(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909802
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】超音波横波探触子
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
G01N29/24
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-68301(P2013-68301)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-190917(P2014-190917A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2014年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392036153
【氏名又は名称】菱電湘南エレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301031392
【氏名又は名称】国立研究開発法人土木研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100094695
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 憲七
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】木村 友則
(72)【発明者】
【氏名】小池 光裕
(72)【発明者】
【氏名】高橋 実
(72)【発明者】
【氏名】村越 潤
【審査官】
横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−117294(JP,A)
【文献】
特開平03−075556(JP,A)
【文献】
特開平01−112104(JP,A)
【文献】
特開2010−169477(JP,A)
【文献】
特開2009−139075(JP,A)
【文献】
特開平01−244308(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0091829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
A61B 1/00− 1/32
H04R 1/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体に接触させ、電気信号によって駆動された横波の超音波を前記試験体中に伝搬させ、かつ、前記試験体中を伝搬した前記横波の超音波を電気信号に変換することで、前記試験体の超音波探傷を行う超音波横波探触子であって、
前記超音波横波探触子の前記試験体と接触する面には、保護板が装備されており、前記保護板は、応力集中点となる形状の突起部を複数個有しており、前記突起部から横波の超音波の送受信を行う
超音波横波探触子。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波横波探触子において、
前記突起部は、1次元あるいは2次元の配列として形成されている超音波横波探触子。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波横波探触子において、
前記超音波横波探触子は、アレイ探触子であり、
前記突起部は、複数の1次元配列として形成され、かつ、各配列の方向が横波の振動方向に対して垂直な方向を有するように形成されている超音波横波探触子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験体に対して超音波を送信し、かつ試験体中を伝搬する超音波を受信する探触子に関するものであり、特に、横波の超音波を送受する超音波横波探触子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、構造物の老朽化が問題となっており、適切な維持管理が要求されている。これら老朽化した構造物を維持管理するには、適切な検査を行う必要がある。特に、目視で確認できない部位の検査においては、超音波による非破壊検査、いわゆる超音波探傷に対する期待が大きい。超音波探傷では、探触子を用いて信号の送受信を行うが、その効率と安定性が求められている。
【0003】
超音波探傷は、横波を用いて行う場合もある。試験体に対して垂直に横波を伝搬させるには、垂直横波探触子を用いる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
まず、従来の垂直横波探触子の構成および動作について、
図6および
図7を参照しながら説明する。
図6は、従来の垂直横波探触子の構成図である。この
図6に示した従来の垂直横波探触子100は、振動子1、保護板2、ダンパー3、およびケース4を備えて構成されている。なお、非特許文献1では、「保護膜2」としているが、ここでは、保護板2として説明する。
【0005】
このような構成を備えた垂直横波探触子100は、超音波探傷による検査対象である試験体20に対して、接触媒質30を介して、横波を伝搬させることとなる。
【0006】
図6に示すように、振動子1の両側には、保護板2およびダンパー3がある。なお、ダンパー3がないタイプの垂直横波探触子もある。試験体20への超音波の伝達効率を向上させるために、保護板2を整合層として用いているタイプもある。また、
図7は、従来の垂直横波探触子における経過時間に対する押し付け力、保護板に掛かる圧縮応力、および保護板と試験体との接触強度の変化を説明するための図である。
【0007】
次に、従来の垂直横波探触子の動作について説明する。ここでは、特別な治具を用いずに、人間の手で探触子100を扱う場合を例として説明する。探傷器からの電気信号を振動子1に印加すると、振動子1は、振動する。ここで、探触子100は、横波探触子なので、
図6に示すように、振動子1の上面および下面では逆方向に振動する。その結果、せん断応力が発生し、横波が保護板2およびダンパー3へ伝搬する。ダンパー3の方向で伝搬した横波は、ダンパー3の内部で減衰される。
【0008】
一方、保護板2の方向へ伝搬した横波は、接触媒質30を介して試験体20中へ伝搬していく。ここで、接触媒質30としては、非特許文献1にも示されているように、横波用の接触媒質を用いる必要がある。横波用の接触媒質とは、せん断応力を試験体20中へ伝達させるため、水飴のような粘度の高い液状のものである。なお、普通の水を接触媒質30として用いても、せん断応力は伝達されないので、試験体20中へは、横波が伝搬しない。また、
図6中では、横波の伝搬方向および振動方向を、矢印で表している。
【0009】
このように垂直横波探触子100では、水飴のような粘度の高い液状の接触媒質30を保護板2と試験体20との間に挟んだ状態で探傷することになる。しかしながら、接触媒質30は、単に挟んだだけでは、粘度が高いといっても液状物質であるので、横波は、殆ど試験体20中へ伝搬しない。そこで、横波を効率良く伝搬させるためには、保護板2と試験体20との接触状態を強固にする必要がある。なお、接触状態を強固にするということは、接着剤による固定に近い状態を意味している。
【0010】
保護板2と試験体20との接触状態を強固にするための簡単な方法は、探触子100を試験体20に所定の力で押し付けることである。
図6では、ケース4の上から探触子100を試験体20に押し付ける様子を示している。一定の力で押し付けると、保護板2に掛かる垂直応力が大きくなり、その結果、保護板2と試験体20との接触状態が強固となり、試験体20中へ横波が伝搬していく。試験体20へ伝搬した横波は、底面で反射され、底面エコーが受信されるようになる。なお、試験体20中にきずがある場合には、きずで反射されて受信されるエコーが存在することとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】(社)日本非破壊検査協会編、日刊工業新聞社発行、「新非破壊検査便覧」、260頁〜261頁、1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
従来の垂直横波探触子100では、これらのエコーを安定させるまでに時間が掛かるという課題があった。この課題について、
図7を参照しながら説明する。
図7の横軸は、探触子100を試験体20に置いた時刻を原点としている。押し付け力の初期値は、探触子100の自重となる。
【0013】
図7(a)に示すように、探触子100を試験体20へ押し付けると、押し付け力は時間経過とともに大きくなり、作業者の力加減により、ある一定の値で飽和することになる。なお、単に押し付けるだけではなく、探触子100を滑らせながら押し付ける方法が一般的に用いられている。探触子100を滑らせることにより、接触媒質30が薄くなり、接触状態を強固にすることに役立つからである。
【0014】
保護板2に掛かる圧縮応力は、
図7(b)に示すように、探触子100を押し付けると上昇し、その後、飽和する。従来の垂直横波探触子100は、圧縮応力の飽和レベルが小さいために、保護板2と試験体20との接触強度は、保護板2に掛かる圧縮応力が飽和レベルになっても、急には強固にならない。より具体的には、
図7(c)に示すように、探触子を押し付けている時間中に、徐々に大きくなっていく。そして、数分から数十分経過して、接触強度がある大きさで飽和状態となって安定し、エコーが安定する。
【0015】
以上説明したように、従来の垂直横波探触子でエコーを安定させるには、数分から数十分という時間を要していた。また、探触子100を滑らせながら試験体20へ押さえ付ける作業は、現場の作業者にとって大きな負担となっていた。
【0016】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、エコーを早期に安定させ、かつ現場の作業者に負担が掛からない垂直横波探触子を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る垂直横波探触子は、試験体に接触させ、電気信号によって駆動された横波の超音波を試験体中に伝搬させ、かつ、試験体中を伝搬した横波の超音波を電気信号に変換することで、試験体の超音波探傷を行う超音波横波探触子であって、超音波横波探触子の試験体と接触する面
には、
保護板が装備されており、前記保護板は、応力集中点となる形状の突起部を有して
おり、前記突起部から横波の超音波の送受信を行うものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る垂直横波探触子によれば、垂直横波探触子が試験体と接触する面に応力集中点となる形状の突起部を有し、探触子の自重だけでも従来よりも大きな圧縮応力を容易に発生させることのできる構成を備えることにより、エコーを早期に安定させ、かつ現場の作業者に負担が掛からない垂直横波探触子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態1における垂直横波探触子の構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における保護板と試験体との接触部分の拡大図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における経過時間に対する押し付け力、圧縮応力、および接触強度の変化を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施の形態1におけるアレイ探触子の保護板に突起がある場合の図である。
【
図5】本発明の実施の形態1におけるアレイ探触子の保護板に突起がある場合の図である。
【
図7】従来の垂直横波探触子における経過時間に対する押し付け力、保護板に掛かる圧縮応力、および保護板と試験体との接触強度の変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の垂直横波探触子の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0021】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における垂直横波探触子の構成図である。この
図1に示した本実施の形態1における垂直横波探触子10は、振動子1、保護板2、ダンパー3、およびケース4を備えて構成されている。また、
図3を用いて後に詳述するが、保護板2の試験体20に接触する面には、突起2aが設けられている。
【0022】
そして、垂直横波探触子10は、超音波探傷による検査対象である試験体20に対して、接触媒質30を介して、横波を伝搬させることとなる。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態1における保護板2と試験体20との接触部分の拡大図である。また、
図3は、本発明の実施の形態1における経過時間に対する押し付け力、圧縮応力、および接触強度の変化を説明するための図である。
【0024】
まず、本実施の形態1における探触子10の構成について、
図1、
図2を参照しながら説明する。振動子1の両側には、保護板2およびダンパー3がある。この構成は、先の
図6に示した従来の垂直横波探触子100と同じであり、ダンパー3がなくても構わない。従来の垂直横波探触子100と異なる点は、保護板2の試験体20に接触する面が、平坦でなく、突起2aが配列されている形状となっている点である。
【0025】
次に、本実施の形態1の探触子10の動作について説明する。従来と同様に、特別な治具を用いずに、人間の手で探触子10を扱う場合を例として説明する。従来の垂直横波探触子100と同様に、探傷器からの電気信号を振動子1に印加すると、振動子1は、振動する。ここで、本実施の形態1における探触子10は、横波探触子なので、
図1に示すように、振動子1の上面および下面では逆方向に振動する。その結果、せん断応力が発生し、横波となって保護板2およびダンパー3へ伝搬する。ダンパー3の方向で伝搬した横波は、ダンパー3の内部で減衰される。
【0026】
一方、保護板2の方向へ伝搬した横波は、接触媒質30を介して試験体20中へ伝搬する。この様子が、
図2中に示されている。本発明では、保護板2の表面が突起2aを配列した形状なので、突起2aの先端部分に圧縮応力が集中する。このため、探触子10の自重だけでも、大きな圧縮応力が突起2aの先端部分に掛かる。その結果、それ程大きな力で押さえ付けなくても、保護板2と試験体20との接触状態を強固にすることができる。
【0027】
すなわち、従来の垂直横波探触子100は、「面」で試験体20に押し付けていたのに対し、本発明の垂直横波探触子10は、「点」あるいは「線」で試験体20に押し付けて圧縮応力を集中させる点に技術的特徴がある。
【0028】
図1および
図2には、横波の伝搬方向および振動方向を併せて示している。試験体20へ伝搬した横波は、底面で反射され、底面エコーが受信される。なお、試験体20中にきずがある場合には、きずで反射されて受信されるエコーが存在する。
【0029】
これらのエコーを安定させる作業を、
図3を参照しながら説明する。
図3の横軸は、探触子10を試験体20に置いた時刻を原点としている。押し付け力の初期値は、探触子10の自重となる。
【0030】
本実施の形態1における探触子10は、保護板2に応力集中点となる突起2aが設けてあるので、
図3(b)に示すように、探触子10の自重だけでも大きな圧縮応力が発生する。また、押さえ付ける力も、従来の探触子100よりも小さな力で大きな圧縮応力が得られる。そして、大きな圧縮応力が得られると、
図3(c)に示すように、接触状態は、すぐに強固になる。このため、エコーが安定するまでに数秒で済む。
【0031】
なお、
図2では、横波の振動方向と突起2aの配列ピッチ方向が平行として説明した。この構成は、通常の垂直横波探触子でも有効であるが、特にアレイ探触子の場合に有効である。この理由を、
図4および
図5を参照しながら説明する。
図4および
図5は、本発明の実施の形態1におけるアレイ探触子の保護板に突起がある場合の図であり、振動子1a、1b、および1cが配列されている。なお、
図4および
図5では、接触媒質30を省略して示している。
【0032】
図4は、振動子1a、1b、および1cによる横波の振動方向(図では水平方向)と突起2aの配列ピッチ方向が平行な場合(すなわち、横波の振動方向と、突起2aの各1次元配列の方向とが平行ではなく垂直の場合)の図である。
図4に示すように、横波の振動方向と突起2aの配列ピッチ方向が平行な場合には、
図1および
図2と同じ状況となるので、上述した理由でエコーが早期に安定する。
【0033】
一方、
図5は、
図4の保護板2を90度回転させた場合の図であり、横波の振動方向と突起2aの配列ピッチ方向が平行ではなく、垂直となった場合(すなわち、横波の振動方向と、突起2aの各1次元配列の方向とが平行の場合)を示している。
図5のような状態になった場合、振動子1a、1b、および1cの直下に突起2aの先端部分があれば、上述した理由でエコーは早期に安定する。
【0034】
しかしながら、振動子1a、1b、および1cの直下に突起2aの先端部分がなければ、試験体20中に伝搬する横波は、弱いものとなる。このように、横波の振動方向と突起2aの配列ピッチ方向が垂直となった場合には、振動子1a、1b、および1cと突起2aの先端部の位置関係によっては、超音波の伝達効率が悪い探触子となってしまう可能性がある。横波の振動方向と突起2aの配列ピッチ方向を平行とする(すなわち、
図4に示したように、横波の振動方向と、突起2aの各1次元配列の方向とが垂直の関係を有する)ことで、効率を悪くすることなく、早期にエコーが安定する探触子を得ることができる。
【0035】
また、
図2、
図4、および
図5では、突起2aの先端が尖った形状として説明したが、突起2aの先端が曲率を有していても構わない。さらに、突起2aが矩形でも構わない。保護板2に応力集中点を設けることが本発明の特徴であり、突起2aの形状を限定するものではない。
【0036】
さらに、
図2、
図4、および
図5では、突起2aの配列を1次元として説明したが、2次元配列としても構わない。また、アレイ探触子の場合を除けば、ランダムに配列しても構わない。保護板2に応力集中点を設けることが本発明の特徴であり、突起の配列方法を限定するものではない。
【0037】
以上のように、実施の形態1によれば、垂直横波探触子の保護板に応力集中点を設けることで、エコーが安定するまでの時間が早くなるという効果を得ることができる。さらに、探触子を滑らせながら強く押さえ付ける作業を不要とすることができ、現場の作業者の負担を大幅に低減できるという効果も得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1、1a、1b、1c 振動子、2 保護板、2a 突起(突起部)、3 ダンパー、4 ケース、10 垂直横波探触子(探触子)、20 試験体、30 接触媒質。