(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の3次元計算機モデルは,変性前の前記骨の少なくとも一部の近似を表し,前記第2の3次元計算機モデルは,前記骨の少なくとも一部及び変性状態の軟骨を表す請求項1に記載の方法。
前記第1タイプデータは,鋸切断情報又はドリル穴あけ情報の少なくとも一つを含み,前記第2タイプデータは前記骨の少なくとも一部の曲面輪郭情報を含む請求項1に記載の方法。
前記鋸切断情報及びドリル穴あけ情報は,提案された関節形成術の鋸切断又はドリル穴あけの少なくとも一つに関する位置,方向又は寸法の少なくとも一つを含む請求項5に記載の方法。
前記の各3次元計算機モデルの一方の原点に対する位置及び方向の変化は,前記の各3次元計算機モデルの他方の原点に対する位置及び方向に均等な変化を生じさせる請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願は,特化関節形成術ジグ2と,そのようなジグ2を製造するためのシステム4及び方法を開示している。ジグ2は,特定の患者の特定の骨曲面に合うように特化されている。実施例に応じて,また多かれ少なかれ,ジグ2は自動的に設計・生成され,次の三つの米国特許出願に開示されたものと類似している。
米国特許出願第11/656,323号,Parkほか,Arthroplasty Devices and Related Methods,2007年1月19日出願
米国特許出願第10/146,862号,Parkほか,Improved Total Joint Arthroplasty System,2002年5月15日出願
米国特許出願第11/642,385号,Parkほか,Arthroplasty Devices and Related Methods,2006年12月19日出願
これら三つの米国特許出願はの開示は,本願の明細書において全体が参照される。
【0021】
a.特化関節形成術切断ジグを製造するシステム及び方法の概要
【0022】
図1A〜1Eを参照して,特化関節形成術ジグ2を製造するシステム4及び方法の概要を説明する。
図1Aは,本願によって開示された自動ジグ製造方法を用いるシステム4の概略図である。
図1B〜1Eは,本願によって開示されたジグ製造方法の概要を示すフローチャートである。以降の概要説明は3セクションに分かれている。
【0023】
第1セクションは
図1A及び
図1B〜1Eのブロック100〜125に関して説明しており,3次元(3D)計算機モデル環境において,復元骨モデル28と称する3D計算機モデルに対して,鋸切断位置30及びドリル穴あけ位置32を判定する例示方法に関する。得られる「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44は復元骨モデル28に参照されて,患者の関節を変性前の状態に復元するための関節形成インプラントを可能にする鋸切断及びドリル穴あけを行う。
【0024】
第2セクションは
図1A及び
図1B〜1Eのブロック100〜105及び130〜145に関して説明しており,3D計算機生成ジグモデル38に,患者の関節骨の3D計算機生成関節モデル36の関節形成術対象領域42の3D計算機生成サーフェスモデル40を取り込む例示方法に関する。得られる「ジグデータ」46は,患者の関節の対応する骨の関節形成術対象領域を捕捉するように特化したジグを製造するために用いられる。
【0025】
第3セクションは
図1A及び
図1Eのブロック150〜165に関して説明しており,「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44を「ジグデータ」46と結合,すなわち統合して「統合ジグデータ」48を得る方法に関する。「統合ジグデータ」48は,CNC機械10に供給されたジグ素材50から特化した関節形成術ジグ2を製造するためにCNC機械10に供給される。得られる特化関節形成術ジグ2は,ジグ2に配置された鋸切断スロット及びドリル穴を含み,ジグ2が患者の骨の関節形成術対象領域を捕捉したとき,関節形成術関節インプラントが患者の関節線を変性前の状態に概略復元することができるように,切断スロット及びドリル穴が関節形成術対象領域を調整するのを容易にする。
【0026】
図1Aに示すように,システム4はCPU8を備える計算機6と,モニタ,すなわち画面9と,操作者インタフェース制御部11と,を含む。計算機6は,CT又はMRI装置8のような医用画像システム8と,CNCフライス盤(milling machine)10のような計算機制御機械加工(machining)システム10と,に接続されている。
【0027】
図1Aに示すとおり,患者12には置換する関節14(例えば,膝,肘,足,手,腰,肩,頭蓋骨/脊椎又は脊椎/脊椎接合面,等)がある。患者12は画像化装置8によって関節14を走査される。画像化装置8は,関節14の複数の走査データを作成し,各走査データは関節14の薄いスライスを表わす。
【0028】
図1Bから分かるように,上記複数の走査データは,関節14の複数の2次元(2D)画像16を生成するために用いられる(ブロック100)。ここで,例えば関節14は膝14であり,2D画像は,大腿骨18及び脛骨20のものである。画像化はCT又はMRIで行うことができる。MRIを用いる一つの実施例においては,画像化処理はParkの米国特許出願第11/946,002号,Generating MRI Images Usable For The Creation Of 3D Bone Models Employed to Make Customized Arthroplasty Jigs,2007年11月27日出願,に開示されたとおりであってもよく,ここに全体を参照する。
【0029】
図1Aから分かるように,2D画像は計算機6へ送信されて計算機生成3Dモデルが生成される。
図1Bに示すように,一つの実施例においては,点Pは2D画像16の中に特定される(ブロック105)。一つの実施例においては,
図1Aのブロック105に示されるように,点Pは近似的に患者の関節14の内側‐外側及び前面‐後面の中心であってよい。別の実施例においては,点Pは,骨18,20又は骨18,20が形成する関節14の上,近傍,又は遠方の任意の点を含む,2D画像16内の任意のほかの位置であってもよい。
【0030】
この概要の後段で説明するとおり,点Pを用いて2D画像16から生成された計算機生成3Dモデル22,28,36を見付け,3Dモデルによって生成された情報を統合することができる。実施例に応じて,点及び/又は原点の参照先の役割をする点Pは,2D画像16によって生成された3Dモデル22,28,36を配置し,及び/又は方向を定めるために用いることができる限り,単独点,2点,3点,点及び平面,ベクトル,等であってもよい。
【0031】
図1Cに示すとおり,2D画像16を用いて,患者の関節14を形成する骨18,20の計算機生成3D骨単体モデル(すなわち「骨モデル」)22を生成することができる(ブロック110)。骨モデル22は,点PがX‐Y‐Z軸の原点(X
0,Y
0,Z
0)に対して座標(X
0−j,Y
0−j,Z
0−j)に位置するように配置される。(ブロック110)。骨モデル22は,現在の劣化した状態の骨18,20を,骨関節症,傷害,それらの合併症,等の結果である可能性のある,対応する変性関節面24,26と共に表現する。
【0032】
2D画像16から3D計算機生成骨モデル22を生成する計算機プログラムは,次のものを含む。Overland Park, KS,AnalyzeDirect, Inc.社のAnalyze,National Library of Medicine Insight Segmentation and Registration Toolkit ("ITK"), www.itk.orgから取得できるオープンソースソフトウェアであるInsight Toolkit,www.slicer.orgから取得できるオープンソースソフトウェアである3D Slicer,Ann Arbor, MIのMatelialise社のMimics,www.paraview.orgで取得できるParaview。
【0033】
図1Cに示すとおり,3D計算機生成骨モデル22を用いて3D計算機生成「復元骨モデル」すなわち「計画骨モデル」28を生成することができ,変性した曲面24,26は,近似的に変性する前のそれぞれの状態に修正すなわち復元される(ブロック115)。このようにして復元骨モデル28の骨18,20は,点Pが原点(X
0,Y
0,Z
0)に対して座標(X
0−j,Y
0−j,Z
0−j)に位置するように配置される。このようにして復元骨モデル28は,原点(X
0,Y
0,Z
0)に対して,骨モデル22と同一の方向及び位置を共有する。
【0034】
一つの実施例においては,復元骨モデル28は,人が計算機6の前に座って骨モデル22及びその変性した曲面24,26を計算機画面9上の3D計算機モデルとして目で観察することによって,骨モデル22から手動で生成される。その人は変性した曲面24,26を目で観察して,変性する前の状態を復元するために,3D骨モデル22の変性した曲面24,26をどのように及びどの程度修正する必要があるかを判定する。その人は計算機制御部11と対話することによって,3Dモデリング計算機プログラムによって3D変性曲面24,26を手動で操作し,その曲面を,その人が変性前の状態を表していると信じる状態に復元する。この手動復元処理の結果が計算機生成3D復元骨モデル28であり,曲面24’,26’は非変性状態を表す。
【0035】
一つの実施例においては,上述の骨復元処理は概略又は完全に自動化される。換言すれば,計算機プログラムが骨モデル22及び変性した曲面24,26を解析して,変性する前の状態を復元するために,3D骨モデル22の変性した曲面24,26をどのように及びどの程度修正する必要があるかを判定する。そして計算機プログラムは,3D変性曲面24,26を操作し,その曲面24,26を,変性前の状態を表す状態に復元する。この自動復元処理の結果が計算機生成3D復元骨モデル28であり,曲面24’,26’は非変性状態を表す。
【0036】
図1Cに示すとおり,復元骨モデル28が手術前計画(“POP”)処置において用いられ,関節形成術関節インプラントが患者の関節線を変性前の状態に概略復元することができるように,患者の骨の鋸切断位置30及びドリル穴あけ位置32を決定する(ブロック120)。
【0037】
一つの実施例においてはPOP処置は手動処理であり,人が計算機6の前に座って計算機画面9上のインプラントモデル34及び復元骨モデル28を目で観察し,計算機制御部11によってモデル28,34を操作することによって,計算機生成3Dインプラントモデル34(例えば,関節が膝であるとき,大腿骨及び脛骨のインプラント)及び復元骨モデル28を相互に手動で操作する。インプラントモデル34を復元骨モデル28の上に重畳し,又はその逆を行うことによって,インプラントモデル34の関節面が揃えられる,すなわち復元骨モデル28の関節面と対応させることができる。モデル28,34の関節面をそのように揃えることによって,鋸切断位置30及びドリル穴あけ位置32を復元骨モデル28に対して決定できるように,インプラントモデル34が復元骨モデル28に対して配置される。
【0038】
一つの実施例においては,POP工程は概略又は完全に自動化される。例えば計算機プログラムが計算機生成3Dインプラントモデル34(例えば,関節が膝であるとき,大腿骨及び脛骨のインプラント)及び復元骨モデル又は計画骨モデル28を相互に操作して,鋸切断位置30及びドリル穴あけ位置32を復元骨モデル28に対して決定する。インプラントモデル34は復元骨モデル28の上に重畳してもよいし,その逆でもよい。一つの実施例においては,インプラントモデル34は,原点(X
0,Y
0,Z
0)に対して点P’(X
0−k,Y
0−k,Z
0−k)に配置され,復元骨モデル28は,点P(X
0−j,Y
0−j,Z
0−j)に配置される。モデル28,34の関節面を対応させるため,計算機プログラムは復元骨モデル28を点P(X
0−j,Y
0−j,Z
0−j)から点P’(X
0−k,Y
0−k,Z
0−k)へ,又はその逆に移動させてもよい。モデル28,34の関節面が近接すると,インプラントモデル34の関節面は,復元骨モデル28の関節面と揃う,すなわち一致するように形状合わせされる。モデル28,34の関節面をそのように揃えることによって,鋸切断位置30及びドリル穴あけ位置32を復元骨モデル28に対して決定できるように,インプラントモデル34が復元骨モデル28に対して配置される。
【0039】
図1Eに示すとおり一つの実施例においては,点P’(X
0−k,Y
0−k,Z
0−k)に対する鋸切断位置30及びドリル穴あけ位置32に関するデータ44が,「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44としてパッケージ化,すなわち合併される(ブロック145)。そして「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44は,
図1Eのブロック150に関して以降説明するように利用される。
【0040】
図1Dから分かるように,
図1Cのブロック110に関して上述した骨モデル22を生成するために用いられる2D画像16は,患者の関節14を形成する骨18,20の計算機生成3D骨及び軟骨モデル(すなわち「関節モデル」)36を生成するためにも用いられる(ブロック130)。上述の骨モデル22と同様に,関節モデル36は点PがX‐Y‐Z軸の原点(X
0,Y
0,Z
0)に対して座標(X
0−j,Y
0−j,Z
0−j)に位置するように配置される(ブロック130)。このようにして骨モデル22及び関節モデル36は,原点(X
0,Y
0,Z
0)に対して,同一の位置及び方向を共有する。この位置/方向関係は,
図1B〜1Eに関して説明する処理を通じて概略維持される。したがって,骨モデル22及びその種々の下位グループ(descendants)(すなわち,復元骨モデル28,骨切断位置30及びドリル穴位置32)の原点(X
0,Y
0,Z
0)に対する動きもまた,関節モデル36及びその種々の下位グループ(すなわちジグモデル38)に適用される。骨モデル22及び関節モデル36並びにそれぞれの下位グループの間の位置/方向関係を維持することによって,「ジグデータ」46に統合される「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44が,特化関節形成術ジグ2を製造するためにCNC機械10が用いる「統合ジグデータ」48を形成する。
【0041】
2D画像16から3D計算機生成関節モデル36を生成する計算機プログラムは,次のものを含む。Overland Park, KS,AnalyzeDirect, Inc.社のAnalyze,National Library of Medicine Insight Segmentation and Registration Toolkit ("ITK"), www.itk.orgから取得できるオープンソースソフトウェアであるInsight Toolkit,www.slicer.orgから取得できるオープンソースソフトウェアである3D Slicer,Ann Arbor, MIのMatelialise社のMimics,www.paraview.orgで取得できるParaview。
【0042】
骨モデル22と類似して,関節モデル36は現在の劣化した状態の骨18,20を,骨関節症,傷害,それらの合併症,等の結果である可能性のある,対応する変性関節面24,26と共に表現する。しかし骨モデル22と異なり,関節モデル36は骨単体モデルではなく,骨に加えて軟骨を含む。したがって関節モデル36は,関節形成外科処置において,特化関節形成術ジグ2が関節形成術対象領域42を捕捉するとき,関節モデルが概略存在するであろう関節形成術対象領域42を表現する。
【0043】
図1Dに示され,既に上述したとおり,骨モデル22及び関節モデル36並びにそれぞれの下位グループの位置/方向を調整するため,点Pから点P’への復元骨モデル28のどの動きも追跡され,「関節モデル」36に対して概略同じ変位を与える(ブロック135)。
【0044】
図1Dに示すとおり,関節モデル36の関節形成術対象領域42の計算機生成3Dサーフェスモデル40は,計算機生成3D関節形成術ジグモデル38に取り込まれる(ブロック140)。このようにしてジグモデル38が構成される,すなわち関節モデル36の関節形成術対称領域42を捕捉するようにインデクスが付けられる。したがって,このようなジグモデル38に一致するように製造されたジグ2は,関節形成外科処置において実際の関節骨の関節形成術対象領域を捕捉する。
【0045】
一つの実施例においては,ジグモデル38を関節形成術対象領域42にインデクス付けする手順を手動処理である。3D計算機生成モデル36,38は,人が計算機6の前に座ってジグモデル38及び関節モデル36を計算機画面9上で目で観察し,計算機制御部11と対話することによって,モデル36,38を操作することによって,互いに手動で操作される。一つの実施例においては,ジグモデル38(例えば,関節が膝であるとき,大腿骨及び脛骨関節形成術ジグ)を関節モデル36の関節形成術対象領域42に重畳し,又はその逆を行うことによって,関節形成術対象領域42のサーフェスモデル40をジグモデル38に取り込むことができ,その結果,ジグモデル38が関節モデル36の関節形成術対象領域42を捕捉するようにインデクス付けされる。点P’ (X
0−k,Y
0−k,Z
0−k)もまたジグモデル38に取り込むことができ,その結果,ジグモデル38が点P’ (X
0−k,Y
0−k,Z
0−k)に対して配置及び方向付けられて,ブロック125の鋸切断及びドリル穴あけデータ44と統合できるようになる。
【0046】
一つの実施例においては,本明細書の後段で説明するとおり,ジグモデル38を関節形成術対象領域42にインデクス付けする手順は,概略又は完全に自動化される。例えば,計算機プログラムが関節モデル36の関節形成術対象領域42の3D計算機生成サーフェスモデル40を生成してもよい。そして計算機プログラムは,サーフェスモデル40及び点P’ (X
0−k,Y
0−k,Z
0−k)をジグモデル38に取り込み,その結果,関節モデル36の関節形成術対象領域42を捕捉するようにジグモデル38をインデクス付けしてもよい。また得られるジグモデル38が点P’ (X
0−k,Y
0−k,Z
0−k)に対して配置及び方向付けられて,ブロック125の鋸切断及びドリル穴あけデータ44と統合できるようになる。
【0047】
一つの実施例においては,関節モデル36は
図2D〜2Fに関して以降説明する閉ループ処理によって生成される3Dボリュームモデルであってもよい。別の実施例においては,関節モデル36は
図2A〜2C及び12A〜12Cに関して以降説明する開ループ処理によって生成される3Dサーフェスモデルであってもよい。
【0048】
図1Eに示すとおり一つの実施例においては,点P’(X
0−k,Y
0−k,Z
0−k)に対するジグモデル38及びサーフェスモデル40に関するデータが,「ジグデータ」46としてパッケージ化,すなわち合併される(ブロック145)。そして「ジグデータ」46は,
図1Eのブロック150に関して以降説明するように利用される。
【0049】
図1Eから分かるように,「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44が「ジグデータ」46に統合され「統合ジグデータ」48となる(ブロック150)。上述のとおり,「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44,「ジグデータ」46及びそれらの種々の上位グループ(ancestors)(例えばモデル22,28,36,38)は,点P及びP’に対して互いに位置及び方向が合わせられるので,「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44は「ジグデータ」46に対して正しく位置合わせ及び方向付けが行われて,「ジグデータ」46に正しく統合される。得られる「統合ジグデータ」48はCNC機械10に供給されたとき,ジグ2が,(1)患者の骨の関節形成術対象領域を捕捉するように構成され,(2)関節形成術関節インプラントが患者の関節線を変性前の状態に概略復元するように,関節形成術対象領域を調整することを容易にする切断スロット及びドリル穴を有する,ようになる。
【0050】
図1A及び1Eから分かるように,「統合ジグデータ」48が計算機6からCNC機械10へ転送される(ブロック155)。ジグ素材50がCNC機械10に供給され(ブロック160),CNC機械10は「統合ジグデータ」を用いてジグ素材50から関節形成術ジグ2を製作する。
【0051】
上述の工程によって製造される例示特化関節形成術切断ジグ2を説明するために,
図1F〜1Iを参照する。上述のとおり,上述の工程を用いて,膝,肘,足,手,腰,肩,脊椎接合部,等を含む関節形成術処置のために構成されたジグ2を製造することができるが,
図1F〜1Iに示すジグ例は,人工膝関節置換術(“TKR”)処置用である。そして,
図1F及び1Gはそれぞれ,例示特化関節形成術大腿骨ジグ2Aの下面及び上面透視図であり,
図1H及び1Iはそれぞれ,例示特化関節形成術脛骨ジグ2Bの下面及び上面透視図である。
【0052】
図1F及び1Gに示すように,大腿骨関節形成術ジグ2Aは内側すなわち内側部分100と,外側,すなわち外側部分102とを含んでもよい。TKR処置において大腿骨切断ジグ2Aを用いるとき,内側すなわち内側部分100は大腿骨下部末端の関節形成術対象領域42に面し,捕捉する。そして外側,すなわち外側部分102は大腿骨切断ジグ2Aの内側部分100と反対側にある。
【0053】
大腿骨ジグ2Aの内側部分100は,患者の大腿骨18の損傷した下部末端(すなわち関節形成術対象領域42)の曲面形状(features)に一致するように構成される。したがって,TKR手術の際,対象領域42は大腿骨ジグ2Aの内側部分100に捕捉され,対象領域42の曲面と,内側部分100の曲面とが一致する。
【0054】
大腿骨切断ジグ2Aの内側部分100の曲面は,選択された大腿骨ジグ素材50Aから機械加工又はほかの方法で製作され,損傷した下部末端の対象領域42,すなわち患者の大腿骨18の対象領域42,の3Dサーフェスモデル40を基準にする,すなわちサーフェスモデルによって定義される。
【0055】
図1H及び1Iに示すように,脛骨関節形成術ジグ2Bは内側すなわち内側部分104と,外側,すなわち外側部分106とを含んでもよい。TKR処置において脛骨切断ジグ2Bを用いるとき,内側すなわち内側部分104は脛骨上部末端の関節形成術対象領域42に面し,捕捉する。そして外側,すなわち外側部分106は脛骨切断ジグ2Bの内側部分104と反対側にある。
【0056】
脛骨ジグ2Bの内側部分104は,患者の脛骨20の損傷した上部末端(すなわち関節形成術対象領域42)の曲面形状に一致するように構成される。したがって,TKR手術の際,対象領域42は脛骨ジグ2Bの内側部分104に捕捉され,対象領域42の曲面と,内側部分104の曲面とが一致する。
【0057】
脛骨切断ジグ2Bの内側部分104の曲面は,選択された脛骨ジグ素材50Bから機械加工又はほかの方法で製作され,損傷した上部末端の対象領域42,すなわち患者の脛骨20の対象領域42,の3Dサーフェスモデル40を基準にする,すなわちサーフェスモデルによって定義される。
【0058】
b.3D関節形成術ジグモデルを関節形成術対象領域にインデクス付けするための自動処理の概要
【0059】
図1Dのブロック140に関して上述したように,3D関節形成術ジグモデル38を関節形成術対象領域42にインデクス付けする処理は自動化できる。このような自動処理の例の説明が自動インデクス付け処理の概要から始まり,本明細書の残りの部分に記載されている。
【0060】
図1A及び
図1Bのブロック100〜105から分かるように,患者12には置換する関節14(例えば,膝,肘,足,手,肩,腰,脊椎接合面,等)がある。患者12は画像化装置10(例えばCT,MRI,等の装置)によって関節14を走査させて,患者の関節14(例えば膝)を形成する骨(例えば大腿骨18及び脛骨20)の2D走査画像16を生成する。各走査画像16は対象となる骨18,20の薄いスライス画像である。走査画像16はCPU8へ送信され,CPUは骨18,20の走査画像16の対象となる形状42に沿って開ループ画像解析を行い,対象となる形状42の輪郭に沿って走査画像16ごとに輪郭線を生成する。
【0061】
図1A及び
図1Cのブロック110から分かるように,CPU8は走査画像16,より詳細に言えば輪郭線をまとめて,患者の関節骨18,20の対象となる形状42の3D計算機サーフェスモデル(「関節モデル」)36を生成する。人工膝関節置換術(“TKR”)処置の場合,対象となる形状42は患者の大腿骨18の下部末端,すなわち膝関節末端と,患者の脛骨20の上部末端,すなわち膝関節末端であってよい。より詳細に言えば,対象となる形状42は患者の大腿骨18の脛骨が接触する関節面と,患者の脛骨20の大腿骨が接触する関節面と,であってよい。
【0062】
いくつかの実施例においては,「関節モデル」36はサーフェスモデルでも,ボリュームソリッドモデルでもよく,各モデルは,輪郭線がそれぞれ開ループ又は閉ループであるように,それぞれ開ループ処理又は閉ループ処理によって形成される。ここで詳細に説明する一つの実施例においては,「関節モデル」36は開ループ処理によって形成されたサーフェスモデルであってよい。開ループ及びサーフェスモデルの方法を用いることによって,閉ループ及びボリュームソリッドモデルの方法と反対に,計算機モデリング処理はCPU8の処理能力及び時間を多く必要とせず,結果としてより費用効率がよい。
【0063】
システム4は,「関節モデル」36の対象領域42の前面‐後面長さ及び内側‐外側長さを測定する。前面‐後面長さ及び内側‐外側長さは,対応する骨18,20の3D「関節モデル」36の縦横比,サイズ及び/又は形状を測定するために用いてもよい。以降に説明するジグ素材グルーピング及び選択方法の一つの実施例においては,対応する骨18,20の3D「関節モデル」36の縦横比,サイズ及び/又は形状を,以降に説明するジグ素材グルーピング及び選択方法における候補ジグ素材50の3D計算機モデルの縦横比,サイズ,及び/又は形状との比較に用いてもよい。以降に説明するジグ素材グルーピング及び選択方法の一つの実施例においては,対応する骨18,20の3D「関節モデル」36の前部‐後部寸法及び内側‐外側寸法を,候補ジグ素材50の3D計算機モデルの前部‐後部寸法及び内側‐外側寸法との比較に用いてもよい。
【0064】
TKRの場合,ジグ2は大腿骨及び脛骨関節形成術切断ジグ2A,2Bであり,大腿骨及び脛骨ジグ素材50A,50Bから機械加工で製作又はほかの方法で形成される。複数の候補ジグ素材サイズは,例えばジグ素材ライブラリに存在する。各候補ジグ素材は,前部‐後部寸法及び内側‐外側寸法の一意の組合せを有してもよいが,いくつかの実施例においては,2又はそれ以上の候補ジグ素材が共通の縦横比又は形状を共有してもよい。ライブラリの候補ジグ素材は,縦横比に応じた散布図の斜線に沿ってグループ化してもよい。システム4は,ジグ素材グルーピング及び選択方法を用いて,ジグ素材ライブラリに含まれる複数の利用可能なジグ素材サイズからジグ素材50を選択する。例えば,脛骨及び大腿骨3D関節モデル36の形状,サイズ及び/又は縦横比は,関節モデル36と候補ジグ素材のモデルとの寸法比較と共に,又は単独で,候補ジグ素材の3Dモデルの形状,サイズ及び/又は縦横比と比較される。
【0065】
代替として一つの実施例においては,患者の大腿骨18及び脛骨20の関節モデル36の対象領域の前面-後面及び内側-外側寸法が数学公式によって増加させられる。得られた数学的に修正された前面-後面及び内側-外側寸法は次に,候補ジグ素材50A,50Bのモデルの前面-後面及び内側-外側寸法と比較される。一つの実施例においては,選択されたジグ素材50A,50Bは,患者の骨18,20の数学的に修正された寸法を超えない,患者の骨18,20の数学的に修正された前面-後面及び内側-外側寸法に最も近いサイズの前面-後面及び内側-外側寸法を有するジグ素材である。一つの実施例においては,ジグ素材選択方法は患者の膝形状に可能な限り近いサイズのジグ素材50を選択し,それによってジグ素材からジグ2を生成する際に必要な機械加工を最小限にすることになる。
【0066】
図1F〜1Iに関して説明したように一つの実施例においては,各関節形成術切断ジグ2は内側部分及び外側部分を含む。内側部分は,関節形成術の焦点である患者の骨の曲面形状に特化した寸法を有する。したがって,関節形成術がTKR手術であるときは,ジグは大腿骨ジグ及び/又は脛骨ジグとなる。大腿骨ジグは,患者の大腿骨の下部末端すなわち関節末端の損傷した曲面に一致するように特化した形状をした内側部分を有することになる。脛骨ジグは,患者の脛骨の上部末端すなわち関節末端の損傷した曲面に一致するように特化した形状をした内側部分を有することになる。
【0067】
一つの実施例においては,ジグ素材グルーピング及び選択方法によって,各関節形成術切断ジグ2の外側部分は,患者の大腿骨及び脛骨3D関節モデル36に実質的に類似するサイズを有する。しかし,切断ジグ2に適切な構造的完全性を与えるためにジグ2の外側部分を数学的に修正してもよく,ジグ2の外側部分が種々の方向で3D大腿骨及び脛骨モデルを超え,それによって得られる切断ジグ2がジグ2の外側部分と内側部分との間に十分なジグ材料を有し,適切な構造強度を与えるようにしてもよい。
【0068】
図1Dのブロック140から分かるように,システム4が,患者の大腿骨及び脛骨計算機関節モデル36のサイズ及び形状に実質的に類似するサイズ及び形状を有する大腿骨及び脛骨ジグ素材50を選択すると,システム4は,大腿骨18及び脛骨20の対象となる形状42の3D計算機サーフェスモデル40を,選択された大腿骨及び脛骨ジグ38,又は本発明の一実施例においてはより適切であるジグ素材50,の対応する3D計算機モデルの内側部分に重畳する。
図1Eのブロック145から分かるように,結果は「ジグデータ」46の形態による大腿骨及び脛骨ジグ2の計算機モデルであり,この大腿骨及び脛骨ジグ計算機モデルは,(1)患者の大腿骨及び脛骨の全体サイズ及び形状を厳密に近似する対応する外側部分と,(2)患者の大腿骨18及び脛骨20の対象となる形状42に一致する曲面を有する対応する内側部分と,を有する。
【0069】
システム4は,ジグ計算機モデル(すなわち「ジグデータ」46)のデータを用いてCNC機械10に実際のジグ素材から実際のジグ2を製作させる。結果は,(1)患者の実際の大腿骨及び脛骨と,サイズ及び全体形状が概略一致する外側部分と,(2)患者の大腿骨及び脛骨の対象となる形状42の実際の寸法及び形状に対応する患者に特化した寸法及び形状を有する内側部分と,を有する実際の大腿骨及び脛骨ジグ2の自動製造である。ここに開示したシステム4及び方法は,患者に特化した骨形状に特化した関節形成術ジグ2の効率的な製造を可能にする。
【0070】
このようなジグを製造するジグ2及びシステム4並びに方法は,ここでは膝及びTKR手術について例示している。しかし当業者であれば, このようなジグを製造するジグ2及びシステム4並びに方法は,肘,肩,腰,等,ほかの関節及び関節置換術に用いるように容易に変更できることが分かるであろう。したがって,このようなジグを製造するジグ2及びシステム4並びに方法に関する本願に含まれる開示は,膝及びTKR手術に限定されるものではなく,すべての種類の関節手術を包含すると考えるのが望ましい。
【0071】
c.大腿骨関節形成術切断ジグの内側部分の曲面として用いるための大腿骨下部末端の関節形成術対象領域3Dサーフェスモデルの定義
【0072】
患者の大腿骨18の損傷した下部末端204の対象領域42の3Dモデル40を生成する方法を説明するために,
図2A〜2Gを参照する。
図2Aは,患者の大腿骨18の損傷した下部末端,すなわち膝関節末端204の前部-後部(“AP”)画像スライス208であり,画像スライス208は損傷した下部末端204の対象領域42に対応する開ループ輪郭線セグメント210を含む。
図2Bは,対応する開ループ輪郭線セグメント(210-1,210-2,…210-n)を有する複数の画像スライス(16-1,16-2,…16-n)であり,開ループ輪郭線セグメント210は累積されて,対象領域42の3Dモデル40を生成している。
図2Cは,
図2Bに示した開ループ輪郭線セグメント(210-1,210-2,…210-n)を用いて生成された損傷した下部末端204の対象領域42の3Dモデル40である。
図2D〜2Fは,それぞれ
図2A〜2Cに類似するが,
図2D〜2Fは開ループ輪郭線ではなく閉ループ輪郭線に関するものである。
図2Gは,大腿骨ジグ2Aを製造する方法の概要を示すフローチャートである。
【0073】
図1A,1B及び2Aから分かるように,画像化装置120は患者の大腿骨18の損傷した下部末端,すなわち膝関節末端204の2D画像スライス16を生成するために用いられる。
図2Aに示すように,2D画像16は大腿骨18のAP視(view)である。画像化装置120がMRI画像化装置であるかCT画像化装置であるかによって,画像スライス16はMRIスライス又はCTスライスとなる。損傷した下部末端204は,後部顆212と,前部大腿骨幹曲面214と,後部顆212から前部大腿骨幹曲面214までの関心領域,すなわち対象領域42と,を含む。大腿骨下部末端の対象領域42は,脛骨上部末端,すなわち膝関節末端の対応する関節接触面と接触する大腿骨下部末端の関節接触面であってよい。
【0074】
図2Aに示すように,画像スライス16は海綿骨216と,海綿骨をとりまく皮質骨218と,皮質骨218の関節軟骨皮膜部と,を示している。輪郭線210は,対象領域42に沿い,皮質骨及び軟骨に直接隣接して延び,大腿骨下部末端204の対象領域42の輪郭を描く。輪郭線210は,対象領域42に沿って,後部顆212上の点Aから始まって,前部大腿骨幹曲面214上の点Bまで延びる。
【0075】
一つの実施例においては,
図2Aに示すように輪郭線210は対象領域42に沿って延び,大腿骨下部末端204の曲面の残りの部分には沿っていない。その結果,輪郭線210は開ループを形成し,この開ループは,
図2B及び2Cに関して以降説明するように,開ループ領域,すなわち3D計算機モデル40を形成するために用いることができる。3D計算機モデルについては,
図1Dのブロック140に関して説明されているとおり,大腿骨下部末端の対象領域42の3D曲面に厳密に一致する。このように一つの実施例においては,輪郭線は開ループであり,大腿骨下部末端204の皮質骨曲面全体の輪郭は描かない。一つの実施例においてはまた,開ループ処理は2D画像16から3Dサーフェスモデル36を形成するために用いられ,3Dサーフェスモデルは
図1Dのブロック125〜140に説明されている関節モデル36を概略代替し,
図1Eのブロック145〜150に説明されている「ジグデータ」46の生成に用いるサーフェスモデル40を生成するために用いられる。
【0076】
一つの実施例においては,
図2A及び2Bに示す開ループ輪郭線210とは反対に,輪郭線は閉ループ輪郭線210’であり,
図2Dの示すように大腿骨下部末端の皮質骨曲面全体の輪郭を描き,閉ループ領域を形成している。各画像スライス16-1,…16-nの閉ループ輪郭線210’-1,…210’-nは,
図2Eに示すように結合される。閉ループ領域は,大腿骨下部末端204の曲面部位全体の解析を必要とし,
図2Fに示すように大腿骨下部末端204全体の3Dモデルを形成することになる。このように,閉ループ処理から得られる3Dサーフェスモデルは,全部ではないにしろ,3D関節モデル36の曲面と共通する部分が多い。一つの実施例においては,閉ループ処理は数学的アルゴリズムを適用することによって,2D画像16から3Dボリューム解剖学的関節ソリッドモデルを得ることができる。1995年12月26日に出願され,ここに全体を参照する米国特許第5,682,886号明細書は,連続境界,すなわち閉ループを形成するsnakeアルゴリズムを適用している。大腿骨の輪郭が描かれた後,例えばBezierパッチ法によるモデリング処理を用いて3Dサーフェスモデルが生成される。ほかの3Dモデリング処理,例えば本明細書のほかの部分に列挙したような商業的に利用可能な3D構築ソフトウェアを,閉ループ,ボリュームソリッドモデリング用の3Dサーフェスモデル生成に応用できる。
【0077】
一つの実施例においては,閉ループ処理が2D画像16から3Dボリュームソリッドモデル36を形成するために用いられ,ボリュームモデルは,
図1Dのブロック125〜140に説明した関節モデル36と本質的に同一である。3Dボリュームソリッドモデル36は,
図1Eのブロック145〜150に説明した「ジグデータ」46の生成に用いられたサーフェスモデル40を生成するために用いられる。
【0078】
大腿骨下部末端全体の3Dボリュームソリッドモデルの形成は,大腿骨下部末端の対象領域42の3Dモデルを生成するために開ループ輪郭線を用いるよりも,メモリ及び時間集中的である。したがって,本願で開示したシステム及び方法には閉ループ法が用いられるが,少なくともいくつかの実施例には,開ループ法の方が閉ループ法よりも好まれる。
【0079】
閉ループ法の例は,2007年1月17日出願のImproved Total Joint Arthroplasty Systemと題するParkの米国特許出願第11/641,569号に開示されている。この出願は全体が本明細書において参照される。
【0080】
図2B及び2Gから分かるように,画像化装置120は反復画像化操作によって,複数の画像スライス(16-1,16-2,…16-n)を生成する(ブロック1000)。各画像スライス16は,
図2Aに関して説明したように,対象部位42に沿って延びる開ループ輪郭線(210-1,210-2,…210-n)を有する(ブロック1005)。一つの実施例においては,各画像スライスは2ミリメートルの2D画像スライス16である。システム4は複数の画像スライス(16-1,16-2,…16-n),より詳細に言えば複数の開ループ輪郭線(210-1,210-2,…210-n)を収集して
図2Cに示す3D大腿骨サーフェス計算機モデル40を作成する(ブロック1010)。サーフェスモデル40の生成に関するこの処理もまた,
図1Bのブロック100〜105及び
図1Dのブロック130〜140に関して概要の章で説明されている。類似の処理を,
図2D〜2Fに示した閉ループ輪郭線に関して用いてもよい。
【0081】
図2Cから分かるように,3D大腿骨サーフェス計算機モデル40は,大腿骨下部末端の対象部位42の3D計算機表現である。一つの実施例においては,対象部位42の3D表現は,大腿骨遠位末端の関節脛骨接触面の3D表現である。開ループ生成3Dモデル40は大腿骨下部末端の対応する脛骨接触部のサーフェスモデルであるから,閉ループ輪郭線の結果である,大腿骨下部末端の曲面全体の3Dモデルとは反対に,開ループ生成3Dモデル40は,生成がより時間及びメモリ集中的ではない。
【0082】
一つの実施例においては,開ループ生成3Dモデル40は,大腿骨下部末端の曲面全体の3Dモデルとは反対に,大腿骨下部末端の脛骨に面する末端面のサーフェスモデルである。3Dモデル40は,関心領域,すなわち対象部位42を特定するために用いることができ,対象部位は前に述べたとおり,大腿骨下部末端の対応する脛骨接触部である。繰り返しになるが,開ループ生成3Dモデル40は,閉ループ輪郭線によって生成される大腿骨遠位末端の曲面全体の3Dモデルに比べて,生成がより時間及びメモリ集中的ではない。したがって,本願で開示した少なくともいくつかの実施例では,開ループ輪郭線法が,閉ループ輪郭線法より好まれる。しかし,本願で開示したシステム4及び方法は,開ループ法を用いてもよいし,閉ループ法を用いてもよく,どちらか一方に限定することは望ましくない。
【0083】
3Dモデル40が対象部位42のサーフェスモデルである(すなわち,開ループ処理によって生成され,関節モデル36として機能する3Dサーフェスモデル)であるか,大腿骨下部末端の脛骨に面する末端面全体(すなわち閉ループ処理によって生成され,関節モデル36として機能する3Dボリュームソリッドモデル)であるか,に関わらず,輪郭線210に関するデータは,前述のParkの米国特許出願のいずれにも開示されているサーフェスレンダリング技法によって,3D輪郭計算機モデル40に変換することができる。例えば,用いたサーフェスレンダリング技法は,ポイント-ツ-ポイントマッピング技法と,サーフェス法線ベクトルマッピング技法と,局所サーフェスマッピング技法と,大局サーフェスマッピング技法と,を含む。状況に応じて,各マッピング技法の一つ又は組み合わせを用いることができる。
【0084】
一つの実施例においては,
図2Cに示した3Dモデル40の生成は,画像スライス16を用いて
図2Bの開ループ部位の一連の間隔をとった曲面点それぞれの位置座標値を測定することによって行ってもよい。そして数学的モデルを用いて,
図2Cの3Dモデル40を推定,すなわち計算してもよい。使用できるほかの医用画像計算機プログラムの例は,限定するものではないが,Overland, KSのAnalyzeDirect社のAnalyzeと,Kitware Inc.社のParaviewのようなオープンソフトウェアと,www.itk.orgで取得できるInsight Toolkit (“ITK”)と,www.slicer.orgで取得できる3D Slicerと,Ann Arbor, MIのMaterialise社のMimicsと,を含む。
【0085】
図2Cに示した3Dモデル40を生成する上述のシステムの代替,又は追加の,
図2Cの3Dモデル40を生成するほかのシステムは,非一様有理Bスプライン(“NURB”)プログラム又はBezierプログラムというサーフェスレンダリング技法を含む。これらのプログラムはそれぞれ,複数の輪郭線210から3D輪郭モデル40を生成するために用いてもよい。
【0086】
一つの実施例においては,NURBサーフェスモデリング技法が複数の画像スライス16,より詳細に言えば
図2Bの複数の開ループ輪郭線210,に適用される。NURBソフトウェアは
図2Cに示す3Dモデル40を生成し,3Dモデル40は,メッシュ及び制御点双方を含む関心領域,すなわち対象部位42を有する。例えば,ErvinほかのLandscape Modeling,McGraw-Hill,2001年を参照されたい。同文献は本明細書において全体を参照する。
【0087】
一つの実施例においては,NURBサーフェスモデル技法が次の曲面公式を用いる。
【数1】
ここで,P(i,j)はnrows=(k1+1)及びncols=(k2+1)の頂点行列,W(i,j)は頂点ごとの頂点重みの行列,bi(s)は次数M1の多項式の行方向基底,すなわち混合,bj(t)は次数M2の多項式の列方向基底,すなわち混合,sは行方向の結び目のパラメータ配列,tは列方向の結び目のパラメータ配列を表わす。
【0088】
一つの実施例においては,Bezierサーフェスモデリング技法がBezier公式(1972年,Pierre Bezier)を用いて
図2Cに示すような3Dモデル40を生成し,モデル40は関心領域,すなわち対象部位42を有する。次数(n,m)のBezier曲面は,(n+1)(m+1)個の制御点kijの集合によって定義される。Bezier曲面は,(ki,j)と同一次元の空間内に組み込まれた滑らかで連続の曲面に単位正方形を対応付ける。例えば,kがすべて4次元空間の点のときは,曲面は4次元空間内にある。この関係は,1次元,2次元,50次元,等の空間にも成り立つ。
【0089】
2次元Bezier曲面は,パラメトリック曲面として定義することもでき,パラメトリック座標u,vの関数としての点pの位置は,単位正方形に対して
【数2】
で与えられ,ここで
【数3】
はBernstein多項式であり,
【数4】
は二項係数である。詳細については,Gruneほか,On Numerical Algorithm and Interactive Visualization for Optimal Control Problems, Journal of Computation and Visualization in Science, Vol. 1, No. 4, 1999年7月を参照されたい。同文献は本明細書において全体を参照する。
【0090】
種々のほかのサーフェスレンダリング技法がほかの参考文献に開示されている。例えば次に掲げる刊行物に開示されているサーフェスレンダリング技法を参照されたい。
Lorensenほか,Marching Cubes: A high Resolution 3d Surface Construction Algorithm,Computer Graphics,Vol. 21-3,pp. 163-169,1987年
Farinほか,NURB Curves & Surfaces: From Projective Geometry to Practical Use,Wellesley,1995年
Kumarほか,Robust Incremental Polygon Triangulation for Surface Rendering,WSCG,2000年
Fleischerほか,Accurate Polygon Scan Conversion Using Half-Open Intervals,Graphics Gems III,pp. 362-365,コード: pp. 599-605,1992年
Foleyほか,Computer Graphics: Principles and Practice,Addison Wesley,1990年
Glassner,Principles of Digital Image Synthesis,Morgan Kaufmann,1995年
これら文献はすべて本明細書において全体を参照する。
【0091】
d.患者の大腿骨下部末端のサイズに最も類似するサイズ及び/又は形状を有するジグ素材の選択
【0092】
上述のとおり,大腿骨ジグ2Aのような関節形成術ジグ2は,内側部分100及び外側部分102を含む。大腿骨ジグ2Aは,大腿骨ジグ素材50Aから形成され,ジグ素材は,一つの実施例においては,有限個数の大腿骨ジグ素材サイズから選択される。大腿骨ジグ素材50Aの選択は,患者の大腿骨下部末端204と,種々のサイズの大腿骨ジグ素材50Aの寸法及び/又は形状とを比較し,サイズ及び/又は形状が患者の大腿骨下部末端204に最も厳密に類似する大腿骨ジグ素材50Aを選択することによって行われる。このようにして選択された大腿骨ジグ素材50Aは,大腿骨ジグ2Aの外側部分102を形成する外部,すなわち外側の側面,すなわち曲面232を有する。本明細書の直前の章で説明した3Dサーフェス計算機モデル40は,大腿骨ジグ素材50Aの計算機モデルの内側230に3D曲面40を定義するために用いられる。
【0093】
患者の下部大腿骨末端204にサイズが近い外側部分232を有する大腿骨ジグ素材50Aを選択することによって,内側部分230と患者の大腿骨との間が正確に整合する可能性が高まる。また,ジグ素材50Aから加工又はほかの方法で除去する必要のある材料の量が削減され,それによって材料の浪費及び製造時間を削減する。
【0094】
患者の下部大腿骨末端のサイズ及び/又は形状に最も厳密に対応するジグ素材50を選択する方法を説明するために,まず
図3A〜4Bを参照する。
図3Aは,所定の寸法を有する左大腿骨切断ジグ素材50ALの上面透視図である。
図3Bは,
図3Aに示されたジグ素材50ALの下面透視図である。
図3Cは,
図3Aに示したジグ素材50ALの外側,すなわち外側部分232の平面図である。
図4Aは,複数の利用可能なサイズの左大腿骨ジグ素材50ALであり,それぞれ
図3Cと同一の視点で描かれている。
図4Bは,複数の利用可能なサイズの右大腿骨ジグ素材50ARであり,それぞれ
図3Cと同一の視点で描かれている。
【0095】
図3A〜3Cに示された,患者の左大腿骨に使うことができる左大腿骨ジグの生成のための左ジグ素材50ALのような共通ジグ素材50は,後辺縁240と,前辺縁242と,外辺縁244と,内辺縁246と,外側顆部248と,内側顆部250と,外側232と,内側230と,を含む。
図3A〜3Cのジグ素材50ALは,限られた数の標準サイズの中で利用可能ないくつかの左大腿骨ジグ素材50ALのいずれか一つであってよい。例えば
図3A〜3Cのジグ素材50ALは,i番目の左大腿骨ジグ素材(ここでi=1,2,3,4,…m,mは左大腿骨ジグ素材サイズの最大数)であってよい。
【0096】
図3Cに示すように,ジグ素材50ALの前面‐後面長さJAiはジグ素材50ALの前辺縁242から後辺縁240を測定したものである。ジグ素材50ALの内側‐外側長さJMiは,ジグ素材50ALの外辺縁244から内辺縁246までを測定したものである。
【0097】
図4Aから分かるように,限られた数の左大腿骨ジグ素材サイズが,左大腿骨切断ジグ2Aに機械加工される左大腿骨ジグ素材サイズとして選択できる。例えば一つの実施例においては,9サイズ(m=9)の左大腿骨ジグ素材50ALが利用できる。
図3Cから分かるように,各大腿骨ジグ素材50ALはJAi対JMiとして定義される前面‐後面/内側‐外側縦横比(例えば"JAi/JMi"縦横比)を有する。このように,
図4Aから分かるように,ジグ素材50AL‐1は"JA
1/JM
1"で定義される縦横比,ジグ素材50AL‐2は"JA
2/JM
2"で定義される縦横比,ジグ素材50AL‐3は"JA
3/JM
3"で定義される縦横比,ジグ素材50AL‐4は"JA
4/JM
4"で定義される縦横比,ジグ素材50AL‐5は"JA
5/JM
5"で定義される縦横比,ジグ素材50AL‐6は"JA
6/JM
6"で定義される縦横比,ジグ素材50AL‐7は"JA
7/JM
7"で定義される縦横比,ジグ素材50AL‐8は"JA
8/JM
8"で定義される縦横比,ジグ素材50AL‐9は"JA
9/JM
9"で定義される縦横比,を有する。
【0098】
ジグ素材縦横比は,患者の左大腿骨形状に特化した寸法の左大腿骨ジグ2Aを設計するために用いられる。一つの実施例においては,ジグ素材縦横比は左大腿骨ジグ2Aの外側寸法であってもよい。別の実施例においては,ジグ素材縦横比は,所望の左大腿骨ジグ2Aの寸法に近いパラメータを有する左ジグ素材50ALを選択するための左大腿骨ジグ製造手順に適用してもよい。この実施例は,選択したジグ素材50から所望のジグ2を生成するために必要な機械加工量を減少させることができるので,左大腿骨ジグ製造工程の費用効率を改善することができる。
【0099】
図4Aにおいて,方向N-1はジグ50AL‐3からジグ50AL‐2,ジグ50AL‐1へ向かって,ジグ縦横比が増加することを示している。ここで,"JA
3/JM
3" < "JA
2/JM
2" < "JA
1/JM
1"である。各ジグ50ALの比の増加は,各ジグのJMi値は一定であって対応するJAi値が増加することを表す。換言すれば,JA
3 < JA
2 < JA
1かつJM
3 = JM
2 = JM
1であるから,"JA
3/JM
3" < "JA
2/JM
2" < "JA
1/JM
1"となる。増加レベルの一例は,5%から20%の増加である。
【0100】
方向N-2,N-3についても同一の根拠が適用される。例えば方向N-2は,ジグ50AL‐6からジグ50AL‐5,ジグ50AL‐4へ向かって,ジグ縦横比が増加することを示している。ここで,"JA
6/JM
6" < "JA
5/JM
5" < "JA
4/JM
4"である。各ジグ50ALの比の増加は,各ジグのJMi値は一定であって対応するJAi値が増加することを表す。方向N-3はジグ50AL‐9からジグ50AL‐8,ジグ50AL‐7へ向かって,ジグ縦横比が増加することを示している。ここで,"JA
9/JM
9" < "JA
8/JM
8" < "JA
7/JM
7"である。各ジグ50ALの比の増加は,各ジグのJMi値は一定であって対応するJAi値が増加することを表す。
【0101】
図7に示した散布
図300及び本明細書の後の部分の説明から分かるように,方向E-1はグループ1と,グループ4と,グループ7と,をつなぐ斜線に対応する。類似して方向E-2はグループ2と,グループ5と,グループ8と,をつなぐ斜線に対応する。また,方向E-3はグループ3と,グループ6と,グループ9と,をつなぐ斜線に対応する。
【0102】
図4Aに示すとおり,方向E-2に沿う各ジグ50AL−2,50AL−5,50AL‐8の間でジグ縦横比は一定であり,"JA
2/JM
2" = "JA
5/JM
5" = "JA
8/JM
8"である。しかしジグ50AL−2に比べて,50AL−5の寸法はジグ50AL−2よりも大きくかつ長い。これは,ジグ50AL−5のJA
5値が,JM
5値の増加に比例してX,Y,Z軸すべての方向においてある程度増加しているためである。類似して,JA
8値が,JM
8値の増加に比例してX,Y,Z軸すべての方向においてある程度増加しているため,50AL−8の寸法はジグ50AL−5よりも大きくかつ長い。増加の一例は,5%から20%のへの増加である。
【0103】
方向E-1及びE-3にも同一の根拠が適用される。例えば,方向E-3において,各ジグ50AL−3,50AL−6,50AL‐9の間でジグ縦横比は一定である。ジグ50AL−6のJA
6値及びJM
6値双方がX,Y,Z軸すべての方向において比例して増加しているため,ジグ50AL−3に比べて,50AL−6の寸法は大きくかつ長い。ジグ50AL−9のJA
9値及びJM
9値双方がX,Y,Z軸すべての方向において比例して増加しているため,ジグ50AL−6に比べて,50AL−9の寸法は大きくかつ長い。
【0104】
図4Bから分かるように,限られた数の右大腿骨ジグ素材サイズが,右大腿骨切断ジグ2Aに機械加工される右大腿骨ジグ素材サイズとして選択できる。例えば一つの実施例においては,9サイズ(m=9)の右大腿骨ジグ素材50ARが利用できる。
図3Cから分かるように,各大腿骨ジグ素材50ARはJAi対JMiとして定義される前面‐後面/内側‐外側縦横比(例えば"JAi/JMi"縦横比)を有する。このように,
図4Bから分かるように,ジグ素材50AR‐1は"JA
1/JM
1"で定義される縦横比,ジグ素材50AR‐2は"JA
2/JM
2"で定義される縦横比,ジグ素材50AR‐3は"JA
3/JM
3"で定義される縦横比,ジグ素材50AR‐4は"JA
4/JM
4"で定義される縦横比,ジグ素材50AR‐5は"JA
5/JM
5"で定義される縦横比,ジグ素材50AR‐6は"JA
6/JM
6"で定義される縦横比,ジグ素材50AR‐7は"JA
7/JM
7"で定義される縦横比,ジグ素材50AR‐8は"JA
8/JM
8"で定義される縦横比,ジグ素材50AR‐9は"JA
9/JM
9"で定義される縦横比,を有する。
【0105】
ジグ素材縦横比は,患者の右大腿骨形状に特化した寸法の右大腿骨ジグ2Aを設計するために用いられる。一つの実施例においては,ジグ素材縦横比は右大腿骨ジグ2Aの外側寸法であってもよい。別の実施例においては,ジグ素材縦横比は,所望の右大腿骨ジグ2Aの寸法に近いパラメータを有する右ジグ素材50ARを選択するための右大腿骨ジグ製造手順に適用してもよい。この実施例は,選択したジグ素材50から所望のジグ2を生成するために必要な機械加工量を減少させることができるので,右大腿骨ジグ製造工程の費用効率を改善することができる。
【0106】
図4Bにおいて,方向N-1はジグ50AR‐3からジグ50AR‐2,ジグ50AR‐1へ向かって,ジグ縦横比が増加することを示している。ここで,"JA
3/JM
3" < "JA
2/JM
2" < "JA
1/JM
1"である。各ジグ50ARの比の増加は,各ジグのJMi値は一定であって対応するJAi値が増加することを表す。換言すれば,JA
3 < JA
2 < JA
1かつJM
3 = JM
2 = JM
1であるから,"JA
3/JM
3" < "JA
2/JM
2" < "JA
1/JM
1"となる。増加レベルの一例は,5%から20%の増加である。
【0107】
方向N-2,N-3についても同一の根拠が適用される。例えば方向N-2は,ジグ50AR‐6からジグ50AR‐5,ジグ50AR‐4へ向かって,ジグ縦横比が増加することを示している。ここで,"JA
6/JM
6" < "JA
5/JM
5" < "JA
4/JM
4"である。各ジグ50ARの比の増加は,各ジグのJMi値は一定であって対応するJAi値が増加することを表す。方向N-3はジグ50AR‐9からジグ50AR‐8,ジグ50AR‐7へ向かって,ジグ縦横比が増加することを示している。ここで,"JA
9/JM
9" < "JA
8/JM
8" < "JA
7/JM
7"である。各ジグ50ARの比の増加は,各ジグのJMi値は一定であって対応するJAi値が増加することを表す。
【0108】
図4Bに示すとおり,方向E-2に沿う各ジグ50AR−2,50AR−5,50AR‐8の間でジグ縦横比は一定であり,"JA
2/JM
2" = "JA
5/JM
5" = "JA
8/JM
8"である。しかしジグ50AR−2に比べて,50AR−5の寸法はジグ50AR−2よりも大きくかつ長い。これは,ジグ50AR−5のJA
5値が,JM
5値の増加に比例してX,Y,Z軸すべての方向においてある程度増加しているためである。類似して,JA
8値が,JM
8値の増加に比例してX,Y,Z軸すべての方向においてある程度増加しているため,50AR−8の寸法はジグ50AR−5よりも大きくかつ長い。増加の一例は,5%から20%のへの増加である。
【0109】
方向E-1及びE-3にも同一の根拠が適用される。例えば,方向E-3において,各ジグ50AR−3,50AR−6,50AR‐9の間でジグ縦横比は一定である。ジグ50AR−6のJA
6値及びJM
6値双方がX,Y,Z軸すべての方向において比例して増加しているため,ジグ50AR−3に比べて,50AR−6の寸法は大きくかつ長い。ジグ50AR−9のJA
9値及びJM
9値双方がX,Y,Z軸すべての方向において比例して増加しているため,ジグ50AR−6に比べて,50AR−9の寸法は大きくかつ長い。
【0110】
患者の大腿骨18の下部末端,すなわち膝関節をなす末端204の寸法は,ジグ素材50に関して説明した方法と類似の方法で3Dサーフェスモデル40,すなわち3D関節モデル36を分析することによって判定できる。例えば
図5に示すように,遠位から近位の方向に見た患者の左大腿骨18の3Dサーフェスモデル40,すなわち3D関節モデル36の軸方向の図である
図5に示すように,サーフェスモデル40,すなわち関節モデル36の下部末端204は,前辺縁260と,後辺縁262と,内辺縁264と,外辺縁266と,内側顆268と,外側顆270と,を含む。大腿骨寸法は,3D関節モデル36の3Dサーフェスモデル40を解析することによって,患者の大腿骨18の下部末端面,すなわち脛骨関節摺動面204に関して測定される。次にこれらの大腿骨寸法が,大腿骨ジグ寸法を設定し,適切な大腿骨ジグを選択するために用いられる。
【0111】
図5に示すように,患者の大腿骨18の下部末端204(すなわち,開ループ解析によって形成されたものであれ,閉ループ解析によって形成されたものであれ,関節モデル36のサーフェスモデル40の下部末端204)の前部‐後部長さfAPは,大腿骨外側溝の前辺縁262から,大腿骨外側顆270の後辺縁260までを測定した長さである。患者の大腿骨18の下部末端204の内側‐外側長さfMLは,内側顆268の内辺縁264から,外側顆270の外辺縁266までを測定した長さである。
【0112】
一つの実施例においては,大腿骨下部末端204の前部‐後部長さfAP及び内側‐外側長さfMLを大腿骨下部末端の縦横比fAP/fMLに用いることができる。多数(例えば数百,数千,数万,等)の患者の膝の縦横比fAP/fMLを収集し,統計的に分析することによって,多数の患者の膝を収容するジグ素材の最も普遍的な縦横比を決定することができる。そしてこの情報を用いて,どの一つ,二つ,三つ,等の縦横比が最大数の患者の膝を収容しそうかを決定することができる。
【0113】
システム4は,関節モデル36(関節モデル36が開ループ処理によって生成された3Dモデルであれ,閉ループ処理によって生成された3Dボリュームソリッドモデルであれ)のサーフェスモデル40によって得られた患者の大腿骨18の下部末端204を解析して,大腿骨下部末端204の前部‐後部長さfAP及び内側‐外側長さfMLに関するデータを取得する。
図5のモデル大腿骨下部末端204に重畳された
図3Cの選択されたモデルジグ素材50ALを示している
図6から分かるように,大腿骨寸法長さfAP,fMLをジグ素材の寸法長さjAP,jMLと比較して,加工処理の出発点及びジグモデルの外側サーフェスモデルとしてどのジグ素材モデルを選択するかを決定する。
【0114】
図6に示すように,予定の左大腿骨ジグ素材50ALが,サーフェスモデル40又は関節モデル36によって表された患者の解剖学モデルの左大腿骨下部末端204とかん合するように重畳される。ジグ素材50ALは内側顆268及び外側顆270のほとんどを覆い,t1,t2,t3を含む小さな顆状部位は露出されたままである。内側の内側顆状部位t1は,内側顆268の内辺縁264と,ジグ素材50ALの内辺縁246との間の部位を表す。外側の内側‐外側顆状部位t2は,外側顆270の外辺縁266と,ジグ素材50ALの外辺縁244との間の部位を表す。後部の前部‐後部部位t3は,外側顆270の後辺縁260と,ジグ素材50ALの後辺縁240との間の顆状部位を表す。
【0115】
ジグ素材50ALの前辺縁242は,前部の前部‐後部オーバハングt4によって示される左大腿骨下部末端204の前辺縁262を越えて延びる。特に,前部の前部‐後部オーバハングt4は,大腿骨下部末端204の外側溝の前辺縁262と,ジグ素材50ALの前辺縁242との間の部位を表している。大腿骨前部‐後部fAPデータ及び大腿骨内側‐外側fMLデータを取得して使用することによって,システム4は次の公式によって大腿骨ジグ素材50ALのサイズを変えることができる。
jFML = fML - t1 - t2, jFAP = fAP - t3 + t4
ここでjFMLは大腿骨ジグ素材50ALの内側‐外側長さであり,jFAPは大腿骨ジグ素材50ALの前部‐後部長さである。一つの実施例においては,t1,t2,t3及びt4は次の範囲にある。
2mm ≦ t1 ≦ 6mm,2mm ≦ t2 ≦ 6mm,2mm ≦ t3 ≦ 12mm,15mm ≦ t4 ≦ 25mm
別の実施例においては,t1,t2,t3及びt4は次の値である。
t1 = 3mm,t2 = 3mm,t3 = 6mm,t4 = 20mm
【0116】
図7Aは,患者の大腿骨18の下部末端204に適したジグ素材サイズを,複数の候補ジグ素材サイズから選択するための例示散布
図300である。一つの実施例においては,X軸は患者の大腿骨内側‐外側長さfMLをミリメートルで表し,Y軸は患者の大腿骨前部‐後部長さfAPをミリメートルで表したものである。一つの実施例においては,散布図はいくつかのジグ素材サイズグループに分割され,各グループは散布
図300の一つの領域を含み,特定候補ジグ素材サイズの特定パラメータJMr,JArと関係している。
【0117】
一つの実施例においては,
図7Aに示した例示散布
図300は9個の素材サイズグループを含み,各グループは一つの候補ジグ素材サイズに属する。しかし実施例に応じて,散布
図300はより多くのジグ素材サイズグループを含んでもよいし,より少ないジグ素材サイズグループを含んでもよい。ジグ素材サイズグループの数が多ければ多いほど,候補ジグ素材サイズの数は多くなり,選択された候補ジグ素材サイズは,患者の膝形状及び得られたジグ2に対してより寸法特定になる。選択された候補ジグ素材サイズがより寸法特定であればあるほど,選択された候補ジグ素材50から所望のジグ2を製造するために必要な機械加工量が少なくなる。
【0118】
逆に,ジグ素材サイズグループ数が少なければ少ないほど,候補ジグ素材サイズ数は少なくなり,選択された候補ジグ素材サイズは,患者の膝形状及び得られたジグ2により寸法特定でなくなる。選択された候補ジグ素材サイズがより寸法特定でなければないほど,選択された候補ジグ素材50から所望のジグ2を製造するために必要な機械加工量が多くなり,ジグ製造手順において余分な荒削りが増える。
【0119】
図7Aから分かるように一つの実施例においては,散布
図300の9個のジグ素材サイズグループは次のようなパラメータJMr,JArを有する。グループ1はパラメータJM
1,JA
1を有する。JM
1は第1大腿骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,JM
1 = 70mmである。JA
1は第1大腿骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,JA
1 = 70.5mmである。グループ1は,55mm < fML < 70mmかつ61mm < fAP < 70.5mmの範囲の患者の大腿骨fML及びfAPデータを包含する。
【0120】
グループ2はパラメータJM
2,JA
2を有する。JM
2は第2大腿骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,JM
2 = 70mmである。JA
2は第2大腿骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,JA
2 = 61.5mmである。グループ2は,55mm < fML < 70mmかつ52mm < fAP < 61.5mmの範囲の患者の大腿骨fML及びfAPデータを包含する。
【0121】
グループ3はパラメータJM
3,JA
3を有する。JM
3は第3大腿骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,JM
3 = 70mmである。JA
3は第3大腿骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,JA
3 = 52mmである。グループ3は,55mm < fML < 70mmかつ40mm < fAP < 52mmの範囲の患者の大腿骨fML及びfAPデータを包含する。
【0122】
グループ4はパラメータJM
4,JA
4を有する。JM
4は第4大腿骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,JM
4 = 85mmである。JA
4は第4大腿骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,JA
4 = 72.5mmである。グループ4は,70mm < fML < 85mmかつ63.5mm < fAP < 72.5mmの範囲の患者の大腿骨fML及びfAPデータを包含する。
【0123】
グループ5はパラメータJM
5,JA
5を有する。JM
5は第5大腿骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,JM
5 = 85mmである。JA
5は第5大腿骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,JA
5 = 63.5mmである。グループ5は,70mm < fML < 85mmかつ55mm < fAP < 63.5mmの範囲の患者の大腿骨fML及びfAPデータを包含する。
【0124】
グループ6はパラメータJM
6,JA
6を有する。JM
6は第6大腿骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,JM
6 = 85mmである。JA
6は第6大腿骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,JA
6 = 55mmである。グループ6は,70mm < fML < 85mmかつ40mm < fAP < 55mmの範囲の患者の大腿骨fML及びfAPデータを包含する。
【0125】
グループ7はパラメータJM
7,JA
7を有する。JM
7は第7大腿骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,JM
7 = 100mmである。JA
7は第7大腿骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,JA
7 = 75mmである。グループ7は,85mm < fML < 100mmかつ65mm < fAP < 75mmの範囲の患者の大腿骨fML及びfAPデータを包含する。
【0126】
グループ8はパラメータJM
8,JA
8を有する。JM
8は第8大腿骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,JM
8 = 100mmである。JA
8は第8大腿骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,JA
8 = 65mmである。グループ8は,85mm < fML < 100mmかつ57.5mm < fAP < 65mmの範囲の患者の大腿骨fML及びfAPデータを包含する。
【0127】
グループ9はパラメータJM
9,JA
9を有する。JM
9は第9大腿骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,JM
9 = 100mmである。JA
9は第9大腿骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,JA
9 = 57.5mmである。グループ9は,85mm < fML < 100mmかつ40mm < fAP < 57.5mmの範囲の患者の大腿骨fML及びfAPデータを包含する。
【0128】
適切なサイズのジグ素材を選択する処理の実施例を示すフローチャートである
図7Bから分かるように,骨の前部‐後部長さfAP及び内側‐外側長さfMLは,関節モデル36のサーフェスモデル40の下部末端204に関して測定される(ブロック2000)。下部末端204の骨の長さfAP,fMLは,上述のjFML公式及びjFAP公式によって数学的に修正され,最小大腿骨ジグ素材前部‐後部長さjFAP及び内側‐外側長さjFMLになる(ブロック2010)。数学的に修正された骨の長さfAP,fML,すなわちより詳細に言えば最小大腿骨ジグ素材前部‐後部長さjFAP及び内側‐外側長さjFMLは,
図7Aの散布
図300のジグ素材寸法に対して参照される(ブロック2020)。散布
図300は,ジグ素材ライブラリを形成する候補大腿骨ジグ素材の長さを図で表すことができる。大腿骨ジグ素材50Aは,最小大腿骨ジグ素材前部‐後部長さjFAP及び内側‐外側長さjFMLを収容するのにまだ十分大きな最小長さを有するジグ素材サイズが選択される(ブロック2030)。
【0129】
一つの実施例においては,選択されたジグ素材サイズの外側は次に説明するように,ジグモデルの外側サーフェスモデルとして用いられる。一つの実施例においては,選択されたジグ素材サイズは,CNC機械に置かれて最小大腿骨ジグ素材前部‐後部長さjFAP及び内側‐外側長さjFMLに削られ,大腿骨ジグ2Aの外側面に機械加工され,又はほかの方法で形成される実際のジグ素材に対応する。
【0130】
図7Bに概要を示し,
図7Aの散布
図300に関する方法は,次の例によって更に理解することができる。患者の大腿骨18の下部末端204に関する
図6において,測定された患者の大腿骨の長さは次のとおりである。fML = 79.2mmかつfAP = 54.5mm(ブロック2000)。前述のとおり,下部末端204は関節モデル36のサーフェスモデル40の一部であってもよい。fML及びfAPの測定値が下部末端204から測定されると,対応するジグjFMLデータ及びジグjFAPデータが上述のjFML公式及びjFAP公式によって次のように決定できる(ブロック2010)。
jFML = fML - t1 - t2,ここでt1 = 3mm,t2 = 3mm
jFAP = fAP - t3 + t4,ここでt3 = 6mm,t4 = 20mm
jFML公式及びjFAP公式による計算結果は,jFML = 73.2mm及びjFAP = 68.5mmである。
【0131】
図7Aの散布
図300から分かるように,測定されたジグデータ(すなわち,jFML = 73.2mm及びjFAP = 68.5mm)は散布
図300のグループ4に含まれる。グループ4は,所定の大腿骨ジグ素材パラメータ(JM
4,JA
4),すなわちJM
4 = 85mm及びJA
4 = 72.5mmを有する。この所定大腿骨ジグ素材パラメータは,種々のグループのうち最小のものであるが,それでも最小大腿骨素材長さjFAP,jFMLに対しては十分大きい。(ブロック2020)。この所定大腿骨ジグ素材パラメータ(JM
4 = 85mm及びJA
4 = 72.5mm)を,適切な大腿骨ジグ素材サイズとして選択してもよい(ブロック2030)。
【0132】
一つの実施例においては,
図3Cに示すように所定大腿骨ジグ素材パラメータ(85mm,72.5mm)を,大腿骨外側ジグ寸法に適用してもよい。換言すれば,ジグ素材外側部分は,
図8A〜9Cに関して説明するようにジグモデル外側部分として用いられる。したがって,大腿骨ジグ素材50Aの外側部分は機械加工しなくてもよく,所定ジグ素材パラメータ(85mm,72.5mm)を有するジグ素材50Aの未修正外側部分を,完成した大腿骨ジグ2Aの外側部分として使用することができる。
【0133】
別の実施例においては,大腿骨ジグ素材パラメータ(85mm,72.5mm)を機械加工処理によるジグ製造用に選択してもよい。したがって,所定パラメータ(85mm,72.5mm)を有する大腿骨ジグ素材50Aが機械加工処理に供給され,大腿骨ジグ素材50Aの外側部分が所定パラメータ(85mm,72.5mm)から所望の大腿骨ジグパラメータ(73.2mm,68.5mm)に加工されて,大腿骨ジグ2Aの完成した外側部分となる。所定パラメータ(85mm,72.5mm)が所望の大腿骨ジグパラメータ(73.2mm,68.5mm)に相対的に近く選択することによって,加工時間及び材料浪費が削減される。
【0134】
加工時間及び材料浪費を削減するために,上述したジグ素材選択方法を用いるのが有利であるが,いくつかの実施例においては,ジグ素材は,単にすべての患者の骨長さfAP,fMLに適用可能な十分大きいものが提供される。そしてこのようなジグ素材が所望のジグ素材長さjFAP,jFMLに加工されて,完成したジグ2Aの外側面として用いられる。
【0135】
一つの実施例においては,散布
図300に表された候補ジグ素材サイズグループ数は,ジグ素材製造事業者が提供するジグ素材サイズ数の関数である。例えば第1散布
図300は,9種のジグ素材サイズを提供するA社が製造したジグ素材だけに関係する。したがって散布
図300は,9個のジグ素材サイズグループを有する。第2散布
図300は,12種のジグ素材サイズを提供するB社が製造したジグ素材だけに関係する。したがって散布
図300は,12個のジグ素材サイズグループを有する。
【0136】
図7Aの散布
図300に表すように,例えばジグ素材ライブラリには複数の候補ジグ素材サイズがある。候補ジグ素材はそれぞれ,前部‐後部寸法サイズ及び内側‐外側寸法サイズの一意な組合せを有してもよいが,2又はそれ以上の候補ジグ素材が共通の縦横比jAP/jML,すなわち形状を共有してもよい。ライブラリの候補ジグ素材は,その縦横比jAP/jMLによって,散布
図300の斜線に沿ってグループ化される。
【0137】
一つの実施例においては,ジグ素材縦横比jAP/jMLを用いて,加工できるジグ素材形状を選択してより大きな,又はより小さい個人に合うように加工してもよい。
【0138】
図7Aから分かるように,大腿骨ジグ設計研究の一部として,膝に傷害のある98人の骨関節症(OA)患者が,散布
図300に入れられた。各患者の大腿骨fAP及びfMLデータが測定され,上述のjFML及びjFAP公式によって修正され,患者のジグ素材データ(jFML,jFAP)となった。そして患者のジグ素材データが,散布
図300内に点として入れられた。
図7Aから分かるように,利用可能なグループのパラメータ以外には患者の点はない。このような処理を,グループパラメータ及び必要なグループの数を設定するために用いることができる。
【0139】
一つの実施例においては,選択されたジグ素材パラメータは,患者の膝形状に特化した大腿骨ジグ外側寸法であってよい。別の実施例においては,選択されたジグ素材パラメータは製造工程中に選択してもよい。
【0141】
図1Eのブロック150について説明した「統合ジグデータ」48に概略対応する3D大腿骨ジグモデル346を生成する方法の実施例を説明するために,
図3A〜3Cと,8A〜8Bと,9A〜9Cと,10A〜10Bと,を参照する。
図3A〜3Cは大腿骨ジグ素材50Aの種々の図である。
図8A〜8Bはそれぞれ,大腿骨ジグ素材外側サーフェスモデル232Mの外側透視図及び内側透視図である。
図9A及び9Bは,結合された大腿骨ジグ素材外側サーフェスモデル232M及び骨サーフェスモデル40の外側透視図であり,
図9Cは
図9Bの切断線9C‐9Cに沿った結合モデル232M,40の断面図である。
図10A及び10Bはそれぞれ,「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44をジグモデル346に統合して,
図1Eのブロック150に関して説明した「統合ジグデータ」48に概略対応する統合ジグモデル,すなわち完全ジグモデル348になった後の得られた大腿骨ジグモデル346の外側及び内側透視図である。
【0142】
図3A〜3Cから分かるように,
図7Bに関して説明した選択された所定寸法を有するジグ素材50Aは内側面230及び外側面232を含む。
図8A及び8Bに示した外側サーフェスモデル232Mは,ジグ素材モデル50Aの外側面232から抽出又はほかの方法で生成される。したがって,外側サーフェスモデル232Mは
図7Bに関して説明したように選択した大腿骨ジグ素材50Aのジグ素材縦横比を基準にしており,患者の膝形状に特化した寸法をしている。大腿骨ジグサーフェスモデル232Mは,上述の任意の計算機サーフェスレンダリング技法を用いて,
図3A〜3Cのジグ素材モデル50Aから抽出又はほかの方法で生成できる。
【0143】
図9A〜9Cから分かるように,外側サーフェスモデル232Mは大腿骨サーフェスモデル40と結合されて,それぞれ大腿骨ジグモデル346の外側面及び内側面をなす。大腿骨サーフェスモデル40は,大腿骨ジグ2Aの内側面,すなわち捕捉面を表し,大腿骨関節形成術対象領域42に対応する。このようにしてモデル40は得られた大腿骨ジグ2Aが患者の大腿骨18の関節形成術対象領域42にインデクス付けされるようにし,それによって得られた大腿骨ジグ2Aが関節形成処置中,関節形成術対象領域42を捕捉するようにする。二つのサーフェスモデル232M,40は結合されて,大腿骨ジグ2Aを製造するための患者に特化したジグモデル346となる。
【0144】
図9B及び9Cから分かるように,モデル232M,40を適切にそろえると,二つのモデル232M,40の間にギャップができる。そろえられたモデル232M,40に画像縫合法,すなわち画像縫合ツールを施して二つのサーフェスモデルを一つに結合し,
図9Bの3D計算機生成ジグモデル346を,
図10A及び10Bに示した統合ジグモデル348に外観が類似した単体の,一つに結合された,すき間を埋めた(filled-in),
図9Bのジグモデル346にする。一つの実施例においては,ジグモデル346は,
図1Eのブロック145に関して説明した「ジグデータ」46の記載に概略対応するものであってもよい。
【0145】
図9B及び9Cから分かるように二つのモデル232M,40の間の幾何学的ギャップは,そのうちのいくつかを厚みP
1,P
2及びP
3について以降説明するが,TKA手術の際に切断器具を受け入れて誘導するスロットの幅及び長さ,並びにドリルビットの長さのために,二つのモデル232M,40の間に一定の空間を与えることができる。
図10A及び10Bに示す得られた大腿骨ジグモデル348は3Dサーフェスモデル232M,40から生成された3Dボリュームモデルであってもよいので,3Dサーフェスモデル232M,40の間に空間,すなわちギャップが設けられる。これによって得られる3Dボリュームジグモデル348を,実際の物理的3Dボリューム大腿骨ジグ2Aを生成するために用いることができる。
【0146】
いくつかの実施例においては,画像処理手順に,二つのモデル232M,40の整合の後にジグモデル346を修正するモデル修正手順を含んでもよい。例えば,限定するものではないが,モデル修正の種々の方法には次に掲げる文献に記載されたような,ユーザ誘導修正と,裂け目(crack)識別及び充てんと,多様体接続性生成と,を含む。
Nooruddinほか,Simplification and Repair of Polygonal Models Using Volumetric Techniques,IEEE Trans. on Visualization and Computer Graphics,Vol. 9,No.2,2003年4月〜6月
Erikson,C.,Error Correction of a Large Architectural Model: The Henderson County Courthouse,技術報告TR95-013,Dept. of Computer Science,Univ. of North Carolina at Chapel Hill,1995年
Khorramabdi,D.,A Walk through the Planned CS Building,技術報告UCB/CSD 91/652,Computer Science Dept.,Univ. of California at Berkeley,1991年
Morvanほか,IVECS: An Interactive Virtual Environment for the Correction of .STL files,Proc. Conf. Virtual Design,1996年8月
Bohnほか,A Topology-Based Approach for Shell-Closure,Geometric Modeling for Product Realization,P.R. Wilsonほか編,pp. 297-319,North-Holland,1993年
Barequetほか,Filling Gaps in the Boundary of a Polyhedron,Computer Aided Geometric Design,Vol. 12,No. 2,pp.207-229,1995年
Barequetほか,Repairing CAD Models,Proc. IEEE Visualization '97,pp. 363-370,1997年10月
Gueziecほか,Converting Sets of Polygons to Manifold Surfaces by Cutting and Stitching,Proc. IEEE Visualization '98,pp. 383-390,1998年10月
これら文献はいずれも全体が本明細書に組み込まれる。
【0147】
図10A及び10Bから分かるように,統合ジグモデル348は外科医の要望によるいくつかの特徴を含んでもよい。例えばジグモデル348は,骨鋸を受け入れ,誘導するためのスロット30と,骨ドリルビットを受け入れ,誘導するためのドリル穴32と,を含んでもよい。
図9B及び9Cから分かるように,得られた大腿骨ジグ2Aが関節形成処置の際にゆがむ,すなわち変形しないで,適切に骨鋸及びドリルビットを支持し,誘導するようにするために十分な構造的完全性を有するように,モデル232M,40の間のギャップ350が次のオフセットP
1,P
2及びP
3を有してもよい。
【0148】
図9B〜10Bから分かるように一つの実施例においては,厚みP
1はモデル232M,40の間の前部ドリル穴32Aの長さ方向に沿って延び,関節形成処置の際に受け入れた骨ドリルを支持し,誘導する。厚みP
1は,少なくとも約4mm又は少なくとも約5mmの厚さであってよい。前部ドリル穴32Aの直径は,少なくとも0.85mm(1/3インチ)の切断器具を受け入れるように構成してもよい。
【0149】
厚みP
2はモデル232M,40の間の鋸スロット30の長さ方向に沿って延び,関節形成処置の際に受け入れた骨鋸を支持し,誘導する。厚みP
2は,少なくとも約10mm又は少なくとも約15mmの厚さであってよい。
【0150】
厚みP
3はモデル232M,40の間の後部ドリル穴32Pの長さ方向に沿って延び,関節形成処置の際に受け入れた骨ドリルを支持し,誘導する。厚みP
3は,少なくとも約5mm又は少なくとも約8mmの厚さであってよい。ドリル穴32の直径は,少なくとも0.85mm(1/3インチ)も切断器具を受け入れるように構成してもよい。
【0151】
受け入れたドリルビット又は鋸を誘導するために十分長い表面を提供することに加えて,種々の厚みP
1,P
2及びP
3は,大腿骨ジグ2AがTKR手術の際の大腿骨の切断と,穴あけと,穴さらえと,の強力な処置に耐えるように構造的に設計される。
【0152】
図10A及び10Bに示すように,統合ジグモデル348は次のものを含む。
・患者の内側顆軟骨の遠位部分に一致する形状400
・患者の外側顆軟骨の遠位部分に一致する形状402
・接点すなわち鉤の形状をしており,TKR手術の際に得られたジグ2Aを患者の前部大腿骨関節表面にしっかりとかみ合うことができる突起(projection)404
・患者,外科医及び/又は外科処置に関する情報を列挙する空白ラベルエリアを提供する平面406
また上述のとおり,統合ジグモデル348は,鋸切断スロット30及びドリル穴32を含んでもよい。ジグモデル348の内側部分すなわち内側100(及び得られる大腿骨ジグ2A)は大腿骨サーフェスモデル40であり,関節形成処置の際に患者の大腿骨18の関節形成術対象領域42を捕捉する。
【0153】
図1Bのブロック105及び
図2A〜2Fを参照すれば分かるように,一つの実施例においては,画像走査データ16を累積してモデル40,22を生成するとき,モデル40,22は点Pを参照し,点Pは,
図1Cに関して説明した,POPに用いられるモデル22,28に対してモデル40,22を参照し,方向付けする単一点,一連の点,等であってよい。POPのために点Pに対してモデル22,28に反映されたどんな変更(例えば点Pが点P’になること)も,モデル40,22と関係する点Pに反映される(
図1Dのブロック135参照)。したがって,
図1Dのブロック140及び
図9A〜9Cから分かるように,ジグ素材外側サーフェスモデル232Mをサーフェスモデル40(すなわち,関節モデル22から作られたサーフェスモデル)と結合してジグモデル346を生成するとき,ジグモデル346は点P’に対して参照され,方向付けられ,
図1Eのブロック145に関して説明した「ジグデータ」46に概略均等である。
【0154】
ジグモデル346は点P’に対して適切に参照され,方向付けられているので,
図1Eのブロック125に関して説明した「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44はジグモデル346に適切に統合されて,
図10A〜10Bに示した統合ジグモデル348となる。統合ジグモデル348は,鋸切断スロット30と,ドリル穴32と,サーフェスモデル40と,を含む。したがって統合ジグモデル348は,
図1Eのブロック150に説明した「統合ジグデータ」48に概略均等である。
【0155】
「関節モデル」22とかん合する統合ジグモデル348の透視図である
図11から分かるように,ジグモデル348の内側面40は,大腿骨下部末端204の関節形成術対象領域42を捕捉し,それによってジグモデル348は当該領域42とかん合するようにインデクスが付けられる。処置全体を通じて点P,P’に対して種々のモデルの参照し,方向付けることによって,鋸切断スロット30及びドリル穴32は,得られる大腿骨ジグ2Aが患者の関節を変性前の状態に回復させることができる鋸切断及びドリル穴あけになるよう適切に方向付けられる。
【0156】
図11に示すように,統合ジグモデル348は,ジグ本体500と,ジグ本体500の一方の側の突起502と,他方の側の二つの突起504,506と,を含む。突起504,506は内側及び外側の顆軟骨と一致する。突起502,504,506は,ジグ本体500の二つの反対の末端から一体的に延びる。
【0157】
図1Eのブロック155〜165から分かるように,統合ジグ348,又はより詳細に言えば統合ジグデータ48はCNC機械10に送信されて,選択されたジグ素材50Aから大腿骨ジグ2Aを加工することができる。例えば統合ジグデータ48は,前に参照した種々のParkの特許出願に記載されているように,高速生産機械10へ自動ジグ製造命令を与える生産ファイルを作成するために用いてもよい。そして高速生産機械10は,命令に従って大腿骨ジグ素材50Aから患者に特化した関節形成術大腿骨ジグ2Aを製造する。
【0158】
得られる大腿骨ジグ2Aは,統合ジグモデル348の形状を有していてもよい。したがって
図11から分かるように,外科医の要望によって,得られる大腿骨ジグ2Aは突起502,504,506の上に形成されたスロット30及びドリル穴32を有してもよい。ドリル穴30は,TKR処置の遠位大腿骨切断の際に,大腿骨切断ジグ2Aと,患者の損傷した関節面との間に生じることがあるIR/ER(内側/外側)回転軸不整合を防ぐように開けられる。スロット30は,TKRの遠位大腿骨切断の際に,横断切断用往復鋸刃のような切断器具を受け入れるように開けられる。
【0159】
f.脛骨関節形成術切断ジグの内側部分の曲面として用いるための脛骨上部末端の関節形成術対象領域の3Dサーフェスモデルの定義
【0160】
患者の脛骨20の損傷した上部末端604の対象領域42の3Dモデル40を生成する方法を説明するために,
図12A〜12Cを参照する。
図12Aは,患者の脛骨20の損傷した上部末端,すなわち膝関節末端604の前部‐後部(“AP”)画像スライス608であって,画像スライス608は損傷した上部末端604も対象領域42に対応する開ループ輪郭線セグメント610を含む。
図12Bは,対応する開ループ輪郭線セグメント(610‐1,610‐2,…610‐n)を有する複数の画像スライス(16‐1,16‐2,…16‐n)であり,開ループ輪郭線セグメント610が累積されて対象領域42の3Dモデル40が生成される。
図12Cは,
図12Bに示した開ループ輪郭線セグメント(610‐1,610‐2,…610‐n)を用いて生成された,損傷した上部末端604の対象領域42の3Dモデル40である。
【0161】
図1A,1B及び12Aから分かるように,画像化装置120は,患者の脛骨20の損傷した上部末端,すなわち膝関節末端604の2D画像スライス16を生成するために用いられる。
図12Aに示すように,2D画像16は脛骨20のAP視(view)である。画像化装置120がMRI画像化装置であるかCT画像化装置であるかによって,画像スライス16はMRIスライス又はCTスライスとなる。損傷した上部末端604は,脛骨高平部612と,前部脛骨幹曲面614と,外側脛骨高平部曲面の一部から前部脛骨幹曲面614までの脛骨メニスカスに沿って延びる関心領域,すなわち対象領域42と,を含む。脛骨上部末端の対象領域42は,大腿骨下部末端,すなわち膝関節末端の対応する関節接触面と接触する脛骨上部末端の関節接触面であってよい。
【0162】
図12Aに示すように,画像スライス16は海綿骨616と,海綿骨をとりまく皮質骨618と,皮質骨618の関節軟骨皮膜部と,を示している。輪郭線610は,対象領域42に沿い,皮質骨及び軟骨に直接隣接して延び,脛骨上部末端604の対象領域42の輪郭を描く。輪郭線610は,対象領域42に沿って,(画像スライスが脛骨の外側部分又は内側部分を通って広がっているかどうかによって)外側又は内側脛骨高平部612上の点Cから始まって,前部脛骨幹曲面614上の点Dまで延びる。
【0163】
一つの実施例においては,
図12Aに示すように輪郭線610は対象領域42に沿って延び,脛骨上部末端604の曲面の残りの部分には沿っていない。その結果,輪郭線610は開ループを形成し,この開ループは,
図12B及び12Cに関して以降説明するように,開ループ領域,すなわち3D計算機モデル40を形成するために用いることができる。3D計算機モデルについては,
図1Dのブロック140に関して説明されているとおり,脛骨上部末端の対象領域42の3D曲面に厳密に一致する。このように一つの実施例においては,輪郭線は開ループであり,脛骨上部末端604の皮質骨曲面全体の輪郭は描かない。一つの実施例においてはまた,開ループ処理は2D画像16から3Dサーフェスモデル36を形成するために用いられ,3Dサーフェスモデルは
図1Dのブロック125〜140に説明されている関節モデル36を概略代替し,
図1Eのブロック145〜150に説明されている「ジグデータ」46の生成に用いるサーフェスモデル40を生成するために用いられる。
【0164】
一つの実施例においては,大腿骨の代わりに脛骨に属する平ループ輪郭線を除いて,
図12A及び12Bに示す開ループ輪郭線610とは反対に,輪郭線は
図2D〜2Eに関して説明した閉ループ輪郭線210’と概略同一である。
図2Dに関して説明した大腿骨閉ループ輪郭線のように脛骨閉ループ輪郭線は脛骨上部末端の皮質骨曲面全体の輪郭を描き,閉ループ領域を形成している。脛骨閉ループ輪郭線は,
図2Eに示す大腿骨輪郭線に関して説明したものに類似する方法で結合される。その結果,脛骨閉ループ領域は脛骨上部末端604の曲面部位全体の解析を必要とし,
図2Fに示す大腿骨上部末端204に類似した方法で,脛骨上部末端604全体の3Dモデルを形成することになる。このように,閉ループ処理から得られる3Dサーフェスモデルは,全部ではないにしろ,3D脛骨関節モデル36の曲面と共通する部分が多い。一つの実施例においては,閉ループ処理は数学的アルゴリズムを適用することによって,2D画像16から3Dボリューム解剖学的関節ソリッドモデルを得ることができる。1995年12月26日に出願され,ここに全体を参照する米国特許第5,682,886号明細書は,連続境界,すなわち閉ループを形成するsnakeアルゴリズムを適用している。脛骨の輪郭が描かれた後,例えばBezierパッチ法によるモデリング処理を用いて3Dサーフェスモデルが生成される。ほかの3Dモデリング処理,例えば本明細書のほかの部分に列挙したような商業的に利用可能な3D構築ソフトウェアを,閉ループ,ボリュームソリッドモデリング用の3Dサーフェスモデル生成に応用できる。
【0165】
一つの実施例においては,閉ループ処理が2D画像16から3Dボリュームソリッドモデル36を形成するために用いられ,ボリュームモデルは,
図1Dのブロック125〜140に説明した関節モデル36と本質的に同一である。3Dボリュームソリッドモデル36は,
図1Eのブロック145〜150に説明した「ジグデータ」46の生成に用いられたサーフェスモデル40を生成するために用いられる。
【0166】
脛骨上部末端全体の3Dボリュームソリッドモデルの形成は,脛骨上部末端の対象領域42の3Dモデルを生成するために開ループ輪郭線を用いるよりも,メモリ及び時間集中的である。したがって,本願で開示したシステム及び方法には閉ループ法が用いられるが,少なくともいくつかの実施例には,開ループ法の方が閉ループ法よりも好まれる。
【0167】
閉ループ法の例は,2007年1月17日出願のImproved Total Joint Arthroplasty Systemと題するParkの米国特許出願第11/641,569号に開示されている。この出願は全体が本明細書において参照される。
【0168】
図12B及び2Gから分かるように,画像化装置120は反復画像化操作によって,複数の画像スライス(16-1,16-2,…16-n)を生成する(ブロック1000)。各画像スライス16は,
図12Aに関して説明したように,対象部位42に沿って延びる開ループ輪郭線(610-1,610-2,…610-n)を有する(ブロック1005)。一つの実施例においては,各画像スライスは2ミリメートルの2D画像スライス16である。システム4は複数の画像スライス(16-1,16-2,…16-n),より詳細に言えば複数の開ループ輪郭線(610-1,610-2,…610-n)を収集して
図12Cに示す3D大腿骨サーフェス計算機モデル40を作成する(ブロック1010)。サーフェスモデル40の生成に関するこの処理もまた,
図1Bのブロック100〜105及び
図1Dのブロック130〜140に関して概要の章で説明されている。類似の処理を,脛骨閉ループ輪郭線に関して用いてもよい。
【0169】
図12Cから分かるように,3D脛骨サーフェス計算機モデル40は,脛骨上部末端の対象部位42の3D計算機表現である。一つの実施例においては,対象部位42の3D表現は,脛骨近位末端の関節大腿骨接触面の3D表現である。開ループ生成3Dモデル40は脛骨上部末端の対応する大腿骨接触部のサーフェスモデルであるから,閉ループ輪郭線の結果である,脛骨上部末端の曲面全体の3Dモデルとは反対に,開ループ生成3Dモデル40は,生成がより時間及びメモリ集中的ではない。
【0170】
一つの実施例においては,開ループ生成3Dモデル40は,脛骨上部末端の曲面全体の3Dモデルとは反対に,脛骨上部末端の大腿骨に面する末端面のサーフェスモデルである。3Dモデル40は,関心領域,すなわち対象部位42を特定するために用いることができ,対象部位は前に述べたとおり,脛骨上部末端の対応する大腿骨接触部である。繰り返しになるが,開ループ生成3Dモデル40は,閉ループ輪郭線によって生成される脛骨近位末端の曲面全体の3Dモデルに比べて,生成がより時間及びメモリ集中的ではない。したがって,本願で開示した少なくともいくつかの実施例では,開ループ輪郭線法が,閉ループ輪郭線法より好まれる。しかし,本願で開示したシステム4及び方法は,開ループ法を用いてもよいし,閉ループ法を用いてもよく,どちらか一方に限定することは望ましくない。
【0171】
3Dモデル40が対象部位42のサーフェスモデルである(すなわち,開ループ処理によって生成され,関節モデル22として機能する3Dサーフェスモデル)であるか,脛骨上部末端の大腿骨に面する末端面全体(すなわち閉ループ処理によって生成され,関節モデル22として機能する3Dボリュームソリッドモデル)であるか,に関わらず,輪郭線610に関するデータは,前述のParkの米国特許出願のいずれにも開示されているサーフェスレンダリング技法によって,3D輪郭計算機モデル40に変換することができる。例えば,用いたサーフェスレンダリング技法は,ポイント-ツ-ポイントマッピング技法と,サーフェス法線ベクトルマッピング技法と,局所サーフェスマッピング技法と,大局サーフェスマッピング技法と,を含む。状況に応じて,各マッピング技法の一つ又は組み合わせを用いることができる。
【0172】
一つの実施例においては,
図12Cに示した3Dモデル40の生成は,画像スライス16を用いて
図12Bの開ループ部位の一連の間隔をとった曲面点それぞれの位置座標値を測定することによって行ってもよい。そして数学的モデルを用いて,
図12Cの3Dモデル40を推定,すなわち計算してもよい。使用できるほかの医用画像計算機プログラムの例は,限定するものではないが,Overland, KSのAnalyzeDirect社のAnalyzeと,Kitware Inc.社のParaviewのようなオープンソフトウェアと,www.itk.orgで取得できるInsight Toolkit (“ITK”)と,www.slicer.orgで取得できる3D Slicerと,Ann Arbor, MIのMaterialise社のMimicsと,を含む。
【0173】
図12Cに示した3Dモデル40を生成する上述のシステムの代替,又は追加の,
図12Cの3Dモデル40を生成するほかのシステムは,非一様有理Bスプライン(“NURB”)プログラム又はBezierプログラムというサーフェスレンダリング技法を含む。これらのプログラムはそれぞれ,複数の輪郭線610から3D輪郭モデル40を生成するために用いてもよい。
【0174】
一つの実施例においては,NURBサーフェスモデリング技法が複数の画像スライス16,より詳細に言えば
図12Bの複数の開ループ輪郭線610,に適用される。NURBソフトウェアは
図12Cに示す3Dモデル40を生成し,3Dモデル40は,メッシュ及び制御点双方を含む関心領域,すなわち対象部位42を有する。例えば,ErvinほかのLandscape Modeling,McGraw-Hill,2001年を参照されたい。同文献は本明細書において全体を参照する。
【0175】
一つの実施例においては,NURBサーフェスモデル技法が次の曲面公式を用いる。
【数5】
ここで,P(i,j)はnrows=(k1+1)及びncols=(k2+1)の頂点行列,W(i,j)は頂点ごとの頂点重みの行列,bi(s)は次数M1の多項式の行方向基底,すなわち混合,bj(t)は次数M2の多項式の列方向基底,すなわち混合,sは行方向の結び目のパラメータ配列,tは列方向の結び目のパラメータ配列を表わす。
【0176】
一つの実施例においては,Bezierサーフェスモデリング技法がBezier公式(1972年,Pierre Bezier)を用いて
図12Cに示すような3Dモデル40を生成し,モデル40は関心領域,すなわち対象部位42を有する。次数(n,m)のBezier曲面は,(n+1)(m+1)個の制御点kijの集合によって定義される。Bezier曲面は,(ki,j)と同一次元の空間内に組み込まれた滑らかで連続の曲面に単位正方形を対応付ける。例えば,kがすべて4次元空間の点のときは,曲面は4次元空間内にある。この関係は,1次元,2次元,50次元,等の空間にも成り立つ。
【0177】
2次元Bezier曲面は,パラメトリック曲面として定義することもでき,パラメトリック座標u,vの関数としての点pの位置は,単位正方形に対して
【数6】
で与えられ,ここで
【数7】
はBernstein多項式であり,
【数8】
は二項係数である。詳細については,Gruneほか,On Numerical Algorithm and Interactive Visualization for Optimal Control Problems, Journal of Computation and Visualization in Science, Vol. 1, No. 4, 1999年7月を参照されたい。同文献は本明細書において全体を参照する。
【0178】
種々のほかのサーフェスレンダリング技法がほかの参考文献に開示されている。例えば次に掲げる刊行物に開示されているサーフェスレンダリング技法を参照されたい。
Lorensenほか,Marching Cubes: A high Resolution 3d Surface Construction Algorithm,Computer Graphics,Vol. 21-3,pp. 163-169,1987年
Farinほか,NURB Curves & Surfaces: From Projective Geometry to Practical Use,Wellesley,1995年
Kumarほか,Robust Incremental Polygon Triangulation for Surface Rendering,WSCG,2000年
Fleischerほか,Accurate Polygon Scan Conversion Using Half-Open Intervals,Graphics Gems III,pp. 362-365,コード: pp. 599-605,1992年
Foleyほか,Computer Graphics: Principles and Practice,Addison Wesley,1990年
Glassner,Principles of Digital Image Synthesis,Morgan Kaufmann,1995年
これら文献はすべて本明細書において全体を参照する。
【0179】
g.患者の脛骨上部末端のサイズに最も類似するサイズ及び/又は形状を有するジグ素材の選択
【0180】
上述のとおり,脛骨ジグ2Bのような関節形成術ジグ2は,内側部分104及び外側部分106を含む。脛骨ジグ2Bは,脛骨ジグ素材50Bから形成され,ジグ素材は,一つの実施例においては,有限個数の脛骨ジグ素材サイズから選択される。脛骨ジグ素材50Bの選択は,患者の脛骨上部末端604と,種々のサイズの脛骨ジグ素材50Bの寸法及び/又は形状とを比較し,サイズ及び/又は形状が患者の脛骨上部末端604に最も厳密に類似する脛骨ジグ素材50Bを選択することによって行われる。このようにして選択された脛骨ジグ素材50Bは,脛骨ジグ2Bの外側部分632を形成する外部,すなわち外側の側面,すなわち曲面632を有する。本明細書の直前の章で説明した3Dサーフェス計算機モデル40は,脛骨ジグ素材50Bの計算機モデルの内側に3D曲面630を定義するために用いられる。
【0181】
患者の上部脛骨末端604にサイズが近い外側部分632を有する脛骨ジグ素材50Bを選択することによって,内側部分630と患者の脛骨との間が正確に整合する可能性が高まる。また,ジグ素材50Bから加工又はほかの方法で除去する必要のある材料の量が削減され,それによって材料の浪費及び製造時間を削減する。
【0182】
患者の上部脛骨末端のサイズ及び/又は形状に最も厳密に対応するジグ素材50を選択する方法を説明するために,まず
図13A〜14Bを参照する。
図13Aは,所定の寸法を有する左脛骨切断ジグ素材50BRの上面透視図である。
図13Bは,
図13Aに示されたジグ素材50BRの下面透視図である。
図13Cは,
図13Aに示したジグ素材50BRの外側,すなわち外側部分632の平面図である。
図14Aは,複数の利用可能なサイズの左脛骨ジグ素材50BRであり,それぞれ
図13Cと同一の視点で描かれている。
図14Bは,複数の利用可能なサイズの右脛骨ジグ素材であり,それぞれ
図13Cと同一の視点で描かれている。
【0183】
図13A〜13Cに示された,患者の右脛骨に使うことができる右脛骨ジグの生成のための右ジグ素材50BRのような共通ジグ素材50は,内側脛骨高平部とかん合する内側脛骨足突起648と,外側脛骨高平部とかん合する外側脛骨足突起650と,後辺縁640と,前辺縁642と,外辺縁644と,内辺縁646と,外側632と,内側630と,を含む。
図13A〜13Cのジグ素材50BRは,限られた数の標準サイズの中で利用可能ないくつかの右脛骨ジグ素材50BRのいずれか一つであってよい。例えば
図13A〜13Cのジグ素材50BRは,i番目の右脛骨ジグ素材(ここでi=1,2,3,4,…m,mは右脛骨ジグ素材サイズの最大数)であってよい。
【0184】
図13Cに示すように,ジグ素材50BRの前面‐後面長さTAiはジグ素材50BRの前辺縁642から後辺縁640を測定したものである。ジグ素材50BRの内側‐外側長さTMiは,ジグ素材50BRの外辺縁644から内辺縁646までを測定したものである。
【0185】
図14Aから分かるように,限られた数の右脛骨ジグ素材サイズが,右脛骨切断ジグ2Bに機械加工される右脛骨ジグ素材サイズとして選択できる。例えば一つの実施例においては,3サイズ(m=3)の右脛骨ジグ素材50BRが利用できる。
図13Cから分かるように,各脛骨ジグ素材50BRはTAi対TMiとして定義される前面‐後面/内側‐外側縦横比(例えば"TAi/TMi"縦横比)を有する。このように,
図14Aから分かるように,ジグ素材50BR‐1は"TA
1/TM
1"で定義される縦横比,ジグ素材50BR‐2は"TA
2/TM
2"で定義される縦横比,ジグ素材50BR‐3は"TA
3/TM
3"で定義される縦横比,を有する。
【0186】
ジグ素材縦横比は,患者の右脛骨形状に特化した寸法の右脛骨ジグ2Bを設計するために用いられる。一つの実施例においては,ジグ素材縦横比は右脛骨ジグ2Bの外側寸法であってもよい。別の実施例においては,ジグ素材縦横比は,所望の右脛骨ジグ2Bの寸法に近いパラメータを有する右ジグ素材50BRを選択するための右脛骨ジグ製造手順に適用してもよい。この実施例は,選択したジグ素材50から所望のジグ2を生成するために必要な機械加工量を減少させることができるので,右脛骨ジグ製造工程の費用効率を改善することができる。
【0187】
図14Aに候補脛骨ジグ素材サイズ用の一つのジグ素材縦横比が示されている。候補脛骨ジグ素材サイズ用に多くのジグ素材縦横比がある実施例においては,
図14Aは
図4Aに類似し,ジグ縦横比が増加することを示す方向N-1,及び恐らく方向N-2及びN-3を有する。種々の脛骨ジグ素材縦横比の間の関係は,大腿骨ジグ素材縦横比に関する
図4Aに関して説明したものと類似するであろう。
【0188】
図17に示した散布
図900及び本明細書の後の部分の説明から分かるように,方向E-1は散布
図900内のグループ1と,グループ2と,グループ3と,をつなぐ斜線に対応する。
【0189】
図14Aに示すとおり,方向E-1に沿う各ジグ50BR−1,50BR−2,50BR‐3の間でジグ縦横比は一定であり,"TA
1/TM
1" = "TA
2/TM
2" = "TA
3/TM
3"である。しかしジグ50BR−1に比べて,50BR−2の寸法はジグ50BR−1よりも大きくかつ長い。これは,ジグ50BR−2のTA
2値が,TM
2値の増加に比例してX,Y,Z軸すべての方向においてある程度増加しているためである。類似して,TA
3値が,TM
3値の増加に比例してX,Y,Z軸すべての方向においてある程度増加しているため,50BR−3の寸法はジグ50BR−2よりも大きくかつ長い。増加の一例は,5%から20%のへの増加である。大腿骨ジグ素材サイズに関して
図4Aに示したように,候補脛骨ジグ素材サイズ用に追加のジグ素材縦横比がある実施例においては,種々の脛骨ジグ素材サイズの間の関係は,
図4A及び14Aに関して説明したものと類似するであろう。
【0190】
図14Bから分かるように,限られた数の右脛骨ジグ素材サイズが,右脛骨切断ジグ2Bに機械加工される右脛骨ジグ素材サイズとして選択できる。例えば一つの実施例においては,3サイズ(m=3)の左脛骨ジグ素材50BLが利用できる。
図13Cから分かるように,各脛骨ジグ素材50BLはTAi対TMiとして定義される前面‐後面/内側‐外側縦横比(例えば"TAi/TMi"縦横比)を有する。このように,
図14Bから分かるように,ジグ素材50BL‐1は"TA
1/TM
1"で定義される縦横比,ジグ素材50BL‐2は"TA
2/TM
2"で定義される縦横比,ジグ素材50BL‐3は"TA
3/TM
3"で定義される縦横比,を有する。
【0191】
ジグ素材縦横比は,患者の左脛骨形状に特化した寸法の左脛骨ジグ2Bを設計するために用いられる。一つの実施例においては,ジグ素材縦横比は左脛骨ジグ2Bの外側寸法であってもよい。別の実施例においては,ジグ素材縦横比は,所望の左脛骨ジグ2Bの寸法に近いパラメータを有する左ジグ素材50BLを選択するための左脛骨ジグ製造手順に適用してもよい。この実施例は,選択したジグ素材50から所望のジグ2を生成するために必要な機械加工量を減少させることができるので,左脛骨ジグ製造工程の費用効率を改善することができる。
【0192】
図14Bに,候補脛骨ジグ素材サイズ用の一つのジグ素材縦横比が示されている。候補脛骨ジグ素材サイズ用に多くのジグ素材縦横比がある実施例においては,
図14Bは
図4Bに類似し,ジグ縦横比が増加することを示す方向N-1,及び恐らく方向N-2及びN-3を有する。種々の脛骨ジグ素材縦横比の間の関係は,大腿骨ジグ素材縦横比に関する
図4Bに関して説明したものと類似するであろう。
【0193】
図14Bに示すように,方向E-1に沿う各ジグ50BL−1,50BL−2,50BL‐3の間でジグ縦横比は一定であり,"TA
1/TM
1" = "TA
2/TM
2" = "TA
3/TM
3"である。しかしジグ50BL−1に比べて,50BL−2の寸法はジグ50BL−1よりも大きくかつ長い。これは,ジグ50BL−2のTA
2値が,TM
2値の増加に比例してX,Y,Z軸すべての方向においてある程度増加しているためである。類似して,TA
3値が,TM
3値の増加に比例してX,Y,Z軸すべての方向においてある程度増加しているため,50BL−3の寸法はジグ50BL−2よりも大きくかつ長い。増加の一例は,5%から20%のへの増加である。候補脛骨ジグ素材サイズ用に追加の縦横比がある実施例においては,大腿骨ジグ素材サイズに関して
図4Bに示したように,種々の脛骨ジグ素材サイズの間の関係は,
図4B及び14Bに関して説明したものと類似するであろう。
【0194】
患者の脛骨20の上部末端,すなわち膝関節をなす末端604の寸法は,ジグ素材50に関して説明した方法と類似の方法で3Dサーフェスモデル40,すなわち3D関節モデル36を分析することによって判定できる。例えば,近位から遠位の方向に見た患者の右脛骨20の3Dサーフェスモデル40,すなわち3D関節モデル36の軸方向の図である
図15に示すように,サーフェスモデル40,すなわち関節モデル36の上部末端604は,前辺縁660と,後辺縁662と,内辺縁664と,外辺縁666と,を含む。脛骨寸法は,3D関節モデル36の3Dサーフェスモデル40を解析することによって,患者の脛骨20の上部末端面,すなわち大腿骨関節摺動面604に関して測定される。次にこれらの脛骨寸法が,脛骨ジグ寸法を設定し,適切な脛骨ジグを選択するために用いられる。
【0195】
図15に示すように,患者の脛骨20の上部末端604(すなわち,開ループ解析によって形成されたものであれ,閉ループ解析によって形成されたものであれ,関節モデル36のサーフェスモデル40の上部末端604)の前部‐後部長さtAPは,脛骨高平部の前辺縁660から,脛骨高平部の後辺縁662までを測定した長さである。患者の脛骨20の上部末端604の内側‐外側長さtMLは,内側脛骨高平部の内辺縁664から,外側脛骨高平部の外辺縁666までを測定した長さである。
【0196】
一つの実施例においては,脛骨上部末端604の前部‐後部長さtAP及び内側‐外側長さtMLを脛骨上部末端の縦横比tAP/tMLに用いることができる。多数(例えば数百,数千,数万,等)の患者の膝の縦横比tAP/tMLを収集し,統計的に分析することによって,多数の患者の膝を収容するジグ素材の最も普遍的な縦横比を決定することができる。そしてこの情報を用いて,どの一つ,二つ,三つ,等の縦横比が最大数の患者の膝を収容しそうかを決定することができる。
【0197】
システム4は,関節モデル36(関節モデル36が開ループ処理によって生成された3Dモデルであれ,閉ループ処理によって生成された3Dボリュームソリッドモデルであれ)のサーフェスモデル40によって得られた患者の脛骨20の上部末端604を解析して,脛骨上部末端604の前部‐後部長さtAP及び内側‐外側長さtMLに関するデータを取得する。
図15のモデル脛骨上部末端604に重畳された
図13Cの選択されたモデルジグ素材50BRを示している
図16から分かるように,脛骨寸法長さtAP,tMLをジグ素材の寸法長さTA,TMと比較して,加工処理の出発点及びジグモデルの外側サーフェスモデルとしてどのジグ素材モデルを選択するかを決定する。
【0198】
図16に示すように,予定の右脛骨ジグ素材50BRが,サーフェスモデル40又は関節モデル36によって表された患者の解剖学モデルの右脛骨上部末端604とかん合するように重畳される。一つの実施例においては,ジグ素材50BRは脛骨高平部の前部約2/3を覆い,脛骨の後部約1/3は露出されたままである。脛骨高平部の露出された部分には,
図16の領域q1及びq2でそれぞれ表される脛骨高平部の外側及び内側露出部位が含まれる。特に露出領域q1は,脛骨外辺縁666とジグ素材外辺縁646との間の露出した脛骨高平部の領域であり,露出領域q2は脛骨内辺縁664とジグ素材内辺縁644との間の露出された脛骨高平部の領域である。
【0199】
脛骨前部‐後部tAPデータ及び脛骨内側‐外側tMLデータを取得して使用することによって,システム4は次の公式によって脛骨ジグ素材50BRのサイズを変えることができる。
jTML = tML - q1 - q2
ここでjTMLは脛骨ジグ素材50BRの内側‐外側長さである。一つの実施例においては,q1及びq2は次の範囲にある。
2mm ≦ q1 ≦ 4mm,2mm ≦ q2 ≦ 4mm
別の実施例においては,q1は約3mmであり,q2は約3mmである。
【0200】
図17Aは,患者の脛骨20の上部末端604に適したジグ素材サイズを,複数の候補ジグ素材サイズから選択するための例示散布
図900である。一つの実施例においては,X軸は患者の脛骨内側‐外側長さtMLをミリメートルで表し,Y軸は患者の脛骨前部‐後部長さtAPをミリメートルで表したものである。一つの実施例においては,散布
図900はいくつかのジグ素材サイズグループに分割され,各グループは散布
図900の一つの領域を含み,特定候補ジグ素材サイズの特定パラメータTMrと関係している。
【0201】
一つの実施例においては,
図17Aに示した例示散布
図900は3個の素材サイズグループを含み,各グループは一つの候補ジグ素材サイズに属する。しかし実施例に応じて,散布
図900はより多くのジグ素材サイズグループを含んでもよいし,より少ないジグ素材サイズグループを含んでもよい。ジグ素材サイズグループの数が多ければ多いほど,候補ジグ素材サイズの数は多くなり,選択された候補ジグ素材サイズは,患者の膝形状及び得られたジグ2に対してより寸法特定になる。選択された候補ジグ素材サイズがより寸法特定であればあるほど,選択された候補ジグ素材50から所望のジグ2を製造するために必要な機械加工量が少なくなる。
【0202】
逆に,ジグ素材サイズグループ数が少なければ少ないほど,候補ジグ素材サイズ数は少なくなり,選択された候補ジグ素材サイズは,患者の膝形状及び得られたジグ2により寸法特定でなくなる。選択された候補ジグ素材サイズがより寸法特定でなければないほど,選択された候補ジグ素材50から所望のジグ2を製造するために必要な機械加工量が多くなり,ジグ製造手順において余分な荒削りが増える。
【0203】
脛骨前部‐後部長さtAPは,
図13C〜14B及び17Aに関して説明したような脛骨ジグ素材50Bの縦横比TA
i/TM
iを決定する値として用いられるので関係することがある。これにもかかわらずいくつかの実施例においては,候補ジグ素材の脛骨前部‐後部長さTA
iは,いくつかの実施例における実践的な設定においては脛骨ジグ前部‐後部長さは脛骨ジグ内側‐外側長さよりも重要性が低いので,
図17Aに示す散布
図900又は
図16に示す関係には反映されないことがある。例えば,患者の脛骨前部‐後部距離は膝形状に応じて異なるが,脛骨ジグ2Bの足突起800,802(
図20A参照)の長さが単に増加され,脛骨前部‐後部長さTAに対応するように特化したジグ素材又はジグを生成する必要はない。換言すれば,いくつかの実施例においては,種々の脛骨ジグの間の前部‐後部長さの唯一の差は,対応する足突起800,802の前部‐後部長さの差である。
【0204】
いくつかの実施例においては,
図16及び21から分かるように,足突起800,802を有する脛骨ジグ2Bの前部‐後部長さは,脛骨高平部の約半分にわたる。部分的には患者ごとにわずか数ミリメートルから数センチメートル異なるこの「半」距離の包含のために,一つの実施例においては,ジグの前部‐後部長さは重要なものではない。しかし,ジグは脛骨高平部の内側‐外側長さの大部分にわたることがあるので,ジグの内側‐外側長さは,前部‐後部長さに比べて非常に重要なものである。
【0205】
いくつかの実施例においては,脛骨ジグ2Bの前部‐後部長さは内側‐外側長さに比べて非常に重要ではないことがあるが,いくつかの実施例においては,脛骨ジグの前部‐後部長さは重要である。このような実施例においては,TM
iだけではなく縦横比TA
i/TM
iによってジグサイズを
図17Aに示してもよい。換言すれば,ジグサイズは
図7Aに示したものと類似する方法で
図17Aに示してもよい。更にいくつかの実施例においては,
図14A及び14Bに,
図4A及び4Bに示したものと類似する追加ジグ素材縦横比が含まれる。その結果,
図17Aの散布
図900は,
図7Aの散布
図300に示したものと類似の方法で各ジグ素材縦横比のジグ素材サイズを接続する追加の斜線を含んでもよい。また
図17Aにおいて,
図7Aに示したものと類似の方法で,種々のジグ素材サイズの境界を表すために,前部‐後部長さによって散布
図900を分割する追加の水平線を設けてもよい。
【0206】
図17Aから分かるように一つの実施例においては,散布
図900の3個のジグ素材サイズグループは次のようなパラメータTMr,TArを有する。グループ1はパラメータTM
1,TA
1を有する。TM
1は第1脛骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,TM
1 = 70mmである。TA
1は第1脛骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,TA
1 = 62mmである。グループ1は,55mm < tML < 70mmかつ45mm < tAP < 75mmの範囲の患者の脛骨tML及びtAPデータを包含する。
【0207】
グループ2はパラメータTM
2,TA
2を有する。TM
2は第2脛骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,TM
2 = 85mmである。TA
2は第2脛骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,TA
2 = 65mmである。グループ2は,70mm < tML < 85mmかつ45mm < tAP < 75mmの範囲の患者の脛骨tML及びtAPデータを包含する。
【0208】
グループ3はパラメータTM
3,TA
3を有する。TM
3は第3脛骨ジグ素材サイズの内側‐外側長さを表し,TM
3 = 100mmである。TA
3は第3脛骨ジグ素材サイズの前部‐後部長さを表し,TA
3 = 68.5mmである。グループ3は,85mm < tML < 100mmかつ45mm < tAP < 75mmの範囲の患者の脛骨tML及びtAPデータを包含する。
【0209】
いくつかの実施例においては,
図3A〜7Bに関して説明した大腿骨ジグ素材の選択処理とは異なり,
図13A〜17Bに関して説明した脛骨ジグ素材選択処理は,内側‐外側脛骨ジグ値jTML及び関連する内側‐外側値TM, tMLだけを考慮,すなわち用いてもよい。したがっていくつかの実施例においては,前部‐後部脛骨ジグ値jTAP及び脛骨ジグ及び脛骨高平部の関係する前部‐後部値TA, tAPは考慮されない。
【0210】
適切なサイズのジグ素材を選択する処理の実施例を示すフローチャートである
図17Bから分かるように,骨の内側‐外側長さtMLは,関節モデル36のサーフェスモデル40の上部末端604に関して測定される(ブロック3000)。上部末端604の内側‐外側長さtMLは,上述のjTML公式によって数学的に修正され,最小脛骨ジグ素材内側‐外側長さjTMLになる(ブロック3010)。数学的に修正された骨の内側‐外側tML,すなわちより詳細に言えば最小脛骨ジグ素材内側‐外側長さjTMLは,
図17Aの散布
図900のジグ素材寸法に対して参照される(ブロック3020)。散布
図900は,ジグ素材ライブラリを形成する候補脛骨ジグ素材の長さを図で表すことができる。脛骨ジグ素材50Bは,最小脛骨ジグ素材内側‐外側長さjTMLを収容するのにまだ十分大きな最小長さを有するジグ素材サイズが選択される(ブロック3030)。
【0211】
一つの実施例においては,選択されたジグ素材サイズの外側は次に説明するように,ジグモデルの外側サーフェスモデルとして用いられる。一つの実施例においては,選択されたジグ素材サイズは,CNC機械に置かれて最小脛骨ジグ素材前部‐後部長さjTAP及び内側‐外側長さjTMLに削られ,脛骨ジグ2Bの外側面に機械加工され,又はほかの方法で形成される実際のジグ素材に対応する。
【0212】
図17Bに概要を示し,
図17Aの散布
図900に関する方法は,次の例によって更に理解することができる。患者の脛骨20の上部末端604に関する
図16において,測定された患者の脛骨の長さは次のとおりである。tML = 85.2mm(ブロック3000)。前述のとおり,上部末端604は関節モデル36のサーフェスモデル40の一部であってもよい。tMLの測定値が上部末端604から測定されると,対応するジグjTMLデータが上述のjTML公式によって次のように決定できる(ブロック3010)。
jTML = tML -q1 - q2,ここでq1 = 3mm,q2 = 3mm
jTML公式による計算結果は,jTML = 79.2mmである。
【0213】
図17Aの散布
図900から分かるように,測定されたジグデータ(すなわち,jTML = 79.2mm)は散布
図900のグループ2に含まれる。グループ2は,所定の脛骨ジグ素材パラメータ(TM
2),すなわちTM
2 = 85mmを有する。この所定脛骨ジグ素材パラメータは,種々のグループのうち最小のものであるが,それでも最小脛骨素材長さjTMLに対しては十分大きい。(ブロック3020)。この所定脛骨ジグ素材パラメータ(TM
2 = 85mm)を,適切な脛骨ジグ素材サイズとして選択してもよい(ブロック3030)。
【0214】
一つの実施例においては,
図13Cに示すように所定脛骨ジグ素材パラメータ(85mm)を,脛骨外側ジグ寸法に適用してもよい。換言すれば,ジグ素材外側部分は,
図18A〜19Cに関して説明するようにジグモデル外側部分として用いられる。したがって,脛骨ジグ素材50Bの外側部分は機械加工しなくてもよく,所定ジグ素材パラメータ(85mm)を有するジグ素材50Bの未修正外側部分が,完成した脛骨ジグ2Bの外側部分として使用することができる。
【0215】
別の実施例においては,脛骨ジグ素材パラメータ(85mm)を機械加工処理によるジグ製造用に選択してもよい。したがって,所定パラメータ(85mm)を有する脛骨ジグ素材50Bが機械加工処理に供給され,脛骨ジグ素材50Bの外側部分が所定パラメータ(85mm)から所望の脛骨ジグパラメータ(79.2mm)に加工されて,脛骨ジグ2Bの完成した外側部分となる。所定パラメータ(85mm)が所望の脛骨ジグパラメータ(79.2mm)に相対的に近く選択することによって,加工時間及び材料浪費が削減される。
【0216】
加工時間及び材料浪費を削減するために,上述したジグ素材選択方法を用いるのが有利であるが,いくつかの実施例においては,ジグ素材は,単にすべての患者の骨長さtMLに適用可能な十分大きいものが提供される。そしてこのようなジグ素材が所望のジグ素材長さjTMLに加工されて,完成したジグ2Bの外側面として用いられる。
【0217】
一つの実施例においては,散布
図900に表された候補ジグ素材サイズグループ数は,ジグ素材製造事業者が提供するジグ素材サイズ数の関数である。例えば第1散布
図900は,3種のジグ素材サイズを提供するA社が製造したジグ素材だけに関係する。したがって散布
図900は,3個のジグ素材サイズグループを有する。第2散布
図900は,6種のジグ素材サイズを提供するB社が製造したジグ素材だけに関係する。したがって散布
図900は,6個のジグ素材サイズグループを有する。
【0218】
図17Aの散布
図900に表すように,例えばジグ素材ライブラリには複数の候補ジグ素材サイズがある。候補ジグ素材はそれぞれ,前部‐後部寸法サイズ及び内側‐外側寸法サイズの一意な組合せを有してもよいが,2又はそれ以上の候補ジグ素材が共通の縦横比tAP/tML,すなわち形状を共有してもよい。ライブラリの候補ジグ素材は,その縦横比tAP/tMLによって,散布
図900の斜線に沿ってグループ化される。
【0219】
一つの実施例においては,ジグ素材縦横比tAP/tMLを用いて,加工できるジグ素材形状を選択してより大きな,又はより小さい個人に合うように加工してもよい。
【0220】
図17Aから分かるように,脛骨ジグ設計研究の一部として,膝に傷害のある98人の骨関節症患者が,散布
図900に入れられた。各患者の脛骨tAP及びtMLデータが測定された。各患者の脛骨tMLデータは,上述のjTML公式によって修正され,患者のジグ素材データ(jTML)となった。そして患者のジグ素材データが,散布
図900内に点として入れられた。
図17Aから分かるように,利用可能なグループのパラメータ以外には患者の点はない。このような処理を,グループパラメータ及び必要なグループの数を設定するために用いることができる。
【0221】
一つの実施例においては,選択されたジグ素材パラメータは,患者の膝形状に特化した脛骨ジグ外側寸法であってよい。別の実施例においては,選択されたジグ素材パラメータは製造工程中に選択してもよい。
【0223】
図1Eのブロック150について説明した「統合ジグデータ」48に概略対応する3D脛骨ジグモデル746を生成する方法の実施例を説明するために,
図13A〜13Cと,18A〜18Bと,19A〜19Dと,20A〜20Bと,を参照する。
図13A〜13Cは脛骨ジグ素材50Bの種々の図である。
図18A〜18Bはそれぞれ,脛骨ジグ素材外側サーフェスモデル632Mの外側透視図及び内側透視図である。
図19A〜19Dはそれぞれ,結合された脛骨ジグ素材外側サーフェスモデル632M及び骨サーフェスモデル40の外側透視図である。
図20A及び20Bはそれぞれ,「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44をジグモデル746に統合して,
図1Eのブロック150に関して説明した「統合ジグデータ」48に概略対応する統合ジグモデル,すなわち完全ジグモデル748になった後の得られた脛骨ジグモデル746の外側及び内側透視図である。
【0224】
図13A〜13Cから分かるように,
図17A及び17Bに関して説明した選択された所定寸法を有するジグ素材50Bは内側面630及び外側面632を含む。
図18A及び18Bに示した外側サーフェスモデル632Mは,ジグ素材モデル50Bの外側面632から抽出又はほかの方法で生成される。したがって,外側サーフェスモデル632Mは
図17A及び17Bに関して説明したように選択した脛骨ジグ素材50Bのジグ素材縦横比を基準にしており,患者の膝形状に特化した寸法をしている。脛骨ジグサーフェスモデル632Mは,上述の任意の計算機サーフェスレンダリング技法を用いて,
図13A〜13Cのジグ素材モデル50Bから抽出又はほかの方法で生成できる。
【0225】
図19A〜19Cから分かるように,外側サーフェスモデル632Mは脛骨サーフェスモデル40と結合されて,それぞれ脛骨ジグモデル746の外側面及び内側面をなす。脛骨サーフェスモデル40は,脛骨ジグ2Bの内側面,すなわち捕捉面を表し,脛骨関節形成術対象領域42に対応する。このようにしてモデル40は得られた脛骨ジグ2Bが患者の脛骨20の関節形成術対象領域42にインデクス付けされるようにし,それによって得られた脛骨ジグ2Bが関節形成処置中,関節形成術対象領域42を捕捉するようにする。二つのサーフェスモデル632M,40は結合されて,脛骨ジグ2Bを製造するための患者に特化したジグモデル746となる。
【0226】
図19B及び19Cから分かるように,モデル632M,40を適切にそろえると,二つのモデル632M,40の間にギャップができる。そろえられたモデル632M,40に画像縫合法,すなわち画像縫合ツールを施して二つのサーフェスモデルを一つに結合し,
図19Bの3D計算機生成ジグモデル746を,
図20A及び20Bに示した統合ジグモデル748に外観が類似した単体の,一つに結合された,すき間を埋めた,ジグモデル746にする。一つの実施例においては,ジグモデル746は,
図1Eのブロック145に関して説明した「ジグデータ」46の記載に概略対応するものであってもよい。
【0227】
図19B〜19D並びに
図20A及び20Bから分かるように二つのモデル632M,40の間の幾何学的ギャップは,そのうちのいくつかを厚みV
1,V
2及びV
3について以降説明するが,TKA手術の際に切断器具を受け入れて誘導するスロットの幅及び長さ,並びにドリルビットの長さのために,二つのモデル632M,40の間に一定の空間を与えることができる。
図20A及び20Bに示す得られた脛骨ジグモデル748は3Dサーフェスモデル632M,40から生成された3Dボリュームモデルであってもよいので,3Dサーフェスモデル632M,40の間に空間,すなわちギャップが設けられる。これによって得られる3Dボリュームジグモデル748を,実際の物理的3Dボリューム脛骨ジグ2Bを生成するために用いることができる。
【0228】
いくつかの実施例においては,画像処理手順に,二つのモデル632M,40の整合の後にジグモデル746を修正するモデル修正手順を含んでもよい。例えば,限定するものではないが,モデル修正の種々の方法には次に掲げる文献に記載されたような,ユーザ誘導修正と,裂け目(crack)識別及び充てんと,多様体接続性生成と,を含む。
Nooruddinほか,Simplification and Repair of Polygonal Models Using Volumetric Techniques,IEEE Trans. on Visualization and Computer Graphics,Vol. 9,No.2,2003年4月〜6月
Erikson,C.,Error Correction of a large Architectural Model: The Henderson County Courthouse,技術報告TR95-013,Dept. of Computer Science,Univ. of North Carolina at Chapel Hill,1995年
Khorramabdi,D.,A Walk through the Planned CS Building,技術報告UCB/CSD 91/652,Computer Science Dept.,Univ. of California at Berkeley,1991年
Morvanほか,IVECS: An Interactive Virtual Environment for the Correction of .STL files,Proc. Conf. Virtual Design,1996年8月
Bohnほか,A Topology-Based Approach for Shell-Closure,Geometric Modeling for Product Realization,P.R. Wilsonほか編,pp. 297-319,North-Holland,1993年
Barequetほか,Filling Gaps in the Boundary of a Polyhedron,Computer Aided Geometric Design,Vol. 12,No. 2,pp.207-229,1995年
Barequetほか,Repairing CAD Models,Proc. IEEE Visualization '97,pp. 363-370,1997年10月
Gueziecほか,Converting Sets of Polygons to Manifold Surfaces by Cutting and Stitching,Proc. IEEE Visualization '98,pp. 383-390,1998年10月
これら文献はいずれも全体が本明細書に組み込まれる。
【0229】
図20A及び20Bから分かるように,統合ジグモデル748は外科医の要望によるいくつかの特徴を含んでもよい。例えばジグモデル748は,骨鋸を受け入れ,誘導するためのスロット30と,骨ドリルビットを受け入れ,誘導するためのドリル穴32と,を含んでもよい。
図19B及び19Cから分かるように,得られた脛骨ジグ2Bが関節形成処置の際にゆがむ,すなわち変形しないで,適切に骨鋸及びドリルビットを支持し,誘導するようにするために十分な構造的完全性を有するように,モデル632M,40の間のギャップが次のオフセットV
1,V
2及びV
3を有してもよい。
【0230】
図19B〜20Bから分かるように一つの実施例においては,厚みV
1はモデル632M,40の間の前部ドリル穴32Pの長さ方向に沿って延び,関節形成処置の際に受け入れた骨ドリルを支持し,誘導する。厚みV
1は,少なくとも約4mm又は少なくとも約5mmの厚さであってよい。前部ドリル穴32Pの直径は,少なくとも0.85mm(1/3インチ)の切断器具を受け入れるように構成してもよい。
【0231】
厚みV
2は,内側面40及び外側面モデル632Mの間のジグ足800,802の厚みである。この厚みは,製造及び使用の際のジグのゆがみ及び変形に抗するため,ジグ足800,802の適切な構造強度を与える。厚みV
2は,少なくとも約5mm又は少なくとも約8mmの厚さであってよい。
【0232】
厚みV
3はモデル632M,40の間の鋸スロット30の長さ方向に沿って延び,関節形成処置の際に受け入れた骨鋸を支持し,誘導する。厚みV
3は,少なくとも約10mm又は少なくとも約15mmの厚さであってよい。
【0233】
受け入れたドリルビット又は鋸を誘導するために十分長い表面を提供することに加えて,種々の厚みV
1,V
2及びV
3は,脛骨ジグ2BがTKR手術の際脛骨の切断と,穴あけと,穴さらえと,のの強力な処置に耐えるように構造的に設計される。
【0234】
図20A及び20Bに示すように,統合ジグモデル748の外側部分,すなわち外側106は次のものを含む。
・患者の脛骨高平部の内側部を覆い,一致する形状800
・患者の脛骨高平部の外側部を覆い,一致する形状802
・ジグ2Bの上部外側面632から下方に延びる突起804
・患者,外科医及び/又は外科処置に関する情報を列挙する空白ラベルエリアを提供する外側面632の平坦部
また上述のとおり,統合ジグモデル748は,鋸切断スロット30及びドリル穴32を含んでもよい。ジグモデル748の内側部分すなわち内側104(及び得られる脛骨ジグ2B)は脛骨サーフェスモデル40であり,関節形成処置の際に患者の脛骨20の関節形成術対象領域42を捕捉する。
【0235】
図1Bのブロック105及び
図12A〜12Cを参照すれば分かるように,一つの実施例においては,画像走査データ16を累積してモデル40,22を生成するとき,モデル40,22は点Pを参照し,点Pは,
図1Cに関して説明した,POPに用いられるモデル22,28に対してモデル40,22を参照し,方向付けする単一点,一連の点,等であってよい。POPのために点Pに対してモデル22,28に反映されたどんな変更(例えば点Pが点P’になること)も,モデル40,22と関係する点Pに反映される(
図1Dのブロック135参照)。したがって,
図1Dのブロック140及び
図19A〜19Cから分かるように,ジグ素材外側サーフェスモデル632Mをサーフェスモデル40(すなわち,関節モデル22から作られたサーフェスモデル)と結合してジグモデル746を生成するとき,ジグモデル746は点P’に対して参照され,方向付けられ,
図1Eのブロック145に関して説明した「ジグデータ」46に概略均等である。
【0236】
ジグモデル746は点P’に対して適切に参照され,方向付けられているので,
図1Eのブロック125に関して説明した「鋸切断及びドリル穴あけデータ」44はジグモデル746に適切に統合されて,
図20A〜20Bに示した統合ジグモデル748となる。統合ジグモデル748は,鋸切断スロット30と,ドリル穴32と,サーフェスモデル40と,を含む。したがって統合ジグモデル748は,
図1Eのブロック150に説明した「統合ジグデータ」48に概略均等である。
【0237】
「関節モデル」22とかん合する統合ジグモデル748の透視図である
図21から分かるように,ジグモデル748の内側面40は,脛骨下部末端604の関節形成術対象領域42を捕捉し,それによってジグモデル748は当該領域42とかん合するようにインデクスが付けられる。処置全体を通じて点P,P’に対して種々のモデルの参照し,方向付けることによって,鋸切断スロット30及びドリル穴32は,得られる脛骨ジグ2Bが患者の関節を変性前の状態に回復させることができる鋸切断及びドリル穴あけになるよう適切に方向付けられる。
【0238】
図21に示すように,統合ジグモデル748は,ジグ本体850と,内側脛骨高平部を覆う突起852と,外側脛骨高平部を覆う突起854と,本体850から延びる下部856と,後部ドリル穴32Pと,前部ドリル穴32Aと,鋸スロット30と,患者と,手術と,医師とのデータを受け入れる上部平坦部856を含む。突起852,854は,対応する内側及び外側脛骨高平部の上に延びる。突起852,854,856は,ジグ本体850から一体的に延びる。
【0239】
図1Eのブロック155〜165から分かるように,統合ジグ748,又はより詳細に言えば統合ジグデータ48はCNC機械10に送信されて,選択されたジグ素材50Bから脛骨ジグ2Bを加工することができる。例えば統合ジグデータ48は,前に参照した種々のParkの特許出願に記載されているように,高速生産機械10へ自動ジグ製造命令を与える生産ファイルを作成するために用いてもよい。そして高速生産機械10は,命令に従って脛骨ジグ素材50Bから患者に特化した関節形成術脛骨ジグ2Bを製造する。
【0240】
得られる脛骨ジグ2Bは,統合ジグモデル748の形状を有していてもよい。したがって
図21から分かるように,外科医の要望によって,得られる脛骨ジグ2Bは突起852,854,856の上に形成されたスロット30及びドリル穴32を有してもよい。ドリル穴30は,TKR処置の近位脛骨切断の際に,脛骨切断ジグ2Bと,患者の損傷した関節面との間に生じることがあるIR/ER(内側/外側)回転軸不整合を防ぐように開けられる。スロット30は,TKRの近位脛骨切断の際の横断切断用往復鋸刃のような切断器具を受け入れるように開けられる。
【0241】
本発明を好ましい実施例について説明したが,当業者であれば,本発明の精神及び範囲から逸脱することなく,形式及び詳細の変更が可能であることを理解するであろう。
なお,本発明は以下の態様も含む。
[請求項1]
関節形成術ジグを製造する方法であって,
関節を形成する骨の少なくとも一部の2次元画像を生成するステップと,
前記2次元画像から前記骨の少なくとも一部の第1の3次元計算機モデルを生成するステップと,
前記2次元画像から前記骨の少なくとも一部の第2の3次元計算機モデルを生成するステップと,
前記第1の3次元計算機モデルと前記第2の3次元計算機モデルとが共通の参照位置を有するようにするステップであって,前記参照位置は,原点に対する位置及び方向のうち少なくとも一つを含むステップと,
前記第1の3次元計算機モデルを用いて,第1タイプデータを生成するステップと,
前記第2の3次元計算機モデルを用いて,第2タイプデータを生成するステップと,
前記参照位置を用いて前記第1タイプデータと前記第2タイプデータとを統合ジグデータに統合するステップと,
前記統合ジグデータを用いて,製造機械で前記関節形成術ジグを製造するステップと,
を有する方法。
[請求項2]
前記第1の3次元計算機モデルは骨単独モデルとし,前記第2の3次元計算機モデルは骨及び軟骨モデルとする請求項1に記載の方法。
[請求項3]
前記骨単独モデル並びに前記骨及び軟骨モデルは,前記関節の変性した状態を表す請求項2に記載の方法。
[請求項4]
前記第1の3次元計算機モデルは,前記変性状態の前記骨の少なくとも一部の近似を表し,前記第2の3次元計算機モデルは,前記骨の少なくとも一部及び変性状態の軟骨を表す請求項1に記載の方法。
[請求項5]
前記第1タイプデータは,鋸切断情報及びドリル穴あけ情報の少なくとも一つを含み,前記第2タイプデータは前記骨の少なくとも一部の曲面輪郭情報を含む請求項1に記載の方法。
[請求項6]
前記鋸切断情報及びドリル穴あけ情報は,提案された関節形成術の鋸切断及びドリル穴あけの少なくとも一つに関する位置,方向及び寸法の少なくとも一つを含む請求項5に記載の方法。
[請求項7]
前記第2の3次元計算機モデルは,前記2次元画像から少なくとも部分的に導出された開ループ輪郭線から少なくとも部分的に生成される請求項1に記載の方法。
[請求項8]
前記第2の3次元計算機モデルは,前記2次元画像から少なくとも部分的に導出された閉ループ輪郭線から少なくとも部分的に生成される請求項1に記載の方法。
[請求項9]
前記第1の3次元計算機モデルは,3次元ボリュームモデルとする請求項1に記載の方法。
[請求項10]
前記第2の3次元計算機モデルは,3次元サーフェスモデルとする請求項1に記載の方法。
[請求項11]
前記2次元画像はMRI画像とする請求項1に記載の方法。
[請求項12]
前記2次元画像はCT画像とする請求項1に記載の方法。
[請求項13]
前記参照位置は,点,複数点,ベクトル,平面,平面及び点,のうち少なくとも一つとする請求項1に記載の方法。
[請求項14]
前記参照位置は,前記2次元画像内の前記関節の近傍とする請求項1に記載の方法。
[請求項15]
前記関節は,膝,肘,手,足,肩,腰,脊椎の接合部のうち少なくとも一つとする請求項1に記載の方法。
[請求項16]
前記の各3次元計算機モデルの一方の原点に対する位置及び方向の変化は,前記の各3次元計算機モデルの他方の原点に対する位置及び方向に均等な変化を生じさせる請求項1に記載の方法。
[請求項17]
前記骨の少なくとも一部の寸法を候補ジグ素材と比較するステップと,
前記候補ジグ素材から,前記骨の少なくとも一部を収容することができる最小寸法のジグ素材を選択するステップと,
前記の選択されたジグ素材を前記製造機械に供給するステップと,
を更に有する請求項1に記載の方法。
[請求項18]
前記骨の少なくとも一部の寸法を数学的に修正するステップと,
前記の数学的に修正した寸法を用いて,どの候補ジグ素材を選択するか判定するステップと,
を更に有する請求項17に記載の方法。
[請求項19]
前記骨の少なくとも一部の寸法を,前記2次元画像及び前記3次元計算機モデルのうち少なくとも一つから得る請求項17に記載の方法。
[請求項20]
請求項1に記載の方法で製造される関節形成術ジグ。
[請求項21]
関節形成術ジグを製造する方法であって,
関節を形成する骨の少なくとも一部の2次元画像を生成するステップと,
前記2次元画像の少なくともいくつかにおいて,関節形成術対象部位に沿って開ループ輪郭線を延長するステップと,
前記開ループ輪郭線から前記関節形成術対象部位の3次元計算機モデルを生成するステップと,
前記3次元計算機モデルから,前記関節形成術対象部位に属する曲面輪郭データを生成するステップと,
前記曲面輪郭データを用いて,製造機械で前記関節形成術ジグを製造するステップと,
を有する方法。
[請求項22]
前記3次元計算機モデルは,骨及び軟骨モデルとする請求項21に記載の方法。
[請求項23]
前記骨及び軟骨モデルは,前記関節の変性した状態を表わす請求項22に記載の方法。
[請求項24]
前記第2の3次元計算機モデルは,3次元サーフェスモデルとする請求項21に記載の方法。
[請求項25]
前記2次元画像はMRI画像とする請求項21に記載の方法。
[請求項26]
前記2次元画像はCT画像とする請求項21に記載の方法。
[請求項27]
前記関節は,膝,肘,手,足,肩,腰,脊椎の接合部のうち少なくとも一つとする請求項21に記載の方法。
[請求項28]
前記骨の少なくとも一部の寸法を候補ジグ素材と比較するステップと,
前記候補ジグ素材から,前記骨の少なくとも一部を収容することができる最小寸法のジグ素材を選択するステップと,
前記の選択されたジグ素材を前記製造機械に供給するステップと,
を更に有する請求項21に記載の方法。
[請求項29]
前記骨の少なくとも一部の寸法を数学的に修正するステップと,
前記の数学的に修正した寸法を用いて,どの候補ジグ素材を選択するか判定するステップと,
を更に有する請求項28に記載の方法。
[請求項30]
前記骨の少なくとも一部の寸法を,前記2次元画像及び前記3次元計算機モデルのうち少なくとも一つから得る請求項29に記載の方法。
[請求項31]
前記開ループ輪郭線は,前記関節形成術対象部位に直接隣接する皮質骨及び軟骨まで延びる請求項21に記載の方法。
[請求項32]
請求項21に記載の方法で製造された関節形成術ジグ。
[請求項33]
関節を形成する骨の関節形成術対象部位の3次元サーフェスモデルを計算機生成する方法であって,
前記骨の少なくとも一部の2次元画像を生成するステップと,
前記2次元画像の少なくともいくつかにおいて,前記関節形成術対象部位に沿って開ループ輪郭線を生成するステップと,
前記開ループ輪郭線から前記関節形成術対象部位の3次元モデルを生成するステップと,
を有する方法。
[請求項34]
前記3次元モデルは,骨及び軟骨モデルとする請求項33に記載の方法。
[請求項35]
前記骨及び軟骨モデルは,前記関節の変性した状態を表わす請求項34に記載の方法。
[請求項36]
前記2次元画像はMRI画像とする請求項33に記載の方法。
[請求項37]
前記2次元画像はCT画像とする請求項33に記載の方法。
[請求項38]
前記関節は,膝,肘,手,足,肩,腰,脊椎の接合部のうち少なくとも一つとする請求項33に記載の方法。
[請求項39]
前記開ループ輪郭線は,前記関節形成術対象部位に直接隣接する皮質骨及び軟骨まで延びる請求項33に記載の方法。
[請求項40]
関節形成術ジグを製造する方法であって,
骨の一部に関係する少なくとも一つの寸法を画像から判定するステップと,
前記少なくとも一つの寸法と,少なくとも二つの候補ジグ素材サイズの寸法とを比較するステップと,
前記少なくとも一つの寸法を収容することができる最小のジグ素材サイズを選択するステップと,
前記の選択されたサイズのジグ素材を製造機械に供給するステップと,
前記ジグ素材から前記関節形成術ジグを製造するステップと,
を更に有する方法。
[請求項41]
前記画像は2次元MRI画像とする請求項40に記載の方法。
[請求項42]
前記画像は2次元CT画像とする請求項40に記載の方法。
[請求項43]
前記画像は,3次元計算機生成サーフェスモデルとする請求項40に記載の方法。
[請求項44]
前記画像は,3次元計算機生成ボリュームモデルとする請求項40に記載の方法。
[請求項45]
前記少なくとも一つの寸法は,大腿骨関節形成術対象部位の前面から後面までの長さとする請求項40に記載の方法。
[請求項46]
前記少なくとも一つの寸法は,大腿骨関節形成術対象部位の内側から外側までの長さとする請求項40に記載の方法。
[請求項47]
前記少なくとも一つの寸法は,脛骨関節形成術対象部位の内側から外側までの長さとする請求項40に記載の方法。
[請求項48]
前記の,骨の一部に関係する少なくとも一つの寸法を画像から測定するステップ(1)と,前記少なくとも一つの寸法と,少なくとも二つの候補ジグ素材サイズの寸法とを比較するステップ(2)とが,前記少なくとも一部の寸法を数学的に修正するステップと,前記の数学的に修正した寸法を前記の比較に用いるステップと,を更に有する請求項40に記載の方法。
[請求項49]
請求項40に記載の方法で製造される関節形成術ジグ。
[請求項50]
3次元関節形成術ジグの計算機モデルを生成する方法であって,
関節の骨の少なくとも一部の寸法を候補ジグ素材サイズの寸法と比較するステップと,
前記候補ジグ素材サイズから,前記骨の少なくとも一部の寸法を収容することができる最小のジグ素材サイズを選択するステップと,
を有する方法。
[請求項51]
前記最小のジグ素材サイズのモデルの外側面から外側3次元サーフェスモデルを形成するステップを更に有する請求項50に記載の方法。
[請求項52]
前記骨の少なくとも一部の関節形成術対象部位から,内側3次元サーフェスモデルを形成するステップと,
前記外側サーフェスモデルと前記内側サーフェスモデルとを結合して,前記3次元関節形成術ジグ計算機モデルの外側面及び内側面をそれぞれ形成するステップと,
を更に有する請求項51に記載の方法。
[請求項53]
3次元関節形成術ジグ計算機モデルを生成する方法であって,
骨の少なくとも一部の関節形成術対象部位を表わす内側3次元サーフェスモデルを形成するステップと,
ジグ素材の外側面を表す外側3次元サーフェスモデルを形成するステップと,
前記内側サーフェスモデルと前記外側サーフェスモデルとを結合して,前記3次元関節形成術ジグ計算機モデルの内側面及び外側面をそれぞれ形成するステップと,
を有する方法。
[請求項54]
前記内側サーフェスモデル及び前記外側サーフェスモデルは,結合したとき互いに間隔を隔てる請求項53に記載の方法。
[請求項55]
前記内側サーフェスモデルと前記外側サーフェスモデルとを接続するステップを更に有する請求項54に記載の方法。
[請求項56]
前記の接続処理は,前記3次元関節形成術ジグ計算機モデルの3次元ボリュームモデルを出力する請求項55に記載の方法。
[請求項57]
関節形成術ジグの製造に関係する生産ファイルを生成する方法であって,
関節骨の関節形成術対象部位の曲面輪郭に関係する第1データを生成するステップと,
関節形成処置の過程で前記関節形成術対象部位に施される鋸切断及びドリル穴あけの少なくとも一つに関係する第2データを生成するステップと,
前記第1データ及び前記第2データを統合するステップと,
を有し,
原点に対する前記第1データの位置関係と,前記原点に対する前記第2データの位置関係が互いに概略一致するように,前記第1データ及び前記第2データそれぞれの生成中に調整される方法。
[請求項58]
前記位置関係は,前記原点に対する位置及び方向のうち少なくとも一つを含む請求項57に記載の方法。
[請求項59]
前記骨の2次元画像を生成するステップと,
前記2次元画像から前記骨の3次元モデルを計算機生成するステップと,
前記原点に対する前記2次元画像の少なくとも一つと前記3次元モデルとの関係から,前記原点に対する前記第1データと前記第2データとの位置関係を設定するステップと,
を更に有する請求項57に記載の方法。
[請求項60]
前記関節骨は,膝,肘,腰,肩,手,足又は脊椎の接合部の一部とする請求項57に記載の方法。