れて真空熱処理装置にセットし、アルゴンガス雰囲気中で熱処理を行い、水素吸蔵合金(インゴット)を得た。
【0071】
この際、熱処理は、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1035℃まで昇温し、1035℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで100℃以下まで自然冷却し、続いて、再度、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1035℃まで昇温し、1035℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで室温まで自然冷却した。
【0072】
次に、Fuji Paudl社製ジョークラッシャー(型式1021−B)と吉田製作所製ブラウンミル(型式1025−HBG)とを用いて、上記の水素吸蔵合金(インゴット)を500μmの篩目を通過する粒子サイズ(−500μm)まで粗砕した。
【0073】
得られた水素吸蔵合金(サンプル)は、ICP分析により、MmNi
4.15Al
0.32Mn
0.40Co
0.44(ABx=5.31)であることが確認された。
【0074】
(実施例11)
実施例10において、実施例10で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1040℃とした。これ以外は実施例10と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0075】
(実施例12)
実施例10において、実施例10で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1055℃とした。これ以外は実施例10と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0076】
(実施例13)
実施例10において、実施例10で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1020℃とした。これ以外は実施例10と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0077】
(実施例14)
実施例10において、実施例10で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1030℃とした。これ以外は実施例10と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0078】
(実施例15)
実施例10において、実施例10で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1090℃とした。これ以外は実施例10と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0079】
(実施例16)
各元素の質量比率で、Mm:32.40%、Ni:55.93%、Mn:3.95%、Al:2.25%、Co:5.47%となるように原料(Ni、Mn、Al及びCoの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:61.7%、Ce:27.3%、Nd:8.4%、Pr:2.6%となるよう調整したものを原料として用いた。
【0080】
得られた混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10
−4〜10
−5Torrまで減圧した後、アルゴンガスを導入し、アルゴンガス雰囲気中で1450℃まで加熱し、次いで総質量200kgの水冷式銅鋳型に10kgの溶湯を4kg/秒で流し込み、水素吸蔵合金を得た。さらに、得られた水素吸蔵合金をステンレス鋼製容器に入れて真空熱処理装置にセットし、アルゴンガス雰囲気中で熱処理を行い、水素吸蔵合金(インゴット)を得た。
【0081】
この際、熱処理は、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1080℃まで昇温し、1080℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで100℃以下まで自然冷却し、続いて、再度、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1080℃まで昇温し、1080℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで室温まで自然冷却した。
【0082】
次に、Fuji Paudl社製ジョークラッシャー(型式1021−B)と吉田製作所製ブラウンミル(型式1025−HBG)とを用いて、上記の水素吸蔵合金(インゴット)を500μmの篩目を通過する粒子サイズ(−500μm)まで粗砕した。
【0083】
得られた水素吸蔵合金(サンプル)は、ICP分析により、MmNi
4.11Al
0.36Mn
0.31Co
0.40(ABx=5.18)であることが確認された。
【0084】
(実施例17)
実施例16において、実施例16で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用した。熱処理は、昇温速度10℃/分で1080℃まで昇温し、1080℃を中心温度として、中心温度+3℃の1083℃まで昇温速度0.3℃/分で昇温した後、その直後に、中心温度−3℃の1077℃まで降温速度0.3℃/分で降温し、さらにその直後に、再び1083℃まで昇温速度0.3℃/分で昇温するというように、1080℃を中心温度として±3℃の昇温及び降温を昇降温速度0.3℃/分で繰り返すパルス熱処理を合計3時間行った。このようにパルス熱処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで室温まで自然冷却した。このパルス熱処理及び冷却を1回行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0085】
(実施例18)
各元素の質量比率で、Mm:31.89%、Ni:58.53%、Mn:4.41%、Al:2.47%、Co:2.70%となるように原料(Ni、Mn、Al及びCoの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:81.6%、Ce:18.4%となるよう調整したものを原料として用いた。
【0086】
得られた混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10
−4〜10
−5Torrまで減圧した後、アルゴンガスを導入し、アルゴンガス雰囲気中で1450℃まで加熱し、次いで総質量200kgの水冷式銅鋳型に10kgの溶湯を4kg/秒で流し込み、水素吸蔵合金を得た。さらに、得られた水素吸蔵合金をステンレス鋼製容器に入れて真空熱処理装置にセットし、アルゴンガス雰囲気中で熱処理を行い、水素吸蔵合金(インゴット)を得た。
【0087】
この際、熱処理は、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1060℃まで昇温し、1060℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで100℃以下まで自然冷却し、続いて、再度、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1060℃まで昇温し、1060℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで室温まで自然冷却した。
【0088】
次に、Fuji Paudl社製ジョークラッシャー(型式1021−B)と吉田製作所製ブラウンミル(型式1025−HBG)とを用いて、上記の水素吸蔵合金(インゴット)を500μmの篩目を通過する粒子サイズ(−500μm)まで粗砕した。
【0089】
得られた水素吸蔵合金(サンプル)は、ICP分析により、MmNi
4.35Al
0.40Mn
0.35Co
0.20(ABx=5.30)であることが確認された。
【0090】
(実施例19)
実施例18において、水素吸蔵合金(インゴット)を得るための熱処理を次にように行った以外、実施例18と同様にして水素吸蔵合金(サンプル)を得た。
すなわち、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1070℃まで昇温し、1070℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで100℃以下まで自然冷却し、続いて、再度、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1070℃まで昇温し、1070℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで室温まで自然冷却した。
実施例19で得られた水素吸蔵合金(サンプル)は、ICP分析により、MmNi
4.35Al
0.40Mn
0.35Co
0.20(ABx=5.30)であることが確認された。
【0091】
(実施例20)
実施例18において、水素吸蔵合金(インゴット)を得るための熱処理を次にように行った以外、実施例18と同様にして水素吸蔵合金(サンプル)を得た。
すなわち、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1080℃まで昇温し、1080℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで100℃以下まで自然冷却し、続いて、再度、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1080℃まで昇温し、1080℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで室温まで自然冷却した。
実施例20で得られた水素吸蔵合金(サンプル)は、ICP分析により、MmNi
4.35Al
0.40Mn
0.35Co
0.20(ABx=5.30)であることが確認された。
【0092】
(比較例1)
実施例16において、実施例16で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理及びその後の冷却を1回のみ行った以外は、実施例16と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0093】
(比較例2)
各元素の質量比率で、Mm:33.18%、Ni:49.26%、Mn:5.20%、Al:1.91%、Co:10.45%となるように原料(Ni、Mn、Al及びCoの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:33.1%、Ce:47.7%、Nd:14.6%、Pr:4.6%となるよう調整したものを原料として用いた。
【0094】
得られた混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10
−4〜10
−5Torrまで減圧した後、アルゴンガスを導入し、アルゴンガス雰囲気中で1450℃まで加熱し、次いで総質量200kgの水冷式銅鋳型に10kgの溶湯を4kg/秒で流し込み、水素吸蔵合金を得た。さらに、得られた水素吸蔵合金をステンレス鋼製容器に入れて真空熱処理装置にセットし、アルゴンガス雰囲気中で熱処理を行い、水素吸蔵合金(インゴット)を得た。
【0095】
この際、熱処理は、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1045℃まで昇温し、1045℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで100℃以下まで自然冷却し、続いて、再度、アルゴンガス雰囲気中で昇温速度10℃/分で1045℃まで昇温し、1045℃を3時間温度維持するように高温保持処理を行った後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで室温まで自然冷却した。
【0096】
次に、Fuji Paudl社製ジョークラッシャー(型式1021−B)と吉田製作所製ブラウンミル(型式1025−HBG)とを用いて、上記の水素吸蔵合金(インゴット)を500μmの篩目を通過する粒子サイズ(−500μm)まで粗砕した。
【0097】
得られた水素吸蔵合金(サンプル)は、ICP分析により、MmNi
3.55Al
0.30Mn
0.40Co
0.75(ABx=5.00)であることが確認された。
【0098】
(比較例3)
比較例2において、比較例2で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1055℃とした。これ以外は比較例2と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0099】
(比較例4)
比較例2において、比較例2で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1065℃とした。これ以外は比較例2と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0100】
(比較例5)
比較例2において、比較例2で作製の水素吸蔵合金のインゴットを使用し、高温保持処理における保持温度を2回とも1085℃とした。これ以外は比較例2と同様に熱処理を行って水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0101】
(比較例6)
各元素の質量比率で、Mm:31.80%、Ni:55.35%、Mn:5.10%、Al:2.15%、Co:4.03%、Fe:1.57%となるように原料(Ni、Mn、Al、Co及びFeの原料には純金属を用いた。)を秤量し、混合した。
なお、Mmは、La及びCeの希土類混合物であるミッシュメタルであり、Mm中の各成分の含有割合が、Mm全質量に対してLa:62.9%、Ce:26.1%、Nd:8.3%、Pr:2.7%となるよう調整したものを原料として用いた。
【0102】
得られた混合物をルツボに入れて高周波溶解炉に固定し、10
−4〜10
−5Torrまで減圧した後、アルゴンガスを導入し、アルゴンガス雰囲気中で1450℃まで加熱し、次いで総質量200kgの水冷式銅鋳型に10kgの溶湯を4kg/秒で流し込み、水素吸蔵合金を得た。さらに、得られた水素吸蔵合金をステンレス鋼製容器に入れて真空熱処理装置にセットし、アルゴンガス雰囲気中でオーバーシュート後に高温保持処理を行い、水素吸蔵合金(サンプル)を得た。
【0103】
この際、オーバーシュート及び高温保持処理は、昇温速度10℃/分で1070℃まで昇温させた後、1070℃から1080℃まで20分で昇温させ、1080℃に到達した直後から降温を開始し、1080℃から1070℃まで20分で降温させるようにしてオーバーシュートを行った後、1070℃を4時間5分温度維持するように行った。その後、降温速度20℃/分で500℃まで冷却し、次いで室温まで自然冷却した。
【0104】
次に、Fuji Paudl社製ジョークラッシャー(型式1021−B)と吉田製作所製ブラウンミル(型式1025−HBG)とを用いて、上記の水素吸蔵合金(インゴット)を500μmの篩目を通過する粒子サイズ(−500μm)まで粗砕した。
【0105】
得られた水素吸蔵合金(サンプル)は、ICP分析により、MmNi
4.15Al
0.35Mn
0.41Co
0.30Fe
0.12(ABx=5.33)であることが確認された。
【0106】
<評価方法>
実施例・比較例で得た水素吸蔵合金粉末(サンプル)について、次のようにして各種評価を行った。
【0107】
<残留磁化の測定>
(試料の調製)
実施例・比較例で得られた水素吸蔵合金粉末(-500μm篩下)を20gをサイクロミル((型式1033−200)吉田製作所製)で1分間粉砕し、目開き20μmの篩で分級して―20μm(20μmの篩目を通過する粒子)の水素吸蔵合金粉末(サンプル)を得た。
【0108】
得られたサンプルを、VSM(Vibration Sample Magnetometer:試料振動式磁束計、株式会社玉川製作所製「TM−VSM1014−MRO−M型」,電磁石:TM−WTF51.406−101.5FA型、サンプルホルダー:TM-VSMSH-21−3型、サンプル容器:TM-VSMPCA-C型)にて、ヒステリシスループの測定を行った。
【0109】
(振動試料型磁力計の測定条件)
・max magnetic field・・・10(kOe)
・time constant lock−in amp・・・100(msec)
・measuring method・・・sweep{speed1:5sec/1kOe speed2:10sec/1kOe(1〜−1[kOe])}
・angle・・・fix 0[°]
・gap of pole chips・・・14mm
・measuring loop・・・half
【0110】
残留磁化は、+10(kOe)印加後、上記の測定条件でスイープ、−10(kOe)まで印加した際の0(kOe)時の磁化の値であり、得られたヒステリシスループからVSM測定プログラムにあるAnalysis(測定結果)の表示画面内のMr値(emu)を測定サンプル重量(g)で割って、残留磁化(emu/g)とした。
その際の基本解析条件は、以下の通り。
・Ms or Mmax・・・Mmax
・Y軸の単位・・・磁束密度
【0111】
<磁選歩留りの測定>
得られた水素吸蔵合金粉末(サンプル)を、磁石の合計表面積に対するサンプルの投入速度が0.25((g/分)/cm
2)となるように、実施例・比較例で得られた水素吸蔵合金粉末(サンプル)を磁力選別機へ投入し、磁石に残った磁着物を回収して、その重量を計測して磁着物量を得た。
なお、磁力選別機には、300mT(±30mT)の磁力を有する断面丸型棒状の磁石を並設し、且つそれを上下に4段重ねた構成(磁石の合計表面積400cm
2)の磁力選別機を使用した。
【0112】
計測した磁着物量と投入量から、下記式を用い、磁選歩留りを算出した。
磁選歩留り(%)=(投入量−磁着物量)/投入量×100
【0113】
<微粉化残存率の測定>
上記実施例及び比較例で得られた水素吸蔵合金粉末を、篩い分けして粒度20μm〜53μmの範囲に調整し、測定サンプルを得た。得られた測定サンプル2gをPCTホルダーに投入し、PCT特性測定装置((株)鈴木商館)に接続した。また、残りのサンプルを20サイクル前のサンプルとした。
【0114】
サイクルを回す前に次のような操作を実施した。
(1)合金表面洗浄処理:マントルヒーター(250℃)中、PCTホルダーを加熱した状態で1.75MPaの水素を導入し、10分間放置後、真空引きを行う一連の操作を2回実施した。
(2)合金活性化処理:マントルヒーターからPCTホルダーを取り出し、3MPaの水素を導入し、10分間保持をした。その後、マントルヒーター(250℃)中でPCTホルダーを加熱した状態で10分間真空引きを行った。この一連の操作を2回実施した。
【0115】
マントルヒーターからPCTホルダーを取り出し、45℃の恒温槽にホルダーを移動させた後、真空引きを30分行い、その後、水素吸蔵・放出サイクルを下記条件設定の下で行った。
(導入圧力)2.9MPa
(吸蔵時間)300sec
(放出時間)420sec
(サイクル数)20サイクル
【0116】
20サイクル終了後、30分の真空引きを行った後、PCTホルダーからサンプルを取り出し、20サイクル後のサンプルを得た。
【0117】
20サイクル前後の粉の平均粒径(D50)をマイクロトラック(日機装(株)、HRA9320−X100)を使用して下記条件設定の下で測定し、次式により微粉化残存率(%)を求めた。
(式)・・微粉化残存率(%)=(サイクル後D50/サイクル前D50)×100
(Transp):Reflec
(Sphere):No
(Ref Inx):1.51
(Flow):60ml/sec
(Power):25watts
(Time):10sec
【0118】
【表1】
【0119】
(考察)
上記実施例及びこれまで本発明者が行ってきた試験結果などから、ABx及びCo含有量が所定の範囲である組成において、残留磁化を0(emu/g)より大きく且つ0.020(emu/g)以下の値に制御することにより、磁選処理した際の歩留まりを良好にすることができることが分かった。また、磁選処理しなくても、残留磁化が低いために、微粉化残存率を良好に高めることができることも分かった。
【0120】
なお、実施例での粗砕によって、粉砕機から鉄或いは鉄合金が不純物として混入することになるが、磁選を行って得られた磁着物を調べてみたところ、磁着物中の当該不純物量は0.1%未満であり、残りは水素吸蔵合金であった。磁選処理した際の歩留まりが悪くなると、磁着物として分離される水素吸蔵合金が多くなるから、磁選器内で目詰まりを起こすようになり、磁選処理そのものが出来なくなってしまうと考えられる。