【実施例】
【0048】
(実施例1)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「SSE−R1−7」(平均粒子径6.6μm(D
50)、比表面積3.5m
2/g、製法:湿式))を80g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。当該高純度イットリア微粒子の製造方法は以下のとおりである。
5Lビーカーに硝酸イットリウム溶液(Y
2O
3濃度20.2重量%)500gとイオン交換水2000gを入れて撹拌混合し、Y
2O
3濃度が約4重量%の硝酸イットリウム溶液を得た。25%アンモニア水200gをイオン交換水1500gで希釈した希釈アンモニア水を先に調整した硝酸イットリウム溶液に撹拌しながら滴下し、水酸化イットリウムの沈殿物を得た。得られた沈殿物をろ過し、イオン交換水で洗浄した。洗浄した水酸化イットリウムを電気炉にて900℃で焼成した後、乳鉢にて粉砕した。
【0049】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0050】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量10L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は31kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(アルミナ)S上に成膜された。
【0051】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。幅30mm、長さ15mm、膜厚53μm(1.06μm/pass)の透光性を有する白色系のイットリア薄膜が形成された。当該薄膜は緻密であり、基材Sとの密着性も良好(粘着テープによる剥離試験によっても剥離せず)であった。
【0052】
(実施例2)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「SSE−R1−7」(平均粒子径6.6μm(D
50)、比表面積3.5m
2/g、製法:湿式))を80g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。
【0053】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0054】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量10L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は31kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(スライドグラス)S上に成膜された。
【0055】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。幅30mm、長さ15mm、膜厚25μm(0.5μm/pass)の透光性を有する白色系のイットリア薄膜が形成された。当該薄膜は緻密であり、基材Sとの密着性も良好(粘着テープによる剥離試験によっても剥離せず)であった。
【0056】
(実施例3)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「SSE−R1−7」(平均粒子径6.6μm(D
50)、比表面積3.5m
2/g、製法:湿式))を80g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。
【0057】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0058】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量8L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は35kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(スライドグラス)S上に成膜された。
【0059】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は50回、即ち、積層回数は100回(pass)とした。幅30mm、長さ15mm、膜厚12μm(0.12μm/pass)の透光性を有する白色系のイットリア薄膜が形成された。当該薄膜は緻密であり、基材Sとの密着性も良好(粘着テープによる剥離試験によっても剥離せず)であった。
【0060】
(実施例4)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「FY−10」(平均粒子径9.6μm(D
50)、比表面積1.0m
2/g、製法:乾式))を60g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。当該高純度イットリア微粒子の製造方法は以下のとおりである。
市販のイットリア粉末を電融用電気炉を用いて、電気アーク熱(約3000℃)によって溶融を行った。その後、イットリアの溶融物を徐冷し、高密度化したインゴットを得た。得たインゴットを1mm以下に粗粉砕し、1250℃にて焼成を行った。
上記の電融用電気炉で得た粗イットリア粉末を遊星ミルを用いて、次の要領で乾式粉砕を行った。粗粉末250gとジルコニアボール(Ф10mm)1000g、さらに粉砕助剤としてエタノール0.6gを500mlのジルコニアポットに入れた。3分30秒間粉砕を行い得た高純度イットリア微粒子。本実施例の粉砕方法は湿式粉砕、乾式粉砕のいずれも遊星ミルで行ったが、その他の粉砕機を用いて目標粒度を得ることも出来る。例えば、粗粉末に対して応力を加えることによって粒子を粉砕する粉砕機、ボールミル、振動ミル、ビーズミル、ジェットミル等が使用できる。
【0061】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0062】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量12L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は33kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(スライドグラス)S上に成膜された。
【0063】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。幅30mm、長さ15mm、膜厚16μm(0.32μm/pass)の透光性を有する比較的濃い灰色系のイットリア薄膜が形成された。当該薄膜は緻密であり、基材Sとの密着性も良好(粘着テープによる剥離試験によっても剥離せず)であった。
【0064】
(実施例5)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「FY−10」(平均粒子径9.6μm(D
50)、比表面積1.0m
2/g、製法:乾式))を60g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。
【0065】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0066】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量16L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は40kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(スライドグラス)S上に成膜された。
【0067】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。幅30mm、長さ15mm、膜厚36μm(0.72μm/pass)の透光性を有する比較的濃い灰色系のイットリア薄膜が形成された。当該薄膜は緻密であり、基材Sとの密着性も良好(粘着テープによる剥離試験によっても剥離せず)であった。
【0068】
(実施例6)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「FY−7」(平均粒子径6.7μm(D
50)、比表面積1.1m
2/g、製法:乾式))を80g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。当該高純度イットリア微粒子の製造方法は以下のとおりである。
実施例4で記述した粗イットリア粉末を遊星ミルを用いて、次の要領で乾式粉砕を行った。粗粉末250gとジルコニアボール(Ф10mm)1000g、さらに粉砕助剤としてエタノール0.6gを500mlのジルコニアポットに入れ、5分間粉砕を行った。
【0069】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0070】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量12L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は37kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(アルミナ)S上に成膜された。
【0071】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。幅30mm、長さ15mm、膜厚18μm(0.36μm/pass)の透光性を有する比較的薄い茶色系のイットリア薄膜が形成された。当該薄膜は緻密であり、基材Sとの密着性も良好(粘着テープによる剥離試験によっても剥離せず)であった。
【0072】
(実施例7)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「FY−7」(平均粒子径6.7μm(D
50)、比表面積1.1m
2/g、製法:乾式))を100g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。
【0073】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0074】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量12L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は35kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(スライドグラス)S上に成膜された。
【0075】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は50回、即ち、積層回数は100回(pass)とした。幅30mm、長さ15mm、膜厚10μm(0.1μm/pass)の透光性を有する比較的薄い茶色系のイットリア薄膜が形成された。当該薄膜は緻密であり、基材Sとの密着性も良好(粘着テープによる剥離試験によっても剥離せず)であった。
【0076】
(実施例8)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「FY−5」(平均粒子径5.0μm(D
50)、比表面積1.3m
2/g、製法:乾式))を60g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。当該高純度イットリア微粒子の製造方法は以下のとおりである。
実施例4で記述した粗イットリア粉末を遊星ミルを用いて、次の要領で乾式粉砕を行った。粗粉末250gとジルコニアボール(Ф10mm)1000g、さらに粉砕助剤としてエタノール0.6gを500mlのジルコニアポットに入れ、7分間粉砕を行った。
【0077】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0078】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量12L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は33kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(スライドグラス)S上に成膜された。
【0079】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。幅30mm、長さ15mm、膜厚11μm(0.22μm/pass)の透光性を有する灰色系のイットリア薄膜が形成された。当該薄膜は緻密であり、基材Sとの密着性も良好(粘着テープによる剥離試験によっても剥離せず)であった。
【0080】
(実施例9)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「FY−5」(平均粒子径5.0μm(D
50)、比表面積1.3m
2/g、製法:乾式))を60g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。
【0081】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0082】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量16L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は40kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(スライドグラス)S上に成膜された。
【0083】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。幅30mm、長さ15mm、膜厚17μm(0.34μm/pass)の透光性を有する灰色系のイットリア薄膜が形成された。当該薄膜は緻密であり、基材Sとの密着性も良好(粘着テープによる剥離試験によっても剥離せず)であった。
【0084】
(実施例10)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「FY−2」(平均粒子径1.8μm(D
50)、比表面積2.6m
2/g、製法:乾式))を80g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。当該高純度イットリア微粒子の製造方法は以下のとおりである。
実施例4で記述した粗イットリア粉末を遊星ミルを用いて、次の要領で湿式粉砕を行った。粗粉末150gとジルコニアビーズ(Ф2mm)1000gを500mlのジルコニアポットに入れ、純水150mlを投入し、10分間粉砕を行った。粉砕で得たスラリーを乾燥、解砕した。
【0085】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0086】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量12L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は35kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(アルミナ)S上に成膜された。
【0087】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。幅30mm、長さ15mm、膜厚8μm(0.16μm/pass)の透光性を有する茶白色系のイットリア薄膜が形成された。当該薄膜は緻密であり、基材Sとの密着性も良好(粘着テープによる剥離試験によっても剥離せず)であった。
【0088】
(比較例1)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「SSE−R1−2」(平均粒子径1.9μm(D
50)、比表面積5.4m
2/g、製法:湿式))を80g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。当該高純度イットリア微粒子の製造方法は以下のとおりである。
5Lビーカーに塩化イットリウム溶液(Y
2O
3濃度20.2重量%)500gとイオン交換水1500gを入れて撹拌混合し、Y
2O
3濃度が約5重量%の塩化イットリウム溶液を得た。次に重炭酸アンモニウム250gをイオン交換水2250gで溶解した重炭酸アンモニウム溶液を先に調整した塩化イットリウム溶液に撹拌しながら滴下し、炭酸イットリウムの沈殿物を得た。得られた沈殿物をろ過し、イオン交換水で洗浄した。洗浄した炭酸イットリウムを電気炉にて900℃で焼成した後、乳鉢にて粉砕した。
【0089】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0090】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量12L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は35kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(アルミナ)S上に成膜された。
【0091】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。基材上には、イットリア微粒子の圧粉体が形成された。当該圧粉体は拭取れる程度のポーラスなものであった。
【0092】
(比較例2)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「SSE−R1−10」(平均粒子径10.9μm(D
50)、比表面積2.9m
2/g、製法:湿式))を80g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。当該高純度イットリア微粒子の製造方法は以下のとおりである。
5Lビーカーに硝酸イットリウム溶液(Y
2O
3濃度20.2重量%)500gとイオン交換水2000gを入れて撹拌混合し、Y
2O
3濃度が約4重量%の硝酸イットリウム溶液を得た。蓚酸200gをイオン交換水で溶解し、30%に調整した蓚酸水溶液を先に調整した硝酸イットリウム溶液に撹拌しながら滴下し、蓚酸イットリウムの沈殿物を得た。得られた沈殿物をろ過し、イオン交換水で洗浄した。洗浄した蓚酸イットリウムを電気炉にて900℃で焼成した後、乳鉢にて粉砕した。
【0093】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0094】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量12L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は35kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(アルミナ)S上に成膜させた。
【0095】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。堆積中の観察によれば、堆積膜は密着力が弱く、積層と共に、部分的に、堆積と層状剥離を繰り返していた。
【0096】
(比較例3)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「FY−1」(平均粒子径0.8μm(D
50)、比表面積3.0m
2/g、製法:乾式))を80g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。当該高純度イットリア微粒子の製造方法は以下のとおりである。
実施例4で記述した粗イットリア粉末を遊星ミルを用いて、次の要領で湿式粉砕を行った。粗粉末150gとジルコニアビーズ(Ф2mm)1000gを500mlのジルコニアポットに入れ、イオン交換水150mlを投入し、15分間粉砕を行った。粉砕で得たスラリーを乾燥、解砕した。
【0097】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0098】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量12L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は35kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(アルミナ)S上に成膜させた。
【0099】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。基材上には、イットリア微粒子の圧粉体が形成された。当該圧粉体は拭取れる程度のポーラスなものであった。
【0100】
(比較例4)
エアロゾル原料Pとして、第一稀元素化学工業株式会社製、高純度イットリア微粒子(品名「FY−12」(平均粒子径11.8μm(D
50)、比表面積0.9m
2/g、製法:乾式))を80g用いた。ノズル18は、スリット長30mm、スリット幅0.3mmのスリット状ノズルとした。当該高純度イットリア微粒子の製造方法は以下のとおりである。
実施例4で記述した粗イットリア粉末を遊星ミルを用いて、次の要領で乾式粉砕を行った。粗粉末250gとジルコニアボール(Ф10mm)1000g、さらに粉砕助剤としてエタノール0.6gを500mlのジルコニアポットに入れ、3分間粉砕を行った。
【0101】
上記エアロゾル原料Pをアルミナトレーに入れ、大気中で500℃、1時間加熱することで、脱気処理した。その後、エアロゾル化容器2に収容し、排気系4によりエアロゾル化容器2及び成膜チャンバ3を10Pa以下まで真空排気した。なお、エアロゾル化容器2は、脱気を促進するため、成膜の間マントルヒーターを用いて150℃に維持した。
【0102】
エアロゾル化容器2の真空排気を停止し、ガス供給系5からエアロゾル化容器2にN
2ガス(キャリアガス)を流量12L/minで導入した。エアロゾル化容器2と成膜チャンバ3の差圧は35kPaとなった。エアロゾル化容器2内のエアロゾル原料Pはエアロゾル化し、搬送管6を通過してノズル18から噴出し、基材(アルミナ)S上に成膜させた。
【0103】
基材Sが載置されたステージ7を、ステージ駆動機構8によって1mm/sの速度で15mm駆動させ、ステージ7の駆動方向を反転させることを繰り返し、往復させた。往復回数は25回、即ち、積層回数は50回(pass)とした。堆積中の観察によれば、堆積膜は密着力が弱く、積層と共に、部分的に、堆積と層状剥離を繰り返していた。
【0104】
以上の実施例1〜3及び比較例1〜2から、平均粒子径が6μm以上7μm以下であり、比表面積が3m
2/g以上4m
2/g以下の条件を満たす、湿式法で作製されたイットリア微粒子をエアロゾル原料としてエアロゾル化ガスデポジション法により成膜することで、緻密であり、基材に対する密着性が良好な高純度イットリア薄膜が形成された。一方、この条件から逸脱するイットリア微粒子をエアロゾル原料として成膜した場合、良好なイットリア薄膜は形成されなかった。
【0105】
また、以上の実施例4〜10及び比較例3〜4から、平均粒子径が1.8μm以上9.6μm以下であり、比表面積が1.0m
2/g以上2.6m
2/g以下の条件を満たす、乾式法で作製されたイットリア微粒子をエアロゾル原料としてエアロゾル化ガスデポジション法により成膜することで、緻密であり、基材に対する密着性が良好な高純度イットリア薄膜が形成された。一方、この条件から逸脱するイットリア微粒子をエアロゾル原料として成膜した場合、良好なイットリア薄膜は形成されなかった。
【0106】
本発明は上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更され得る。