(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ばね指部は、前記ナット部材のカム面に接触し、当該ナット部材が前記プランジャと係合したときに、少なくとも聴覚的または触覚的のいずれか一方の手応えを生じさせる
ことを特徴とする請求項12に記載の作動機構。
【背景技術】
【0002】
閉空間内の流体に測定された圧力を選択的に加えたり、または軽減したりすることに適した流体加圧装置は、血管内での血管形成術用バルーン手術やその他のバルーンカテーテル手術において用いられるバルーン付きカテーテルを膨張させたり、または収縮させたりするために開発されている。例えば、特許文献1は、カテーテルに装着されたバルーンを膨張させたり収縮させたりするシリンジ装置を開示する。この装置は、手動操作されるねじ式プランジャを用いて所定のバルーン圧を得たり維持したりし、かかる圧力は、圧力計を用いて測定される。本出願の譲受人による特許文献2、3及び4は、改良されたシリンジ及び圧力調整手法を開示しており、これら3つの文献全ての内容を参照としてこの明細書に取り込む。これらの文献は、プランジャの急速な前進と、ねじ式プランジャとの螺合によってバルーン付きカテーテルを最終的に加圧する際における正確な制御と、を選択することができるクイック・リリース機構を開示する。
【0003】
図1は、特許文献4に開示された装置の断面図である(
図1は、特許文献4の
図4と対応関係にある)。図示されているように、装置40によれば、円筒形のシリンジ本体またはハウジング42内に設けられた流体移動チャンバ44内において、ピストン48がプランジャ68と係合している。圧力計アセンブリ58は、螺合によってハウジング42に取り付けられており、ハウジング42の一端64は、例えばバルーン付きカテーテルに接続されたホース54を取り付け可能に構成されている。ピストン48は、ハウジング42の内壁72と密着して気密性を保つシール部材50を備える。プランジャ68は、ホース54を介して装置40内に流体を引き込む込むために後退可能であり、また、装置40からホース54内に流体を押し出すために前進(または押込み)可能である。
【0004】
プランジャ68は、また、(プランジャ68の大きな移動を防止するため)押込みや引張りができない所定の位置にロックすることができる。具体的に説明すると、装置40は、プランジャ68のスレッド部86と係合する位置に進出又は後退可能なナット部材80を備える。
図2に示すように、ナット部材80がプランジャ68のスレッド部86と係合していない場合、プランジャ68は前進または後退(押込み及び引張り)可能であり、大きく移動することができる。一方、
図3に示すように、ナット部材80がプランジャ68のスレッド部86と係合している場合には、プランジャ68は、大きな移動ができないように所定の位置にロックされ、(例えば、プランジャ68のノブ74を回すことにより)ほんのわずかに平行移動することができる。
【0005】
ナット部材80の移動を容易にするため、2つのリンケージ部材102、104が設けられており、これらはナット部材80と係合し、かつ、ピボットピン106を介して装置40に保持されている。リンケージ部材102、104は、タンデム動作可能に配置及び構成されている。
図2及び3に示すように、ナット部材80は、さらに、ナット部材80を移動させるためのレバーまたはグリップ部96を備え、これにより、ナット部80をプランジャ68のスレッド部86と係合させたり、またはその係合を解除させたりできる。ナット部材80を移動させてプランジャ68のスレッド部86と係合させたり、または係合を解除させたりするには、リンケージ部材102、104が、ハウジング42から延伸するフランジ83(
図1参照)に設けられたリブ120(
図2及び3参照)を乗り越えて通過する必要がある。リンケージ部材102、104がリブ120を通過する際に必要な力の大きさは、複数の部品の寸法及び公差(tolerance)によって異なるので、各ユニット毎に、及び、各生産ライン毎に均一な戻り止め力を維持するのは困難である。
【0006】
時々発生する別の問題は、ユーザの便宜の問題である。例えば、プランジャ68を真空引きのために完全に前進させて所定の位置にロックするような、装置40の特定の操作をする際において、動作に必要な操作の組み合わせやユーザの手の位置によっては、ナット部材80のレバー96に手をかけることが困難な場合がある。このような場合、ユーザの手は、結局はレバー96から離れすぎていて、把持の仕方を変えない限りレバー96を操作することができない。(手術の後に真空引きして挿入されたバルーンを圧力で引張り出す際によく行われる)プランジャの係合を解除して、後退させ、再度係合させる一連の操作においては、ユーザは、ねじ式のプランジャを係合させて後退位置に保持するため、ハウジング42のリブ120を一方の方向に横移動させてから別の方向へ横移動させる操作をする必要がある。リブ120を2度横移動させる操作は、完全真空状態または圧力がゼロの状態からバルーンに再度圧力を加える操作を行う際にも必要である。
【0007】
特許文献4に開示された装置40の他の改善すべき点は、その組み立てである。特許文献4の
図8から11に示されるように、装置40を組み立てるには、ナット部材80に対して第二のリンケージ部材104を逆さまに挿入してから、ナット部材80に対して第一のリンケージ部材102を位置合わせしてスライドさせる必要があり、そして第二のリンケージ部材104を180度回転させて第一のリンケージ102と位置合わせする必要がある。かかる作業は、多くの時間を必要とする。加えて、2つのリンケージ部材102、104を自由にかつ独立して回転させることが必要なので、組み立ての際に、これらのリンケージ部材102、104が常に互いに位置合わせされた状態にあるのか、あるいはピボットピン106を挿入できるようにナット部材80に対して適切な位置に配置された状態を維持しているのかどうか疑義がある。
【0008】
さらに、2つのリンケージ部材102、104及びナット部材80を、ピボットピン106及びプランジャ68のスレッド部86に対して長手方向において正確に位置合わせすることは主として困難である。特に、係合及び解除操作において、各リンケージ部材102、104が自由に旋回することによって位置合わせされた状態でなくなり、これによってナット部材80がほんのわずかにひねられたり歪んだりしてプランジャの軸に対して位置合わせされた状態でなくなってしまうことがある。かかるひねりは、プランジャ68とピボットピン106とを互いに厳密に平行に位置合わせしようとするときにも生じる。このような望ましくない歪みは、噛み合っているスレッド部に悪影響を与え、従って最も圧力がかかった状態における解除動作において、不均等な負荷が加わり、最も負荷を受けたスレッド部が破損する場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、様々な態様において実施可能であり、以下に本発明の一実施形態について図面とともに詳細に説明するが、本実施形態は本発明の原理を例示するものであり、本発明の技術的範囲を図面の内容及び以下の実施形態に限定するものではない。
【0019】
本発明の一の実施形態に係る流体移動装置200は、特許文献4のナット部材80及びリンケージ部材102、104の代わりに、単一のリンケージ202、ナット部材204及びピボットピン206を採用した以外、特許文献4と同一の構成要件から構成される。そこで、特許文献4の内容を参照としてこの明細書に取り込む。
【0020】
図4〜6に示すように、本発明の一の実施形態に係る流体移動装置200は、流体移動チャンバ210(特に
図5参照)を備えた略円筒形のシリンジ本体またはハウジング208から構成される。ハウジング208は透明であることが好ましく、この場合、流体の吸引または排出の際に流体移動チャンバ210内の流体を容易に視認することができる。ハウジング208は、プラスチックから形成され、例えば、ポリカーボネートやその他の樹脂を用いてモールド成形される。ハウジング208は、例えば
図4に示す位置212に、体積目盛りを有する。そのため、ユーザ(医師)はチャンバ210内の流体の体積を容易に判別することができる。図示するように、ハウジング208には、装置200の把持及び操作を容易にするため、ハンドル214が設けられている。
【0021】
ピストン216は、流体移動チャンバ210内(すなわち、ハウジング208内)に往復移動可能に配置される。クアッドリング(quad ring)等からなるシール部材218が、ピストン216に設けられる。
図5に示すように、シール部材218は、ピストン216の2つの壁220の間に配置されるのが好ましい。後述して詳細に説明するように、ピストン216にシール部材218を取り付ける際に、潤滑剤を用いてもよい。シール部材218は、圧力を保持し、流体移動チャンバ210内の流体がピストン216を通過して漏洩するのを防止する。ハウジング208は、流体移動チャンバ210と連通する流体管222を備える。流体管222は、また、例えばバルーン付きカテーテル(図示せず)、流体供給リザーバ(図示せず)、若しくは用途に応じた適切な構造体と接続されたホース224とも連通している。
図6に示すように、ホース224は、流体管222とバルーン付きカテーテル等との間にコネクタ226を備えていてもよい。
【0022】
図5に示すように、流体管222は、さらに、圧力計アセンブリ228とも連通している。圧力計アセンブリ228は、ねじ孔230(
図5及び6参照)との螺合のように、ハウジング208と直接的に係合していることが好ましい。このため、圧力計アセンブリ228は、ハウジング208のねじ孔230と螺合するスレッド部232を有する。スレッド部232とねじ孔230とをロックして気密性を維持するため、スレッド部232とねじ孔230との間に接着剤を用いてもよい。
図5及び6に示すように、ねじ孔230は、ハウジング208の一端234側に設けられ、圧力計アセンブリ228が取り付けられた際には、装置の先端側に配置される。圧力計アセンブリ228は、流体管222及びバルーン付きカテーテル内の圧力を示す。圧力計アセンブリ228は、血管形成または装置200の他の目的のいずれかに適切な種類のものであれば、どのようなものであってもよい。装置200は、ハウジング208に直接的に係合している圧力計アセンブリ228により、装置の先端においてユーザに対して向上した視認性を付与するように構成されている。かかる視認性は、ユーザが、流体を投与するため、装置200を使用する前に流体移動チャンバ210から全ての気泡を取り除く際に特に重要となる。あるいは、装置200は、圧力計アセンブリ228が特許文献3に開示されているクランプカバーと係合するように構成されていてもよい。この文献の内容を、参照として本明細書に取り込む。
【0023】
図5において最もよく示されるように、ピストン216は、プランジャ238の、スレッドが形成されていないパイロットノーズ端236に取り付けられる。パイロットノーズ端236は、ピストン216の中央ジャーナル中空240内で自由に回転する。ピストン216は、プランジャ238のパイロットノーズ端236に、スナップ式の干渉結合(interference coupling)により取り付けられ、これにより、プランジャ238を後退させて流体を流体移動チャンバ210内に吸引する際に、パイロットノーズ端236がピストン216の中央ジャーナル中空240から脱着することを防止する。パイロットノーズ端236は、連結したピストン216に対して自由に回転できる。そのため、プランジャ238が回転すると(すなわち、小さな移動の際において)、ピストン216はプランジャ238とともには回転せず、直線的にハウジング208内を前進または後退する。ピストン216が回転しないことにより、ハウジング208の内壁242(
図5参照)とシール部材218との間から、流体移動チャンバ210内で加圧された流体が漏洩するのを防止することができる。
図4〜6に示すように、プランジャ238は、後述して詳細に説明するように、プランジャ238の移動を容易にするために一体的なノブ244を備えることが好ましい。
【0024】
装置200は、作動機構246を備えており、この作動機構246は、通常、プランジャ238と係合するように付勢されているが、係合を解除するように作動させることもできる。作動機構246(
図7参照)がプランジャ238と係合するように付勢されている場合は、プランジャ238は大きな移動をすることができず、小さな移動のみすることができる。大きな移動ができない場合は、(例えば、多量の流体を瞬時に移動させるために)プランジャ238を押込んだり、ハウジング208から引張り出したりすることができない。しかし、ノブ244を回転させることにより、(例えば、流体をよりゆっくりと、正確に移動させるために)プランジャ238を平行移動させることはできる。一方、作動機構246が、プランジャ238との係合を解除された場合には、プランジャ238は大きく移動することができる。大きな移動が可能な場合は、プランジャ238を押込んだり、ハウジング208から引張り出したりすることができる。
【0025】
例えば、
図7に示すように、作動機構246は、単一リンケージ202と、ナット部材204と、ピボットピン206とから構成される。ピボットピン206は、ナット部材204の孔248と、リンケージ202の通路250とを貫通して延伸する。このため、リンケージ202をナット部材204に効率的に保持することができ、これによって一の作動機構アセンブリが形成される。
図18に示すように、ピボットピン206は、径が小さい中間部252を有することが好ましく、この中間部252には、単一リンケージ202の中央リブ254が挿入され、このリブ254により、単一リンケージ202に対してピボットピン206が所定の位置にロックされる。特に、ピボットピン206は、十字交差型の形状を有し、2つの中央円板部256の間に、下部十字部材255が配置されている。これらの下部十字部材255は、ピボットピン206に溝258を形成し、単一リンケージ202のリブ254がこのピボットピン206の溝258に収まり、これによってピボットピン206が所定の位置に保持される。
【0026】
図4及び5に示すように、作動機構アセンブリ全体がハウジング208内に配置され、主にハウジング208の後端260の近傍に配置される。特に、
図4〜6に示すように、作動機構246は、ハウジング208内の開口262内に配置されることが好ましく、この開口262は一組の離間したフランジ264の間に配置され、作動機構246は、好ましくは金属から形成されたピン266に対して装置200に取り付けられる。
【0027】
図5〜7に示すように、ナット部材204は、下部ベース部270に形成されたスレッド268を有し、縦方向に伸びて分岐した部分を備え、この部分により、それぞれが離間した一組の長アームまたはマウント部272が形成される(特に
図7参照)。マウント部272は、キャリッジ(carriage)構造を形成し、スレッド268と一体形成されている。マウント部272は、それぞれ、ピボットピン206を挿入する孔248に加え、プランジャ238を挿通する開口274を有する(特に
図5、8及び9参照)。
【0028】
図8は、ナット部材204がプランジャ238と係合するように付勢された状態を示す。具体的には、単一リンケージ202のばね指部276がナット部材204の外面278と係合し、この接触と単一リンケージ202のばね指部276の剛性とによって、ナット部材204を
図8に示す位置に保持しようとする復元スプリング力が生じる。この状態で、ナット部材204のスレッド268が、プランジャ238のスレッド279と係合する。この位置では、プランジャ238は大きく移動することができず、押込んだり引張り出したりすることができない。ただし、プランジャ238は、小さな動作、すなわち、ノブ244を回転させることのみにより、平行移動することができる。これにより、プランジャ238のスレッド279が、ナット部材204のスレッド268と噛み合いながら徐々に前進する。上述したとおり、プランジャ238のパイロットノーズ端236は、ピストン216の中央ジャーナル中空240内で自由に回転するように構成されている。そのため、ナット部材204のスレッド268がプランジャ238のスレッド279と係合した状態でプランジャ238を回転させても、ピストン216がハウジング208の流体移動チャンバ210内で回転することはないが、ハウジング208内をわずかに摺動する。
【0029】
単一リンケージ202に一体的なスプリング機能(すなわち、ばね指部276)を持たせるために、単一リンケージ202は、塑性変形及び破損することなく歪むことが可能な、高い弾性を備えた優れた圧縮強度及び剛性を有する材料から形成される。例えば、デルリンまたはセルコンとして知られているアセタール樹脂がそれらの特性を有しているが、これよりも少し特性が低いナイロンやポリプロピレン素材であってもよい。アセタールは、その特有の潤滑性と、硬度と、応力、亀裂及び磨耗に対する耐性とにより、塑性変形や破損することのない高い歪み耐性を備えているので、ポリマースプリングとしての用途に好適である。上述した用途においては、当該部材は、アセタールと相性がよいとされるナイロンやその他の材料から形成された部材に対してピボット動作やスライド動作を許容するものでなければならない。
【0030】
装置200において、プランジャ238の係合を維持するのに充分な復元スプリング力により、初期設定位置、特許文献3及び4に開示されているリブ(
図2及び3で参照番号120が付与されているもの)、及びそれらの課題を解決するための追加的に必要なユーザによる労力が不要となる。
図8に示すように、ナット部材204がプランジャ238と係合するように付勢されている場合は、ナット部材204は、「オーバーセンター」ロック位置にあり、これにより、ピストン216による、流体移動チャンバ210内の流体圧によってナット部材204がほんのわずかに動いてしまうのを防止し、ゆるんだり係合が解除されたりすることなく、プランジャ238とナット部材204とが確実に係合する。
【0031】
ナット部材204、特に、そのスレッド268は、プランジャ238との係合を選択的に解除することができ、ホース224と接続された、あるいは、コネクタ226が挿入された流体供給リザーバ(図示せず)から、例えば食塩水を流体移動チャンバ210内に吸引するためにプランジャ238及びピストン216が手動で急速に移動可能となる。ナット部材204とプランジャ238との係合を解除することにより、流体を、ホース224を介して排出して、カテーテルを用いて予め血管内や心臓弁に配置されたバルーン(図示せず)を膨張させるため、プランジャ238及びピストン216を急速に前進させることも可能となる。プランジャ238及びピストン216を急速に後退させることにより、バルーンを急速に収縮させるために流体を流体移動チャンバ210内に即座に吸引することも可能となる。カテーテルに接続する前に、プランジャ238を操作して、流体移動チャンバ210内の流体から全ての気泡が除去されたことを確認することもできる。
【0032】
ナット部材204のスレッド268とプランジャ238のスレッド部279との係合の選択的な解除を容易にするため、
図9に示すように、ナット部材204はレバー280(
図4、8及び9参照)を備え、このレバー280を下方向(
図9中、矢印282の方向)に押すことにより、ナット部材204の係合が解除される。レバー280を下方向に押すことにより、
図9に示すように、作動機構アセンブリが横移動し、単一リンケージ202のばね指部276が、ナット部材204の外面278に乗り上げて移動し、外方向へと歪む。ナット部材204の移動は、
図8と
図9との位置の間での平行移動に沿って案内されると好ましい。ナット部材204の、
図8と
図9との位置の間での移動動作は、実際上は、曲線的な動作であり、完全に直線の動作ではない。ナット部材204のレバー280を下方向に押すと、単一リンケージ202のばね指部276が屈曲し、これにより、作動機構アセンブリを
図8に示す位置に戻そうとする力が生じる。そのため、レバー280を放すと、作動機構アセンブリは
図8に示す位置に戻る。
図8は、ナット部材204の、通常の、非作動状態位置を示し、この位置ではナット部材204のスレッド268はプランジャ238のスレッド部279と係合するように付勢されており、これによってプランジャ238が大きく移動しないようにロックされる。しかしながら、ノブ244を回転することにより、プランジャ238は小さく移動することが可能であり、これにより、プランジャ238のスレッドがナット部材204のスレッド268と噛み合いながら徐々に前進する。
【0033】
一方、
図9はユーザがナット部材204のレバー280を下方向に押した場合の状態を示す。図示するように、レバー280を下方向に押すことにより、ナット部材204が横移動し、ナット部材204のスレッド268とプランジャ238のスレッド部279との係合が解除される。このような位置においては、プランジャ238をハウジング208内へ押込むことにより、あるいは、ハウジング208からプランジャ238を引張り出すことにより、プランジャ238は流体移動チャンバ210内を軸方向に平行移動することができる。換言すると、ナット部材204がプランジャ238と係合している場合は、プランジャ238を押込んだり引張り出したりすることができない。しかしながら、ナット部材204のレバー280を下方向に押すことにより、ナット部材204とプランジャ238との係合が解除され、これによってプランジャ238を押込んだり引張り出したりすることが可能となる。
【0034】
任意ではあるが、ナット部材204は、
図6〜9に示すように、カム構造284を備えると好ましい。ナット部材204のレバー280が下方向に押された場合、
図9に示すように、単一リンケージ202のばね指部276がカム284の上に乗り上げるようにして移動する。カム284は、閉じ力(closing force)(作動機構246全体を
図8に示す位置に戻そうとする力)を増大させ、カム構造がない場合に特定が困難となる静止ポジション(
図8参照。ナット部材204のレバー280は押されていない)にナット部材204が位置していることを確実にする明確な位置を提供する。カム構造284により、ユーザに対してナット部材204がプランジャ238と係合したか否かについて聴覚的及び触覚的の両方の手応え(feedback)を与えることができる。より明確な手応えを与えるためには、カム構造284は、ばね指部276が乗り上げることができ、かつ元の位置へ戻ることを許容する鋭利な段差を備えているとよい。これにより、ばね指部276が、カム284上でスナップし、スレッド268がプランジャ238と係合したかまたはその係合が解除されたかについてより明確な聴覚的及び触覚的な手応えをユーザに与えることができる。
【0035】
図5、6、8及び9に示すように、装置200は、特許文献4と同様に、ハウジング208内に配置されるキャリア部材290を備えていることが好ましい。
図6及び10〜17に示すように、キャリア部材290は、主に中空で、円筒形状を有する。キャリア部材290は、ハウジング208と同様に、プラスチックから形成される。キャリア部材290とハウジング208とは、同一の樹脂から形成されていてもよい。
【0036】
図5、6、10、11、15及び17に示すように、キャリア部材290は、離間した壁298、300を備え、この壁298、300は、作動機構246を装置200に対して固定するピン266を保持する開口296と同様の、プランジャ238が貫通する開口294を有する。より具体的には、キャリア部材290は、ピン266を支持し、ピン266は単一リンケージ202の穴275を貫通し、これにより、ピン266が作動機構246を装置200に保持する。
【0037】
図6に示すように、壁298は、キャリア部材290の前面(キャリア部材290の前部分を示す
図10も同様に参照)を形成し、壁300は、キャリア部材290の後面(キャリア部材290の後部分を示す
図11も同様に参照)を形成する。部分的な壁302がキャリア部材290の前壁298と後壁300との間で延伸する。切り欠き部304が壁298と壁300との間に形成されており、ナット部材204はこの切り欠き部304内に配置される(
図5参照)。ピン266は、キャリア部材290の開口296を貫通し、キャリア部材290は、ピン266が軸方向に移動しないようにしてピン266を保持する。
図6に示すように、ピン266は、刻み付き端部306を備えていてもよく、この刻み付き端部306により、ピン266が一度キャリア部材290に挿入されると軸方向に平行移動することが防止される。
【0038】
図6及び10〜15に示すように、キャリア部材290の外面310、主にキャリア部材290の後端近傍に、突面308が形成されている。ハウジング208には、これに対応するように、後端206の内面にフランジ312が形成されており、キャリア部材290に設けられている突面308と干渉(interruption)する。ハウジング208内のフランジ312と、キャリア部材290上の突面308との干渉とにより、ハウジング208の端部260の穴314にキャリア部材290を挿入して回転させて、キャリア部材290をハウジング208内に固定することが可能であると好ましい。具体的には、キャリア部材290及びハウジング208は、キャリア部材290をハウジング208の後部を介して軸方向に穴314内に4分の1回転のバヨネット式配置によって差し込み可能に構成されており、そしてさらに4分の1回転させることにより、キャリア部材290を所定の位置にロックすることができる。
【0039】
キャリア部材290は、前壁298と後壁300との間を延伸する壁302の一部として形成されるラッチフィンガー316を備える。ラッチフィンガー316は、好ましくは、ハウジング208の内壁に設けられた、内側に延伸するリブ318と係合する(
図6参照)。具体的には、ラッチフィンガー316は、キャリア部材290をハウジング208の穴314内の所定の位置にロックするように、内側に延伸するリブ318を乗り越えて、該リブ318と係合する。好ましくは、ラッチフィンガー316とリブ318とは、ラッチフィンガー316がリブ318を乗り越えて、該リブ318と係合した際に音を発生させるように構成されている。この音は、装置200を組み立てる者に対して、キャリア部材290が穴314内に完全に挿入されたことを知らせるのに充分な大きさを有する。
【0040】
好ましくは、リブ318と正反対の位置(すなわち、ハウジング208の内壁に沿ってリブ318から180度の位置)において、ハウジング208の内壁にさらに別の内側に延伸するリブ320が形成されるとよい。キャリア部材290の外面310には、キャリア部材290の突起308から前端側へと延伸する突面322が形成されている。キャリア部材290を穴314内に挿入すると、この突面308がハウジング208のリブ318、320(
図5及び8〜10参照)の端部と当接し、キャリア部材290が穴314内において軸方向に挿入され過ぎないようにする。換言すると、突面308と、リブ318、320との係合により、挿入の際に、キャリア部材290の穴314内における軸方向の移動が制限される。突面308がリブ318、320と一度当接すると、キャリア部材290は、完全に挿入されるようになるために回転させられる。好ましくは、キャリア部材290のラッチフィンガー316がハウジング208のフランジ318を乗り越えて、該リブ318と係合するのみならず、キャリア部材290の突面308もまたハウジング208の内面にあるフランジ312の後部において係合するとよい。キャリア部材290が穴314内に完全に挿入されると、穴314から軸方向に取り出すことができず、また、ハウジング208に対していずれかの回転方向に回転させることもできなくなる。キャリア部材290は、ハウジング208に適切に挿入されると、キャリア部材290の切り欠き部304がハウジング208の開口262と位置合わせされる。
【0041】
ナット部材204と、単一リンケージ202と、ピン206とは(すなわち、作動機構246)、キャリア部材290の切り欠き部304とハウジング208の開口262との中に収容され、
図4、8、及び9に示すように、ナット部材204のレバー280が、アクセスが容易となるように、ハウジング208の開口262の外へと延伸する。キャリア部材290は、ハウジング208に対して堅固に係合され、作動機構246を固定するピン266が、キャリア部材290によって保持される。
【0042】
キャリア部材290は、プランジャ238が流体移動チャンバ210内を平行移動する際に生じる力に耐えうるように構成されている。装置200の組み立ての説明とともに後述して詳細に説明するように、キャリア部材290によって装置200をハウジング208の後部から組み立てることができるようになる(すなわち、後部に取付けられる)。また、
図5に示すように、キャリア部材290により、プランジャ238の中心線からハウジング208の内壁242までの距離を、プランジャ238の中心線からピン266までの距離よりも大きくすることができるようになる。
【0043】
さらに、キャリア部材290を含む装置200のデザインによれば、異なるサイズの装置に対応できるように多くのパーツが汎用性を有する。特に、ナット部材204とプランジャ238とは、異なるサイズの装置、特に異なるサイズの流体移動チャンバを有する装置に使用可能である。図示するキャリア部材290は、図示する流体移動チャンバと同じくらいの大きさか、図示するものよりも小さいチャンバに使用できるように設計されている。図示するものよりも大きなまたは小さな装置を記載することもできるが、それらは図示の問題上縮尺が正確ではない。
【0044】
キャリア部材290を備えることにより、装置200は様々な利点を有するが、特許文献3のように、装置200はキャリア部材290を備えていなくてもよく、この文献の内容を、参照として本明細書に取り込む。
【0045】
装置200は、ユーザが、使用中に装置200の握り方を変えなくてもよいように構成されている。ナット部材204のレバー280を押すだけで、プランジャ238の係合が解除され、リブ(
図2及び3中の参照番号120)を、プランジャが係合している位置と係合が解除される位置との間で前後に移動させる必要がない。さらに、レバー280を解放することにより、プランジャ238が即座に係合状態に戻ることができる。単一リンケージ202のばね指部276による復元スプリング力が、装置200を、プランジャが係合している初期状態(
図8に示す)に維持するのに十分な大きさを有していることにより、ハウジング208に戻り止めまたはリブを設けたりすること、及び、ユーザのさらなる労力が不要となる。
【0046】
装置200の組み立て方について、説明する。ここで、特許文献4と同様に、装置がキャリア部材290を備える場合について説明する。装置200を組み立てる際に、ホース224がハウジング208に予め取り付けられていてもよい。次に、圧力計アセンブリ228を、ハウジング208に螺合させる。その後、ピストン216にシール部材218を取り付ける。かかる取り付けを容易にするため、
図6中で塗布器332を示しているように、潤滑剤を用いてもよい。そして、ピストン216を、ハウジング208の穴314に(
図5中、右から左へ)挿入する。換言すると、ピストン216を、装置200の後部から挿入する。そして、キャリア部材290を、ハウジング208の後部から、ハウジング208に差し込む。上述したように、かかる差し込みは、4分の1回転のバヨネット式差し込みであり、キャリア部材290を、軸方向に穴314に挿入し、4分の1回転し、ハウジング208に対してキャリア部材290を所定の位置にロックする。上述したように、キャリア部材290が完全にかつ適切に差し込まれた場合に、キャリア部材290のロッキングフィンガー316がスナップ音やクリック音を立てると好ましい。キャリア部材290がハウジング208に適切に差し込まれると、キャリア部材290の切り欠き部304がハウジング208の開口262と位置合わせされる。続いて、作動機構246を開口262に挿入する。ここで、作動機構246を挿入する前に、作動機構246が予め組み立てられている必要がある。
【0047】
作動機構246を組み立てるには、単一リンケージ202を、ナット部材204にクリップ留め(clip on)し、ピボットピン206を用いて単一リンケージ202をナット部材204に固定する。ピボットピン206を用いて単一リンケージ202をナット部材204に固定する前においても、単一リンケージ202は、その一体的なばね指部276によるスプリング力により、ナット部材204に対して所定の位置に留まりやすい。単一リンケージ202をナット部材204に固定するため、ピボットピン206を、ナット部材204の一の孔248を通過するように押込み、単一リンケージ202の通路250を通過させ、ナット部材204の他の孔248に挿入し、これによって作動機構アセンブリが効率よく完成する。
図18に示すように、ピボットピン206が所定の位置に配置されていると、単一リンケージ202の中央リブ254がピボットピン206の径が小さい中間部252と係合し、これにより、単一リンケージ202に対してピボットピン206が所定の位置にロックされる。作動機構246が一度組み立てられると、作動機構246と、作動機構246を固定するためのピン266とを開口262に挿入することができるようになる。
【0048】
装置200に作動機構246を取り付けた後、作動機構246のレバー280を下方向に押し、プランジャ238をハウジング2089の後端260から軸方向に挿入してピストン216と係合させる。具体的には、プランジャ238のノーズ端236を、ナット部材204の開口274を介して穴314に挿入し、流体移動チャンバ210内でピストン216とスナップフィット(snap−fit)により係合させる。その後、作動機構246のレバー280を解放し、これによって装置200が操作可能になる。
【0049】
上述したように、装置200が、特許文献4と同様に、後部に取り付けられるキャリア部材290を備えている場合は、装置は後部から組み立てられる。具体的には、ピストン216とキャリア部材290とは、ハウジング208の後部から挿入される。装置200は後部から組み立てられるので、ハウジング208を、単一の、一体的な部品とすることができる。ハウジング208の前部分は、ハウジング208の一部としてモールド成形することができ、ハウジング208に圧力計アセンブリ228を取り付けるのに追加的なフィッティングやクランプ等は不要である。圧力計アセンブリ228は、ハウジング208と直接的に係合する。そのため、かかるデザインによれば、特許文献3に開示されている装置と比較して、部品点数が少なく、必要とする作業も少ない。また、装置200の前部は、ハウジング208と一体に形成されているので、装置200の前部の気密性について問題が生じない。さらに、装置200の前部における視認性が向上しており、この点、ユーザにとって、流体移動チャンバ210内から全ての気泡を除去して使用の準備をする際に特に有用である。ハウジング208がモールド成形により単一部品として形成されていることにより、一のモールド成形工程で作成することができ、ひいては、部品及び金型のコストを低減させることができ、また、無駄を防止し、さらには、生産及び組み立て工程を合理化することができる。
【0050】
さらに、キャリア部材290を含む装置200のデザインによれば、多くの部品が、異なるサイズの装置に適用できるといった、汎用性を有することとなる。例えば、図示するキャリア部材290は、図示するよりも大きい、または、図示するよりも小さい流体移動チャンバ210sに使用できるように設計されている。
【0051】
キャリア部材290を用いると様々な利点があるが、キャリア部材290は、本発明の必須の構成要件ではない。上述したように、本発明は、キャリア部材を備えていない、例えば特許文献3の装置にも適用することができる。
【0052】
本発明の作動機構246を採用することにより、特許文献3及び4に開示されているような一組のリンケージを使用する必要がなくなり、その代わりに単一のリンケージ202を使用し、その一体的なスプリングとして機能する形状による自己固定力により、ナット部材204に対して所定の位置に正確に取り付けることができるように設計されている。従って、装置200に作動機構246を固定するピン266とともに、ピボットピン206を挿入することにより、所定の位置に完璧に保持される。特許文献3及び4のデザインでは、組み立てには、第二のリンケージを上下動してその受け穴に差し込んだ後、第一のリンケージを位置合わせして摺動させてその受け穴に差し込み、次に略180度第二のリンケージを回転させて第一のリンケージと位置合わせする必要がある。そのため、多くの作業と組み立て時間が必要である。一方、本発明に係る作動機構246の組み立てでは、単一リンケージ202をナット部材204にクリップ留めによって取り付け、その際、単一リンケージ202は一体的なスプリング部276によって保持され、そして、ナット部材204と単一リンケージ202を貫通するようにピボットピン206を挿入し、作動機構アセンブリ全体を保持するだけである。上述したように、ピボットピン206は、好ましくは、径が小さくなった中間部252を備えるように形成され、この中間部252は、単一リンケージ202に設けられた中央リブ254を受け、このリブ254により、ピン206が所定の位置にロックされる。この、安定した、かつ互いにロックされたサブアセンブリは、膨張装置のこの後の組み立てを不要にする。これは、装置200に作動機構246を取り付けるためにピン266を挿入する前に、ゆるく結合された部材をさらに位置合わせする必要がないからである。また、単一リンケージ202は、自動的に、ピン206、266を受ける位置に位置決めされる。一方、特許文献3及び4の装置では、その受け穴において一組のリンケージをそれぞれ自由に回転させる必要があるので、それらのリンケージが、常に互いに位置合わせされた状態にあるか、あるいは、膨張装置をその後に組み立てる際に、それらのリンケージがナット部材においてピンを挿入できる位置に適切に配置されているかどうか疑義がある。さらに、本発明の装置の製造者は、戻り止め機構(すなわち、リブ)が不要なことによる利点に気がつく。これは、戻り止め干渉の程度(detent inteference levels)が、組み合わされたときに独自の部品となる3つの部品によって異なっている、コントロールが困難な耐性の生成結果なので、一定の戻り止め抵抗を得ることが困難だからである。
【0053】
一組のリンケージの代わりに、単一リンケージ202を所定の位置に配置することによる更なる優れた利点は、ナット部材204を、ピボットピン206と、プランジャ238のスレッド279との両方に対して長手方向において正確に位置合わせできることである。長手方向における正確な位置合わせは、従来の2つの異なるリンケージでは困難であり、これは、係合または解除操作の際に、各リンケージが自由に旋回してほんの少し位置がずれ、その結果、ナット部材がほんのわずかにねじられたり、あるいは、歪んだりして、プランジャの軸に対して位置がずれることとなるからである。かかるねじれは、プランジャとピンとが、互いに厳密に平行に位置合わせされている際にも生じ得る。このような好ましくない歪みにより、係合を解除して最も大きな圧力を加えている状態において、噛み合っているスレッド部分が、負荷がかかっている部分に損傷を生じるおそれがあるといった好ましくない効果が生じる。しかしながら、単一リンケージ202は、2つの独立したリンケージと比較してねじれや歪みのおそれが少なく、従ってより堅固な機構である。
【0054】
本発明による作動機構246のさらなる利点は、そのデザインの自己充足性、独立性にあり、ナット部材204を常時プランジャ238と係合させるために必要な押込み(thrust)を得るために、さらなる追加的な外部機構が不要な点である。係る係合は、ピン206に向かって常時ナット部材204を引っ張っている単一リンケージのスプリング部276を押して応力が加わらない状態にすることで得られる。この自己充足性のある動作により、装置全体の設計を簡略化することができ、単一リンケージ202が、従来技術の一組のリンケージ機構とともに組み立てラインにおいて共存でき、従来のリンケージ機構が製造され続けている間に新たなリンケージ機構の段階的な導入が可能となる。医療用装置は、非常に制限的であり、小さな変更ですら適用される前に顧客毎に適切に評価されて実証される必要がある。全ての顧客毎による大規模な実証作業及びすでに発行されたマニュアルの変更が必要なため、新たな機構への大規模な変更は困難であり、顧客が一つ一つ切り換えてゆくのと同時に、両方の機構を製造してゆく必要がある期間がある。この機構を取り付ける装置の構成を大掛かりに変更する必要がないので、全体的な工具費用を低減することができ、工程の変更が不要で、装置のハウジング208の構造に不要な製造工程及び部品の再バリデーションする必要がなく、これによってあらたなデザインを簡潔にかつ迅速に市場に投入することができる。
【0055】
以上、本発明の一の実施形態について図示して説明したが、本発明は、特許請求の範囲から逸脱しない範囲で様々な変更が可能であることは、当業者にとっては明らかである。
【0056】
本出願は、2008年11月13日に出願された米国仮特許出願第61/114192を基礎として優先権を主張し、その内容を参照として本明細書に取り込む。