【実施例】
【0025】
(実施例1.機能性成分への影響)
(試料の調製)
非加熱の金時生姜粉末と30倍濃縮黒酢(pH3.8)と蒸留水とを、生姜粉末:黒酢:蒸留水=1:1:1(w/w)の割合で混合し、ペーストを作成した。
未処理区(黒酢添加)は上記ペーストを未処理のまま分析した。
加熱処理区(黒酢添加)は上記ペーストを、125℃、0.15MPa、10分間の条件で、オートクレーブ(ALP/CLS−40L)にて加熱処理し、分析に供した。
高圧処理区(黒酢添加)は上記ペーストを、50℃、350MPa、10分間の条件で、高圧処理し、分析に供した。
【0026】
(分析方法)
上記3区の試料1gを100mL容メスフラスコに精密に量り採った。メスフラスコに、メタノール約80mLを添加して試料を溶解し、30分間超音波処理し、液量が100mLになるようメタノールを追加した。この溶液を、0.45μmのメンブランフィルタでろ過し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC;Agilent Technologies/Agilent 1120 Compact LC)で分析をした。
【0027】
(HPLC条件)
HPLC条件は、以下の通りである。
カラム:ODS−3、サイズ250mm×4.6mm、粒子径5μm(GLサイエンス)
カラム温度 :40℃
移動相:A液:0.1%リン酸、B液:アセトニトリル
溶出:B液が50%(0分)、80%(20分)、85%(20.1分)、85%(25分)、50%(25.01分)、50%(35分)のグラジエント溶出
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
検出:280nmUV
【0028】
(機能性成分)
測定する機能性成分は、[6]−ジンゲロール([6]−Gingerol)、[6]−ショウガオール([6]−Shogaol)、ジンゲロン(Zingerone)、[8]‐ジンゲロール([8]−Gingerol)、[10]−ジンゲロール([10]−Gingerol)の5種とした。
これらの標品として、Zingerone(和光純薬)約100ppmメタノール溶液、[6]−Gingerol(和光純薬)約100ppmメタノール溶液、[8]−Gingerol(ChromaDex)約100ppmメタノール溶液、[6]−Shogaol(和光純薬)約100ppmメタノール溶液、[10]−Gingerol(ChromaDex)約100ppmメタノール溶液、をそれぞれ用いた。
【0029】
(濃度の定量)
以下の式により、試料中の機能性成分の濃度を求めた。
濃度(mg/g)=標品濃度(ppm)×(試料面積/標品面積)×(液量(mL)/試料量(g))/1000
3
各機能性成分の濃度を
図1、表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
図1、表1より、未処理区では機能性成分の合計が12.79mg/gであったのに対し、高圧処理区の機能性成分の合計は12.04mg/gであり、歩留まりは94.1%となる。しかし、加熱処理区の機能性成分の合計は7.29mg/gであり、歩留まりは56.9%となった。
【0032】
また、機能性成分の比率を比べると、未処理区と高圧処理区はほぼ同様の組成比であるが、加熱処理区は著しく異なっていた。つまり、加熱処理区では、[6]−ショウガオールの量が未処理区と比較して顕著に増加しており、[6]−ジンゲロール、[8]−ジンゲロール、[10]−ジンゲロールは減少している。[6]−ジンゲロールが減少して[6]−ショウガオールが増加する現象は、[6]−ジンゲロールが熱変性をして[6]−ショウガオールに変わったものと考えられる。また、一部の[6]−ジンゲロールと、[8]−ジンゲロール及び[10]−ジンゲロールが減少する現象は、加熱により成分が揮発散逸したためと考えられる。
このように、高圧処理を行うと機能性成分の歩留まりが良く、成分の組成変化が小さい処理が可能となる。
【0033】
(実施例2.殺菌効果の比較)
処理方法の違いによる殺菌効果への影響を検証するため、以下の実験を行った。
まず、未処理区(黒酢無添加)、高圧処理区(黒酢無添加)、未処理区(黒酢添加)、及び高圧処理区(黒酢添加)の4つの実験区を設定し、殺菌効果を検証した。
【0034】
(試料の調製)
黒酢添加処理として、非加熱の金時生姜粉末と30倍濃縮黒酢(pH3.8)と蒸留水とを生姜粉末:黒酢:蒸留水=1:1:1(w/w)の割合で混合し、ペーストを作成した。
未処理区(黒酢無添加)の試料として、非加熱の金時生姜粉末をそのまま分析した。
未処理区(黒酢添加)の試料として、黒酢添加処理して作成したペーストをそのまま分析した。
高圧処理区(黒酢無添加)の試料として、非加熱の金時生姜粉末と蒸留水とを生姜粉末:蒸留水=1:2(w/w)の割合で混合して作成したペーストを、50℃、350MPa、10分間の条件で、高圧処理し、分析に供した。
高圧処理区(黒酢添加)の試料として、黒酢添加処理して作成したペーストを、50℃、350MPa、10分間の条件で、高圧処理し、分析に供した。
上記4区の試料中に含まれる細菌数を、表2に示す検査項目の細菌について分析した。分析は、財団法人食品分析開発センターSUNATECに依頼した。表2中の数値は、試料1gあたりに含まれる菌数を示している。
【0035】
【表2】
【0036】
分析方法は、食品衛生検査指針(微生物編)による。分析に使用した培地は以下の通りである。
一般細菌数…標準寒天培地
大腸菌群…デゾキシコレート寒天培地
黄色ブドウ球菌…マンニット食塩寒天培地
サルモネラ属菌…増菌培養法
好気性芽胞形成菌…標準寒天培地
カビ数…ポテトデキストロース寒天培地
嫌気性芽胞形成菌…クロストリジア測定用培地
【0037】
表2より、一般細菌数、大腸菌群、カビ数の値に関しては、未処理区(黒酢添加)、高圧処理区(黒酢無添加)、高圧処理区(黒酢添加)ともに殺菌効果を示している。このうち、大腸菌群、カビ数では、前記3区とも陰性であり3区間の差異は明らかではないが、一般細菌数に関しては、高圧処理区(黒酢添加)が最も強い効果を示している。
【0038】
さらに、
図2に、試料の調製に用いた生姜1gあたりの一般細菌数を示す。すなわち、未処理区(黒酢添加)、高圧処理区(黒酢無添加)、高圧処理区(黒酢添加)の試料は、生姜粉末が蒸留水や黒酢で3分の1倍に希釈されているので、3倍に補正した値を示した。
【0039】
サプリメントの材料である添加物の場合、食品規正法の対象にはなってないが、業界では自主規制値として、3000CFU/g以下の基準を持っていることが多い。
図2に示したように、一般細菌数においては、未処理区(黒酢添加)で11700CFU/g、高圧処理区(黒酢無添加)で3300CFU/gとなり、3000CFU/gを下回ることはなかったが、高圧処理区(黒酢添加)のみ2010CFU/gとなり、添加物業界で最も一般に採用されている自主規制値3000CFU/gを下回った。すなわち、黒酢添加処理単独や、高圧処理単独では達成できない殺菌効果が、高圧処理と黒酢添加処理の相乗作用により達成できた。