(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1基板と、前記第1基板上に配置された磁気検出素子と、前記第1基板及び前記磁気検出素子上に形成された保護膜と、前記保護膜上に形成されたコイルと、を有する第1積層体と、
第2基板と、前記第2基板上に形成されたシールド層と、を有する第2積層体と、を有し、
前記1基板の前記磁気検出素子が設けられた面と前記2基板の前記シールド層が設けられた面とが対向した状態で、前記第1積層体と前記第2積層体の間に接着層が介在していることを特徴とする電流センサ。
前記第1基板表面には酸化アルミニウム層が形成され、前記磁気検出素子は、前記酸化アルミニウム層表面に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電流センサ。
第1基板上に磁気検出素子を配置するとともに電極を形成し、前記第1基板及び前記磁気検出素子上に保護膜を形成し、前記保護膜上にコイルを形成して第1積層体を形成する工程と、
第2基板上にシールド層を形成し、前記シールド層をマスクとして前記第2基板をエッチングして、前記第2基板における前記シールド層が形成されていない領域の厚さを、前記シールド層が形成された領域の厚さよりも薄くして第5積層体を形成する工程と、
前記第1積層体上に、前記電極表面を露出させるように接着層を形成し、前記磁気検出素子と前記シールド層とが対向するように前記接着層を介して前記第1積層体と前記第5積層体とを貼り合わせる工程と、
前記シールド層が形成されていない領域の前記第2基板を研磨により除去する工程と、を含むことを特徴とする電流センサの作製方法。
前記第1基板表面に酸化アルミニウム層を形成し、前記磁気検出素子を、前記酸化アルミニウム層表面に配置することを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載の電流センサの作製方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10Aに示す電流センサ100においては、複数のコイル106上にシールド層108を形成するために、コイル106上に保護膜107(絶縁膜)を形成し、この保護膜107上にシールド層108を形成する必要がある。また、被測定磁界をシールドし、コイル106のキャンセル効果を強化するというシールド層108の効果を高めるために、保護膜107を薄膜化して、コイル106とシールド層108との距離を近づける必要がある。
【0007】
しかしながら、保護膜107を薄膜化すると、コイル106の形状が反映されて保護膜107の上面(シールド層108の下面)が波打ってしまうという問題があった(
図10B参照)。また、保護膜107を薄膜化すると、シールド層108の応力により、保護膜107にクラックが生じやすいという問題があった。このクラックを介して、湿気などの吸水により磁気検出素子104が腐食すると、電流センサ100の信頼性に影響を及ぼしてしまう。
【0008】
さらには、
図10Aに示す電流センサ100において、シールド層108の応力による基板101の反りを防ぐために、基板101上に応力緩和層102を設ける必要があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、シールド層の応力によるクラックの発生や基板の反りを防ぎ、信頼性、線形性及びヒステリシスの良好な電流センサ及びその作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電流センサは、第1基板と、前記第1基板上に配置された磁気検出素子と、前記第1基板及び前記磁気検出素子上に形成された保護膜と、前記保護膜上に形成されたコイルと、を有する第1積層体と、第2基板と、前記第2基板上に形成されたシールド層と、を有する第2積層体と、を有し、
前記1基板の前記磁気検出素子が設けられた面と前記2基板の前記シールド層が設けられた面とが対向した状態で、前記第1積層体と前記第2積層体
の間に接着層が介在していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電流センサは、第1基板と、前記第1基板上に配置された磁気検出素子と、を有する第3積層体と、第2基板と、前記第2基板上に形成されたシールド層と、前記第2基板及び前記シールド層上に形成された保護膜と、前記保護膜上に形成されたコイルと、を有する第4積層体と、を有し、
前記1基板の前記磁気検出素子が設けられた面と前記2基板の前記シールド層が設けられた面とが対向した状態で、前記第3積層体と前記第4積層体
の間に接着層が介在していることを特徴とする。
【0012】
この電流センサによれば、第2積層体(第4積層体)において、第2基板(第4基板)上に形成されたシールド層の上面はフラットに構成されている。電流センサにおいて、シールド層のフラットな上面側を磁気検出素子に近づけて配置することにより、電流センサの線形性及びヒステリシスを良好にすることが可能となる。
【0013】
また、この電流センサによれば、磁気検出素子が配置される基板(第1基板、第3基板)と、シールド層が形成される基板(第2基板、第4基板)とが別の基板であるため、第2基板(第4基板)に形成したシールド層の下面エッジにクラックが発生した場合には、その基板を電流センサに使用しないよう選択することが可能となる。これにより、電流センサにおけるシールド層の下面エッジに発生するクラックを防止し、電流センサの信頼性を向上することが可能となる。
【0014】
さらに、この電流センサによれば、第1基板(第3基板)上にシールド層を形成していないため、シールド層の応力により第1基板(第3基板)が反ることがない。したがって、第1基板(第3基板)上に応力緩和層を設ける必要がなく、工程を簡素化することができる。さらに、応力緩和層を形成するための材料費を削減することが可能となる。
【0015】
このように、この電流センサによれば、シールド層の応力によるクラックの発生や基板の反りを防ぎ、信頼性、線形性及びヒステリシスの良好な電流センサを実現できる。
【0016】
上記電流センサにおいて、前記第1基板表面には酸化アルミニウム層が形成され、前記磁気検出素子は、前記酸化アルミニウム層表面に配置されていることが好ましい。
【0017】
本発明の電流センサの作製方法は、第1基板上に磁気検出素子を配置し、前記第1基板及び前記磁気検出素子上に保護膜を形成し、前記保護膜上にコイルを形成して第1積層体を形成する工程と、第2基板上にシールド層を形成して第2積層体を形成する工程と、前記磁気検出素子と前記シールド層とが対向するように前記第1積層体と前記第2積層体とを接着層を介して貼り合わせる工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の電流センサの作製方法は、第1基板上に磁気検出素子を配置して第3積層体を形成する工程と、第2基板上にシールド層を形成し、前記第2基板及び前記シールド層上に保護膜を形成し、前記保護膜上にコイルを形成して第4積層体を形成する工程と、前記磁気検出素子と前記シールド層とが対向するように前記第3積層体と前記第4積層体とを接着層を介して貼り合わせる工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の電流センサの作製方法は、第1基板上に磁気検出素子を配置するとともに電極を形成し、前記第1基板及び前記磁気検出素子上に保護膜を形成し、前記保護膜上にコイルを形成して第1積層体を形成する工程と、第2基板上にシールド層を形成し、前記シールド層をマスクとして前記第2基板をエッチングして、前記第2基板における前記シールド層が形成されていない領域の厚さを、前記シールド層が形成された領域の厚さよりも薄くして第5積層体を形成する工程と、前記第1積層体上に、前記電極表面を露出させるように接着層を形成し、前記磁気検出素子と前記シールド層とが対向するように前記接着層を介して前記第1積層体と前記第5積層体とを貼り合わせる工程と、前記シールド層が形成されていない領域の前記第2基板を研磨により除去する工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
上記電流センサの作製方法において、前記第1基板表面に酸化アルミニウム層を形成し、前記磁気検出素子を、前記酸化アルミニウム層表面に配置してもよい。
【発明の効果】
【0021】
電流センサにおいて、シールド層の応力によるクラックの発生や基板の反りを防ぎ、信頼性、線形性及びヒステリシスを良好にできる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る電流センサ10を示す断面模式図である。
図1に示すように、電流センサ10は、基板11上に設けられた酸化アルミニウム層12と、酸化アルミニウム層12上に配置された複数の磁気検出素子13及び電極14と、酸化アルミニウム層12及び複数の磁気検出素子13上にこれら磁気検出素子13を覆うように設けられた保護膜15と、保護膜15上に配置された複数のコイル16と、複数のコイル16の上方に配置されたシールド層17と、保護膜15及び複数のコイル16を覆い、シールド層17の周囲を囲むように設けられた接着層18と、シールド層17及び接着層18上に設けられた基板19と、を含んで構成される。電極14は、基板19及び接着層18に設けられたコンタクトホール20により、開放されている。
【0024】
このような電流センサ10は、磁気検出素子13を有する積層体A(
図2A参照)とシールド層17を有する積層体B(
図2B参照)とを、接着層18を介して貼り合わせることにより作製される。
【0025】
以下、第1の実施の形態に係る電流センサ10の作製方法について
図3から
図5に基づいて説明する。
図3は、磁気検出素子13を有する積層体Aの作製方法を説明する図である。
図4は、シールド層17を有する積層体Bの作製方法を説明する図である。
図5は、積層体A及び積層体Bを貼り合わせる電流センサ10の作製方法を説明する図である。
【0026】
まず、
図2Aに示す積層体Aの作製方法について、
図3を参照して説明する。最初に、基板11上に酸化アルミニウム層12を形成する(
図3A参照)。基板11としては、たとえば、シリコン基板を使うことができる。酸化アルミニウム層12は、たとえば、スパッタリング法により成膜できる。
【0027】
続いて、酸化アルミニウム層12上に磁気検出素子13を配置し、電極14を形成する(
図3B参照)。磁気検出素子13としては、TMR素子(トンネル型磁気抵抗効果素子)や、GMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)などを用いることができる。電極14は、電極材料を成膜した後に、フォトリソグラフィ及びエッチングを施すことにより形成することができる。
【0028】
続いて、酸化アルミニウム層12及び磁気検出素子13上に、保護膜15を形成する(
図3C参照)。保護膜15は、その厚さが酸化アルミニウム層12上に配置された電極14の厚さと略同一となるように形成される。すなわち、保護膜15及び電極14の上面は、同一平面となる(電極14の上面が露出する)ように構成される。保護膜15としては、ポリイミド膜を適用できる。ポリイミド膜は、ポリイミド材料を塗布し、硬化することにより形成することができる。
【0029】
続いて、保護膜15上にコイル16を形成する(
図3D参照)。これにより、積層体Aが完成する。コイル16は、コイル材料を成膜した後に、フォトリソグラフィ及びエッチングを施すことにより形成することができる。あるいは、コイル16は、下地材料を成膜した後に、フォトリソグラフィ及びめっきを施すことにより形成することができる。
【0030】
次に、
図2Bに示す積層体Bの作製方法について、
図4を参照して説明する。まず、基板19上にシールド層17のパターン形状を考慮したレジストパターン21を形成する(
図4A参照)。基板19としては、基板11と同様に、たとえば、シリコン基板を使うことができる。
【0031】
続いて、基板19上にめっき法によりシールド層17を形成した後(
図4B参照)、レジストパターン21を除去する(
図4C参照)。これにより、積層体Bが完成する。シールド層17は、めっき法により15μm以上の厚さに形成する。
【0032】
図4Cに示すように、基板19表面には微小な凹凸が存在している。したがって、基板19上に形成されたシールド層17の下面部には、基板19表面の凹凸を反映して凹凸が形成される。一方、基板19上に形成されたシールド層17の露出する上面部は、シールド層17の厚みによって凹凸が均されてフラットな面となる。なお、便宜上、
図4C以外の図面において、基板19表面は、フラットな面として描いている。
【0033】
シールド層17形成後、シールド層17の組成をSEMにより分析し、シールド層17において所望の組成が得られているかを判定する(シールド層17の良・不良判定)ことが好ましい。また、シールド層17の応力によって、シールド層17の下面エッジにクラックが発生していないかを判定することが好ましい。そして、電流センサ10を構成する積層体Bとしては、シールド層17において所望の組成が得られており、かつ、シールド層17の下面エッジにクラックが発生していないものを選択して使用することが好ましい。
【0034】
次に、得られた積層体A及び積層体Bを貼り合わせることによる電流センサ10の作製方法について、
図5を参照して説明する。まず、積層体Aの電極14、保護膜15及びコイル16上に接着層18を構成する接着剤を塗布し、シールド層17とコイル16とが対向するように、積層体Bを貼り合わせる。積層体A及び積層体Bの接着に際しては、アライメントマーカーを利用して、積層体Aにおける磁気検出素子13と、積層体Bにおけるシールド層17との位置を合わせて接着を行う。また、積層体Aにおけるコイル16と積層体Bにおけるシールド層17との対向する面間の距離が、5μm以下となるように、接着剤の塗布量を制御する。
【0035】
その後、接着剤を硬化させることにより、積層体Aと積層体Bとが接着層18を介して積層される(
図5A参照)。接着層18を構成する接着剤としては、積層体A,Bを構成する各部材への温度上昇によるダメージを抑制するために、低温で熱硬化するポリイミドなどのポリマー製の接着剤を用いることが適している。また、接着層18を構成する材料としては、保護膜15を構成する材料と相性の良い材料を用いることが好ましい。
【0036】
続いて、上下の基板11,19を研磨した後(
図5B参照)、ダイシングなどによって電極14へのコンタクトホール20を形成する(
図5C参照)。これにより、
図1に示した電流センサ10が完成する。
【0037】
このように、積層体A及び積層体Bを貼り合わせて電流センサ10を作製することにより、積層体Bにおけるシールド層17の上面側が、積層体Aにおける磁気検出素子13に近づいて配置される構成となる。積層体Bにおけるシールド層17は、基板19側に形成される初期層よりも上面側のほうが組成制御しやすい。このように組成制御しやすいシールド層17の上面側を磁気検出素子13に近づけて配置することにより、電流センサ10の線形性及びヒステリシスを良好にすることが可能となる。
【0038】
また、積層体A及び積層体Bを貼り合わせて電流センサ10を作製することにより、シールド層17を、コイル16上に形成された保護膜上に直接形成することなく、電流センサ10を作製することができる。したがって、コイル16上に形成された保護膜の上面が波打つことに伴って、シールド層17の下面も波打つことを避けることができる。さらに、薄膜化した保護膜上に直接シールド層17を形成しないため、シールド層17の応力によって保護膜にクラックが発生することを避けることができる。
【0039】
また、電流センサ10において、積層体Bにおけるシールド層17の上面部はフラットな面で構成されている。電流センサ10において、シールド層17のフラットな上面側を磁気検出素子13に近づけて配置することにより、電流センサ10の線形性及びヒステリシスを良好にすることが可能となる。
【0040】
一方、積層体Bにおけるシールド層17の基板19に接する下面部は凹凸を有する面で構成されている。したがって、電流センサ10において、コイル16側のシールド層17表面はフラットな面で構成され、基板19側のシールド層17表面は凹凸を有する面で構成される。
【0041】
さらに、電流センサ10において、積層体Aにおける、基板11、磁気検出素子13や、積層体Bにおける、基板19、シールド層17として、特性のよいものを選択して使用している。これにより、従来の電流センサのように基板11から順にシールド層17まで積層して電流センサを作製する場合と比較して、電流センサ10の歩留まりを向上することが可能となる。すなわち、従来の電流センサにおいては、基板11から順に積層していき、最後にシールド層17を形成した段階で不良が発生すると、電流センサ全体が不良となってしまう。これに対して、電流センサ10においては、シールド層17を形成した段階で不良が発生したとしても、積層体Bが不良となるのみなので、電流センサ10の歩留まりを向上できる。
【0042】
さらに、電流センサ10において、積層体Bにおけるシールド層17の下面エッジにクラックが発生した場合には、その積層体Bは貼り合わせには使用していない。これにより、電流センサ10におけるシールド層17の下面エッジに発生するクラックを防止し、電流センサ10の信頼性を向上することが可能となる。
【0043】
また、電流センサ10においては、基板11上にシールド層17をめっき法により直接形成していないため、シールド層17の応力により基板11が反ることがない。したがって、基板11上に応力緩和層を設ける必要がなく、工程を簡素化することができる。さらに、応力緩和層を形成するための材料費を削減することが可能となる。
【0044】
このように、本実施の形態に係る電流センサ10によれば、シールド層17の応力によるクラックの発生や基板11の反りを防ぎ、信頼性、線形性及びヒステリシスの良好な電流センサを実現できる。
【0045】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態で示した電流センサ10とは異なる作製方法の電流センサ30について説明する。第2の実施の形態に係る電流センサ30の作製方法は、磁気検出素子13を有する積層体A2側にコイル16が含まれず、シールド層17を有する積層体B2側にコイル16が含まれる点において、第1の実施の形態に係る電流センサ10の作製方法と相違する。
【0046】
以下、第2の実施の形態に係る電流センサ30の作製方法について
図6から
図8に基づいて説明する。
図6は、磁気検出素子13を有する積層体A2の作製方法を説明する図である。
図7は、シールド層17を有する積層体B2の作製方法を説明する図である。
図8は、積層体A2及び積層体B2を貼り合わせる電流センサ30の作製方法を説明する図である。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態に係る電流センサ10の作製方法と共通する構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0047】
まず、積層体A2の作製方法について、
図6を参照して説明する。最初に、基板11上に酸化アルミニウム層12を形成する(
図6A参照)。続いて、酸化アルミニウム層12上に磁気検出素子13を配置し、電極14を形成する(
図6B参照)。これにより、積層体A2が完成する。
【0048】
次に、積層体B2の作製方法について、
図7を参照して説明する。まず、基板19上にシールド層17のパターン形状を考慮したレジストパターン21を形成する(
図7A参照)。続いて、基板19上にめっき法によりシールド層17を形成した後(
図7B参照)、レジストパターン21を除去する(
図7C参照)。
【0049】
続いて、基板19及びシールド層17上に、保護膜31を形成する(
図7D参照)。保護膜31は、その厚さがシールド層17の上面から5μm以下となるように形成される。保護膜31としては、ポリイミド膜を適用できる。ポリイミド膜は、ポリイミド材料を塗布し、硬化することにより形成することができる。
【0050】
続いて、保護膜31上にコイル16を形成する(
図7E参照)。これにより、積層体B2が完成する。
【0051】
次に、得られた積層体A2及び積層体B2を貼り合わせることによる電流センサ30の作製方法について、
図8を参照して説明する。まず、積層体A2の酸化アルミニウム層12及び磁気検出素子13上に接着層32を構成する接着剤を塗布し、コイル16と磁気検出素子13とが対向するように、積層体B2を貼り合わせる。積層体A2及び積層体B2の接着に際しては、アライメントマーカーを利用して、積層体A2における磁気検出素子13と、積層体B2におけるシールド層17との位置を合わせて接着を行う。
【0052】
その後、接着剤を硬化させることにより、積層体A2と積層体B2とが接着層32を介して積層される(
図8A参照)。
【0053】
続いて、上下の基板11,19を研磨した後(
図8B参照)、ダイシングなどによって電極14へのコンタクトホール20を形成する(
図8C参照)。これにより、電流センサ30が完成する。
【0054】
このように、積層体A2及び積層体B2を貼り合わせて電流センサ30を作製することにより、積層体B2におけるシールド層17の上面側が、積層体A2における磁気検出素子13に近づいて配置される構成となる。積層体B2におけるシールド層17は、基板19側に形成される初期層よりも上面側のほうが組成制御しやすい。このように組成制御しやすいシールド層17の上面側を磁気検出素子13に近づけて配置することにより、電流センサ30の線形性及びヒステリシスを良好にすることが可能となる。
【0055】
また、積層体A2及び積層体B2を貼り合わせて電流センサ30を作製することにより、シールド層17を、コイル16上に形成された保護膜上に直接形成することなく、電流センサ10を作製することができる。したがって、コイル16上に形成された保護膜の上面が波打つことに伴って、シールド層17の下面も波打つことを避けることができる。さらに、薄膜化した保護膜上に直接シールド層17を形成しないため、シールド層17の応力によって保護膜にクラックが発生することを避けることができる。
【0056】
また、電流センサ30において、積層体B2におけるシールド層17の上面部はフラットな面で構成されている。電流センサ30において、シールド層17のフラットな上面側を磁気検出素子13に近づけて配置することにより、電流センサ30の線形性及びヒステリシスを良好にすることが可能となる。
【0057】
一方、積層体B2におけるシールド層17の基板19に接する下面部は凹凸を有する面で構成されている。したがって、電流センサ30において、コイル16側のシールド層17表面はフラットな面で構成され、基板19側のシールド層17表面は凹凸を有する面で構成される。
【0058】
また、電流センサ30においては、基板11上にシールド層17をめっき法により直接形成していないため、シールド層17の応力により基板11が反ることがない。したがって、基板11上に応力緩和層を設ける必要がなく、工程を簡素化することができる。さらに、応力緩和層を形成するための材料費を削減することが可能となる。
【0059】
このように、本実施の形態に係る電流センサ30によれば、シールド層17の応力によるクラックの発生や基板11の反りを防ぎ、信頼性、線形性及びヒステリシスの良好な電流センサを実現できる。
【0060】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態で示した電流センサ10とは異なる作製方法の電流センサ40について説明する。第3の実施の形態に係る電流センサ40の作製方法は、電極14を開放するためのコンタクトホール20の作製方法が、第1の実施の形態に係る電流センサ10の作製方法と相違する。
【0061】
以下、第3の実施の形態に係る電流センサ40の作製方法について
図9に基づいて説明する。なお、第3の実施の形態において、第1の実施の形態に係る電流センサ10の作製方法と共通する構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
電流センサ40においては、磁気検出素子13を有する積層体として、第1の実施の形態に係る積層体A(
図2A参照)と同一の積層体を使用する。一方、シールド層17を有する積層体としては、第1の実施の形態に係る積層体B(
図2B参照)とは構成が異なる積層体B3を使用する。
【0063】
積層体B3は、第1の実施の形態に係る積層体Bから、さらに、シールド層17をマスクとして基板19をエッチングして作製される。これにより、基板19のうち、シールド層17が配置されていない部分19aの厚さは、シールド層17が配置されている部分19bの厚さに比べて、薄く構成される(
図9A参照)。
【0064】
続いて、積層体A及び積層体B3を貼り合わせて電流センサ40を作製する。まず、積層体Aの保護膜15及びコイル16上に接着層41を構成する接着剤を塗布する。このとき、電極14上には接着層41を形成しないように構成する。たとえば、接着剤を塗布する際に電極14上をマスクしておいてもよいし、接着剤を塗布した後に電極14上の接着剤を除去してもよい。
【0065】
そして、シールド層17とコイル16とが対向するように、積層体Aに積層体B3を貼り合わせる。積層体A及び積層体B3の接着に際しては、アライメントマーカーを利用して、積層体Aにおける磁気検出素子13と、積層体B3におけるシールド層17との位置を合わせて接着を行う。また、積層体Aにおけるコイル16と積層体B3におけるシールド層17との対向する面間の距離が、5μm以下となるように、接着剤の塗布量を制御する。
【0066】
その後、接着剤を硬化させることにより、積層体Aと積層体B3とが接着層41を介して積層される(
図9B参照)。
【0067】
続いて、上下の基板11,19を研磨する。このとき、基板19においては、エッチングされた部分19aがすべて無くなるまで研磨することで、基板19を研磨すると同時にコンタクトホール20が形成される(
図9C参照)。これにより、電流センサ40が完成する。
【0068】
このように、積層体A及び積層体B3を貼り合わせて電流センサ40を作製することにより、積層体B3におけるシールド層17の上面側が、積層体Aにおける磁気検出素子13に近づいて配置される構成となる。積層体B3におけるシールド層17は、基板19側に形成される初期層よりも上面側のほうが組成制御しやすい。このように組成制御しやすいシールド層17の上面側を磁気検出素子13に近づけて配置することにより、電流センサ40の線形性及びヒステリシスを良好にすることが可能となる。
【0069】
また、積層体A及び積層体B3を貼り合わせて電流センサ40を作製することにより、シールド層17を、コイル16上に形成された保護膜上に直接形成することなく、電流センサ40を作製することができる。したがって、コイル16上に形成された保護膜の上面が波打つことに伴って、シールド層17の下面も波打つことを避けることができる。さらに、薄膜化した保護膜上に直接シールド層17を形成しないため、シールド層17の応力によって保護膜にクラックが発生することを避けることができる。
【0070】
また、電流センサ40において、積層体B3におけるシールド層17の上面部はフラットな面で構成されている。電流センサ40において、シールド層17のフラットな上面側を磁気検出素子13に近づけて配置することにより、電流センサ40の線形性及びヒステリシスを良好にすることが可能となる。
【0071】
一方、積層体B3におけるシールド層17の基板19に接する下面部は凹凸を有する面で構成されている。したがって、電流センサ40において、コイル16側のシールド層17表面はフラットな面で構成され、基板19側のシールド層17表面は凹凸を有する面で構成される。
【0072】
また、電流センサ40においては、基板11上にシールド層17をめっき法により直接形成していないため、シールド層17の応力により基板11が反ることがない。したがって、基板11上に応力緩和層を設ける必要がなく、工程を簡素化することができる。さらに、応力緩和層を形成するための材料費を削減することが可能となる。
【0073】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【0074】
たとえば、上記実施の形態においては、シールド層17をめっき法により形成する場合について説明しているが、シールド層17を形成する方法についてはこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。たとえば、シールド層17は、スパッタリング法により形成することもできる。