特許第5909604号(P5909604)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5909604表面被覆材、塗布膜及び親水撥油性材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5909604
(24)【登録日】2016年4月1日
(45)【発行日】2016年4月26日
(54)【発明の名称】表面被覆材、塗布膜及び親水撥油性材
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20160412BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160412BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20160412BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20160412BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20160412BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20160412BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20160412BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09D5/16
   C09K3/00 R
   B32B27/18 Z
   B05D5/00 Z
   B05D7/24 303E
【請求項の数】15
【全頁数】121
(21)【出願番号】特願2015-556295(P2015-556295)
(86)(22)【出願日】2015年7月30日
(86)【国際出願番号】JP2015071661
【審査請求日】2015年11月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-155553(P2014-155553)
(32)【優先日】2014年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-155554(P2014-155554)
(32)【優先日】2014年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-206782(P2014-206782)
(32)【優先日】2014年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-206793(P2014-206793)
(32)【優先日】2014年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-206795(P2014-206795)
(32)【優先日】2014年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-78567(P2015-78567)
(32)【優先日】2015年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】魚谷 正和
(72)【発明者】
【氏名】腰山 博史
(72)【発明者】
【氏名】神谷 武志
(72)【発明者】
【氏名】本田 常俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸生
(72)【発明者】
【氏名】藤田 将人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 大輔
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−220374(JP,A)
【文献】 特開2004−298711(JP,A)
【文献】 特開2007−326836(JP,A)
【文献】 特開2007−326821(JP,A)
【文献】 特開平5−58970(JP,A)
【文献】 特公昭45−6006(JP,B1)
【文献】 特開2005−330354(JP,A)
【文献】 特開平5−331455(JP,A)
【文献】 特開平10−7742(JP,A)
【文献】 特開2014−148670(JP,A)
【文献】 特開2014−148504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00〜C09D201/10
B05D1/00〜B05D7/26
B32B1/00〜B32B43/00
C09K3/00〜C09K3/32
C08K3/00〜C08K13/08
C07C1/00〜C07C409/44
C07D201/00〜C07D273/08
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面の少なくとも一部に親水撥油層を形成する表面被覆材であって、
下記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上のフッ素系化合物と、結合剤と、溶媒と、を含む、表面被覆材。
【化1】
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【化2】
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【化3】
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【化4】
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上記式(1)及び(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
上記式(3)及び(4)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基及びCF基のいずれかを含む。
また、上記式(2)及び(4)中、Rは、2価の有機基である連結基である。
また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
【請求項2】
前記フッ素系化合物と前記溶媒との質量組成比が、0.05〜50対99.95〜50の範囲である、請求項1に記載の表面被覆材。
【請求項3】
前記結合剤が、樹脂、水溶性樹脂及び水ガラスのいずれかを含む、請求項1又は2に記載の表面被覆材。
【請求項4】
前記フッ素系化合物と前記結合剤との質量組成比が、0.2〜99.9対99.8〜0.1の範囲である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表面被覆材。
【請求項5】
前記溶媒が、水、有機溶媒又は水と有機溶媒との混合物である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表面被覆材。
【請求項6】
上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上のフッ素系化合物と、結合剤と、を含む、塗布膜。
【請求項7】
基材と、前記基材の表面の一部又は全部に設けられた親水撥油層と、を備え、
前記親水撥油層が、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上のフッ素系化合物を含む、親水撥油性材。
【請求項8】
前記親水撥油層が、さらに結合剤を含む、請求項8に記載の親水撥油性材。
【請求項9】
前記基材が、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、ステンレス、アルミニウム、木材、石、セメント、コンクリート、繊維、布、紙、皮革からなる群のうち、いずれか一つ、又は二以上の組み合わせである、請求項7又は8に記載の親水撥油性材。
【請求項10】
前記基材が、PETフィルム又はガラス板である、請求項7又は8に記載の親水撥油性材。
【請求項11】
全光透過率が90%以上である、請求項10に記載の親水撥油性材。
【請求項12】
前記結合剤が、有機結合剤又は無機結合剤である、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の親水撥油性材。
【請求項13】
親水撥油層が設けられた前記基材の表面における水の静的接触角が15°以下であり、かつ、ヘキサデカンの静的接触角が65°以上である、請求項7乃至12のいずれか一項に記載の親水撥油性材。
【請求項14】
前記基材が、厨房で使用される厨房用部材、又は、サニタリー設備において用いられるサニタリー用部材である、請求項7乃至13のいずれか一項に記載の親水撥油性材。
【請求項15】
前記基材が、油分の固着を防止する油防汚性保護具である、請求項7乃至13のいずれか一項に記載の親水撥油性材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面被覆材、塗布膜及び親水撥油性材に関する。
本願は、2014年7月30日に、日本に出願された、特願2014−155553号、特願2014−155554号、2014年10月7日に、日本に出願された、特願2014−206782号、特願2014−206793号、特願2014−206795、及び、2015年4月7日に、日本に出願された、特願2015−078567号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種基材表面に汚れが付着し難く、かつ水洗にて簡単に汚れを落とせるようにするために、表面に親水撥油性を付与する技術、材料が多く提案されている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、従来の撥水撥油剤を用いてガラスの表面処理を行なう技術が記載されている。しかしながら、この場合、微小な水滴がガラス表面に残存して、しみを形成してしまうという課題があった。この課題を解決するために、含フッ素シラン化合物と親水性シラン化合物との双方を組み合わせた親水撥油処理剤が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、フルオロアルキル基を有するフッ素系ビニルモノマーと、カチオン性、アニオン性、及びノニオン性ビニルモノマー等との共重合体からなる表面改質剤が開示されている。さらに、特許文献2には、この表面改質剤をスライドガラスに塗布し、基材であるスライドガラスの表面に親水撥油性の層を形成することによって、防汚性および防曇性を付与する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、パーフルオロカーボンと酸素原子とを有し、C−H結合およびハロゲン原子のいずれも有しない酸素含有化合物が存在する雰囲気中でプラズマ処理することによって、ガラス表面上に膜を形成し、耐久性、易洗浄性及び防曇性を付与する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、撥水撥油塗装や親水親油塗装では十分な防汚性を発揮することができないが、親水性基と撥油性基とを有するフッ素系オリゴマーを含有する被膜によって、防汚性や易洗浄性を発揮させる方法が開示されている。
【0007】
これらの特許文献1〜4に開示された技術は、基材(の表面)に親水撥油性を付与し、防汚性や防曇性を求める用途への適用が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国特開平5−331455号公報
【特許文献2】日本国特開2002−105433号公報
【特許文献3】日本国特開2008−031511号公報
【特許文献4】日本国特開2009−127015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜4に開示された技術では、汚れた後に一度洗浄してしまうと、親水撥油性が消失してしまい、効果の持続性に課題があった。
また、特許文献2に開示された表面改質剤によれば、シラン系化合物を使用していることから基材がガラスに限定されてしまうという課題があった。なお、その他の基材にも適用可能な親水撥油剤が見出されていないという課題があった。
さらに、化合物の組み合わせによって親水撥油性を発現させようとした場合、親水基と撥油基との機能をバランスよく配向させることが困難であり、基材の表面に形成した塗布膜が十分な親水撥油性を発揮しないという課題があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、様々な基材に対して十分な親水撥油性を付与することが可能であり、親水撥油性の効果の持続性に優れた親水撥油層(塗布膜)を形成することが可能な表面被覆材を提供する。また、基材の表面の一部又は全部に、親水撥油性を発現する親水撥油層(塗布膜)が設けられた親水撥油性材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ところで、フッ素化合物を表面処理剤として用いた場合、処理された表面は撥水撥油性を示すのが通常であり、フッ素構造の炭素数が多くなるほど撥水性は大きくなるのが一般的である。しかしながら、本願の発明者らが鋭意検討した結果、特定の含窒素フッ素系化合物に、親水性付与基を付加した化合物において、親水撥油性という従来のフッ素系化合物では実現できなかった特異な特性を有し、特にフッ素構造の炭素数が多い化合物においても優れた親水性と撥油性とを同時に発現することを見出すとともに、この含窒素フッ素系化合物を基材の表面に定着させる方法を見出して、本発明を完成させた。
【0012】
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した表面被覆材、塗布膜及び親水撥油性材に関する。
【0013】
[1] 基材の表面の少なくとも一部に親水撥油層を形成する表面被覆材であって、
下記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上のフッ素系化合物と、結合剤と、溶媒と、を含む、表面被覆材。
【0014】
【化1】
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【0015】
【化2】
[この文献は図面を表示できません]
【0016】
【化3】
[この文献は図面を表示できません]
【0017】
【化4】
[この文献は図面を表示できません]
【0018】
上記式(1)及び(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
上記式(3)及び(4)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基及びCF基のいずれかを含む。
また、上記式(2)及び(4)中、Rは、2価の有機基である連結基である。
また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
【0019】
[2] 前記フッ素系化合物と前記溶媒との質量組成比が、0.05〜50対99.95〜50の範囲である、上記[1]に記載の表面被覆材。
【0020】
[3] 前記結合剤が、樹脂、水溶性樹脂及び水ガラスのいずれかを含む、上記[1]又は[2]に記載の表面被覆材。
[4] 前記フッ素系化合物と前記結合剤との質量組成比が、0.2〜99.9対99.8〜0.1の範囲である、上記[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の表面被覆材。
【0021】
[5] 前記溶媒が、水、有機溶媒又は水と有機溶媒との混合物である、上記[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の表面被覆材。
【0022】
[6] 上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上のフッ素系化合物と、結合剤と、を含む、塗布膜。
【0023】
[7] 基材と、前記基材の表面の一部又は全部に設けられた親水撥油層と、を備え、
前記親水撥油層が、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上のフッ素系化合物を含む、親水撥油性材。
【0024】
[8] 前記親水撥油層が、さらに結合剤を含む、上記[7]に記載の親水撥油性材。
【0025】
[9] 前記基材が、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、ステンレス、アルミニウム、木材、石、セメント、コンクリート、繊維、布、紙、皮革からなる群のうち、いずれか一つ、又は二以上の組み合わせである、上記[7]又は[8]に記載の親水撥油性材。
【0026】
[10] 前記基材が、PETフィルム又はガラス板である、上記[7]又は[8]に記載の親水撥油性材。
【0027】
[11] 全光透過率が90%以上である、上記[10]に記載の親水撥油性材。
【0028】
[12] 前記結合剤が、有機結合剤又は無機結合剤である、上記[8]乃至[11]のいずれか一項に記載の親水撥油性材。
【0029】
[13] 親水撥油層が設けられた前記基材の表面における水の静的接触角が15°以下であり、かつ、ヘキサデカンの静的接触角が65°以上である、上記[7]乃至[12]のいずれか一項に記載の親水撥油性材。
【0030】
[14] 前記基材が、厨房で使用される厨房用部材、又は、サニタリー設備において用いられるサニタリー用部材である、上記[7]乃至[13]のいずれか一項に記載の親水撥油性材。
[15] 前記基材が、油分の固着を防止する油防汚性保護具である、上記[7]乃至[13]のいずれか一項に記載の親水撥油性材。
【0031】
[16] 上記式(1)〜(4)で示されるフッ素系化合物(親水撥油剤)の製造方法であって、
下記式(5)又は(6)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料とする、フッ素系化合物(親水撥油剤)の製造方法。
【0032】
【化5】
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【0033】
【化6】
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【0034】
上記式(5)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
上記式(6)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基及びCF基のいずれかを含む。
また、上記式(5)及び(6)中、Yは、CO又はSOである。
さらに、上記式(5)及び(6)中、Aは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるいずれか1のハロゲン原子である。
【0035】
このような構成のフッ素系化合物(親水撥油剤)の製造方法は、含窒素ペルフルオロアルキル基を持つカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料とするため、各種誘導体の合成を容易に行うことができる。
【0036】
[17] 前記溶媒が、アルコール系溶媒、フッ素系溶媒又はアルコール系溶媒とフッ素系溶媒との混合溶媒を含む、前記[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の表面被覆材。
[18] 前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t-ブタノールからなる群のうち、1種又は2種以上を含有するものである、前記[17]に記載の表面被覆材。
【0037】
[19] 部材本体と、当該部材本体の表面の少なくとも一部に形成された汚れ付着防止膜とを、を備え、
前記汚れ付着防止膜は、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上のフッ素系化合物を含む、汚れ付着防止膜付き部材。
【0038】
ここで、上記汚れ付着防止膜は、上記親水撥油性材における表面被覆層に対応する。
また、上記塗布膜は、上記結合剤を含む上記表面被覆層あるいは上記汚れ付着防止膜に対応する。
【0039】
[20] 前記部材本体は、厨房で使用される厨房用部材、サニタリー設備において用いられるサニタリー用部材又は樹脂フィルムである、上記[19]に記載の汚れ付着防止膜付き部材。
【0040】
このような構成の汚れ付着防止膜付き部材は、親水撥油剤であるフッ素系化合物を含む汚れ付着防止膜が部材本体の表面の少なくとも一部に設けられているため、防汚性及び易洗浄性に優れる。
【0041】
[21] 油分の固着を防止する油防汚性保護具であって、
身体の一部を覆う基材と、該基材の少なくとも一部に形成された、親水撥油性を有する油水分離体と、を備え、
前記油水分離体は、撥油性付与基および親水性付与基を有するフッ素系化合物を含む、油防汚性保護具。
【0042】
このような構成の油防汚性保護具によれば、油防汚性保護具への油脂類の付着を抑制することができるとともに、油防汚性保護具に油分が付着しても、水洗いによって容易に付着した油分を洗い流すことができる。即ち、基材に形成された油水分離体によって、基材には親水撥油性が付与される。この油水分離体が形成された基材に油分が接触すると、油水分離体の撥油性によって、油分は静的接触角の大きい油滴として凝集する。そして、水を噴射するだけで、油水分離体の親水性によって、水分は静的接触角の小さい水層となって基材表面に沿って広がり、油滴は容易に剥離して洗い流される。
【0043】
[22] 前記フッ素系化合物として、上記式(1)〜(4)で示される構造の化合物のうち、一種又は二種以上を含む、上記[21]に記載の油防汚性保護具。
【0044】
[23] 前記油水分離体は、前記フッ素系化合物および結合剤を含む油水分離層を構成し、前記基材の少なくとも一部を覆うように前記油水分離層が形成されている、上記[21]又は[22]に記載の油防汚性保護具。
【0045】
[24] 前記基材は、靴を構成する靴底を成し、前記油水分離体は、前記靴底のトレッドパターンの溝部に形成されている、上記[21]乃至[23]のいずれか一項に記載の油防汚性保護具。
【0046】
[25] 前記基材は手袋を成し、前記油水分離体は、前記手袋の少なくとも把持面側に形成されている、上記[21]乃至[23]のいずれか一項に記載の油防汚性保護具。
【0047】
[26] 前記基材は前掛けを成し、前記油水分離体は、前記前掛けの少なくとも表面側に形成されている、上記[21]乃至[23]のいずれか一項に記載の油防汚性保護具。
【0048】
[27] 前記基材は作業着を成し、前記油水分離体は、前記作業着の少なくとも表面側に形成されている、上記[21]乃至[23]のいずれか一項に記載の油防汚性保護具。
【発明の効果】
【0049】
本発明の表面被覆材は、親水撥油剤であるフッ素系化合物と、結合剤と、溶媒とを含んでいるため、塗布性に優れ、様々な基材に対して十分な親水撥油性を付与することが可能であり、親水撥油性の効果の持続性に優れた撥水撥油層(塗布膜)を形成することができる。
【0050】
本発明の塗布膜は、親水撥油剤であるフッ素系化合物と結合剤とを含んでいるため、様々な基材に対する密着性に優れており、基材の表面の少なくとも一部に設けられた際に、十分な親水撥油性を付与することができる。
【0051】
本発明の親水撥油性材は、上述した表面被覆材によって基材の表面の少なくとも一部に親水撥油層が設けられているため、親水撥油性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】油防汚性保護具の一例である作業靴を示す平面図である。
図2】油水分離体が形成された基材を示す要部拡大断面模式図である。
図3】油防汚性保護具の一例である手袋を示す平面図である。
図4】油防汚性保護具の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明を適用した一実施形態である表面被覆材について、これを用いて形成した塗布膜及び親水撥油性材とともに詳細に説明する。
【0054】
<表面被覆材>
先ず、本発明を適用した一実施形態である表面被覆材の構成について説明する。
本実施形態の表面被覆材は、様々な基材に塗布することにより、上記基材の表面の一部又は全部に、親水撥油性を発現させる親水撥油層(あるいは、「塗布膜」)を形成するものである。
具体的には、本実施形態の表面被覆材は、下記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物(フッ素系化合物)と、結合剤と、溶媒と、を含むものである。
【0055】
【化7】
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【0056】
【化8】
[この文献は図面を表示できません]
【0057】
【化9】
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【0058】
【化10】
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【0059】
ここで、上記式(1)及び(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。また、Rfは、炭素数1〜4であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0060】
また、上記式(3)及び(4)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基及びCF基のいずれかを含む。また、Zが窒素原子又はCF基を含む場合、Zから分岐したペルフルオロアルキル基が当該Zに結合していてもよい。
Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0061】
また、上記式(2)及び(4)中、Rは、2価の有機基である連結基である。ここで、前記Rは、直鎖状又は分岐状の有機基であってもよい。また、前記Rは、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
【0062】
また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性付与基である。
【0063】
上述したように、上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物は、分子中に撥油性付与基と親水性付与基とを含む親水撥油剤である。また、本実施形態の表面被覆材は、上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物からなる群から選ばれる一種又は二種以上のフッ素系化合物を含む混合物を、親水撥油剤として用いてもよい。
以下、親水撥油剤について、含窒素フッ素系化合物ごとに詳細に説明する。
【0064】
(親水撥油剤)
「直鎖状の含窒素フッ素系化合物」
上記式(1)又は上記式(2)に示す、直鎖状(又は分岐状)の含窒素フッ素系化合物では、RfとRfからなる含窒素ペルフルオロアルキル基およびRfからなる含窒素ペルフルオロアルキレン基が、撥油性付与基を構成する。
また、上記式(1)又は上記式(2)に示す含窒素フッ素系化合物では、上記撥油性付与基であるRf〜Rf中の、フッ素が結合した炭素数の合計が4〜18個の範囲であることが好ましい。フッ素が結合した炭素数が4未満であると、撥油効果が不十分であるために好ましくない。
【0065】
上記式(1)又は上記式(2)中の上記撥油性付与基の構造の具体例としては、例えば、下記式(7)〜(24)の構造が挙げられる。
【0066】
【化11】
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【0067】
【化12】
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【0068】
【化13】
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【0069】
【化14】
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【0070】
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【0074】
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【0076】
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【0081】
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【0082】
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【0083】
【化28】
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【0084】
「環状の含窒素フッ素系化合物」
上記式(3)又は上記式(4)に示す、環状の含窒素フッ素系化合物では、Rf、RfおよびRfからなる含窒素ペルフルオロアルキレン基、さらにはZが、撥油性付与基を構成する。
また、上記式(3)又は上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物では、上記撥油性付与基であるRf〜Rf及びZ中の、フッ素が結合した炭素数の合計が4〜18個の範囲であることが好ましく、5〜12個の範囲にあることがより好ましい。フッ素が結合した炭素数が4未満であると、撥油効果が不十分であるために好ましくない。
【0085】
上記式(3)又は上記式(4)中の上記撥油性付与基の構造の具体例としては、例えば、下記式(25)〜(49)の構造が挙げられる。
【0086】
【化29】
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【0087】
【化30】
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【0088】
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【0090】
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【0100】
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【0110】
【化53】
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【0111】
ここで、上記式(2)及び上記式(4)中、Rは、分子鎖中において撥油性付与基と親水性付与基とを繋ぐ連結基である。連結基Rの構造は、2価の有機基であれば特に限定されるものではない。連結基Rとしては、具体的には、例えば、酸素原子[−O−]、カルボニル基[−C(=O)−]、イミノ基[−NH−]、スルホニル基[−S(=O)−]、−OP(=O)(O)O−基、炭素数1〜20の炭化水素基及びこれらの組合せを挙げることができる。また、連結基Rは、ポリオキシアルキレン基及びエポキシ基から選択される1種以上を含んでいてもよい。炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし不飽和炭化水素基であってもよい。また、炭化水素基は鎖状炭化水素基であってもよいし、環状炭化水素基であってもよい。鎖状炭化水素基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよい。炭化水素基の例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基を挙げることができる。イミノ基及び炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0112】
また、連結基Rは、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。アミド結合は、カルボン酸アミド結合及びスルホンアミド結合を含む。エステル結合は、カルボン酸エステル結合、スルホン酸エステル結合及びリン酸エステル結合を含む。
【0113】
なお、連結基Rは、含窒素フッ素系化合物に付与したい特性に応じて、適宜選択して導入することが好ましい。具体的には、例えば、溶媒への溶解性を調整したい場合、基材との密着性を改善して耐久性を向上させたい場合、樹脂成分等との相溶性を向上させたい場合等が挙げられる。その方法としては、分子間相互作用に影響を及ぼす極性基の有無や種類を調整する、直鎖状又は分岐構造とした炭化水素基の鎖長を調整する、基材や樹脂成分に含まれる化学構造の一部と類似の構造を導入する、などがある。
【0114】
また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性付与基である。
以下、親水性付与基Xを場合分けして、本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤(含窒素フッ素系化合物)の構造を説明する。
【0115】
「アニオン型」
親水性付与基Xがアニオン型である場合、上記Xは、末端に「−CO」、「−SO」、「−OSO」、「−OP(OH)O」、「−OPO」、「=OPO」又は「−PO(OH)(OM2−y」(Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R;R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20まで、好ましくは炭素数1〜10までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基、yは0〜2の整数)を有する。なお、上述した末端の構造例は、上記Mが1価の場合を示したものである。また、上記Mが2価の場合、上記Mに同一のアニオンが2個結合していてもよいし、異なる2種のアニオンが結合していてもよい。
【0116】
アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)が挙げられる。また、アルカリ土類金属しては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。
【0117】
また、第4級アンモニウム塩(R)としては、R〜Rが水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20まで、好ましくは炭素数1〜10までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基であれば、特に限定されるものではない。ここで、上記アルキル基の炭素数が20以下であれば、親水撥油性を損なうことがないために好ましい。より具体的には、Rが全て同じ化合物としては、例えば、(CH、(C、(C、(C、(C11、(C13、(C15、(C17、(C19、(C1021等が挙げられる。また、Rが全てメチル基の場合としては、例えば、Rが(C)、(C13)、(C17)、(C19)、(C1021)、(C1225)、(C1429)、(C1633)、(C1837)等の化合物が挙げられる。さらに、Rが全てメチル基の場合としては、例えば、Rが全て(C17)、(C1021)、(C1225)、(C1429)、(C1633)、(C1837)等の化合物が挙げられる。更にまた、Rがメチル基の場合としては、例えば、Rが全て(C)、(C17)等の化合物が挙げられる。
【0118】
ところで、水と接触させて使用するような用途においては、水に対する耐久性や親水撥油効果の持続性を有することが望まれる。上記観点から、本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤において(A)含窒素フッ素系化合物は、水への溶解性が低い難溶性化合物であることが望ましい。すなわち、本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤は、親水性付与基Xがアニオン型である場合、対イオンである上記Mが、アルカリ土類金属やMg、Alであることが好ましく、特にCa、Ba、Mgが親水撥油性に優れ、水への溶解度が低いことから好ましい。
【0119】
ここで、親水性賦与基Xがアニオン型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される親水撥油剤(すなわち、直鎖状の含窒素フッ素系化合物)の構造の具体例(但し、対イオンであるMの構造を除く)としては、例えば、下記式(50)〜(117)の構造が挙げられる。
【0120】
【化54】
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【0188】
これに対して、上記式(3)又は上記式(4)で示される親水撥油剤(すなわち、環状の含窒素フッ素系化合物)の構造の具体例(但し、対イオンであるMの構造を除く)としては、例えば、下記式(118)〜(189)の構造が挙げられる。
【0189】
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【0261】
「カチオン型」
親水性賦与基Xがカチオン型である場合、上記Xは、末端に「−N・Cl」、「−N・Br」、「−N・I」、「−N・CHSO」、「−N・RSO」、「−N・NO」、「(−NCO2−」又は「(−NSO2−」(R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20まで、好ましくは炭素数1〜10までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。ここで、炭素数が20以下であれば、親水撥油性を損なうことがないために好ましい。
【0262】
ここで、親水性賦与基Xがカチオン型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される親水撥油剤(すなわち、直鎖状の含窒素フッ素系化合物)の構造の具体例としては、例えば、下記式(190)〜(223)の構造が挙げられる。
【0263】
【化194】
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【0264】
【化195】
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【0265】
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【0296】
【化227】
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【0297】
これに対して、上記式(3)又は上記式(4)で示される親水撥油剤(すなわち、環状の含窒素フッ素系化合物)の構造の具体例としては、例えば、下記式(224)〜(258)の構造が挙げられる。
【0298】
【化228】
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【0299】
【化229】
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【0333】
「両性型」
親水性付与基Xが両性型である場合、上記Xは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N(CHCO」、スルホベタイン型の「−N(CHSO」、アミンオキシド型の「−N」又はホスホベタイン型の「−OPO(CH10」(nは1〜5の整数、R及びRは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R10は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルキレン基)を有する。ここで、炭素数が10以下であれば、親水撥油性を損なうことがないために好ましい。
【0334】
ここで、親水性賦与基Xが両性型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される親水撥油剤(すなわち、直鎖状の含窒素フッ素系化合物)の構造の具体例としては、例えば、下記式(259)〜(309)の構造が挙げられる。
【0335】
【化263】
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【0336】
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【0386】
これに対して、上記式(3)又は上記式(4)で示される親水撥油剤(すなわち、環状の含窒素フッ素系化合物)の構造の具体例としては、例えば、下記式(310)〜(375)の構造が挙げられる。
【0387】
【化314】
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【化378】
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【0452】
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【0453】
なお、上述した本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤の構造の具体例は一例であって、本発明の技術範囲は上記具体例に限定されるものではない。すなわち、本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤は、含窒素ペルフルオロアルキル基からなる撥油性賦与基と、アニオン型、カチオン型及び両性型のいずれかの親水性賦与基と、を分子中に少なくともそれぞれ1以上有していればよい。
【0454】
また、上述した本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤は夫々単独で親水撥油性を充分発揮するが、実用環境は、酸、アルカリ、油等を含み千差万別であり、実用的な耐久性を加味した場合、親水撥油剤を適宜組み合わせて、実際環境に対する耐久性を高めることが、望ましい。
【0455】
なお、本発明の表面被覆材に用いる親水撥油剤は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤の構造の具体例においては、含窒素ペルフルオロアルキル基からなる撥油性賦与基として、式(1)及び式(2)中に示すRf及びRfが対称である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、非対称であってもよい。
【0456】
また、本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤は、分子中に同一又は異なる撥油性賦与基を2以上有していてもよい。さらに、分子中に撥油性賦与基を2以上有する場合、分子の両末端に設けられていてもよいし、分子鎖中に設けられていてもよい。
【0457】
また、本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤は、分子中に同一又は異なる親水性賦与基を2以上有していてもよい。
【0458】
また、本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤は、連結基中に同一又は異なる結合を2以上有していてもよい。さらに、連結基がポリマー型である場合、ユニットの繰り返し数や結合順序は特に限定されない。
【0459】
次に、上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物(親水撥油剤)の親水性及び撥油性の評価方法について説明する。ここで、親水性及び撥油性の評価は、具体的には、接触角測定(液滴法)によって行うことができる。
【0460】
接触角測定は、先ず、上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物をメタノールに溶解させて、メタノール溶液とする。次に、予め1N水酸化カリウム水溶液に室温で2時間浸漬させた後、純水洗浄、アセトン洗浄を行って、乾燥させたソーダガラス板を、前記メタノール溶液中に浸漬(ディップコート)し、室温乾燥によりメタノールを除去して当該ガラス板上に塗布膜を形成する。次いで、この塗布膜の上に、水及びn−ヘキサデカンを滴下し、塗布膜と液滴との静的接触角(単位:°(度)、1°=(π/180)rad)を室温(22±1℃)にてそれぞれ測定する。接触角測定の結果、塗布膜に対する水の静的接触角が15°以下かつn−ヘキサデカンの静的接触角が65°以上である場合に、含窒素フッ素系化合物が親水撥油性を有する(すなわち、含窒素フッ素系化合物が、親水撥油剤である)という。
【0461】
なお、接触角測定において、水及びn−ヘキサデカンの滴下方法としては、下記の条件を用いて行う。
滴下容量:2μL/滴(水)
滴下容量:2μL/滴(n−ヘキサデカン)
測定温度:室温(22±1℃)
【0462】
(親水撥油剤の製造方法)
次に、本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤の製造方法について説明する。
本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤の製造方法は、下記式(5)又は(6)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料として、上記式(1)〜(4)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する。より具体的には、下記式(5)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料として、上記式(1)又は上記式(2)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する。また、下記式(6)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料として、上記式(3)又は上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する。
【0463】
【化380】
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【0464】
【化381】
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【0465】
ここで、上記式(5)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。また、Rfは、炭素数1〜4であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0466】
また、上記式(6)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基及びCF基のいずれかを含む。また、Zが窒素原子又はCF基を含む場合、Zから分岐したペルフルオロアルキル基が当該Zに結合していてもよい。
【0467】
また、上記式(5)及び(6)中、Yは、CO又はSOである。
さらに、上記式(5)及び(6)中、Aは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるいずれか1のハロゲン原子である。
【0468】
なお、本実施形態の表面被覆材に用いる親水撥油剤の製造方法は、上記式(1)〜(4)中に示すXの種類により異なる製造方法となる。以下に、場合分けして説明する。
【0469】
「アニオン型の場合」
先ず、上記式(1)又は上記式(3)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する場合について説明する。
上記式(5)又は上記式(6)に示す原料のうち、YがCOの場合(カルボン酸系の場合)は水溶液化したM(OH)(MはLi,Na,K,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3)へ、YがSOの場合(スルホン酸系の場合)は水溶液化したM(OH)(MはLi,Na,K,R,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3、R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)へ、それぞれ滴下して中和反応させた後に乾固し、目的物が可溶かつ副生するM(A)、M(A)またはM(A)が不溶の溶媒を用いて乾固して得た個体から目的物を抽出し、さらにこの抽出溶媒を乾固することにより、目的物を得ることができる。必要に応じて、この塩を硫酸等の酸を用いてカルボン酸またはスルホン酸に変換し、蒸留した後に再度M(OH)で所望の塩にすることで、高純度化することも可能である。
【0470】
次に、上記式(2)又は上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する場合について説明する。
具体的には、例えば、撥油性付与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性付与基との間に、アミド結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、アミノアルキルカルボン酸やアミノフェニルスルホン酸とを反応させて、次に、水酸化アルカリと反応させることにより、アミド結合を有するカルボン酸又はスルホン酸のアルカリ金属塩が得られる。
【0471】
また、例えば、撥油性付与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性付与基との間に、エステル結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、ヒドロキシフェニル有機酸とを反応させて、次に、水酸化アルカリと反応させることにより、エステル結合を有するカルボン酸又はスルホン酸のアルカリ金属塩が得られる。
【0472】
また、例えば、撥油性付与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性付与基との間に、エーテル結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリドを水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)や水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)で還元して、含窒素ペルフルオロアルキル基を持つアルコールを生成する。次いで、t−ブトキシカリウム等でカリウムアルコラートにしてから、ハロゲン化有機酸の金属塩と反応させることにより、エーテル結合を持つカルボン酸のアルカリ金属塩が得られる。
【0473】
「カチオン型の場合」
具体的には、例えば、上記式(5)又は上記式(6)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて末端第3級アミンにした後、ヨウ化メチル(CHI)や臭化メチル(CHBr)、ジメチル硫酸((CHSO)等のアルキル化剤によって第4級化することにより、カチオン型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
【0474】
また、例えば、上記式(5)又は上記式(6)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアルコールとをエーテル結合させて末端第3級アミンにした後、ヨウ化メチル(CHI)や臭化メチル(CHBr)、ジメチル硫酸((CHSO)等のアルキル化剤によって第4級化することにより、カチオン型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
【0475】
「両性型の場合」
具体的には、例えば、カルボキシベタイン型の場合、先ず、上記式(5)又は上記式(6)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて、または、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアルコールとエーテル結合させて、末端第3級アミンにした後、モノクロル酢酸ナトリウムと反応させることにより、両性型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
【0476】
また、例えば、スルホベタインの場合、上述したように末端第3級アミンにした後、1,3−プロパンスルトン等に代表される環状スルホン酸エステル化合物と反応させることにより、両性型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
【0477】
また、例えば、アミンオキシドの場合、上述したように末端第3級アミンにした後、過酸化水素と反応させることにより、両性型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
【0478】
また、例えば、ホスホベタイン型の場合、含窒素ペルフルオロカルボニルフルオリドを還元してアルコール体にしたもの、又は、含窒素ペルフルオロアルキルスルホニルフルオリドをアミノアルコールでスルホンアミド化して末端に水酸基を導入したものを、例えばトリメチルアミン等の塩基の存在下でオキシ塩化リンと反応させて、含窒素ペルフルオロアルキル基を有するジクロロリン酸エステルを得る。次に、得られた含窒素ペルフルオロアルキル基を有するジクロロリン酸エステルをブロモエタノールと反応させ、次いで炭酸銀触媒下でトリメチルアミンを反応させて四級アンモニウム塩とし、最後に加水分解することにより、両性型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
【0479】
(結合剤)
本実施形態の表面被覆材は、結合剤を含んでいる。表面被覆材に結合剤が含まれているため、処理対象となる基材の表面に表面被覆材を塗布して上記基材の表面の少なくとも一部に表面被覆層(塗布膜)を形成した際、基材表面と表面被覆層(塗布膜)との密着性を高めることができる。さらに、表面被覆層(塗布膜)を形成した際、表面被覆材に含まれる結合剤が親水撥油剤(含窒素フッ素系化合物)を包み込んで、親水撥油剤自体の環境に接触する面積を低減する機能を有し、親水撥油性の効果の持続性を向上させることができる。
【0480】
結合剤としては、具体的には、例えば、樹脂や無機ガラスが挙げられる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等があり、具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、アクリルポリオール系樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂や熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0481】
さらに、親水撥油性の特性を最大限に発揮させるためには、結合剤として親水性ポリマーを用いることが好ましい。また、親水性ポリマーの中でも、基材への密着性や親水撥油複合体と水素結合等の相互作用をもたらすヒドロキシル基を含有しているものが好ましい。
【0482】
親水性ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、セルロースなどの多糖類およびその誘導体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。親水性ポリマーは、架橋剤により架橋してもよい。このような架橋により、塗料の耐久性が向上する。
【0483】
架橋剤としては、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物、アルデヒド化合物、紫外線架橋型化合物、脱離基含有化合物、カルボン酸化合物、ウレア化合物などが挙げられる。
【0484】
無機ガラスとしては、具体的には、例えば、化学式[R14Si(OR15]で示されるトリアルコキシシラン、化学式[Si(OR16](R14〜R16はそれぞれ独立した炭素数1〜6までのアルキル基)で示されるテトラアルコキシシラン等のシラン化合物や、水ガラス等が挙げられる。これらの中でも、水ガラスは、耐久性の向上効果が高いために好ましい。
【0485】
本実施形態の表面被覆材において、上述したフッ素系化合物(親水撥油剤)と結合剤との質量組成比は、0.2〜99.9対99.8〜0.1の範囲であることが好ましく、より好ましくは2〜98対98〜2の範囲、さらに好ましくは10〜90対90〜10の範囲である。親水撥油剤の質量組成比が0.2以上であると、親水撥油性が充分得られるために好ましい。
【0486】
(溶媒)
本実施形態の表面被覆材に用いることができる溶媒としては、水、有機溶媒又は水と有機溶媒との混合物が挙げられる。また、有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、IPA、テトラヒドロフラン、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、DMSO、DMF、アセトン、フッ素系溶剤などが挙げられる。特に、乾燥が容易で使用しやすく、また環境影響等の観点から、水やメタノール、エタノール、IPAなどのアルコール類、又は水とアルコールとの混合物が好ましい。また、これら溶媒と相溶性のある溶媒を混合した混合溶媒を用いることも可能である。このような溶媒としては、具体的には、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン等のケトン系溶剤、ヘキサフルオロキシレン等のフッ素系溶剤などが挙げられる。
【0487】
ここで、表面被覆材において、フッ素系化合物(親水撥油剤)と溶媒との質量組成比は、0.05〜50対99.95〜50の範囲が好ましく、より好ましくは1〜20対99〜80の範囲、さらに好ましくは2〜10対98〜90の範囲である。表面被覆材中のフッ素系化合物(親水撥油剤)の質量組成比が0.05以上であると、処理した際に基材全体を充分親水撥油化できるために好ましい。一方、表面被覆材中のフッ素系化合物の質量組成比が50以下であると、表面被覆材の溶液分散安定性に優れるために好ましい。塗布性や生成物の耐久性を加味すると、表面被覆材中のフッ素系化合物と溶媒との質量組成比は、2〜10対98〜90の範囲が好ましい。
【0488】
ところで、従来技術によれば、基材に親水撥油性を付与する際にシラン系化合物を使用していた。このため、処理対象となる基材がガラスに限定されてしまうという課題があった。
【0489】
これに対して、本実施形態の表面被覆材によれば、処理対象となる基材の種類や形状、あるいは用途に応じて、結合剤を適宜選択することができるため、様々な基材に対して十分な親水撥油性を付与するとともに、親水撥油性の効果の持続性を向上させることが可能となる。
【0490】
なお、表面被覆材は、親水性及び撥油性以外の機能を付与するために、上述したフッ素系化合物(親水撥油剤)、結合剤及び溶媒の他に、顔料や導電付与剤、レベリング剤等の添加剤を任意成分としてさらに含んでもよい。
【0491】
<表面被覆材の製造方法>
本実施形態の表面被覆材の製造方法としては、フッ素系化合物(親水撥油剤)が溶媒中に分散又は溶解できる混合方法であれば特に限定されるものではない。このような混合方法としては、具体的には、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、ホモジナイザー、インペラー式攪拌機、超音波分散機、マグネチックスターラー等が挙げられる。
【0492】
<塗布膜>
上述した表面被覆材を用いることにより、基材の表面の少なくとも一部を塗布膜(表面被覆層)によって被覆することができる。上記塗布膜における、フッ素系化合物(親水撥油剤)と結合剤との質量組成比は、0.2〜99.9対99.8〜0.1の範囲であることが好ましい。ここで、フッ素系化合物の質量組成比が0.2以上であると、十分な親水撥油性が得られるために好ましい。基材との密着性や塗布膜の耐久性を加味すると、2〜98対98〜2の範囲がより好ましく、10〜90対90〜10の範囲が特に好ましい。
【0493】
<塗布膜の形成方法>
塗布膜(表面被覆層)の形成方法(すなわち、表面被覆材の使用方法)としては、具体的には、例えば、基材の表面の少なくとも一部に上述した表面被覆材を塗布した後に、溶剤を除去するために乾燥処理する。これにより、基材の表面の少なくとも一部に塗布膜(表面被覆層)を形成することができる。
【0494】
基材としては、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、ステンレス、アルミニウム、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、それらの組合せ、それらの構造体、積層体等を用いることができる。
【0495】
表面被覆材の、基材の表面への塗布方法としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、表面被覆材中に基材を浸漬する浸漬法、バーコーター法、スプレー、刷毛、ローラなどの塗布手段を使用する、あるいは印刷手法を用いる方法などが挙げられる。これにより、基材の表面の一部又は全部に、塗布膜(表面被覆層)を形成することができる。
【0496】
形成した塗布膜(表面被覆層)の乾燥処理の条件としては、表面被覆材に含まれる溶媒の種類や含有量などによっても異なるが、例えば、常温で1〜24時間の乾燥や、基材に影響を与えない程度での加熱による乾燥が挙げられる。これにより、基材の表面の一部又は全部に、上述した含窒素フッ素系化合物(親水撥油剤)を含む塗布膜(親水撥油層)を形成することができる。換言すると、基材の表面の一部又は全部を塗布膜(親水撥油層)によって被覆することができる。
すなわち、基材の表面の一部又は全部に塗布膜(親水撥油層)が設けられた親水撥油性材を得ることができる。
【0497】
<親水撥油性材>
本発明を適用した一実施形態である親水撥油性材について、説明する。本実施形態の親水撥油性材は、上述した表面被覆材によって、基材の表面の一部又は全部に親水撥油層(塗布膜)が設けられたものである。
【0498】
基材としては、上述した表面被覆材の処理対象として例示された基材(被処理材)を用いることができる。
これらの基材の中でも、例えばPETフィルム等の透明な樹脂製の基材や、板状のガラス(すなわち、ガラス板)等の透明な無機材料基材を用いることが好ましい。これにより、透明性に優れた親水撥油性材を提供することができる。
【0499】
親水撥油層は、上述した表面被覆材を用いて基材の表面の一部又は全部に形成された塗布膜である。したがって、親水撥油層は、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と結合剤とを含んでいる。また、親水撥油層における上記含窒素フッ素系化合物と上記結合剤との質量組成比は、表面被覆材における質量組成比と同様に、0.2〜99.9対99.8〜0.1の範囲であることが好ましい。ここで、フッ素系化合物の質量組成比が0.2以上であると、十分な親水撥油性が得られるために好ましい。基材との密着性や親水撥油層(塗布膜)の耐久性を加味すると、2〜98対98〜2の範囲がより好ましく、10〜90対90〜10の範囲が特に好ましい。
【0500】
(親水撥油性の評価)
本実施形態の親水撥油性材について、親水性及び撥油性の評価は、上述した表面被覆材と同様に、接触角測定によって行うことができる。
【0501】
具体的には、接触角測定の結果、基材の表面に設けられた親水撥油層(すなわち、上述した表面被覆材によって形成された塗布膜)に対する水の静的接触角が15°以下、かつn−ヘキサデカンの静的接触角が65°以上である場合に、その基材が親水撥油性を有する(すなわち、親水撥油性材である)というものとする。これにより、親水撥油性の基材の表面には、油汚れが付着しにくくなる。また、親水性基が存在するため、汚れが付着した場合であっても親水撥油層(塗布膜)と汚れとの間に水が浸入しやすくなり、汚れを浮き上がらせて容易に除去することが可能となる。
【0502】
本実施形態の親水撥油性材では、基材の表面に設けられた親水撥油層における水の静的接触角が15°以下であり、かつ、ヘキサデカンの静的接触角が65°以上であることが好ましい。上記範囲であると、撥油性付与基と親水性付与基との作用に優れるため、油汚れの低付着性(すなわち、防汚性)と水による易洗浄性とに優れた親水撥油性材を実現することができる。
【0503】
(持続性の評価)
本実施形態の親水撥油性材について、親水撥油性効果の持続性(すなわち、親水撥油効果の耐久性)の評価は、親水撥油性材を室温下において水に1時間浸漬させ、乾燥させた後に、親水撥油性材の表面に設けられた親水撥油層(塗布膜)の水および油の静的接触角を測定することで行うことができる。そして、水および油の静的接触角測定の結果、浸漬・乾燥の前後における水および油の静的接触角測定値の差が5°以内であれば、親水撥油性効果の持続性は良好であると判定する。
【0504】
ところで、従来の方法によって親水撥油性が付与された基材では、親水撥油性を発現させる塗布膜と基材との密着が不十分である場合や、塗布膜自体の水への耐久性が不十分である場合がほとんどであったため、一度汚れた後に水洗してしまうと、親水撥油性が消失してしまうという課題があった。すなわち、親水撥油性効果の持続性に課題があった。
【0505】
これに対して、本実施形態の親水撥油性材によれば、基材の表面に設けられた親水撥油層が、当該基材との密着性や水への耐久性を向上させるために適した結合剤を含む構成となっている。このため、親水撥油層が、基材との密着性や、水への耐久性に優れるため、一度汚れた後に水洗した場合であっても親水撥油性が消失することがない。すなわち、親水撥油性効果の持続性に優れた親水撥油性材を提供することができる。
【0506】
(透明性の評価)
透明な基材からなる親水撥油性材について、透明性の評価は、全光透過率(%)によって行うことができる。ここで、全光透過率(%)は、市販のヘーズメーター(例えば、日本電色工業社製、「NDH−300A」等)を用いて測定することができる。具体的には、親水撥油層を含む親水撥油性材全体の全光透過率(%)を測定し、全光透過率が90%以上である場合、透明性に優れた親水撥油性材と判定することができる。
【0507】
防汚性及び易洗浄性に優れ、かつ透明な親水撥油性材によれば、透明性が必要な従来の部材に対しても置き換えることができる。これにより、透明性が必要な用途の場合、例えば、視認性を確保する必要がある場合等、長期間にわたって透明性を容易に維持することができる。
【0508】
具体的には、例えば、透明なガラス板を用いた親水撥油性材によれば、従来のガラス板を用いる用途において置き換えることにより、当該用途のガラス板に対して簡便に防汚性及び易洗浄性を付与することができる。
【0509】
また、可撓性に優れ、かつ透明なPETフィルムを用いた親水撥油性材によれば、当該PETフィルムを他の部材の表面に保護フィルムとして設けることにより、当該他の部材に対して簡便に防汚性及び易洗浄性を付与することができる。
【0510】
以上説明したように、本実施形態の表面被覆材によれば、特定の含窒素フッ素系化合物を親水撥油剤として含んでいるため、処理対象となる基材に対して優れた親水性及び撥油性(親水撥油性)を付与することができる。さらに、本実施形態の表面被覆材は、処理対象となる基材の種類等に応じて適宜選択された結合剤を上記含窒素フッ素系化合物に対して所要の質量組成比で含んでおり、親水撥油性を発現する親水撥油層(塗布膜)と基材との密着性を向上したり、親水撥油層自体の耐久性を向上したり、水に対する耐久性を向上したりすることができるため、親水撥油性の効果の持続性を向上させることができる。
【0511】
また、本実施形態の表面被覆材によれば、親水撥油剤となる含窒素フッ素系化合物及び結合剤の種類を適宜選択することにより、基材の透明性を損なうことなく、当該基材に対して親水撥油性を発現する親水撥油層(塗布膜)を形成することができる。
【0512】
さらに、本実施形態の表面被覆材によれば、親水撥油剤として上記式(1)〜(4)に示す含窒素フッ素系化合物のみを含んでおり、連続して結合している炭素数8以上のペルフルオロアルキル基を含有しないため、生体蓄積性や環境適応性の点で問題となるPFOSまたはPFOAを生成する懸念がない化学構造でありながら、基材に対して優れた親水撥油性を付与することが可能である。
【0513】
本実施形態の親水撥油性材によれば、上述した表面被覆材によって基材の表面に親水撥油性を発現する親水撥油層が設けられているため、防汚性及び易洗浄性に優れる。さらに、親水撥油層(塗布膜)と基材との密着性や、親水撥油層自体の耐久性、水に対する耐久性に優れるため、効果の持続性にも優れる。
【0514】
また、透明性に優れた親水撥油性材によれば、透明性が必要な従来の部材(例えば、ガラス板等)に対しても容易に置き換えることができ、当該部材に対して簡便に防汚性及び易洗浄性を付与することができる。
【0515】
<汚れ付着防止膜付き部材>
以下、上述した親水撥油性材の具体的な態様として、汚れ付着防止膜付き部材について、詳細に説明する。
【0516】
上述した親水撥油性材の一態様である汚れ付着防止膜付き部材は、部材本体(基材)と、当該部材本体の表面の少なくとも一部に形成された汚れ付着防止膜(塗布膜あるいは表面被覆層)と、を備えて、概略構成されている。
【0517】
(部材本体)
汚れ付着防止膜を付与する部材本体としては、当該部材の表面に汚れが付着し難く、かつ水洗にて簡単に汚れを落とせることが望まれている部材であれば、特に限定されるものではない。このような部材としては、例えば、厨房用部材やサニタリー用部材が挙げられる。
【0518】
厨房用部材としては、具体的には、例えば、キッチンパネル、レンジフード、ガステーブル、加熱調理器具等が挙げられる。
【0519】
サニタリー用部材としては、具体的には、例えば、洗面所、浴室、便所などのサニタリー設備において使用される部材であって、例えば、洗面所、浴室及び便所の天井、壁、ドア、鏡、洗面台、浴槽、便器等が挙げられる。
【0520】
また、本態様の汚れ付着防止膜付き部材の部材本体としては、全光透過率が90%以上の、PETフィルム等の樹脂フィルムを用いてもよい。このように、透明性の優れた、PETフィルム等の樹脂フィルムを部材本体として用いることにより、油(ここではヘキサデカン)を弾き、また空気を吹き掛けると油滴が飛び散るといった汚れ低付着性能を示しながら、水との馴染みも良い(水の静的接触角、最大でも15°)親水撥油性フィルムを提供することができる。
【0521】
なお、樹脂フィルムの透明性の評価は、全光透過率(%)によって行うことができる。ここで、全光透過率(%)は、市販のヘーズメーター(例えば、日本電色工業社製、「NDH−300A」等)を用いて測定することができる。具体的には、部材本体の全体の全光透過率(%)を測定し、全光透過率が90%以上である場合、本態様の部材本体として用いることができる。
【0522】
(汚れ付着防止膜)
本態様の汚れ付着防止膜は、部材本体の表面の一部又は全部にわたって設けられた、親水撥油性を発現する被膜(上述した塗布膜及び表面被覆層に対応する)である。部材本体の表面としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、汚れが付着しやすい個所、汚れの付着を防止したい個所等、任意の場所を選択することができる。また、汚れ防止膜は、連続膜であっても不連続膜であってもよい。
【0523】
(親水撥油性の評価)
本態様の汚れ付着防止膜付き部材について、親水性及び撥油性の評価は、上述した親水撥油性材と同様に、接触角測定によって行うことができる。
【0524】
具体的には、接触角測定の結果、部材本体の表面に設けられた汚れ付着防止膜に対する水の静的接触角が15°以下、かつn−ヘキサデカンの静的接触角が65°以上である場合に、その部材が親水撥油性を有する(すなわち、汚れ付着防止膜付き部材である)というものとする。これにより、親水撥油性となった部材本体の表面には、油汚れが付着しにくくなる。また、親水性基が存在するため、汚れが付着した場合であっても汚れ付着防止膜(塗布膜、表面被覆層)と汚れとの間に水が浸入しやすくなり、汚れを浮き上がらせて容易に除去することが可能となる。
【0525】
本態様の汚れ付着防止膜付き部材では、部材本体の表面に設けられた汚れ付着防止膜における水の静的接触角が15°以下であり、かつ、ヘキサデカンの静的接触角が65°以上であることが好ましい。上記範囲であると、撥油性付与基と親水性付与基との作用に優れるため、油汚れの低付着性(すなわち、防汚性)と水による易洗浄性とに優れた汚れ付着防止膜付き部材を実現することができる。
【0526】
(透明性の評価)
透明な部材本体からなる汚れ付着防止膜付き部材について、透明性の評価は、全光透過率(%)によって行うことができる。ここで、全光透過率(%)は、市販のヘーズメーター(例えば、日本電色工業社製、「NDH−300A」等)を用いて測定することができる。具体的には、汚れ付着防止膜(塗布膜、表面被覆層)を含む汚れ付着防止膜付き部材全体の全光透過率(%)を測定し、全光透過率が90%以上である場合、透明性に優れた汚れ付着防止膜付き部材と判定することができる。
【0527】
防汚性及び易洗浄性に優れ、かつ透明なPETフィルムを用いた汚れ付着防止膜付き部材(汚れ付着防止膜付きフィルム)によれば、当該PETフィルムを他の部材の表面に保護フィルムとして設けることにより、当該他の部材に対して簡便に防汚性及び易洗浄性を付与することができる。
【0528】
<汚れ付着防止膜付き部材の製造方法>
本態様の汚れ付着防止膜付き部材の製造方法(すなわち、汚れ付着防止膜を形成する方法)としては、具体的には、例えば、部材本体の表面に上述した表面被覆材を塗布した後に、上記表面被覆材に含まれる溶媒成分を除去するために乾燥処理する。これにより、部材本体の表面に塗布膜(汚れ付着防止膜)を形成することができる。
【0529】
ところで、例えば、厨房用の用途やサニタリー用の用途等における従来の汚れ付着防止膜付き部材では、表面改質剤、特に親水撥油性を示す材料においては、親水性および撥油性、双方の特性を与えるために少なくとも2種以上の化合物の設計や合成が必要であったり、親水性と撥油性とのバランスを調整するための配合比検討や組み合わせ方法等の検討も必要であったり、複数化合物の取り扱いが困難であるとの事情から、充分な防汚性や易洗浄性が得られていないという課題があった。
【0530】
これに対して、本態様の汚れ付着防止膜付き部材によれば、上述した表面被覆材によって部材本体の表面に親水撥油性を発現する汚れ付着防止膜(塗布膜、表面被覆層)を簡便に設けることができる。また、本態様に汚れ付着防止膜付き部材は、上述した特定の含窒素フッ素系化合物を親水撥油剤として含む汚れ付着防止膜が設けられているため、防汚性及び易洗浄性に優れる。さらに、汚れ付着防止膜と部材本体の表面との密着性や、汚れ付着防止膜自体の耐久性に優れるため、効果の持続性にも優れる。
【0531】
また、可撓性に優れ、かつ透明なPETフィルムを用いた汚れ付着防止膜付き部材によれば、当該PETフィルムを他の部材の表面に保護フィルムとして設けることにより、当該他の部材に対して簡便に防汚性及び易洗浄性を付与することができる。
【0532】
さらに、本態様の汚れ付着防止膜付き部材によれば、親水撥油剤として、上記式(1)〜(4)に示す含窒素フッ素系化合物のみを含んでおり、連続して結合している炭素数8以上のペルフルオロアルキル基を含有しないため、生体蓄積性や環境適応性の点で問題となるPFOSまたはPFOAを生成する懸念がない化学構造でありながら、優れた親水撥油性を発揮することが可能である。
【0533】
<油防汚性保護具>
次に、上述した親水撥油性材の具体的な態様として、油防汚性保護具について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0534】
上述した親水撥油性材の他の態様である油防汚性保護具は、油分の固着を防止する油防汚性保護具であって、身体の一部を覆う基材と、上記基材の少なくとも一部に形成された親水撥油性を有する油水分離体と、を備えており、上記油水分離体は、撥油性付与基および親水性付与基を有するフッ素系化合物を含む構成である。
【0535】
(第1の例)
上述した親水撥油性材の他の態様である油防汚性保護具の第1の例として、油脂が床面に存在する作業場等で用いる作業靴を例示する。
図1(a)は、第1の例における作業靴(油防汚性保護具)を示す側面平面図であり、図1(b)は、作業靴の靴底の接地面を示す平面図である。
第1の例における作業靴(油防汚性保護具)20は、アッパー部21と、このアッパー部21に接合される靴底(基材)22とからなる。アッパー部21は、例えば、表面に防水加工が施された柔軟な布や皮革などから形成されている。
【0536】
靴底22は、全体が弾性のある合成樹脂、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)やポリ塩化ビニル(PVC)からなる。この靴底22の接地面22aには、歩行時の滑り防止のための島状のトレッドパターン23が複数形成されている。そして、個々のトレッドパターン23どうしは、溝部24によって区画されている。
【0537】
靴底(基材)22の溝部24(図1を参照)には、図2に示すように油水分離体14が層状に塗布されている。油水分離体14は、撥油性付与基および親水性付与基を有するフッ素系化合物を含む材料から構成されている。撥油性付与基は、油水分離体14の表面に例えば65°以上の静的接触角で油滴を形成させる官能基である。また、親水性付与基は、油水分離体14の表面に例えば15°以下の静的接触角で水分に対する濡れ性を付与する官能基である。なお、こうした接触角は、例えば、自動接触角計(協和界面科学社製、「Drop Master 701」)により測定することができる。
【0538】
油水分離体14は、こうした撥油性付与基および親水性付与基の存在によって、靴底(基材)22の溝部24に親水撥油性を付与する。この油水分離体14が層状に塗布された溝部24に、ラードなどの油分(油脂)が接触すると、油水分離体14の撥油性によって、油分は静的接触角の大きい油滴(油塊)Gとして凝集する。
【0539】
そして、この油滴Gが付着した靴底(基材)22に対して、例えば、水を噴射すると、油水分離体14の親水性によって、水分は静的接触角の小さい水層となって靴底(基材)22に沿って広がり、油滴(油塊)Gを剥離させる。こうした作用によって、油水分離体14は油分を靴底(基材)22に固着させずに弾くとともに、親水性によって水洗で容易に油分を洗い流すことができる。
【0540】
油水分離体14を構成するフッ素系化合物としては、例えば、上記式(1)〜(4)で示されるフッ素系化合物のうち、少なくとも一種又は二種以上を含む。なお、上述したように、上記式(1)〜(4)で示されるフッ素系化合物は、分子中に撥油性賦与基と親水性賦与基とを含む親水撥油剤である。また、上記式(1)〜(4)で示されるフッ素系化合物からなる群から選ばれる一種又は二種以上のフッ素系化合物を含む混合物を、油水分離体14として用いてもよい。
【0541】
「結合剤」
第1の例における油水分離体14は、靴底などの基材に上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物(親水撥油剤)が単独または結合剤と複合化されたものである。換言すると、基材に油水分離体14を構成する上記フッ素系化合物(親水撥油剤)が存在するものである。また、水分などによって上記フッ素系化合物が流失しないために、基材に当該フッ素系化合物が油水分離体14として固着されていることが好ましい。
【0542】
具体的には、基材22の表面の一部又は全部が、上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物(親水撥油剤)を含む塗膜(塗布膜)、あるいは上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物と結合剤とを含む塗膜(塗布膜)によって被覆されていてもよい。
【0543】
塗膜(塗布膜)は、上述したフッ素系化合物(親水撥油剤)のみからなる場合と、結合剤を含む場合とがある。結合剤を含む場合は、親水撥油剤と結合剤との質量組成比は、0.2〜99.9対99.8〜0.1の範囲であることが好ましく、より好ましくは2〜98対98〜2の範囲、さらに好ましくは10〜90対90〜10の範囲である。親水撥油剤の質量組成比が0.2以上であると、親水撥油性が充分得られるために好ましい。
【0544】
結合剤としては、上述した有機結合剤(樹脂)や無機結合剤(無機ガラス)が挙げられる。
【0545】
油水分離体14がもつ親水撥油性の特性を最大限に発揮させるためには、結合剤を用いることが望ましい。結合剤としては、親水性ポリマーを用いることが好ましい。また、親水性ポリマーとしては、ヒドロキシル基を含有しているものが好ましい。
【0546】
親水性ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、セルロースなどの多糖類およびその誘導体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。親水性ポリマーは、上述した架橋剤により架橋してもよい。このような架橋により、塗膜の耐久性が向上する。
【0547】
無機結合剤(無機ガラス)としては、上述したように、具体的には、例えば、シラン化合物や、水ガラス等が挙げられる。これらの中でも、水ガラスは、耐久性の向上効果が高いために好ましい。
また、無機補強材として、ヒュームドシリカやコロイダルシリカ等の無機粒子も活用でき、無機補強材を加えることで、含窒素フッ素化合物の水中への溶出性の低減や塗布膜の強度の向上が図ることができる。
【0548】
油水分離体14を、実際に靴底22などの基材に形成する際には、例えば、溶媒および結合剤を含む塗料として基材に塗布し、油水分離層を形成することが好ましい。
【0549】
「基材」
第1の例における作業靴の基材22として利用可能な有機物としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルロース製の布(ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド等)、不織布(ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド等)、繊維(樹脂、ガラス、セラミックス、金属)などが挙げられる。
【0550】
油水分離体14は、上記式(1)〜(4)で示されるフッ素系化合物(親水撥油剤)を基材に担持させる。
フッ素系化合物を基材に担持させる方法としては、上記フッ素系化合物(親水撥油剤)の溶解液または分散液に、担持させる基材を浸漬、あるいは前記溶解液または分散液を担持させる基材にスプレーコートし、乾燥により溶媒を除去する手法などが適用可能である。
油水分離体14は、親水撥油剤と結合剤および無機補強材のほかに、流動性改善剤、界面活性剤、難燃剤、導電付与剤、防カビ剤等の親水撥油以外の機能を付与するために添加剤を任意成分としてさらに含んでもよい。
【0551】
以上のような構成の油防汚性保護具の一例である作業靴の作用を説明する。
例えば、第1の例における作業靴(油防汚性保護具)20を、厨房や食品加工工場などで使用した際に、靴底(基材)22の溝部24に油分(油脂)が付着しても、水洗いによって容易に付着した油分を洗い流すことができる。即ち、靴底22の溝部24に形成された油水分離体14によって、靴底22の溝部24には親水撥油性が付与される。
【0552】
この油水分離体14が層状に塗布された溝部24に、ラードなどの油分(油脂)が接触すると、油水分離体14の撥油性によって、油分は静的接触角の大きい油滴(油塊)Gとして凝集する。そして、水を噴射するだけで、油水分離体14の親水性によって、水分は静的接触角の小さい水層となって靴底(基材)22に沿って広がり、油滴(油塊)Gは容易に剥離して洗い流される。従来の作業靴のように、樹脂の撥水性によって水が弾かれて水洗による油分の除去が困難であるといったことを防止する。また、界面活性剤(洗剤)の使用による環境負荷の増加や、ブラシ等の使用による靴底の摩耗といったことも防止できる。
【0553】
(第2の例)
次に、油防汚性保護具の第2の例として、機械油等が存在する工場で用いる作業用の手袋を例示する。
図3は、第2の例における手袋(油防汚性保護具)を示す平面図である。
第2の例における手袋(油防汚性保護具)30は、掌を象った袋状の基材31と、この基材31の把持面に形成された樹脂からなる多数の突起32とを備える。突起32は、滑り止めを成し、弾性のある樹脂から構成されている。
こうした手袋(油防汚性保護具)30の基材31は、繊維質の材料、例えば織布から形成されている。そして、この基材31には、図2示すような油水分離体14が形成されている。
【0554】
このような第2の例の手袋(油防汚性保護具)30によれば、基材31に油分が付着しても、水洗いによって容易に付着した油分を洗い流すことができる。即ち、基材31に形成された油水分離体14によって親水撥油性が付与されるので、機械油などが繊維質の基材31に付着しても、油分は静的接触角の大きい油滴として凝集する。そして、手袋30を水洗いするだけで、油水分離体14の親水性によって、水分は静的接触角の小さい水層となって基材31に染み込んで油滴を浮き上がらせる。これによって、界面活性剤(洗剤)などを用いなくても、水洗いだけで手袋30に付着した油分を容易に除去することができる。
【0555】
(第3の例)
第1の例の作業靴や第2の例の手袋以外にも、上述した親水撥油性材の他の態様である油防汚性保護具は、油が存在する環境での油の付着を防止する各種保護具に適用可能である。
【0556】
例えば、図4に示すように、身体の胸部や腰部を覆う前掛け41、膝部を含む下肢を覆う膝当て42、あるいは長靴43などにも適用できる。これら前掛け41、膝当て42、あるいは長靴43を構成する基材に油水分離体を形成することによって、親水撥油性が付与され、付着した油分を水洗いだけで容易に除去することができる。
【0557】
また、作業者が着用する上衣44やズボン45などの作業着46を構成する基材(布)に油水分離体を形成することも好ましい。こうした作業着46自体に油水分離体を形成して親水撥油性を付与することによって、作業着46に付着した油分を水洗いだけで容易に除去することができる。
【0558】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例】
【0559】
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0560】
<含窒素フッ素系化合物の合成>
【0561】
(合成例1)
「2−[3−[[ペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロパノイル)]アミノ]プロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
3−ジブチルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロピオン酸)フルオリド20gを、IPE溶媒50mlにジメチルアミノプロピルアミン4gを溶解した溶液に、氷浴下で滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去したところ、粗生成物として、(CNCCONHCN(CHを14g得た(収率60%)。
【0562】
次いで、得られた(CNCCONHCN(CH3gを、エタノール中での撹拌下、モノクロル酢酸ナトリウムと一晩還流させて、下記式(376)に示すジメチルベタイン体を3g得た(収率92%)。
【0563】
【化382】
[この文献は図面を表示できません]
【0564】
(合成例2)
「2−[3−[[ペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロパノイル)]アミノ]プロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸)フルオリド160gを、ジメチルアミノプロピルアミン50gをIPE溶媒500mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去し、さらに蒸留して、粗生成物として、(CNCFCF(CF)CONHCN(CHを94g得た(収率52%)。
次いで、得られた(CNCFCF(CF)CONHCN(CHを66g、エタノール中での撹拌下、モノクロル酢酸ナトリウムと一晩還流させ、ろ過、濃縮後、下記式(377)に示すジメチルベタイン体を65g得た(収率91%)。
【0565】
【化383】
[この文献は図面を表示できません]
【0566】
(合成例3)
「ペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロピオン酸)カルシウムの合成」
2Lガラスフラスコに、12.5%(質量パーセント濃度、以下同様)水酸化ナトリウム水溶液352gを仕込み、3−ジブチルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロピオン酸)フルオリド837gを滴下して反応を行った。滴下後、酢酸エチル500mLを加え、ペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロピオン酸)ナトリウムを抽出した。酢酸エチル層と水とを分離した後、ロータリーエバポレーターにて酢酸エチルを留去して、淡黄色固体のペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロピオン酸)ナトリウム488gを得た。
【0567】
次いで、1Lのガラスフラスコにペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロピオン酸)ナトリウム488gと95%硫酸280gとを仕込んで混合し、減圧蒸留を行い、常温で固体のペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロピオン酸)436gを得た(なお、ナトリウム塩からの収率は93%)。
【0568】
ペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロピオン酸)23.5gを、メタノール/水混合液中で水酸化カルシウム1.5gによって中和した。析出した結晶をろ過にて分離し、100℃で乾燥して、下記式(378)に示すペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロピオン酸)カルシウム23.5gを得た(収率97%)。なお、本化合物の水に対する室温(25℃)での溶解度は、2[g/100g−HO]であった。
【0569】
【化384】
[この文献は図面を表示できません]
【0570】
(合成例4)
「3−[[ペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロパノイル)]アミノ]プロピル−トリメチル−アンモニウム アイオダイドの合成」
3−ジブチルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロピオン酸)フルオリド10gを、ジメチルアミノプロピルアミン4gをIPE溶媒50mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去したところ、粗生成物として、(CNCCONHCN(CHを7g得た(収率62%)。
次いで、得られた粗生成物にメチルエチルケトン中でヨウ化メチルを加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後にろ別回収して、下記式(379)に示す4級アンモニウムアイオダイド体を6g得た(収率71%)。
【0571】
【化385】
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【0572】
(合成例5)
「2−[3−[[ペルフルオロ(2−ジエチルアミノエチルスルホニル)]アミノ]プロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
3−ジエチルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化で得られたペルフルオロ(3−ジエチルアミノ)プロピオニルフルオリドを、日本国特許第4406700号公報に記載の方法により、ペルフルオロ[2−(ジエチルアミノ)エタンスルホン酸フルオリドに誘導し、その50gを、ジメチルアミノプロピルアミン24.1gをIPE溶媒250mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去し、さらに蒸留して、粗生成物として、(CNCFCFSONHCN(CHを29.4g得た(収率50%)。
次いで、得られた(CNCFCFSONHCN(CHを10g、エタノール中での撹拌下、モノクロル酢酸ナトリウムと一晩還流させ、ろ過、濃縮後、下記式(380)に示すジメチルベタイン体を11g得た(収率99%)。
【0573】
【化386】
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【0574】
(合成例6)
「2−[3−[[ペルフルオロ(2−メチル−3−ジヘキシルアミノプロパノイル)]アミノ]プロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
2−メチル−3−ジヘキシルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(2−メチル−3−ジヘキシルアミノプロピオン酸)フルオリド20gを、ジメチルアミノプロピルアミン5gをIPE溶媒50mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去し、さらに蒸留して、粗生成物として(C13NCFCF(CF)CONHCN(CHを7.7g得た(収率35%)。
次いで、得られた(C13NCFCF(CF)CONHCN(CHを5g、エタノール中での撹拌下、モノクロル酢酸ナトリウムと一晩還流させ、ろ過、濃縮後、下記式(381)に示すジメチルベタイン体を5.2g得た(収率97%)。
【0575】
【化387】
[この文献は図面を表示できません]
【0576】
(合成例7)
「3−[3−[[ペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロパノイル)]アミノ]プロピル−ジメチル−アンモニウム]プロパンスルホネートの合成」
2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸)フルオリド120gを、ジメチルアミノプロピルアミン39gをIPE溶媒500mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去し、さらに蒸留して、粗生成物として、(CNCFCF(CF)CONHCN(CHを64g得た(収率47%)。
次いで、得られた(CNCFCF(CF)CONHCN(CHを1.5g、アセトニトリル中での撹拌下、1,3−プロパンスルトンと23時間還流させた後、フッ素系溶剤(旭硝子製:AK225)とIPE混合溶剤中で再沈殿を行って、下記式(382)に示すスルホベタイン体を1.3g得た(収率75%)。
【0577】
【化388】
[この文献は図面を表示できません]
【0578】
(合成例8)
「4−[3−[[ペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロパノイル)]アミノ]プロピル−ジメチル−アンモニウムブタンスルホネートの合成」
2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸)フルオリド120gを、ジメチルアミノプロピルアミン39gをIPE溶媒500mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去し、さらに蒸留して、粗生成物として(CNCFCF(CF)CONHCN(CH3)2を64g得た(収率47%)。
次いで、得られた(CNCFCF(CF)CONHCN(CHを15g、アセトニトリル中での撹拌下、1,4−ブタンスルトン4.2gと18時間還流させた後、フッ素系溶剤(旭硝子製:AK225)とIPE混合溶剤中で再沈殿を行い、下記式(383)に示すスルホベタイン体を13.3g得た(収率75%)。
【0579】
【化389】
[この文献は図面を表示できません]
【0580】
(合成例9)
「3−[3−[[ペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロパノイル)]アミノ]プロピル−ジメチル−アンモニウム]2−ヒドロキシプロパン−1−スルホネートの合成」
2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸)フルオリド120gを、ジメチルアミノプロピルアミン39gをIPE溶媒500mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去し、さらに蒸留して、粗生成物として(CNCFCF(CF)CONHCN(CHを64g得た(収率47%)。
次いで、得られた(CNCFCF(CF)CONHCN(CHを5.0g、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム2.0g、エタノール10ml、水2.1gを混合し、20時間還流させた。その後、炭酸ナトリウム0.7gを添加し、さらに4時間還流させた。反応終了後、反応液を水に投入し、析出した固体をフッ素系溶剤(旭硝子製:AK225)とIPE混合溶剤中で再沈殿を行い、下記式(384)に示すスルホベタイン体を3.5g得た(収率59%)。
【0581】
【化390】
[この文献は図面を表示できません]
【0582】
(合成例10)
「2−[3−[[ペルフルオロ(2−メチル−3−ピペリジノノプロパノイル)]アミノ]プロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
2−メチル−3−ピペリジノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(2−メチル−3−ピペリジノプロピオン酸)フルオリド20gを、ジメチルアミノプロピルアミン9gをIPE溶媒110mlに溶解した溶液に氷浴下で滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液で洗浄処理し、分液した後に水洗を行った後、IPEを留去したところ、粗生成物として、CF(CFCFNCFCF(CF)CONHCN(CHを18g得た(粗収率76%)。
次いで、得られた粗成生物CF(CFCFNCFCF(CF)CONHCN(CH10gを、エタノール中での撹拌下、モノクロル酢酸ナトリウム3gと一晩還流させて、下記式(385)に示すジメチルベタイン体を11g得た(収率99%)。
【0583】
【化391】
[この文献は図面を表示できません]
【0584】
(合成例11)
「2−[3−[ペルフルオロ(2−メチル−3−モルホリノプロパノイル)]オキシプロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
2−メチル−3−モルホリノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(3−メチル−3−モルホリノプロピオン酸)フルオリド21gを、N,N−ジメチルプロパノールアミン10gをIPE溶媒100mLに溶解した溶液に氷浴下で滴下した。その後、室温下で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液で洗浄処理し、分液した後に水洗を行った後、IPEを留去したところ、粗生成物として、O(CF(CF)CFNCFCOOCN(CHを22g得た(粗収率88%)。
次いで、得られた粗成生物O(CF(CF)CFNCFCOOCN(CH10gを、エタノール中での撹拌下、モノクロル酢酸ナトリウム3gと一晩還流させて、下記式(386)に示すジメチルベタイン体を11g得た(収率99%)。
【0585】
【化392】
[この文献は図面を表示できません]
【0586】
(合成例12)
「3−[3−[[ペルフルオロ(2−メチル−3−モルホリノプロパノイル)]アミノ]プロピル−ジメチル−アンモニウム]プロパンスルホネートの合成」
2−メチル−3−モルホリノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(3−メチル−3−モルホリノプロピオン酸)フルオリド21gを、ジメチルアミノプロピルアミン10gをIPE溶媒100mlに溶解した溶液に氷浴下で滴下した。その後、室温下で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液で洗浄処理し、分液した後に水洗を行った後、IPEを留去したところ、粗生成物として、O(CFCFNCFCF(CF)CONHCN(CHを22g得た(粗収率88%)。
次いで、得られたO(CFCFNCFCF(CF)CONHCN(CHを2g、塩化メチレン中での撹拌下、1,3−プロパンスルトンと一晩還流させた後、フッ素系溶剤(旭硝子製:AK225)とIPEとの混合溶剤中で再沈殿を行い、下記式(387)に示すスルホベタイン体を2.2g得た(収率98%)。
【0587】
【化393】
[この文献は図面を表示できません]
【0588】
(合成例13)
「2−[3−[[ペルフルオロ(2−メチル−3−(4−メチル−1−ピペラジル)プロパノイル)]アミノ]プロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
2−メチル−3−(4−メチル−1−ピペラジル)プロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(2−メチル−3−(4−メチル−1−ピペラジル)プロピオン酸)フルオリド20gを、ジメチルアミノプロピルアミン8.5gをIPE溶媒100mlに溶解した溶液に氷浴下で滴下した。その後、室温下で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液で洗浄処理し、分液した後に水洗を行った後、IPEを留去したところ、粗生成物として、CFN(CFCFNCFCF(CF)CONHCN(CHを19.8g得た(粗収率85%)。
次いで、得られた粗成生物 CFN(CFCFNCFCF(CF)CONHCN(CHを10g、エタノール中での撹拌下、モノクロル酢酸ナトリウム3gと一晩還流させて、下記式(388)に示すジメチルベタイン体を10.9g得た(収率99%)。
【0589】
【化394】
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【0590】
[実施例A]
<親水撥油性基材の作製>
(実施例A1)
ヘキサフルオロ−m−キシレン、エタノール、n−ブタノールをそれぞれ57.0質量%、38.0質量%、5.0質量%の比率で混合した溶液を溶媒とし、合成例1にて合成した含窒素フッ素系化合物と、結合剤としてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業製エスレックBL−1)と、を溶媒に添加・溶解させて、実施例A1の表面被覆材を作製した。なお、表面被覆材中の含窒素フッ素系化合物及び結合剤の質量組成比は、それぞれ0.2質量%、0.2質量%となるように調製した。
【0591】
次に、調製した表面被覆材をバーコーターNo.3を用いてPETフィルム(パナック株式会社、品名:ルミラー、品番:100T60)に塗布し、室温下、自然乾燥により溶媒を除去して、表面に塗布膜が設けられた実施例A1の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0592】
(実施例A2)
表面被覆材中の含窒素フッ素系化合物及び結合剤の質量組成比を、それぞれ16.7質量%、16.7質量%とした以外は実施例A1と同様にして、実施例A2の表面被覆材を作製した。
また、実施例A2の表面被覆材を用いた以外は実施例A1と同様にして、実施例A2の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0593】
(実施例A3)
合成例1の含窒素フッ素系化合物に代えて、合成例2の含窒素フッ素系化合物を用いるとともに、表面被覆材中の含窒素フッ素系化合物及び結合剤の質量組成比を、それぞれ0.2質量%、1.8質量%とした以外は実施例A1と同様にして、実施例A3の表面被覆材を作製した。
また、実施例A3の表面被覆材を用いた以外は実施例A1と同様にして、実施例A3の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0594】
(実施例A4)
表面被覆材中の含窒素フッ素系化合物及び結合剤の質量組成比を、それぞれ33.3質量%、0.3質量%とした以外は実施例A3と同様にして、実施例A4の表面被覆材を作製した。
次に、調製した表面被覆材をバーコーターNo.3を用いてガラス基材に塗布し、室温下、自然乾燥により溶媒を除去して、表面に塗布膜が設けられた実施例A4の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0595】
(実施例A5)
合成例3にて合成した含窒素フッ素系化合物を0.5質量%、結合剤として水ガラス(富士化学社製3号)を4.5質量%、溶媒としてメタノールを95.0質量%の割合で配合して、実施例A5の表面被覆材とした。
次に、調整した表面被覆材にガラス板をディップし、引き揚げた後、自然乾燥によりメタノールを除去した。これにより、ガラス板上に塗布膜が設けられた実施例A5の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0596】
(実施例A6)
合成例4にて合成した含窒素フッ素系化合物を1.0質量%、結合剤としてポリビニルブチラール(積水化学工業製エスレックBL−1)を5.0質量%、溶媒としてエタノールを94.0質量%の割合で配合して、実施例A6の表面被覆材を作製した。
次に、調製した表面被覆材をバーコーターNo.3を用いてPETフィルム(パナック株式会社、品名:ルミラー、品番:100T60)に塗布し、室温下、自然乾燥により溶媒を除去して、表面に塗布膜が設けられた実施例A6の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0597】
(実施例A7)
合成例5にて合成した含窒素フッ素系化合物を2.0質量%、結合剤としてポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製エスレックBL−1)を2.0質量%、溶媒として、メタノールを96.0質量%の割合で配合して、実施例A7の表面被覆材を作製した。
次に、調整した表面被覆材を浸漬法(ディップ法)にて、ABS樹脂(アズワン株式会社、品名:テストピース、ABS 黒)の表面上に塗布し、室温下、自然乾燥により溶媒を除去して、表面に塗布膜が設けられた実施例A7の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0598】
(実施例A8)
合成例1にて合成した含窒素フッ素系化合物を5.0質量%、結合剤としてフッ素樹脂(AGCコーテック社製ボンフロン#6200)20.0質量%、溶媒として質量比が20対20対60のキシレン、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトン混合液を75.0質量%の割合で配合し、十分に分散させて、実施例A8の表面被覆材を作製した。
次に、乾燥温度を120℃、1時間とした他は実施例A1と同様にして、SUS基材(アズワン株式会社、品名:テストピース、材質:SUS304)に表面被覆材の塗布膜を作成し、実施例A8の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0599】
(実施例A9)
合成例2にて合成した含窒素フッ素系化合物を5.0質量%、結合剤としてUV硬化ウレタンアクリレート樹脂(新中村化学社製U−10HA)25.0質量%、溶媒として質量比が97対3のイソブチルケトンとエタノール混合液を70.0質量%の割合で配合し、十分に分散させて、実施例A9の表面被覆材を作製した。
次に、調製した表面被覆材をバーコーターNo.3を用いてガラス基材に塗布し、自然乾燥後に150mJ/cmの紫外線を70℃で30秒間照射して塗布膜の硬化処理を行い、実施例A9の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0600】
(実施例A10)
合成例6にて合成した含窒素フッ素系化合物を0.9質量%、結合剤としてポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製エスレックBL−1)を0.9質量%、さらにテトラエトキシシラン(和光純薬社試薬)を8.2質量%、溶媒としてメタノールを90.0質量%の割合で配合し、実施例A10の表面被覆材とした。
次に、調製した表面被覆材にガラス板をディップし、引き揚げた後、自然乾燥によりメタノールを除去した。これにより、ガラス板上に塗布膜が設けられた実施例A10の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0601】
(実施例A11)
合成例7にて合成した含窒素フッ素系化合物を0.2質量%、結合剤としてポリカーボネート(大成ファインケミカル社製アクリットWAN−1000U)7.0質量%とポリエステル(大成ファインケミカル社製アクリットWAN−6000)3.0質量%、溶媒として質量比が85対15の水とエタノール混合液を89.8質量%の割合で配合し、十分に分散させて、実施例A11の表面被覆材を作製した。
次に、実施例1と同様にして、SUS基材(アズワン株式会社、品名:テストピース、材質:SUS304)に表面被覆材の塗布膜を作成し、実施例A11の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0602】
(実施例A12)
合成例7にて合成した含窒素フッ素系化合物を0.2質量%、結合剤としてポリビニルアルコール(関東化学社)10.0質量%、溶媒として質量比が90対10の水とエタノール混合液を89.8質量%の割合で配合し、十分に分散させて、実施例A12の表面被覆材を作製した。
次に、調製した表面被覆材をバーコーターNo.3を用いてPETフィルム(パナック株式会社、品名:ルミラー、品番:100T60)に塗布し、110℃で1時間乾燥して、表面に塗布膜が設けられた実施例A12の評価基材を作製した。下記の表1に作製条件を示す。
【0603】
(実施例A13)
合成例8にて合成した含窒素フッ素系化合物を0.2質量%、結合剤としてポリエステル(第一工業製薬社製スーパーフレックス150)5.0質量%とポリウレタン(互応化学社製プラスコートZ221)5.0質量%、溶媒として質量比が85対15の水とエタノール混合液を89.8質量%の割合で配合し、十分に分散させて、実施例A13の表面被覆材を作製した。
次に、実施例1と同様にして、SUS基材(アズワン株式会社、品名:テストピース、材質:SUS304)に表面被覆材の塗布膜を作成し、実施例A13の評価基材を作製した。下記の表2に作製条件を示す。
【0604】
(実施例A14)
合成例8にて合成した含窒素フッ素系化合物を5.0質量%、結合剤としてウレタンアクリル樹脂(ジャパンコーティングレジン社製SU−100)20.0質量%、溶媒として質量比が90対10の水とエタノール混合液を75.0質量%の割合で配合し、十分に分散させて、実施例A14の表面被覆材を作製した。
次に、乾燥温度を70℃とした他は実施例A1と同様にして、SUS基材(アズワン株式会社、品名:テストピース、材質:SUS304)に表面被覆材の塗布膜を作成し、実施例A14の評価基材を作製した。下記の表2に作製条件を示す。
【0605】
(実施例A15)
合成例9にて合成した含窒素フッ素系化合物を0.2質量%、結合剤としてポリエステル(高松油脂工業社製ペスレジンA−125S)10.0質量%、溶媒として質量比が85対15の水とエタノール混合液を89.8質量%の割合で配合し、十分に分散させて、実施例A15の表面被覆材を作製した。
次に、実施例A1と同様にして、SUS基材(アズワン株式会社、品名:テストピース、材質:SUS304)に表面被覆材を塗布した後、110℃で1時間乾燥して塗布膜を作成し、実施例A15の評価基材を作製した。下記の表2に作製条件を示す。
【0606】
(実施例A16)
合成例9にて合成した含窒素フッ素系化合物を0.2質量%、結合剤としてケイ酸ソーダ(関東化学社)10.0質量%、溶媒として質量比が97対3の水とエタノール混合液を89.8質量%の割合で配合し、十分に分散させて、実施例A16の表面被覆材を作製した。
次に、調製した表面被覆材をバーコーターNo.3を用いてガラス基材に塗布し、110℃で1時間乾燥して、表面に塗布膜が設けられた実施例A16の評価基材を作製した。下記の表2に作製条件を示す。
【0607】
(実施例A17)
合成例10にて合成した含窒素フッ素系化合物を1.3質量%、結合剤としてポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製エスレックKX−5)を0.6質量%、溶媒としてメタノールを98.1質量%の割合で配合し、実施例A17の表面被覆材とした。
次に、調製した表面被覆材にガラス板をディップし、引き揚げた後、自然乾燥によりメタノールを除去した。これにより、ガラス板上に塗布膜が設けられた実施例A17の評価基材を作製した。下記の表2に作製条件を示す。
【0608】
(実施例A18)
合成例11で得られた含窒素フッ素系化合物を0.2質量%、結合剤としてポリビニルブチラール(積水化学製、「エスレックB BL−1」)を10.0質量%、溶媒として質量比57/38/5のヘキサフルオロ−m−キシレン/エタノール/n−ブタノールの混合液89.8質量%の割合で配合して、実施例A18の表面被覆材を作製した。
次に、調製した表面被覆材をバーコーターNo.3を用いてPETフィルム(パナック株式会社、品名:ルミラー、品番:100T60)に塗布し、室温下、自然乾燥により溶媒を除去して、表面に塗布膜が設けられた実施例A18の評価基材を作製した。下記の表2に作製条件を示す。
【0609】
(実施例A19)
合成例12で得られた含窒素フッ素系化合物を0.2質量%、結合剤としてポリビニルブチラール(積水化学製、「エスレックB BL−1」)を10.0質量%、溶媒として質量比57/38/5のヘキサフルオロ−m−キシレン/エタノール/n−ブタノールの混合液89.8質量%の割合で配合して、実施例A19の表面被覆材を作製した。
次に、調製した表面被覆材をバーコーターNo.3を用いてPETフィルム(パナック株式会社、品名:ルミラー、品番:100T60)に塗布し、室温下、自然乾燥により溶媒を除去して、表面に塗布膜が設けられた実施例A19の評価基材を作製した。下記の表2に作製条件を示す。
【0610】
(実施例A20)
合成例13にて合成した含窒素フッ素系化合物を0.9質量%、結合剤としてポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製エスレックBL−1)を0.9質量%、さらにテトラエトキシシラン(和光純薬社試薬)を8.2質量%、溶媒としてメタノールを90.0質量%の割合で配合し、実施例A20の表面被覆材とした。
次に、調製した表面被覆材にガラス板をディップし、引き揚げた後、自然乾燥によりメタノールを除去した。これにより、ガラス板上に塗布膜が設けられた実施例A20の評価基材を作製した。下記の表2に作製条件を示す。
【0611】
(実施例A21)
合成例7にて合成した含窒素フッ素系化合物を0.06質量%、結合剤としてポリエステル(第一工業製薬社製スーパーフレックス150)4.5質量%とポリウレタン(互応化学社製プラスコートZ221)10.5質量%、溶媒として質量比が77.5対22.5の水とエタノール混合液を84.9質量%の割合で配合し、十分に分散させて、実施例A21の表面被覆材を作製した。
次に、実施例A1と同様にして、SUS基材(アズワン株式会社、品名:テストピース、材質:SUS304)に表面被覆材の塗布膜を作成し、実施例A21の評価基材を作製した。下記の表2に作製条件を示す。
【0612】
(比較例A1)
合成例1にて合成した含窒素フッ素系化合物および実施例1と同様の結合剤を用い、表面被覆材中の含窒素フッ素系化合物及び結合剤の質量組成比を、それぞれ34.0質量%、33.0質量%とし、実施例A1と同組成の溶媒を用いて、比較例A1の表面被覆材を作製した。
また、比較例A1の表面被覆材を用いた以外は実施例A1と同様にして、比較例A1の評価基材を作製した。下記の表2に作製条件を示す。
【0613】
(比較例A2)
合成例2にて合成した含窒素フッ素系化合物を用い、表面被覆材中の含窒素フッ素系化合物及び結合剤の質量組成比を、それぞれ25.0質量%、0.02質量%とした以外は比較例A1と同様にして、比較例A2の表面被覆材を作製した。
また、比較例A2の表面被覆材を用いた以外は比較例A1と同様にして、比較例A2の評価基材を作製した。下記の表2に作製条件を示す。
【0614】
<親水性及び撥油性の評価>
実施例A1〜A21及び比較例A1〜A3の評価基材について、接触角測定(液滴法)を行い、親水性及び撥油性の評価を行った。
具体的には、実施例A1〜A21及び比較例A1〜A2の評価基材の表面に設けられた塗布膜の上に、水及びn−ヘキサデカン(以下、油という)をそれぞれ滴下し、評価基材と液滴との接触部位で形成される角度(静的接触角 単位:°(度)、1°=(π/180)rad)を、自動接触角計(協和界面科学社製、「Drop Master 701」)により測定した。
なお、水及びn−ヘキサデカンの滴下方法としては、下記の条件を用いた。
滴下容量:2μL/滴(水)
滴下容量:2μL/滴(n−ヘキサデカン)
測定温度:室温(22±1℃)
【0615】
ここで、水の静的接触角の値が低いほど親水性に優れ、油の静的接触角の値が高いほど、油を弾きやすい、すなわち撥油性に優れているということができる。
したがって、親水性及び撥油性の評価では、接触角測定の結果、塗布膜に対する水の静的接触角が15°以下、かつn−ヘキサデカンの静的接触角が65°以上である場合に、塗布膜が親水撥油性を有する(塗布膜が、親水撥油層である)というものとする。すなわち、評価基材が親水撥油性材であるというものとする。結果を下記の表1及び表2に示す。
【0616】
<耐久性の評価>
実施例A1〜A21及び比較例A1〜A2の評価基材を室温下、水に1時間浸漬させた後、乾燥させた。浸漬・乾燥後の評価基材の水および油の静的接触角を測定し、浸漬・乾燥前後における静的接触角の測定値の差が5°以内であれば塗布膜の水に対する耐久性(すなわち、親水撥油性効果の持続性)は良好と判定(表1中には「A」と表す)し、5°を超える場合は耐久性を有さないと判定(表1中には「B」と表す)した。結果を下記の表1及び表2に示す。
【0617】
<全光透過率の評価>
実施例A1〜A21及び比較例A1〜A2の評価基材に設けられた塗布膜の全光透過率(%)を、日本電色工業社製ヘーズメーター(型番:NDH−300A)を用いて測定した。全光透過率が90%以上である場合、透明性に優れた親水撥油性基材であると判定した。結果を下記の表1及び表2に示す。
【0618】
【表1】
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【0619】
【表2】
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【0620】
表1及び表2に示すように、実施例A1〜A21の評価基材は、接触角測定の結果、いずれの塗布膜についても、水の静的接触角が15°以下、かつn−ヘキサデカンの静的接触角が65°以上であった。したがって、実施例A1〜A21の表面被覆材によって得られる塗布膜は親水撥油層であり、評価基材が親水撥油性材であることが確認された。
【0621】
また、実施例実施例A1〜A21の評価基材は、耐久性評価の結果、いずれの塗布膜についても水に対する耐久性が良好であった。
さらに、実施例実施例A1〜A6,A9,A10,A12,A16〜A20の評価基材は、全光透過率評価の結果、いずれの評価基材についても全光透過率が90%以上であり、透明性に優れた親水撥油性材であることが確認された。
【0622】
これに対して、比較例A1の評価基材は、溶媒に対するフッ素系化合物の量が多いために親水撥油性は示すものの、全光透過率が90%未満であることが確認された。
【0623】
また、比較例A2の評価基材は、フッ素系化合物に対する結合剤の量が少ないために塗布膜が耐久性を有さないことが確認された。
【0624】
[実施例B]
<汚れ付着防止膜付き部材の作製>
(実施例B1)
合成例1にて合成した含窒素フッ素系化合物を2.0質量%、結合剤としてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業製エスレックBL−1)を4.0質量%、溶媒としてエタノールを94.0質量%となるように、溶媒に含窒素フッ素系化合物と結合剤とを添加し溶解させて、表面被覆材B1を作製した。
【0625】
次に、調整した表面被覆材を浸漬法(ディップ法)にて、SUS基材(アズワン株式会社、品名:テストピース、材質:SUS304)の表面上に塗布し、室温下、自然乾燥により溶媒を除去して、表面に塗布膜が設けられた実施例B1の評価基材を作製した。
【0626】
(実施例B2)
SUS基材をPE基材(アズワン株式会社、品名:ポリエチレン板、材質:PE)とした以外は実施例B1と同様にして、実施例B2の評価基材を作製した。
【0627】
(実施例B3)
SUS基材をアクリル基材(アズワン株式会社、品名:アクリル板、材質:アクリル)とした以外は実施例B1と同様にして、実施例B3の評価基材を作製した。
【0628】
(実施例B4)
合成例1にて合成した含窒素フッ素系化合物を0.3質量%、結合剤としてダイヤナールBR−80(三菱レイヨン)を0.5質量%、溶媒としてエタノール、トルエンをそれぞれ5質量%、95質量%の比率で混合させた溶液を99.2質量%となるように、溶媒に含窒素フッ素系化合物と結合剤とを添加し溶解させて、表面被覆材B4を作製した。
【0629】
次に、調整した表面被覆材B4を浸漬法(ディップ法)にて、SUS基材の表面上に塗布し、室温下、自然乾燥により溶媒を除去して、表面に塗布膜が設けられた実施例B4の評価基材を作製した。
【0630】
(実施例B5)
SUS基材をPE基材とした以外は実施例B4と同様にして、実施例B5の評価基材を作製した。
【0631】
(実施例B6)
SUS基材をアクリル基材とした以外は実施例B4と同様にして、実施例B6の評価基材を作製した。
【0632】
(実施例B7)
SUS基材をPETフィルム(パナック株式会社、品名:ルミラー、品番:100T60)とした以外は実施例B4と同様にして、実施例B7の評価基材を作製した。
【0633】
(比較例B1〜B3)
表面被覆材による処理を行わない、未処理のSUS基材、PE基材及びアクリル基材を、それぞれ比較例B1〜B3の評価基材とした。
【0634】
<接触角測定による防汚性の評価>
実施例B1〜B7及び比較例B1〜B3の評価基材について、接触角測定(液滴法)を行い、防汚性の評価を行った。
具体的には、実施例B1〜B7及び比較例B1〜B3の評価基材の表面に設けられた塗布膜の上に、水及びn−ヘキサデカン(以下、油という)をそれぞれ滴下し、評価基材と液滴との接触部位で形成される角度(静的接触角 単位:°(度)、1°=(π/180)rad)を、自動接触角計(協和界面科学社製、「Drop Master 701」)により測定した。
なお、水及びn−ヘキサデカンの滴下方法としては、下記の条件を用いた。
滴下容量:2μL/滴(水)
滴下容量:2μL/滴(n−ヘキサデカン)
測定温度:室温(22±1℃)
【0635】
ここで、水の静的接触角の値が低いほど親水性に優れ、油の静的接触角の値が高いほど、油を弾きやすい、すなわち優れた撥油性(防汚性)を有するということができる。
したがって、防汚性の評価では、接触角測定の結果、塗布膜に対する水の静的接触角が15°以下、かつn−ヘキサデカンの静的接触角が65°以上である場合に、塗布膜が親水撥油性を有する(すなわち、塗布膜が、汚れ付着防止膜である)というものとする。結果を下記表3に示す。
【0636】
<易洗浄性の評価>
実施例B1〜B7及び比較例B1〜B3で得られた塗布膜(汚れ付着防止膜)表面上にヘキサデカンを滴下し、この油滴にエアロダスター(エンジニア社製スプレー缶 ZC−32)を吹き掛けた際の油滴の広がり具合を観察した。
【0637】
ここで、エアロダスターを吹きかけた際、塗布膜表面上に油滴が濡れ拡がることなく、容易に表面上から除去可能である場合、易洗浄性を有するとした。一方、エアロダスターを吹きかけた際、塗布膜表面上に油滴が濡れ拡がってしまい、表面上から除去できない場合、易洗浄性を有しないとした。
【0638】
具体的には、実施例B1〜B7及び比較例B1〜B3で得られた塗布膜(汚れ付着防止膜)表面上に、n−ヘキサデカンをマイクロピペッターで50μl滴下した。この油滴に対して20から30cm離れた所からエアロダスター(エンジニア社製スプレー缶 ZC−32)を吹き掛けた際の油滴の広がり具合を観察した。結果を下記表3に示す。
【0639】
なお、表3には、油滴にエアロダスターを吹き掛けた際、油滴を保持したまま塗布膜表面上を10cm以上転がり、初めに滴下した部分に油が残存しない場合に「A」、初めに滴下した油滴の直径以上にヌレ広がる(扇型にヌレ広がる)場合に「B」と記載した。
【0640】
<透明性の評価>
実施例B7の評価基材について、透明性の評価は、全光透過率(%)によって行うことができる。ここで、全光透過率(%)は、日本電色工業社製のヘーズメーター「NDH−300A」を用いて測定した。具体的には、汚れ付着防止膜(すなわち、親水撥油層)を含む汚れ付着防止膜付き部材全体の全光透過率(%)を測定し、全光透過率が90%以上である場合、透明性に優れた汚れ付着防止膜付き部材と云える。
【0641】
【表3】
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【0642】
表3に示すように、実施例B1〜B7の評価基材は、接触角測定の結果、いずれの塗布膜についても、n−ヘキサデカンの静的接触角が65°以上であった。したがって、実施例B1〜B7の評価基材に設けられた塗布膜は、撥油性(すなわち、防汚性)を有することから、汚れ付着防止膜であることが確認された。
【0643】
また、実施例B1〜B7の評価基材は、接触角測定の結果、いずれの塗布膜についても、水の静的接触角が15°以下であった。したがって、実施例B1〜B7の評価基材に設けられた塗布膜は、親水性を有することが確認された。
【0644】
実施例B1〜B7の評価基材は、表2に示すように、易洗浄性の評価の結果がいずれも「A」判定であることから、易洗浄性を有することが確認された。
【0645】
実施例B7の評価基材は、全光透過率評価の結果、全光透過率が90%であり、透明性に優れた汚れ付着防止膜付き部材であることが確認された。
【0646】
これに対して、比較例B1〜B3の評価基材は、表面に塗布膜(汚れ付着防止膜)が設けられていないため、撥水親油性であることが確認された。
また、易洗浄性の評価の結果、いずれも「B」判定であることから、易洗浄性を有しないことが確認された。
【0647】
[実施例C]
<評価用保護具の作製>
(実施例C1)
市販の食品産業向け軽量作業靴(ミドリ安全株式会社製 ハイグリップ H−700N 靴底材質:EVA/合成ゴム)を用いて、靴底を洗剤とプラスチックタワシで洗浄した後、靴底の接地部分をマスキングテープで覆い、溝の部分に、親水撥油剤として合成例2にて合成した含窒素フッ素系化合物0.5質量%、結合剤としてポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製 エスレックBL−1)1.0質量%、無機化合物としてシリカゾル(日産化学株式会社製 オルガノシリカゾルIPA−ST)0.5質量%(SiOとして)、溶媒98.0質量%(ヘキサフルオロキシレン57.0質量部、エタノール38.0質量部、n−ブタノール5.0質量部)に調製した液(表面被覆材)をスプレーコーティングし、自然乾燥した。
【0648】
(実施例C2)
市販の食品産業向け安全長靴(ミドリ安全株式会社製 ハイグリップ HG1000スーパー 靴底材質:PVC)について、靴底を洗剤とプラスチックタワシで洗浄した後、靴底の接地部分をマスキングテープで覆い、溝の部分に、実施例C1と同様の表面被覆材をスプレーコーティングし、自然乾燥した。
【0649】
(実施例C3)
市販の軍手(綿100%)を、実施例C1と同様の表面被覆材に浸漬処理し、自然乾燥した。
【0650】
(実施例C4)
市販の作業服(ミドリ安全株式会社製 メンズスラックス SE19 帯電防止性能 ポリエステル80%−綿20%)を洗濯した後、右袖部分を実施例C1と同様の表面被覆材に浸漬処理し、自然乾燥した。
【0651】
(実施例C5)
市販のゴム手袋(ショーワグローブ株式会社製 ジャージテムレス No.283 ポリウレタン)を洗剤で良く洗浄した後、実施例C1と同様の表面被覆材に浸漬処理し、自然乾燥した。
【0652】
(比較例C1〜比較例C5)
実施例C1〜実施例C5と同様の基材を用いて、表面被覆材を処理せずに、比較例C1〜比較例C5の保護具とした。
【0653】
これら実施例C1〜C5、および比較例C1〜C5について、以下の手順によるぬれ性および易洗浄性を評価した。
【0654】
<ぬれ性試験>
表面被覆材で処理した実施例C1〜C5の保護具及び表面被覆材で処理しない比較例C1〜C5に、各種の食用油を滴下して目視判定によりぬれ性を評価した。この結果を表4に示す。
なお、各種油類の滴下方法としては、下記の条件を用いた。
滴下容量:(20〜25)μL/滴
滴下高さ:基材(保護具)の表面から5cm
滴下冶具:ポリスポイト
【0655】
また、判定基準は次の通りとした。
A:(油を)はじく
B:(油で)ぬれる
C:(油が)浸透する
【0656】
<易洗浄性試験>
表面被覆材で処理した実施例C1〜C5の保護具及び表面被覆材で処理しない比較例C1〜C5に、各種の食用油を滴下した後、その部分にポリスポイトで水道水5mlを吹きかけて、油の除去具合を目視判定した。この結果を表4に示す。
【0657】
なお、判定基準は次の通りとした。
A:油を完全に除去することができた
B:油の付着跡が残った
C:油を除去できなかった
【0658】
【表4】
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【0659】
表4に示す検証結果によれば、実施例C1〜C5の表面被覆材で処理した基材(保護具)に油を滴下すると、油ははじかれて油滴となった。油を滴下した箇所にさらに水を吹きかけると、水は基材表面に濡れ広がって油滴の下に入り込み、油滴が基材から剥がれ落ちた。このことから、表面被覆材の塗布膜が施された基材(保護具)は水洗浄のみで容易に油汚れを取り除けることが確認された。
【0660】
一方、比較例C1〜C5の結果が示すように、表面処理材で処理していない基材(保護具)に油を滴下すると、油が基材に馴染んでしまい、水を吹きかけただけでは油の付着跡が残り、油は完全に除去できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0661】
本発明の表面被覆材及び親水撥油性材は、表面被覆層(塗布膜)によって基材に親水性及び撥油性を同時に付与することができるので、厨房機器(レンジフード)、浴室・トイレ、浴室鏡、下水道配管、住宅用壁紙、自動車用サイドミラー、鉄道、外壁、トンネル、屋外広告、道路用資材、電線、FPDカバーフィルム、太陽電池(表面保護材)、衣料、化粧品等の、親水撥油性が望まれる幅広い用途において適用することができる。
【0662】
また、本発明の親水撥油性材の一態様である汚れ付着防止膜付き部材は、キッチンパネル、レンジフード、ガステーブル、厨房用加熱調理器等のキッチン部材や洗面台、浴室内の壁や天井、および便器等のトイレタリー部材等の、防汚・易洗浄性が望まれる幅広い用途において、産業上利用が可能である。
【0663】
また、本発明の親水撥油性材の一態様である油防汚性保護具は、油水分離体によって撥油性および親水性を同時に付与することができるので、油で汚染される虞のある各種保護具に幅広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0664】
14 油水分離体
20 作業靴(油防汚性保護具)
21 アッパー部
22 靴底(基材)
23 トレッドパターン
24 溝部
30 手袋(油防汚性保護具)
41 前掛け(油防汚性保護具)
42 膝当て(油防汚性保護具)
43 長靴(油防汚性保護具)
44 上衣(油防汚性保護具)
45 ズボン(油防汚性保護具)
46 作業着(油防汚性保護具)
【要約】
基材の表面の少なくとも一部に親水撥油層を形成する表面被覆材であって、下記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上のフッ素系化合物と、結合剤と、溶媒と、を含む、表面被覆材。
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図1
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図2
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図3
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図4
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