【文献】
Journal of Immunology,1994年,vol. 152,pp. 3913-3924
【文献】
Immunogenetics,1995年,Vol. 41,pp. 178-228
【文献】
Nature,1991年,Vol. 351,pp. 290-296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドを有効成分として含有する、細胞傷害性(キラー)T細胞の誘導活性を示す抗原提示細胞を誘導するための薬剤。
請求項1に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドをインビトロで抗原提示細胞へ導入する工程を含む、細胞傷害性(キラー)T細胞の誘導活性を示す抗原提示細胞を誘導する方法。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Yoshida Y, Wang I-C, Yoder HM, Davidson NO, Costa RH.: The forkhead box M1 transcription factor contributes to the development and growth of mouse colorectal cancer. Gastroenterology 132: 1420-1431, 2007.
【非特許文献2】Gusarcova GA, Wang I-C, Major ML, Kalinichenko VV, Ackerson T, Petrovi V, Costa RH.: A cell-penetrating ARF peptide inhibitor of FOXM1 in mouse hepatocellular carcinoma treatment. J. Clin. Invest. 117: 99-111, 2007.
【非特許文献3】Radhakrishnan SK, Bhat UG, Hughes DE, Wang I-C, Costa RH, Gartel AL.: Identification of a chemical inhibitor of the oncogenic transcription factor forkhead box M1. Cancer Res. 66: 9731-9735, 2006.
【非特許文献4】Takahashi K, Furukawa C, Takano A, Ishikawa N, Kato T, Hamaya S, Suzuki C, Yasui W, Inai K, Sone S, Ito T, Nishimura H, Tsuchiya E, Nakamura Y, Daigo Y.: The neuromedin U-growth hormone secretagogue receptor 1b/neurotensin receptor 1 oncogenic signaling pathway as a therapeutic target for lung cancer. Cancer Res. 66: 9408-9419, 2006.
【非特許文献5】Kim I-M, Ackerson T, Ramakrishna S, Tretiakova M, Wang I-C, Kalin TV, Major ML, Gusarova GA, Yoder HM, Costa RH, Kalinichenko VV.: The forkhead box m1 transcription factor stimulates the proliferation of tumor cells during development of lung cancer. Cancer Res. 66: 2153-2161, 2006.
【非特許文献6】Wonsey DR, Folletie M.: Loss of the forkhead transcription factor FoxM1 causes centrosome amplification and mitotic catastrophe. Cancer Res. 65: 5181-5189, 2005.
【非特許文献7】Obama K, Ura K, Li M, Katagiri T, Tsunoda T, Nomura A, Satoh S, Nakamura Y, Furukawa Y: Genome-wide analysis of gene expression in human intrahepatic cholangiocarcinoma. Hepatology 41: 1339-1348, 2005.
【非特許文献8】Laoukili J, Kooistra MRH, Bras A(Brasのaはアキュート・アクセント), Kauw J, Kerkhoven RM, Morrison A, Clevers H, Medema RH.: Foxm1 is required for execution of the mitotic programme and chromosome stability. Nature cell biol. 7: 126-136, 2005.
【非特許文献9】Kalinichenko VV, Major M, Wang X, Petrovic V, Kuechle J, Yoder HM, Shin B, Datta A, Raychaudhuri P, Costa RH.: Foxm1b transcription factor is essential for development of hepatocellular carcinomas and is negatively regulated by the p19ARF tumor suppressor. Genes Dev. 18: 830-850, 2004.
【非特許文献10】Wang X, Kiyokawa H, Dennewitz MB, Costa RH.: The forkhead box m1b transcription factor is essential for hepatocyte DNA replication and mitosis during mouse liver regeneration. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 16881-16886, 2002.
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明の実施の形態]
他に定義がない限り、本明細書において用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味をもつ。
【0018】
本発明のペプチドは、日本人および白人集団に高頻度に見出されるHLA対立遺伝子であるHLA-A2により拘束されるエピトープである。具体的には、HLA-A2への結合親和性を指標として、FOXM1由来のHLA-A2結合ペプチドの候補を選択した。FOXM1 362-370、373-382、640-649ペプチドを用いて2名の健常人から誘導したキラーT細胞は、T2-A2細胞上に発現したHLA-A2に結合したFOXM1-362-370(YLVPIQFPV(配列番号:1))、FOXM1-373-382(SLVLQPSVKV(配列番号:2))、FOXM1-640-649(GLMDLSTTPL(配列番号:3))ペプチドを認識してIFN-γを産生した。また、乳癌患者より上記のペプチドを用いて誘導したキラーT細胞は、panc-1細胞に対して強い細胞傷害活性を示したが、PK-8細胞に対しては細胞傷害活性を示さず、誘導されたキラーT細胞が、HLA-A2拘束性にFOXM1を特異的に識別して、癌細胞株に対して強い細胞傷害活性を示すことが示された。以上より、FOXM1-362-370(YLVPIQFPV(配列番号:1))、FOXM1-373-382(SLVLQPSVKV(配列番号:2))、またはFOXM1-640-649(GLMDLSTTPL(配列番号:3))のいずれかに記載のペプチドは、HLA-A2拘束性にFOXM1特異的なヒト・キラーT細胞を誘導でき、さらにこのようなキラーT細胞が、FOXM1を発現する癌細胞を傷害することが明らかとなった。FOXM1は、肝内胆管癌だけでなく、肺癌、膀胱癌、膵臓癌といった癌においても、肝内胆管癌と同様に、ほぼすべての症例で高発現を認め、子宮頸癌、卵巣癌、悪性リンパ腫、乳癌、胃癌、食道癌、前立腺癌、肝細胞癌、大腸癌、慢性骨髄性白血病といった非常に多様な癌種においても、40%以上の症例でFOXM1の高発現を認めた。これら事実から、FOXM1が多くの癌腫において、免疫療法の標的として有用であることが分かった。
【0019】
(1)本発明のペプチド、およびそれを含む癌に対する免疫誘導剤
本発明のペプチドは、以下の(A)から(D)のいずれかに記載のペプチドである。
(A)配列番号:1から3のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むペプチド。
(B)配列番号:1から3のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むペプチドにおいて、1個、2個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されており、細胞傷害性(キラー)T細胞の誘導活性を示すペプチド。
(C)N末端から2番目のアミノ酸がロイシンまたはメチオニンである(B)に記載のペプチド。
(D)C末端アミノ酸がバリンまたはロイシンである(B)に記載のペプチド。
【0020】
本明細書における「細胞傷害性(キラー)T細胞の誘導活性を示すペプチド」とは、キラーT細胞(細胞傷害性T細胞/CTL)を刺激するT細胞誘導活性を有するペプチドを意味する。
【0021】
本発明のペプチドは、キラーT細胞の誘導活性を示すペプチドであって、40アミノ酸未満、好ましくは20アミノ酸未満、より好ましくは約15アミノ酸未満であり、かつ配列番号:1から3のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むペプチド(エピトープペプチド)である。あるいは、本発明のペプチド(エピトープペプチド)は、キラーT細胞の誘導活性を保持する限り、1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されている、配列番号:1から3のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むペプチドを含みうる。置換、欠失、挿入、および/または付加される残基の数は、一般的に、5アミノ酸またはそれ未満、好ましくは4アミノ酸またはそれ未満、より好ましくは3アミノ酸またはそれ未満、よりいっそう好ましくは1アミノ酸もしくは2アミノ酸である。
【0022】
変異体ペプチド(すなわち、本来のアミノ酸配列に対して、1個、2個、または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を行うことにより改変されたアミノ酸配列を含むペプチド)は、本来の生物活性を保持することが知られている(Mark DF et al., (1984) Proc Natl Acad Sci USA 81:5662-6; Zoller MJ and Smith M, (1982) Nucleic Acids Res 10:6487-500; Dalbadie-McFarland G et al., (1982) Proc Natl Acad Sci USA 79:6409-13)。アミノ酸改変は、本来のアミノ酸側鎖の性質を保存することが好ましい。アミノ酸側鎖の性質の例は、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、および共通して、以下の官能基または特性を有する側鎖である:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシ基含有側鎖(S、T、Y);イオウ原子含有側鎖(C、M);カルボン酸およびアミド含有側鎖(D、N、E、Q);塩基含有側鎖(R、K、H);ならびに芳香族含有側鎖(H、F、Y、W)。ただし、括弧でくくられた文字は、アミノ酸の一文字記号を示す。
【0023】
好ましい態様において、本発明のペプチド(免疫原性ペプチド)は、ノナペプチド(9-mer)またはデカペプチド(10-mer)である。
【0024】
さらに、高い結合親和性およびキラーT細胞誘導活性を示すペプチドを得るために、天然に存在するFOXM1の部分ペプチドのアミノ酸配列に、1個、2個、もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、および/または付加による改変を加えてもよい。本明細書において、「数個の」という用語は、5個またはそれ未満、好ましくは3個またはそれ未満、より好ましくは2個またはそれ未満を指す。さらに、HLA抗原へ高い親和性を示すペプチドの配列の規則性は既知であるため(Kubo RT, et al., (1994) J. Immunol., 152, 3913-24; Rammensee HG, et al., (1995) Immunogenetics. 41:178-228; Kondo A, et al., (1995) J. Immunol. 155:4307-12)、そのような規則性に基づきHLA抗原への親和性を高めることを目的として、本発明のペプチド(エピトープペプチド)を改変することができる。例えば、N末端から2番目のアミノ酸をロイシンまたはメチオニンに置換することで、高いHLA-A2結合親和性を示すペプチドを得ることができる。同様に、C末端アミノ酸をバリンまたはロイシンに置換することでも、高いHLA-A2結合親和性を示すペプチドを得ることができる。
【0025】
エピトープペプチド配列が、異なる機能をもつ内因性または外因性の蛋白質のアミノ酸配列の一部と同一である場合、特定の物質に対する自己免疫異常またはアレルギー症状等の副作用が引き起こされうる。このような副作用を回避するため、エピトープペプチドの改変にあたっては、公知の蛋白質のアミノ酸配列に一致しないように、利用可能なデータベースを用いて相同性検索を行い、改変後のエピトープペプチドと100%の相同性を示す異なる機能をもつ内因性または外因性の蛋白質が存在しないことを確認する必要がある。このような手順を踏むことにより、HLA抗原との結合親和性を増加させる、および/またはキラーT細胞誘導活性を増加させる上記のアミノ酸配列の改変による危険性が避けられうる。
【0026】
上記のようなHLA抗原に対する高い結合親和性をもつペプチドは、癌ワクチンとして大いに効果的であることが期待されるが、高い結合親和性を指標として選択される候補ペプチドは、実際のキラーT細胞誘導活性について調べる必要がある。キラーT細胞誘導活性は、ヒトMHC抗原を有する抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、および樹状細胞)、またはより具体的には、ヒト末梢血単核白血球由来の樹状細胞を誘導し、対象のペプチドによる刺激後、CD8陽性細胞と混合し、標的細胞に対する細胞傷害活性を測定することにより確認されうる。反応系として、ヒトHLA抗原を発現させるように作製されたトランスジェニック動物(例えば、BenMohamed L, et al., (2000) Hum. Immunol. 61(8):764-79 Related Articles, Books, Linkoutに記載)が用いられうる。例えば、標的細胞は、
51Crなどで放射標識することができ、細胞傷害活性は、標的細胞から放出された放射能から計算することができる。あるいは該標的細胞は、固定化ペプチドを有する抗原提示細胞の存在下でキラーT細胞により産生および放出されたIFN-γを測定し、抗IFN-γモノクローナル抗体を用いて培地上のIFN-γ産生ゾーンを可視化することにより調べることができる。
【0027】
実施例に示すようにペプチドのキラーT細胞の誘導活性を調べた結果として、HLA抗原に対する高い結合親和性をもつペプチドは必ずしも高い誘導活性を有するとは限らないことが発見された。しかしながら、FOXM1-362-370(YLVPIQFPV(配列番号:1))、FOXM1-373-382(SLVLQPSVKV(配列番号:2))、FOXM1 640-649 (GLMDLSTTPL(配列番号:3))により示されたいずれかのアミノ酸配列を含むノナペプチドは、特に高いキラーT細胞誘導活性を示した。
【0028】
上記のように、本発明は、キラーT細胞の誘導活性を示すペプチド、すなわち、配列番号:1から3のいずれかに記載のアミノ酸配列またはそれらの変異体(すなわち、1個、2個、または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されているアミノ酸配列)を含むペプチドを提供する。配列番号:1から3のいずれかに記載される9アミノ酸を含むペプチドまたはそれらの変異体は、他の内因性蛋白質とアミノ酸配列が一致しないことが好ましい。特に、N末端から2番目のアミノ酸のロイシンまたはメチオニンへの置換、または/および、C末端アミノ酸のバリンまたはロイシンへの置換により、高いHLA-A2結合親和性を示すペプチドを得ることができる。
【0029】
本発明のペプチドは、改変によりキラーT細胞の誘導活性を失わない限りにおいて、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化のような改変を含みうる。他の改変としては、例えば、ペプチドの血清半減期を増加させるために用いることができるD-アミノ酸または他のアミノ酸のアナログが含まれる。
【0030】
本発明のペプチドの入手・製造方法は特に限定されず、化学合成したペプチドでも、遺伝子組み換え技術により作製した組み換えペプチドのいずれでもよい。
【0031】
化学合成ペプチドを入手する場合には、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って本発明のペプチドを合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して、本発明のペプチドを合成することもできる。
【0032】
本発明のペプチドを組み換え蛋白質として産生するには、当該ペプチドをコードする塩基配列を有するDNAまたはその変異体または相同体を入手し、これを好適な発現系に導入することにより本発明のペプチドを製造することができる。
【0033】
発現ベクターとしては、好ましくは宿主細胞において自立複製可能であるか、あるいは宿主細胞の染色体中へ組込み可能であるものであればよく、ペプチドをコードする遺伝子を発現できる位置にプロモーターを含有しているものが使用される。また、本発明のペプチドをコードする遺伝子を有する形質転換体は、上記の発現ベクターを宿主に導入することにより作製することができる。宿主は、細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞のいずれでもよく、また宿主への発現ベクターの導入は、各宿主に応じた公知の手法により行えばよい。
【0034】
本発明においては、上記のようにして作製した形質転換体を培養し、培養物中に本発明のペプチドを生成蓄積させ、該培養物より本発明のペプチドを採取することにより組み換えペプチドを単離することができる。
【0035】
形質転換体が大腸菌等の原核生物、酵母菌等の真核生物である場合、これら微生物を培養する培地は、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。また培養条件も該微生物を培養するのに通常用いられる条件にて行えばよい。培養後、形質転換体の培養物から本発明のペプチドを単離精製するには、通常のペプチドの単離、精製法を用いればよい。
【0036】
なお、配列番号:1から3のいずれかに記載のアミノ酸配列において1個、2個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドは、配列番号:1から3のいずれかに記載のアミノ酸配列をコードするDNA配列の塩基配列の情報に基づいて、当業者であれば適宜製造または入手することができる。即ち、配列番号:1から3のいずれかに記載のアミノ酸配列において1個、2個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、キラーT細胞の誘導活性を示すペプチドをコードする遺伝子は、化学合成、遺伝子工学的手法または突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で作製することもできる。例えば、遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は、特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2
nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載の方法に準じて行うことができる。
【0037】
上記した本発明のペプチドは、後記実施例にも示す通り、癌に対する免疫を誘導することができる。従って、本発明によれば、本発明のペプチドを有効成分として1種類以上含有する、癌に対する免疫誘導剤が提供される。
【0038】
本発明の免疫誘導剤は2つまたはそれ以上のエピトープペプチドを組み合わせた混合剤として調製することもできる。複数種類のペプチドを組み合わせた免疫誘導剤は、カクテルであってもよく、または標準的な技術を用いて互いに結合させてもよい。組み合わせるエピトープペプチドは、同一遺伝子由来の異なるアミノ酸配列を有するペプチドでもよく、または異なる遺伝子由来のアミノ酸配列を有するペプチドでもよい。本発明のペプチドを投与すると、投与されたペプチドは抗原提示細胞のHLA抗原上において高密度で提示され、続いて、投与されたペプチドとHLA抗原の間で形成された複合体に対して特異的に反応するキラーT細胞が誘導される。あるいは、被検体から採取した樹状細胞と本発明のペプチドとを接触させることにより(あるいは被検体から採取した樹状細胞に本発明のペプチドを負荷することにより)、本発明のペプチドを細胞表面上に提示している抗原提示細胞を得ることができる。それぞれの被検体へこれら抗原提示細胞を再投与することにより被検者の体内でキラーT細胞を誘導することができる。その結果、本発明のペプチドを提示している標的細胞に対する免疫応答を増強させることができる。
【0039】
本発明の癌に対する免疫誘導剤は、インビトロまたはインビボ、好ましくはインビトロで用いることにより、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、またはこれらを含む免疫細胞集団を誘導することができ、これにより癌に対する免疫を付与することができる。
【0040】
(2)本発明の癌の治療および/または予防のための薬剤(癌ワクチン)
実施例において、本発明のペプチドが、生体内における癌細胞特異的キラーT細胞を誘導することができることが示された。さらに、先の発明では、FOXM1は、肺癌、胆管細胞癌、膀胱癌、腎細胞癌、前立腺癌、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、子宮頸癌、骨肉腫、乳癌、軟部肉腫、大腸癌等の大部分の症例で高発現していることが示された。したがって本発明のペプチドを有効成分として1種類以上含有する免疫誘導剤には、癌の治療および/または予防のための薬剤としての効果が期待できる。つまり、本発明のペプチドを適当なアジュバントと共に、あるいはペプチドを樹状細胞などの抗原提示細胞に負荷した後に体内に注入することにより、腫瘍攻撃性キラーT細胞を誘導ならびに活性化することが期待できる。さらにその結果として抗腫瘍効果も期待できる。また発明のペプチドをコードする遺伝子を適当なベクターに組み込み、この組換えDNAで形質転換されたヒトの抗原提示細胞(樹状細胞など)、BCG結核菌などの細菌、または本発明のペプチドをコードするDNAをゲノムに組み込まれたワクシニアウイルス等のウイルスは、ヒト癌の治療および/または予防用生ワクチンとして有効に利用できる。なお、癌ワクチンの投与量および投与法は通常の種痘やBCGワクチンと同様である。
【0041】
本発明において、「ワクチン」という用語(免疫原性組成物とも呼ばれる)は、動物への接種により、抗腫瘍免疫を誘導する、または各種癌を抑制する物質を指す。本発明により、配列番号:1から3のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むペプチドが、FOXM1を提示する細胞に対して強力かつ特異的な免疫応答を誘導しうるHLA-A2拘束性エピトープペプチドであると示唆された。従って、本発明はまた、配列番号:1から3のいずれかに記載のアミノ酸配列またはそれらの変異体(すなわち、1個、2個、もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、および/または付加を含む)を含むペプチドを用いて抗腫瘍免疫を誘導する方法を含む。一般的に、抗腫瘍免疫は、以下のような免疫応答を含む:
(1)FOXM1を発現する細胞を含む腫瘍に対するキラーT細胞の誘導、
(2)FOXM1を発現する細胞を含む腫瘍を認識する抗体の誘導、および
(3)抗腫瘍性サイトカイン産生の誘導。
【0042】
特定のペプチドが動物への接種によりこれらの免疫応答のいずれか1つを誘導する場合、そのペプチドは、抗腫瘍免疫誘導効果をもつと決定される。ペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導は、インビボまたはインビトロで、ペプチドに対する宿主における免疫系の応答を観察することにより、検出することができる。
【0043】
例えば、キラーT細胞の誘導を検出するための方法は周知である。生体に侵入する異物は、抗原提示細胞(APC)の作用により、T細胞およびB細胞へ提示される。抗原特異的な様式で抗原提示細胞により提示された抗原に対して応答するT細胞は、抗原による刺激により、キラーT細胞(細胞傷害性Tリンパ球、細胞傷害性T細胞、またはCTLとも呼ばれる)へ分化し、その後増殖する。この過程は、本明細書では、T細胞の「活性化」と呼ばれる。特定のペプチドによるキラーT細胞の誘導は、ペプチドを負荷した抗原提示細胞により、ペプチドをT細胞へ提示させ、キラーT細胞の誘導を検出することにより評価することができる。さらに、抗原提示細胞は、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、好酸球、およびNK細胞を活性化する効果を有する。CD4+ T細胞はまた抗腫瘍免疫において重要であるため、ペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化効果を指標として用いて評価することができる。
【0044】
樹状細胞(DC)を抗原提示細胞として用いて誘導されたキラーT細胞の誘導作用を評価する方法は、当技術分野において周知である。DCは、抗原提示細胞中で最も強いキラーT細胞誘導作用をもつ。この方法では、試験ペプチドを最初にDCに接触させ、その後、該DCをT細胞と接触させる。DCと接触させたT細胞について、標的細胞に対する細胞傷害性効果をもつT細胞を検出する。該T細胞が標的細胞に対して細胞傷害活性を示すことは、すなわち、試験ペプチドが細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有することを示している。標的細胞(例えば腫瘍)に対するキラーT細胞の活性は、例えば、
51Cr標識腫瘍細胞の溶解を指標として用いて検出することができる。あるいは、
3H-チミジン取り込み活性またはLDH(ラクトースデヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いて腫瘍細胞損傷の程度を評価することができる。
【0045】
これらの方法によりキラーT細胞誘導活性を示すことが確認された試験ペプチドは、DC活性効果およびその後のキラーT細胞誘導活性を示すペプチドである。それゆえに、腫瘍細胞に対してキラーT細胞を誘導する活性を示すペプチドは、FOXM1を提示する癌に対するワクチンとして有用である。さらに、ペプチドと接触させることにより癌に対してキラーT細胞を誘導する能力(活性)を獲得した抗原提示細胞は、癌に対するワクチンとして有用である。さらに、抗原提示細胞によるペプチドの提示によって細胞傷害性を獲得したキラーT細胞もまた、FOXM1を提示する癌に対するワクチンとして利用できる。抗原提示細胞およびキラーT細胞による抗腫瘍免疫を利用する癌の治療方法は、細胞免疫療法と呼ばれる。
【0046】
一般的に、細胞免疫療法のためにペプチドを用いる場合、異なる構造をもつ複数のペプチドを組み合わせることにより、キラーT細胞誘導の効率を増加させることができる。それゆえに、蛋白質断片でDCを刺激する場合、複数種のペプチド断片の混合物を用いることが有利である。
【0047】
ペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導はさらに、腫瘍に対する抗体産生の誘導を観察することにより評価することができる。例えば、ペプチドに対する抗体が、ペプチドで免疫された実験動物において誘導される場合、ならびに、腫瘍細胞の成長、増殖、および/または転移がそれらの抗体により抑制される場合、ペプチドは抗腫瘍免疫を誘導すると決定される。
【0048】
抗腫瘍免疫は、本発明のワクチンを投与することにより誘導することができ、抗腫瘍免疫が誘導されることにより、癌の治療および/または予防を可能にする。癌に対する治療および/または癌の発症の予防の効果は、癌細胞の成長の阻害、癌細胞の退縮、および癌細胞の発生の抑制を含みうる。癌をもつ個体の死亡率の減少、血液中の癌マーカーの減少、または癌に伴う検出可能な症状の軽減なども、癌の治療および/または予防による効果に含まれる。そのような治療的および/または予防的効果は、癌に対するワクチンの治療的および/または予防的効果がワクチン投与なしの対照と比較して、統計学的に有意であること、例えば5%またはそれ未満の有意レベルで観察されることが好ましい。統計学的な手法としては、例えば、スチューデントt検定、マン-ホイットニーU検定、またはANOVA等が、統計学的有意性を決定するために用いられうる。
【0049】
本発明において、被検体は、好ましくは哺乳動物である。例示的な哺乳動物は、限定されるわけではないが、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシを含む。
【0050】
本発明のペプチドは、インビボまたはエクスビボで被検体に投与することができる。また、癌を治療および/または予防するための免疫原性組成物を製造するために、本発明の免疫原性ペプチド、すなわち配列番号:1から3のいずれかに記載のアミノ酸配列またはそれらの変異体ペプチドから選択されるノナペプチドを使用することができる。
【0051】
より具体的には、本発明は、本発明のペプチドを有効成分として1種類以上含有する、腫瘍を治療するための、または腫瘍の増殖、転移などを予防するための薬剤を提供する。本発明のペプチドは、膵癌、胆管細胞癌、胃癌、大腸癌、非小細胞肺癌、精巣癌、子宮頸癌、骨肉腫、軟部肉腫のような腫瘍の治療において特に有用である。
【0052】
本発明のペプチドは、通常の製剤方法により製剤した薬剤として被検体へ直接投与することができる。そのような製剤には、本発明のペプチドに加えて、薬学的に許容される担体、賦形剤などを、必要に応じて含んでいてよい。本発明の薬剤は、様々な腫瘍の治療および/または予防のために用いられうる。
【0053】
さらに、細胞性免疫を効果的に確立するために、本発明のペプチドを有効成分として1種類以上含有する腫瘍の治療および/または予防のための薬剤にアジュバントを混合することができる。あるいは、該薬剤は抗腫瘍剤のような他の活性成分と共に投与されうる。適切な製剤には顆粒も含まれる。適切なアジュバントは、文献(Johnson AG. (1994) Clin. Microbiol. Rev., 7:277-89)に記載されている。例示的なアジュバントは、フロイントの不完全アジュバント、BCG、トレハロースダイマイコレート(TDM)、リポ多糖(LPS)、ミョウバンアジュバント、シリカアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびミョウバンを含むが、これに限定されない。さらに、リポソーム製剤、薬物が直径数μmのビーズへ結合している顆粒製剤、および脂質が前記ペプチドに結合している製剤が、便利に用いられうる。投与の方法は、経口投与、皮内注射、皮下注射、静脈内注射などであってもよく、全身投与または標的腫瘍の付近への局所的投与を含みうる。
【0054】
本発明のペプチドの用量は、治療すべき疾患、患者の年齢、体重、投与の方法などにより適切に調製することができる。用量は、普通、0.001 mg〜1000 mg、好ましくは0.01 mg〜100 mg、より好ましくは0.1 mg〜10 mgであり、好ましくは数日に1回から数ヶ月に1回投与されるが、当業者は適切な用量および投与の方法を容易に選択することができ、これらのパラメーターの選択および最適化は、十分に通常の技術の範囲内である。製剤の形態も特に限定されず、凍結乾燥したものや、糖などの賦形剤を加えて顆粒にしたものでもよい。
【0055】
本発明の薬剤に添加することができるキラーT細胞誘導活性を高めるための補助剤としては、ムラミルジペプチド(MDP) ほかのBCG菌などの菌体成分、Nature, vol. 344, p873 (1990)に記載されるISCOM、J.Immunol. vol. 148, p1438(1992)に記載されるサポニン系のQS-21、リポソーム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、レンチナン、シゾフィラン、ピシバーニールなどの免疫賦活剤を補助剤として用いることもできる。また、IL-2、IL-4、IL-12、IL-1、IL-6、TNFなどのT細胞の増殖、分化を増強するサイトカイン等、ならびにNKT細胞を活性化するαガラクトシルセラミドやToll様レセプターに結合して自然免疫系を活性化するCpG、リポ多糖(LPS)なども補助剤として用いることができる。
【0056】
本発明のワクチン組成物は、キラーT細胞を初回抗原刺激する成分を含む。脂質は、生体内においてウイルス抗原に対して初回抗原刺激する物質として同定されている。例えば、パルミチン酸残基は、リシン残基のε-アミノ基およびα-アミノ基に結合し、その後、本発明の免疫原性ペプチドに連結することができる。脂質化ペプチドは、ミセルまたは粒子に注入する、リポソームに封入する、またはアジュバント中に乳化するかのいずれかで、直接投与することができる。脂質初回抗原刺激のもう一つの例として、適切なペプチドに共有結合的に結合している場合、トリパルミトイル-S-グリセリルシステイニルセリル-セリン(P3CSS)のような大腸菌(E. coli)リポ蛋白質により初回抗原刺激することができる(Deres K, et al., (1989) Nature 342:561-4)。
【0057】
本発明の免疫原性ペプチドはまた、ウイルスベクターまたは細菌ベクターにより発現させることができる。適切な発現ベクターの例は、ワクシニアまたは鶏痘のような弱毒性ウイルス宿主を含む。例えば、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現するベクターとして、ワクシニアウイルスを使用することができる。宿主細胞へ組換えワクシニアウイルスを導入することにより、免疫原性ペプチドを発現させ、それにより、免疫応答を誘発する。ワクシニアベクターを用いた免疫化方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。さらに、BCG(カルメット・ゲラン菌(Bacille Calmette Guerin))を用いることもできる。BCGベクターは、Stover CK, et al., (1991) Nature 31:456-60に記載されている。治療的投与または免疫化に有用な幅広い種類の他のベクター、例えば、アデノおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、解毒化炭疽毒素ベクターなどが、当技術分野において公知である。例えば、Shata MT, et al., (2000) Mol. Med. Today 6:66-71; Shedlock DJ and Weiner DB., et al., (2000) J. Leukoc. Biol. 68:793-806;およびHipp JD, et al., (2000) In Vivo 14:571-85を参照。
【0058】
また、患者から採取した細胞または、一部のHLA対立遺伝子を共有する他人の(アロ)細胞に試験管内で当該抗原ペプチドを加え、抗原提示させた後、患者の血管内や腫瘍局所などに投与し、患者体内で効果的にキラーT細胞を誘導することもできる。また、患者末梢血リンパ球に当該ペプチドを加えて試験管内で培養することにより、試験管内でキラーT細胞を誘導した後に、患者血管内や腫瘍局所などに投与することもできる。このような細胞移入による治療は、既に癌治療法として実施されており、当業者間では、よく知られた方法である。
【0059】
本明細書における癌の種類は特に限定されず、具体例としては、食道癌、乳癌、甲状腺癌、大腸癌、膵癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、悪性リンパ腫、骨肉腫、褐色細胞腫、頭頸部癌、子宮癌、卵巣癌、脳腫瘍、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、腎臓癌、前立腺癌、肺癌、胃癌、肝癌、胆嚢癌、精巣癌、甲状腺癌、膀胱癌または肉腫などが挙げられる。本発明を応用する際に適した癌の例としては、胆道癌、肺癌、膵癌、膀胱癌が例示できる。
【0060】
(3)本発明の抗体
本発明は、上記した本発明のペプチドの一部もしくは全部をエピトープ(抗原)として認識する抗体、ならびに当該蛋白質またはペプチドを用いてインビトロ刺激により誘導されたキラーT細胞にも関する。一般的には、キラーT細胞は抗体よりも強い抗腫瘍活性を示す。
【0061】
また、本発明の抗体は、本発明のペプチドと同様に、癌抗原であるFOXM1の活性を阻害することができる限り、FOXM1を発現する癌の予防および/または治療剤として有用である。実際の使用法としては、本発明のペプチドまたは抗体をそのまま、または医薬的に許容される担体および/または希釈剤とともに、必要に応じて補助剤も加えて、注射剤として投与することもできる。また噴霧などの方法で粘膜からの経皮吸収などで投与することもできる。尚、ここで言う「担体」とは例えば、ヒト血清アルブミンであり、また希釈剤としては、例えばPBS、蒸留水等を挙げることができる。
【0062】
本発明の抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、その作製は当業者に公知の方法により行なうことができる。
【0063】
例えば、ポリクローナル抗体は、本発明のペプチドを抗原として哺乳動物または鳥類を免疫感作し、該哺乳動物または鳥類から血液を採取し、採取した血液から抗体を分離・精製することにより得ることができる。例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ラット、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ等の哺乳動物または鳥類を免疫することができる。免疫感作の方法は当業者に公知であり、例えば抗原を、例えば7〜30日間隔で2〜3回投与すればよい。投与量は1回につき、例えば抗原約0.05〜2 mg程度とすることができる。投与経路も特に限定されず、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与等を適宜選択することができる。また、抗原は適当な緩衝液、例えば完全フロイントアジュバント、または水酸化アルミニウム等の通常用いられるアジュバントを含有する適当な緩衝液に溶解して用いることができる。
【0064】
免疫感作した哺乳動物または鳥類を一定期間飼育した後、抗体価が上昇してきたら、例えば100μg〜1000μgの抗原を用いて追加免疫を行なうことができる。最後の投与から1〜2ケ月後に免疫感作した哺乳動物または鳥類から血液を採取して、当該血液を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールを用いた沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の常法によって分離・精製することにより、ポリクローナル抗血清として、本発明のペプチドを認識するポリクローナル抗体を得ることができる。
【0065】
一方、モノクローナル抗体はハイブリドーマを調製して得ることができる。例えば、抗体産生細胞とミエローマ細胞株との細胞融合によりハイブリドーマを得ることができる。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、以下のような細胞融合法によって得ることができる。
【0066】
抗体産生細胞としては、免疫された動物からの脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等を使用する。抗原としては、本発明のペプチドを使用する。免疫動物としてはマウス、ラット等を使用でき、これらの動物への抗原の投与は常法により行う。例えば完全フロインドアジュバント、不完全フロインドアジュバントなどのアジュバントと抗原である本発明のペプチドとの懸濁液もしくは乳化液を動物の静脈、皮下、皮内、腹腔内等に数回投与することによって動物を免疫化する。免疫化した動物から抗体産生細胞として例えば脾細胞を取得し、これとミエローマ細胞とを公知の方法(G.Kohler et al .,Nature,256 495(1975))により融合してハイブリドーマを作製することができる。
【0067】
細胞融合に使用するミエローマ細胞株としては、例えばマウスではP3X63Ag8、P3U1株、Sp2/0株などが挙げられる。細胞融合を行なうに際しては、ポリエチレングリコール、センダイウイルスなどの融合促進剤を用い、細胞融合後のハイブリドーマの選択にはヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地を常法に従って使用する。細胞融合により得られるハイブリドーマは限界希釈法等によりクローニングする。さらに必要に応じて、本発明のペプチドを用いた酵素免疫測定法によりスクリーニングを行うことにより、本発明のペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する細胞株を得ることができる。
【0068】
上記の方法に加えて、EBウイルス感染リンパ球等のヒトリンパ球を、本発明のペプチド、ペプチドを発現する細胞、またはそれらの溶解物を用いてインビトロで刺激することにより、免疫化細胞を調節することができる。この免疫化されたリンパ球をU266等のヒト由来の骨髄細胞と融合させることにより、本発明のペプチドに結合するヒト抗体を得ることもできる(特開昭63-17688号)。
【0069】
このようにして得られたハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造するには、通常の細胞培養法や腹水形成法により該ハイブリドーマを培養し、培養上清あるいは腹水から該モノクローナル抗体を精製すればよい。培養上清もしくは腹水からのモノクローナル抗体の精製は、常法により行なうことができる。例えば、硫安分画、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて使用できる。
【0070】
さらに、本発明のペプチド、ペプチドを発現する細胞、またはそれらの溶解物を用いて、ヒト抗体遺伝子群を有するトランスジェニック動物を免疫化することもできる。免疫化されたトランスジェニック動物から抗体産生細胞を採取し、上記のミエローマ細胞株と融合させハイブリドーマを得て、該ハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造することもできる(WO92-03918、WO94-02602、WO94-25585、WO94-33735、WO96-34096)。
【0071】
または、免疫化リンパ球等の、抗体を産生する免疫細胞を癌遺伝子によって不死化し、モノクローナル抗体の調製に用いることもできる。
【0072】
このようにして得られるモノクローナル抗体は、遺伝子操作技術を用いて調節することもできる(Borrbaeck and Larrick, (1990)Therapeutic Monoclonal Antibodies)。例えば、ハイブリドーマや免疫化リンパ球等の抗体産生細胞より抗体をコードするDNAをクローニングし、適切なベクターに挿入した上で、宿主細胞に導入することにより、組換え抗体を調製することができる。
【0073】
また、本発明の抗体は、本発明のペプチドに結合する限り、抗体の断片または修飾抗体であっても良い。抗体断片としては、Fab、F(ab’)
2、Fv、またはHおよびL鎖由来のFv断片が適切なリンカーによって連結されている一本鎖Fv(scFv)であっても良い(Huston et al., (1988) Proc Natl Acad Sci USA 85:5879-83)。より具体的には、抗体をパパインやペプシン等の酵素で処理することにより、抗体断片を調製することができる(Co et al., (1994) J Immunol 152:2968-76、Better and Horwitz, (1989) Methods Enzymol 178: 476-96、Pluckthun and Skerra, (1989) Methods Emzymol 178:497-515、Lamoyi (1986) Methods Enzymol 121:652-63、Rousseaux et al., (1986 Methods Enzymol 121:663-9、Bird and Walker, (1991) Trends Biotech 9:132-7)。
【0074】
本発明の抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)等の様々な分子を結合させることで得られる、修飾抗体を含む。抗体の修飾は、当技術分野で慣例的な化学修飾方法により行うことができる。
【0075】
本発明の抗体は、非ヒト抗体由来の可変領域とヒト抗体由来の定常領域を有するキメラ抗体、または、非ヒト抗体由来の相補性決定領域(CDR)とヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR)およびヒト抗体由来の定常領域を含むヒト化抗体も含む。このような抗体は、当技術分野で慣例的な方法により調製することができる。ヒト化抗体は、ヒト抗体のCDR配列領域を所望の結合活性を備えたげっ歯類のCDR領域と置換することにより得られる(Verhoeyen et al., (1988) Science 239:1534-6)。したがって、ヒト化抗体は、キメラ抗体と比較して、ヒト抗体のより狭い領域が非ヒト由来の対応する領域と置換された抗体である。
【0076】
ヒトフレームワーク領域および定常領域に加えてヒト可変領域も有する完全ヒト抗体を作成することもできる。例えば、インビトロ法では、バクテリオファージ上にヒト抗体断片を提示させた組換えライブラリーを用いてスクリーニングを行うことができる(Hoogenboom and Winter, (1992) J Mol Biol 227:381-8)。同様に、内因性免疫グロブリン遺伝子を部分的または完全に不活性化されたトランスジェニック動物に、ヒト免疫グロブリン座位を導入することによりヒト抗体を作成することもできる(米国特許第6,150,584号、第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号)。
【0077】
上記のようにして得られた抗体は、当技術分野で慣例的な方法により均一になるまで精製することができる。例えば、一般的な蛋白質の分離・精製方法を用いることができる。アフィニティークロマトグラフィー等のカラムクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、および等電点電気泳動等を組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができるが、これらの方法に限定されない(Antibodies: A Laboratory Manual, Ed Harlow and David Lane, (1988) Cold Spring Harbor Laboratory)。アフィニティーカラムとして、プロテインAカラムおよびプロテインGカラムを使用することができる。プロテインAカラムとしては、例えば、ハイパーD、POROS、およびセファロースF.F(Pharmacia)が含まれる。
【0078】
アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が含まれる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratry Course Manual. Ed Daniel R. et al.)。クロマトグラフィーは、HPLCおよびFPLCなどの液相クロマトグラフィーによって行うこともできる。
【0079】
本発明の抗体の抗原結合性を測定するために、例えば、吸光度測定、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素免疫アッセイ法(EIA)、放射免疫アッセイ法(RIA)、免疫蛍光検査法を用いても良いが、これらに限定されない。ELISAの場合、本発明の抗体をプレート上に固定化し、本発明のペプチドを添加し、次いで抗体産生細胞の培養上清または精製抗体を含む試料を添加する。続いて抗原結合性を測定される抗体を認識し、検出可能な標識を有する二次抗体を添加する。プレートを洗浄後、二次抗体の標識を検出するための試薬を添加し、吸光度等を測定する。例えば、二次抗体の標識としてはアルカリフォスファターゼ等の酵素を用いることができ、検出するための試薬としてはp-ニトロフェニルリン酸等の酵素基質を用いることができる。また、抗体の活性評価には、BIAcore(Pharmacia)を用いることもできる。
【0080】
本発明の抗体は、サンプル中に含まれる本発明のペプチドを検出することができる。すなわち、本発明の抗体を、例えば、癌組織生検に暴露することにより、癌組織中に本発明のペプチドが存在することを確認することが可能となる。
【0081】
本発明のペプチドを用いて癌の治療および/または予防のための処置を行うに先立ち、本発明の抗体を用いて治療対象の癌が本発明のペプチドを発現していることを確認することにより、治療開始以前にその効果が期待できる被検対象を予測することが可能となる。
【0082】
さらに、本発明の抗体は、種々の癌細胞で発現亢進しているFOXM1のペプチド断片を認識する抗体であるため、診断のみならず治療への応用も期待される。
【0083】
(4)ヘルパーT細胞、キラーT細胞、またはこれらを含む免疫細胞集団
本発明はまた、本発明のペプチドを用いてインビトロ刺激により誘導されたキラーT細胞、ヘルパーT細胞、またはこれらを含む免疫細胞集団に関する。例えば、末梢血リンパ球や腫瘍浸潤リンパ球を本発明のペプチドを用いて、インビトロで刺激すると腫瘍反応性活性化T細胞が誘導され、この活性化されたT細胞を癌患者の血管内、あるいは腫瘍局所などに投与する養子免疫療法に有効に用いることができる。また本発明のペプチドを強力な抗原提示細胞である樹状細胞に負荷、あるいは遺伝子導入により発現させて、これらを用いてT細胞をインビボあるいはインビトロで刺激することにより、抗腫瘍免疫応答を誘導することができる。
【0084】
好ましくは、本発明のペプチドと、免疫賦活剤とを用いてインビボあるいはインビトロ刺激により、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、またはこれらを含む免疫細胞集団を誘導する。ここで用いる免疫賦活剤としては、ミネラルオイル、水酸化アルミニウム、結核菌製剤、溶血製連鎖球菌製剤、サルノコシカケ製剤、他のアジュバントや細胞増殖因子またはサイトカインなどが挙げられる。
【0085】
上記のようにして得られたヘルパーT細胞、キラーT細胞、またはこれらを含む免疫細胞集団を癌患者の血管内や腫瘍局所などに移入することにより、腫瘍を抑制することができ、癌を予防および/または治療することが可能である。
【0086】
また、本発明のペプチドを用いることにより、上記した通り腫瘍を抑制することができるキラーT細胞、ヘルパーT細胞、またはこれらを含む免疫細胞集団を作製することができる。従って、本発明によれば、本発明のペプチドを含む細胞培養液が提供される。この細胞培養液を用いることにより、腫瘍を抑制することができるキラーT細胞、ヘルパーT細胞、またはこれらを含む免疫細胞集団を作製することができる。さらに、本発明によれば、上記の細胞培養液、および細胞培養容器を含む、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、またはこれらを含む免疫細胞集団を作製するための細胞培養キットも提供される。
【0087】
(5)抗原を提示するエキソソーム
本発明はさらに、本発明のペプチドとHLA抗原の間で形成された複合体をその表面上に提示するエキソソームと呼ばれる細胞内小胞を提供する。エキソソームは、例えば、第平11-510507号および第2000-512161号の公開された日本語翻訳文に詳細に記載された方法を用いることにより調製することができ、好ましくは、治療および/または予防の標的である被検体から得られた抗原提示細胞を用いて調製される。本発明のエキソソームは、本発明のペプチドと同様に、癌ワクチンとして接種することができる。
【0088】
本発明において用いられるHLA抗原の型は、治療および/または予防を必要とする被検体のHLA抗原の型と一致しなければならない。例えば、HLA-A2が挙げられ、好ましくはHLA-A2 (HLA-A*0201)が挙げられる。「HLA-A2」は蛋白質を意味し、「HLA-A*0201」は該蛋白質を細分化する遺伝子を指す(現時点では細分化された蛋白質を表現する記号が無いため上記のように記載している)。
【0089】
(6)抗原提示細胞、キラーT細胞の誘導方法
本発明は、本発明の1つまたは複数のペプチドを用いて抗原提示細胞を誘導する方法を提供する。末梢血単球から誘導した樹状細胞に本発明の1つまたは複数のペプチドを接触させ、刺激することにより抗原提示細胞を誘導することができる。本発明のペプチドを被検体へ投与する場合、本発明のペプチドを細胞表面に提示している抗原提示細胞を、被検体の生体内において誘導することができる。あるいは、本発明のペプチドと抗原提示細胞とを接触させた後(あるいは本発明のペプチドを抗原提示細胞へ負荷した後)、該細胞をワクチンとして被検体に投与するエクスビボ法を用いることができる。例えば、エクスビボ投与は以下の工程を含みうる:
(1) 被検体から抗原提示細胞を収集する工程、および
(2) 工程(1)の抗原提示細胞と本発明のペプチドとを接触させる(あるいは工程(1)の抗原提示細胞に本発明のペプチドを負荷する)工程。
【0090】
工程(2)により得られた抗原提示細胞は、被検体へワクチンとして投与することができる。
【0091】
本発明はまた、キラーT細胞誘導活性を示す抗原提示細胞を誘導するための方法を提供する。該方法はインビトロで、本発明の1つまたは複数のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子を抗原提示細胞へ導入する段階を含む。導入する遺伝子は、DNAまたはRNAでありうる。導入の方法は、例えば、リポフェクション、エレクトロポレーション、およびリン酸カルシウム法のような、当分野において通常行われる様々な方法が適切に用いられうるが、これらに限定されない。より具体的には、トランスフェクションは、Reeves ME, et al., (1996) Cancer Res., 56:5672-7; Butterfield LH, et al., (1998) J. Immunol., 161:5607-13; Boczkowski D, et al., (1996) J Exp. Med., 184:465-72;第2000-509281号の公開された日本語翻訳文に記載されているように行われうる。遺伝子を抗原提示細胞へ移入することにより、遺伝子は、細胞において転写、翻訳などを受け、その後、得られた蛋白質は、MHCクラスIまたはクラスII経路によりプロセシングされ、抗原提示経路を通って、部分的ペプチドとして抗原提示細胞表面に提示される。
【0092】
本発明はさらに、本発明の1つまたは複数のペプチドを用いてキラーT細胞を誘導するための方法を提供する。本発明の1つまたは複数のペプチドを被検体に投与することにより、被検体の生体内においてキラーT細胞を誘導し、腫瘍組織におけるFOXM1を提示する癌細胞を標的とする免疫系を増強することができる。あるいは、本発明の1つまたは複数のペプチドを被検体由来の抗原提示細胞およびCD8陽性細胞とインビトロで接触させ、さらに末梢血単核白血球と抗原提示細胞をインビトロで接触させ、刺激することにより、活性化したキラーT細胞を誘導することができる。エクスビボ治療法においては、この活性化したキラーT細胞を被検体へ戻すことで、被検体における腫瘍組織中のFOXM1を提示する癌細胞を標的とする免疫系を増強することができる。例えば、方法は以下の工程を含みうる:
(1)被検体から抗原提示細胞を収集する工程、
(2)工程(1)の抗原提示細胞と本発明のペプチドとを接触させる工程(あるいは工程(1)の抗原提示細胞に本発明のペプチドを負荷する工程)、
(3)細胞傷害性T細胞を誘導するために、工程(2)の抗原提示細胞をCD8+ T細胞と混合し共培養する工程、および
(4)工程(3)の共培養物からCD8+ T細胞を収集する工程。
【0093】
工程(4)により得られた細胞傷害活性をもつCD8+ T細胞は、ワクチンとして被検体に投与することができる。
【0094】
本発明はさらに、本発明の1つまたは複数のペプチドを用いて誘導される単離されたキラーT細胞を提供する。本発明の方法により誘導されるキラーT細胞は、好ましくは、治療および/または予防の標的である被検体由来である。本発明の1つもしくは複数のペプチドを提示する抗原提示細胞またはエキソソームを含む他の薬剤と組み合わせて投与することができる。得られたキラーT細胞は、誘導に用いられたものと同じペプチドを提示する標的細胞に対して特異的である。標的細胞は、FOXM1を内因的に発現させる細胞、またはFOXM1遺伝子がトランスフェクションされている細胞である。本発明のペプチドによる刺激により、本発明のペプチドを細胞表面上に提示する細胞、例えば、膵癌、胆管細胞癌、胃癌、大腸癌、非小細胞肺癌、精巣癌、子宮頸癌、骨肉腫、軟部肉腫等由来の癌細胞は攻撃の標的になりうる。
【0095】
本発明はまた、HLA抗原と本発明の1つまたは複数のペプチドとの間で形成された複合体を提示する抗原提示細胞を提供する。本発明の1つまたは複数のペプチドまたはそのようなペプチドをコードするヌクレオチドを発現させる抗原提示細胞は、好ましくは、治療および/または予防の対象である被検体より採取した抗原提示細胞である。本発明のペプチド、ペプチドを提示する抗原提示細胞、エキソソーム、もしくは活性型キラーT細胞は他の薬物と組み合わせて、ワクチンとして投与することができる。
【0096】
以下の実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0097】
[実施例1]
(1)HLA-A2に結合性を示すFOXM1ペプチドの選択
ヒトFOXM1のアミノ酸配列をBIMAS system により解析して、推定されたHLA-A2との結合親和性(binding affinity) が20以上のものを23種類選択した。
【0098】
【表1】
本発明で同定されたHLA-A2拘束性のヒト・キラーT細胞エピトープを下線で示す。
【0099】
[実施例2]
HLA-A2結合性FOXM1ペプチドによるヒト・キラーT細胞の誘導
(1)採血
健常人および熊本大学医学部付属病院にて治療中の、HLA-A2が陽性の乳癌患者からインフォームドコンセントを得た後、血液サンプル50 mlを得て、先に報告した方法により(Nakatsura, Tら、Eur.J.Immunol.32,826-836,2002)、Ficoll-Conray密度勾配遠心法を利用して末梢血単核細胞を単離した。
【0100】
(2)末梢血単核細胞からのCD8陽性細胞の分離とキラーT細胞の誘導
単離した末梢血単核細胞から、FOXM1ペプチド特異的キラーT細胞を誘導した。キラーT細胞の誘導はKomori, Hらの報告 (Komori, Hら、Clin.Cancer.Res.12: 2689-2697, 2006) に準じて行った。まずMACSを用いて末梢血単核細胞中のCD8陽性細胞を分離し、CD8陰性細胞をGM-CSF (100 ng/ml)とIL-4 (20 ng/ml) 存在下に4日間培養して樹状細胞を分化誘導した。その後、OK-432 (0.1 KE/ml)を添加して樹状細胞を成熟させ、7日目に各FOXM1ペプチドを添加 (10μM)して、IL-7 (10 ng/ml) 存在下にCD8陽性細胞と共に培養した。CD8陽性細胞と共培養して2日後にIL-2を添加(20 IU/ml)した。この自己CD8陰性細胞由来の樹状細胞による抗原刺激を1週毎に3回繰り返し、ペプチド特異的キラーT細胞を誘導した。
【0101】
(3)ELISPOT法によるFOXM1特異的キラーT細胞活性の検討
これらのFOXM1ペプチドで誘導したキラーT細胞が、確かにこれらのFOXM1由来のペプチドに特異的に反応して、IFN-γを産生するか否かをELISPOT法にて検討した。ELISPOT法は、先に報告した方法 (Komori, Hら、Clin.Cancer.Res.12: 2689-2697, 2006) により行った。その結果、FOXM1 362-370、373-382、640-649ペプチドで誘導したキラーT細胞において、FOXM1ペプチド特異的なキラーT細胞の活性化が観察された (
図1)。FOXM1ペプチドで誘導したキラーT細胞の解析結果の、代表的なものを
図1に示す。
【0102】
(4)細胞傷害性試験によるキラーT細胞の細胞傷害活性の検討
誘導したFOXM1ペプチド特異的キラーT細胞の細胞傷害活性を、HLA-A2陽性でFOXM1を発現するpanc-1細胞株と、HLA-A2陰性でFOXM1を発現する膵臓癌細胞株であるPK-8細胞を刺激細胞として、細胞傷害性試験により検討した。キラーT細胞の細胞傷害活性は、クロミウム遊離試験による細胞傷害性試験により評価した。クロミウム遊離試験は先に報告した方法 (Monji, Mら、Clin. Cancer. Res. 10: 6047-6057, 2004)を用いて実施した。この結果、FOXM1 362-370、373-382、640-649ペプチドで誘導したキラーT細胞において、HLA-A2拘束性でFOXM1特異的な細胞傷害活性が認められた (
図1)。