特許第5909783号(P5909783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909783
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】抗CXCR1組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/165 20060101AFI20160414BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160414BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160414BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   A61K31/165
   A61K45/00
   A61P35/00
   A61K31/337
【請求項の数】4
【全頁数】100
(21)【出願番号】特願2013-214161(P2013-214161)
(22)【出願日】2013年10月11日
(62)【分割の表示】特願2011-535789(P2011-535789)の分割
【原出願日】2009年11月11日
(65)【公開番号】特開2014-37427(P2014-37427A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2013年10月11日
(31)【優先権主張番号】61/113,458
(32)【優先日】2008年11月11日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509009692
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ウィチャ,マックス エス.
(72)【発明者】
【氏名】ギネスティアー,クリストフ
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0208074(US,A1)
【文献】 C. Ginestier et al.,99th AACR Annual Meeting Abstract #5004,2008年 4月,2014年10月9日検索,URL,http://www.aacrmeetingabstracts.org/cgi/content/meeting_abstract/2008/1_Annual_Meeting/5004?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&author1=ginestier&andorexactfulltext=and&searchid=1&FIRSTINDEX=0&sortspec=relevance&resourcetype=HWCIT
【文献】 S. Huang et al.,American Journal of Pathology,2002年,vol.161, No.1,p.125-134
【文献】 G. M. Hjortoe et al.,Blood,2004年,vol.103, No.8,p.3029-3037
【文献】 S. Singh et al.,98th AACR Annual Meeting Abstract #5633,2007年,2014年10月9日検索,URL,http://www.aacrmeetingabstracts.org/cgi/content/meeting_abstract/2007/1_Annual_Meeting/5633?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=5633&andorexactfulltext=and&searchid=1&FIRSTINDEX=0&sortspec=relevance&resourcetype=HWCIT
【文献】 M. Varney et al.,98th AACR Annual Meeting Abstract #5632,2007年,2014年10月9日検索,URL,http://www.aacrmeetingabstracts.org/cgi/content/meeting_abstract/2007/1_Annual_Meeting/5632?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=5632&andorexactfulltext=and&searchid=1&FIRSTINDEX=0&sortspec=relevance&resourcetype=HWCIT
【文献】 C. T. Jordan,Current Opinion in Cell Biology,2004年,vol.16,p.708-712
【文献】 C. Bizzarri et al.,Pharmacology & Therapeutics,2006年,vol.112,p.139-149
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/165
A61K 31/337
A61K 39/395
A61K 45/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳癌腫瘍を有するヒト対象を治療するための組合せ薬であって、抗有糸分裂化学療法剤と組み合わせてレぺルタキシン(Repertaxin)を含み、レベルタキシンと抗有糸分裂化学療法剤は、併用で、または1つの組成物として投与される組合せ薬
【請求項2】
前記腫瘍は、乳癌幹細胞を含む、請求項1に記載の組合せ薬
【請求項3】
抗有糸分裂化学療法剤が、ドセタキセル、ドキソルビシン、パクリタキセル、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、コルヒチン、ポドフィロトキシン、ステガナシン、およびコンブレタスタチンからなる群から選択される、請求項1に記載の組合せ薬
【請求項4】
抗有糸分裂化学療法剤が、パクリタキセルである、請求項に記載の組合せ薬
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2008年11月11日に出願された米国仮特許出願第61/113,458号に対する優先権を主張し、その開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔連邦支援の調査または開発に関する記述〕
本発明は、NIH(国立衛生研究所)付与の助成金番号CA66233、CA101860、および5P30CA46592の下、政府支援を受けて行われた。政府は本発明における一定の権利を有する。
【0003】
〔技術分野〕
本発明は、対象内の非腫瘍原性および腫瘍原性の癌細胞を死滅させるように、IL8−CXCR1経路阻害剤(例えば、抗CXCR1抗体またはレペルタキシン(Repertaxin))単独で、または追加の化学療法剤と併用して投与することによって、癌を治療する方法を提供する。本発明はまた、(例えば、CXCR1またはFBXO21の存在に基づいて)患者の固形腫瘍幹細胞の存在を検出し、それらを単離するための組成物および方法も提供する。
【背景技術】
【0004】
〔背景技術〕
癌はわが国における第2の死亡原因であり、毎年500,000人超が死亡している。検出および治療の発達にも関わらず、癌による死亡率は高いままである。分子基盤の癌の解明の著しい進歩にも関わらず、この知識は、未だ効果的な治療方針に活かされていない。
【0005】
特に、乳癌は米国の女性にとって最も一般的な癌であり、一生涯のうち約9人に1人が乳癌を発症する。残念なことに、転移性乳癌は未だ不治の病である。転移性乳癌のほとんどの女性は、この疾病で死亡している。
【0006】
従来の治療法(放射線療法、化学療法、およびホルモン療法)は有用ではあるが、治療抵抗性の癌細胞の発現によって制限されている。明らかに、転移性乳癌および癌一般の治療のための標的を特定する新アプローチが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、対象内の非腫瘍原性および腫瘍原性の癌細胞を死滅させるように、IL8−CXCR1経路阻害剤(例えば、抗CXCR1抗体またはレペルタキシン)単独で、または追加の化学療法剤と併用して投与することによって、癌を治療する方法を提供する。本発明は、(例えば、CXCR1またはFBXO21の存在に基づいて)患者の固形腫瘍幹細胞の存在を治療および診断するための組成物および方法も提供する。
【0008】
幾つかの実施形態では、本発明は、IL8−CXCR1経路拮抗薬および追加の化学療法剤を対象に投与することを含む、癌を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、癌幹細胞の少なくとも一部および非腫瘍原性の癌細胞の少なくとも一部が死滅する条件下で対象にレペルタキシンまたはその誘導体を投与することを含む、対象の癌幹細胞および非腫瘍原性の癌細胞を低減または排除する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、癌幹細胞の少なくとも一部および非腫瘍原性の癌細胞の少なくとも一部が死滅する条件下で対象にIL8−CXCR1経路拮抗薬および追加の化学療法剤を投与することを含む、対象の癌幹細胞および非腫瘍原性の癌細胞を低減または排除する方法を提供する。具体的な実施形態では、本発明は、IL8−CXCR1経路拮抗薬および追加の化学療法剤を含む組成物またはキットを提供する。
【0009】
特定の実施形態では、IL8−CXCR1経路拮抗薬は、IL8がCXCR1に結合するのを特異的に遮断する作用因子を含む。幾つかの実施形態では、作用因子は、CXCR1に結合する(特異的である)が、CXCR2には結合しない。他の実施形態では、作用因子はCXCR1に結合する。具体的な実施形態では、作用因子は抗CXCR1抗体または抗体フラグメントを含む。追加の実施形態では、作用因子はレペルタキシンまたはその誘導体を含む。さらなる実施形態では、追加の化学療法剤は抗有糸分裂化合物を含む。特定の実施形態では、抗有糸分裂化合物は、ドセタキセル、ドキソルビシン、パクリタキセル、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、コルヒチン、ポドフィロトキシン、ステガナシン、およびコンブレタスタチンからなる群から選択される。他の実施形態では、抗有糸分裂化合物は、ニチニチソウアルカロイド(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン);またはベンズイミダゾールカルバメート、例えばノコダゾール;またはコルヒチンもしくは関連の化合物、例えばポドフィロトキシン、ステガナシン、もしくはコンブレタスタチン;またはタキサン、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルである。特定の実施形態では、追加の化学療法剤はドセタキセルを含む。
【0010】
具体的な実施形態では、化学療法で治療される時、対象はIL−8生成レベル(例えば、運動する癌幹細胞数の増加を引き起こす)が高くなるタイプの癌を有する。幾つかの実施形態では、対象は、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、および食道腺癌からなる群から選択されるタイプの癌を有する。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、a)i)対象の腫瘍から採取した試料、およびii)CXCR1タンパク質またはFBXO21タンパク質(または表1からの別のタンパク質)に対して特異的な、抗体または抗体フラグメント(または他の結合分子)を提供することと、b)CXCR1+またはFBXO21+固形腫瘍幹細胞の有無が検出される条件下で、組織試料を抗体または抗体フラグメントに接触させることと、を含む、固形腫瘍幹細胞を検出する方法を提供する。
【0012】
具体的な実施形態では、抗体または抗体フラグメントは、シグナル分子に接合している。さらなる実施形態では、シグナル分子は蛍光分子を含む。他の実施形態では、シグナル分子は、比色基質の存在下で発色反応を触媒することができる酵素を含む。特定の実施形態では、抗体または抗体フラグメントに対して特異的な試料を第2の抗体または第2の抗体フラグメントに接触させることを含む。他の実施形態では、第2の抗体または第2の抗体フラグメントは、シグナル分子を含む。具体的な実施形態では、CXCR1またはFBXO21+固形腫瘍幹細胞の有無を決定するために他のタンパク質または核酸が検定されない。追加の実施形態では、腫瘍は、前立腺癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、乳癌腫瘍、黒色腫、非小細胞肺癌腫瘍、小細胞肺癌腫瘍、および食道腺癌腫瘍からなる群から選択される。
【0013】
幾つかの実施形態では、本発明は、a)切り離された細胞を生成するために固形腫瘍を切り離すこと、b)切り離された細胞をCXCR1またはFBXO21(または表1からの他のタンパク質)を結合する試料に接触させること、c)固形腫瘍幹細胞の濃縮された集団が生成される条件下で試薬に結合する細胞を選択することと、を含む、固形腫瘍幹細胞集団を濃縮させる方法を提供する。
【0014】
特定の実施形態では、固形腫瘍幹細胞の濃縮された集団を生成するために用いられる追加の試薬はない。幾つかの実施形態では、腫瘍は、前立腺癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、乳癌腫瘍、黒色腫、非小細胞肺癌腫瘍、小細胞肺癌腫瘍、および食道腺癌腫瘍からなる群から選択される。さらなる実施形態では、試薬は抗体または抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント)である。追加の実施形態では、試薬は蛍光色素または磁気粒子に接合される。他の実施形態では、細胞選択はフローサイトメトリー、蛍光活性化細胞分類、選鉱、親和性カラム分離、または磁気選択によって実行される。
【0015】
具体的な実施形態では、本発明は、本明細書に記載の方法によって単離される固形腫瘍幹細胞の濃縮された集団を提供する。
【0016】
幾つかの実施形態では、本発明は、a)腫瘍原性で、b)CXCR1+またはFBXO21+である、癌幹細胞の単離された集団を提供する。特定の実施形態では、癌幹細胞は、前立腺癌幹細胞、卵巣癌幹細胞、乳癌幹細胞、皮膚癌幹細胞、非小細胞肺癌幹細胞、小細胞肺癌幹細胞、および食道腺癌幹細胞、からなる群から選択される癌幹細胞である。他の実施形態では、集団は、少なくとも60%の癌幹細胞および40%未満の非腫瘍原性の腫瘍細胞を含む。さらなる実施形態では、癌幹細胞は、未分画の非腫瘍原性の腫瘍細胞と比較して少なくとも2倍(例えば、2倍、3倍、4倍、5倍、...、10倍、...、100倍、1000倍)の濃度である。
【0017】
幾つかの実施形態では、本発明は、腫瘍から癌幹細胞および非腫瘍原性の腫瘍細胞を含む、少なくとも60%が腫瘍原性の幹細胞であり、40%以下が非腫瘍原性の腫瘍細胞である細胞組成を獲得するための、a)腫瘍から腫瘍細胞の切り離された混合物を獲得し、b)腫瘍細胞の混合物を、少なくとも60%の癌幹細胞および40%以下の非腫瘍原性の腫瘍細胞を含む第1の分画と、癌幹細胞を枯渇した腫瘍細胞の第2の分画とに分離することであって、混合物をCXCR1またはFBXO21に対する試薬と接触させて分離することと、c)i)第1の宿生動物への連続注射によって第1の分画が腫瘍原性であることと、第2の宿生動物への連続注射によって第2の分画が非腫瘍原性であることとを示すことと、を含む方法を提供する。特定の実施形態では、分離はフローサイトメトリー、蛍光活性化細胞分類(FACS)、選鉱、親和性クロマトグラフィー、または磁気選択によって実行される。幾つかの実施形態では、分離は蛍光活性化セルソーター(FACS)分析によって実行される。
【0018】
具体的な実施形態では、本発明は、(a)患者から試料を獲得し、(b)試料内のCXCR1+またはFBXO21+固形腫瘍幹細胞の存在を特定し、(c)CXCR1+またはFBXO21+固形腫瘍幹細胞を標的とする患者のための治療法を選択(例えば、抗CXCR1抗体または抗体フラグメントの使用を選択)することを含む、固形腫瘍を有する患者のための治療法を選択する方法を提供する。特定の実施形態では、CXCR1+またはFBXO21+固形腫瘍幹細胞は、前立腺癌幹細胞、卵巣癌幹細胞、乳癌幹細胞、皮膚癌幹細胞、非小細胞肺癌幹細胞、小細胞肺癌幹細胞、および食道腺癌幹細胞からなる群から選択される癌幹細胞である。
【0019】
幾つかの実施形態では、本発明は、a)抗腫瘍性化合物候補はCXCR1またはFBXO21拮抗薬またはIL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬を含み、CXCR1+またはFBXO21+癌幹細胞を含む試料をその抗腫瘍性化合物候補に触れさせることと、b)化合物に応じて細胞内の変化を検出することと、を含む、化合物を選抜する方法を提供する。
【0020】
特定の実施形態では、試料は非接着性マンモスフィアを含む。さらなる実施形態では、CXCR1もしくはFBXO21拮抗薬またはIL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬は、抗体または抗体フラグメントを含む。幾つかの実施形態では、CXCR1拮抗薬は、レパルタキシン(Repartaxin)の誘導体である。他の実施形態では、検出は腫瘍原性の乳腺細胞の細胞死を検出することを含む。さらなる実施形態では、方法は、腫瘍原性の細胞ならびに非腫瘍原性の癌細胞を死滅させることができる抗癌薬候補を特定することをさらに含む。
【0021】
幾つかの実施形態では、本発明は、a)固形腫瘍幹細胞が、:i)未分画の腫瘍細胞に比較して少なくとも2倍の濃度であり、ii)CXCR1またはFBXO21を示す発現する、濃縮された固形腫瘍幹細胞を獲得し、b)検査化合物に、固形腫瘍幹細胞の第2のセットではなく、第1のセットを触れさせ、c)固形腫瘍幹細胞の第1のセットを第1の宿生動物に注射し、固形腫瘍幹細胞の第2のセットを第2の宿生動物に注射し、そしてd)検査化合物が腫瘍形成を阻害するかどうかを決定するために、もし存在する場合、第1の動物内の腫瘍を第2の動物に形成された腫瘍と比較すること、を含む固形腫瘍幹細胞の腫瘍形成を阻害するための検査化合物の能力を決定するための方法を提供する。具体的な実施形態では、検査化合物はCXCR1もしくはFBXO21阻害剤、またはIL8−CXCR1阻害剤経路阻害剤である。
【0022】
さらなる実施形態では、本発明は、a)少なくとも60%の固形腫瘍幹細胞を含み、固形腫瘍幹細胞がCXCR1またはFBXO21を発現する試料を獲得することと、b)固形腫瘍幹細胞を第1および第2の宿生動物に注射することと、c)検査化合物で第1の宿生動物を治療し、検査化合物で第2の宿生動物を治療しないことと、d)検査化合物が腫瘍形成を阻害するかどうかを決定するために、もし存在する場合、第1の動物内の腫瘍を第2の動物に形成された腫瘍と比較することと、を含む固形腫瘍幹細胞の腫瘍形成を阻害するための検査化合物の能力を決定するための方法を提供する。他の実施形態では、検査化合物はCXCR1またはFBXO21阻害剤またはIL8−CXCR1経路阻害剤である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】乳癌細胞株(MDA−MB−453、SUM159)からのALDEFLUOR陽性細胞集団が、癌幹細胞特性を有することを示す。A−B、G−H。MDA−MB−453(A−B)およびSUM159細胞(G−H)内のALDH酵素活性の代表的フローサイトメトリー分析。ALDEFLUOR検定は以下の実施例1に記載のように実行された。(C、I)ALDEFLUOR陽性集団は、NOD/SCIDマウス内に当初の腫瘍の表現型の不均一性を繰り返した腫瘍を生成することができた。(F、L)腫瘍の成長曲線は、注射された細胞の様々な数(MDA−MB−453については50,000細胞、5,000細胞、および500細胞、ならびにSUM159については100,000細胞、10,000細胞、および1,000細胞)、およびそれぞれの集団(ALDEFLUOR陽性、ALDEFLUOR陰性、分離されていない)についてプロットした。腫瘍成長速度は、腫瘍形成の潜伏かつ規模ならびにALDEFLUOR陽性細胞(F、L)の数に相関する。(D、J)腫瘍細胞の存在を明らかにする、ALDEFLUOR陽性細胞の注射部位(D:MDA−MB−453 ALDEFLUOR陽性細胞の注射部位、およびJ:SUM59 ALDEFLUOR陽性細胞の注射部位)のH&E染色。(E、K)残留マトリゲル、アポトーシスを起こした細胞、およびマウスの組織のみが含まれたALDEFLUOR陰性細胞の注射部位(E:MDA−MB−453 ALDEFLUOR陰性細胞の注射部位、およびK:SUM59ALDEFLUOR陰性細胞の注射部位)。データは平均±標準偏差を表す。
図2】「癌幹細胞シグネチャー」に基づく乳腺細胞株から単離されたALDEFLUOR陽性およびALDEFLUOR陰性集団の分類を示す。図2A413遺伝子発現シグネチャーに基づく16試料の階層的構造形成。データマトリックスの各行は、1遺伝子を表現し、各列は、1試料を表現する。ALDEFLUOR陽性(下線有りの名称)と陰性試料(下線無しの名称)との間の16中15試料の413遺伝子での分離を記述。そのシグネチャーに含まれる幾つかの遺伝子は、「Entrez遺伝子」(ALDEFLUOR陽性集団内で下方制御された遺伝子は緑に分類され、ALDEFLUOR陽性集団内で上方調節された遺伝子は赤に分類される)で使用されるようなHUGO略称によって称される。図2B−C。遺伝子発現結果を確認するために、ALDEFLUOR表現型に分類された1セットの5乳癌細胞株内で、ALDEFLUOR陽性集団(CXCR1/IL8RA、FBXO21、NFYA、NOTCH2およびRAD51L1)内で過剰発現した5つの識別遺伝子の発現は、定量のRT−PCRによって測定された。CXCR1およびFBXO21の定量のRT−PCR発現レベルは、この図で表現される。定量のRT−PCRによって測定される遺伝子発現レベルは、ALDEFLUOR陰性集団に比較してALDEFLUOR陽性集団内でCXCR1およびFBXO21mRNAレベルの上昇によって、DNAマイクロアレイを使用して獲得される結果を裏付ける(p<0.05)。
図3】乳癌幹細胞の制御におけるIL8/CXCR1軸の役割を示す。A.細胞発現CXCR1は、ALDEFLUOR陽性集団に含まれる。4つの異なる乳腺細胞株(HCC1954、SUM159、MDA−MB−453、BrCa−MZ−01)からのALDEFLUOR陽性および陰性集団は、FACSによって単離され、固定され、そして免疫染色およびFACS分析によってCXCR1タンパク質の発現について分析される。ALDEFLUOR陽性細胞は、ALDEFLUOR陰性集団に比較してCXCR1陽性細胞内で高く濃縮された。B.3つの異なる細胞株(HCC1954、SUM159、MDA−MB−453)の腫瘍球形成へのIL8治療法の効果。IL8治療法は、用量依存的に第1および第2の腫瘍球の形成を増加させた。C.付着条件で培養された4つの異なる細胞株のALDEFLUOR陽性集団へのIL8治療法の効果。IL8は、4つの分析された細胞株のそれぞれで、用量依存的にALDEFLUOR陽性集団を増加させた。(p<005/**p<001、対象群と統計的に優位な差異)。
図4】ALDEFLUOR陽性細胞は、増加した転移能を表示することを示す。A.IL8/CXCR1軸は、癌幹細胞浸潤を伴う。浸潤内のIL8/CXCR1軸の役割は、3つの異なる細胞株(HCC1954、MDA−MB−453、SUM159)のための誘引物質として血清またはIL8を使用するマトリゲル浸潤検定によって評価された。ALDEFLUOR陽性細胞は、ALDEFLUOR陰性細胞より6〜20倍高く浸潤する(p<001)。IL8(100ng/mL)を誘引物質として使用した時、ALDEFLUOR陽性細胞の著しい増加は、誘引物質としての血清と比較してマトリゲルを通して浸潤していることが観察された(p<005)。対照的に、IL8は、ALDEFLUOR陰性集団浸潤能には何も効果が無かった。B−M.ALDEFLUOR陽性集団は、転移能の上昇を示した。B〜D.それぞれの群(ALDEFLUOR陽性、ALDEFLUOR陰性、分離されていない)から100,000発光酵素感染細胞の接種に続いて、一週間間隔で測定された標準光子束の定量化。心臓内に投与されたSUM159細胞への接種に続いて、一週間間隔で測定された標準光子束の定量化を示す。E〜J.生物発光画像法ソフトウェアを利用した転移の検出(E、G、I:うつ伏せマウス;F、H、J:仰向けマウス)。ALDEFLUOR陽性細胞を接種されたマウスは、異なる部位に局在する種々の転移を発症し(骨、筋肉、肺、軟組織)、分離されていない細胞を接種されたマウスより高い光子束発散を示したが、分離されていない細胞を摂取されたマウスでは、1マウスあたりわずか1移転の発症だった。対照的に、ALDEFLUOR陰性細胞を接種されたマウスは、たった1つの偶発的な小さい転移を発症したが、それはリンパ節に限定されていた。K−M.骨(K)、軟組織(L)および筋肉(M)内のALDEFLUOR陽性細胞の注射に起因する転移のH&E染色による組織学的確認。
図5】腫瘍細胞生存能力(図5A)上ならびに癌幹細胞生存能力(図5B)上のCXCR1抑制効果を示す。
図6】レペルタキシン治療法は、FAS/FASリガンドのシグナル伝達によって媒介されるバイスタンダー効果を誘導して、レペルタキシン治療法によって誘導された細胞成長抑制は、FAS拮抗薬の追加によって部分的に救助され、FAS作用薬で治療された細胞は、レペルタキシンで治療された細胞と同様の細胞成長抑制を示すことを特異的に示す。
図7】レペルタキシン(7B)の存在下でのFAKの活性化、AKTおよびFOXOA3のレペルタキシン治療(7A)無しでの活性化を示す。
図8】1つの乳癌細胞株(8A、SUM159)および異なる患者(8B、MC1、8C、UM2、および8D、UM3)から生成した3つの人体乳癌異種移植でのレペルタキシン、ドセタキセル、またはその併用の効果を示す。
図9】SUM159(9A)、MC1(9B)、UM2(9C)、UM3(9D)を含む種々の細胞株でALDEFLUOR検定によって評価された癌幹細胞集団における、レペルタキシン、ドセタキセル、またはその併用の効果を示す。
図10】第2のNOD−SCIDマウスの乳房脂肪体に移植された第1の腫瘍(10A。SUM159、10B。MC1、10C。UM2、10D。UM3)の連続希釈法でのレペルタキシン、ドセタキセル、またはその併用の効果を示す。
図11】レペルタキシン治療法は、SUM159細胞株の転移能を低下させることを示す。図11Aは、心臓内に投与されたSUM159細胞での接種に続いて、一週間間隔で測定された標準光子束の定量化を示す。転移形成は、生物発光画像法を使用してモニターされた。(11B:生理食塩水で処理されたマウス、11C:レペルタキシンで処理されたマウス)。
図12】SUM159細胞のALDEFLUOR陽性サブ集団とCXCR1陽性サブ集団(上位)またはCXCR2陽性サブ集団(下位)との間の重複表現を示す。B−C.SUM159細胞は、付着条件で培養され、レペルタキシン(100nM)またはCXCR1またはCXCR2に対する2つの特定の遮断抗体(10μg/mL)(10μg/mL)で処理される。3日後、癌幹細胞集団における効果は、ALDEFLUOR検定(B)を使用して分析され、細胞生存能力は、MTT検定(C)を使用して処理5日後に評価された。ALDEFLUOR陽性集団および細部生存能力の著しい低下が、レペルタキシンまたは抗CXCR1抗体での治療に続いて観察された。対照的に、抗CXCR2抗体では著しい効果は観察されなかった。D.治療から4日後、アポトーシスを起こした細胞の数は、TUNEL検定を利用して評価された。ほとんどの生存細胞(青に染色)が存在した対照に比較して、36%のアポトーシスを起こした細胞(緑に染色)が、レペルタキシン治療細胞で検出された。E−F.細胞死はバイスタンダー効果に媒介されたものかどうかを決定すること。CXCR1陽性およびCXCR1陰性集団は、フローが分類され、種々の濃度のレペルタキシン(D)で治療されたそれぞれの集団であった。CXCR1陽性および分類されていない集団での細胞生存能力の低下が検出された一方で、CXCR1陰性集団(E)内では効果が観察されなかった。レペルタキシンで3日間治療されたCXCR1陽性細胞からの透析培養(dCM)は、分類されたCXCR1陽性、CXCR1陰性、または分類されていない集団を治療するために利用された。透析培養の連続希釈が利用された(対照、dCM1/4、dCM1/2、dCM3/4、dCM)。治療の2日後、細胞生存能力は、MTT検定を利用して評価された。細胞生存能力の大幅な低下が、CXCR1陰性および分離されていない集団の両方で観察された一方で、CXCR1陽性集団(F)内では、効果が観察されなかった。
図13】SUM159細胞株からのALDEFLUOR陽性/CXCR1陽性およびALDEFLUOR陽性/CXCR1陰性細胞集団の腫瘍形成能を示す。A.腫瘍成長曲線は、接種された異なる細胞数(50,000細胞、5,000細胞、1,000細胞、および500細胞)およびそれぞれの集団(ALDEFLUOR陽性/CXCR1陽性、ALDEFLUOR陽性/CXCR1陰性)をプロットした。両方の細胞集団は、腫瘍を生成した。腫瘍成長速度は、腫瘍形成の潜伏かつ規模ならびに接種細胞の数に関連付けられる。B−C.ALDEFLUOR陽性/CXCR1陽性集団によって生成された腫瘍は、連続継代で当初の腫瘍の表現型の不均一性を再構成したが、ALDEFLUOR陽性/CXCR1陰性集団はALDEFLUOR陽性/CXCR1陰性細胞のみを含む腫瘍を生じさせた。我々は、両細胞集団を3つの継代に移植した。
図14】腫瘍球形成におけるCXCR1遮断の効果を示す。SUM159およびHCC1954細胞は、付着条件で培養され、3日間、レペルタキシン(100nM)、抗CXCR1遮断抗体(10μg/mL)、または抗CXCR2遮断抗体(10μg/mL)で処理された。処理の3日後、細胞は切り離されて懸濁液で培養された。培養から5日後に形成された腫瘍球の数が、評価された。レペルタキシンおよび抗CXCR1−処理条件で、対照と比較して第1および第2の腫瘍球形成の著しい低下という同様の結果が両方の細胞株で観察された。対照的に、抗CXCR2遮断抗体は、腫瘍球形成に何の効果も無かった。
図15】SUM159、HCC1954、およびMDA−MB−453細胞株の細胞生存能力におけるレペルタキシン治療の効果を示す。3つの異なる細胞株(SUM159、HCC1954、MDA−MB−453)は、付着条件で培養され、レペルタキシン(100nM)で処理された。細胞生存能力は、MTT検定を使用した処理の1日、3日、および5日後に評価された。SUM159およびHCC1954細胞株の処理の3日後に、細胞生存能力の低下が観察された。しかし、レペルタキシンは、MDA−MB453細胞の生存能力に影響しなかった。
図16】インビトロのALDEFLUOR陽性集団におけるCXCR1遮断の効果を示す。A−B.HCC1954(A)およびMDA−MB−453(B)細胞は、付着条件で培養され、レペルタキシン(100nM)、またはCXCR1もしくはCXCR2に対する2つの特定の抗体(それぞれ10μg/mLまたは10μg/mL)で処理された。3日後、癌幹細胞集団における効果は、ALDEFLUOR検定を使用して分析された。HCC1954では、ALDEFLUOR陽性集団および細部生存能力の著しい低下が、レペルタキシンまたは抗CXCR1抗体での治療に続いて観察された。対照的に、抗CXCR2抗体(A)では著しい効果は観察されなかった。MDA−MB−453では、ALDEFLUOR陽性集団において何の効果も観察されなかった(B)。
図17】FAS/FASリガンドのシグナル伝達によって媒介されるバイスタンダー効果を誘導するレペルタキシン治療法を示す。A.レペルタキシン治療法によって誘導されたバイスタンダー殺傷効果がFAS−リガンドによって媒介されたかを決定するために、培地の可溶性FASリガンドのレベルが、ELISA検定を利用して測定された。治療法から4日後、治療していない対照に比較して、可溶性FASリガンドの4倍を超える増加がレペルタキシンで治療した細胞の培養で検出された。B.FASリガンドmRNAのレベルは、RT−PCRで測定され、レペルタキシンでの治療法後に、FASリガンドの産出が増加することが確認された。FASシグナル伝達を活性化させるFAS作用薬で治療法の4日後に、対照と比較してFASリガンドmRNAの増加が5倍になるという同様の結果が観察された。C.SUM159細胞は付着条件で培養され、レペルタキシン単独で、または抗FASリガンドと併用して処理された。レペルタキシン処理で誘導される細胞成長抑制は、抗FASリガンドの追加によって部分的に救助された。FAS作用薬で処理された細胞は、レペルタキシン単独で処理された細胞と同様の細胞成長抑制を示した。D−E.CXCR1陽性およびALDEFLUOR陽性集団におけるレペルタキシン処理単独、または抗FASリガンドと併用で、ならびに、FAS作用薬の治療の効果が分析された。レペルタキシン治療法によって誘導されたCXCR1陽性およびALDEFLUOR陽性集団における大幅な減少は、抗FASリガンドによって救助されず、CXCR1陽性およびALDEFLUOR陽性集団の割合をそれぞれ10倍および3倍増加させた。
図18】CXCR1陽性およびCXCR1陰性細胞におけるFAS作用薬の効果を示す。CXCR1陽性およびCXCR1陰性集団はフローが分類され、各集団は種々の濃度のFAS作用薬で処置された。CXCR1陰性および分類されていない集団内の細胞生存能力の低下は検出されたが、CXCR1陽性集団内では何の効果も観察されなかった。
図19】正常乳腺幹/前駆集団でのCXCR1タンパク質発現およびマンモスフィア形成におけるIL−8治療法の効果の分析を示す。A.整復乳房形成から単離された正常乳房上皮細胞からのALDEFLUOR陽性および陰性集団は、FACSによって単離され、固定され、そして免疫染色およびFACS分析によってCXCR1タンパク質の発現について分析された。ALDEFLUOR陽性細胞は、ALDEFLUOR陰性集団に比較して、CXCR1陽性細胞内で高度に濃縮されていた。B−C.マンモスフィア形成におけるIL8治療法の効果。IL8治療法は、用量依存的に、第1のマンモスフィアの形成(B)および第2のマンモスフィアの形成(C)を増加させた。
図20】正常乳房上皮細胞におけるレペルタキシン治療法の効果を示す。A.整復乳房形成から単離された正常乳房上皮細胞は、付着条件で培養され、レペルタキシン(100nMまたは500nM)またはFAS作用薬(500ng/mL)で処理された。処理の5日後細胞生存能力は、MTT検定を使用して評価された。レペルタキシン治療法またはFAS作用薬は、高濃度のレペルタキシン(500nM)が利用された時でさえ、付着条件で培養された正常乳房上皮細胞の生存能力に何の効果も無かった。B.可溶性FAS−リガンドのレベルは、レペルタキシンで処理された正常乳房上皮細胞の培地内でElisa検定によって評価された。処理の4日後、可溶性FAS−リガンドの増加は、処理細胞から培養において検出された。C.FACS分析による正常乳房上皮細胞内のFAS/CD95発現の分析。FAS/CD95発現は、付着条件で培養された正常乳房上皮細胞内で検出されなかった。D.マンモスフィア形成におけるレペルタキシン治療法の効果。正常乳房上皮細胞は、付着条件で培養され、レペルタキシン(100nM)で4日、8日、11日、および15日間処理された。レペルタキシン治療法の後、細胞は分離され、懸濁液内で培養された。マンモスフィアを引き起こす細胞の著しい減少は、レペルタキシン処理条件において観察された。
図21】FAK、AKT、およびFOXO3a活性化におけるレペルタキシン治療法の効果を示す。CXCR1下流シグナル伝達におけるレペルタキシン治療法の効果を評価するために、2つの異なるウイルス構築物が利用され、1つは、PTEN−siRNAを通じてPTEN発現をノックダウンし、もう1つはFAKの過剰発現(Ad−FAK)を引き起こす。A.SUM159対照、SUM159PTEN−siRNA、およびSUM159Ad−FAK細胞は、100nMのレペルタキシンが存在するまたは存在しない付着条件で2日間培養され、FAK/AKT経路の活性化は、ウエスタンブロット法によって評価された。PTEN欠失およびFAK過剰発現がFAKおよびAKT活性におけるレペルタキシン治療法の効果を遮断したが、レペルタキシン治療法は、FAK Tyr397およびAKT Ser473リン酸化反応の減少を引き起こした。B.CXCR1陽性細胞において免疫蛍光染色を利用して、レペルタキシン治療法が、ホスホFAKの消失(赤に膜質染色)およびホスホAKT発現(赤に細胞質染色)という結果になることを確認した。抗FOXO3Aでの免疫蛍光染色は、未処理細胞内のFOXO3aの細胞質の位置を(赤に)明らかにし、一方で、レペルタキシン治療法が核へFOXO3Aの再度の位置決めを誘導した。対照的に、PTEN欠失またはFAK過剰発現の細胞は、レペルタキシン処理および未処理細胞の両方で、高レベルのホスホFAK、ホスホAKT、および細胞質FOXO3Aの発現を示す。全ての試料で、核は、DAPIで対比染色された(青に)。C−D.SUM159PTEN−siRNAおよびSUM159Ad−FAK細胞生存能力、ならびに癌幹細胞集団におけるレペルタキシンの効果は、MTTおよびALDEFLUOR検定を利用して、それぞれ評価された。処理の3日後、PTEN欠失またはFAK過剰発現の細胞は、レペルタキシン(C)への抵抗力を向上した。レペルタキシン治療法は、ALDEFLUOR陽性SUM159PTENノックダウン細胞の割合を変更しなかった(D)。
図22】HCC1954およびMDA−MB−453細胞株内のFAK/AKT活性におけるレペルタキシン治療法の効果を示す。CXCR1下流シグナル伝達におけるレペルタキシン治療法の効果を評価するために、PTEN−siRNAを通じてPTEN発現をノックダウンする、レンチウイルス構築物を利用した。A.HCC1954対照およびHCC1954PTEN−siRNA細胞は、100nMのレペルタキシンが存在するまたは存在しない付着条件で2日間培養され、FAK/AKT経路の活性化は、ウエスタンブロット法によって評価された。PTEN欠失が、FAKおよびAKT活性におけるレペルタキシン治療法の効果を遮断したが、レペルタキシン治療法は、FAK Tyr397およびAKT Ser473リン酸化反応の減少を引き起こした。B.レペルタキシン治療法は、PTEN変異体を寄生させるMDA−MB−453細胞株の細胞生存能力に何の影響も無かった。ウエスタンブロット分析を利用することで、FAK/AKT経路は、レペルタキシン治療法によって摂動されなかったことを確認した。
図23】MTT検定を利用して評価された、HCC1954PTEN−siRNA細胞の生存能力におけるレペルタキシンの効果を示す。治療法の3日後、PTEN欠失の細胞は、レペルタキシンへの抵抗力を向上した。
図24】ドセタキセルまたはレペルタキシン治療法が定量RT−PCRによって測定された後の、FAS−リガンドおよびIL−8mRNAの発現を示す。A−B.付着条件で培養されたSUM159細胞は、レペルタキシン(100nM)、FAS作用薬(500ng/mL)またはドセタキセル(10nM)で処理された。処理の3日後、細胞は収集され、RNA抽出された。ドセタキセルは、SUM159細胞内のFAS−リガンド(A)およびIL−8(B)mRNAを誘導した。IL−8mRNAレベルの4倍の増加は、FAS作用薬またはドセタキセル治療法(B)の後に検出された。
図25】3つの異なる乳癌異種移植のPTEN/FAK/AKT活性の評価を示す。ウエスタンブロット分析は、FAK Tyr397およびAKT Ser473リン酸化反応で示されるように、両異種移植がPTENの発現およびFAK/AKT経路の活性化を提示することを明らかにした。
図26】インビボの乳癌幹細胞集団におけるレペルタキシン治療法の効果を示す。A−C.インビボで腫瘍の成長および癌幹細胞集団におけるレペルタキシン治療法の効果を評価するために、乳癌細胞株(SUM159)および異なる患者(MC1、UM2、UM3)から生成された3つのヒト乳癌異種移植が利用された。A.試料それぞれにおいて、50,000細胞は、NOD/SCIDマウスのヒト化乳房脂肪体および観察された腫瘍サイズに注射された。腫瘍が約4mmの時、レペルタキシンの皮下注射(15mg/Kg)を1日に2回28日間、または一週間に1度ドセタキセルの腹腔内注射(10mg/Kg)、またはその併用(レペルタキシン/ドセタキセル)が開始された。グラフは、示された治療法(矢印は、治療法の開始)の事前、経過中それぞれの腫瘍サイズを示す。ドセタキセル単独で、またはレペルタキシン/ドセタキセルと併用して処置された群で、対照に比較して、それぞれの試料で統計的に優位な腫瘍サイズの縮小という、同様の結果が観察されたが、対照の腫瘍とレペルタキシン単独で処置された腫瘍の成長との間には違いが観察されなかった。B−C.ALDEFLUOR検定(B)、および第2のマウス(C)への再移植によって評価される、癌幹細胞集団におけるレペルタキシン、ドセタキセル、またはそれらを併用した治療法の評価。ドセタキセル処理の腫瘍異種移植は、対照に比較して、ALDEFLUOR陽性細胞の同一または高い割合を示し、レペルタキシン治療法単独で、またはドセタキセルとの併用で、対照に比較して(B)、統計的に有意な減少である、癌幹細胞内のALDEFLUOR陽性細胞の65%〜85%の減少を生じさせた(p<001)。第1の腫瘍、未処理(対照)、および処理マウスから得られた細胞の連続希釈物は、さらなる処理が行われない第2のNOD/SCIDマウスの乳房脂肪体内に移植された。対照およびドセタキセル処置された第1の腫瘍は、全ての希釈において第2の腫瘍を形成し、レペルタキシンまたはドセタキセルとの併用で処置された第1の腫瘍から得られたより多い細胞のみが、腫瘍を形成することができた。さらに、腫瘍の成長は著しく遅延し、結果としてできた腫瘍は、対照またはドセタキセル処理された腫瘍(C)に比べ著しく小さかった。D.それぞれの群から異種移植片が収集され、免疫組織化学染色が、ホスホFAK、ホスホAKT、FOXO3A、およびALDH1の発現を検出するために行われた。膜質のホスホFAK発現および細胞質のホスホAKT発現(矢印)は、対照およびドセタキセル処理された腫瘍内で検出されたが、レペルタキシン単独で、またはドセタキセルとの併用で処置された腫瘍内では何の発現も検出されなかった。細胞核FOXO3Aの発現(茶色で)は、ドセタキセル、またはレペルタキシン単独で、またはそれらの併用で処置された細胞内で検出された。ALDH1発現(矢印)の減少は、対照およびドセタキセル処理された腫瘍と比較して、レペルタキシン単独で、または併用で処理された腫瘍内で検出された。
図27】インビボの乳癌幹細胞集団におけるレペルタキシン治療法の効果を示す。A−C.インビボの腫瘍の成長および癌幹細胞集団におけるレペルタキシン治療法の効果を評価するために、乳癌細胞株(SUM159、A)および3つのヒト乳癌異種移植片が異なる患者から生成された。それぞれの試料で、50,000細胞は、NOD/SCIDマウスのヒト化乳房脂肪体に注射され、腫瘍サイズを観察された。腫瘍が約4mmの時、レペルタキシンの皮下注射(15mg/Kg)を1日に2回28日間、または一週間に1度ドセタキセルの腹腔内注射(10mg/Kg)、またはその併用(レペルタキシン/ドセタキセル)が、開始された。グラフは、示された治療法(矢印は、治療法の開始)の事前、経過中それぞれの腫瘍サイズを示す。ドセタキセル単独で、またはレペルタキシン/ドセタキセルの併用で処置された群で、対照に比較して、それぞれの試料で統計的に優位な腫瘍サイズの縮小という、同様の結果が観察されたが、対照の腫瘍とレペルタキシン単独で処置された腫瘍の成長との間には違いが観察されなかった。癌幹細胞集団におけるレペルタキシン、ドセタキセル、またはそれらを併用した治療法の評価は、ALDEFLUOR検定および第2のマウスへの再移植によって評価された。ドセタキセル処理の腫瘍異種移植片は、対照に比較して、ALDEFLUOR陽性細胞の同一または高い割合を示し、レペルタキシン治療法単独で、またはドセタキセルとの併用で、対照に比較して、統計的に有意な減少である、癌幹細胞内のALDEFLUOR陽性細胞の65%〜85%の減少を生じさせた(p<001)。第1の腫瘍、未処理(対照)、および処理マウスから得られた細胞の連続希釈物は、さらなる処理が行われない第2のNOD/SCIDマウスの乳房脂肪体内に移植された。対照およびドセタキセル処理した第1の腫瘍は、全ての希釈物において第2の腫瘍を形成したが、レペルタキシンまたはドセタキセルとの併用で処理された第1の腫瘍から得られたより多い細胞のみが、腫瘍を形成することができた。腫瘍の成長は著しく遅延し、結果としてできた腫瘍は、対照またはドセタキセル処理された腫瘍に比べ著しく小さかった。
図28】CD44+/CD24−表現型によって評価される乳癌幹細胞集団におけるレペルタキシン治療法の効果を示す。A−B.癌幹細胞集団における、レペルタキシン、ドセタキセル、またはそれらの併用の治療法の評価は、CD44+/CD24−細胞の存在によって評価された。ドセタキセル単独で処置された残留腫瘍において、我々は一貫してCD44+/CD24細胞の変化のないまたは上昇した割合を観察し、レペルタキシン治療法単独で、またはドセタキセルとの併用は、CD44+/CD24−細胞集団の減少を引き起こした。A.UM3異種移植片のフローチャート分析が示されている。B.MC1、UM2、およびUM3で同一の結果が観察された。ほぼ全てのSUM159細胞は、全ての治療法条件の下でCD44+/CD24−である。
図29】レペルタキシン治療法は、全身転移の進行を低下させることを示す。転移形成HCC1954(A)、SUM159(B)、MDA−MB−453(C)におけるレペルタキシン治療法の効果を評価するために、乳癌細胞株は、発光酵素を発現するレンチウイルスに感染させられ、心臓内の注射を通じてNOD/SCIDマウスに、250,000の発光酵素感染細胞を接種された。マウスは、心臓内の注射の12時間後に、28日間、1日に2回、生理食塩水の皮下注射またはレペルタキシンの皮下注射(15mg/kg)で処理された。転移形成は、生物発光画像法を使用して観察された。接種に続いて一週間間隔で測定された標準光子束の定量化は、HCC1954またはSUM159細胞を接種されるマウスの生理食塩水の対照に比較して、レペルタキシン内の転移形成において、統計的に有意な減少を明らかにした(A〜B)。対照的に、レペルタキシン治療法は、MDA−MB−453細胞を注射されたマウスについての転移形成において、何の効果も無かった(C)。レペルタキシンによって処置されないマウスから得られる骨および軟組織への転移について、H&E染色法による組織学的確認(D)。
図30】化学療法単独で、またはレペルタキシンとの併用で処置された、癌幹細胞のIL−8/CXCR1シグナル伝達を示す。A.癌幹細胞の潜在IL−8/CXCR1細胞シグナル伝達の表現。IL−8結合に続くCXCR1活性化は、焦点接着キナーゼ(FAK)のリン酸化反応を誘導する。活性FAKはAKTをリン酸化し、WNT経路を活性化するが、幹細胞の自己再生および細胞生存を制御するFOXO3Aを制御する。 FAKの活性化は、FASシグナル伝達の下流エフェクターであるFADDを抑制することによるFAS−リガンド/FAS媒介バイスタンダー効果から癌幹細胞を保護する。化学療法の存在において、大量の腫瘍細胞のみが、この処理に感受性があり、アポトーシスプロセス中、高レベルのIL−8およびFASリガンドタンパク質を放出する。乳癌幹細胞は、IL−8媒介バイスタンダー効果を通じて刺激され、FASリガンドを通じて媒介されるバイスタンダー殺傷効果に耐性がある。B.レペルタキシン治療法は、IL−8/CXCR1シグナルを遮断し、乳癌幹細胞自己再生および生存を抑制する。レペルタキシン治療法は、化学療法と併用される時、癌幹細胞は、FASリガンドによって媒介されるバイスタンダー殺傷効果に感作される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔定義〕
本発明の理解を促すために、いくつかの用語およびフレーズを以下で定義する。
【0025】
本明細書における、「抗癌剤」「先行抗癌剤」、または「癌治療薬」という用語は、(例えば、哺乳類の)癌の治療法に使用される、任意の治療薬(例えば、化学療法化合物および/または分子治療化合物)、放射線治療、または外科的処置を指す。
【0026】
本明細書における、「薬」および「化学療法剤」という用語は、生理学システム(例えば、対象、または、インビボ、インビトロ、またはエクスビボの細胞、組織、および器官)での、疾病または病状の診断、処置、または予防に使用される薬理学的に活性な分子を指す。薬は、生体、組織、細胞、または薬が投与されているインビトロシステム内の生理機能を決定する作用をする。「薬」および「化学療法剤」という用語は、抗過剰増殖性および抗腫瘍性の化合物ならびに他の生体治療化合物を含むよう意図されている。
【0027】
「有効量」は、薬効または所望の結果に十分な量である。有効量は、1つもしくは複数の投与で投与され得る。
【0028】
本明細書における、「投与」という用語は、生理学的システム(例えば、対象、または、インビボ、インビトロ、またはエクスビボの細胞、組織、および器官)へ薬、プロドラッグ、抗体、または他の剤、または治療的処置を与える行為を指す。人体への典型的な投与経路は、眼(眼の)、口(口腔の)、肌(経皮性の)、鼻(鼻の)、肺(吸入抗原)、口腔粘膜(頬内の)、耳を通じて、注射(例えば、静脈に、皮下に、腫瘍内に、腹腔内に、等)および類似の方法であり得る。
【0029】
「同時投与」は、生理学的システム(例えば、対象、または、インビボ、インビトロ、またはエクスビボの細胞、組織、および器官)への複数の化学剤または治療法(例えば、放射線療法)の投与を指す。それぞれの化学剤(例えば、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬および追加の化学療法)の「同時投与」は、同時に実行、または任意の時間的順序で、または物理的な併用であってよい。
【0030】
本明細書における、「退行」という用語は、疾病の対象、細胞、組織、または器官が、基礎の非病原性の典型的な患者、細胞、組織、または器官に比較して、非病理、または病理まではいかない状態に戻ることを指す。例えば、腫瘍の退行は、腫瘤の縮小ならびに1つまたは複数の腫瘍の完全な消滅を含む。
【0031】
本明細書における、「インビトロ」という用語は、人工環境および人工環境内で発生するプロセスまたは反応を指す。インビトロ環境は、試験管および細胞培養が含まれるがそれらに限定されない。「インビボ」という用語は、自然環境(例えば、動物または細胞)および自然環境内で発生するプロセスまたは反応を指す。
【0032】
本明細書で使用される、「細胞培養」という用語は、任意のインビトロ細胞培養を指す。この用語内には、連続的な細胞株(例えば、不死の表現型の)、第1の細胞培養、有限細胞株(例えば、非形質転換細胞)、および卵母細胞および胚を含むインビトロで維持される、任意の他の細胞集団を含む。
【0033】
本明細書で使用される、「対象」または「患者」という用語は、本発明の方法で処置される有機体を指す。かかる有機体は、人間および獣医動物(犬、猫、馬、豚、牛、羊、山羊、および類するもの)が含まれるがそれらに限定されない。本発明の文脈内では、「対象」または「患者」という用語は、概して治療法を受けるまたは受けた個人を指す。
【0034】
本明細書で使用される、「診断された」という用語は、その兆候および症状、または遺伝分析、病理学分析、組織学分析、およびその類似のものによる疾病の認識を指す。
【0035】
本明細書で使用される、「抗センスの」という用語は、特定のRNA配列(例えば、mRNA)と補完的な核酸配列(例えば、RNA、ホスホロチオエートDNA)を指す。本発明の定義内では、遺伝子発現、例えば、siRNAまたはマイクロRNA等、を制御する分子を含む、自然または合成の抗センスRNA分子が含まれる。本発明によって使用されるかもしれない抗センスの配列の1タイプは、CXCR1 mRNAに対して特異的なタイプである。
【0036】
用語「検査化合物」または「化合物候補」は、任意の化学物質、調剤、薬、および類するものであって、疾患、疾病、病気または身体機能の不調を治療または予防し、そうでなければ試料の生理学的状態または細胞の状態を変えるのに使用され得るものを指す。検査化合物は、既知および潜在治療化合物の両方を含む。検査化合物は、本発明のスクリーニング法を使用して治療的であるかを決定され得る。「よく知られた治療化合物」は、かかる治療法または予防法に効果的であることを示されている(例えば、動物実験または人体に投与する先行経験を通じて)治療化合物を指す。好適な実施形態では、「検査化合物」は、抗癌剤である。特に好適な実施形態では、「検査化合物」は、細胞にアポトーシスを誘導する抗癌剤である。
【0037】
本明細書で使用される、「抗原結合タンパク質」という用語は、特定の抗原に結合するタンパク質を指す。「抗原結合タンパク質」は、多クローン性の、単クローン性の、キメラの、単一鎖の、およびヒト化抗体を含む免疫グロブリン、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、およびFab発現ライブラリが含まれるがそれらに限定されない。先行技術でよく知られている種々の手続きは、多クローン性の抗体の生成に使用される。抗体の生成のために、ウサギ、マウス、ラット、羊、ヤギ、等が含まれるがそれらに限定されない種々の宿生動物は、所望のエピトープに応じたペプチド注射により免疫を与えられ得る。好適な実施形態では、ペプチドは、免疫原生担体(例えば、ジフテリアトキソイド、ウシ血清アルブミン(BSA)、またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH))に接合される。フロイント(完全および不完全)、ゲル状鉱物、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコルネバクテリウム・パルバムが含まれるがそれらに限定されない種々のアジュバントは、宿主動物種に応じて免疫反応を増大させるのに使用される。
【0038】
単クローン性の抗体の調製のために、培養内の連続的な細胞株によって抗体分子の生成を提供する任意の技術が、使用されてよい(参照例、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)。これらは、当初にKohlerおよびMilstein(Kohler and Milstein,Nature,256:495−497(1975))によって開発されたハイブリドーマ技術、ならびにトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(参照例、Kozbor et al,Immunol.Today,4:72(1983))、およびヒト単クローン性の抗体を生成するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole et al,in Monoclonal Antibodies
and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96(1985))を含むがそれらに限定されない。
【0039】
本発明に関し、単一鎖の抗体の生成について記述された技術(米国特許第4,946,778号、参照によって本明細にその内容が組み込まれる)は、要望どおり特定の単一鎖の抗体を生成するために適合され得る。本発明の追加の実施形態は、Fab発現ライブラリの構築のための当分野でよく知られた技術(Huse et al,Science,246:1275−1281(1989))を使用して、所望の特異性をもつ単クローン性のFabフラグメントを迅速かつ容易に識別することを可能にする。
【0040】
抗体分子のイディオタイプ(抗原結合領域)を含む抗体フラグメントは、よく知られた技術によって生成され得る。例えば、かかるフラグメントは、抗体分子のペプシン消化によって生成され得るF(ab’)2フラグメント、F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋の低減によって生成され得るFab’フラグメント、およびパパインおよび還元剤で抗体分子を処置して生成され得るFabフラグメントが含まれるがそれらに限定されない。
【0041】
抗原−結合タンパク質をコードする遺伝子は、当分野でよく知られる方法によって単離され得る。抗体の生成において、所望の抗体のスクリーニングは当分野でよく知られる技術(例えば、放射性免疫分析、ELISA(酵素免疫吸着法)、「サインドイッチ」免疫学的検定、免疫放射定量測定法、ゲル内沈降反応、免疫拡散法検定、その場免疫学的検定(例えば、コロイド金、酵素、または放射性同位元素標的を使用して)、ウエスタンブロット法、沈降反応、凝集反応(例えば、ゲル凝集反応、血球凝集反応等)、補体結合検定、免疫蛍光検査法、タンパク質A検定、および免疫電気泳動法等)等によって完遂され得る。
【0042】
本明細書で使用される、「調節する」という用語は、細胞機能面に作用する(例えば、促進または遅延させるために)化合物の活動を指し、細胞機能は、細胞成長、増殖、浸潤、血管形成、アポトーシス、および類するものが含まれるがそれらに限定されない。
【0043】
〔発明を実施するための形態〕
本発明は、IL8−CXCR1経路阻害剤(例えば、抗CXCR1抗体またはレペルタキシン)単独で、または追加の化学療法剤との併用で投与することで対象内の非腫瘍原性および腫瘍原性の癌細胞が死滅する癌治療法を提供する。本発明は、患者(例えば、CXCR1またはFBXO21の存在に基づく)の固形腫瘍幹細胞の存在を治療し、診断する組成物および方法も提供する。
【0044】
(I.腫瘍原性の癌細胞、ALDH、CXCR1、およびCXCR1抑制)
正常細胞の完全に変態したものへの進行は、複数細胞プロセス(1、2)の脱制御を要求する。発癌の古典モデルによると、この現象は任意の細胞に生じ得る。対照的に、「癌幹細胞仮説」は、発癌性形質転換の選択的標的は、獲得した自己再生潜在能力(3−6)を有する組織幹または初期前駆細胞であることを支持する。これら「腫瘍形成細胞」または「癌幹細胞」(CSC)は、次に、自己再生という、腫瘍細胞の不均質性に貢献する腫瘍形成および分化を駆動するプロセスを経験する能力によって特徴付けられる。癌幹細胞仮説を支持する最新の知見は、第1のヒト腫瘍の異種移植片を利用して生成された。これらの研究は、腫瘍は、癌幹細胞成分によって駆動される細胞階層で構成されることを示唆した。さらに、最新のデータは、マウスおよびヒト組織の両方から得られた不死化細胞株は、幹細胞特性を示す細胞集団も含むかもしれないことを示唆する。これらの研究の大部分は、クローン原生、球体形成、および多分化能(7−10)を含むインビトロ特性に基づく。異種移植に不死化細胞株の機能移植を利用するさらに限定された研究は、かかる階層の存在も提示してきた。これらの研究は、一般的に、いわゆる「サイド集団」(SP)(7、9、11)を識別するためにヘキスト色素の排除を利用してきた。さらに、第1の腫瘍異種移植片、例えばCD44およびCD133等を使用して画定された細胞表面マーカーは、定着した細胞株(7、8)内の類似の集団を識別するのにも利用された。
【0045】
下記実施例で記載されるように、幹細胞マーカー、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)の発現は、ヒト乳癌および非形質転換乳腺細胞から得られた一連の33の細胞株内で研究された。ALDHは、細胞内アルデヒドの酸化に関与する解毒酵素であり、レチナールのレチノイン酸(12、13)への代謝を通じて幹細胞分化の役目を果たすと考えられている。蛍光ALDEFLUOR検定によって評価されるALDH活動は、複数の骨髄腫および急性骨髄性白血病(AML)内、ならびに脳腫瘍(14−16)から癌幹細胞を単離するのに首尾よく利用された。ALDH活動は、正常ヒト乳房組織および乳癌(17)から幹細胞特性を表す細胞のサブ集団を単離するのに使用され得ることが、最近証明された。整復乳房形成組織から単離されたALDEFLUOR陽性集団は、ヒト化NOD/SCIDマウスの乳房脂肪体に管状胞状構造を再構成することができる。さらに、ヒト乳癌から単離されたALDELFUOR陽性細胞は、NOD/SCIDマウスの連続継代に腫瘍を再構築ならびに当初の腫瘍(17)の表現型の不均一性を生成させる能力によって証明されたように幹細胞特性を有する。以下の実施例では、乳癌細胞株の大部分は、癌幹細胞特性を示す明確な分子プロファイルのALDEFLUOR陽性集団を含むことが証明されている。
【0046】
以下の実施例に記載のように、本発明の実施形態の進展中に実施された作業は、CXCR1(炎症ケモカインIL8の受容体である)を癌幹細胞マーカーとして識別した。ALDEFLUOR陽性集団内の細胞のみがCXCR1を発現した。さらに、この受容体は、ALDEFLUORおよび球状形成検定で決定されたように、組み換え型IL8が細胞株内の幹細胞割合を増加させることができる機能的役割を果たすことが証明された。IL8は、進行性乳癌に関連付けて報告されており、転移性疾患の女性の血清において高くなるが、本発明は、IL8と幹細胞のその受容体CXCR1との間の機能的結びつきを初めて示すと信じられる。
【0047】
以下の実施例でさらに記載されるように、これらの細胞内のCXCR1受容体を遮断することで、癌幹細胞を選択的に標的とすることができることが証明された。実施例で記載される1つのアプローチでは、乳癌細胞株は他のIL8受容体CXCR2ではなくCXCR1に対する単クローン性の抗体で処置される、。かかる処置は、縮小したALDEFLUOR陽性集団によって証明されたように癌幹細胞を選択的に標的とした。注目すべきことに、CXCR1は細胞のごくわずかな割合(例えば、1%未満)にのみ発現するが、CXCR1受容体のその遮断が、CXCR1受容体が欠けているという事実にもかかわらず、他の癌細胞の大部分に細胞死を誘導したということが判明した。癌幹細胞上のIL効果を媒介し、他の細胞を殺傷するこのいわゆる「バイスタンダー効果」を説明する分子経路は、解明されてきている。IL8は、CXCR1に結合することで幹細胞自己再生を刺激し、CXCR1は次に焦点接着キナーゼFak経路を活性化する。これは、幹細胞自己再生を駆動するAktの活性化をもたらす。この経路が癌幹細胞内で遮断される時、Aktシグナル伝達の減少がFasリガンドの合成の増加をもたらすFoxo転写因子の細胞質の隔離を引き起こす。Fasリガンドは、癌幹細胞から分泌され、Fas受容体を含む周囲の細胞に細胞死を誘導する。
【0048】
本発明は、任意の具体的な機構に限定されるものではなく、機構の理解は本発明の実践に必要ではないが、CXCR1は、FakおよびAktを含む経路を通じて癌幹細胞自己再生を媒介し、この経路の遮断が癌幹細胞ならびに周囲の腫瘍細胞の細胞死を誘導すると信じられている。このように、特定の実施形態では、本発明は、癌を治療するためにIL8−CXCR1経路(例えば、抗CXCR1抗体、抗FAK抗体、または他の剤と共に)を分離させるための組成物および方法を提供する。
【0049】
IL8は、組織炎症を伴うケモカインなので、従来の関心は、IL8シグナル伝達の阻害剤を開発することにあった。低分子阻害剤、レパルタキシンは、心筋梗塞および脳卒中の合併症を潜在的に減少させるための抗炎症性剤として開発されてきた。レパルタキシンは、フェーズIおよびフェーズII臨床試験に導入され、ほぼ毒性がないことを示した。下記の実施例で示されるように、レパルタキシン(抗CXCR1抗体のように)は、癌幹細胞を標的にすること、ならびに、周囲の細胞においてバイスタンダー効果によってアポトーシスをfas媒介するFasリガンドを誘導することができる。重要なことに、腫瘍異種移植片内でレパルタキシンは、化学療法の薬効を高める。さらに、化学療法が、選択的に腫瘍の分化した細胞を破壊して腫瘍幹細胞を温存するのと異なり、レパルタキシンは腫瘍幹細胞を標的にすることができる。実施例で示されるように、これは、レパルタキシン処置した腫瘍のALDEFLUOR集団の縮小、およびこれらの処置された腫瘍細胞のマウスにおける第2の腫瘍を形成する能力の減退によって証明された。転移遮断能力におけるレパルタキシンの効果も試験された。腫瘍細胞は、発光酵素で標識化され、実験的転移モデルの心臓内に注射された。腫瘍細胞が導入された1日後、1群の動物は、レパルタキシン単独で、他の群は、治療なしに置かれた。レパルタキシンは、著しく転移の進行を低下させた。
【0050】
本発明は、癌幹細胞を処置する標的としてIL8受容体CXCR1を識別した。低分子阻害剤レパルタキシンは、CXCR1およびCXCR2の両方を抑制する。実施例は、CXCR1は癌幹細胞の最も重要な受容体であることを証明した。さらに、実施例は、確立された癌を効果的に治療することへの細胞傷害性化学療法の失敗は、癌幹細胞を標的とするこの療法の不能のみだけによるものではないかもしれず、さらに、腫瘍細胞傷害性化学療法においてIL8分泌の増加が確認されたことを示す。本実施例は、CXCR1阻害剤の使用は、癌幹細胞を特異的に標的にすることならびに細胞傷害性化学療法によって誘導されるこの細胞のIL8刺激を遮断することを可能にする有利な効果を有していることを示す。
【0051】
IL8−CXCR1経路を標的にすることは、乳癌に限定されるものではなく、それどころか任意のタイプの癌に用いられ得る。好ましくは、癌治療のタイプは、IL8生成の増加の証拠(例えば、化学療法と併せて)があるものである。化学療法剤は、癌細胞のIL8転写を直接制御することを示してきた。パクリタキセルは、IL8転写および卵巣癌、乳癌および肺癌細胞株のIL8転写および分泌を増加させる(Uslu et al,2005,Int.J.Gynecol.Cancer,15:240−245、およびCollins et al,2000,Can.Imm.Immuno.,49:78−84。両方とも参照により本明細書に組み入れられる)。また、乳癌細胞へのアドリアマイシンおよび5−フルオロ−2’ −デオキシウリジンの投与(DeLarco et
al.,2001,Can.Res.61:2857−2861、参照により本明細書に組み入れられる)、口腔の癌細胞への5−FUの追加投与(Tamatani et al.,2004,Int.,J.Can.,108:912:921、参照により本明細書に組み入れられる)、小細胞肺癌細胞へのドキソルビシン追加(Shibakura
et al.,2003,Int.J.Can.,103:380−386、参照により本明細書に組み入れられる)および黒色腫細胞へのダカルバジン投与(Lev et al.,2003,Mol,Can.Ther.,2:753−763、参照により本明細書に組み入れられる)の全てで、CXCL8発現が増加する結果となっている。このように、特定の実施形態では、本発明は、IL−CXCR1を標的にするための、化学療法剤との併用で(例えば、上記参照で言及されたもの等)、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、および食道腺癌が含まれるがそれらに限定されない癌のタイプの対象を治療するための剤を提供する。
【0052】
本発明は、治療される癌のタイプに限定されず、それどころか、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮腫、リンパ管内皮細胞肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、コロン癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄腹腫、黒色腫、神経芽腫、および網膜芽腫が含まれるがそれらに限定されない。
【0053】
(II.固形腫瘍幹細胞癌マーカーの検出)
幾つかの実施形態では、本発明は、幹細胞癌マーカーの発現(例えば、CXCR1、FBXO21、NFYA、NOTCH2、RAD51L1、TBP、および表1からの他のタンパク質)の検出のための方法を提供する。幾つかの実施形態では、発現は直接に測定される(例えば、RNAまたはタンパク質レベルで)。幾つかの実施形態では、発現は組織試料(例えば、生検組織)内で検出される。他の実施形態では、発現は体液(例えば、血漿、血清、全血、粘液、および尿が含まれるがそれらに限定されない)で検出される。
【0054】
本発明はマーカー検出のためのパネルとキットをさらに提供する。幾つかの実施形態では、幹細胞癌マーカーの存在は、対象に予後診断を提供するのに使用される。その提供された情報は、治療法の経過を管理するのにも使用される。例えば、対象が固形腫瘍幹細胞(例えば、CXCR1、FBXO21、NFYA、NOTCH2、RAD51L1、TBP、および表1からの他のタンパク質)を示すマーカーを有することを発見される場合、追加の療法(例えば、放射線治療)が、より効果的と考えられる早い段階(例えば、転移前)で開始され得る。さらに、対象が特定の療法に応じない腫瘍を有することを発見される場合、かかる療法への支出および不都合が回避され得る。
【0055】
幾つかの実施形態では、本発明は、複数のマーカーの分析のためのパネルを提供する(例えば、CXCR1またはFBXO21の併用、およびCD44、CD24、およびESAの少なくとも1つ)。パネルは、発癌および/または転移と関連させる複数のマーカーの同時分析を可能にする。対象によっては、最も可能性のある診断および予後診断を提供するために、パネルは単独で、または併用で分析され得る。下記の例示的な実施例で記載されているものを含むが、それに限定されないパネルに含まれるマーカーは、任意の好適な方法を用いて予測値をスクリーニングすることで選択される。
【0056】
1.RNAの検出
幾つかの実施形態では、固形腫瘍幹細胞癌マーカーの検出は、組織試料中の対応するmRNA発現を測定することで検出される。mRNA発現は、下記のものを含むがそれに限定されない任意の好適な方法によって測定され得る。ヒトCXCR1核酸の受入番号は、NM_000634(参照により本明細書に組み入れられる)およびヒトFBXO21の受入番号は、NM_033624(参照により本明細書に組み入れられる)である。これらの配列は、プライマーおよびプローブ(ならびにsiRNA配列)を設計するのに使用され得る。
【0057】
幾つかの実施形態では、RNAは、ノーザンブロット分析によって検出される。ノーザンブロット分析は、RNAの分離および相補的標識プローブの混成を伴う。
【0058】
さらなる実施形態で、RNA(または対応するcDNA)は、オリゴヌクレオチドプローブへの混成によって検出される。様々な混成および検出技術を使用する様々な混成検定が利用可能である。例えば、幾つかの実施形態では、TaqMan検定(PE Biosystems,Foster City,CA、参照例、米国特許第5,962,233号および5,538,848号のそれぞれが参照により本明細書に組み入れられる)が利用される。この検定は、PCR反応中に実行される。TaqMan検定は、AMPLITAQ GOLD DNAポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を利用する。5’−レポーター色素(例えば、蛍光色素)を持つオリゴヌクレオチドで構成されるプローブおよび3’−消光色素は、PCR反応に含まれている。PCR中、プローブが標的に結合する場合、AMPLITAQ GOLDポリメラーゼの5’−3’核酸分解活動は、レポーターと消光色素との間でプローブを開裂する。消光色素からのレポーター色素の分離は、蛍光の増加をもたらす。このシグナルは、PCRのそれぞれのサイクルで蓄積され、蛍光光度計で観察され得る。
【0059】
まださらなる他の実施形態では、逆転写酵素PCR(RT−PCR)は、RNAの発現を検出するのに使用される。RT−PCR内で、RNAは、逆転写酵素を使用して相補的DNAすなわち「cDNA」に酵素的に変換される。そして、cDNAは、PCR反応のための鋳型として使用される。PCR生成物は、任意の好適な方法によって検出され得、ゲル電気泳動およびDNA特異的染色による染色法または標識プローブへの混成が含まれるがそれらに限定されない。幾つかの実施形態では、米国特許第5,639,606号、第5,643,765号、および第5,876,978号(それぞれが参照により本明細書に組み入れられる)に記載された競争合鋳型法の規格化された混合物による定量的逆転写酵素PCRが利用される。
【0060】
2.タンパク質の検出
他の実施形態では、幹細胞癌マーカーの遺伝子発現は、対応するタンパク質またはポリペプチド(例えば、CXCR1、FBXO21、NFYA、NOTCH2、RAD51L1、TBP、および表1からの他のタンパク質)の発現を測定することで検出される。タンパク質発現は、任意の好適な方法によって検出され得る。幾つかの実施形態では、タンパク質は、免疫組織化学によって検出される。他の実施形態では、タンパク質は、タンパク質に対して引き起こされた抗体に結合することで検出される。ヒトCXCR1タンパク質の受入番号は、NP_000625(参照により本明細書に組み入れられる)であり、ヒトFBXO21の受入番号は、NP_296373(参照により本明細書に組み入れられる)である。抗体の生成は後述する。
【0061】
抗体結合は当分野でよく知られる技術(例えば、放射性免疫分析、ELISA(酵素免疫吸着法)、「サインドイッチ」免疫学的検定、免疫放射定量測定法、ゲル内沈降反応、免疫拡散法検定、その場免疫学的検定(例えば、コロイド金、酵素、または放射性同位元素標識を使用して)、ウエスタンブロット法、沈降反応、凝集反応(例えば、ゲル凝集反応、血球凝集反応等)、補体結合検定、免疫蛍光検査法、タンパク質A検定、および免疫電気泳動法等)等によって検出される。
【0062】
1つの実施形態では、抗体結合は、第1の抗体上で標識を検出することで検出される。別の実施形態では、第1の抗体への第2の抗体または試薬の結合を検出することで検出される。さらなる実施形態では、第2の抗体は、標識化される。免疫学的検定の結合検出のための多くの方法は、当分野で知られており、本発明の範囲に含まれる。
【0063】
幾つかの実施形態では、自動検出検定が利用される。免疫学的検定を自動化する方法は、米国特許第5,885,530号、第4,981,785号、第6,159,750号、および第5,358,691号に記載されたものを含み、それぞれは参照により本明細書に組み入れられる。幾つかの実施形態では、結果の分析および提示も自動化されている。例えば、幾つかの実施形態では、癌マーカーに応じる一連のタンパク質の有無を基礎として予後診断を生成するソフトウェアが利用される。
【0064】
他の実施形態では、免疫学的検定は米国特許第5,599,677号および第5,672,480号に記載されたものであり、それぞれは参照により本明細書に組み入れられる。
【0065】
3.cDNAマイクロアレイ技術
cDNAマイクロアレイは、ガラスの顕微鏡スライドのような固体担体上のよく知られた位置に染みをつけられた(通常ロボットスポッティングを使用)、複数の(通常何千もの)異なるcDNAで構成される。cDNAは、通常、配列が知られている遺伝子のために、プラスミドのベクター主鎖部分またはその遺伝子自身に補完的なプライマーを使用して、プラスミドライブラリ挿入物のPCR増幅によって得られる。マイクロアレイの生成に好適なPCR生成物は、通常は0.5と2.5kBとの間の長さである。cDNA全体、発現配列標識(EST)、または任意の関心ライブラリからランダムに選択されたcDNAが選択され得る。ESTは、例えば、Hillier,et al.,1996,6:807−828に記載されるように部分的に配列されたcDNAである。いくつかのESTはよく知られた遺伝子に対応するが、高い頻度で、任意の特有のESTに関して、少量の3’および/または5’配列、および恐らく、ESTが由来した元のmRNAの組織を除いて、ごくわずかまたは全く情報が利用できない。当業者によって理解されるように、概してcDNAは、ヒトゲノム内の遺伝子を一意的に識別するのに十分な配列情報を含む。さらに、概してcDNAは、実験の混成条件の下で単一遺伝子から得られたmRNAから得られたcDNAに、選択的に、特異的に、または一意的に、雑種を作るのに十分な長さである。
【0066】
典型的なマイクロアレイ実験で、マイクロアレイは2つの異なる試料から得られた特異的に標識化されたRNA、DNA、またはcDNA集団で雑種が作られる。最も一般的なRNA(全RNAまたはポリA+RNA)は、関心の細胞または組織から単離され、cDNAを生み出すために逆転写される。標識化は、通常、反応混合物内で標識ヌクレオチドを組み込むことで、逆転写中に実行される。種々の標識が使用され得るが、最も一般的には、ヌクレオチドは、蛍光色素Cy3またはCy5に接合されている。例えば、Cy5−dUTPおよびCy3−dUTPが使用され得る。1つの試料(例えば、特有の細胞タイプ、組織タイプ、または成長条件を表す)から得られたcDNAは、1つの蛍光色素分子で標識化されるが、第2の試料(例えば、異なる細胞タイプ、組織タイプ、または成長条件を表す)から得られたcDNAは、第2の蛍光色素分子で標識化される。2つの試料からの同量の標識化材料が、マイクロアレイに共に雑種を作られる。試料が、Cy5(赤色の蛍光を発する)およびCy3(緑色の蛍光を発する)で標識化されるマイクロアレイ実験の場合に、第1のデータ(定量的に蛍光強度を検出することが可能な検出器を使用してマイクロアレイをスキャンすることで得られる)は、蛍光強度の比率(赤色/緑色、R/G)である。これらの比率は、マイクロアレイ上に表されるcDNAに雑種を作られるcDNA分子の相対濃度を表し、そのようにしてマイクロアレイ上に表されるそれぞれのcDNA/遺伝子に対応するmRNAの相対発現レベルを反映する。
【0067】
それぞれのマイクロアレイ実験は、何万ものデータポイントを提供することができ、それぞれが2つの試料の特有の遺伝子の相対発現を表す。データの適切な組織化および分析は、決定的に重要であり、標準統計ツールを組み込む種々のコンピュータプログラムが、データ分析を促進するように開発されてきた。遺伝子発現データを整理する1つの根拠は、同様の発現パターンの遺伝子を一緒の集団に群化することである。階層的クラスター分析を実行する方法およびマイクロアレイ実験から得られたデータの表示は、Eisen et al.,1998,PNAS95:14863−14868に記載されている。そこに記載されているように、集団化は、それぞれのデータポイントが、定量的および定性的にそのデータポイントを表す色で表される、第1のデータの図的表現と併用され得る。データを大きい数値表からビジュアル様式に変換することによって、このプロセスは、データの直感的分析を促進する。数学的ツールおよび/または集団化アプローチそれ自体に関する追加の情報および詳細は、例えば、Sokal & Sneath,Principles of numerical taxonomy,xvi,359,W.H.Freeman,San Francisco,1963;Hartigan,Clustering algorithms,xiii,351,Wiley,New York,1975;Paull et al,1989,J.Natl.Cancer Inst.81:1088−92;Weinstein et al.1992,Science 258:447−51;van Osdol et al.,1994,J.Natl.Cancer Inst.86:1853−9、およびWeinstein et al.,1997,Science,275:343−9に見出され得る。
【0068】
本発明で使用される実験的方法のさらなる詳細は、後述の実施例に見いだされる。マイクロアレイを製造し使用する方法を記載する追加の情報は、米国特許第5,807,522号に見出され、参照により本明細書に組み入れられる。市販されている部品を使用するマイクロアレイハードウェア(例えば、arrayersおよびスキャナ)の構築のための説明。マイクロアレイ技術の追加の議論および試料調製のプロトコルおよびのマイクロアレイ実験の実行は、例えば、DNA arrays for analysis of
gene expression、Methods Enzymol,303:179−205,1999、Fluorescence−based expression monitoring using microarrays、Methods Enzymol,306:3−18,1999;およびM.Schena(ed)、DNA Microarrays:A Practical approach、Oxford University Press,Oxford,UK,1999に見出される。
【0069】
4.データ分析
幾つかの実施形態では、コンピュータベースの分析プログラムは、検出検定(例えば、存在、不在、または所与のマーカー(単数または複数)の量)によって生成された生データを臨床医のための予測値データに翻訳するのに使用される。臨床医は、任意の好適な手段を使用して予測データにアクセスすることができる。それ故に、幾つかの実施形態では、本発明は、臨床医で、遺伝学または分子生物学の訓練を受けそうにない者が、生データを理解する必要がないというさらなる利点を提供する。データは、最も有用な様式で臨床医に直接に渡される。その後、臨床医は、対象の治療に最大限に利用するために情報をすぐに利用することができる。
【0070】
本発明は、検定を実施した研究所に、およびその研究所から、情報を受け取り、処理し、および伝達することが可能な任意の方法を考慮し、医療関係者および対象に情報を提供する。例えば、本発明の幾つかの実施形態では、試料(例えば、生検または血清または尿試料)は、対象から得られ、生データを生成するために、世界の任意の部分に位置する(例えば、対象が居住する国または情報が最終的に使用される国とは異なる国にある)、プロファイリングサービス(例えば、医療施設の臨床検査室、遺伝子プロファイリングビジネス等)に提出される。試料が組織または他の生物試料を含む場合には、対象は、採取されてプロファイリングセンターに送付される試料を有する医療センターを訪ねることができ、または患者が、自身で試料を収集し、直接プロファイリングセンターに送付することができる。試料が過去に決定された生物情報を含む場合には、情報は、対象からプロファイリングサービス(例えば、情報を含む情報カードはコンピュータでスキャンされ得、電子通信システムを使用してプロファイリングセンターのコンピュータにデータが転送される)に直接送付され得る。プロファイリングサービスで一旦受け取られると、試料は処理され、対象の欲する診断または予後の情報に特化したプロファイル(例えば、発現データ)が作られる。
【0071】
その後、プロファイルデータは、治療する臨床医によって解釈に好適な様式に調製される。例えば、生発現データ(例えば、多くのマーカーの試験)を提供するよりむしろ、調製された様式は、対象のための診断またはリスク評価を、具体的な治療法選択肢のアドバイスと共に表すことができる。データは、臨床医に任意の好適な方法で表示され得る。例えば、幾つかの実施形態では、プロファイリングサービスは、臨床医のために(例えば、治療のポイントで)印刷され得、または臨床医にコンピュータモニターで表示され得るレポートを生成する。
【0072】
幾つかの実施形態では、情報は、治療のポイントで、または地域施設でまず分析される。その後、生データは、さらなる分析および/または生データを臨床医または患者に有用な情報に変換するために中央処理施設に送付される。中央処理施設は、プライバシー(全データは中央施設に均一のセキュリティープロトコルで格納される)、スピード、およびデータ分析の均一性の利点を提供する。その後、中央処理施設は、対象の治療法に続くデータの結末を管理することができる。例えば、電子通信システムを使い、中央施設は、臨床医、対象、または調査員にデータを提供することができる。
【0073】
幾つかの実施形態では、対象は、電子通信システムを使用してデータに直接アクセスすることができる、対象は、結果に基づいてさらなる治療介入またはカウンセリングを選択することができる。幾つかの実施形態では、このデータが調査目的に使用される。例えば、このデータを使用して、疾病の特有の条件またはステージを示す有用な指標としてのマーカーの包含または排除をさらに最適化することができる。
【0074】
5.キット
さらに他の実施形態では、本発明は、癌を検出し特徴付けるため(例えば、1つもしくは複数のマーカーを検出するため、または1つもしくは複数のマーカーによって発現したペプチドの活性を調節するため)のキットを提供する。幾つかの実施形態では、キットは、検出試薬およびバッファに加えて癌マーカーに特異的な抗体を含む、他の実施形態では、キットは、mRNAまたはcDNA(例えば、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー)の検出に特異的な試薬を含む。幾つかの実施形態では、キットは検出検定を実行するのに必須および/または十分な構成物の全てを含み、全対照、検定を実行する指示、および任意の分析のための必須ソフトウェアおよび結果の提示を含む。
【0075】
本発明の別の実施形態は、ポリヌクレオチドまたはタンパク質の存在を試験するためのキットを含む。キットは、例えば、ポリペプチドを検出するための抗体またはポリヌクレオチドを検出するためのプローブを含む。さらに、キットは、参照または対照試料、試料を処理し、テストを実行し、および結果を解釈するための指示、および他のテストを実行するのに必要なバッファおよび他の試薬を含むことができる。他の実施形態では、キットは、固形腫瘍幹細胞遺伝子シグネチャーの1つもしくは複数の遺伝子の発現を検出するためにプライマーのペアを含む。他の実施形態では、キットは、固形腫瘍幹細胞遺伝子シグネチャーの1つもしくは複数の遺伝子の発現を検出するために、cDNAまたはオリゴヌクレオチドアレイを含む。
【0076】
6.インビボイメージング
幾つかの実施形態では、インビボイメージング技術は、動物(例えば、ヒトまたはヒト以外の哺乳類)内の癌マーカーの発現を可視化するのに使用される。例えば、幾つかの実施形態では、癌マーカーmRNA(例えば、CXCR1またはFBXO21mRNA)またはタンパク質(例えば、CXCR1またはFBXO21タンパク質)は、癌マーカーに特異的な標識抗体を使用して標識化される。特異的な結合および標識抗体は、放射性核種イメージング、陽電子放射断層撮影、コンピュータ断層撮影、エックス線、または磁気共鳴イメージング法、蛍光検出、および化学発光による検出が含まれるがそれらに限定されないインビボイメージング法を使用して個体内で検出され得る。本発明の癌マーカーに抗体を生成する方法を後述する。
【0077】
本発明のインビボイメージング法は、本発明の固形腫瘍幹細胞癌マーカーを発現する癌の診断に有用である。インビボイメージングは、癌を示すマーカーの存在を可視化するのに使用される。かかる技術は、不快な生検を使用しない診断を可能にする。本発明のインビボイメージング法は、癌患者への予後診断を提供するのにも有用である。例えば、癌幹細胞を示すマーカーの存在は検出され得る。本発明のインビボイメージング法は、体の他の部分の転移癌を検出するのにさらに使用され得る。
【0078】
幾つかの実施形態では、CXCR1またはFBXO21に特異的な試薬(例えば、抗体)は、蛍光で標識化される。標識抗体は対象に導入される(例えば、経口または非経口で)。蛍光的に標識化された抗体は、任意の好適な方法を使用して、検出される(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,198,107号に記載の装置を使用)。
【0079】
他の実施形態では、抗体は、放射能で標識化される。インビボ診断の抗体の使用は、当業者に公知である。Sumerdon et al.,(Nucl. Med. Biol 17:247−254 [1990]は、標識としてインジウム111を使用する腫瘍の放射免疫シンチグラフィックイメージングのために最適化された抗体キレート剤について記載した。Griffin et al., (J Clin Onc 9:631−640 [1991])は、膵臓癌を有すると疑われる患者の腫瘍を検出するこの剤の使用を記載した。磁気共鳴イメージングのための標識として常磁性イオンでの同様の剤の使用が、当分野で知られている(Lauffer, Magnetic Resonance in Medicine 22:339−342 [1991])。使用された標識は、選択された画像診断法に依存するだろう。放射能標識、例えば、インジウム111、テクネチウム99m、またはヨウ素131は、平面スキャンまたは単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)のために使用され得る。陽電子放出標識、例えばフッ素19は、陽電子放出断層撮影法(PET)にも使用され得る。MRIのために、常磁性体イオン、例えばガドリニウム(III)またはマンガン(II)等が使用され得る。
【0080】
半減期が1時間から3.5日の間の放射性金属(例えば、スカンジウム47(3.5日)、ガリウム67(2.8日)、ガリウム68(68分)、テクニチウム99m(6時間)、およびインジウム111(3.2日))は、抗体に接合され、中でも、ガリウム67、テクネチウム99m、およびインジウム111がガンマカメライメージングに好適であり、ガリウム68が陽電子放出断層撮影法に好適である。
【0081】
かかる放射性金属で抗体を標識化する有用な方法は、例えば、インジウム111ならびにテクネチウム99mについてKhaw et al.およびScheinberg et al.(Science215:1511[1982])に記載されたように、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)のような二官能性キレート剤を使用する(Science 209:295[1980])。他のキレート剤も使用され得るが、1−(p−カルボキシメトキシベンジル)EDTAおよびDTPAのカルボキシカルボニック無水物が有利である、というのもその使用が、実質的に抗体の免疫活性に作用せずに接合することを可能にするからである。
【0082】
タンパク質にDPTAを連結させる別の方法は、インジウム111でアルブミンを標識化することについてHnatowich et al.によって記載されているように(Int. J. Appl. Radiat. Isot. 33:327[1982])、DTPAの環状無水物の使用によるが、これは抗体の標識化に適用され得る。DPTAでのキレート化を使用しないテクネチウム99mで抗体を標識化する好適な方法は、Crockford et al.の予備めっき法(米国特許第4,323,546号、参照により本明細書に組み入れられる)である。
【0083】
テクネチウム99mでの標識化免疫グロブリン法は、血漿タンパク質についてWong
et al.によって記載され(Int. J. Appl. Radiat. Isot., 29:251[1978])、最近、抗体を標識化するために、Wong et al.によって成功裏に応用された(J. Nucl. Med., 23:229[1981])。
【0084】
放射性金属を特定の抗体に接合する場合では、免疫特異性を破壊せずに抗体分子に可能な限り高い割合で放射性同位体での標識化を導入することが、同じく望ましい。抗体上の抗原結合部位が保護されることを確実にするためのさらなる改善は、本発明の特定の幹細胞癌マーカー存在下で放射性同位体を用いて標識化する効果によって達成され得る。
【0085】
さらなる実施形態では、インビボでバイオフォトニックイメージング(Xenogen, Almeda, CA)は、インビボイメージングのために使用される。このリアルタイムインビボイメージングは、発光酵素を利用する。発光酵素遺伝子は、細胞、微生物、および動物に組み込まれる(例えば、本発明の癌マーカーとの結合タンパク質として)。活性時、発光反応を引き起こす。CCDカメラおよびソフトウェアは、イメージを捕らえ、それを分析するのに使用される。
【0086】
(III.抗体および抗体フラグメント)
本発明は、CXCR1、FBXO21、NFYA、NOTCH2、RAD51L1、TBP、および表1からの他のタンパク質に対する単離された抗体および抗体フラグメントを提供する。抗体または抗体フラグメントは、これらのタンパク質を特異的に認識する任意の単クローン性のまたは多クローン性の抗体であり得る。幾つかの実施形態では、本発明は、CXCR1、FBXO21、NFYA、NOTCH2、RAD51L1、TBP、および表1からの他のタンパク質に特異的に結合する、単クローン性の抗体またはそのフラグメントを提供する。幾つかの実施形態では、単クローン性の抗体またはそのフラグメントは、これらのタンパク質を特異的に結合するキメラまたはヒト化抗体である。他の実施形態では、単クローン性の抗体またはそのフラグメントは、これらのタンパク質を特異的に結合するヒト抗体である。
【0087】
CXCR1、FBXO21、NFYA、NOTCH2、RAD51L1、TBP、および表1からの他のタンパク質に対する抗体は、本明細書に記載の実験的診断および治療法の使用を見出す。特定の実施形態では、本発明の抗体は、生物試料、例えば、患者組織生検、胸水、または血液試料等での癌幹細胞マーカータンパク質の発現を検出するのに使用される。組織生検は、例えば、免疫蛍光検査法または免疫組織化学を使用して区分され、タンパク質検出され得る。代替として、試料からの個別の細胞は単離され、FACS分析で固定または生細胞においてタンパク質発現を検出される。さらに、抗体は、例えば、腫瘍細胞上、細胞溶解物内、または他のタンパク質試料内で癌幹細胞マーカーの発現を検出するためにタンパク質アレイで使用され得る。他の実施形態では、本発明の抗体は、インビトロ細胞ベースの検定またはインビボ動物モデルのいずれかの腫瘍細胞で抗体に接触することで腫瘍細胞の成長を抑制するのに使用される。さらに他の実施形態では、抗体は、抗体を癌幹細胞マーカー(例えば、表1から)に対して治療的に有効量投与することでヒト患者の癌を治療するのに使用される。
【0088】
多クローン性の抗体は任意のよく知られた方法によって調製されてよい。多クローン性の抗体は、安定的なエマルジョンを形成するために、無菌生理食塩水で希釈されたキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン等に選択的に接合され、およびアジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)と併用された、関連抗原(精製ペプチドフラグメント、組み換え型タンパク質全体、融合タンパク質、等)の複数の皮下または腹腔内注射で、動物(例えば、ウサギ、ラット、マウス、ロバ、等)に免疫を与えることで育てられ得る。そして、多クローン性の抗体は、十分に免疫をつけた動物の血液、腹水、および類するものから回収される。採取した血液は、凝固させられ、上澄みの血清は移され、遠心分離で澄まされ、抗体力価を検定される。多クローン性の抗体は、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、等を含む先行技術の一般的な方法にしたがって血清または腹水から精製され得る。
【0089】
単クローン性の抗体は、ハイブリドーマ法を使用して調製され得、かかる方法はKohler and Milstein(1975)Nature256:495等に記載されている。ハイブリドーマ法を使用するために、マウス、ハムスター、または他の適切な宿生動物は、免疫抗原に特異的に結合する抗体のリンパ球によって生成を導くよう、上述のように免疫を与えられる。代替として、リンパ球は、インビトロで免疫を与えられる。免疫を与えるのに続き、その後で非融合リンパ球および骨髄腫細胞から選択され得るハイブリドーマ細胞を形成するために、例えば、ポリエチレングリコールを使用して、リンパ球は単離されて、適切な骨髄腫細胞株と融合される。免疫沈降、免疫ブロット、またはインビトロ結合検定、例えば、放射性免疫測定(RIA)または酵素免疫測定(ELISA)で決定されるように選択された抗原に対して特異的に指示された単クローン性の抗体を産出するハイブリドーマは、標準的な方法を使用するインビトロ培養(Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, Academic Press,1986)または動物内の腹水腫瘍としてインビボで繁殖され得る。そして、単クローン性の抗体は、上述の多クローン性の抗体で記載されたように培地または腹水から精製され得る。
【0090】
代替として、単クローン性の抗体は、米国特許第4,816,567号に記載の組み換え型DNA法を使用しても作られ得る。単クローン性の抗体をエンコードするポリヌクレオチドは、例えば、成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞から、例えば、抗体の重鎖および軽鎖をエンコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを使用するRT−PCRによって、単離され、これらの配列は、先行の手順を使用して決定される。重鎖および軽鎖をエンコードする単離されたポリヌクレオチドは、その後、好適な発現ベクターにクローンされ、宿生細胞、例えばE.coli細胞、simian COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または免疫グロブリンタンパク質を産出しない骨髄腫細胞にトランスフェクトされる時、単クローン性の抗体が、宿生細胞に生成される。また、組み換え型単クローン性の抗体または所望の種のそのフラグメントは、(McCafferty et al., 1990, Nature, 348:552−554; Clackson et al., 1991, Nature, 352:624−628;およびMarks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581−597)に記載のファージ提示法ライブラリから単離され得る。
【0091】
単クローン性の抗体をエンコードするポリヌクレオチドは、代替の抗体を生成するために組み換えDNA技術を使用する多くの異なる方法でさらに修正され得る。1つの実施形態では、抗体の重鎖および軽鎖の定常領域、例えば、マウスの単クローン性抗体は、1)キメラの抗体を生成するために例えばヒト抗体のその領域に、または2)融合抗体を生成するために非免疫グロブリンポリペプチドに、代替され得る。他の実施形態では、定常領域は、単クローン性の抗体の所望の抗体フラグメントを生成するために、先端を切り取られるか、除去される。さらに、可変領域の部位特異的なまたは高密度の突然変異生成は、単クローン性の抗体の特異性、親和性、等を最適化するのに使用され得る。
【0092】
本発明の幾つかの実施形態では、癌幹細胞マーカーに対する単クローン性の抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、可変領域内の非ヒト(例えば、マウス)抗体からの最小配列を含む抗体である。ヒト対象に投与される時、かかる抗体は、治療的に抗原性およびHAMA(ヒト抗マウス抗体)反応を低減するのに使用される。実際には、ヒト化抗体は、非ヒト配列ではない最小限の典型的なヒト抗体である。ヒト抗体は、ヒトによって産生された抗体またはヒトによって産生された抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。
【0093】
ヒト化抗体は、当分野で知られる種々の技術を使用して産生され得る。抗体は、所望の特異性、親和性、および能力を有する非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、等)のCDRで、ヒト抗体のCDRを代替することで、ヒト化し得る(Jones et al., 1986, Nature, 321:522−525; Riechmann et al., 1988, Nature, 332:323−327; Verhoeyen et al., 1988, Science, 239:1534−1536)。ヒト化抗体は、抗体特異性、親和性、および/または能力を改良し最適化ために、Fvフレームワーク領域内および/または置き換えられた非ヒト残留物内で、追加の残留物の置換によってさらに修正され得る。
【0094】
ヒト抗体は、当分野で知られる種々の技術を使用して直接に調製され得る。免疫を与えられたインビトロまたは、標的抗原に対して指向された抗体を産生する免疫を与えられた個体から単離された、不死化ヒトBリンパ球が生成され得る(参照、例えば、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer
Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boemer et al., 1991, J. Immunol.,147 (1):86−95、および米国特許第5,750,373号)。また、ヒト抗体はファージライブラリから選択され得、そのファージライブラリは、ヒト抗体を発現する(Vaughan
et al., 1996, Nature Biotechnology, 14:309−314; Sheets et al., 1998, PNAS, 95:6157−6162; Hoogenboom and Winter, 1991, J. Mol. Biol., 227:381; Marks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581)。ヒト化抗体は、内在性免疫グロブリン生成が生じない場合にヒト抗体の全レパートリーを産生する免疫付与が可能なヒト免疫グロブリン座を含む遺伝子組み換えマウスにも作成され得る。このアプローチは、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、および第5,661,016号に記載される。
【0095】
本発明は、癌幹細胞マーカーを特異的に認識する二重特異性抗体も含む。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープを特異的に認識および結合可能な抗体である。
【0096】
二重特異性抗体は、無傷の抗体または抗体フラグメントであり得る。二重特異性抗体を作成する技術は、当分野で一般的である(Millstein et al., 1983, Nature 305:537−539; Brennan et al., 1985, Science 229:81; Suresh et al, 1986,
Methods in Enzymol. 121:120; Traunecker
et al., 1991, EMBO J. 10:3655−3659; Shalaby et al., 1992, J. Exp. Med. 175:217−225; Kostelny et al., 1992, J. Immunol.148:1547−1553; Gruber et al., 1994, J. Immunol.152:5368、および米国特許第5,731,168号)。
【0097】
本発明の特定の実施形態では、例えば、腫瘍浸透を増大させるために、無傷の抗体よりむしろ抗体フラグメントを使用することが望ましいかもしれない。種々の技術が抗体フラグメントの生成のために知られている。伝統的に、これらのフラグメントは、無傷の抗体のタンパク分解に由来する(例えば、Morimoto et al.,1993,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117 and Brennan et al., 1985, Science, 229:81)。しかし、これらのフラグメントは、現在、通常は上述のように組み換え型宿生細胞によって直接産生される。そのようなFab、Fv、およびscFv抗体フラグメントは、E.coliまたは他の宿生細胞内に発現して、そこから分泌され得、それ故に、これらのフラグメントの大部分の生成を可能にする。代替として、かかる抗体フラグメントは、上述の抗体ファージライブラリから単離され得る。抗体フラグメントは、例えば米国特許第5,641,870号に記載の線形抗体にもなり得、単一特異性または二重特異性にもなり得る。抗体フラグメントの生成のための他の技術は、当業者には明らかである。
【0098】
特に抗体フラグメントの場合に、その血清半減期を増大させるために抗体を調節することがさらに望ましいかもしれない。これは、例えば、抗体フラグメントの適切な領域の変異によって抗体フラグメントにエピトープを結合するサルベージ受容体を組み込むことで、または端か中間で抗体フラグメントに融合されるペプチドタグにエピトープを組み込むことで(例えば、DNAまたはペプチド合成によって)、達成されるかもしれない。
【0099】
本発明は、キメラの、ヒト化されたおよびヒト抗体、または本明細書で設定されるその抗体フラグメントと実質的に同一のもののバリエーションおよび同等物をさらに包含する。これらは、例えば、先行の置換変異体、すなわち、類似のアミノ酸による1つもしくは複数のアミノ酸代替を含むことができる。例えば、先行の置換は、アミノ酸の同一の一般的クラス内の別のアミノ酸との置換を指し、例えば、別の酸性アミノ酸を有する1つの酸性アミノ酸、別の塩基性アミノ酸を有する1つの塩基性アミノ酸、または別の中性アミノ酸による1つの中性アミノ酸等である。先行のアミノ酸置換によって何が意図されるかは、当業者に公知である。
【0100】
本発明は、細胞毒性薬に接合される抗体を含む免疫抱合体にも関連する。細胞毒性薬は、化学療法剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌性、真菌性、植物性、または動物由来の、またはそれらのフラグメントの酵素的に活性の毒素)、放射性同位体(すなわち、放射性結合体)、等を含む。かかる免疫抱合体の生成に有用な化学療法剤は、例えば、メトトレキサート、アドリアミシン(adriamicin)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他の挿入剤を含む。使用可能な酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、結合されてないジフテリア毒の活性フラグメント、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンシンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サポナリアオフィシナリス(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセン(tricothecenes)を含む。様々な放射性核種は、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reを含み放射接合した抗体の生成のために利用可能である。様々な二機能性タンパク質カップリング剤を用いて抗体および細胞毒素薬との抱合体を作成し、かかる試薬の実例は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(ジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トリレン2,6−ジイソシアナート)、およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)である。抗体の抱合体および1つもしくは複数のカリケアミシン、メイタンシノイド、トリコセン(trichothene)およびCC1065のような低分子毒素、およびこれらの毒素活性を有する毒素の誘導体も使用され得る。
【0101】
幾つかの実施形態では、本発明の抗体は、エフェクター機能、例えば、抗原依存細胞媒介細胞障害性(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を増幅するために修飾されるヒト領域を含む。これは、抗体のFc領域に1つもしくは複数のアミノ酸置換を導入することで達成され得る。例えば、システイン残留物は、補体媒介細胞殺傷および抗体依存性細胞毒性(ADCC)を改善するために、この領域に鎖間ジスルフィド結合形成を可能にするFc定常領域に導入され得る(Caron et al.,1992,J. Exp Med. 176:1191−1195; Shopes, 1992,
Immunol.148:2918−2922)。抗腫瘍活性を増幅されたホモ二量体抗体は、Wolff et al.,1993,Cancer Research 53:2560−2565に記載のようにヘテロ二機能クロスリンカーを使用しても調製され得る。代替として、デュアルFc領域を有する抗体が設計され得る(Stevenson
et al., 1989, Anti−Cancer Drug Design 3:219−230)。
【0102】
(IV.薬剤スクリーニング)
幾つかの実施形態では、本発明は、薬剤スクリーニング検定(例えば、抗癌剤を選抜するために)を提供する。本発明のスクリーニング法は、本発明の方法を使用して識別された幹細胞癌マーカー(例、CXCR1、FBXO21、NFYA、NOTCH2、RAD51L1、TBP、および表1からの他のタンパク質)を利用する。例えば、幾つかの実施形態では、本発明は、CXCR1またはFBXO21の発現、または活性を変更する(例えば、増大または低減)化合物のためのスクリーニング法を提供する。幾つかの実施形態では、化合物候補は、癌マーカーに対して指向されたアンチセンスの剤またはsiRNA剤(例えば、オリゴヌクレオチド)である。他の実施形態では、化合物候補は、特異的に本発明の幹細胞癌マーカーに結合する抗体である。特定の実施形態では、低分子の化合物のライブラリは、本明細書に記載の方法を使用して選別される。
【0103】
1つのスクリーニング法では、化合物候補は、幹細胞癌マーカーを発現させる細胞に組成物を接触させ、その後、発現上の化合物候補の効果を検定することで幹細胞癌マーカー発現を変更する能力について評価される。幾つかの実施形態では、癌マーカー遺伝子の発現における候補化合物の効果は、細胞によって発現された癌マーカーmRNAのレベルを検出することによって検定される。mRNA発現は、任意の好適な方法によって検出される。他の実施形態では、癌マーカー遺伝子の発現における化合物候補の効果は、癌マーカーによってエンコードされたポリペプチドのレベルを測定することで検定される。発現されたポリペプチドのレベルは、任意の好適な方法を使用して測定され得、本明細書に記載の方法を含むがそれに限定されない。幾つかの実施形態では、細胞生物学の他の変更(例えば、アポトーシス)が検出される。
【0104】
具体的には、本発明は、調節剤、すなわち、シグナリングまたは本発明の癌マーカーに関する機能に結合、もしくはそれを変更し、例えば、幹細胞癌マーカー発現または癌マーカー活性への阻害(または促進)効果を有し、もしくは、例えば、癌マーカー基質の発現または活性において促進または阻害する効果を有する候補または検査化合物または剤(例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、ペプトイド、低分子または他の薬剤)を識別するためのスクリーニングは、方法を提供する。このように認識される化合物は、標的遺伝子産物(例えば、幹細胞癌マーカー遺伝子、例えばCXCR1またはFBXO21)の生物機能を合成するために、または正常な標的遺伝子作用を妨害する化合物を識別するために、治療プロトコル内で直接的または間接的に、標的遺伝子産物の活性を調節するのに使用され得る。癌マーカーの活性または発現を抑制する化合物は、増殖性疾患、例えば、癌、特に転移癌の治療法、または癌のリスクを予防または低減するために腫瘍幹細胞を排除または管理することに有用である。
【0105】
1つの実施形態では、本発明は、癌マーカータンパク質またはポリペプチドまたはその生体活性部分の基質である候補または検査化合物をスクリーニングするための検定を提供する。別の実施形態では、本発明は、癌マーカータンパク質またはポリペプチドまたはその生体活性部分の活性に結合するか、調節する候補または検査化合物をスクリーニングするための検定を提供する。
【0106】
本発明の検査化合物は、当該技術分野でよく知られるコンビナトリアルライブラリ法の多くのアプローチのいずれかを使用して得られ、このライブラリは、生物ライブラリ、ペプチドライブラリ(ペプチドの機能性を有しているが、酵素分解に対して耐性でありそれでもなお生物活性を保持している新規で非ペプチド骨格を有している分子のライブラリ(例えば、Zuckennann et al., J. Med. Chem. 37: 2678−85[1994]参照)、空間的にアドレス可能な平行固相または液体相ライブラリ、デコンボリューションを必要とする合成ライブラリ、一ビーズ一化合物(one−bead one compound)ライブラリ法、および親和性クロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリ方法を含む。生物ライブラリおよびペプトイドライブラリアプローチは、ペプチドライブラリの使用に好適であるが、その他の4つのアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドのオリゴマーまたは低分子ライブラリに適用可能である(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
【0107】
分子ライブラリの合成方法の例は当該技術分野、例えば、: DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909[1993]、Erb et al., Proc. Nad. Acad. Sci. USA 91:11422[1994]、 Zuckermann et al.,
J. Med. Chem. 37:2678[1994]、Cho et al.,
Science 261:1303[1993]、Carrell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33.2059[1994]、Carell et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061[1994]、および Gallop et al., J.
Med. Chem. 37:1233[1994]中に見出すことができる。
【0108】
化合物のライブラリは溶液中(例えば、Houghten,Biotechniques 13:412−421[1992])、またはビーズ(Lam,Nature354:82−84[1991])、チップ(Fodor,Nature 364:555−556[1993])、細菌または胞子(米国特許第5,223,409号、参照により本明細書に組み入れられる)、プラスミド(Cull et al., Proc. Nad. Acad. Sci. USA 89:18651869 [1992])、またはファージ(Scott and Smith, Science 249:386−390[1990];Devlin Science 249:404−406[1990];Cwirla et al., Proc. NatI. Acad. Sci. 87:6378−6382[1990]; Felici, J. Mol. Biol. 222:301[1991])上で提示され得る。
【0109】
1つの実施形態では、検定は、幹細胞癌マーカータンパク質またはその生体活性部分を発現する細胞が、検査化合物に接触され、癌マーカー活性を調節する検査化合物の能力が決定される、細胞ベースの検定である。幹細胞癌マーカー活性を調節する検査化合物の能力を決定することは、例えば、酵素活性の変化を観察することで達成され得る。細胞は、例えば、哺乳類由来のものであり得る。
【0110】
化合物、例えば、幹細胞癌マーカー基質に結合する癌マーカーを調節するための検査化合物の能力も、評価され得る。これは、化合物、例えば基質の癌マーカーへの結合が複合体において標識化合物、例えば基質を検出することにより測定できるように、例えば化合物、例えば基質と放射性同位体標識または酵素標識とを結合することにより達成できる。
【0111】
代替として、幹細胞癌マーカーは放射性同位体または酵素の標識と結合し、複合体の癌マーカー基質に結合する癌マーカーを調節する検査化合物の能力を観察する。例えば、化合物(例えば、基質)は直接的または間接的に125I、35S、14Cまたは3Hで標識化でき、放射性同位体は放射放出の直接計数によりまたはシンチレーション計数により検出される。代替として、化合物は、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、または発光酵素で酵素標識化でき、酵素標識は適切な基質から産物への変換を決定することにより検出される。
【0112】
反応体のいずれかを標識してまたは標識せずに、幹細胞癌マーカーと相互作用する化合物(例えば、幹細胞癌マーカー基質)の能力が評価され得る。例えば、化合物または癌マーカーのいずれかを標識せずに癌マーカーと化合物の相互作用を検出するためにマイクロフィジオメーター(microphysiometer)が使用され得る(McConnell et al. Science 257:1906−1912[1992])。本明細書で使用されるように、「マイクロフィジオメーター(例えばサイトセンサー(Cytosensor))」は、細胞が光でアドレス可能な電位差センサー(LAPS)を用いてその環境を酸性化する速度を測定する分析機器である。この酸性化速度の変化は化合物と癌マーカーとの間の相互作用の指標として用いられ得る。
【0113】
さらに別の実施形態において、無細胞検定が提供され、癌マーカータンパク質またはその生体活性部分が検査化合物に接触され、幹細胞癌マーカータンパク質またはその生体活性部分に結合する検査化合物の能力が評価される。本発明の検定で使用される癌マーカータンパク質の生体活性部分は、基質または他のタンパク質、例えば高い表面確率点(surface probability score)を有するフラグメントとの相互作用に参加するフラグメントを含む。
【0114】
無細胞検定は、2つの構成物が相互作用ならびに結合でき、それ故に除去および/または検出され得る複合体を形成することを可能にするのに十分な条件下および時間で標的遺伝子タンパク質および検査化合物の反応混合物を調製することを伴う。
【0115】
二分子間の相互作用も、例えば蛍光エネルギー移動(FRET)(例えば、Lakowicz et al、米国特許第5,631,169号、Stavrianopoulos et al.,米国特許第4,968,103号参照、それぞれが参照により本明細書に組み入れられる)を用いて検出できる。蛍光標識は、第一供与分子の放出する蛍光エネルギーが第二「受容」分子の蛍光標識により吸収され、次に吸収エネルギーにより蛍光を発することができるように、選択される。
【0116】
代替として、「供与」タンパク質分子は単にトリプトファン残留物の自然蛍光エネルギーを利用することができる。「受容」分子の標識が「供与体」の標識と識別され得るように、異なる波長の光を放出する標識が選択される。標識間のエネルギー移動の効率は分子を隔てる距離に関係するため、前記分子間の空間関係が見極められ得る。分子間の結合が起きる状況で、15の検定における「受容」分子の標識の蛍光発光が最大であるべきである。FRET結合事象は当技術分野においてよく知られる標準的な蛍光検出手段を通じて(例えば、蛍光光度計を使用して)簡便に測定され得る。
【0117】
別の実施形態では、幹細胞癌マーカータンパク質の標的分子に結合する能力を測定することは、リアルタイムのBiomolecular Interaction Analysis(BIA)を用いて達成され得る(例えば、Sjolander and Urbaniczky,Anal. Chem. 63:2338−2345[1991]およびSzabo et al. Curr. Opin. Struct. Biol.
5:699−705[1995]を参照)。「表面プラズマ共鳴」または「BIA」は、いずれの反応体(例えば、BlAcore)も標識せずに、リアルタイムで生体特異的相互作用を検出する。結合表面の質量(結合事象を示す)の変化は表面近くの光の屈折率の変動をもたらし(表面プラズマ共鳴(SPR)の光学現象)、生体分子間のリアルタイム反応の指標として用いられ得る検出シグナルをもたらす。
【0118】
1つの実施形態では、標的遺伝子産物または検査物質は固相に固定される。固相に固定された標的遺伝子産物/検査化合物の複合体は反応の終わりに検出され得る。標的遺伝子産物は固相に固定でき、検査化合物(固定されていない)は本明細書で論じられる検出可能な標識で直接的または間接的に標識され得る。
【0119】
タンパク質の1つまたは両方の非複合形態から複合形態の分離を促進するため、ならびに検定の自動化に適応するため、幹細胞癌マーカー、抗癌マーカー抗体またはその標的分子を固定することが望ましいかもしれない。幹細胞癌マーカータンパク質への検査化合物の結合、または化合物候補の存在下および不在下での標的分子と癌マーカータンパク質との相互作用は、反応体を含むのに好適な任意の容器中で達成され得る。このような容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管、および微量遠心分離管を含む。1つの実施形態では、タンパク質の1つまたは両方が基質に結合することを可能にするドメインを付加する融合タンパク質が提供され得る。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−癌マーカー融合タンパク質またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St.
Louis, MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着され得、その後、これらは、検査化合物、または検査化合物と非吸着標的タンパク質もしくは癌マーカータンパク質のいずれかと混合され、混合物は複合体形成に寄与する条件下で(例えば、塩およびpHの生理条件で)インキュベートされる。インキュベーションに続き、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルは洗浄され、いずれの非結合構成物、ビーズの場合は固定された基質も取り除き、複合体は、例えば上述のように、直接的または間接的に決定される。
【0120】
代替として、複合体は基質から解離され得、癌マーカーの結合または活性のレベルは標準的技術を使用して測定され得る。癌マーカータンパク質または標的分子のいずれかを基質に固定する他の技術は、ビオチンおよびストレプトアビジンの接合を使用することを含む。ビオチン化癌マーカータンパク質または標的分子は、当技術分野において知られる技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, EL)を使用してビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製され、ストレプトアビジンで被覆した96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定される。
【0121】
検定を行うために、非固定構成物は固定構成物を含む被覆表面に付加される。反応が終了した後、形成されるいずれの複合体も依然固体表面に固定されているような条件下で、未反応構成要素が(例えば、洗浄により)取り除かれる。固体表面に固定される複合体の検出は幾つかの方法で達成できる。予め固定されていない構成物が予め標識化される場合、表面に固定された標識の検出は複合体が形成されたことを示す。予め固定されていない構成物が予め標識化されない場合、表面に固定される複合体を検出するために、例えば固定構成物に特異的な標識抗体を使用して(抗体は、次いで、直接的に標識され得るまたは例えば標識抗IgG抗体で間接的に標識され得る)、間接標識が使用され得る。
【0122】
この検定は、幹細胞癌マーカータンパク質または標的分子と反応するが、その標的分子への幹細胞癌マーカータンパク質の結合を妨げない抗体を用いて実施される。かかる抗体はプレートのウェルに誘導体化され得、結合していない標的または癌マーカータンパク質は抗体接合によりウェルに捕捉される。GSTで固定される複合体について上述する方法に加えて、かかる複合体を検出する方法は、癌マーカータンパク質または標的分子と反応する抗体を使用して複合体の免疫検出、ならびに癌マーカータンパク質または標的分子と関連する酵素活性の検出に依存する酵素結合検定を含む。
【0123】
代替として、無細胞検定は液相で行える。かかる検定において、反応産物は、分画遠心(例えば、Rivas and Minton, Trends Biochem Sci 18:284−7[1993]を参照)、クロマトグラフィー(ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー)、電気泳動(例えば、Ausubel et
al., eds. Current Protocols in Molecular Biology 1999, J. Wiley: New Yorkを参照)、および免疫沈降(例えばAusubel et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology 1999, J. Wiley: New Yorkを参照)を含むが、これらに限定されない幾つかの標準的技術のいずれかにより、未反応の構成物から分離される。かかる樹脂およびクロマトグラフィー技術は当業者に知られている(例えば、Heegaard J. Mol. Recognit 11:141−8[1998]; Hageand Tweed J. Chromatogr. Biomed. Sci. App1 699:499−525[1997]を参照)。その上、蛍光エネルギー移動も、本明細書に記載するように、溶液から複合体をさらに精製することなく結合を検出するのに簡便に利用され得る。
【0124】
検定は、幹細胞癌マーカータンパク質またはその生体活性部分と癌マーカーに結合するよく知られた化合物とを接触させて検定混合物を形成すること、検定混合物と検査化合物を接触させること、および癌マーカータンパク質と相互作用する検査化合物の能力を決定することを含み、ここで、癌マーカータンパク質と相互作用する検査化合物の能力を決定することは、よく知られた化合物と比べて、癌マーカーもしくはその生体活性部分に選択的に結合する検査化合物の能力、または標的分子の活性を調節する化合物の能力を決定することを含む。
【0125】
幹細胞癌マーカーがタンパク質などの1つまたは複数の細胞高分子または細胞外高分子とインビボで相互作用し得る範囲内で、このような相互作用の阻害剤が役立つ。阻害剤を同定するために、同種の検定が用いられ得る。
【0126】
例えば、標的遺伝子産物と、相互作用する細胞または細胞外の結合相手産物との予め形成される複合体は、標的遺伝子産物またはそれらの結合相手のいずれかが標識化されるように調製されるが、標識により生成されるシグナルは複合体形成により消光される(例えば、免疫検定にこのアプローチを利用する米国特許第4,109,496号を参照、参照により本明細書に組み入れられる)。予め形成する複合体から得る種の1つと競合し置換する検査物質の付加は、バックグラウンドを上回るシグナルの生成をもたらす。このような方法で、標的遺伝子産物と結合する相手の相互作用を妨害する検査物質が同定できる。代替として、癌マーカータンパク質は、癌マーカーと結合または相互作用し(「癌マーカー結合タンパク質」または「癌マーカーbp」)ならびに癌マーカーの活性に関与する他のタンパク質を同定するために、2ハイブリッド検定または3ハイブリッド検定で「おとりタンパク質」として使用され得る(例えば、米国特許第5,283,317号;Zervos et al., Cell 72:223−232[1993]、 Madura et al., J. Biol. Chem.268.12046−12054[1993]、 Bartel et al., Biotechniques 14:920−924[1993]; Iwabuchi et al., Oncogene 8:1693−1696[1993]、およびBrent WO94/10300を参照、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる)。かかる癌マーカーbpは、例えば癌マーカーが媒介するシグナル伝達経路の下方要素として、癌マーカータンパク質または標的によるシグナルの活性剤または阻害剤であり得る。
【0127】
癌マーカー発現の調節剤も同定できる。例えば、細胞または無細胞混合物は候補化合物と接触し、癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現は、候補化合物の不在下の幹細胞癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現レベルと比べて、評価される。癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現がその候補化合物の不在下より存在下で高い場合、候補化合物は癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現の刺激剤として同定される。代替として、癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現が候補化合物の不在下より存在下で低い(即ち、統計的に有意に低い)場合、候補化合物は癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現の阻害剤として同定される。癌マーカーのmRNAまたはタンパク質の発現レベルは癌マーカーのmRNAまたはタンパク質を検出する本明細書に記載の方法により測定できる。
【0128】
本発明はさらに上述するスクリーニング検定(例えば、癌治療の下記の記載を参照)により同定される新規剤に関する。従って、このような剤を用いた治療の有効性、毒性、副作用、または作用機構を決定するために、適切な動物モデル(本明細書に記載するものなど)で、本明細書に記載する同定された剤(例えば癌マーカー調節剤、アンチセンス癌マーカー核酸分子、siRNA分子、癌マーカーに特異的な抗体、または癌マーカーの結合相手)をさらに使用することは本発明の範囲内である。さらに、上述するスクリーニング検定により同定された新規剤は、例えば本明細書に記載するような治療に(例えば癌を患うヒトの患者を治療するために)使用され得る。
【0129】
特定の実施形態では、本発明は、スクリーニングCXCR1またはFBXO21シグナル伝達経路拮抗薬のための方法を含む種々のスクリーニング手続きのための非接着性マンモスフィアを採用した。非接着性マンモスフィアは、球形構造として懸濁液内で増殖する能力に基づいて、未分化の状態で第1のヒト乳房上皮幹細胞および前駆細胞の増殖を可能にするインビトロ培養システムである。非接着性マンモスフィアは、過去にDontu et al Genes Dev. 2003 May 15;17(10):1253−70、およびDontu et al., Breast Cancer Res. 2004;6(6):R605−15に、記載され、その両方が参照により本明細書に組み入れられる。これらの参照は、全体の参照によって組み込まれ、非接着性マンモスフィアの構築および使用について具体的に示唆する。Dontu et al.によって記載されるように、マンモスフィアは、自己再生および多系列分化が可能な幹細胞および前駆細胞から構成されるよう特徴付けられてきた。Dontu et al.はまた、マトリゲル中の再構成された3D培養システム内でクローン的に複合機能性管状胞状構造を生成する能力を持つ細胞を含むことも記述している。
【0130】
特定の実施形態では、次の典型的なスクリーニング法が採用される。インビトロ研究において、未処理細胞対処理細胞で比較される腫瘍球形を形成するために、3日間アデノウイルス構築物発現対照またはCXCR1またはFBXO21候補siRNA(感染多重度10〜100)のいずれかで細胞を処理するか、3日間低分子候補(例えば、PHA665752誘導体)(0、1〜0、5uM)で処理し、CXCR1+またはFBXO21+細胞の能力を比較するかもしれない。インビボ研究において、腫瘍成長を観察するためにヒト乳癌細胞をレンチウイルス発現発光酵素に感染させることが可能である。ルシフェラーゼ発現癌細胞は、各群5動物の、定着しうるおおよそ0、5〜0、7cmのサイズの乳房組織および腫瘍に注射することが可能である。そして、腫瘍が定着した動物は、候補CXCR1またはFBXO21阻害剤(毎日、静脈内注射30mg/kg/日、7日間)または賦形剤対照のいずれかで治療され得る。平行研究は、アデノウイルス発現対照または候補CXCR1またはFBXO21siRNAでの感染(感染多重度100または500を7日間)を使用して実行され得る。動物は、腫瘍サイズを測定するために、7、14、21、および28日目に撮影され得、その後、犠牲にされ得る。腫瘍組織構造を測定するために、腫瘍サイズは、解剖で、そして染色された腫瘍部分をさらに測定され得る。残りの腫瘍は、CXCR1またはFBXO21陽性およびCXCR1またはFBXO21陰性細胞の割合を測定するために収穫され、分類され得る。候補CXCR1またはFBXO21阻害剤および候補CXCR1またはFBXO21siRNAアデノウイルス感染の投与が、CXCR1またはFBXO21シグナル伝達機能を抑制していることを検証するために、Gab1およびERKなどの下流のメディエーターのリン酸化反応は検査され得る(Chistensen et al., Cancer Res., 2003; 63:7345−7355を参照し、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0131】
(V.癌療法)
幾つかの実施形態では、本発明は癌のための療法を提供する。幾つかの実施形態では、療法は、癌マーカーを標的にする(例えば、CXCR1またはFBXO21およびCXCR1またはFBXO21シグナル伝達経路内のタンパク質を含むが、それに限定されない)。幾つかの実施形態では、任意のよく知られたまたは後に開発された癌幹細胞療法が使用されるかもしれない。例えば、癌幹細胞治療薬は、米国特許第6,984,522号および第7,115,360号、国際出願WO03/050502、WO05/074633、およびWO05/005601に記載され、参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0132】
抗体療法
幾つかの実施形態では、本発明は、本発明の幹細胞癌マーカーを発現する標的腫瘍の抗体を提供する。いずれの好適な抗体(例えば、単クローン性の、多クローン性の、または合成の)が、本明細書に記載の治療法で利用され得る。幾つかの実施形態では、癌療法のために使用される抗体は、ヒト化抗体である。抗体をヒト化する方法は、当技術分野において周知である(例えば、米国特許第6,180,370号、第5,585,089号、第6,054,297号、および第5,565,332号を参照、それぞれが参照により本明細書に組み入れられる)。
【0133】
幾つかの実施形態では、治療抗体は、本発明の幹細胞癌マーカーに対して生成される抗体を含み、抗体は細胞毒性薬と接合する。かかる実施形態では、正常細胞を標的にしない、腫瘍に特異的な治療薬が生成されるため、従来の化学療法の有害な副作用の多くを軽減する。特定の適用では、治療薬は、抗体への付着に有用な剤として機能する治療薬、具体的には内皮細胞を死滅するもしくは細胞の増殖または細胞分裂を抑制する能力を有する細胞毒性剤または他の抗細胞剤であることが想定される。本発明は、抗体に接合し、活性形態で送達され得る任意の薬剤の使用を考慮する。典型的な抗細胞剤は化学療法剤、放射性同位体、および細胞毒素を含む。本発明の治療抗体は、放射性同位体(例えば、ヨウ素131、ヨウ素123、テクネチウム99m、インジウム111、レニウム188、レニウム186、ガリウム67、銅67、イットリウム90、ヨウ素125、またはアスタチン211)、ステロイドなどのホルモン、シトシンなどの代謝拮抗剤(例えば、アラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、またはアミノプテリン;アントラサイクリン;マイトマイシンC)、ビンカアルカロイド(例えば、デメコルシン;エトポシド;ミトラマイシン)、およびクロラムブシルまたはメルファランなどの抗腫瘍アルキル化剤を含むが、これらに限定されない様々な細胞毒性部分を含み得る。他の実施形態は、凝固剤、サイトカイン、増殖因子、細胞内毒素、または細胞内毒素の脂質A部分などの剤を含み得る。例えば、幾つかの実施形態では、治療剤は、植物、菌類、または細菌に由来する毒素、ほんの数例を挙げると、例えば、A鎖毒素、リボソーム不活性化タンパク質、αサルシン、アスペルギリン、リストリクトシン、リボヌクレアーゼ、ジフテリア毒素または緑膿菌(pseudomonas)外毒素等を含む。幾つかの実施形態では、脱グリコシル化リシンA鎖が利用される。
【0134】
あらゆる事象において、これらのような剤は、所望ならば、公知の結合技術(例えば、Ghose et al., Methods Enzymol., 93:280[1983]を参照)を使用して必要に応じて標的腫瘍細胞の部位の血液構成物への標的化、内在化、放出または提示を可能にする様式で、抗体に首尾よく接合され得ることが提案される。
【0135】
例えば、幾つかの実施形態では、本発明は本発明の幹細胞癌マーカーを標的とする免疫毒素を提供する。免疫毒素は、毒素部分などの細胞毒性薬と、特異的な標的化剤、通常は腫瘍指向性抗体またはフラグメントとの抱合体である。標的化剤は標的抗原を携える細胞に毒素を導き、それによって選択的に前記細胞を死滅させる。幾つかの実施形態では、治療抗体は高いインビボ安定性を提供する架橋剤を採用する(Thorpe et al., Cancer Res., 48:6396[1988])。
【0136】
他の実施形態では、特に固形腫瘍の治療法に伴う場合、抗体は、血管内皮細胞の増殖または細胞分裂を抑制することにより、腫瘍血管系に対して細胞毒性効果または他の抗細胞効果を有するように設計される。この攻撃は腫瘍が局在する血管の虚脱をもたらし、腫瘍細胞、特に血管系末端の腫瘍細胞から酸素および栄養を奪い、最終的に細胞死および腫瘍壊死に導くことを意図する。
【0137】
幾つかの実施形態では、抗体に基づく治療は下記に記載するような薬学的組成物として策定される。幾つかの実施形態では、本発明の抗体組成物の投与は癌の測定可能な減少をもたらす(例えば、腫瘍の減少または排除)。
【0138】
(VI.治療組成物および投与)
本発明による腫瘍形成の制御因子を含む薬学的組成物は、任意の効果的な方法で投与され得る。例えば、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬、またはIL8−CXCR1シグナル変換/反応経路内のタンパク質の拮抗薬を働かせる他の治療薬が、任意の効果的な方法によって投与され得る。本発明の特定の実施形態では、治療薬は、レペルタキシンまたはその誘導体を含む。
【0139】
特定の実施形態では、生理学的に適切な溶液は、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬の有効濃度を含み、局所的に、眼内、非経口、経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、または任意のほかの効果的な手法で投与され得る。特に、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬剤は、標的組織の腫瘍細胞を処置するのに効果的な量を注射で標的癌または腫瘍に(例えば、乳房組織に)直接に接種されてよい。代替として、眼、消化管、尿生殖路(例えば、膀胱)、肺および気管支系および類似のもの内のような体腔に存在する癌または腫瘍は、注射またはカテーテルまたは管腔器官を苦しめる癌または腫瘍に設置された他の送達管での直接接種を通じ、有効濃度のIL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬を含む生理学的に適切な組成物(例えば、生理食塩水またはリン酸緩衝液のような溶液、懸濁液、またはエマルジョン、で無菌のもの)を受け取ることができる。例えば、X線、超音波画像、または光ファイバー可視化システムのような任意の効果的なイメージングデバイスが、標的組織の位置を特定し、注射またはカテーテル管を誘導するのに使用されてよい。別の代替手段では、有効濃度のIL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬を含む生理学的に適切な溶液は、直接に到達されなかった、または解剖学的に分離されなかった癌または腫瘍を処置するために全身的に血液循環に投与され得る。
【0140】
かかる操作は、拮抗薬が腫瘍細胞に接触し(剤の特性に依存して)、形質導入し、または形質移入できるように標的腫瘍に十分接触するようにIL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬を設置する共通の目的を有する。1つの実施形態では、管腔器官の上皮内層に存在する固形腫瘍は、中空を体液で満たされた器官に懸濁液を注射し、または中空を空気で満たされた器官にスプレーまたは噴霧することで処置されてよい。それ故に、腫瘍細胞(例えば、固形腫瘍幹細胞)は、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬に接触しやすい、肺の気管支樹の内膜、消化管内膜、女性生殖管内膜、尿生殖路、膀胱、胆嚢および任意の他の臓器組織の上皮組織内またはその中に存在するかもしれない。別の実施形態では、固形腫瘍は、例えば、脊髄、脊髄神経根、または脳等の中枢神経系の内膜上に位置づけられるかもしれず、脳脊髄液に注射されたIL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬は、その空間の固形腫瘍の細胞に接触し、形質導入する。腫瘍学分野の当業者は、拮抗薬は、腫瘍内で腫瘍細胞に接触し作用するように腫瘍に直接接種することによって固形腫瘍に投与され得ることが理解されよう。
【0141】
本発明で同定される腫瘍原性の細胞は、抗癌細胞抗体を育てるのにも使用され得る。1つの実施形態では、この方法は、腫瘍原性の細胞の濃縮された集団、または分離された腫瘍原性の細胞を得、細胞複製を防ぐために集団を処置し(例えば、照射によって)、そして固形腫瘍幹細胞に免疫反応を誘導するために有効な量で、ヒトまたは動物対象に処置細胞を投与することを伴う。注射または経口投与される細胞の有効な一回の投与量に関する指針としては、米国特許第6,218,166号、第6,207,147号、および第6,156,305号を参照のこと、これは参照により本明細書に組み入れられる。別の実施形態では、当方法は、固形腫瘍幹細胞の濃縮された集団または単離された固形腫瘍幹細胞を得、抗体が育てられたヒト対象または宿生動物からの免疫エフェクター細胞とインビトロ培養で幹細胞を混合し(当技術分野で公知の免疫学的方法に従って)、培養から免疫エフェクター細胞を除去し、そして動物の免疫反応を刺激するのに効果的な投与量で宿生動物に免疫エフェクター細胞を移植することを伴う。
【0142】
本発明の幾つかの実施形態では、本発明の抗腫瘍原性の治療薬(例えば、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬)は、他の抗腫瘍療法と同時投与される。幅広い種類の治療薬が、本発明で使用を見出す。本発明の剤と同時投与され得、または本発明の剤と関連し得る任意の治療薬は、本発明の方法による使用に好適である。
【0143】
種々のクラスの抗腫瘍性(例えば、抗癌)剤が、本発明の特定の実施形態における使用のために考慮される。本発明による使用に好適な抗癌剤は、アポトーシスを誘導する剤、アデノシンデアミナーゼ機能を阻害する、ピリミジン生合成を阻害する、プリン環生合成を阻害する、ヌクレオチド相互変換を阻害する、リボヌクレオチドレダクターゼを阻害する、チミジンモノホスフェート(TMP)合成を阻害する、ジヒドロフォレート還元を阻害する、DNA合成を阻害する、DNAとの付加体を形成する、DNAを損傷する、DNA修復を阻害する、DNAとインターカレートする、アスパラギン類をデアミネートする、RNA合成を阻害する、タンパク質合成または安定性を阻害する、微小管合成または機能を阻害する剤およびそれに類するものを含むが、これらに限定されない。
【0144】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物および方法の使用に好適な代表的な抗癌剤としては、1)微小管阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビンデシンなど)、微小管安定化剤(例えば、パクリタキセル(TAXOL)、およびドセタキセルなど)を含むアルカロイド類、エピポドフィロトキシン類(例えば、エトポシド(VP−16)、およびテニポシド(VM−26)など)などのトポイソメラーゼ阻害剤を含むクロマチン機能阻害剤、トポイソメラーゼIを標的とする剤(例えば、カンプトテシンおよびイシリノテカン(CPT−11)など)、2)ナイトロジェンマスタード類(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド、およびブスルファン(MYLERAN)など)、ニトロソ尿素類(例えば、カルムスチン、ロムスチン、およびセムスチンなど)、および他のアルキル化剤(例えば、ダカルバジン、ヒドロキシメチルメラミン、チオテパ、およびマイトマイシンなど)などの共有結合性DNA結合剤(アルキル化剤)、3)核酸阻害剤(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)など)、アントラサイクリン類(例えば、ダウノルビシン(ダウノマイシンおよびセルビジン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、およびイダルビシン(イダマイシン)など)、アントラセンジオン類(例えば、ミトキサントロンなどのアントラサイクリンアナログ)、ブレオマイシン類(BLENOXANE)など、およびプリカマイシン(ミトラマイシン)などの非共有結合性DNA結合剤(抗腫瘍抗生物質)、4)葉酸拮抗薬(例えば、メトトレキサート、FOLEX、およびMEXATEなど)、プリン代謝拮抗薬(例えば、6−メルカプトプリン(6−MP、PURINETHOL)、6−チオグアニン(6−TG)、アザチオプリン、アシクロビル、ガンシクロビル、クロロデオキシアデノシン、2−クロロデオキシアデノシン(CdA)、および2’−デオキシコフォルマイシン(ペントスタチン)など)、ピリミジンアンタゴニスト(例えば、フルオロピリミジン類(例えば、5−フルオロウラシル(ADRUCIL)、5−フルオロデオキシウリジン(FdUrd)(フロクスウリジン))など)、およびシトシンアラビノシド類(例えば、CYTOSAR(ara−C)およびフルダラビンなど)などの代謝拮抗薬、5)L−アスパラギナーゼ、およびヒドロキシ尿素などの酵素、6)グルココルチコイド類、抗エストロゲン類(例えば、タモキシフェンなど)、非ステロイド系抗アンドロゲン類(例えば、フルタミドなど)、およびアロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール(ARIMIDEX)など)などのホルモン類、7)白金化合物(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチンなど)、8)抗癌剤、毒素、および/または放射性核種と接合した単クローン性抗体など、9)生体応答調整物質(例えば、インターフェロン類(例えば、IFN−αなど)およびインターロイキン類(例えば、IL−2など)など)、10)養子免疫療法、11)造血成長因子、12)腫瘍細胞分化を誘導する剤(例えば、オール−トランス−レチノイン酸など)、13)遺伝子療法技術、14)アンチセンス療法技術、15)腫瘍ワクチン、16)腫瘍転移に対する療法(例えば、バチマスタット(batimastat)など)、17)血管形成阻害剤、18)プロテオソーム阻害剤(例えば、VELCADE)、19)アセチル化阻害剤および/またはメチル化阻害剤(例えば、HDAC阻害剤)、20)NFκBの調節剤、21)細胞分裂周期調節阻害剤(例えば、CDK阻害剤)、22)p53タンパク質機能の調節剤、および23)放射線、が含まれるが、これらに限定されない。
【0145】
癌療法の文脈で日常的に使用される任意の腫瘍融解剤が、本発明の組成物および方法における使用を見出される。例えば、米国食品医薬品局は、米国での使用に承認された腫瘍崩壊性剤の処方を支持している。U.S.F.D.A.に対応する国際政府機関は、同様の処方を支持している。表3は、米国における使用に関して承認された代表的な抗癌薬のリストを提供している。米国で承認された全ての化学療法に対して求められる「製品ラベル」が、代表的な薬剤に関して承認された効能や効果、投薬情報、毒性データ、および類するものが記載していることを当業者は理解されるであろう。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
【表5】
【0151】
【表6】
【0152】
【表7】
【0153】
【表8】
【0154】
【表9】
【0155】
【表10】
【0156】
【表11】
【0157】
【表12】
【0158】
【表13】
【0159】
【表14】
【0160】
抗菌治療薬もまた、本発明の治療薬として使用されてよい。微生物体の機能を殺す、阻害する、またはそうでなければ減弱することができる任意の剤、ならびにそのような活性を有するように考慮される任意の剤が使用されてよい。抗菌剤は、天然および合成抗生物質、抗体、阻害性タンパク質(例えば、デフェンシン)、アンチセンス核酸、膜破壊性剤、および類するものを含むが、それに限定されず、単独でまたは併用で使用される。実際、限定されるわけではないが、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤および類するものを含むが、それに限定されない、抗生物質の任意の型が使用されてよい。
【0161】
なおさらなる態様では、本発明は、特有の細胞タイプ(例えば、腫瘍細胞)を特異的に標的化することができる標的化剤と関連した本発明の化合物(および任意の他の化学療法剤)を提供する。一般的に、標的化剤と関連した治療化合物は、標的化剤の細胞表面部分との相互作用を通して新生物性細胞を標的化し、受容体媒介性エンドサイトーシスを通して細胞へ取り入れられる。
【0162】
標的細胞(例えば、腫瘍細胞)の表面上に位置していることが知られている任意の部分が、本発明で使用を見出す。例えば、かかる部分に対して指向性の抗体は、本発明の組成物をその部分を含む細胞表面へ標的化する。代替として、標的化部分は、細胞表面上に存在する受容体へ向けられるリガンド、または逆であってよい。同様に、ビタミンもまた、本発明の治療用物質を特有の細胞へ標的化するために使用されてよい。
【0163】
本明細書に使用されるように、「標的化分子」という用語は、治療化合物を細胞、組織および器官へ標的化するのに有用な化学的成分およびその部分を指す。種々のタイプの標的化分子が本発明での使用を考慮され、シグナルペプチド、抗体、核酸、毒素、および類するものを含むが、それに限定されない。標的化部分は、追加として、関連する化学化合物(例えば、低分子)の結合、または標的化される細胞、組織および器官への化合物の侵入を促進するかもしれない。好ましくは、標的化部分は、特定の細胞下の位置および細胞小器官を含む対象、組織または細胞内の標的化される部位へ付着した化合物を選択的に送達する際に、それらの特異性、親和性、および効力に従って選択される。
【0164】
種々の効率の問題は、全ての薬物、および特に高細胞毒性薬物(例えば、抗癌薬)、の投与に影響する。特に重要な1つの問題は、投与された剤が、標的化された細胞(例えば、癌細胞)、組織または器官のみに影響を及ぼすことを保証することである。高細胞毒性剤の非標的細胞への非特異的または非意図的送達は、深刻な毒性問題を引き起こし得る。
【0165】
非特異的薬物送達に関連した問題に取り組むために、薬物標的化スキームを考案するように多数の試みがなされた。(例えば、K.N. Syrigos and A.A. Epenetos Anticancer Res., 19:606−614 (1999); Y.J. Park et al., J. Controlled Release, 78:67−79 (2002); R.V.J. Chari, Adv. Drug Deliv. Rev., 31:89−104 (1998);およびD. Putnam and J. Kopecek, Adv. Polymer Sci., 122:55−123 (1995)を参照)。抗体およびリガンドペプチド(例えば、内皮細胞のためのRDG)のような薬物分子へ結合している接合標的化部分は、特定の薬物に関連したいくつかの副次的な毒性問題を軽減するために使用された。
【0166】
化合物および抗癌剤は、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、および水を含むがそれに限定されない、任意の滅菌した、生体適合性の薬学的担体において投与されてよい。幾つかの実施形態では、本発明の薬学的組成物は、1つの剤(例えば、抗体)を含んでよい。他の実施形態では、薬学的組成物は、少なくとも2つの剤(例えば、抗体および1つもしくは複数の通常の抗癌剤)の混合物を含む。なおさらなる実施形態では、本発明の薬学的組成物は、次の条件、異なる周期現象において、異なる持続期間において、異なる濃度において、異なる投与経路による、などの条件の1つもしくは複数の下で患者へ投与される少なくとも2つの剤を含む。幾つかの実施形態では、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬は、第2の抗癌剤の前に、例えば、抗癌剤の投与の0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、12時間、または18時間、1日、2日、3日、4日、5日、または6日、1週間、2週間、3週間、または4週間前に、投与される。幾つかの実施形態では、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬は、第2の抗癌剤の後に、例えば、抗癌剤の投与から0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、12時間、または18時間、1日、2日、3日、4日、5日、または6日、1週間、2週間、3週間、または4週間後に、投与される。幾つかの実施形態では、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬および第2の抗癌剤は、同時投与されるが、異なるスケジュールで投与され、例えば、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬化合物は、毎日投与され、一方、第2の抗癌剤は、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回、投与される。他の実施形態では、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬は、週に1回、投与され、一方、第2の抗癌剤は、毎日、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回投与される。
【0167】
処置される状態に依存して、本薬学的組成物の好適な実施形態は、製剤化されて、全身的または局所的に投与される。製剤化および投与についての技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」 (Mack Publishing Co, Easton Pa.)の最新版に見出され得る。好適な経路は、例えば、経口または経粘膜的投与、ならびに非経口送達(例えば、筋肉内、皮下、脊髄内、髄腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、または鼻腔内投与)を含み得る。
【0168】
本発明は、治療化合物、および幾つかの実施形態において、1つもしくは複数の通常の抗癌剤を、許容される薬学的送達方法および調製技術に従って投与することを考慮する。例えば、治療化合物および好適な抗癌剤は、生理食塩水のような薬学的に許容される担体において対象へ静脈内に投与され得る。薬学的剤の細胞内送達についての標準的方法が考慮される(例えば、リポソームによる送達)。かかる方法は、当業者に周知である。
【0169】
幾つかの実施形態では、本発明の製剤は、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、脊髄内、および腹腔内)に有用である。いくつかの考慮された抗癌剤(例えば、治療ポリペプチド)の治療的同時投与はまた、遺伝子治療試薬および技術を用いて達成され得る。
【0170】
本発明の幾つかの実施形態では、治療化合物は、対象へ、単独で、または1つもしくは複数の通常の抗癌剤(例えば、ヌクレオチド配列、薬剤、ホルモン、等)と併用で、または成分が任意で賦形剤もしくは他の薬学的に許容される担体と混合されている薬学的組成物において投与される。本発明の好適な実施形態では、薬学的に許容される担体は生物学的に不活性である。好適な実施形態では、本発明の薬学的組成物は経口投与に好適な投薬量で当技術分野において周知の薬学的に許容される担体を用いて製剤化される。かかる担体は、薬学的組成物が、対象によるそれぞれの経口的なまたは経鼻摂取のために、錠剤、ピル、カプセル、糖衣錠、液体、ゲル、シロップ、スラリー、溶液、懸濁液、および類するものとして製剤化されることを可能にする。
【0171】
経口使用のための薬学的調製物は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、その結果生じた混合物を任意ですりつぶし、錠剤または糖衣錠のコアを得るために必要に応じて好適な補助剤を加えた後に、混合物を顆粒へ加工することにより得られ得る。好適な賦形剤は、乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖、トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ等からのデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース、アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム、およびゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパク質のような炭水化物またはタンパク質である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムのようなその塩のような崩壊剤または可溶化剤が添加されてよい。
【0172】
好適な実施形態では、投与量および投与レジームは、治療効果の所望のレベルおよび得られる治療効果の実際的レベルを含むがそれに限定されない、周知の薬理学的および治療的考慮に基づいて、臨床医または薬理学的分野に熟練した他の者により作成される。一般的に、化学療法剤を投与するための周知の薬理学的原則に従うことが賢明である(例えば、一度に、および3〜4の剤半減期ごと以内に、50%より多く、用量を変化させないことが一般的に賢明である)。用量関連毒性の考慮すべき問題を比較的、ほとんどまたは全くもたない組成物について、最大効力(例えば、癌細胞の破壊)が望まれる場合、平均の必要とされる用量を超える用量はまれではない。投薬量のこのアプローチは、一般的に、「極量」ストラテジーと称される。特定の実施形態では、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬は、1日1〜40mgの投与量で(例えば、4〜6週間)対象に投与される。特定の実施形態では、対象は、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬を15〜70mg間の負荷用量で投与される。特定の実施形態では、対象は、IL8−CXCR1シグナル伝達経路拮抗薬を約35〜45mgの負荷用量で(例えば、皮下に)投与され、毎日約10mgの投与量で(例えば、皮下に)約4〜6週間投与される。
【0173】
追加の投薬の考慮すべき問題は、投与されている剤についての適切な標的レベルを計算すること、剤の蓄積、および潜在毒性、抵抗性の刺激、効力の欠損、および剤の治療指数の範囲を記載することに関する。
【0174】
特定の実施形態では、本発明は、剤の投与を日常的に滴定法する方法を使用することを考慮する。投与についての1つの一般的なストラテジーは、対象における剤についての妥当な標的レベルを設定することである。幾つかの好適な実施形態において、剤レベルは、対象の血漿において測定される。適切な投与量レベルおよび頻度は、その後、剤についての所望の定常状態標的レベルを達成するように設計される。対象における剤の実際の、または平均のレベルは、用量レベルまたは頻度が標的レベルを維持するように調整され得るように、観察される(例えば、1時間ごとに、毎日、毎週など)。もちろん、投与されている特定の剤の薬物動態学および薬物動力学(例えば、生物学的利用能、クリアランスまたは生体蓄積、生体内分布、薬物相互作用など)は、何が熟慮された妥当な標的レベルであるかに潜在的に影響を与え、それに従って、投与量レベルまたは頻度に影響を与える可能性があり得る。
【0175】
標的レベル投薬方法は、典型的には、対象における剤についての望ましい範囲(または治療範囲)に関して定められる妥当な治療目標を確立することに依存する。一般的に、治療範囲の下限値は、最大可能治療効果の約50%を提供する剤の濃度とおおよそ等しい。治療範囲の上限値は、通常、剤の毒性により確立され、それの効力によって確立されない。本発明は、特定の剤についての治療範囲の上限値は、対象の5%未満または10%未満が毒性副作用を示す濃度であることを考慮する。幾つかの実施形態では、治療範囲の上限値は、下限値より約2倍、またはそれ未満である。当業者は、これらの投薬の考慮すべき問題が極めて変わりやすく、ある程度、個別的である(例えば、遺伝性素因、免疫学的考慮、耐性、抵抗性、および類するものに基づいて)ことを理解しているものと思われる。従って、幾つかの実施形態では、特定の対象における剤についての有効な標的投薬レベルは、別の対象における最適よりも1、...5、...10、...15、...20、...50、...75、...100、...200、...X%高いかもしれない。逆に、いくつかの対象は、対象の一部または大部分において最適な治療レベルを典型的に生成するものよりはるかに低い(1、...5、...10、...15、...20、...50、...75、...100、...200、...X%)投薬レベルまたは頻度で健康問題に関連した重大な副作用および毒性を受けるかもしれない。より具体的な情報を欠く場合、標的投与レベルは、しばしば、治療範囲の中間に設定される。
【0176】
好適な実施形態では、臨床医は、公知の薬理学的原則および方程式に基づいて個別化された投与レジームを合理的に設計する。一般的に、臨床医は、F(用量の分画生物学的利用能)、Cp(血漿における濃度)、CL(クリアランス/クリアランス速度)、Vss(定常状態での薬物分布の容量)、Css(定常状態での濃度)、およびt1/2(薬物半減期)、ならびに剤の吸収および分配の速度についての情報を含みそれに限定されない、剤の種々の薬理学的および薬物動態学的特性の知識に基づいて個別化された投与計画を設計する。当業者は、これらの変数のさらなる説明について、および個別化される投与計画の計算を例証する完全な方程式について、周知の薬理学的テキスト(例えば、Goodman and Gilman’s Pharmaceutical Basis of
Therapeutics, 第10版, Hardman et al., eds., 2001)のいくつでも参照する。当業者はまた、個々の対象においてこれらの変数における潜在的変動を予想することができるものと思われる。例えば、F、CLおよびVssについて観察された値における標準偏差は、典型的には、それぞれ、約20%、50%、および30%である。個々の対象において幅広く変動する潜在パラメータの実際的効果は、対象においてCssが達成された時点の95%が、標的レベルのそれの35%と270%の間であることである。低い治療指数を有する薬物について、これは望ましくない幅広い範囲である。しかしながら、当業者は、一旦、剤のCp(血漿における濃度)が測定されたならば、F、CL、およびVssの値を直接的に推定することは可能であることを認識しているものと思われる。これは、臨床医が特定の対象の投与計画を効果的に微調整することを可能にする。
【0177】
さらに他の実施形態では、本発明は、継続的治療薬観察技術が、個々の投薬方法および計画をさらに調整するために使用されることを考慮する。例えば、1つの実施形態では、Cssデータは、CL/Fの推定をさらに正確にするために、およびその後、公知の薬理学的原則および方程式を使用して所望の剤の標的レベルを達成するために個々の維持投薬を継続的に調整するために用いられる。治療薬観察は、投薬スケジュール中の実際にいつでも行われることができる。好適な実施形態では、観察は、投薬中の複数の時点において、特に間欠投与を施している時に実施される。例えば、薬物観察は、採用される投薬方法(例えば、間欠投与、負荷量、維持投薬、ランダム投薬、または任意の他の投薬方法)に関わらず、剤の投与の1秒に満たない時間内、数秒内、数分内、数時間内、数日内、数週間内、数ヶ月内などに、同時に行われ得る。しかしながら、剤投与に続く迅速な試料採取の時、剤の血漿濃度における変化は遅れるかもしれない(例えば、分配の遅い速度または他の薬物動力学的因子のせいで)ため、剤効果および動力学における変化は、容易には観察できないかもしれないことを当業者は認識しているものと思われる。従って、剤投与直後に得られた対象試料は、制限されたまたは減少した値を有するかもしれない。
【0178】
投与の予想された定常状態目標レベル中に対象から生物試料を収集することの第1の目的は、その後、剤のCL/F比の改訂された推定値を計算することに基づいて個体の投与計画を修正することである。しかしながら、初期の吸収後薬物濃度は、典型的には、剤クリアランスを反映しないことを当業者は認識しているものと思われる。初期の吸収後薬物濃度は、剤の吸収速度、剤分布の、定常状態よりむしろ中心の容量、および分配速度により原則的に決定される。これらの薬物動態学的性質のそれぞれは、治療長期維持投与計画を計算する場合、制限された値を有する。
【0179】
従って、幾つかの実施形態では、目的が治療長期維持投薬である場合、生物試料は、前の用量が投与されてからかなり後に、およびいっそうより好ましくは、次の計画された用量が投与される直前に、対象となる対象、細胞、または組織から得られる。
【0180】
さらに他の実施形態では、治療剤が投与間の間欠期において対象によりほとんど完全に排除される場合、本発明は、前の投与後種々の時点において、および最も好ましくは、用量が投与された直後に、対象から生物試料を収集することを考慮する。
【0181】
(VII.レペルタキシンおよび他の低分子CXCR1阻害剤)
特定の実施形態では、本発明の方法、キット、および組成物は、CXCR1の低分子阻害剤を採用する。1つの典型的な剤は、レパルタキシンである。特定の実施形態では、インビボレパルタキシン用量は、1キロあたり3〜60mgである(例えば、3...30...50...60mg/kg)。具体的な実施形態では、レパルタキシン用量は、1キロあたり約30mgである。レパルタキシンの化学式は、次のとおりである。
【0182】
【化1】
【0183】
他の実施形態では、レペルタキシンの誘導体が採用される。他の低分子CXCR1拮抗薬は、SB265610(Glaxo SmithKline Beecham; Benson et al., 2000, 151:196−197)、ならびにSCH527123(2−ヒドロキシ−N,N−ジメチル−3−{2−[[(R)−1−(5−メチルフラン−2−イル)プロピル]アミノ]−3,4−ジオキソシクロブト−1−エニルアミノ}ベンザミド(SCH527123)は、経口投与可能なCXCR2/CXCR1受容体拮抗薬(Schering Plough)である)を含む。他の低分子阻害剤は、上述のスクリーニング法によって同定され得る。
【実施例】
【0184】
〔実施例〕
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態および態様を実証かつさらに例証するために提供され、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0185】
(実施例1)
CXCR1の癌幹細胞同定
この実施例は、CXCR1、ならびに癌幹細胞マーカーとしての他のタンパク質(例、FBXO21)の同定を記載する。
【0186】
細胞培養。乳腺細胞株(BCL)は、ATCC(“http://www.”に続いて“lgcpromochem−atcc.com/common/catalog/cellBiology/cellBiologyIndex.cfm”)から、またはDrs. S. Ethierの研究所で開発された収集品(“http://www.”に続いて“asterand.com/asterand/BIOREPOSITORY/hbreastcancercelllines.aspx, SUM44, SUM52, SUM149, SUM159, SUM185, SUM190, SUM225, SUM229”で現在利用可能)、V.J. Moebus (BrCa−MZ−01)、およびV. Catros (S68)から得られた。試験された全BCLは、線維嚢胞性疾患から得られたMCF10Aを除き、上皮性悪性腫瘍、および正常乳房組織から得られたHMEC由来184A1から得られた。細胞株は、望ましい培養条件を使用して育成された。全実験は、成長の指数関数的なフェーズのやや集密的な細胞で行われた。
【0187】
ALDEFLUOR検定およびFACSによるALDH陽性集団の分離。ALDH活性は、ヒト乳癌の主要な分子亜類型を表現する33BCLで評価された。ALDEFLUORキット(StemCell technologies Durham, NC, USA)は高ALDH酵素活性で集団を単離するのに使用された(17)。トリプシン処理後にやや集密的な細胞株から、または解離されたばかりの異種移植片から得られた細胞は、ALDH基質(1x106細胞あたりBAAA、1μmol/l)を含むALDEFLUOR検定緩衝液で懸濁され、40分間37°Cで培養された。それぞれの実験で、細胞の試料は、負の対照として、特定のALDH阻害剤である、ジエチルアミノベンズアルデヒド(DEAB)50mmol/Lで、同一条件下で染色された。フローサイトメトリー分類は、FACStarPLUS(Becton Dickinson)を使用して実行された。ALDEFLUOR蛍光は、488nmで励起され、標準フルオレセインイソチオシアネート(FITC)530/30バンドパスフィルタを使用して検出された。異種移植された腫瘍において、抗H2Kd抗体(BDバイオサイエンス、1/200,20分氷上)で培養することに続くフェコエリスリンでの第2の抗体標識化(Jackson labs,1/250,20分氷上)、は、マウス由来の細胞を排除するために使用された。分類ゲートは、生存力についてのPI染色細胞、DEAB処置されたALDEFLUOR染色細胞、および第2の抗体単独で染色されたものを使用して確立された。RNAプロファイリングまたはNOD/SCIDマウス注射の前に、分類された集団の純度は、BrCa−MZ−01およびSUM159細胞株内の10,000のALDEFLUOR陽性および陰性細胞の二重の分類を使用してチェックされた。両細胞株にとって、分類されたALDEFLUOR陽性集団は、ALDEFLUOR陽性細胞を98%以上含み、ALDEFLUOR陰性集団内ではALDEFLUOR陽性細胞は検出されなかった。
【0188】
NOD/SCIDマウス内の腫瘍形成能。ALDELFUOR陽性、陰性、および分離されていないSUM159、MDA−MB−453、およびBrCa−MZ−01細胞の腫瘍形成能は、NOD/SCIDマウス内で評価された。脂肪パッドは、思春期前の生育3週間で上皮を取り除かれ、(17)に記載のように、ヒト繊維芽細胞(1:1照射:無照射、50,000細胞/100μLマトリゲル/脂肪パッド)を注射されてヒト化された。研究における脊椎動物の使用のための規制に従い、腫瘍が最大直径で1.2cmの時、動物は安楽死させられた。脂肪パッドそれぞれの部分は、組織学分析のために、ホルマリンで固定され、パラフィンに埋め込まれた。別の部分は、、ALDEFLUOR検定によって評価され、分類および連続移植が続いた。
【0189】
足場非依存性培養。184A1、SUM149、およびSUM159からのALDEFLUOR陽性、陰性、および分離されていない細胞は、低密度(5000生存細胞/mL)で、極低付着プレート(Corning,Acton,MA)に単細胞として固定された。細胞は、(18)に記載のように、無血清乳腺上皮の基礎の培地(Cambrex Bio Science, Walkerville, MD)で3〜7日間増殖された。球形を形成する細胞の能力は、培地に加えられた異なる用量のIL8(GenWay Biotech, San Diego, CA)で処理後、定量化された。
【0190】
RNA抽出。全RNAは、DNA/RNA All Prep Maxi Kitを使用して凍ったALDEFLUOR陽性および陰性細胞から、製造業者の指示(Qiagen Sample and Assay technologies The Netherlands)に従い抽出された。8つのBCL、すなわち184A1、BrCa−MZ−01、HCC1954、MDA−MB−231、MDA−MB−453、SK−BR−7、SUM149、およびSUM159が、転写分析に使用された。RNA完全性は、ホルムアルデヒドアガロースゲル電気泳動およびミクロ分析(Agilent Bioanalyzer, Palo Alto, CA)を変性させることで管理された。
【0191】
DNAマイクロアレイでの遺伝子発現プロファイリング。遺伝子発現分析は、38,500個の十分に特徴付けられたヒト遺伝子を含む47,000超の転写産物および変異体を含むアフィメトリクスU133プラス2.0ヒトオリゴヌクレオチドマイクロアレイを使用した。cRNAの調製、混成、洗浄、および検出は、提供者に推薦されたように実施された(“http://www.”に続いて“affymetrix.com/index.affx”)。発現データは、(20、21)に記載のように、バイオコンダクタおよび関連パッケージ(19)を使用するRにおいて、RMA(ロバストマルチチップ平均)方法によって分析された。RMAは、1遺伝子あたり11のオリゴヌクレオチドのバックグラウンド補正、変位値標準化、および要約化を行った。
【0192】
分析前に、ろ過過程は、データセットから25,285遺伝子/ESTを保持する全ての16試料中で100ユニットに劣る発現値で画定されるように、低および不完全に測定された発現の遺伝子を取り除いた。標準偏差(SD)の強度に基づく第2のフィルタは、分析を通じ、低発現変異を示す遺伝子を排除するために監視されていない分析に適用された。標準偏差は、ログ2変換データ上で計算されたが、最低値は100ユニットの最小値、すなわち、0.5以上の標準偏差の13,550遺伝子/ESTを保持するバックグラウンド強度にまず張られた。監視されていない分析は、13,550遺伝子上の16のALDEFLUOR陽性、陰性細胞で行われた。階層クラスタリング前にフィルタされたデータは、ログ2変換され、遺伝子上のデータメジアン中心、類似性測量および重心結合クラスタリングとしてのピアソン相関を使用するクラスタプログラム(22)に伝送された。結果は、ツリー表示プログラム(22)を使用して表示された。遺伝子区別できるALDEFLUOR陽性および陰性集団を区別する遺伝子を同定し位置づけるために、マン−ホイットニーのUテストが、25,285遺伝子/ESTに適用され、誤った発見率(FDR)(23)は、仮説の複数テストを正すのに使用された。識別特性の分類能力は、階層クラスタリングによって試料を分類することで例証された。LOOCVは、同定された分子シグネチャーおよび監視された分析の妥当性の予測の正確性を推定するのに適用され、それぞれの試料は、無排除試料上で画定されたモデルを使用して、1つずつ排除され、線形判別分析(LDA)(24)で分類された。
【0193】
リアルタイムRT−PCR。異なる細胞株からALDEFLUOR陽性およびALDEFLUOR陰性集団が分類された後、総RNAは、RNeasy Mini Kit (QIAGEN)を使用して単離され、384ウェル遮断モジュールおよび自動アクセサリ(Applied Byosystems)とともに、ABI PRISM(商標登録)7900HT配列検出システムのリアルタイム定量RT−PCR(qRT−PCR)検定のために利用された。Taqmanシステムのためのプライマーおよびプローブは、Applied Byosystemsのウェブサイトから選択された。PCRプライマーペアの配列およびCXCR1、FBXO21、NFYA、NOTCH2、RAD51L1、およびTBPに使用される蛍光発生プローブは、Applied Byosystemsのウェブサイトで利用可能である(CXCR1検定ID:Hs_00174146_mi;FBXO21検定ID:Hs_00372141_mi,NFYA検定ID:Hs_00953589_mi,NOTCH2検定ID:Hs_01050719_mi,RAD51L1検定ID:Hs00172522_mi,TBP検定ID:Hs_00427620_mi)。CXCR1、FBXO21、NFYA、NOTCH2、RAD51L1の相対発現mRNAレベルは、既に(25)に記載のように、RNAの質および入力cDNA量の変化を標準化するために、内部標準TBP遺伝子に関してコンピュータ計算された。
【0194】
浸潤検定。検定は、12ウェルプレート(Corning,NY)のための8um孔ポリカーボネートフィルタ挿入物でトランスウェルチェンバ内で、3重で行われた。フィルタは、1時間37°Cで培養されたDMEM/F12内の、氷のように冷たい1:6基底膜抽出物(Matrigel,BD−Bioscience)30ulで被覆された。細胞は、無血清培地の200ulの上部チェンバに付加された。浸潤検定において、5000細胞は、マトリゲル被覆フィルタ上に播種され、下部チェンバは、10%ヒト血清(Cambrex)で補われた培地600ulまたはIL8(100ng/mL)で補われた無血清培地600ulで満たされた。48時間培養した後、フィルタ底面の細胞は、光学顕微鏡を使用して計数された。相対浸潤は、血清条件の下、未分離の対応する細胞株に標準化された。
【0195】
レンチウイルス感染。発光酵素遺伝子導入において、HCC1954、MDA−MB−453、およびSUM159からの70%集密的細胞は、培地のレンチウイルスの上澄みであるレンチLUC−VSVG(ベクターコア,Ann Arbor, MI)1:3沈殿混合物で、一晩、培養された。次の日、細胞は、トリプシン/EDTAによって収穫され、1:6の比率でサブ培養された。1週間培養した後、細胞は、ALDEFLUOR表現型に従って分類され、発光酵素発現は、それぞれの分類された集団(ALDEFLUOR陽性およびALDEFLUOR陰性)で、培地に2mLのD−luciferin0.0003%(Promega,Madison,WI)を付加し、素子カメラシステム(Xenogen,Alameda,CA)によって光子束を数えることによって検証された。
【0196】
心臓内接種。生後6週間のNOD/SCIDマウスは、2%イソフルラン/空気混合物で麻酔され、Ca2+およびMg2+欠失無菌ダルベッコPBS100μL内の100,000細胞を左心室に注射された。3つの細胞株それぞれ(HCC1954、MDA−MB−453、SUM159)およびそれぞれの集団(ALDEFLUOR陽性、ALDEFLUOR陰性、および未分類)に対し、3動物が注射された。
【0197】
生物発光検出。接種およびその後の各週の接種の前に、基準値生物発光が評価された。マウスは、2%イソフルラン/空気混合物で麻酔され、PBS中150mg/kg D−ルシフェリン(Promega,Madison,WI)の量の単回腹腔内投与が与えられた。そして、D−ルシフェリンの投与の6分後、動物は再度麻酔された。光子束を数えるために、電荷結合素子カメラシステム(Xenogen,Alameda,CA)が、ノーズコーンイソフルラン送達システムおよび体温維持のための加熱段階で使用された。Xenogenイメージングシステムで提供される生存イメージソフトウェアを使用して2〜12分露出した後、結果が分析された。シグナル強度は、データ後処理中に手作業で配置された関心のある均質領域内で、検出された全光子束数の合計として定量された。標準化された光子束は、接種後の各週に検出される光子束および接種前に検出される光子束の割合を代表する。
【0198】
統計的分析。結果は、それぞれの群の少なくとも3つの繰り返しの個別実験に対し、平均±標準偏差として表される。統計的分析は、SPSSソフトウェア(10.0.5版)を使用した。試料群と分子パラメータの間の相関関係は、フィッシャー抽出テストまたは独立系試料のワンウェイ分散分析で計算された。p値0.05は、有意と考えられた。
【0199】
乳腺細胞株の大部分は、ALDEFLUOR陽性集団を含む。ALDEFLUOR検定(17)は、多様な分子亜類型および乳癌の特徴を表す33BCLからCSCを単離するのに使用された(20)。33細胞株中23が、0.2からほぼ100%に近い範囲のALDEFLUOR陽性細胞集団を含むことが発見された。12中7の管腔BCLが、いずれの検出可能なALDEFLUOR陽性細胞(p=0.0006、フィッシャー抽出テスト)も含まないのに対し、16基底/間葉BCLは全て、ALDEFLUOR陽性集団を含んでいた。
【0200】
ALDEFLUOR陽性細胞は、腫瘍球形成能力を有する。乳房上皮幹細胞および前駆細胞は、足場非依存性条件で生存し増殖することが可能で、マンモスフィアと呼ばれる浮遊球形コロニーを形成することが以前に報告されていた(18)。乳腺腫瘍ならびに細胞株からのデータは、癌幹のような細胞または癌発動細胞は、同様の検定において「腫瘍球」として単離または増殖もされ得ることを証明した(26)。正常なヒト乳腺のマンモスフィアを引き起こす全細胞は、ALDEFLUOR陽性集団内に含まれている(17)。BCLからのALDEFLUOR陽性集団を特徴付けるために、184A1、SUM149、およびSUM159からのALDEFLUOR陽性および陰性集団の腫瘍球を形成するための能力が比較された。それぞれの細胞株で、ALDEFLUOR陽性集団は、ALDEFLUOR陰性細胞に比較して増大した腫瘍球形成能力を示した。
【0201】
ALDEFLUOR陽性BCL細胞は、インビボに癌幹細胞特性を有する。BCLの階層的組織を決定するために、MDA−MB−453、SUM159、およびBrCa−MZ−01細胞株のALDEFLUOR陽性および陰性集団の幹細胞特性が、分析された。これらの3つのBCLのALDEFLUOR陽性集団は、全細胞集団の3.54±1.73%〜5.49±3.36%間に構成された(図1A〜B、G〜H、図2A〜B)。図1F、Lに示すように、腫瘍形成のサイズおよび潜伏は、注射されたALDEFLUOR陽性細胞の数に関連付けられた。注目すべきことに、MDA−MB−453からの500のALDEFLUOR陽性細胞およびSUM159からの1,000のALDEFLUOR陽性細胞は腫瘍を形成することができた。腫瘍生成能力は、これらの細胞の自己再生能力を証明する連続継代を通じて維持された。対照的に、50,000のALDEFLUOR陰性MDA−MB−453細胞が注射された時に、限定的な成長が産出されたが、ALDEFLUOR陰性細胞は、腫瘍を生成しなかった。脂肪パッド切片のH&E染色法が、ALDEFLUOR陽性細胞によって形成された腫瘍が悪性細胞を含むことを確認したが、残留マトリゲル、アポトーシスを起こした細胞、およびマウスの組織のみがALDELFUOR陰性細胞注射の部位で見られた(図1E、K)。ALDEFLUOR陽性集団が癌幹細胞特性を有する事実と一致して、この集団によって生成された腫瘍は、ALDEFLUOR陽性および陰性細胞と同一の割合で当初の腫瘍の表現型の不均一性を繰り返した。(図1C、I)。これは、ALDEFLUOR陽性細胞が、自己再生でALDEFLUOR陽性細胞を生成することが可能で、分化でALDEFLUOR陰性細胞を生成することが可能であることを示した。
【0202】
BrCa−MZ−01細胞が、ALDEFLUOR陽性および陰性構成物に分離された時、両方とも腫瘍生成可能であった。ALDEFLUOR陽性集団によって生成された腫瘍は、当初の腫瘍の表現型の不均一性を繰り返すALDEFLUOR陽性および陰性細胞の両方から構成された。対照的に、ALDEFLUOR陰性細胞によって生成された腫瘍は、ALDEFLUOR陰性細胞のみを含む成長の遅い腫瘍を生じさせた。連続的に移植されるALDEFLUOR陽性細胞の能力とは対照的に、ALDEFLUOR陰性腫瘍の連続継代は、3つの経過に続いて成長しないことで腫瘍を成長の低下させた。これは、BrCa−MZ−01細胞のALDEFLUOR陽性構成物は、幹細胞特性をもつ細胞を含むが、ALDEFLUOR陰性細胞は、限定的に成長を実行することはできるが自己再生はしない前駆細胞を含むことを示唆する。
【0203】
ALDELFUOR陽性および陰性細胞集団の遺伝子発現プロファイリング。異なるBCLから分離されたALDEFLUOR陽性細胞が、「癌幹細胞」遺伝子の共通セットを発現したかを決定するために、8つのBCL(184A1、BrCa−MZ−01、HCC1954、MDA−MB−231、MDA−MB−453、SK−BR−7、SUM49、およびSUM159)から分離されたALDEFLUOR陽性および陰性細胞集団は、アフィメトリクス全ゲノムオリゴヌクレオチドマイクロアレイを使用して分析された。16試料に適用される監視されていない階層クラスタリングおよび13,550のろ過された遺伝子/ESTは、ALDEFLUOR陽性および陰性集団を分離しなかった。代わりに、ALDEFLUOR陽性および陰性集団は、親細胞株でクラスター化された。これは、クローン細胞株間のmRNA転写産物の違いが、ALDEFLUOR陽性とALDEFLUOR陰性細胞との間の違いに取って替わることを示唆する。これは、限定的な数の遺伝子のみが、差次的に推定癌幹細胞とその子孫との間に発現することをさらに提示した。
【0204】
どの遺伝子が、ALDEFLUOR陽性および陰性集団を区別するのかを決定するために、マン−ホイットニーのUテストが全遺伝子に適用されたが、低および不完全に測定された発現、すなわち25,285プローブセットをもつものであった。FDR補正後、このテストは、ALDEFLUOR陽性および陰性細胞集団を区別した413遺伝子/ESTを同定し、位置づけた。独自の遺伝子に対応する28の過剰発現した遺伝子を表1に示し、最も頻繁に低発現した遺伝子を表2に示す。
【0205】
【表15】
【0206】
【表16】
【0207】
【表17】
【0208】
【表18】
【0209】
【表19】
【0210】
【表20】
【0211】
この識別シグネチャーの分類力は、16のALDEFLUOR陽性および陰性試料を、413の差次的に発現された遺伝子/ESTを分類することで例証された。階層クラスタリングは、16試料中15をランク付けした(図2A)。
【0212】
幹細胞生物学の役割を果たすことが知られているNFYA、NOTCH2、PCNX、RBM15、ST3GAL3、およびTPRXLを含む多くの遺伝子が、ALDEFLUOR陽性集団(表1)で、上方制御された。例えばARID1B、RAD51L1、およびケモカイン受容体CXCR1/IL8RAのような他の遺伝子は、幹細胞機能、で、推定または特徴付けられていない役割を有するタンパク質をエンコードする(27)。ALDEFLUOR陽性集団内で低発現される遺伝子は、細胞分化、アポトーシス、RNAスプライシング、およびミトコンドリアの代謝に関与する。
【0213】
分析の厳密さを向上させるため、マン−ホイットニー分析の閾値は、0.5リスクに上げられ、ALDEFLUOR陽性および陰性集団を区別する49遺伝子/ESTのリストを得た(表1〜2のアスタリスクのある遺伝子)。このリストで、SK−BR−7からのものを除く、全ALDEFLUOR陽性細胞は、共にクラスター化された。これらの49遺伝子/EST中、45が同定された独自の遺伝子に対応し、これら45中たった3がALDEFLUOR陽性群内で過剰発現し、一方、42が低発現であった。特徴付けられた過剰発現した遺伝子は、Fボックスタンパク質FBXO21およびCXCR1/IL8RAをコードする。低発現遺伝子は、ミトコンドリアのタンパク質(MRPL41、MRPL42、MRPL47、MRPL54、MRPS23、IMMP1L)のコード化、および分化(NACA)およびプレmRNAスプライシング因子(LSM3、プレmRNAプロセッシング因子PRPF39およびPRPF4B)を含む。0.5%リスクのLeave−one−out交差検定(LOOCV)は、同定分子シグネチャーの予想の正確性を推定し、試料の88%は、監視された分析を確認するこの「癌幹細胞シグネチャー」で右のクラスに予想された。
【0214】
定量RT−PCR評価は、ALDEFLUOR陽性細胞内のCXCR1およびFBXO21の重大な増加を確認した。ALDEFLUOR陽性集団内の過剰発現した5つの識別遺伝子の定量RT−PCR分析(CXCR1/IL8RA、FBXO21、NFYA、NOTCH2、およびRAD51L1)が実行された。プロファイリング分析に使用された3細胞株(BrCa−MZ−01、MDA−MB−453、SUM159)および2つの追加の管腔細胞株(MCF7、S68)は、ALDEFLUOR検定で分類され、ALDEFLUOR陽性および陰性集団は、定量RT−PCR分析でそれぞれ処理された。CXCR1およびFBXO21の定量RT−PCR発現レベルは、図2BおよびCに表される。定量RT−PCRで測定される遺伝子発現レベルは、ALDEFLUOR陰性集団に比較したALDEFLUOR陽性集団でCXCR1およびFBXO21 mRNAレベルが上昇する、DNAマイクロアレイを使用して得られた結果を確認した(p<0.05)。
【0215】
IL8は、癌幹細胞自己再生を促進する。プロファイリング研究は、IL8受容体CXCR1/IL8RAが、一貫してALDEFLUOR陽性細胞集団に発現したことを示唆した。この関連を確認するために、CXCR1/IL8RAのタンパク質発現は、フローサイトメトリーによってALDEFLUOR陽性および陰性集団内で測定された。異なる4つの細胞株からのALDEFLUOR陽性および陰性集団は、FACSによって単離され、固定されて、フィコエリスリンで標識化されたCXCR1単クローン性の抗体と染色された。図3Aに示すように、ALDEFLUOR陽性細胞は、CXCR1陽性細胞内に、ALDEFLUOR陰性集団に比較して非常に豊富に含まれた。
【0216】
IL8シグナル伝達が、幹細胞機能において重要かどうかを決定するために、4つのBCLが、腫瘍球形成およびALDH酵素活性によって測定された癌幹細胞集団上へのその効果を決定するために、ヒト組み換えIL8で処置された。図3Bに示すように、IL8の付加は、用量依存的に第1および第2の腫瘍球形成を増大した。さらに、IL8は、分析された4つのBCLのそれぞれでALDEFLUOR陽性集団を用量依存的に増大させた(図3C)。これは、幹細胞機能で役割を果たすかもしれない経路を同定する「CSCシグネチャー」の力を例証する。
【0217】
IL8/CXCR1軸は癌幹細胞浸潤に関与する。IL8/CXCR1軸は、癌幹細胞浸潤の役割を果たすと報告されてきた(28、29)。3つの異なる細胞株(HCC1954、MDA−MB−453、SUM159)からのALDEFLUOR陽性および陰性細胞集団の浸潤能力を検証するために、誘引物質として血清を使用して、マトリゲル浸潤検定が利用された。図4Aに示すように、ALDEFLUOR陽性細胞は、ALDEFLUOR陰性集団よりマトリゲルを通じて6倍〜20倍高い浸潤を証明した(p<0.01)。化学誘引物質として使用されるとき、IL8(100ng/mL)は、ALDEFLUOR陽性細胞の浸潤を増大させた(p<0.05)(図4A)。ALDEFLUOR陽性細胞への影響とは対照的に、IL8は、ALDELFLUOR陰性細胞の浸潤能には何の影響もなかった。これらの結果は、癌幹細胞が浸潤行動を示し、さらに、IL8がこのプロセスを促進することを示した。
【0218】
ALDEFLUOR陽性細胞は、転移能を増大させた。CSCが、癌転移において重大な役割を果たすことが提唱されてきた(30、31)。上記の実験は、ALDEFLUOR陽性細胞が、ALDEFLUOR陰性細胞に比較して浸潤能を増大させたことを証明した。ALDEFLUOR陽性と転移能力との関係を決定するために、HCC1954、MDA−MB−453、およびSUM159は、発光酵素レンチウイルスレポーターシステムに感染された。ルシフェラーゼ感染細胞は、ALDEFLUOR検定を使用して分類され、心臓内の注射によってNOD/SCIDマウスに導入された。それぞれの集団からの100,000細胞の懸濁液が注射され、転移は、生物発光のイメージングによって評価された。ALDEFLUOR陽性細胞を接種されたマウスは、異なる部位に転移を発達させ、分離されていない細胞を接種されたマウスで、1マウスあたり1転移以下を発達させたマウス、またはALDEFLUOR陰性細胞を培養されたマウスで、リンパ節に限定した偶発の転移のみを発達させたマウス、より高い光子束の放出を示した(図4B〜J)。組織学的切片は、これらの部位に転移の存在を確認した(図4K〜M)。このように、BCLの転移能は、ALDEFLUOR陽性集団に含まれるCSCによって支配的に媒介される。
【0219】
腫瘍がCSCによって駆動される細胞階層内で組織化されるという仮説は、癌生物学における基礎的意味、ならびに癌の初期検出、予防法および治療法における臨床の意味を有する。CSCの証拠は、大きく第1および初期経過異種移植モデルに依存する(32〜34)。しかしながら、乳腺腫瘍異種移植の確立の成功は、特に一部の分子亜類型では低下かった。第1の腫瘍とは対照的に、細胞株は、制限なしの量で利用可能であり、正常な組織および間質無しの分子分析のための癌性集団のみを提供する。乳癌においては、第1のヒト乳癌で発見された異なる分子亜類型を代表する大部分の不死化細胞株が産出された(2、20)。しかしながら、これらの細胞株は、どれだけ密接にヒト乳癌の生物学を繰り返すことが可能かに関する基礎的疑問は、残っている。
【0220】
細胞株内の幹細胞のためのインビボ証拠。最近の研究は、細胞株はクローン的に由来されるかもしれないが、細胞分化の様々なステージを代表する細胞階層を含むことを示唆した。幾つかの研究は、乳癌細胞株内のCSCを同定するためにCD44+/CD24−等のマーカーを利用した。しかしながら、その利便性は、頻繁に細胞株内の大部分の細胞がこの推定幹細胞マーカーを発現することが観察されることから、限定的である。例えば、基礎の乳癌細胞株の90%を超える細胞は、CD44+/CD24−表現型を表す。実際、CD44+/CD24−表現型は、これらの細胞株の腫瘍原性の集団を単離しなかった(Ginestier et al. Cell Stem Cell 1:555−567、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。代替的アプローチは、細胞株からのSPを使用してきた。しかしながら、ヘキスト染色法を利用する機能的研究は、剤の毒性によって限定されている(35)。機能的幹細胞活性は、SP内に含まれない証拠もある(36)。ALDEFLUOR検定によって評価されるALDH活性は、種々の癌から幹細胞特性を有する細胞を単離する(14、37)。この実施例によって、33中23のBCL(支に基底細胞株)が、ALDEFLUOR陽性集団を含むことが証明された。いくつかの管腔BCL内のALDEFLUOR陽性集団の欠失が、これらの管腔BCLは、ALDEFLUOR陰性前駆細胞から得られたことを示すかもしれない。
【0221】
この実施例は、ALDEFLUOR陽性集団の幹細胞特性を証明するために、NOD/SCIDマウスのインビボ検定を利用した。自己再生は、NOD/SCIDマウスの連続継代によって証明され、分化は、ALDEFLUOR陰性細胞ではなく、ALDEFLUOR陽性細胞の当初の腫瘍の細胞の不均質性を再生成する能力によって証明された。
【0222】
乳癌幹細胞シグネチャー。8個の乳腺細胞株を利用することで、この実施例は、その遺伝子の発現がALDEFLUOR陽性および陰性細胞を区別する413遺伝子を同定した。このシグネチャーは、幹細胞生物学の役割を果たすことで知られる多くの遺伝子を含んだ。ALDEFLUOR陽性集団内で過剰発現した遺伝子は、乳腺幹細胞(18、38)の自己再生および分化を規制するNotchホモログ2(NOTCH2)、幹細胞の自己再生および分化を制御することで知られるNFYA(39、40)、造血幹細胞の多面的な役割を果たし(41)、NOTCHシグナル伝達を通じて骨髄分化に作用する(42)pecanexホモログPCNXであるRBM15/OTT、胚性発達を伴うホメオボックス様因子TPRXL、ステージ特異的な胚性抗原4シンセターゼをコード化し、致命的な発達および腎臓および胃の発癌に関連付けられた(43)ST3GAL3、を含む。著しく、ステージ特異的な胚性抗原4タンパク質(SSEA−4)は、ヒト臍帯血および静止状態の乳腺幹細胞内のCXCR4+/CD133+/CD34+/lin幹細胞等の幹細胞集団に発現される(44)。
【0223】
ALDEFLUOR陽性集団の低発現した遺伝子は、細胞分化、アポトーシス、およびミトコンドリアの酸化に関与する。それらは、新生ポリペプチド関連複合体アルファサブユニットNACAをコードする遺伝子、プログラムされた死亡タンパク質PDCD5ならびにPDCD10、ミトコンドリアのリボソーマルタンパク質L41(MRPL41)であって、BCL2ならびにカスパーゼを通じてP53依存ならびに非依存の方法でアポトーシスを誘導するタンパク質、および、例えば、酸化リン酸化反応(NDUFA2、ATP5J2、IMMP1L)およびミトコンドリア内のタンパク質合成(MRPL42、MRPL47、MRPL54、MRPS23)のような、ミトコンドリアのプロセスに関与するタンパク質を含む。CSCのアポトーシス遺伝子の下方制御は、放射線および化学療法へのこれらの細胞の抵抗の役割を果たすかもしれない(45、46)。ALDH1A1は、ALDEFLUOR陽性シグネチャー内に差次的に発現した遺伝子として同定されなかった。しかしながら、個別BCLの遺伝子発現プロファイルの検査は、ALDEFLUOR陽性集団内のALDH1A1の差次的発現を示すものがある一方で、この集団の異なるALDHアイソフォームであるALDH1A3の差次的発現を示すものがあったことを明らかにした。これは、異なるALDHアイソフォームの発現が、ALDEFLUOR陽性表現型に貢献し得ることを示唆する。
【0224】
ケモカインから「ステモカイン(stemokine)」に。IL8の受容体であるCXCR1の発現は、様々な癌で増大する(47〜50)。IL8発現は、ER陰性乳癌と関連する(51)が、このケモカインは、幹細胞機能の役割を果たすことは以前には報告されていなかった。成長および転移の制御におけるその意味は、アンドロゲン非依存性前立腺癌に十分定着されている(52)。さらに、IL8の発現レベルは、VEGF生成および血管形成を通じた腫瘍形成能および転移と関連している(53、54)。遺伝子発現データは、3方法で検証された。第1に、定量RT−PCR分析は、プロファイリング分析ではなく、両方が細胞株からのALDEFLUOR陽性内で培養されたCXCR1mRNAの著しい増大を確認した。第2に、CXCR1含有細胞が、ALDEFLUOR陽性集団内に排他的に発見されることがフローサイトメトリーを使用して証明された。第3に、組み換えIL8は、BCL内のマンモスフィア形成およびALDEFLUOR陽性細胞の割合を増大させた。したがってIL8/CXCR1軸は、そのように乳腺幹細胞増殖または自己再生を制御するように思われる。内皮および間質細胞はIL8を分泌するので、このケモカインは、腫瘍幹細胞と腫瘍微小環境との間で媒介作用の役割を果たすと思われる。
【0225】
最新の研究は、CSCの制御におけるインターロイキン/ケモカインの役割を示唆している(55、56)。これは、乳房CSCのIL6および結腸CSCの化学療法抵抗性を媒介するIL4の役割を含む(56〜59)。これらの因子は、炎症と癌の間の関係に関わるかもしれない。これはまた、間葉幹細胞によって分泌されたケモカインであるCCL5(RANTES)の役割を含み、それはパラ分泌因子として働き、乳癌細胞運動性、浸潤、および転移を増強する(55)。
【0226】
転移の根。CSCは、腫瘍転移の媒介に関与しているかもしれない。CSCと転移とのリンクは、比較上の転移のプロファイルを使用して生成された11遺伝子シグネチャーの幹細胞遺伝子および前立腺癌の遺伝子組み換えマウスモデルおよび癌患者(60)内の第1の腫瘍の同定でまず示唆された。このシグネチャーは、様々な癌タイプの疾患再発、療法後の死亡、および遠隔転移の強力な予測因子でもあった。この実施例は、ALDEFLUOR陽性細胞は、ALDEFLUOR陰性細胞より多く転移し、過去に腫瘍転移の役割を果たすと報告されていたIL8は、選択的にIL8受容体CXCR1を発現する癌幹細胞の浸潤および走化性を促進することを証明した。細胞株から転移癌幹細胞を単離する能力は、腫瘍転移を媒介する癌幹細胞によって分子機構の研究を促進せねばならない。
【0227】
(実施例2)
CXCR1抑制および併用療法
この実施例は、CXCR1抑制、ならびに抗有糸分裂剤(ドセタキセル)を併用するCXCR1抑制を併用した場合の腫瘍細胞上の効果をテストするために採用された種々の方法を記載する。
【0228】
細胞成長およびSUM159細胞株のALDEFLUOR陽性集団上のCXCR1抑制効果
SUM159細胞株は、付着条件で培養され、CXCR1/CXCR2阻害剤レペルタキシンまたはCXCR1またはCXCR2のための2つの特定の遮断抗体を使用して細胞を処理された。治療法の4日後、細胞成長への影響はMTT検定(図5A)を使用して、癌幹細胞集団への影響はALDEFLUOR検定(図5B)を使用して分析された。細胞成長抑制の95%以上が、レペルタキシンまたはCXCR1遮断抗体で処置された細胞で観察され、CXCR2遮断抗体で処置された細胞では何の効果も観察されなかった(図5A)。興味深いことに、同様の効果が、レペルタキシンおよびCXCR1遮断抗体のそれぞれで処置された細胞のALDEFLUOR陽性集団の80%および50%低下したALDEFLUOR陽性集団上で観察された(図5B)。
【0229】
レペルタキシン治療法は、FAS/FASリガンドのシグナル伝達によって媒介されたバイスタンダー効果を誘導する
SUM159細胞株細胞は、付着条件で培養されて、レペルタキシン単独で、またはFAS拮抗薬との併用で処置された。興味深いことに、レペルタキシン処置によって誘導された細胞成長抑制は、FAS拮抗薬(BD pharmingen(cat#556371)からの抗/Fasリガンド)の追加によって部分的に救助された。さらに、FAS作用薬で処置された細胞は、レペルタキシンで処置された細胞よりも同様の細胞成長抑制を示した。これらの結果は、レペルタキシン治療法が、FAS/FASリガンドのシグナル伝達によって媒介されるバイスタンダー効果を誘導することを示唆する。
【0230】
FAK、AKT、およびFOXOA3活性へのレペルタキシン治療法の効果
CXCR1下流シグナル伝達上のレペルタキシン治療法の効果を評価するために、SUM159細胞は、レペルタキシン100nMの存在の有無の付着条件で2日間培養され、抗体剤p−FAK、p−AKT、およびFOXOA3に対する抗体で免疫蛍光によって染色された。無処置の細胞(図7A)において、p−FAKを発現する細胞の30%およびp−AKTを発現する細胞の10%が、不活性化を示した一方で、レペルタキシン処置された細胞が、p−FAKおよびp−AKTの完全な不活性化を示した(図7B)ことが検出された。無処置のSUM159細胞は、FOXOA3の細胞質内で細胞陽性の80%を表した。興味深いことに、レペルタキシン処置されたSUM159細胞は、FOXOA3の核内の細胞陽性の80%を表した。細胞質から核へのFOXOA3細胞局在の変更は、FOXOA3タンパク質の活性を示す。
【0231】
レペルタキシン、ドセタキセル、またはその併用での治療法に続く腫瘍成長曲線
レペルタキシン、ドセタキセル、またはその併用の効果は、1つの乳癌細胞株(8A、SUM159)および異なる患者(8B、MC1;8C、UM2;および8D、UM3)から生成された3つの人間乳癌異種移植片を使用して評価された。試料のそれぞれで、50,000細胞は、腫瘍サイズを観察されるNOD−SCIDマウスの乳房脂肪体に注射された。腫瘍サイズが約4mmの時に、注射が開始された。レペルタキシンは、1日2回28日間または一週間に1度注射され(15mg/Kg)、ドセタキセルの腹腔内注射(10mg/Kg)、またはその併用(レペルタキシン/ドセタキセル)が採用された。図8は、示された治療法(矢印は、治療法の開始)の事前、経過中の腫瘍サイズを示す。ドセタキセル単独で、またはレペルタキシン/ドセタキセルと併用で処置されたときに、対照に比較して(p<0.01)、それぞれの試料(SUM159、MC1、UM2、UM3)で統計的に優位な腫瘍サイズの縮小という、同様の結果が観察されたが、対照の腫瘍とレペルタキシン単独で処置された腫瘍の成長との間には違いが観察されなかった。
【0232】
ALDEFLUOR検定により評価される、癌幹細胞集団におけるレペルタキシン、ドセタキセル、またはそれらを併用した治療法の効果
ALDH活性は、レペルタキシン、ドセタキセル、またはその併用で処置されたそれぞれの腫瘍(9A。SUM159、9B。MC1、9C。UM2、9D。UM3)の癌幹細胞集団サイズを分析するALDEFLUOR検定によって評価された。同様の結果が、それぞれの試料で観察される。ドセタキセル処理の腫瘍異種移植片は、対照に比較して、ALDEFLUOR陽性細胞の同一または高い割合を示し、レペルタキシン治療法単独で、またはドセタキセルとの併用で、対照に比較して、統計的に有意な減少である、癌幹細胞内のALDEFLUOR陽性細胞の65%〜85%の減少を生じさせた(p<001)。
【0233】
第2のマウスの移植により評価される、癌幹細胞集団におけるレペルタキシン、ドセタキセル、またはそれらを併用した治療法の効果
未処理(対照)、およびレペルタキシン、ドセタキセル、またはそれらの併用で処理した第1の腫瘍(10A。SUM159、10B。MC1、10C。UM2、10D。UM3)から得られた細胞の連続希釈物が、第2のNOD/SCIDマウスの乳房脂肪体内に移植された。対照およびドセタキセル処置された第1の腫瘍は、全ての希釈において第2の腫瘍を形成し、レペルタキシンまたはドセタキセルとの併用で処置されたより高い濃度の第1の腫瘍のみが、対照またはドセタキセル処理された腫瘍より著しく小さいサイズの遅延した第2の腫瘍を形成することができた(p<0.01)。さらに、1000および100個の第1の併用処置された細胞は、4中3試料で第2の腫瘍(SUM159、UM2、UM3)を形成しなかった。
【0234】
レペルタキシン治療法は、SUM159細胞株の転移能を低下させる
SUM159細胞株は、発光酵素を発現するレンチウイルスに感染させられ、250,000の発光酵素感染細胞をNOD/SCIDマウスの心臓に接種された。マウスは、2群に組織化された。2群のマウスは、心臓内の注射の12時間後に、1日に2回、28日間、生理食塩水の皮下注射またはレペルタキシンの皮下注射(15mg/kg)を処置された。転移形成は、生物発光画像法を使用して観察された(11B:生理食塩水処置されたマウス、11C:レペルタキシン処置されたマウス)。接種に続いて一週間間隔で測定された標準光子束の定量化は、レペルタキシン(11A)で処置されたマウスの群に比較して、生理食塩水で処置されたマウスの群の転移形成において、統計的に有意な増加を明らかにした。
【0235】
(実施例3)
CXCR1遮断による癌幹細胞の治療法
本実施例は、インビトロ検定およびマウスモデルの両方を通じて、腫瘍細胞におけるCXCR1抑制の効果を証明する。
【0236】
乳腺組織の解離。整復乳房形成からの正常な乳房組織100〜200gは、小刀で刻まれ、酵素的に解離され、単細胞は、マンモスフィアを生成するために懸濁液内か、細胞分化を誘導するために付着条件でコラーゲン基層上に培養された(Dontu et al. Genes Dev. 17:1253−1270、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。
【0237】
細胞培養。乳癌細胞株は、推奨された培養条件を使用して生育された(Charafe−Jauffret et al. Cancer Res.69:1302−1313。参照により全体が本明細書に組み入れられる)。乳癌細胞株は、レペルタキシン(Sigma−Aldrich)、抗ヒトCXCR1マウス単クローン性の抗体(クローン42705、R&Dシステム)、抗ヒトCXCR2マウス単クローン性の抗体(クローン48311、R&Dシステム)、FASシグナル伝達作用薬として利用される抗ヒトCD95マウス単クローン性の抗体(クローンDX2、BD Pharmingen)、FASシグナル伝達拮抗薬として利用される抗ヒトFASリガンドマウス単クローン性の抗体(クローンNOK−1、BD pharmingen)、またはドセタキセル(Taxotere,Sanofi−Aventis)を使用して付着条件で処置された。
【0238】
細胞の生存。MTT検定において、細胞は、1ウェルにつき5,000細胞の96−ウェルプレートに付着条件で播種された。1日後、レペルタキシンでの治療法が、開始された。細胞生存能力上のレペルタキシン治療法の効果は、それぞれのウェルにMTT溶液(PBS内で5mg/mL)20μLを付加することで異なる時点で推定された。そして、細胞は、それぞれのウェルにDMSO50μLを付加した後、1時間37°Cで培養された。吸光度は、蛍光プレートリーダー(Spectrafluor,Tecan)において560nmで測定された。TUNEL検定において、細胞は、1ウェルにつき50,000細胞の6−ウェルプレートに付着条件で播種された。1日後、レペルタキシンでの治療法が、開始された。アポトーシスを起こした細胞の数は、治療法の4日後推定された。細胞は、3.7%ホルムアルデヒドで固定され、TACS TdTキット(R&D Systems)を利用して染色された。核は、DAPI/antifade(Invitrogen)で対比染色された。切片は、緑で検出されたアポトーシスを起こした細胞について蛍光顕微鏡(Leica,Bannockborn,IL,USA)で検査された。
【0239】
ALDEFLUOR検定。ALDEFLUORキット(StemCell technologies)は、既に記述されたように(Ginestier et al. Cell Stem Cell 1:555−567、参照により全体が本明細書に組み入れられる)、FACStarPlus(Becton Dickinson)を使用して高ALDH酵素活性を有する集団を単離するのに使用された。異種移植された腫瘍からのマウス由来の細胞を排除するために、、細胞集団は、抗H2Kd抗体(BD biosciences,1/200,20分氷上)で染色され、続いてフィコエリスリン(PE)(Jackson labs,1/250,20分氷上)で標識化された第2の抗体で染色された。
【0240】
ELISA検定。レペルタキシン処置された、またはされなかった細胞の培地において可溶性FASリガンド分泌のレベルを測定するために、ヒトsFASリガンドElisa(Bender Medsystems)が利用された。吸光度は、第1の波長として450nmを使用して分光光度計上で読み取られた。
【0241】
ウエスタンブロット法。細胞は、電気泳動用(laemmli)緩衝液に溶解され、SDSポリアクリルアミドゲル上に載せた。ブロットは、4℃で一晩または室温で2時間、TBST(0.1%Tween20および2%BSAを含む)で希釈されたそれぞれの第1の抗体で培養された。ブロットは、洗浄され、適切な第2の抗体(GE Healthcare, UK)で培養され、SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce)を使用して検出された。
【0242】
免疫染色。免疫蛍光染色において、分類されたCXCR1陽性細胞は、−20°Cで10分間、95%メタノールで固定された。細胞は、PBSで再水和され、室温で1時間、それぞれの抗体と培養された。使用された第1の抗体は、P−FAK(1:50、Cell Signaling Technology)、P−AKT(1:300、Cell
Signaling Technology)、およびFOXO3a(1:250、Cell Signaling Technology)であった。スライドは、その後洗浄され、PE接合した第2の抗体(Jackson labs)と30分間培養された。
【0243】
核は、DAPI/antifade(Invitrogen)およびカバーガラスを被せて対比染色された。切片は、蛍光顕微鏡(Leica, Bannockborn, IL, USA)で検査された。ALDH1(1:100,BD biosciences)、P−FAK、P−AKT、FOXO3a発現の検出のための免疫組織化学は、パラフィン切片(Ginestier et al. Am. J Pathol. 161:1223−1233、参照により全体が本明細書に組み入れられる)上で実施された。染色は、Histostainプラスキット(Zymed laboratories)を利用して実施された。ジアミノベンジジン(DAB)または3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)は、色素原として使用され、切片は、ヘマトキシリンで対比染色された。
【0244】
動物モデル。ALDEFLUOR陽性/CXCR1陽性およびALDEFLUOR陽性/CXCR1陰性SUM159細胞の腫瘍形成能は、NOD/SCIDマウス内で評価された(Ginestier et al. Cell Stem Cell 1:555−567、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。SUM159細胞株および3人の異なる患者(MC1、UM2、UM3)から生成された3個の第1のヒト乳癌異種移植片は、腫瘍の成長におけるレペルタキシン治療法の有効性を決定するために利用された(Ginestier et al. Cell Stem Cell 1:555−567、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。これらの腫瘍からの細胞は、インビトロ培養無しで、NOD/SCIDマウスのヒト化除去された脂肪パッド内で同所的に移植された。脂肪パッドは、既に記載されたように調整された(Ginestier et al. Cell Stem Cell 1:555−567、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。それぞれの異種移植片からの50,000細胞は、NOD/SCIDマウスのヒト化脂肪パッドに注射され、腫瘍の成長を観察された。腫瘍サイズがおおよそ4mmの時に、レペルタキシン単独(皮下注射、15mg/Kg、1日2回、28日間)、ドセタキセル単独(腹腔内、10mg/Kg、1週間に1回、4週間)、併用で(レペルタキシン/ドセタキセル)の治療、または生理食塩水を注射された対象群(腹腔内を1週間に1回および皮下注射を1日2回)が、開始された。腫瘍の壊死を避けるため、および研究における脊椎動物の使用のための規制に従い、腫瘍が最大直径でおおよそ1.5cmの時、動物は安楽死させられた。注射された脂肪パッドそれぞれの部分は、組織学分析のために、ホルマリンで固定され、パラフィンに埋め込まれた。腫瘍細胞の残りは、第2のNOD/SCIDマウスに再移植された。細胞の連続希釈物は、それぞれ処置された腫瘍に10,000、1,000、および100細胞を注射して再移植するために利用された。
【0245】
足場非依存性培養。レペルタキシン(100nM)、抗CXCR1抗体(10μg/mL)、または抗CXCR2(10μg/mL)で付着条件で処置されたBCLは、解離され、低密度(5000生存細胞/mL)で、極低付着プレート(Corning,Acton,MA)に単細胞としてプレーティングされた。細胞は、既に記載のように成育された(Charafe−Jauffret et al. Cancer Res. 69:1302−1313、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。第1の腫瘍球の解離後に続く培養は、5,000生存細胞/mLの密度で、極低付着プレートにプレーティングされた。腫瘍球を形成する細胞の能力は、第1の(第1の腫瘍球)および第2の(第2の腫瘍球)継代の後、定量化された。
【0246】
RNA抽出およびqRT−PCR。SUM159細胞が処置された後、総RNAは、RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を使用して単離され、ABI PRISM(商標登録)7900HT配列検出システムのリアルタイム定量RT−PCR(qRT−PCR)検定のために利用された。Taqmanシステムのためのプライマーおよびプローブは、Applied Biosystemsウェブサイトから選択された(www
dot appliedbiosystems dot com)(FASリガンド検定ID:Hs_00899442_mi;IL8検定ID:Hs_00174103_mi,TBP検定ID:Hs_00427620_mi)。FASリガンドおよびIL8の相対発現mRNAレベルは、既に記載のように、RNAの質および入力cDNA量の変化を標準化するために、内部標準TBP遺伝子に関してコンピュータ計算された(Ginestier et al. Clin. Cancer Res.12:4533−4544、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。
【0247】
フローサイトメトリー分析。CD44/CD24/Lin染色法が実行された(Ginestier et al. Cell Stem Cell 1:555−567、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。CD95/FAS染色法は、抗CD95標識APC(1:20,BD biosciences)を使用して実行された。CXCR1およびCXCR2染色法において、第1の抗体抗CXCR1(1:100、クローン42705、R&D Systems)および抗CXCR2(1:100、クローン48311、R&D Systems)に続いて、PE(希釈度1:250,Jackson Labs)で標識化された第2の抗体抗マウスで染色法が行われた。新鮮な細胞は、5分間、1μg/mL PI(Sigma)で、生存性のために染色された。
【0248】
ウイルス感染。2つの異なるレンチウイルス構築物は、ルシファラーゼ遺伝子(レンチLUC−VSVG)(Charafe−Jauffret et al. Cancer
Res. 69:1302−1313、参照により全体が本明細書に組み入れられる)の発現およびPTEN発現(レンチPTEN−siRNA−DsRed)(Korkaya et al. PLoS Biolog. 7:e1000121、参照により全体が本明細書に組み入れられる)の抑制のために、それぞれ産生された。全てのレンチウイルス構築物は、ミシガン大学ベクターによって調製された。FAK(Ad−FAK−GFP)の過剰発現用のアデノウイルス構築物も、利用された(Luo et al. Cancer Res. 69:466−474、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。異なるベクターでの細胞感染は、既に記載のように実行された(Charafe−Jauffret et al. Cancer Res. 69:1302−1313、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。感染の効率性は、DsRedまたはGFP発現細胞の割合を測定することで検証された。
【0249】
心臓内接種。生後6週間のNOD/SCIDマウスは、2%イソフルラン/空気混合物で麻酔され、Ca2+およびMg2+欠失無菌ダルベッコPBS100μL内の250,000細胞を左心室に注射された。3細胞株(HCC1954、MDA−MB−453、およびSUM159)およびそれぞれの治療法(生理食塩水またはレペルタキシン)について、6動物が注射された。心臓内の注射の12時間後、マウスは、1日2回、レペルタキシン注射または対照には生理食塩水注射を開始された。
【0250】
生物発光検出。接種およびその後の各週の接種の前に、基準値生物発光が評価された。生物発光検出手順は、既に記載のように実行された(Charafe−Jauffret
et al. Cancer Res. 69:1302−1313、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。標準化された光子束は、接種後の各週に検出される光子束および接種前に検出される光子束の割合を代表する。
【0251】
CXCR1発現は、癌幹細胞集団を細分する。癌幹細胞(CSC)を制御する細胞シグナル伝達経路を同定することは、細胞集団の潜在治療標的を提供する。乳房CSC制御経路に潜在的に関与する複数の遺伝子を含む遺伝子発現プロファイリンに基づく乳房CSCシグネチャーが、同定された(Charafe−Jauffret et al. Cancer Res. 69:1302−1313、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。乳房CSC集団内で過剰発現した遺伝子内で、炎症性のケモカインIL−8/CXCL8を結合するCXCR1a受容体は、組み換えIL−8が、乳房CSCの自己再生を刺激したため、有望な候補であると思われた(Charafe−Jauffret et al. Cancer Res. 69:1302−1313、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。フローサイトメトリーを利用して、CXCR1タンパク質発現は、ヒト乳癌細胞株HCC1954、MDA−MB−453、およびSUM159内でALDELFUOR検定によって評価されるように、乳房CSC集団内で測定された。NOD/SCIDマウス異種移植片の機能的幹細胞特性を有する細胞は、ALDEFLUOR陽性細胞集団内に含まれた(Charafe−Jauffret et al. Cancer Res. 69:1302−1313、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。CXCR1陽性集団は、集団全体の2%未満を代表し、ほぼ排他的にALDEFLUOR陽性集団内に含まれた(図12Aおよび表4参照)。
【0252】
【表21】
【0253】
CXCR2発現もまた評価された。CXCR1に比較して低い親和性であるが、CXCR2は、IL−8/CXL8も結合できる受容体である。CXCR1陽性細胞とは対照的に、CXCR2陽性細胞は、ALDEFLUOR陽性とALDEFLUOR陰性集団との間に等しく分配された(図12A参照)。CXCR1発現にしたがって癌幹細胞集団の階層的組織を決定するために、ALDEFLUOR陽性/CXCR1陽性およびALDEFLUOR陽性/CXCR1陰性細胞集団は分類され、NOD/SCIDマウスに注射された(図13参照)。両細胞集団は、腫瘍を生成した。腫瘍成長速度は、腫瘍形成の潜伏かつ規模ならびに注射された細胞の数に相関した。ALDEFLUOR陽性/CXCR1陽性集団によって生成された腫瘍は、連続継代において当初の腫瘍の表現型の不均一性を再構成したが、ALDEFLUOR陽性/CXCR1陰性集団は、ALDEFLUOR陽性/CXCR1陰性細胞のみを含む腫瘍を生じさせた。これらの結果は、CSC細胞階層は、CXCR1発現にしたがって組織化されることを示唆するが、しかしながら、両細胞集団が、同様の腫瘍原性の能力を示した。
【0254】
CXCR1遮断は、インビトロ乳癌幹細胞集団を低下させる。3つの異なる細胞株は、乳房CSC集団上のCXCR1遮断の効果を評価するために、レペルタキシン(100nM)、CXCR1/2阻害剤で処置された(Bertini et al. Proc.
Natl. Acad. Sci. U. S A 101:11791−11796、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。SUM159について、治療法の3日後、ALDEFLUOR陽性細胞の割合の5倍の低下が観察された(図12B参照)。同様の効果が、抗CXCR1遮断抗体でのSUM159細胞の治療法後に観察された。対照的に、抗CXCR2遮断抗体での治療法後は何の効果も観察されず、ALDEFLUOR陽性集団上のレペルタキシン効果が、CXCR1によって媒介されたことを示唆する。
【0255】
乳腺腫瘍ならびに細胞株からのデータは、癌幹のような細胞または癌発動細胞は、懸濁液培養において「腫瘍球」として単離も増殖もされ得ることを証明する(Ponti et al. Cancer Res. 65:5506−5511、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。レペルタキシンまたは抗CXCR1遮断抗体での治療法の3日後、細胞が、脱離されて、懸濁液で培養された時、第1のおよび第2の腫瘍球形成の8倍の低下が対照に比較して観察された。対照的に、抗CXCR2遮断抗体は腫瘍球形成に何の効果も無かった(図14参照)。
【0256】
驚くべきことに、レペルタキシンでの治療法の5日後、我々は、MTT検定で評価された細胞集団全体の生存能力において、生存可能であり続ける細胞はたった3%であるという、大規模な低下を観察した(図12C参照)。類似の結果が、抗CXCR1遮断抗体で観察されたが、抗CXCR2遮断抗体では観察されず、よって、この効果がCXCR1遮断に依存していることを示した。レペルタキシンのこの効果は、治療法の3日後に開始する細胞生存能力の欠失で遅延された(図15A参照)。レペルタキシン治療法は、HCC1954乳癌細胞株上に類似の効果を誘導したが、PTEN変異体を宿すMDA−MB−453細胞においては何の効果も観察されなかった(Hollestelle et al. Cancer Res. 5:195−201、参照により全体が本明細書に組み入れられる)(図14、15B〜C、および16参照)。
【0257】
TUNEL検定を利用して、SUM159細胞は、治療法の4日後、レペルタキシンで染色され、レペルタキシン治療法後に検出された36%のアポトーシスを起こした細胞でのアポトーシスの誘導による、細胞の生存能力の大規模な低下が、観察された(図12D参照)。結果は、CXCR1遮断が、乳房CSC集団の低下をもたらし、続いて残存する腫瘍集団全体において大規模なアポトーシスを誘導すること、を示唆する。
【0258】
CXCR1遮断は、バイスタンダー効果を通じてCXCR1陰性細胞の細胞死を誘導する。CXCR1陽性集団は総細胞集団の2%未満を表すという事実にもかかわらず、レペルタキシンまたは抗CXCR1遮断抗体が、大規模な細胞死を誘導したという観察は、CXCR1陽性細胞のCXCR1遮断は、バイスタンダー効果を通じてCXCR1陰性細胞死を誘導することを示唆した。分類されたCXCR1陽性およびCXCR1陰性集団は、レペルタキシンで処置された(図12E参照)。レペルタキシンは、3日以内にCXCR1陽性集団の細胞生存能力を低下させたが、CXCR1陰性集団では何の効果も観察されなかった。レペルタキシンは、分離されていない細胞に大規模な細胞死を誘導した。分離されていないおよびCXCR1陽性集団の細胞生存能力におけるレペルタキシンの効果は、用量依存的であった(図12E参照)。この結果は、バイスタンダー効果を通じてCXCR1陰性細胞死を次に誘導するCXCR1陽性集団を標的化するレペルタキシン治療法と一致している。
【0259】
この効果が、レペルタキシンによって誘導される可溶性因子によって媒介されたかどうかを決定するために、調整済みの培地は、レペルタキシン治療法の3日後にCXCR1陽性集団から収集され、分子を3.5KDaより大きく保持しながら、培地からレペルタキシンを取り除くために3.5KDa排除の膜を利用してこの培地を透析した。透析され調整済みの培地は、CXCR1陰性および分離されていない集団の両方で細胞生存能力の大規模な低下を誘導したが、CXCR1陽性集団では誘導しなかった(図12F参照)。これらの結果は、CXCR1陽性集団内のCXCR1遮断が、可溶性がある透析不可能な因子を通じてCXCR1陰性集団に細胞死を誘導することを証明した。CXCR1陽性集団は、レペルタキシンに感受性があるが、透析可能な死亡因子に耐性がある。
【0260】
CXCR1遮断によって誘導されるバイスタンダー効果は、FASリガンド/FASシグナル伝達によって媒介される。 FASリガンド/FAS相互作用は、例えば乳腺退縮等の様々な生理学的状態、または化学療法によって誘導されるものを含む組織障害の状態で活性化される(Chhipa et al. J Cell Biochem. 101:68−79、Song et al. J Clin. Invest 106:1209−1220、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。レペルタキシンで処置したSUM159細胞の培地における可溶性FASリガンド培養のレベルは、FASリガンド/FAS相互作用のCXCR1遮断により誘導されるアポトーシスバイスタンダー効果を媒介することにおける役割を評価するためにELISA検定を使用して測定された。処置なし細胞に比較して、4日間レペルタキシンで処置された細胞培地で可溶性FASリガンドの5倍を超える増加が、観察された(図17A参照)。FASリガンドmRNAレベルを測定することによってレペルタキシン治療法によるFASリガンドの転写制御は、RT−PCRによって確認された(図17B参照)。レペルタキシン処理された細胞のFASリガンドmRNAレベルの4倍の増加が、処置なし細胞に比較して観察された。FASシグナル伝達を活性化するFAS作用薬での治療法後に、FASリガンドが、陽性フィードバックループを生成するFASシグナル伝達の標的であることを示すという同様の結果が観察された。フローサイトメトリーによって決定されるように、SUM159細胞の100%が、FASタンパク質を発現した。FAS作用薬でのSUM159細胞の治療法は、細胞生存能力の大規模な低下がレペルタキシン治療法で観察された殺傷効果を再産生した(図17C参照)。細胞生存能力におけるレペルタキシン治療法の効果は、抗FASリガンド遮断抗体によって部分的に逆となり、レペルタキシンおよび抗FASリガンド抗体での治療後、レペルタキシン単独ではたった3%であったのに比較して、細胞の44%生存可能のままであった(図17C参照)。結果は、レペルタキシンによって誘導される大規模な細胞死は、FASリガンド/FAS経路によって媒介されるバイスタンダー効果によることを示唆する。
【0261】
FAS作用薬でのSUM159細胞の治療法は、CXCR1陽性およびALDEFLUOR陽性細胞のそれぞれの割合の10倍および3倍の増加をもたらした(図17D/Eおよび18参照)。両集団のレペルタキシンの効果は、抗FASリガンドによって救助されず(図17D/E参照)、CXCR1陽性集団を含むALDEFLUOR陽性集団が、これらの細胞によってFASリガンド生成を次に誘導するCXCR1遮断に直接的に感受性があるが、FASリガンド/FASプロアポートシスシグナル伝達に耐性があることを示唆する。対照的に、ALDEFLUOR陰性大量細胞集団は、CXCR1を発現しないが、FASリガンド媒介細胞死に感受性がある。
【0262】
FASリガンド/FASシグナル伝達は、乳腺退縮中に重要な役割を果たす(Song
et al. J Clin. Invest 106:1209−1220、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。整復乳房形成から得られたヒト正常乳房上皮細胞におけるCXCR1遮断の効果が、検査された。乳癌細胞株で観察されるように、CXCR1陽性正常乳腺細胞は、ALDEFLUOR陽性集団内にほぼ排他的に含まれた(図19A参照)。IL−8シグナル伝達が、正常乳腺幹/前駆機能に重要かどうかを決定するために、懸濁液中に培養された正常乳房上皮細胞は、ヒト組み換えIL−8で処置され、マンモスフィアの形成によって測定されるようにそのCSC集団の効果を決定された(Dontu et al. Genes Dev. 17:1253−1270、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。IL−8の追加は、用量依存的に第1のおよび第2のマンモスフィアの形成を増大させ(図19B参照)、IL−8/CXCR1軸は、正常乳腺幹/前駆細胞増殖または自己再生の制御に関与するかもしれないことを示唆した。レペルタキシンまたはFAS作用薬での治療法は、高濃度のレペルタキシン(500nM)が利用された(図16A参照)時でさえ、付着条件で培養された正常乳房上皮細胞の生存能力に何の効果もなかった。しかしながら、乳癌細胞株で観察されるように、可溶性FASリガンドの増加が、レペルタキシンで処置された正常乳房上皮細胞の培地で検出された(図20B参照)。この観察は、これらの条件下で培養された正常な上皮細胞のFAS発現の不在によって説明されるかもしれない(図20C参照)。これは、授乳に続く退縮プロセス中のみに、乳腺内のFASの発現が発生することを証明する研究と一致する(Song et al. J Clin. Invest 106:1209−1220、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。正常な乳房上皮細胞の大量集団上の効果の欠失とは対照的に、レペルタキシンは、これらの細胞によるマンモスフィア形成を著しく低下させた(図20C参照)。
【0263】
これらの結果は、IL−8/CXCR1軸が、正常なおよび悪性の乳房上皮幹細胞/前駆細胞集団の制御および生存に重要な役割を果たすことを示唆する。バイスタンダー効果を媒介するFASリガンドを通じて大量の細胞集団に作用する能力は、これらの細胞のFAS発現のレベルに関連するかもしれない。
【0264】
癌幹細胞上のCXCR1障害効果は、FAK/AKT/FOXO3A経路によって媒介される。 CXCR1は、焦点接着キナーゼ(FAK)のリン酸化反応を含むシグナル伝達経路を介して作用し、AKTの活性化をもたらす(Waugh et al.Clin.Cancer Res. 14:6735−6741.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。FAKおよびAKT活性化におけるCXCR1障害の影響を評価するために、3つの異なる細胞株において、FAKおよびAKTリン酸化タンパク質のレベルをウエスタンブロット法によって測定した。SUM159およびHCC1954に関して、レペルタキシンで治療された細胞において、未治療の細胞と比較して、FAK Tyr397およびAKT Ser473リン酸化反応の低下を検出し、レペルタキシン効果は、FAK/AKT経路によって媒介され得ることを示した(図21Aおよび22を参照)。MDA−MB453がレペルタキシン治療に耐性があるという観察は、PI3K/AKT経路を活性化するPTEN変異体(919G>A)の存在によって説明され得る(Hollestelle et al. Mol. Cancer Res. 5:195−201.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。MDAMB453細胞株におけるレペルタキシン治療後、FAK Tyr397およびAKT Ser473リン酸化反応における修飾は検出されなかった(図22を参照)。CXCR1障害の効果を媒介する際のFAK/AKT経路の機能的役割を確認するために、2つのウイルス構築物を使用し、一方はPTEN shRNAを介してPTEN発現をノックダウンし、もう一方はFAK過剰発現に導いた。PTENは、その脂質ホスファターゼを介して、PI3−K/AKTシグナル伝達を拮抗する(Vivanco et al.Nat.Rev.Cancer 2:489−501.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。PTENノックダウンは、AKT Ser473リン酸化反応の増大によって証明されるように、AKT活性化をもたらした(図21Aおよび22を参照)。PTENノックダウンは、FAKおよびAKT活性におけるレペルタキシン治療の効果を阻止した。FAK過剰発現はまた、レペルタキシンの効果を阻止し、FAK Tyr397およびAKT Ser473リン酸化反応の増大する発現によって測定されたFAKおよびAKTの活性化を誘発した。これらの結果は、CXCR1障害効果がFAK/AKTシグナル伝達によって媒介されることを示す。
【0265】
CXCR1陽性細胞で免疫蛍光染色を利用することは、レペルタキシン治療が、未治療の細胞と比較して、ホスホFAKおよびホスホAKT発現の劇的な減少をもたらすことを確認した(図21Bを参照)。AKTは、リン酸化反応事象を介してフォークヘッド転写因子FOXO3Aの活性を制限し、細胞質FOXO3A隔離をもたらす(Brunet et al.Mol.Cell Biol. 21:952−965.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。対照的に、FOXO3Aの非リン酸化型は、FASリガンドの合成を制御する転写因子の機能を果たす核に移行する(Jonsson et al.Nat.Med.11:666−671.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。レペルタキシンは、FASリガンドが媒介するバイスタンダー効果を介して細胞死を誘発し、このシグナル伝達経路上でのレペルタキシンの効果を、免疫蛍光染色で検査した。FOXO3Aは、未治療の細胞内の細胞質内の位置に存在したが、レペルタキシン治療時に核に往来させられた(図21Bを参照)。これは、CXCR1障害が、FAK/AKT経路の阻害を介してFOXO3A活性を誘発することを示す。PTEN欠失またはFAK過剰発現を伴う細胞は、ホスホFAKおよびホスホAKT発現の高いレベルを示し、レペルタキシン治療および未治療の細胞の両方において免疫蛍光検査法で検出された。レペルタキシン治療は、FOXO3Aの細胞質の位置で示されるように、PTEN欠失またはFAK過剰発現を伴う細胞ではFOXO3A活性化を誘発しなかった(図21Bを参照)。
【0266】
FAK/AKT経路の構成的活性化の結果として、PTEN欠失またはFAK過剰発現を伴う細胞は、レペルタキシン治療への耐性を示した。PTEN欠失またはFAK過剰発現を伴う細胞は、レペルタキシン治療を伴う細胞生存能力において、少しも減少を示さなかった。AKTシグナル伝達は、CSCの生物学において重要な役割を果たすと提唱されている(図21Bおよび22を参照)(Dubrovska et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U. S A106:268−273.、Korkaya et al. PLoS Biolog. 7:e1000121.、Yilmaz et al. Nature 441:475−482.、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。阻害剤での治療後に、ALDELFUOR陽性集団の維持によって示されるように、FAK/AKT経路の活性化は、CSC集団でレペルタキシン効果を阻止した(図21Bを参照)。全ての結果は、CXCR1障害がFAK/AKT/FOXO3A経路に直接的に影響を及ぼすことを示す。レペルタキシン治療は、CSC活性に不可欠であるAKTシグナル伝達を阻害し、続いて、CSC産生FASリガンドによって媒介されるバルク腫瘍細胞上でバイスタンダー効果を誘発する。
【0267】
レペルタキシン治療は、インビボで乳癌幹細胞集団を減少させる。 最新の知見は、胸部CSCが化学療法および放射線療法に比較的耐性があり、治療後の腫瘍再増殖に寄与し得ることを示す(Phillips et al. J Natl. Cancer Inst.98:1777−1785.、Yu et al. Cell 131:1109−1123.、Li et al. J Natl. Cancer Inst.100:672−679.、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。CSCの概念は、臨床転帰における著しい改善が、CSC集団の有効な標的化を必要とすることを示す(Reya et al. Nature 414:105−111.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。バルク腫瘍細胞が化学療法によって標的化されるとき、アポトーシスプロセス中に、いくつかの因子が合成および分泌される。これらの因子の間で、FASリガンドは、バイスタンダー殺傷効果を媒介することによって化学療法効果を増幅する(Chhipa et al. J Cell Biochem. 101:68−79. 参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。化学療法はまた、損傷細胞におけるIL−8生成を誘発し得る。一般に利用される化学療法剤、ドセタキセルは、SUM159細胞内のIL−8およびFASリガンドmRNAの両方を誘発する(図10a/Bを参照)。我々はまた、FAS作用薬治療後に、IL−8 mRNAレベルの4倍の増加を検出した(図10Bを参照)。我々は、IL−8がCSC集団を制御する能力があることを示した。これは、細胞毒性化学療法に対するレペルタキシンの添加が、この効果を阻止し、癌幹細胞集団を標的とし得ることを示す。
【0268】
3人の異なる患者(MC1、UM2、UM3)から生じたSUM159細胞株および3つの一次ヒト乳癌異種移植片を、腫瘍の成長においてのレペルタキシン治療の効率を調査するために使用した。これらの腫瘍からの細胞を、インビトロ培養なしで、NOD/SCIDマウスのヒト化され除去された脂肪パッド内に同所性移植した。これらの異種移植片の各々について、CSC集団は、ALDEFLUOR陽性集団内に排他的に含有された(Ginestier et al. Cell Stem Cell1:555−567.、Charafe−Jauffret et al. Cancer Res. 69:1302−1313.、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。腫瘍の各々において、CXCR1陽性集団は、このALDEFLUOR陽性集団(表5を参照)内にほぼ排他的に含有され、PTEN/FAK/AKT経路は、活発化された(図25を参照)。
【0269】
【表22】
【0270】
各異種移植片からの50,000個の細胞を、NOD/SCIDマウスのヒト化脂肪パッドに注入し、腫瘍の成長を監視した。腫瘍の大きさが約4mmであったとき、レペルタキシン単独(15mg/Kg、1日に2回、28日間)、ドセタキセル単独(10mg/Kg、1週間に1回、4週間)、または両薬物の組み合わせで治療を開始した。腫瘍の成長を、生理食塩水注入対照と比較した。各異種移植片に関して、ドセタキセル治療またはレペルタキシン/ドセタキセルの組み合わせによって誘発された腫瘍の成長の著しい阻害を観察した(図26Aおよび27を参照)。レペルタキシン治療単独では、腫瘍の成長に中等度の影響を与えた。治療の4週間後に、動物を屠殺し、残存腫瘍をALDEFLUOR検定を利用して分析した。ドセタキセル単独で治療された残存腫瘍は、未治療の対照と比較して、不変または割合の増加したALDELFUOR陽性細胞のいずれか一方を含有した(図26Bおよび27を参照)。対照的に、レペルタキシン治療単独またはドセタキセルとの組み合わせは、75%を超えてALDEFLUOR陽性集団を減少させた(図26Bおよび27を参照)。結果は、異なる異種移植片におけるALDH1発現の免疫組織化学で確認された。ALDH1陽性細胞における減少は、未治療の腫瘍と比較して、レペルタキシンで治療された腫瘍内で検出され、ALDH1陽性細胞の割合は、ドセタキセル単独で治療された腫瘍において不変または増加した(図26Dを参照)。
【0271】
これらの腫瘍内のCD44/CD24細胞の存在を評価した。マーカーが乳癌幹細胞内で発現されることが以前に示されている(Al Hajj et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S A 100:3983−3988.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。CD44/CD24表現型とCXCR1発現との間の重複部分を測定した。CXCR1陽性細胞は、CD44+/CD24−細胞集団およびCD24またはCD44陰性を発現する細胞集団内に存在した(表6を参照)。
【0272】
【表23】
【0273】
ドセタキセル単独で治療された残存腫瘍において、CD44/CD24細胞の不変または増加割合のどちらか一方を観察し、レペルタキシン治療単独またはドセタキセルとの組み合わせは、CD44/CD24細胞集団の減少をもたらした(図28を参照)。
【0274】
治療腫瘍から二次NOD/SCIDマウスへの細胞の再移植から成る機能的なインビボ検定は、治療後、残存CSCの腫瘍開始および自己再生能力を評価する直接試験を提供した。対照またはドセタキセルで治療された動物由来の腫瘍細胞は、二次NOD/SCIDマウスにおいて、全ての希釈物で同様の腫瘍再増殖を示した。対照的に、ドセタキセル有無に関わらないレペルタキシン治療は、二次レシピエントにおける腫瘍の成長を減少させた(図26Cを参照)。同等の数の細胞を注入したとき、レペルタキシンで治療された動物からの細胞は、対照またはドセタキセルで治療された動物からの細胞と比較して、腫瘍の成長において2〜5倍の減少を示した(図26Cを参照)。各異種移植モデルでは、レペルタキシンおよびドセタキセルの組み合わせで治療された動物から得られた1000または100個の腫瘍細胞は、NOD/SCIDマウスにおける任意の二次腫瘍を形成しなかった(図26C、27、および表7を参照)。これらの研究は、レペルタキシン治療が、特にCSC集団を標的化および減少させることを証明する。
【0275】
【表24】
【0276】
レペルタキシン治療は、FAK/AKTシグナル伝達を阻害し、インビボでFOXO3Aを活性化する。ホスホFAKおよびホスホAKTの発現を、治療後、異種移植片の各々において、免疫組織化学で検査した。膜状ホスホFAK発現を、対照およびドセタキセルで治療された腫瘍からの細胞の50%で検出した一方、ホスホFAK発現は、レペルタキシン単独またはドセタキセルとの組み合わせで治療された腫瘍内で破壊された(図26Dを参照)。未治療の腫瘍でホスホAKTを発現する70%の細胞、ドセタキセルで治療された腫瘍内の20%のホスホAKT陽性細胞、およびレペルタキシン単独またはドセタキセルとの組み合わせで治療された腫瘍におけるホスホAKT発現の完全阻害を用いて、ホスホAKT発現に対して、同様の結果が観察された(図26Dを参照)。細胞核のFOXO3Aは、ドセタキセル単独、レペルタキシン単独、およびレペルタキシン/ドセタキセルの組み合わせで治療された腫瘍からの細胞内で検出された。これらのインビボデータはインビトロデータと一致し、レペルタキシン治療がFAK/AKTシグナル伝達を阻害し、FOXO3Aを活性化することを確認する。
【0277】
レペルタキシン治療は、全身転移の進行を減少させる。レペルタキシンが全身転移を減少させるかを決定するために、HCC1954、MDA−MB−453、およびSUM159乳癌細胞株を、発光酵素レンチウイルスレポーターシステムで感染させ、その細胞を心腔内注射でNOD/SCIDマウス内に導入した。各細胞株に対して250,000個の細胞の懸濁液を注入し、転移形成を生物発光イメージングで1週間に1回観察した。心腔内注射の12時間後、対照のために、マウスをレペルタキシン注入または生理食塩水で、1日に2回治療した。HCC1954およびSUM159細胞を注入されたマウスにおけるレペルタキシン治療は、未治療のマウスと比較して、治療されたマウスにおいて、光子束の低放射で転移形成を著しく減少させた(図29A/Bを参照)。組織学的切片は、未治療の動物のいくつかの部位で、転移の存在を確認した(図29Dを参照)。レペルタキシン治療は、MDA−MB−453細胞を注入されたマウスにおいて、転移形成に少しも効果を有さなかった(図29Cを参照)。光子束の放射および転移が進行した動物の数は、レペルタキシン治療および未治療群の両方において類似した。この結果は、PTEN変異体の存在により、レペルタキシンに耐性がある細胞株としてMDA−MB−453を説明したデータと一致した。これらの結果は、レペルタキシン等の薬剤を伴うCXCR1障害が、CSC集団によって媒介される転移を減少させることができ得ることを示す(Charafe−Jauffret et al. Cancer Res. 69:1302−1313.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0278】
本発明の実施形態の開発中に行われた実験は、幹細胞特性をもつ細胞小成分が腫瘍の成長および転移を駆動することを示す(Visvader et al.Nat.Rev.Cancer8:755−768.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。現在の治療法に対するそれらの相対抵抗のおかげで、これらの細胞は、治療抵抗および再発に寄与し得る(Reya et al. Nature 414:105−111.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。本発明は、癌幹細胞集団を効果的に標的化し、治療結果を改善するために、乳癌幹細胞上で発現されるCXCR1サイトカイン受容体を阻止することに基づくアプローチを提供する。多くのシステムでの本発明の実施形態の開発中に行われた実験は、サイトカインネットワークが、腫瘍形成において重要な役割を果たすことを証明している。これらのサイトカインのいくつかは、幹細胞行動を制御し得るという証拠が存在する。IL−4は、膵臓癌幹細胞の自己再生を制御する能力があり、IL−6は、結腸癌および乳癌において癌幹細胞を制御する能力がある(Todaro et al. Cell Stem Cell1:389−402.、Sansone et al. J Clin. Invest 117:3988−4002.、参照により本明細書に組み込まれる)。腫瘍浸潤および転移を媒介する際のIL−8の役割は、以前に証明されている(Waugh & Wilson. Cancer Res. 14:6735−6741.、Inoue et al. Clin. Cancer Res. 6:2104−2119.、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。さらに、IL−8は、脳内での創傷治癒中に神経幹細胞の自己再生を増進させる(Beech et al. J Neuroimmunol. 184:198−208.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。肺癌幹細胞は、ケモカイン受容体CXCR1を発現するとして説明された(Levina et al.PLoS.ONE.3:e3077.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。本発明の実施形態の開発中に行われた実験は、CXCR1陽性集団が、乳癌細胞株および一次異種移植片、ならびに正常な乳腺細胞におけるALDEFLUOR陽性集団内に、ほぼ排他的に含有されることを証明した。ケモカイン受容体は、ALDEFLUOR陽性の乳癌細胞集団内で過剰発現される(Charafe−Jauffret et al. Cancer Res. 69:1302−1313.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。乳癌において、IL−8は、炎症細胞、血管内皮細胞、腫瘍に関連する繊維芽細胞、および間葉幹細胞を含む多くの細胞型によって、腫瘍内微小環境で産生される(Waugh et al.Clin.Cancer Res. 14:6735−6741.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。サイトカインネットワークは、これらの細胞型の間の相互作用を媒介し、したがって、癌幹細胞を、IL−8受容体CXCR1の障害を介して標的化することができる。
【0279】
インビトロ検定を利用することによって、CXCR2(代替IL−8受容体)ではなくCXCR1障害が、乳癌幹細胞集団を減少させたことが証明された。これには、CXCR1発現を欠如する全体の残存細胞集団におけるアポトーシスの誘発が続いた。CXCR1遮断抗体に加えて、実施形態の開発中に行われた実験は、レペルタキシン、CXCR1/2阻害剤は、CXCR1陽性集団を標的化することによって同様の効果を誘発したことを証明する。CXCR1−発現癌幹細胞集団におけるその直接的効果とは対照的に、レペルタキシンは、CXCR1発現を欠如するバルク腫瘍細胞集団上で、直接的効果を有さなかった。これは、CXCR1陽性細胞内のCXCR1障害が、バイスタンダー効果を介して、CXCR1陰性細胞内で細胞死を誘発したことを示す。本明細書に記載の実験は、FASリガンド/FAS経路がこのバイスタンダー殺傷効果の媒介物であると証明する。この現象は、CXCR1陽性集団が1%未満の細胞集団を表すという事実にもかかわらず、全細胞集団内で大規模なアポトーシスを誘発するレペルタキシン治療の有効性を説明する。FASリガンドの役割は、抗FASリガンド抗体によるバイスタンダー殺傷の効果的な阻止によって証明された。
【0280】
本発明の実施形態の開発中に行われた実験は、同様のサイトカイン相互作用が、細胞毒性化学療法に曝露された腫瘍内で発生し得ることを示す。化学療法は、分化された腫瘍細胞内で細胞アポトーシスを直接的に誘発し得、ならびにFAS媒介バイスタンダー効果を介して、周囲の腫瘍細胞内でアポトーシスを次に誘発するこれらの死亡細胞によって、FASリガンドの生成を誘発し得る。FASリガンドの生成と同時に、これらの損傷細胞はまた、乳腺退縮または創傷治癒に類似する過程において、増加レベルのIL−8を分泌する。退縮乳腺の場合と同様に、このIL−8は、乳癌幹細胞を刺激し得、ならびにそれらをアポトーシスから保護し得る。これは、前臨床モデル(4)およびネオアジュバント臨床検定(5)における化学療法後に観察される癌幹細胞における相対的増加に寄与し得る。腫瘍内のアポトーシスおよび自己再生経路における化学療法の効果は、図30に示される。
【0281】
CXCR1障害がインビボで乳癌幹細胞を標的化できるかを決定するために、細胞毒性薬ドセタキセルの効果を、癌幹細胞コンパートメントにおける、およびNOD/SCIDマウスでの腫瘍の成長における、レペルタキシンと比較した。ドセタキセルは、乳癌を有する女性を治療するために現在使用される最も効果的な化学療法剤の1つである。癌幹細胞集団を、ALDEFLUOR検定で、およびNOD/SCIDマウスにおける連続移植で評価した。これらの検定を利用して、化学療法治療単独が、癌幹細胞集団において、不変または相対的増加のいずれかをもたらすと決定された。対照的に、レペルタキシン治療単独または化学療法と併用のレペルタキシン治療は、癌幹細胞集団を著しく減少させた。腫瘍開始集団における著しい減少にもかかわらず、レペルタキシン単独の使用は、腫瘍の著しい縮小をもたらさなかった。化学療法とレペルタキシンの組み合わせは、腫瘍の大きさ、ならびに癌幹細胞集団における著しい減少をもたらした。癌幹細胞およびバルク腫瘍細胞集団の両方を標的化するためにこれらの薬剤を併用することは、これらの治療法の有効性を最大化する。
【0282】
レペルタキシンの作用機構を解明するために、CXCR1からの下流の経路を分析した。CXCR1、FAK、およびAKTの間の相互作用が確認された。CXCR1障害は、特にFAKおよびAKT活性化を介して作用する。本発明の実施形態の開発中に行われた実験は、AKT活性化が、WNT経路の活性化をもたらすGSK3βのリン酸化反応を介して、正常および悪性乳腺幹細胞の自己再生を制限することを示す(Korkaya et al. PLoS Biolog. 7:e1000121、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。これらの結果は、なぜPTENノックダウンを伴う細胞がレペルタキシンに耐性があるかを示す。AKTの追加機能は、フォークヘッド転写因子FOXO3Aのリン酸化反応を介する細胞生存の制御である。FOXO3AのAKTリン酸化反応は、その細胞質隔離をもたらす。対照的に、CXCR1障害は、核内のFOXO3Aの転位をもたらすAKT活性化の減少に導き、そこで、それはFASリガンドを含む多くの遺伝子を誘発する(Jonsson et al.Nat.Med.11:666−671.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。次にCXCR1障害を介して誘発されるFASリガンドは、観察されるバイスタンダー殺傷効果の原因となる(図30を参照)。
【0283】
CXCR1シグナル伝達におけるその役割に加えて、FAKは、インテグリン受容体を介して、細胞外基質成分を伴う細胞の相互作用を媒介する(Waugh et al.Clin.Cancer Res. 14:6735−6741.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。FAKシグナル伝達は、遺伝子導入モデルにおいて、正常および悪性マウス乳腺幹細胞の自己再生を制御する役割を果たす(Luo et al. Cancer Res. 69:466−474.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。FAK活性化はまた、FADDおよびRIP媒介アポトーシスを阻止することによって細胞生存を促進する(Kurenova et al.Mol.Cell Biol. 24:4361−4371.、Xu et al. J Biol.Chem.275:30597−30604.、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。これは、FAS/FASリガンド誘発アポトーシスに対する癌幹細胞集団の抵抗に対する説明を提供する。
【0284】
乳癌幹細胞は、腫瘍浸潤および転移において重要な役割を果たすことが証明されている(Croker et al. J Cell Mol.Med.2008、Charafe−Jauffret et al. Cancer Res. 69:1302−1313.、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。IL−8およびCXCR1はまた、これらの過程においても重要な役割を果たすことが本明細書に示される。CXCR1障害の効果を、実験的転移の形成においてレペルタキシンを利用して分析した。CXCR1障害は、乳癌細胞の心腔内注射の後に投与されるときに、転移の進行を減少させることが証明された。
【0285】
レペルタキシンを利用する臨床研究は、毒性の欠如を証明している。IL−8およびCXCR1等のサイトカイン制御ループを妨害することを図る戦略は、乳癌幹細胞を標的化するための方法を示す。
【0286】
〔参考文献〕
次の参考文献は、本明細書に完全に示しているかのように、参照により全体が本明細書に組み入れられる。
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【0287】
上記の明細書において挙げられた全ての刊行物および特許は、参照として本明細書に組み入れられている。本発明の記載された方法およびシステムの様々な改変ならびにバリエーションは、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、当業者にとって明らかであると考えられる。本発明は、特定の好適な実施形態に関して記載されているが、主張されているような本発明が、かかる特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際、関連分野の業者にとって明らかである、本発明を実施するための記載された様式の様々な改変は、本発明の範囲内であることが意図される。
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