特許第5909764号(P5909764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5909764車両タイヤにより支持される動的荷重の推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909764
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】車両タイヤにより支持される動的荷重の推定方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20160414BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20160414BHJP
   G01G 19/03 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   B60C19/00 H
   G01M17/02 Z
   G01G19/03
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-519018(P2013-519018)
(86)(22)【出願日】2011年7月1日
(65)【公表番号】特表2013-536109(P2013-536109A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】EP2011061099
(87)【国際公開番号】WO2012007296
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年4月21日
(31)【優先権主張番号】1055696
(32)【優先日】2010年7月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ルミヌール ヴァンサン
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−267739(JP,A)
【文献】 特表平04−504165(JP,A)
【文献】 特開2007−230550(JP,A)
【文献】 特開平11−258029(JP,A)
【文献】 特開2010−066261(JP,A)
【文献】 特開2010−167865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
G01G 19/03
G01M 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の期間にわたって走行中の車両のタイヤによって支持される動的荷重を推定する方法であって、圧力を前記所与の期間中に測定し、各圧力測定時点において時間間隔毎に一定であり且つ既知である荷重を受けた前記タイヤの基準圧力と呼ばれる圧力を求め、各圧力測定時点において荷重の変化を前記測定圧力と前記基準圧力の差及びあらかじめ案出されていて荷重の変化を圧力の変化に関連付ける前記タイヤのモデルから計算し、
前記車両は、例えばダンプ車型のものであり、前記測定期間は、少なくとも連続した無負荷時間間隔及び負荷走行時間間隔を含み、
前記車両が無負荷状態であるときに前記圧力測定期間の間、測定信号に関する多項式を調節し、負荷走行期間の間、前記測定信号を内挿し又は外挿することによって、一定である荷重を受けた前記タイヤの前記基準圧力を求める、方法。
【請求項2】
各圧力測定時間間隔の間、測定信号に関する多項式を調節することによって、時間間隔毎に一定である荷重を受けた前記タイヤの前記基準圧力を求める、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記タイヤの前記モデルは、グラフ体系及び/又は数値モデルである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記タイヤの前記モデルを測定について用いられた路面とほぼ同じ路面上で定める、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも連続した無負荷時間間隔及び負荷走行時間間隔を含む所与の期間にわたって走行中の車両のタイヤによって支持される動的荷重を推定する方法であって、圧力を前記所与の期間中に測定し、無負荷段階の各圧力測定時点において一定荷重を受けた前記タイヤの基準圧力と呼ばれる圧力を求め、基準圧力と呼ばれている圧力を一定荷重を受けた前記タイヤの負荷走行段階の各圧力測定時点で導き出し、各圧力測定時点において前記荷重を前記測定圧力と前記基準圧力の差及びあらかじめ案出されていて荷重の変化を圧力の変化に関連付ける前記タイヤのモデルから計算し、
負荷走行段階に隣接して位置する無負荷走行段階の際に一定荷重を受けた前記タイヤの前記基準圧力と呼ばれている前記圧力の前記求めた信号を内挿し又は外挿することによって、一定荷重を受けた前記タイヤの負荷走行段階の各圧力測定時点における前記基準圧力と呼ばれている前記圧力を導き出す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所与の期間にわたって走行中の車両のタイヤによって支持される動的荷重を推定する方法に関する。本発明は又、このタイヤによって支持される荷重を推定する方法を提案する。
【0002】
本発明は、かかる用途には限定されないが、本発明を具体的には、ダンプ車型の車両に取り付けられるようになったタイヤについて説明する。ダンプ車は、重い荷重を運搬するようになっていて、採石場又は鉱山で動き回る一形式の「アースムーバ」機械である。
【背景技術】
【0003】
これら車両は、通常、2本の操舵車輪を含む操舵フロントアクスル組立体及び各側に1対ずつ配置された4本の被動車輪を含む通常剛性のリヤアクスル組立体を有する。アクスル組立体は、車両の固定構造体に路面接触を行わせる要素の組立体として定義される。
【0004】
かかる車両、特に荷重を運搬するために鉱山又は採石場で用いられるようになった車両の場合、接近及び生産性に対する要求に関する問題により、これら車両の製造業者は、車両の耐荷力を増大せざるを得なくなっている。車両は、ますます大型化しており、従ってこれら自体ますます重くなっていて、ますます重い荷重を運搬することができるようになっていることが推定される。かかる車両の現在における重量は、数百トンという重い場合があり、同じことは、運搬されるべき荷重についても当てはまり、全体の重量は、600トンという重いものになる場合がある。
【0005】
車両の耐荷力は、タイヤの耐荷力に直接関連しているので、使用要求を満たすことができるタイヤを供給するためにはタイヤ設計をこれら動向に適合させなければならない。
【0006】
したがって、これらタイヤが供される使用及び特にタイヤが使用の際に支持しなければならない荷重についての良好な理解を得ることが望ましい。これら荷重は、第1に運搬中の荷重に、第2に車両の使用状況、より具体的に言えば、路面の性状及び車両の取る走行経路に関連している。
【0007】
これら荷重について知ることにより、タイヤの受ける損傷の元についての良好な理解を得ることができると共にタイヤの実際の設計の手助けにもなる場合がある。
【0008】
具体的に説明すると、現在における要求は依然として、これら機械の耐荷力の増大に向かっており、上述の種々のパラメータを考慮して、タイヤ設計者は、特にこれらタイヤが供される使用を考慮してこれらタイヤを最適化しようとしている。
【0009】
車両のタイヤの各々により支持される荷重を決定するために種々の方法が既に利用されている。
【0010】
現在用いられている第1の方法は、車両のサスペンション要素の圧力を測定することである。この圧力は、サスペンションによって支持される荷重に直接関連付けられる。しかしながら、これらサスペンション要素内の摩擦及び減衰作用が実際に支持されている荷重、特に動的荷重について行うことができる推定値を歪める。さらに、又リヤアクスル組立体に関する限り、特にシャーシの各側にツイン車輪が存在しているので、種々のタイヤ相互間の荷重の分布状態を高精度で求めることはほぼ不可能である。
【0011】
タイヤにより支持される荷重を決定する別の公知の方法は、例えば超音波又はレーザテレメータを用いて相対的路面上高さを測定し、これから、タイヤの撓みを導き出すことであり、かかる撓みは、荷重及び圧力に直接的に関連付けられる。かかる測定は、インフレーション圧力が既知である場合、実際には、タイヤが平坦な路面を走行していると仮定すれば、荷重の反映結果である。しかしながら、締まりのない路面から成る軌道及び/又は轍付きの又は石ころだらけである軌道に沿って走行すると、測定値の解釈が完全に歪められる。具体的に説明すると、これら装置は、通常、タイヤの一方の側にオフセットした状態で位置決めされているので、測定値は、路面高さの局所的変化によって歪められる。さらに、かかる測定値の使用は、測定システムが測定条件の影響を受けやすいので極めて扱いが難しく、特に、埃や温度は、測定値を歪める場合がある。
【0012】
別の方法は、インフレーション空気を理想気体にたとえ、従って、かかるインフレーション空気が次の関係式、即ち、p・V=n・R・Tを満足させるということを考慮することであり、かかる関係式は、圧力p、体積V及び温度Tの関係を規定しており、nは、気体のモル数であり、Rは、理想気体の一般気体定数である。タイヤによって支持される荷重に関連付けられるタイヤ撓みにより、タイヤの内容積の変化が生じる。かくして、タイヤ中の温度及び圧力の測定値により、タイヤの容積の変化及びかくしてタイヤにより支持される荷重の変化を導き出すことができる。温度センサをタイヤキャビティ中に挿入することは、特に弁の曲率に鑑みて、いつでも容易であるわけではないということが判明した。さらに、ダンプ車用タイヤのサイズによってタイヤキャビティ内の温度のばらつきが生じる。具体的に言えば、これらタイヤの使用と関連した比較的大きな空気温度勾配が存在する。一方において、静止段階中、空気を常時攪拌することができず、他方、リムの近くの熱及びタイヤの熱の極めて著しい交換が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
かくして、本発明者は、上述の方法を用いて現在利用できる推定よりも正確であり且つ/或いは実施が容易な走行中におけるタイヤにより支持される荷重の推定を可能にするという課題に取り組んだ。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、この目的は、所与の期間にわたって走行中の車両のタイヤによって支持される動的荷重を推定する方法であって、圧力を所与の期間中に測定し、各圧力測定時点において時間間隔毎に一定であり且つ既知である荷重を受けたタイヤの基準圧力と呼ばれる圧力を求め、各圧力測定時点において荷重の変化を測定圧力と基準圧力の差及びあらかじめ案出されていて荷重の変化を圧力の変化に関連付けるタイヤのモデルから計算することを特徴とする方法を用いて達成された。
【0015】
本発明の意味の範囲内において、動的荷重は、タイヤが走行中における荷重の変化に例えられる。
【0016】
時間間隔は、有利には、車両の負荷状態に対応し、従って、タイヤの各々によって支持される一定の静荷重に対応している。
【0017】
本発明の意味の範囲内において、静荷重は、車両が平坦な路面上で静止している場合にタイヤによって支持される荷重である。
【0018】
タイヤの内部の圧力の変化が第1にタイヤにおいて支持される荷重の変化に関連付けられ、第2に、インフレーション空気の温度の変化に関連付けられるということを考慮して、本発明者は、タイヤにより支持される動的荷重を求める上で、温度測定をなしで済まし、圧力だけを測定することができた。本発明者は、インフレーション空気の圧力及び温度が変化する周期数がタイヤ又はリムとの熱交換に起因しているかどうかに応じて又は周期数がタイヤの走行により生じる荷重の変化に起因しているかどうかに応じて様々であることを実証することができた。
【0019】
具体的に説明すると、本発明者は、低周期数変化がタイヤ及びリムとの熱交換による加熱に起因していることを実証することができた。タイヤの加熱は、タイヤの構成材料のヒステリシスという現象、従って、走行中にこれら構成材料に加わる応力に起因している。リムの加熱は、車輪内の制動及び伝動装置の存在に起因している。タイヤ及びリムの高い熱慣性が所与の場合、これら現象と関連したインフレーション空気及び圧力の変化と関連付けられる周期数は、優に1Hzを下回る。
【0020】
さらに、本発明者は、撓み時におけるインフレーション空気の圧縮又は別の例として、タイヤのキャビティがその初期容積に戻った際の膨張に対応した荷重の変化に関連付けられる圧力の変化が、一般に1〜2Hz以上のオーダの周期数で生じることを実証することができた。
【0021】
本発明によれば、この期間中における圧力の測定値を用いて時間間隔毎に一定であり且つ既知である荷重を受けたタイヤの基準圧力を求める。種々の周期数を明らかにするということによって、本発明者は、荷重変化の影響をなくし、かくして測定期間にわたって温度の変化の結果として進展し、従って一定荷重でのタイヤの使用に対応した基準圧力を各時点で定めるために、問題の期間にわたって測定信号を処理することを思いつくことができた。
【0022】
次に、各圧力測定時点でのこの基準圧力を知ることにより、測定圧力と求めた基準圧力との間の圧力の変化を計算することが可能である。
【0023】
最後に、あらかじめ案出されていて、既知の初期状態に対する圧力の変化に荷重の変化を関連付けるタイヤのモデルを用いると、タイヤにより支持される動的荷重を求めることができる。
【0024】
得られた平均荷重は、荷重の変化とモデルにより定められた圧力の変化の関係に応じて既知の静荷重とは異なっている場合がある。これが起こると、全体的基準圧力を修正し、圧力変化の計算及び荷重の変化のコンピュータ計算を繰り返し実施することが必要である。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態によれば、各圧力測定時間間隔の間、測定信号に関する多項式を調節することによって時間間隔毎に一定である荷重を受けたタイヤの基準圧力を求める。かかる実施形態により、単に最高周期数変化を省き、タイヤ又は車輪の構成材料に源を発する温度の変化により生じる低周期数圧力変化だけを強調することが可能である。時間間隔毎に一定である荷重は、これら時間間隔の各々の間、車両が平坦な路面上に静止している場合にタイヤにより支持される荷重に対応している。
【0026】
時間間隔毎に一定であるこの荷重は、例えば、これら時間間隔の各々の間にタイヤ毎に実施される計量により知られ又は変形例としてサスペンション要素と関連した支持荷重推定装置により利用可能である。
【0027】
本発明の他の実施形態によれば、任意他形式の信号処理、例えばフィルタを用いて一定である荷重を受けたタイヤの基準圧力を求めることができる。
【0028】
有利には、本発明によれば、用いられる信号処理とは無関係に、この処理は、コンピュータ及びコンピュータプログラムを用いて実施される。
【0029】
好ましくは、本発明によれば、タイヤのモデルは、グラフ体系及び/又は数値モデルである。制御された温度条件下において測定圧力と対応の基準圧力の差から求められた圧力変化に対応しているタイヤにより支持された荷重の変化を計算することを可能にするタイヤのかかるモデルをあらかじめ案出することが必要である。
【0030】
これら制御された温度条件は、有利には、タイヤ及びリムの一定の温度に基づくモデルで得られる。
【0031】
この場合も又有利には、本発明によれば、特に締まりのない路面の場合に圧力の変化に影響を及ぼす恐れのあるタイヤの下の路面の変形を考慮に入れることを可能にするためにタイヤのモデルを測定について用いられた路面とほぼ同じ路面上で定める。
【0032】
本発明の変形形態によれば、使用が周期的なので、車両は、例えばダンプ車型のものであり、測定期間は、少なくとも連続した無負荷時間間隔及び負荷走行時間間隔を含む。
【0033】
本発明のこの変形形態によれば、車両が無負荷状態であるときにタイヤにより支持される静荷重を知るだけで、測定期間全体にわたって車両により支持される荷重を推定することが可能である。車両が無負荷状態にあるときにタイヤにより支持される荷重に関する情報は、車両の製造業者によって伝えられ又は当業者に知られている任意の手段によって測定できる。
【0034】
車両が無負荷状態であるときに圧力測定期間の間、測定信号に関する多項式を調節することによって、一定である荷重を受けたタイヤの基準圧力を求める。負荷状態における走行期間の間にこれらの信号を内挿し又は外挿することにより、一定であり且つ車両が無負荷状態にあるときに支持される荷重に等しい荷重に対応したこれら負荷状態における走行期間の間に基準圧力の推定値が得られる。
【0035】
本発明は又、少なくとも連続した無負荷時間間隔及び負荷走行時間間隔を含む所与の期間にわたって走行中の車両のタイヤによって支持される動的荷重を推定する方法であって、圧力を所与の期間中に測定し、無負荷段階の各圧力測定時点において一定荷重を受けたタイヤの基準圧力と呼ばれる圧力を求め、基準圧力と呼ばれている圧力を一定荷重を受けたタイヤの負荷走行段階の各圧力測定時点で導き出し、各圧力測定時点において荷重を測定圧力と基準圧力の差及びあらかじめ案出されていて荷重の変化を圧力の変化に関連付けるタイヤのモデルから計算することを特徴とする方法を提供する。
【0036】
上述したように、負荷走行段階に隣接して位置する無負荷走行段階の際に一定荷重を受けたタイヤの基準圧力と呼ばれている圧力の求めた信号を内挿し又は外挿することによって、一定荷重を受けたタイヤの負荷走行段階の各圧力測定時点における基準圧力と呼ばれている圧力を導き出す。
【0037】
本発明の他の有利な特徴及び細部は、図1図5を参照して行われる本発明の一実施形態の説明から以下において明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】時間の関数としてのタイヤのインフレーション圧力の記録結果を示すグラフ図である。
図2】負荷走行段階と無負荷走行段階を互いに分離するための図1の信号の処理結果を示すグラフ図である。
図3】車両の既知の負荷状態に対応した時間間隔の各々の間、図1の信号に重ね合わされた基準圧力曲線を示すグラフ図である。
図4】一定であり且つ車両が無負荷状態にあるときの静荷重に等しい荷重に対応した図1の信号に重ね合わされた基準曲線を示すグラフ図である。
図5】時間の関数としての荷重測定値を与える曲線を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に説明する実施例は、露天掘り軌道に沿って走行するサイズ53/80R63の6本のタイヤを履いたKomatsu 930E型のダンプカーを用いた。
【0040】
車両の6本のタイヤの各々は、インフレーション圧力センサを有する。これらセンサは、タイヤインフレーション弁に取り付けられたセンサである。
【0041】
図1は、記録された信号1のグラフ図である。このグラフ図は、3つの走行サイクル期間にわたって時間の関数としてのタイヤインフレーション空気圧力の測定値を示しており、一サイクルは、無負荷(積荷のない)走行段階及び負荷(積荷のある)走行段階を含む。
【0042】
第1のステップでは、車両の互いに異なる負荷状態、特に、この場合、車両が負荷状態で走行している段階及び積荷が無負荷状態で走行している段階に対応した段階を識別する。
【0043】
かかる段階は、オペレータが単に信号を見ることによって手作業で実施できる。より速い方法は、例えば帯域フィルタを適用することによってこのステップを自動化することである。その目的は、第1に、広域フィルタを用いて温度変化に起因する圧力変化の大部分をなくし、そして低域フィルタを用いて動的荷重の変化により生じる圧力変化の大部分をなくすことにある。車両の負荷状態における走行期間は、この場合、処理された信号が所定のしきい値よりも高い期間に対応し、これに対し、車両の無負荷状態における走行期間は、処理された信号がこのしきい値よりも低い期間に対応している。このステップの結果は、図2に示されている。最低圧力値を有するゾーン2,4,6は、無負荷状態走行段階に対応し、最高圧力値を有するゾーン3,5,7は、負荷状態走行段階に対応している。
【0044】
タイヤにより支持される静荷重は例えば計量を用いて上述した段階の各々について既知である場合、第2ステップでは、別々に考慮された各段階の各測定時点に関し、同一の温度変化を受けると共に一定であり且つ静荷重に等しい荷重を受けた場合にタイヤの有する圧力に対応した基準圧力を求める。
【0045】
この第2ステップは、無負荷走行ゾーンにおける車両の動的挙動に関連付けられた変化をなくすために低域フィルタ型の処理を行うかこれら段階の各々について測定された信号に対して多項式調節を行うかのいずれかによって実施される。すると、これにより、図3に曲線8,9,10,11,12,13により表された基準圧力の推定値が与えられる。
【0046】
この場合、本発明者は、これら基準圧力の推定結果を向上させることを目的として、負荷期間及び無負荷期間に対応した時期を考慮に入れないようにするために、これら段階の開始と終了をなくすことを提案する。
【0047】
無負荷状態の車両に対応した静荷重のみを考慮に入れる場合、信号処理における第2ステップは、再び測定信号から始まって、第1ステップにより種々の車両の負荷状態走行段階及び車両の無負荷状態走行段階を時系列的に位置させ、無負荷状態走行段階の各測定時点に関し、同一の温度変化を受けるが、一定であり且つ車両が無負荷状態で車両により支持される荷重に等しい荷重を受けた場合にタイヤの有する圧力に対応した基準圧力を求めることである。
【0048】
上述したように、この第2ステップは、無負荷走行ゾーンにおける車両の動的挙動に関連付けられた変化をなくすために低域フィルタ型の処理を行うかこれらゾーンについて測定された信号に対して多項式調節を行うかのいずれかによって実施される。すると、これにより、無負荷段階に対応したゾーン2,4,6の各々の基準圧力の推定値が与えられ、これらゾーン2,4,6の各々の基準圧力の推定値は、図4に曲線8,10,12で表されている。
【0049】
上述したように、本発明者は、これら基準圧力の推定結果を向上させることを目的として、負荷期間及び無負荷期間に対応した時期を考慮に入れないようにするためにこれら無負荷ゾーンの開始と終了をなくすことを提案する。
【0050】
さらに、無負荷状態の車両に対応した静荷重だけを考慮に入れる場合、第3ステップでは、負荷状態走行ゾーンにおける基準圧力を推定するために無負荷状態ゾーンで得られた曲線を内挿し又は外挿する。本発明者は、無負荷状態走行ゾーンで得られた曲線の各々相互の多項式による内挿を実施することを提案する。これにより、曲線部分14,15,16が得られる。
【0051】
あらゆる場合において、次の段階の実施中、測定時点の各々において、測定圧力と基準圧力の差を計算することが可能である。
【0052】
このようにして得られた圧力変化をあらかじめ定められたモデルの使用により荷重の変化に変換する。
【0053】
曲線17を用いた図5は、時間の関数としてこのようにして得られたタイヤ荷重を示している。
【0054】
上述の内容に従って、ダンプ車に取り付けられたタイヤにより支持される荷重のかかる推定により、損傷の形式の幾つかの元についての良好な理解が得られると共にタイヤ設計をタイヤが供される使用に合うよう良好に適合させることができる。
【0055】
タイヤにより支持される荷重に関するこの情報は又、他の利点をもたらすことができる。例えば、自分が運転している軌道に沿う或る特定の箇所での或る特定のタイヤに関する荷重の変化を減少させるために車両の運転手を意味する使用者に特に使用者が或る特定の状況において自分の運転スタイルを是正するようにする勧告を提供することが可能である。例えば、必要であると思われないゾーンにおける減速を推奨することにより、次の制動の強さを減少させ、それにより車両のフロントアクスル組立体のタイヤへの荷重の誘起される伝達又は実際には振動を減少させることができる場合がある。かくして、運転スタイルに対するかかる是正により、タイヤがタイヤの損傷を潜在的に招く恐れのある過度の荷重に耐えなければならない事態を回避することができる。かかる用途に関し、基準圧力及び荷重をリアルタイムで計算することが有利である。
【0056】
また、タイヤ温度に関する情報を提供することが可能である。実際には、種々のタイヤにより支持される荷重の知識と速度の測定値を組み合わせることにより、タイヤの各々のTKPH(1時間当たりのトン・キロメートル)が与えられる。
【0057】
タイヤに関する情報とは別個に、タイヤにより支持される荷重に関するこの情報により、車両により支持される全体荷重を求めることも可能である。
【0058】
さらに、タイヤの各々により支持される荷重に関するこの情報を利用して動的荷重が大きすぎると考えられる軌道の経路又は維持状態を向上させることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5