特許第5909791号(P5909791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5909791
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】キサンタンガム造粒物及び増粘用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/20 20160101AFI20160414BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20160414BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20160414BHJP
   A23F 3/16 20060101ALN20160414BHJP
【FI】
   A23L1/04
   A23L2/00 E
   A23L2/00 F
   C09K3/00 103E
   !A23F3/16
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-25493(P2015-25493)
(22)【出願日】2015年2月12日
【審査請求日】2015年12月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】森本 倫典
(72)【発明者】
【氏名】郷路 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 智一
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−23478(JP,A)
【文献】 特開2011−244809(JP,A)
【文献】 特開2007−143545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘用組成物用のキサンタンガム造粒物であって、
キサンタンガム造粒物100質量%のうち、
硬質度2N以上8N未満のキサンタンガム顆粒が5質量%以上であり、
硬質度8N以上のキサンタンガム顆粒が20質量%以下である
増粘用組成物用キサンタンガム造粒物。
【請求項2】
請求項1に記載のキサンタンガム造粒物を含む増粘用組成物。
【請求項3】
さらに水溶性分散剤を含む請求項2に記載の増粘用組成物。
【請求項4】
増粘用組成物中のキサンタンガム:水溶性分散剤の質量比が45:55〜98:2であることを特徴とする請求項3に記載の増粘用組成物。
【請求項5】
水溶性分散剤が、金属塩封入デキストリンである請求項3または4に記載の増粘用組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のキサンタンガム造粒物と溶性分散剤との二次造粒物を含む、請求項3〜5のいずれか一項に記載の増粘用組成物。
【請求項7】
嚥下剤用である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の増粘用組成物。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか一項に記載の増粘用組成物を含有する飲食品。
【請求項9】
増粘用組成物の製造方法であって、
キサンタンガム造粒物100質量%のうち硬質度2N以上8N未満の顆粒が5質量%以上且つ硬質度8N以上の顆粒が20質量%以下となるように調製されたキサンタンガム造粒物と、水溶性分散剤を混合又は造粒する工程
を含むことを特徴とする、増粘用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶解性に優れた増粘用組成物の調製に有用なキサンタンガム造粒物及び溶解性に優れた増粘用組成物に関し、特に単位質量当りの増粘活性が高い、溶解性に優れた増粘用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会の進展に伴って、食物を噛み、飲み下す能力が低下したいわゆる咀嚼・嚥下困難者の数が増加の一途を辿っている。咀嚼・嚥下困難者が水分を含む飲食品を誤嚥すると気管支に入り、肺炎等の深刻な病気を引き起こすので、粘度の低い飲食品、例えばお茶、牛乳、ジュース、スープ等の摂取には特に注意が必要である。
このような咀嚼・嚥下困難者向けに、液状食品に粘性を付与するための増粘用組成物、いわゆるトロミ剤、嚥下剤といった商品が多数開発されて上市されている。特に最近は水分を含む飲食品に溶解させた時に「ダマ」や「ママコ」になりにくいだけでなく、速やかに分散して粘度が発現する、風味、味質が良い、透明性が高い、安価に提供されるなどの特性が増粘用組成物に要求されてきている。
【0003】
特許文献1には、液状食品のレオロジーを変化させる食品テクスチャー改良用組成物であって、キサンタンガムと、水溶性分散剤とを含み、前記キサンタンガムおよび前記水溶性分散剤がそれぞれ造粒されている、食品テクスチャー改良用組成物が開示されている。該発明は、250μm〜710μmという特定の範囲の粒径に造粒されたキサンタンガム造粒物及び水溶性分散剤造粒物を必要とし、またキサンタンガムと水溶性分散剤中のキサンタンガム濃度が50質量%以上では分散性がよくないなど、キサンタンガム濃度を50質量%以上に高めて使用することが困難であった。
【0004】
特許文献2には、粉末状のキサンタンガムを少なくとも原料の一つとして造粒した、かさ比重が0.45g/ml以下である一次造粒物に、デキストリン、澱粉及び糖類から選ばれる1種以上の賦形剤を添加後、造粒して得られる二次造粒物を含有することを特徴とする増粘化剤が開示されている。また、最も好ましい造粒方法が流動層造粒であることが開示されている。該発明の増粘化剤を用いるとダマの発生を抑制できることが記載されているが、増粘剤中のキサンタンガム濃度が50質量%を超えるようなキサンタンガム高配合の場合、該発明の増粘剤ではダマの発生の抑制が十分ではなかった。
【0005】
特許文献3には、増粘多糖類を含有する1次原料にバインダー液を噴霧して1次造粒物を得る工程と、前記1次造粒物に前記増粘多糖類100質量部に対して85質量部以上のデキストリンを被覆する工程とを有することを特徴とする増粘剤造粒物の製造方法が開示されている。該発明の方法で製造された増粘剤造粒物が分散性に良好で、ダマが発生せず、粘度の立上りが早く、かつ平衡粘度が高いことが記載されているが、増粘多糖類100質量部に対してデキストリンを85質量部以上添加する必要があり、増粘造粒物中の増粘多糖類濃度を54質量%以下にする必要があった。
【0006】
特許文献4には、金属塩を含有する澱粉分解物と増粘多糖類とを含む分散性の改善された増粘組成物が開示されている。該発明の増粘組成物は、金属塩含有澱粉分解物:増粘多糖類=55:45(質量比)より金属塩含有澱粉分解物の含有比率が小さい場合は分散性の改善が認められず、増粘組成物中の増粘多糖類濃度を45質量%までしか上げることができなかった。
【0007】
また、非特許文献1には均一なトロミ剤を得る目的で、1次造粒として増粘多糖類のみによる顆粒を製造し、2次造粒として1次造粒における顆粒をデキストリンなどの分散剤とともに再び造粒し、最終製品としての顆粒を製造する2段階造粒についての記載がある。
当該文献の試験では、表3に記載のあるように最終製品中の増粘多糖類の濃度は31%であり、最終製品中の増粘多糖類の濃度が50%以上の増粘組成物についての記載はない。
従来の増粘用組成物は、増粘多糖類に対する澱粉分解物の比率が相対的に多く、増粘剤を必要とする飲食品に添加して増粘効果を発揮させるために、増粘多糖類単独使用の場合に比べて2倍量以上を必要とする。その結果、飲食品の物性や食感あるいは食味に悪影響を与える可能性が否定できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−049225
【特許文献2】特開2011−244809
【特許文献3】特開2011−229440
【特許文献4】特開2013−111035
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】粉体工学会誌46(5)2009、 371−375
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、増粘多糖類を多量に含む増粘用組成物を提供することである。すなわち、本発明は、水、お茶、清涼飲料、乳飲料、スープ、濃厚流動食などの水分を含む広範な飲食品において、増粘用組成物中のキサンタンガム濃度が50質量%以上であってもダマの発生が抑制された増粘用組成物用のキサンタンガム造粒物、該キサンタンガム造粒物を含む増粘用組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。更には、増粘用組成物を飲食品に投入後、撹拌までの静置時間を長くした場合でも、ダマの発生が抑制された増粘用組成物を調製するためのキサンタンガム造粒物、該キサンタンガム造粒物を含む増粘用組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の範囲の硬質度に硬質化されたキサンタンガム造粒物を増粘用組成物に添加することで、増粘用組成物中のキサンタンガムが多量に含まれていてもダマの発生が顕著に抑制されることを見出した。
更には、特定の範囲の硬質度に硬質化されたキサンタンガム造粒物を増粘剤に含むことで、飲食品に投入後の静置時間を長くしてもダマの発生が抑制できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて達成された。
本発明は、以下を提供する。
〔1〕
増粘用組成物用のキサンタンガム造粒物であって、
キサンタンガム造粒物100質量%のうち、
硬質度2N以上8N未満のキサンタンガム顆粒が5質量%以上であり、
硬質度8N以上のキサンタンガム顆粒が20質量%以下である
増粘用組成物用キサンタンガム造粒物。
〔2〕
前記〔1〕に記載のキサンタンガム造粒物を含む増粘用組成物。
〔3〕
さらに水溶性分散剤を含む前記〔2〕に記載の増粘用組成物。
〔4〕
増粘用組成物中のキサンタンガム質量:水溶性分散剤の質量比が45:55〜98:2であることを特徴とする前記〔3〕に記載の増粘用組成物。
〔5〕
水溶性分散剤が、金属塩封入デキストリンである前記〔3〕または〔4〕に記載の増粘用組成物。
〔6〕
前記〔1〕に記載のキサンタンガム造粒物と、水溶性分散剤を造粒して得られる前記〔3〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の増粘用組成物。
〔7〕
嚥下剤用である、前記〔2〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の増粘用組成物。
〔8〕
前記〔2〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の増粘用組成物を含有する飲食品。
〔9〕
増粘用組成物の製造方法であって、
キサンタンガム造粒物100質量%のうち硬質度2N以上8N未満の顆粒が5質量%以上且つ硬質度8N以上の顆粒が20質量%以下となるように調製されたキサンタンガム造粒物と、水溶性分散剤を混合又は造粒する工程
を含むことを特徴とする、増粘用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水、お茶、清涼飲料、乳飲料、スープ、濃厚流動食などの水分を含む広範な飲食品において、増粘用組成物中のキサンタンガム濃度が50質量%以上というような高い濃度であってもダマの発生を抑制することができる増粘用組成物用のキサンタンガム造粒物、該キサンタンガム造粒物を含む増粘用組成物及びその製造方法を提供することができる。本発明の増粘用組成物は、キサンタンガム濃度が高い濃度であっても、分散性に優れ、従来と比較して少量で飲食品に必要な粘度を付与することができる。また、増粘用組成物を飲食品に投入後、撹拌までの静置時間を長くしてもダマの発生が抑制されるため、従来のように飲食品を撹拌しながら増粘用組成物を投入したり、増粘用組成物を飲食品に投入後すぐに撹拌したりする必要がなく極めて使いやすい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、硬質度2N以上8N未満の顆粒が5質量%以上であり、且つ、硬質度8N以上の顆粒が20質量%以下である増粘用組成物用のキサンタンガム造粒物、該キサンタンガム造粒物を含む増粘用組成物及びその製造方法から成る。
【0014】
本発明において、キサンタンガム造粒物とはキサンタンガム粉末を造粒したキサンタンガム顆粒の集合体、好ましくはキサンタンガム粉末にバインダーを加えて造粒したキサンタンガム顆粒の集合体を指し、キサンタンガム粉末とは造粒をしていないキサンタンガム粉末を指す。
【0015】
本発明において、硬質度とは顆粒1粒を押し潰すのに必要な力(単位はニュートン、N)を指す。顆粒1粒をクリープメーター(RE2−33005B、株式会社山電)にセットし、円柱状の棒で顆粒に荷重を徐々にかける。顆粒は徐々に歪んでいき、ある荷重をかけたところで顆粒は崩壊し、その際に円柱棒の変位が急激に大きくなる。顆粒の崩壊に要する荷重を硬質度とする。 具体的には、まずキサンタンガム造粒物を篩(30メッシュ、42メッシュ、60メッシュ、83メッシュ、120メッシュ、166メッシュ)で分級する。各メッシュの篩上にあるキサンタンガム顆粒10粒を無作為に取出し、1粒ずつ硬質度を測定し、10粒の硬質度の平均値をその篩上にあるキサンタンガム顆粒の硬質度とする。
したがって、本発明における硬質度とは、言い換えると、キサンタンガム造粒物を篩(30メッシュ、42メッシュ、60メッシュ、83メッシュ、120メッシュ、166メッシュ)で分級し、各メッシュの篩上にあるキサンタンガム顆粒10粒の平均硬質度から計算される値を意味する。
所定の硬質度を有するキサンタンガム造粒物の測定方法としては、本発明における各篩上のキサンタンガム顆粒の全質量に対する割合(質量%)を第一に測定し、次に各篩上のキサンタンガム顆粒10粒の平均硬質度を測定して、平均硬質度が2N以上8N未満であるキサンタンガム顆粒の割合が全質量に対して5質量%以上であり、平均硬質度8N以上のキサンタンガム顆粒が20質量%以下であるか否かを決定する。
【0016】
本発明のキサンタンガム造粒物の原料となるキサンタンガム粉末は、一般に市販されているキサンタンガム粉末を使用することができる。
【0017】
本発明において、硬質度2N以上8N未満の顆粒が5質量%以上であり、且つ、硬質度8N以上の顆粒が20質量%以下であるキサンタンガム造粒物は、例えば、転動流動層造粒装置、押出し造粒装置により製造することができる。飲食品の増粘剤製造用として従来使用されている流動層造粒装置では本発明の硬質な顆粒を含むキサンタンガム造粒物を製造できない。好ましい製造装置は転動流動層造粒装置である。
【0018】
本発明のキサンタンガム造粒物の製造方法の一例としては、転動流動層造粒装置を用い、キサンタンガム粉末を該装置に投入し、該装置の撹拌羽を回転させた状態で、バインダーを適当な溶媒に分散あるいは溶解したバインダー液を噴霧しながらキサンタンガム粉末を顆粒化する(一次造粒物を製造する)方法である。撹拌羽根の回転速度は、使用する原料や処理時間等との関係で調整すればよく、例えば、10rpm〜600rpm、好ましくは100rpm〜500rpm、より好ましくは200rpm〜400rpmに設定する。一般に、撹拌羽根の回転速度が遅いと本発明の硬質なキサンタンガム顆粒を製造できず、回転速度が速すぎるとキサンタンガム顆粒が硬質になり過ぎる。
【0019】
本発明において、キサンタンガム顆粒(一次造粒物)の製造に使用するバインダー液としては、一般的なバインダー液を使用できる。例えば、水、又は、増粘多糖類及び/又はデキストリン含有水溶液をバインダー液として使用することができる。
一次造粒物を製造する際に、キサンタンガム粉末100質量部に対し、バインダー液を5〜200質量部程度使用することが好ましい。
【0020】
上記のようにして得られた硬質度2N以上8N未満の顆粒が5質量%以上であり、且つ、硬質度8N以上の顆粒が20質量%以下であるキサンタンガム造粒物を用いて増粘用組成物を調製した場合、増粘用組成物中のキサンタンガム濃度が50質量%を超えるようなキサンタンガム高配合な増粘用組成物であっても、ダマの発生が顕著に抑制される。本発明において、キサンタンガム造粒物100質量%中の硬質度2N以上8N未満のキサンタンガム顆粒は、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは14質量%以上、さらに好ましくは19質量%以上である。本発明において、キサンタンガム造粒物中の硬質度8N以上の顆粒は20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0021】
本発明のキサンタンガム造粒物の製造において、必要に応じて、キサンタンガム以外の増粘剤を含ませることができる。該増粘剤としては、例えば、カラギーナン、グアガム、ジェランガム、寒天、ローカストビーンガム、タラガム及びグルコマンナンが挙げられる。この場合、キサンタンガムとキサンタンガム以外の増粘剤を複合させる利点としては、例えば増粘効果、食感の改善などがあげられる。また、本発明のキサンタンガム造粒物の製造後に、必要に応じて、前記キサンタンガム以外の増粘剤をキサンタンガム造粒物に混合してもよい。
【0022】
本発明は、上記キサンタンガム造粒物を含む増粘用組成物を含む。該増粘用組成物には、上記キサンタンガム造粒物の他に水溶性分散剤を含むことが好ましい。該水溶性分散剤としては、例えば、乳糖、グルコース、デキストリンが挙げられる。
【0023】
本発明の増粘用組成物は、硬質度2N以上8N未満の顆粒が5質量%以上であり、且つ、硬質度8N以上の顆粒が20質量%以下であるキサンタンガム造粒物の他に水溶性分散剤を含むことが好ましい。該キサンタンガム造粒物と水溶性分散剤とを混合及び/又は造粒することで本発明の増粘用組成物を調製することができる。混合装置は一般的な混合装置を使用でき、例えば、リボンミキサー、ナウタミキサー等の混合機が挙げられる。造粒装置は一般的な造粒装置を使用でき、好ましくは、流動層造粒装置である。転動流動層造粒装置において、撹拌羽根を回転させずに装置を使用することでも目的の増粘用組成物を得られる。
【0024】
本発明において、硬質度2N以上8N未満の顆粒が5質量%以上であり、且つ、硬質度8N以上の顆粒が20質量%以下であるキサンタンガム造粒物と水溶性分散剤の造粒に際しては、温風(吸気エアー)の温度は30〜100℃、好ましくは70〜100℃に調整し、造粒する時の品温は25〜100℃、好ましくは30〜60℃程度に調整する。温度が高くなりすぎると造粒しにくく、低すぎると流動しにくくなる。
また、更にバインダー液を含むことが好ましい。バインダー液としては水のほか、糖類、デキストリン、澱粉、ガム類及びCMCから選ばれる1種以上あるいはこれらの水溶液若しくは水懸濁液を使用することができる。また、バインダー液として、キサンタンガム等の増粘多糖類を使用してもよい。これらを水溶液として使用することができる。バインダー液の噴霧速度は流動層装置の種類によっても異なるが、例えば、液量を通常0.01〜2L/分程度にすることができる。乾燥は流動処理と同時に行ってもよく、また流動処理とは別に次の段階で乾燥してもよい。流動処理と同時に乾燥を行う場合には30〜70℃、好ましくは40〜60℃で行うことができる。また噴霧処理後に乾燥する場合には、70〜100℃で行うことが好ましい。
バインダー中にキサンタンガムを含む場合は、バインダー中のキサンタンガムも含めてキサンタンガム濃度として計算してもよい。また、バインダー中に分散剤として用いている化合物、例えばデキストリン、を含む場合は、分散剤濃度に含めて計算してもよい。
二次造粒物を製造する際に、キサンタンガム造粒物100質量部に対し、バインダー液を2.5〜100質量部程度使用することが好ましい。
【0025】
本発明において、水溶性分散剤として好ましくはデキストリンが挙げられる。
本発明におけるデキストリンとは、澱粉を酸や酵素によって加水分解して得られる澱粉加水分解物を表す。また、澱粉に微量の酸を加えて加熱した後に酵素で加水分解して得られる難消化性デキストリンもデキストリンに含まれる。好ましくは消化性デキストリンである。
本発明におけるDEとは、Dextrose Equivalent(グルコース当量)の略で、澱粉加水分解物の加水分解の程度を表すのに広く用いられる指標であり、固形分中の直接還元糖の比率を表したものである。本発明ではウィルシュテッター・シューデル法により分析された値を表す。
本発明におけるデキストリンはDEを8〜25とすることが好ましい。より好ましくは10〜25であり、更に好ましくは16〜20である。デキストリンは粉末状でも顆粒状でもよい。
【0026】
また、デキストリンとして、金属塩(化合物)が封入されたデキストリンを用いると、通常のデキストリンと比較して、キサンタンガム濃度をより高くしてもダマの発生が抑制される。本発明において金属塩がデキストリン中に「封入」されるとは、デキストリン内に金属塩が均質化された状態で存在しており、遊離の金属塩の結晶が存在しない非晶質(アモルファス)の状態であることをいう。
本発明のキサンタンガム造粒物と該金属塩封入デキストリンとを含む増粘用組成物では、増粘用組成物中のキサンタンガム濃度が50質量%以上というような高濃度であってもダマの発生が顕著に抑制される。
【0027】
本発明における金属塩(化合物)は、一般的に飲食品に使用されるものであれば特に限定されるものではないが、味質に優れる等の観点から、無機酸または有機酸のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩が好ましい。好ましい金属塩化合物としては、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸三ナトリウム及びクエン酸三カリウムの中から選ばれる1種以上のものであることが好ましい。より好ましくは、硫酸マグネシウムまたはパントテン酸カルシウムである。
【0028】
本発明におけるデキストリンに封入した金属塩の調製は、例えば以下の様に行う。まずデキストリンと金属塩を水に溶解混合して均質化した後、固形分濃度を20〜60質量%、好ましくは30〜55質量%に調整する。このときのデキストリンは、常法により澱粉を加水分解して調製してもよいし、市販のデキストリンを使用することもできるが、後工程で乾燥することを考慮すると液状デキストリンを使用することが好ましい。金属塩の添加は、デキストリン水溶液にそのまま添加してもよいし、別途水に高濃度で溶解したものを添加してもよい。その後、乾燥して金属塩を封入したデキストリンを得る。乾燥は噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で実施することができるが、効率面、コスト面等考慮すると噴霧乾燥が好ましい。具体的には、封入物は、デキストリンと金属塩の混合溶液をアトマイザー、もしくは加圧ノズルよって微粒子化した後、熱風温度を140〜180℃程度に調整した乾燥室内に出口温度80〜100℃程度になるように噴霧することによって調製することができる。例えば、金属塩の濃度はデキストリン100質量部に対して、45質量%以内で調整することが好ましい。金属塩の濃度が45質量%を超えると、金属塩封入デキストリンの保存安定性及び噴霧乾燥における回収率が大幅に低下する場合がある。
【0029】
本発明において、硬質度2N以上8N未満の顆粒が5質量%以上であり、且つ、硬質度8N以上の顆粒が20質量%以下であるキサンタンガムと水溶性分散剤の質量比は、ダマ発生の抑制、粘度の立上り、増粘効果の観点から、キサンタンガム:水溶性分散剤の質量比が、好ましくは45:55〜75:25、より好ましくは50:50〜70:30であり、更に好ましくは55:45〜70:30である。ここで、キサンタンガム造粒物の製造用バインダーとしてデキストリン水溶液等の水溶性分散剤を用いた場合、キサンタンガム造粒物中にデキストリンが含まれるので、この点を考慮してキサンタンガムとデキストリンの配合を計算すればよい。
【0030】
本発明において、硬質度2N以上8N未満の顆粒が5質量%以上であり、且つ、硬質度8N以上の顆粒が20質量%以下であるキサンタンガムと金属塩封入デキストリンの質量比は、ダマ発生の抑制、粘度の立上り、増粘効果の観点から、キサンタンガム:金属塩封入デキストリンが、好ましくは45:55〜75:25、より好ましくは50:50〜98:2、更に好ましくは55:45〜90:10、最も好ましくは60:40〜90:10である。
【0031】
このようにして得られる増粘用組成物は、単位質量当りの増粘効果が高く、少量の添加で飲食品に粘性を付与することができるので、飲食品の物性や食感への影響を最小限に抑えることができ、しかも増粘飲食品を低コストで製造することができる。また、本発明の増粘用組成物は、増粘用組成物を添加してから撹拌するまでの静置時間があっても、ダマになりにくく十分に分散することができる。本発明の増粘用組成物の飲食品への配合量は、所望の粘度に応じて0.5〜3質量%であってもよく、好ましくは0.5〜1.5質量%の範囲で設定してもよい。
【0032】
本発明の増粘用組成物が利用できる飲食品としては、水分を含む各種飲食品が挙げられる。例えば、水、お茶、紅茶等の茶飲料類;果汁入り清涼飲料、果汁飲料、菜汁飲料等のジュース類;牛乳、乳飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、アイソトニック飲料、機能性飲料、ビタミン補給飲料、栄養補給バランス飲料、粉末飲料等のその他飲料類;ワイン、日本酒、焼酎、ウィスキー、カクテル等の酒類;スープ、味噌汁、シチュー、カレー、粥などの食品類が挙げられる。
【0033】
本発明の増粘用組成物は、特に咀嚼・嚥下困難者の食品にとろみを付与させる、増粘用組成物として有用である。
咀嚼・嚥下困難者のとろみが付与された食品は、介護現場で、水やお茶等の飲食品をスプーンを用いて撹拌しながら、増粘用組成物を添加して調製される場合が大半である。従って、分散性がより向上した本発明のキサンタンガム造粒物を含む増粘用組成物を用いることで、作業者の負担を軽減できる。また、本発明の増粘用組成物を用いたキサンタンガム濃度の高い増粘用組成物であれば、目的の粘度付与に必要な増粘用組成物の量を減らすことができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
[1:従来技術品との比較]
本発明のキサンタンガム造粒物、又は従来のキサンタンガム造粒物を用いて製造した増粘用組成物の分散性、粘度の立上りを以下の通り比較した。
【0036】
[1−1.本発明のキサンタンガム造粒物の調製]
[試作1]
キサンタンガム粉末(80メッシュパス品)3kgに対して水2.4kgをバインダー液として用い、転動流動層造粒機(ローターコンテナ付フローコーターFLO−05M、フロイント産業株式会社)によりキサンタンガム造粒物を製造した。具体的な条件は以下の通りである。
(試作1条件):空気温度:70℃、風量:2.0〜4.0m3/分、
バインダー供給速度:80ml/分、噴霧時間:30分
ローター回転速度:300rpm
【0037】
[1−2.従来のフローコーターによるキサンタンガム造粒物の調製]
[試作2]
キサンタンガム粉末(80メッシュパス品)3kgに対して水0.35kgをバインダー液として用い、流動層造粒機(フローコーターFLO−5A、フロイント産業株式会社)によりキサンタンガム造粒物を製造した。具体的な条件は以下の通りである。
(試作2条件):空気温度:70℃、風量:1.0m3/分、
バインダー供給速度:11.7ml/分、噴霧時間:30分
【0038】
[試作3]
噴霧時間を1時間にした以外は全て試作2の条件を用いてキサンタンガム造粒物を製造した。
【0039】
[1−3.キサンタンガム造粒物の物性測定方法]
[嵩密度]
容量100mlの容器にすりきり一杯のキサンタンガム造粒物を充填し、充填された顆粒の重量を測定することにより嵩密度を求めた。
[粒度分布]
キサンタンガム造粒物を下記篩で分級して、キサンタンガム造粒物の質量粒度分布を測定した。
【0040】
[硬質度]
粒度分布測定で使用した各メッシュの篩上にあるキサンタンガム顆粒10粒を無作為に取出し、1粒ずつクリープメーター(RE2−33005B、株式会社山電)により硬質度を測定した。荷重棒は直径2.5mmの円柱棒を用いた。10粒の硬質度の平均値をその篩上にあるキサンタンガム顆粒全体の平均硬質度とし、該平均硬質度のキサンタンガム顆粒が粒度分布測定で測定した質量%存在するとした。ここで、120メッシュを通過した顆粒中には、顆粒化されていない原料粉が含まれていることがあり測定精度が悪くなるため、硬質度の測定サンプルとしては30〜120メッシュ上の顆粒を採用した。
【0041】
[1−4.製造したキサンタンガム造粒物の物性比較]
表1に、試作1、試作2、試作3で製造したキサンタンガム造粒物の質量分布、硬質度測定結果を示す。表1に示す通り、試作1〜試作3で製造したキサンタンガム造粒物の嵩密度は共に0.31g/ml程度であった。ただし、両者では特定の硬質度の顆粒含量が異なり、試作2、試作3には硬質度の数値で表される顆粒が存在しないのに対し、試作1には硬質度4.13Nの顆粒が3.2質量%、5.69Nの顆粒が10.5質量%存在した。
【0042】
【表1】
【0043】
[1−5.増粘用組成物の調製]
表2に示すように試作1、試作2又は試作3のキサンタンガム造粒物とデキストリン(TK-16,松谷化学工業株式会社)をキサンタンガム:デキストリン=70:30(質量比)で混合し、該混合物2.0kgに対してキサンタンガム0.2質量%含む水溶液300gをバインダー液として用い、流動層造粒機(フローコーターFLO−5A、フロイント産業株式会社)により2次造粒して増粘用組成物を製造した。2次造粒の具体的な製造条件は以下の通りである。
(2次造粒条件)空気温度:80℃、風量:1.0〜2.5m3/分
バインダー供給速度:23ml/分、噴霧時間:13分
【0044】
【表2】
【0045】
[1−6.増粘用組成物の評価方法]
[分散性-試験方法]
200mlビーカーに20℃±1℃のイオン交換水100gを準備する。増粘多糖類(キサンタンガム)が1gとなる量の増粘用組成物をビーカーに一気に投入し、3秒、5秒又は10秒静置させる。その後、スパーテルを用い200rpmで1分間撹拌し、ダマの状態を目視で観察した。
【0046】
[分散性-評価]
ダマの発生状況を以下のように数値化し、分散性の得点とした。得点が高いほど分散性は好ましく、増粘用組成物として好ましい。特に5秒静置した条件で4点以上が好ましい。
5:ダマなし
4:小ダマが1〜3個
3:小ダマが4〜10個
2:小ダマが10個より多い
1:5mm以上の大きなダマが発生
【0047】
[粘度の立上り-評価方法]
200mlビーカーに20℃±1℃のイオン交換水100gを準備する。イオン交換水をスパーテルを用いて200rpm程度で撹拌しながら、増粘多糖類(キサンタンガム)が1gとなる量の増粘組成物をビーカーに一気に投入する。溶解開始から所定の時間経過後の溶液粘度をBM型粘度計(TOKIMEC)で測定した。
【0048】
[粘度の立上り評価]
T=[3分後の粘度値/60分後の粘度値]とし、Tの値によって以下のように粘度の立上りの得点とした。得点が高いほど粘度の立上りは好ましく、増粘用組成物として好ましい。特に4点以上が好ましい。
5:0.85≦X≦1
4:0.70≦X<0.85
3:0.55≦X<0.70
2:0.40≦X<0.55
1: X<0.40
【0049】
[1−7.製造した増粘剤組成物の評価]
試作1〜試作3のキサンタンガム造粒物はいずれも嵩密度が0.31g/ml程度であるが、表3に示すように本発明のキサンタンガム造粒物である試作1を用いた実施例1の増粘用組成物では、キサンタンガム濃度が70質量%と高いにもかかわらず分散性が極めてよかった。増粘用組成物をイオン交換水に投入し静置10秒という厳しい条件においても、試作1のキサンタンガム顆粒を含む増粘用組成物を用いた場合、大きなダマは発生しなかった。一方で、従来のフローコーターで製造した試作2、試作3のキサンタンガム造粒物を用いた比較例1、比較例2の増粘用組成物では、静置3秒という条件においてもダマが発生した。増粘用組成物の粘度の立上りについては実施例1、比較例1ともに結果はよかった(表4)。嵩密度及び/又は粒度分布が同程度でも、硬質度の違うキサンタンガム造粒物を用いることで、キサンタンガム濃度の高い増粘用組成物が調製できた。
【0050】
なお、本発明のキサンタンガム造粒物を用いた場合、増粘用組成物中のキサンタンガム濃度が50質量%未満においても、従来のキサンタンガム造粒物を用いた場合に比べて分散性は優れていることを別途確認した。また、キサンタンガム濃度45質量%程度までは従来のキサンタンガム造粒物を用いても分散性は問題ないレベルであったが、キサンタンガム濃度が50質量%以上になると、従来のキサンタンガム造粒物では分散性が悪くなりダマが発生しやすくなった。このことから、キサンタンガム濃度が50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上の増粘用組成物においては、本発明のキサンタンガム造粒物の使用が非常に有効であることがわかった。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
[2.キサンタンガム造粒物の硬質度詳細検討]
[2−1.キサンタンガム造粒物の製造]
処理時間以外を試作1と同様の条件でキサンタンガム粉末を造粒し、一定時間ごとにサンプリングすることで、No.S1〜S14のキサンタンガム造粒物を製造した。[1−3]記載の方法で、粒度分布及び硬質度を測定した。表5に測定結果を示す。
【0054】
[2−2.増粘用組成物の調製]
キサンタンガム造粒物とデキストリン(TK-16-AG,松谷化学工業株式会社)を用いて、キサンタンガム:デキストリン=50:50(質量比)の割合で混合し増粘用組成物を製造した。
【0055】
[2−3.キサンタンガム造粒物の硬質度値について]
キサンタンガム造粒物として表5を参考に特定の硬質度の顆粒を抽出し、[2−2]記載の増粘用組成物を製造した。具体的には、平均硬質度1.38N(S12の120−166メッシュから抽出)、1.78N(S14の83−120メッシュから抽出)、2.13N(S14の 60−83メッシュから抽出)、7.89N(S9の30−42メッシュから抽出)又は8.32N(S11の60−83メッシュから抽出)のキサンタンガム造粒物を用いて、[2−2]記載の増粘用組成物を製造した。
上記増粘用組成物について、[1−6]記載の分散性評価試験(静置時間5秒)を実施したところ、平均硬質度1.38N又は1.78Nのキサンタンガム造粒物を用いた場合、ダマが多数発生した。一方、平均硬質度2.13N、7.89N又は8.32Nのキサンタンガム造粒物を用いた場合、静置5秒でもダマは発生しなかった。また、[1−6]記載の粘度立上がり評価試験を実施したところ、平均硬質度8.32Nのキサンタンガム造粒物を用いた場合、増粘用組成物の粘度の立上りは(3分/60分の粘度比=0.65)遅く、平均硬質度1.38N、1.78N、2.13N又は7.89Nのキサンタンガム造粒物を用いた場合、増粘用組成物の粘度の立上りは優れていた(いずれも3分/60分の粘度比=0.78以上)。このことから、キサンタンガム造粒物中のキサンタンガム顆粒の硬質度としては、2N以上〜8N未満の顆粒が多いほうがよく、8N以上の顆粒は少ないほうがよいということがわかった。
【0056】
【表5】
【0057】
【表5-1】
【0058】
[2−4.S1〜S14のキサンタンガム造粒物を用いて調製した増粘用組成物の評価]
キサンタンガム造粒物として、S1〜S15のキサンタンガム造粒物を用いて[2−2]記載の増粘用組成物を製造し、前記の分散性評価、粘度立上がり評価を実施した。
表6に示すように、硬質度2N以上硬質度8N未満の顆粒が5質量%以上であり、且つ硬質度8N以上の顆粒が20質量%以下を満たすキサンタンガム造粒物を用いて製造した増粘用組成物は、分散性に優れ、且つ粘度の立上りに優れていた。また、硬質度2N以上硬質度8N未満の顆粒が19.6質量%以上であり、且つ硬質度8N以上の顆粒が3質量%以下であるキサンタンガム造粒物(S5〜S7)を用いて製造した増粘用組成物では、分散性且つ粘度の立上りが共により優れていた。
【0059】
ここで、[2−3] 記載の平均硬質度2.13Nの顆粒は60〜83メッシュ上から抽出したため、その粒子径は180〜250μmの範囲となる。本発明のキサンタンガム造粒物では、特許文献1に記載のある250μm以上のキサンタンガム顆粒を用いた場合とは異なり、250μm以下の顆粒を用いた場合でも分散性に優れていた。
また、S9のキサンタンガム造粒物中の42〜60メッシュの範囲の顆粒(平均硬質度4.11N)と、押出し造粒で製造した顆粒(平均硬質度9.70N)を80:20(質量比)で混合した後、2次造粒して増粘用組成物を調製し、上記と同様に分散性、粘度の立上りを評価したところ良好であった。すなわち、本発明の増粘用組成物は、このような方法によっても調製できることがわかった。
【0060】
【表6】
【0061】
[3.キサンタンガム濃度の検討]
[3−1.増粘用組成物の製造]
表7及び8に示すように、No.S3又はS5のキサンタンガム造粒物とデキストリンを用いて、キサンタンガム:デキストリン=70:30〜98:2(質量比)の割合で、増粘用組成物を製造した。デキストリンはDE18の金属塩封入デキストリンを用いた。300gのイオン交換水に100gのデキストリンを溶解した水溶液に、封入物中の金属塩濃度が表7に示した濃度となるようにそれぞれ溶解させた後、スプレードライ法又はドラムドライ法を用いて乾燥し、金属塩封入デキストリンを調製した。
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】
【0064】
[3−2.増粘用組成物の評価]
表9及び10に示すように、キサンタンガム濃度70質量%の増粘用組成物の分散性、粘度の立上りは共に良好な結果を示した。実施例1に示す通り通常のデキストリンを用いて製造した増粘用組成物も評価はよかったが、金属塩封入デキストリンを用いると、増粘用組成物を水溶液投入後5秒静置してもダマが発生せず分散性はさらに向上した。
また、金属塩封入デキストリンの製造方法としては、スプレー法、ドラム法共に好ましい結果となった。金属塩をより少なくできるという観点でみると、ドラム法で製造した金属塩封入デキストリンを用いたほうがより好ましい結果であった。
本発明のキサンタンガム造粒物を用いることで、スプレー法で製造した金属塩封入デキストリンを用いると増粘用組成物中のキサンタンガム濃度が90質量%、ドラム法で製造した金属塩封入デキストリンを用いると増粘用組成物中のキサンタンガム濃度が98質量%でもダマが発生しない増粘用組成物を製造することができた。増粘用組成物を水溶液に投入後5秒静置してもダマが発生しないという観点から、増粘用組成物中のキサンタンガム濃度は90質量%までが好ましいといえる。
なお、分散剤として金属塩を封入しないデキストリンを用いた場合は、粘度の立上りの点から増粘用組成物中のキサンタンガム濃度は75質量%までが好ましい。
【0065】
【表9】
【0066】
【表10】
【0067】
[4.一般の飲料での増粘用組成物の効果]
実施例18 お茶
お茶(商品名「お〜いお茶」、(株)伊藤園)100gに、実施例10で調製した増粘用組成物0.7gを添加し、スパーテルで撹拌したところ、直ちに液中全体に分散し、ダマの発生がなく、粘度発現も良好であった。わずか0.7gの添加で咀嚼・嚥下困難者向けのお茶として十分な粘度が発現した。
【0068】
実施例19 清涼飲料
清涼飲料(商品名「アクエリアス/AQUARIUS」、日本コカ・コーラ株式会社)100gに、実施例10で調製した増粘用組成物0.7gを添加し、スパーテルで撹拌したところ直ちに液中全体に分散し、ダマの発生がなく、粘度発現も良好であった。わずか0.7gの添加で咀嚼・嚥下困難者向けのお茶として十分な粘度が発現した。
【0069】
[5.増粘用組成物中の顆粒の硬質度について]
実施例1の増粘用組成物中の顆粒の硬質度について[1−3]記載の方法で調べたところ、増粘用組成物の調製に使用したキサンタンガム造粒物(試作1)中の顆粒の硬質度分布とよく似ていた。また、比較例2の増粘用組成物中の顆粒の硬質度について調べたところ、わずかに硬質度を示す顆粒も存在したが99質量%以上において硬質度が0であった。本発明の増粘用組成物中の顆粒の硬質度は、使用したキサンタンガム造粒物中の顆粒の硬質度に近いことがわかった。
【要約】
【課題】水、お茶、清涼飲料、乳飲料、スープ、濃厚流動食などの水分を含む広範な飲食品において、増粘用組成物中のキサンタンガム濃度が50質量%以上であってもダマの発生が抑制された増粘用組成物用のキサンタンガム造粒物、該キサンタンガム造粒物を含む増粘用組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】増粘用組成物用のキサンタンガム造粒物であって、キサンタンガム造粒物100質量%のうち、硬質度2N以上8N未満のキサンタンガム顆粒が5質量%以上であり、硬質度8N以上のキサンタンガム顆粒が20質量%以下である増粘用組成物用キサンタンガム造粒物、前記造粒物を含む増粘用組成物及びその製造方法により、上記課題は解決される。
【選択図】なし