特許第5909781号(P5909781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909781
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】インクジェット用インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20160414BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20160414BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   C09D11/38
   B41J2/01 501
   B41M5/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-185511(P2012-185511)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-43493(P2014-43493A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 征寿
(72)【発明者】
【氏名】杉原 真広
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−195763(JP,A)
【文献】 特開2011−195762(JP,A)
【文献】 特開2011−152747(JP,A)
【文献】 特開2011−195766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/38
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも色材と、有機溶剤と、水と、一般式1で表される化合物とを含むことを特徴とするインクジェット用インキ組成物。
[一般式1]
【化1】
(式中aは1〜500の整数、bは0〜10の整数を示す。R1はアルキル基、またはアリール基を示す。R2は下記(A), (B), (C), (D)の内の何れかの置換基で示され、R2の内、少なくとも一つは(A)を含む。
(A)
【化2】

(cは1〜20の整数、dは0〜50の整数、eは0〜50の整数を示す。R3は水素原子またはアルキル基を示す。R4は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示す。)
(B)
【化3】

(fは2〜20の整数を示す。R5は水素原子、アルキル基、アシル基、ジメチルプロピル骨格を有するエーテル基の何れかを示す。)
(C)
【化4】

(gは2〜6の整数、hは0〜20の整数、iは1〜50の整数、jは0〜10の整数、kは0〜10の整数を示す。R6は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示す。)
(D) アルキル基、またはアリール基)
【請求項2】
一般式1で表される化合物の含有量が、インキ組成物中0.1重量%以上3重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット用インキ組成物。
【請求項3】
更に一般式1で表される化合物以外のポリオルガノシロキサン系化合物を含むことを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット用インキ組成物。
【請求項4】
一般式1で表される化合物以外のポリオルガノシロキサン系化合物が一般式2で表される化合物または/かつ一般式3で表される化合物であることを特徴とする請求項3記載のインクジェット用インキ組成物。
[一般式2]
【化5】

(式中lは10〜80の整数を示す。R7は下記(E)の置換基で示される。
(E)
【化6】

(mは1〜6の整数、nは0〜50の整数、oは0〜50の整数であり、n+oは1以上の整数で示される。R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、または(メタ)アクリル基である。))
[一般式3]
【化7】

(pおよびqは1以上の整数であり、p+qは3〜50の整数で示される。R8は炭素数1〜6のアルキル基で示される。)
【請求項5】
有機溶剤として少なくとも炭素数3〜8のアルカンジオールを含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のインクジェット用インキ組成物。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性の高い難吸収性の基材への印刷適性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性に優れるインクジェット用インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置の騒音が小さく、操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、オフィスや家庭での出力機として広く用いられている。
【0003】
一方、産業用途においても、インクジェット技術の向上によりデジタル印刷の出力機としての利用が期待され、溶剤インキやUVインキによる非吸収性の基材(PVC, PETなどのプラスチック基材)に対しても印刷が可能な印刷機が実際に市販されてきた。しかし、近年、環境面への対応といった点から水性インキの需要が高まっている。
【0004】
インクジェット用の水性インキとしては特許文献1, 2, 3のように印刷対象を普通紙や写真光沢紙のような専用紙としたインキの開発が古くからなされている。しかし、産業用途、特に屋外広告などに使用されるような非吸収性の基材に対しては、これらのインキを使用しても十分な画質、耐性をもった印刷物を得ることはできず、実用上使用することができなかった。これは非吸収性の基材では水性インキは濡れ広がり難いことと、基材へのインキの浸透が起こりづらくドット同士が滲んでしまうことが原因である。
【0005】
基材への濡れ性を制御するためには界面活性剤を使用することが一般的であり、特にポリオルガノシロキサン系の界面活性剤が広く用いられている。特許文献4, 5には特定の構造のポリオルガノシロキサン系界面活性剤を使用することで発色性や画像のムラを改善できることが記載されている。しかし、これらはインクジェット専用紙や普通紙に対しては優れた印刷品質が得られているが、疎水性の高い難吸収性基材に対しては十分な濡れ性が得られず、良質な印刷物を得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4764562号公報
【特許文献2】特許第4595281号公報
【特許文献3】特開2008-247941号公報
【特許文献4】特開2006-206688号公報
【特許文献5】特開2006-282787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性の高い難吸収性の基材への印刷適性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性に優れるインクジェット用インキ組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、少なくとも色材、有機溶剤、水と一般式1で表される化合物とを含むことを特徴とするインクジェット用インキ組成物に関する。
[一般式1]
【化1】

(式中aは1〜500の整数、bは0〜10の整数を示す。R1はアルキル基、またはアリール基を示す。R2は下記(A), (B), (C), (D)の内の何れかの置換基で示され、R2の内、少なくとも一つは(A)を含む。
(A)
【化2】
(cは1〜20の整数、dは0〜50の整数、eは0〜50の整数を示す。R3は水素原子またはアルキル基を示す。R4は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示す。)
(B)
【化3】
(fは2〜20の整数を示す。R5は水素原子、アルキル基、アシル基、ジメチルプロピル骨格を有するエーテル基の何れかを示す。)
(C)
【化4】
(gは2〜6の整数、hは0〜20の整数、iは1〜50の整数、jは0〜10の整数、kは0〜10の整数を示す。R6は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示す。)
(D) アルキル基、またはアリール基)
【0009】
さらに本発明は、一般式1で表される化合物の含有量が0.1重量%以上3重量%以下であることを特徴とする前記インクジェット用インキ組成物に関する。
【0010】
さらに本発明は、更に一般式1で表される化合物以外のポリオルガノシロキサン系化合物を含むことを特徴とする前記インクジェット用インキ組成物に関する。
【0011】
さらに本発明は、ポリオルガノシロキサン系化合物が一般式2で表される化合物または/かつ一般式3で表される化合物であることを特徴とする前記インクジェット用インキ組成物に関する。
[一般式2]
【化5】
(式中lは10〜80の整数を示す。R7は下記(E)の置換基で示される。
(E)
【化6】
(mは1〜6の整数、nは0〜50の整数、oは0〜50の整数であり、n+oは1以上の整数で示される。R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、または(メタ)アクリル基である。))
[一般式3]
【化7】
(pおよびqは1以上の整数であり、p+qは3〜50の整数で示される。R8は炭素数1〜6のアルキル基で示される。)
【0012】
さらに本発明は、有機溶剤として少なくとも炭素数3〜8のアルカンジオールを含むことを特徴とする前記インクジェット用インキ組成物に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性の高い難吸収性基材への印字適性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性に優れるインクジェット用インキ組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明について説明する。
【0015】
本発明のインクジェット用インキ組成物は色材、有機溶剤、水と一般式1で表される化合物とを含むことを特徴としている。まず、本発明の特徴である一般式1で表される化合物について説明を行う。
【0016】
一般に疎水性の高い基材に対して水性インキで印刷を行うと、基材への濡れが悪く、良質な画像が得られないことが多い。これは水性インキの表面張力が高いため、疎水性の高い基材には濡れず、インキが弾かれてしまうことが原因である。このようにインキが基材に弾かれることでベタ部に白抜けやムラが生じたり、色間で混色し滲みが発生したりするため、得られる画像品質が低下することに繋がる。従って、インキの濡れ性を上げることは画像品質を向上させるために必須である。
【0017】
また、難吸収性の基材に対しては、インキが基材上で乾燥することが重要となる。吸収性のある基材ではインキの液媒体は基材内へ浸透することにより、表面に色材、樹脂等の成分が定着する。しかし、難吸収性の基材では基材内への浸透効果が少ないため、基材表面にインキの液媒体が残留する。液媒体が残留した状態で他の色と接触するとインキが混じり、混色して画像品質が低下してしまう。浸透がない状態でインキの乾燥性を上げるには基材に対するインキの濡れ性を上げることが効果的である。インキの濡れ性を上げると、基材に対してインキが着弾した後、インキ滴が濡れ広がり、表面積が増す結果となる。液体の揮発は液滴の表面積に比例して速くなるため、インキの基材に対しての濡れ性を上げることが、乾燥性を上げることに繋がる。
【0018】
このように疎水性基材、難吸収性基材の何れに対しても、インキの濡れ性を上げることが良質な画像を得るための重要な要因となる。
【0019】
印刷基材上におけるインキの濡れ性は、インキの表面張力と印刷基材の表面張力の関係に依存する。インキの表面張力が印刷基材の表面張力よりも高い場合には、基材に対して濡れず、インキが弾かれてしまうことがある。よって、印刷基材上で十分な広がりを確保するためには、インキの表面張力が印刷基材の表面張力よりも十分に低いことが必要である。また、疎水性の高い基材は表面張力が低く、基材表面を濡らすことが容易でないため、インキの表面張力を十分低く保つことが需要となる。
【0020】
インキの表面張力を調整するには、界面活性剤を用いることが一般的であり、中でもシリコン系界面活性剤は、インキの表面張力を十分に下げる目的で使用されることが多く、表面張力を調整するために有効な界面活性剤である。
【0021】
シリコン系界面活性剤を使用すると、インキの表面張力はインキ表面の形成後から時々刻々と変化することが知られている。このような表面張力の変化はインキに添加した界面活性剤がインキ表面に配向することが原因で生じる。すなわち、インキ表面が形成された直後は界面活性剤がインキ中に均一に分布しているため高い表面張力を示すが、次第にインキ表面に界面活性剤が配向するに従い、表面張力が低下していくということである。
【0022】
インクジェット印刷ではインクジェットヘッドから吐出されたインキが基材へ着弾、濡れ広がり、定着といった順で印刷がなされる。インキの表面張力は着弾直後が最も高く、その後表面張力が低下するに従い、基材に濡れ広がる。インクジェット印刷は数kHz〜数十kHzといった非常に速い周波数で印刷されるため、インキ滴はこれに応じた速度で濡れ広がる必要がある。よって、着弾直後の表面張力を速やかに低くし、濡れ広がらせるように界面活性剤でコントロールを行う。
【0023】
シリコン系界面活性剤はポリシロキサン骨格を有する界面活性剤であり、その特性はポリシロキサンの構造に由来する。一般的にシロキサンユニット(−Si−O−)で形成される主鎖の長さにより、表面張力の低下能を制御することが知られている。シロキサン主鎖が短くなる程、インク中の相溶性が向上し、表面張力を低下させることが可能となる。また、シロキサン主鎖が長くなり、分子量が増えていくと、インク中の相溶性が悪くなり、それほど表面張力を下げなくなる。
【0024】
また、用途に合わせてシリコンの相溶性を制御する際に、シロキサンユニット(−Si−O−)に対し、側鎖または末端に相当する部位を有機変性させることが可能である。これらを有機変性することにより、溶媒やインクの使用原料に親和性のあるシリコン系化合物を得ることができる。有機変性にはポリエーテル、ポリエステル、ベンゼン環を有するアラルキルなどがある。またエポキシ、アクリル基などの反応性基を導入することも可能である。
【0025】
本発明者らはこの有機変性の部位を2本のポリエーテル鎖に分岐した構造を有するものにすることで、基材に対する濡れ性が劇的に向上することを見出した。原理は不明であるが、シリコン系界面活性剤の側鎖のポリエーテル鎖を分岐状にすることで、シリコン系界面活性剤のインキ表面への配向速度が上がり、濡れ性が向上することが確認されている。別々のケイ素原子に直鎖状のポリエーテル鎖を2本導入しても同様の効果は得られず、分岐状のポリエーテル鎖を導入することが濡れ性向上に必須である。具体的に本発明では一般式1で表される構造のシリコン系界面活性剤を使用する。
【0026】
[一般式1]
【化1】

式中aは1〜500の整数、好ましくは1〜200の整数、更に好ましくは1〜50の整数、bは0〜10の整数、好ましくは0〜5の整数、更に好ましくは0。R1はアルキル基、またはアリール基を示し、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、更に好ましくはR1の内、80%以上はメチル基であり、最も好ましくはR1の全てがメチル基である。R2は下記(A), (B), (C), (D)の内の何れかの置換基で示され、R2の内、少なくとも一つは(A)を含む。
【0027】
(A)
【化2】

cは1〜20の整数であり、好ましくは1または2であり、更に好ましくは1である。dは0〜50の整数であり、好ましくは0〜10の整数である。eは0〜50の整数であり、好ましくは0〜10の整数である。R3は水素原子またはアルキル基を示し、好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、更に好ましくは水素原子である。R4は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示し、好ましくは水素原子である。
【0028】
(B)
【化3】

fは2〜20の整数であり、好ましくは3〜6である。R5は水素原子、アルキル基、アシル基、ジメチルプロピル骨格を有するエーテル基の何れかを示し、好ましくは水素原子、ジメチルプロピル骨格を有するエーテル基を示す。
【0029】
(C)
【化4】

gは2〜6の整数であり、好ましくは3である。hは0〜20の整数であり、好ましくは0〜12の整数である。iは1〜50の整数であり、好ましくは8〜30の整数である。jは0〜10の整数であり、好ましくは0〜5の整数であり、更に好ましくは0である。kは0〜10の整数であり、好ましくは0〜5の整数であり、更に好ましくは0である。R6は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示し、好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0030】
(D) アルキル基、またはアリール基であり、好ましくはアルキル基、更に好ましくはメチル基である。
【0031】
更に好ましい一般式1で表される構造のシリコン系界面活性剤として、一般式4〜7が挙げられる。
[一般式4]
[一般式5]
[一般式6]
[一般式7]
(一般式4〜7の式中でR2は下記(F)である。)
(F)
【0032】
一般式1で表される化合物は既知の方法で合成することができる。即ち、ポリシロキサンが有するSi-H結合と不飽和炭化水素基を有する化合物をヒドロシリル化反応により置換基を導入し合成する。不飽和炭化水素基を有する化合物としてアルキニル基を有する化合物を使用することで(A)の置換基を、アルケニル基を有する化合物を使用することで(B), (C)の置換基を導入することができる。アルキニル基を有する化合物としては2-ブチン-1,4-ジオールやそのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加物が挙げられる。アルケニル基を有する化合物としてはアリルアルコール、ヘキセノール、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、アリルポリエーテルといったアルケノールやその誘導体が挙げられる。
【0033】
また、一般式1で表される化合物の市販品としてはエボニックデグサ社製のTegotwin4000やTegotwin4100が挙げられる。
【0034】
一般式1で表される化合物はインキ組成物中に0.01重量%以上5重量%以下の割合で含有することが好ましい。0.01%未満の含有量では濡れ性への効果が乏しく、対象とする基材によっては濡れ性が不足する場合がある。5重量%より多いとインキの保存安定性に悪影響を与える場合がある。より好ましくは0.05重量%以上3重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以上2重量%以下、最も好ましくは0.2重量%以上1重量%以下である。
【0035】
本発明では吐出適性の調整や濡れ性の調整のために一般式1で表される化合物以外のポリオルガノシロキサン系化合物を併用することができる。一般式1で表される化合物以外のポリオルガノシロキサン系化合物としては一般式2や一般式3で表される化合物を使用することが好ましい。
【0036】
一般式2で表される化合物は濡れ性の向上やインキ経時保存での表面張力の安定性を増す効果があり、一般式3で表される化合物はインキの表面張力の調整やそれによる吐出適性の調整が可能である。インキの使用用途に合わせて、これらを選択し、使用することができる。
【0037】
[一般式2]
式中lは10〜80の整数を示す。R7は下記(E)の置換基で示される。
【0038】
(E)
mは1〜6の整数、nは0〜50の整数、oは0〜50の整数であり、n+oは1以上の整数で示される。R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、または(メタ)アクリル基である。
【0039】
一般式2で表される化合物の市販品の例としては、東レ・ダウコーニング社製のBY16-201, SF8427, ビックケミー社製のBYK-331, BYK-333, BYK-UV3500, エボニックデグサ社製のTegoglide410, Tegoglide432, Tegoglide435, Tegoglide440, Tegoglide450等が挙げられる。
【0040】
[一般式3]
pおよびqは1以上の整数であり、p+qは3〜50の整数で示される。R8は炭素数1〜6のアルキル基で示される。
【0041】
一般式3で表される化合物の市販品の例としては、東レ・ダウコーニング社製のSF8428, FZ-2162, 8032ADDITIVE, SH3749, FZ-77, L-7001, L-7002, FZ-2104, FZ-2110, F-2123, SH8400, SH3773M, ビックケミー社製のBYK-345, BYK-346, BYK-347, BYK-348, BYK-349, エボニックデグサ社製のTegowet250, Tegowet260, Tegowet270, Tegowet280, 信越化学工業社製のKF-351A, KF-352A, KF-353, KF-354L, KF355A, KF-615A, KF-640, KF-642, KF-643等が挙げられる。
【0042】
一般式1で表される化合物以外のポリオルガノシロキサン系化合物はインキ組成物中に0.01重量%以上5重量%以下の割合で含有することが好ましい。より好ましくは0.05重量%以上3%以下、更に好ましくは0.1重量%以上2重量%以下、最も好ましくは0.2重量%以上1重量%以下である。
【0043】
また、一般式1で表される化合物とそれ以外のポリオルガノシロキサン系化合物の総量はインキ組成物中に0.01重量%以上10%重量以下であることが好ましい。より好ましくは0.1重量%以上8重量%以下であり、更に好ましくは0.2重量%以上5重量%以下であり、最も好ましくは0.5重量%以上3重量%以下である。
【0044】
本発明では一般式1で表される化合物に加え、有機溶剤を併用する必要がある。一般式1で表される化合物は水のみの媒体には完全に溶解せず、長期の保存にて分離する可能性がある。有機溶剤を併用することで一般式1の化合物の溶解性を上げることで、分離を防ぎ長期間の安定性を維持することが可能となる。有機溶剤は1種類のみを選択し使用してもよく、乾燥性や粘度等の調整のために複数の溶剤を併用してもよい。
【0045】
有機溶剤としては炭素数3〜8のアルカンジオールを使用することが好ましい。アルカンジオールはインクジェットノズル周辺での乾燥を防ぐ効果があり、印刷時のノズル抜けを防止し、連続印刷の安定性を向上させることができる。また、基材に対しての濡れ性も良好であることから、画質の向上にも効果がある。
【0046】
炭素数3〜8のアルカンジオールとしては、1, 2-プロパンジオール、1, 3-プロパンジオール、1, 2-ブタンジオール、1, 3-ブタンジオール、1, 4-ブタンジオール、2-メチル-1, 3-プロパンジオール、1, 2-ペンタンジオール、1, 5-ペンタンジオール、2, 4-ペンタンジオール、2, 2-ジメチル-1, 3-プロパンジオール、1, 2-ヘキサンジオール、1, 6-ヘキサンジオール、2, 5-ヘキサンジオール、3, 5-ヘキサンジオール、3-メチル-1, 5-ペンタンジオール、2-メチル-2, 4-ペンタンジオール、1, 2-ヘプタンジオール、1, 7-ヘプタンジオール、2, 6-ヘプタンジオール、1, 2-オクタンジオール、1, 8-オクタンジオール、2-メチル-1, 3-ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中でも基材への濡れ性を向上させ、画質を向上させるためにも炭素鎖が直鎖状のアルカンジオールが好ましく、1, 2-アルカンジオールが更に好ましく、炭素数4〜6の1, 2-アルカンジオールが最も好ましい。
【0047】
その他使用可能な溶剤としてはグリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジブロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤や、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-メチルオキサゾリジノン、N-エチルオキサゾリジノン、N, N-ジメチル-β-メトキシプロピオンアミド、N, N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド等の含窒素系溶剤、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン等の環状エステル系溶剤等が挙げられる。
【0048】
これらの溶剤の中でもアルカンジオールとグリコールエーテル系溶剤を併用することで、インキの濡れ性、乾燥性を所望の特性に調整することができるため好ましい。グリコールエーテル系溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジブロピレングリコールモノプロピルエーテルが好ましい。
【0049】
インキ中の溶剤の含有量としてはインキ組成物の全質量に対して5重量%以上50重量%以下とすることが好ましい。5重量%以下では一般式1で表される化合物が十分にインキ中に溶解せず、分離の恐れが生じる。50重量%以上ではインキの乾燥性が悪化し、印刷物の生産性が低下する可能性がある。より好ましくは10重量%以上45重量%以下であり、更に好ましくは15重量%以上40重量%以下であり、最も好ましくは20重量%以上35重量%以下である。
【0050】
本発明で用いる色材としては、例えば、染料、顔料等が挙げられる。これらの色材は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。印刷物の耐水性、耐候性を向上させるためにも顔料を使用することが好ましい。色材の含有量はインキ組成物の全質量に対して0.1重量%以上20重量%以下、好ましくは1重量%以上10重量%以下、より好ましくは2重量%以上7重量%以下である。
【0051】
染料を使用する場合には、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料等の通常インクジェット記録に使用する各種染料を使用することができる。
【0052】
更に詳しくは、シアン染料としてはC. I. Acid Blue 1, 7, 9, 15, 22, 23, 25, 27, 29, 40, 41, 43, 45, 54, 59, 60, 62, 72, 74, 78, 80, 82, 83, 90, 92, 93, 100, 012, 103, 104, 112, 113, 117, 120, 126, 127, 129, 130, 131, 138, 140, 142, 143, 151, 154, 158, 161, 166, 167, 168, 170, 171, 182, 183, 184, 187, 192, 199, 203, 204, 205, 229, 234, 236, 249, C. I. Direct Blue 1,2, 6, 15, 22, 25, 41, 71, 76, 77, 78, 80, 86, 87, 90, 98, 106, 108, 120, 123, 158, 160, 163, 165, 168, 192, 193, 194, 195, 196, 199, 200, 201, 202, 203, 207, 225, 226, 236, 237, 246, 248, 249, C. I. Reactive Blue 1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 9, 13, 14, 15, 17, 18, 19, 20, 21, 25, 26, 27, 28, 29, 31, 32, 33, 34,37, 38, 39, 40, 41, 43, 44, 46, C. I. Food Blue 1, 2, C. I. Basic Blue 9, 25,28, 29, 44等が挙げられる。マゼンタ染料としてはC. I. Acid Red 1, 6, 8, 9, 13, 14, 18, 26, 27, 32, 35, 37, 42, 51, 52, 57, 75, 77, 80, 82, 85, 87, 88, 89, 92, 94, 97, 106, 111, 114, 115, 117, 118, 119, 129, 130, 131, 133, 134, 138, 143, 145, 154, 155, 158, 168, 180, 183, 184, 186, 194, 198, 209, 211, 215, 219, 249, 252, 254, 262, 265, 274, 282, 289, 303, 317, 320, 321, 322, C. I. Direct Red 1, 2, 4, 9, 11, 13, 17, 20, 23, 24, 28, 31, 33, 37, 39, 44, 46, 62, 63, 75, 79, 80, 81, 83, 84, 89, 95, 99, 113, 197, 201, 218, 220, 224, 225, 226, 227, 228, 229, 230, 231, C. I. Reactive Red 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 11, 12, 13, 15, 16, 17, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 28, 29, 31, 32, 33, 34,35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 45, 46, 49, 50, 58, 59, 63, 64, C. I. Food Red 7, 9, 14等が挙げられる。イエロー染料としてはC. I. Acid Yellow 1, 3, 11, 17, 19, 23, 25, 29, 36, 38, 40, 42, 44, 49, 59, 61, 70, 72, 75, 76, 78, 79, 98, 99, 110, 111, 127, 131, 135, 142, 162, 164, 165, C. I. Direct Yellow 1, 8, 11, 12, 24, 26, 27, 33, 39, 44, 50, 58, 85, 86, 87, 88, 89, 98, 110, 132, 142, 144, Reactive Yellow 1, 2, 3, 4, 6, 7, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 37, 42, C. I. Food Yellow 3, 4等が挙げられる。ブラック染料としてはC. I. Direct Black 1, 7, 19, 32, 51, 71, 108, 146, 154, 166等が挙げられる。
【0053】
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック以外の染料としてはC. I. Acid Green 7, 12, 25, 27, 35, 36, 40, 43, 44, 65, 79, C. I. Direct Green 1, 6, 8, 26, 28, 30, 31, 37, 59, 63, 64, C. I. Reactive Green 6, 7, C. I. Direct Violet 2, 48, 63, 90, C. I. Reactive Violet 1, 5, 9, 10等が挙げられる。
【0054】
顔料を使用する場合には、無機顔料、有機顔料の何れも使用することができる。無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等を挙げることができる。
【0055】
有機顔料としてはアゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、染料レーキ顔料、蛍光顔料等が挙げられる。
【0056】
更に詳しくは、シアン顔料としてはC. I. Pigment Blue 1、2、3、15:3、15:4、16、22、 C. I. Vat Blue 4、6等が挙げられる。マゼンタ顔料としてはC. I. Pigment Red 5、7、9、12、31、48、49、52、53、57、97、112、120、122、147、149、150、168、177、178、179、202、206、207、209、238、242、254、255、269、C. I. Pigment Violet 19、23、29、30、37、40、50等が挙げられる。イエロー顔料としてはC. I. Pigment Yellow 1, 2, 3, 12, 13, 14, 16, 17, 20, 24, 74, 83, 86, 93, 94, 95, 109, 110, 117, 120, 125, 128, 137, 138, 139, 147, 148, 150, 151, 154, 155, 166, 168, 180, 185, 213等が挙げられる。
【0057】
ブラック顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。例えば、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜40nm、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品としては下記のものが挙げられる。例えば、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビアンカーボン製)、REGA330R、400R、660R、MOGUL L、ELFTEX415(以上、キャボット製)、Nipex90、Nipex150T、Nipex160IQ、Nipex170IQ、Nipex75、Printex85、Printex95、Printex90、Printex35、PrintexU(以上、エボニックデグサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
【0058】
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック以外の顔料としてはC. I. Pigment Green 7, 10, C. I. Pigment Brown 3, 5, 25, 26, C. I. Pigment Orange 2, 5, 7, 13, 14, 15, 16, 24, 34, 36, 38, 40, 43, 63等が挙げられる。
【0059】
これらの顔料を使用する場合には長期間のインキ安定性を維持するためにも、インキ媒体中に分散して使用することが好ましい。顔料の分散方法としては、顔料を酸化処理等により表面改質し、分散剤なしで顔料を分散させる方法や、界面活性剤や樹脂を分散剤として顔料を分散させる方法がある。より安定なインキとするためにも分散樹脂を使用して顔料を分散させることが好ましい。
【0060】
印刷物の耐性を高めるために、本発明ではバインダー樹脂を更に添加することもできる。水性インキのバインダー樹脂としては大別して水溶性樹脂と樹脂微粒子が知られているが、一般に樹脂微粒子は水溶性樹脂と比較して高分子量であり、高い耐性を実現することができる。また、樹脂微粒子はインキ粘度を低くすることができ、より多量の樹脂をインキ中に配合することができることから、インクジェットインキの耐性を高めるのに適している。樹脂の種類としてはアクリル系、ウレタン系、スチレンブタジエン系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系等が挙げられる。インキの安定性、印刷物の耐性の面を考慮するとアクリル系の樹脂微粒子を使用することが望ましい。
【0061】
バインダー樹脂のガラス転移点温度(Tg)を高くすることで耐擦性、耐薬品性等の耐性を向上させることが可能であり、好ましくは50〜120℃、より好ましくは80〜100℃の範囲とするのが良い。50℃よりも低い場合には十分な耐性が得られず、実用にて印刷物からインキ塗膜が剥がれる場合がある。また、120℃よりも高い場合には塗膜が非常に硬くなり、印刷物を折り曲げた際に印刷面にワレ、ヒビが生じる場合がある。
【0062】
上記したようなバインダー樹脂のインキ中における含有量は、固形分でインキ組成物の全質量に対して2重量%以上、30重量%以下の範囲であり、好ましくは3重量%以上、20重量%以下の範囲であり、より好ましくは6重量%以上、15重量%以下の範囲である。
【0063】
また、本発明のインキは上記成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、消泡剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の添加剤を適宜添加することができる。これらの添加剤の添加量としては、インキ組成物の全質量に対して0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上3重量%以下である。
【0064】
本発明のインキ組成物は単色で使用してもよいが、用途に合わせて複数の色を組み合わせたインキセットとして使用することもできる。組み合わせは特に限定されないが、シアン、マゼンタ、イエローの3色を使用することでフルカラーの画像を得ることができる。また、ブラックインキを追加することで黒色感を向上させ、文字等の視認性を上げることができる。更にオレンジ、グリーン等の色を追加することで色再現性を向上させることも可能である。白色以外の基材へ印刷を行う際にはホワイトインキを併用することで鮮明な画像を得ることができる。
【0065】
本発明のインクジェット用インキ組成物で印刷する基材は公知のものが使用可能である。例えば、上質紙、コート紙、アート紙、キャスト紙、合成紙、インクジェット専用紙などの紙基材や、ポリ塩化ビニルシート、PETフィルム、PPフィルムなどのプラスチック基材である。これらは基材の表面が滑らかであっても、凹凸のついたものであっても良いし、透明、半透明、不透明のいずれであっても良い。また、これらの基材の2種以上を互いに張り合わせたものでも良い。更に印字面の反対側に剥離粘着層等を設けても良く、又印字後、印字面に粘着層等を設けても良い。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。
【0067】
(製造例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチル水素ポリシロキサン(平均分子量2000, 平均官能基数(Si-H結合数)5, 直鎖状) 50g, Golpanol BMP(BASF社製, ブチンジオールのEO付加物) 20gと、触媒としてH2PtCl6・6H2O, RuCl3・H2Oとを仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を140℃に加熱し、1時間撹拌を行い、メチル水素ポリシロキサンとアルキニルジオールを反応させた。これを室温まで冷却した後、取り出し、置換基R2として(A)の構造を有する一般式1の化合物として化合物Aを得た。
【0068】
(製造例2)
製造例1と同様に、メチル水素ポリシロキサン(平均分子量10000, 平均官能基数(Si-H結合数)5, 直鎖状)50g, Golpanol BMP(BASF社製, ブチンジオールのEO付加物)5gを使用して、官能基R2として(A)の構造を有する一般式1の化合物として化合物Bを得た。
【0069】
(製造例3)
製造例1と同様に、メチル水素ポリシロキサン(平均分子量2000, 平均官能基数(Si-H結合数)12, 直鎖状)50g, Golpanol BEO(BASF社製, ブチンジオールのEO付加物)55g, ポリエチレングリコールアリルエーテル(平均分子量380)11gを使用して、官能基R2として(A), (C)の構造を有する一般式1の化合物として化合物Cを得た。
【0070】
(製造例4)
製造例1と同様に、メチル水素ポリシロキサン(平均分子量2000, 平均官能基数(Si-H結合数)8, 直鎖状)50g, Golpanol BEO(BASF社製, ブチンジオールのEO付加物)15g, トリメチロールプロパンモノアリルエーテルジアセテート37gを使用して、官能基R2として(A), (B)の構造を有する一般式1の化合物として化合物Dを得た。
【0071】
(製造例5)
製造例1と同様に、メチル水素ポリシロキサン(平均分子量5000, 平均官能基数(Si-H結合数)10, 分岐状)50g, Golpanol BEO(BASF社製, ブチンジオールのEO付加物)20gを使用して、官能基R2として(A),の構造を有する化合物Eを得た。
【0072】
(製造例6)
製造例1と同様に、メチル水素ポリシロキサン(平均分子量900, 平均官能基数(Si-H結合数2, 直鎖状)50g, Golpanol BEO(BASF社製, ブチンジオールのEO付加物)22gを使用して、官能基R2として(A),の構造を有する化合物Fを得た。これは一般式4の化合物である。
【0073】
(製造例7)
製造例1と同様に、メチル水素ポリシロキサン(平均分子量600, 平均官能基数(Si-H結合数1, 直鎖状)50g, Golpanol BEO(BASF社製, ブチンジオールのEO付加物)17gを使用して、官能基R2として(A),の構造を有する化合物Gを得た。これは一般式5の化合物である。
【0074】
(製造例8)
製造例1と同様に、メチル水素ポリシロキサン(平均分子量1600, 平均官能基数(Si-H結合数11, 直鎖状)50g, Golpanol BEO(BASF社製, ブチンジオールのEO付加物)69gを使用して、官能基R2として(A),の構造を有する化合物Hを得た。これは一般式6の化合物である。
【0075】
(製造例9)
製造例1と同様に、メチル水素ポリシロキサン(平均分子量900, 平均官能基数(Si-H結合数6, 直鎖状)50g, Golpanol BEO(BASF社製, ブチンジオールのEO付加物)67gを使用して、官能基R2として(A),の構造を有する化合物Iを得た。これは一般式7の化合物である。
【0076】
(実施例1)
顔料としてPigment Blue 15:3を20部、分散樹脂(スチレンアクリル樹脂、分子量20000、酸価230、Nv.20%)を40部、水40部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間分散を行い、顔料分散体を得た。この顔料分散体を用いて表1記載のとおりの原料をディスパーにて撹拌を行いながら混合し、十分に均一になるまで攪拌した。その後、メンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し本発明のインクジェット用インキ組成物を作成した。このインキを用いて吐出性、印刷品質の評価を行った。
【0077】
(印刷物作成)
上記で作成したインクジェット用インキ組成物を、25℃環境下でVJ-1608HSJ(武藤工業社製インクジェットプリンタ)に充填し、基材を45℃に加温しながら画像を印刷した。基材にインキを塗布後、80℃、3分で加熱乾燥を行い、評価用印字物を得た。この印刷物を用いて印刷品質の評価を行った。基材としてはPVCシートを使用した。
【0078】
(吐出性)
上記プリンタにて印字幅1mのベタ印字を行い、印字長1m毎にノズルチェックパターンを印字してノズル抜け本数をカウントし、その本数で評価を行った。実用上問題とならないものはB以上の評価のものである。
S:印字長5mでノズル抜けなし
A:印字長3, 4mでノズル抜けなし
B:印字長1, 2mでノズル抜けなし
C:印字長1mでノズル抜け11本以上
【0079】
(印刷品質)
下記の基材に対して印字率100%にてベタ印刷したサンプルを目視で確認し、色ムラ、白抜けの発生を評価した。色ムラ、白抜け見られなかったものはS、若干の色ムラはあるが白抜けが見られないものはA、若干の色ムラがあり、極わずかの白抜けが見られるものはB、色ムラが著しく発生している、白抜けが多く見られるものはCとした。実用上問題とならないものはB以上の評価のものである。
(実施例2〜20、比較例1〜7)
表1、表2記載の原料を用いて実施例1と同様にしてインキの作成を行い、インキの評価を行った。
【0080】

【表1】
【0081】

【表2】