(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909823
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】複合部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21F 19/00 20060101AFI20160414BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
B21F19/00 Z
B22F7/04 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-68305(P2012-68305)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-198922(P2013-198922A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】黒田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】塚田 章一
(72)【発明者】
【氏名】大神 周併
(72)【発明者】
【氏名】向井 聡史
【審査官】
石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−289616(JP,A)
【文献】
特開平04−126561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材の外周面に表面部材が固着された複合部材の製造方法であって、
導電性材料からなる芯材の外周面に、前記芯材よりも磁性が低い表面部材を配設する表面部材配設ステップと、
前記表面部材の外側から前記芯材を電磁誘導加熱し、加熱された前記芯材の熱によって前記表面部材における前記芯材との対向領域を溶融させて、前記芯材の外周面に配設される前記表面部材の外表面形状を熱溶解によって損なうことなく、前記表面部材を前記芯材に融着させる融着ステップとを備え、
前記表面部材配設ステップは、線材からなる表面部材を前記芯材の外周面に巻回することにより、前記芯材の外周面を前記表面部材で被覆する被覆ステップを備える複合部材の製造方法。
【請求項2】
芯材の外周面に表面部材が固着された複合部材の製造方法であって、
導電性材料からなる芯材の外周面に、前記芯材よりも磁性が低い表面部材を配設する表面部材配設ステップと、
前記表面部材の外側から前記芯材を電磁誘導加熱し、加熱された前記芯材の熱によって前記表面部材における前記芯材との対向領域を溶融させて、前記芯材の外周面に配設される前記表面部材の外表面形状を熱溶解によって損なうことなく、前記表面部材を前記芯材に融着させる融着ステップとを備え、
前記表面部材配設ステップは、粒状或いは繊維状の表面部材を前記芯材の外周面に吹き付けることにより、前記芯材の外周面を前記表面部材で被覆する被覆ステップを備える複合部材の製造方法。
【請求項3】
前記表面部材の融点は、前記芯材の融点よりも低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合部材の製造方法。
【請求項4】
前記芯材は、中心部分と表面部分とを備えており、電磁誘導加熱された前記芯材の熱によって前記芯材の前記表面部分を溶融させて、前記表面部材を前記芯材に融着させることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合部材の製造方法。
【請求項5】
前記表面部材配設ステップの前段階として、前記芯材の融点よりも低い融点を有する接着剤を前記芯材の外周面に塗布する接着剤層形成ステップを備える請求項1から4のいずれかに記載の複合部材の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤層形成ステップは、前記芯材の外周面に塗布された接着剤を乾燥させる乾燥ステップを備える請求項5に記載の複合部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部材の製造方法に関する。特に芯材の外周面に表面部材を固着して製造される複合部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芯材となる部材の外表面に、芯材とは異なる材料により形成される被覆層を施して製造される種々の複合部材からなる器具が知られている。例えば、血管内治療に使用される医療用ガイドワイヤーや、放電加工に用いられる電極線、断熱配管等種々のものが知られている。
【0003】
血管内治療に使用される医療用ガイドワイヤーは、金属製の線状芯材の表面を樹脂によって被覆し、かつ樹脂の表面には親水性処理を施して製造される(例えば特許文献1)。芯材の表面を樹脂で被覆する手法としては種々のものを採用することができるが、例えば、高温下で液体状に生成した樹脂が貯留される貯留槽内に線状芯材を浸漬した後、冷却することにより線状芯材の表面に樹脂層を形成する方法が知られている。
【0004】
ワイヤ放電加工用電極線は、例えば、Cu合金からなる芯材の周りに、Cu−Zn合金層を被覆して製造される(例えば特許文献2)。芯材の表面にCu−Zn合金層を形成する手法としては、芯材の表面にZnメッキを施す方法が知られている。
【0005】
断熱配管としては、種々の形態のものが存在するが、例えば、放熱を防止しつつ液体を供給する際に用いられる断熱配管は、金属製の配管の外周面にシート状の断熱材を巻き付けて製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−125628号公報
【特許文献2】特開平5−339664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、芯材となる部材の外表面に、芯材とは異なる材料により形成される被覆層を施して所望の複合部材を製造する方法は種々案出されている。本発明は、これらのような製造方法とは全く異なる新規な製造方法、特に、芯材の外周面に表面部材を固着して製造される複合部材の新規な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、芯材の外周面に表面部材が固着された複合部材の製造方法であって、導電性材料からなる芯材の外周面に、前記芯材よりも磁性が低い表面部材を配設する表面部材配設ステップと、前記表面部材の外側から前記芯材を電磁誘導加熱し、加熱された前記芯材の熱によって前記表面部材
における前記芯材との対向領域
を溶融させて、
前記芯材の外周面に配設される前記表面部材の外表面形状を熱溶解によって損なうことなく、前記表面部材を前記芯材に融着させる融着ステップとを備え
、前記表面部材配設ステップは、線材からなる表面部材を前記芯材の外周面に巻回することにより、前記芯材の外周面を前記表面部材で被覆する被覆ステップを備える複合部材の製造方法により達成される。
或いは、芯材の外周面に表面部材が固着された複合部材の製造方法であって、導電性材料からなる芯材の外周面に、前記芯材よりも磁性が低い表面部材を配設する表面部材配設ステップと、前記表面部材の外側から前記芯材を電磁誘導加熱し、加熱された前記芯材の熱によって前記表面部材における前記芯材との対向領域を溶融させて、前記芯材の外周面に配設される前記表面部材の外表面形状を熱溶解によって損なうことなく、前記表面部材を前記芯材に融着させる融着ステップとを備え、前記表面部材配設ステップは、粒状或いは繊維状の表面部材を前記芯材の外周面に吹き付けることにより、前記芯材の外周面を前記表面部材で被覆する被覆ステップを備える複合部材の製造方法により達成される。
【0009】
このような複合部材の製造方法によれば、溶融させる部分が
、表面部材における芯材との対向領
域であるため、表面部材の外表面の形状を熱溶解によって損なうこと無く当該表面部材を芯材の外周面上に確実に融着固定させることが可能となる。また、芯材の外周面上に表面部材を配置する段階において、液体状に生成することが困難な材料を表面部材として選択する場合であっても、線材状或いは粒子状等の形態に表面部材を形成することにより、このような表面部材を芯材の外周面上に融着させることが可能となる。
【0010】
この複合部材の製造方法において、前記表面部材の融点は、前記芯材の融点よりも低いことが好ましい。
【0011】
このように、芯材の外周面に配設される表面部材を、芯材に用いられる材料の融点よりも低い材料により構成することにより、電磁誘導加熱される芯材の熱によって、前記表面部材における前記芯材との対向領域を芯材よりも先に溶融させることが可能となるため、芯材の形状を熱溶解によって損なうことなく、表面部材のみを確実に溶解させて、当該表面部材を芯材の外周面上に融着固定させることが可能となる。
【0012】
また、本発明の上記目的は、前記芯材が、中心部分と表面部分とを備えており、電磁誘導加熱された前記芯材の熱によって前記芯材の前記表面部分を溶融させて、前記表面部材を前記芯材に融着させることが好ましい。
【0013】
このような複合部材の製造方法によれば、熱溶解させる部分が、芯材における表面部材との対向領域に相当する芯材の表面部分であるため、表面部材の外表面の形状を熱溶解によって損なうこと無く当該表面部材を芯材の外周面上に確実に融着固定させることが可能となる。
【0014】
また、前記表面部材配設ステップの前段階として、前記芯材の融点よりも低い融点を有する接着剤を前記芯材の外周面に塗布する接着剤層形成ステップを備えることが好ましい。
【0015】
このように、芯材の融点よりも低い融点を有する接着剤を芯材の外周面に塗布した後に、表面部材を芯材の外周面に配設して、表面部材の外側から芯材を電磁誘導加熱することにより、例えば、表面部材として、芯材の融点よりも低い融点を有する部材を用いると共に、接着剤層形成手段において用いられる接着剤として、接着剤の融点が、表面部材の融点と略同等以下のものを採用した場合、芯材を加熱することにより、表面部材における芯材との対向領域及び表面部材と芯材との間に介在する接着剤を溶解させることができ、表面部材をより一層強固に芯材に固着することができる。具体的に説明すると、表面部材として、芯材の外周面に螺旋状に巻回して配置される線材や、或いは、吹き付けることにより芯材の外周面に配置される粒状或いは繊維状の部材を使用する場合には、溶解した接着剤が、隣接して配置される線材や粒状の部材の隙間に進入することになるため、確実に表面部材を芯材に固着させることが可能となる。
【0016】
また、前記接着剤層形成ステップは、前記芯材の外周面に塗布された接着剤を乾燥させる乾燥ステップを備えることが好ましい。
【0017】
このように、表面部材を芯材の外周面に配設する前段階において、芯材の外周面に塗布した接着剤を乾燥させることにより、接着剤の接着力が失われた状態で表面部材を芯材の外周面に配設することが可能となる。接着剤の接着力が存在する状況下、つまり、接着剤が乾燥していない状態でも表面部材を芯材の外周面上に配設してもよいが、接着剤が乾燥しておらず、接着剤が液体状或いは半液体状の状態で表面部材を芯材の外周面に配設する場合、配設された表面部材の周りから液体状(或いは半液体状)の接着剤が浸み出て、最終的に得られる複合部材の外表面に接着剤が残ってしまうおそれがある。或いは、液体状(或いは半液体状)の接着剤が芯材の外周面上に沿って流動し、接着剤が芯材の外周面上に均一に分布しなくなるおそれがある。このような場合に電磁誘導加熱を行うと、例えば、接着剤及び/又は表面部材における芯材との対向領域を溶融させて、表面部材を芯材に固着する際に、接着剤が薄く芯材表面に塗布されている部分における表面部材と芯材との固着力が低下する恐れがある。一方、表面部材を芯材の外周面に配設する前段階において、芯材の外周面に塗布した接着剤を乾燥させた後に、表面部材を芯材の外周面に配設する場合には、上述したような事態(接着剤の浸出や、接着剤の不均一分布)が発生することを効果的に防止することができ、最終的に得られる複合部材の外表面に接着剤が残ってしまったり、表面部材と芯材との固着力が低下する部分が発生することを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、芯材の外周面に表面部材を固着して製造される複合部材の新規な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複合部材の製造方法の工程を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係る製造方法により製造される複合部材の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る複合部材の製造方法が備える表面部材配設ステップにおいて用いられるカバリング装置を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る複合部材の製造方法が備える融着ステップにおいて用いられる電磁誘導加熱装置を示す概略構成図である。
【
図5】本発明に係る複合部材の製造方法において使用される芯材の例を示す概略構成断面図である。
【
図6】
図5に示す芯材の他の例を示す概略構成断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る複合部材の製造方法の工程を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態にかかる芯材の外周面に表面部材を固着して製造される複合部材の製造方法について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る複合部材1の製造方法の工程を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明に係る複合部材1の製造方法は、前処理ステップS1と、当該前処理ステップS1の後工程である表面部材配設ステップS2と、当該表面部材配設ステップS2の後工程である融着ステップS3とを備えている。
【0022】
ここで、本発明に係る製造方法により製造される複合部材1は、
図2の断面図に示すように、コアとなる芯材11と、芯材11の外周面に固着される表面部材12とを備えている。なお、
図2の断面図は、複合部材1の軸心に沿って切断した断面図を表している。芯材11は、導電性材料からなる部材である。芯材11の形状には特に限定はなく、棒状や線材状、円柱状、中空円筒状等、種々の形状を採用することができる。また、芯材11としては、その機能に応じて単一の材料から構成されるものであってもよく、或いは、複数の材料から構成されるものであってもよい。複数の材料から構成される芯材11としては、例えば、2種類の線材状の金属部材を撚ったものや、線材状の金属部材及び線材状の樹脂部材を撚ったもの、中心部分と表面部分とが異なる材料から形成されているもの(二層構造のもの、例えば、金属からなる中心部分の外表面に熱硬化性樹脂をコーティングして表面部分を構成したような部材)等、種々の構成を採用することができる。芯材11を複数の材料から構成する場合には、少なくとも一種類の材料が電気を通しやすい材料とし、芯材11全体として導電性を備えるように構成する。
【0023】
表面部材12は、芯材11よりも磁性が低い材料から形成されている。芯材11よりも磁性が低い材料とは、芯材11よりも磁性が弱い材料の他、磁性が無い材料を含む概念である。この表面部材12は、電気を通しやすい材料によって形成してもよく、あるいは、電気を通さない材料によって形成してもよい。表面部材12としては、例えば、鉄やステンレス等の金属材料から形成してもよく、或いは、合成樹脂材料から形成してもよい。合成樹脂材料としては、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を好適に例示できる。表面部材12の形状も特に限定はなく、芯材11の外周面に配置可能であればよい。例えば、線材状や粒状、帯状、繊維状等、種々の形状を採用可能である。表面部材12の材料としては、複合部材1に付与する機能(耐食性機能、潤滑性機能、断熱性機能、耐疲労性機能)に応じて適宜選択すればよい。例えば、耐食性機能、潤滑性機能、断熱性機能、耐疲労性機能といった各種機能から選択した1つの機能を付与する場合には、所望する機能を付与するに適した材料を表面部材12として選択すればよい。或いは、複数の機能を同時に付与するような場合には、所望の機能をそれぞれ発揮する複数の材料を表面部材12として選択すればよい。
【0024】
前処理ステップS1は、芯材11の外周面に付着する汚れや埃などを除去する異物除去処理や、芯材11の外周面に付着する鉱物油等の油脂成分を除去する脱脂処理、或いは、芯材11の外周面と表面部材12との密着性を向上させるために行われる表面加工処理等の各種処理を行う工程である。前処理ステップS1としては、異物除去処理、脱脂処理及び表面加工処理から選択した単一の処理を行うように構成してもよく、或いは、複数の処理を行うように構成してもよい。ここで、異物除去処理としては、例えば、芯材11にエアーを吹き付けて外周面に付着する汚れや埃を除去するエアー処理や、水洗いにより汚れを除去する水洗い処理、芯材11の外周面上の汚れ等をウエス等により拭き取る拭き取り処理等を例示することができる。また、脱脂処理としては、例えば、脱脂用の処理槽等にアルコールやアセトン、シンナー等の脱脂処理液内に芯材11を浸漬させて、芯材11に付着した鉱物油等の油脂成分や汚れを取り除く溶媒脱脂を例示することができる。また、このような溶媒脱脂の他、熱を加えて芯材11表面の油脂成分を除去する加熱脱脂、或いは、超音波によって液体に生じた真空の気泡が破裂する際の衝撃波を利用した超音波脱脂、芯材11をアルカリ洗浄液中に浸漬しつつ、所定の電流密度の電解をかけて芯材11表面に付着している鉱物油等の油脂成分を除去するアルカリ電解脱脂等、種々の脱脂手法を適用することができる。また、表面加工処理としては、例えば、芯材11の外周面の凹凸性を向上させるためのブラスト加工を例示することができる。なお、前処理ステップS1は、後述する表面部材配設ステップS2において、芯材11と表面部材12との密着強度を高めるための工程であるため、かかる前処理ステップS1を備えなくても十分な芯材11と表面部材12との密着強度を得られるような場合には、前処理ステップ12を省略して本製造方法を構成することができる。
【0025】
表面部材配設ステップS2は、導電性材料からなる芯材11の外周面に、芯材11よりも磁性が低い表面部材12を配設する工程であり、前処理ステップS1の後に行われる。この表面部材配設ステップS2は、芯材11の外周面上に表面部材12を配設するための種々の方法を採用することができるが、一例として、線材からなる表面部材12を芯材11の外周面に螺旋状に巻回することにより、芯材11の外周面を表面部材12で被覆する方法(被覆ステップ)について以下説明する。この被覆ステップは、
図3に示すようなカバリング装置2を用いて行われる。このカバリング装置2は、線材が軸心に巻かれたスプール21と、当該スプール21をその軸心を中心として回転させる駆動装置(図示せず)とを備えている。スプール21の軸心は中空となるように形成されており、この中空部内に芯材11が挿入可能となるように構成されている。このカバリング装置2の作動について説明すると、まず、スプール21に巻かれた線材(表面部材12)を引き出して、線材(表面部材12)の先端を芯材11表面に固定する。次いで、駆動装置によってスプール21を回転させつつ、別途設けられる搬送手段(図示せず)により芯材11を所定の速度で移動(スプール21の軸心に沿った方向へ移動)させることにより、芯材11の外周面上に表面部材12である線材が螺旋状に巻回されて、
図2に示すように芯材11の外周面が線材からなる表面部材12で被覆されることとなる。なお、搬送手段による芯材11の搬送速度(移動速度)や、スプール21の回転数を適宜調整することにより、芯材11の外周面に巻回される線材からなる表面部材12の粗密(芯材11単位長さ当たりの線材の巻回数)を調整することが可能となる。
【0026】
融着ステップS3は、芯材11の外周面に配設された表面部材12の外側から表面部材12及び芯材11を電磁誘導加熱することにより、加熱された芯材11の熱によって、表面部材12と芯材11との対向領域13a,13bの少なくともいずれか一方を溶融させて、表面部材12を芯材11に融着させる工程である。ここで、電磁誘導加熱とは、電磁調理器(IHクッキングヒーター)や高周波溶接等にも利用されている加熱方式の一種であり、コイルに交流電流を流すことにより磁界(磁束密度)の変化を生じさせ、その磁界内に置いた導電性物質に誘導電流(渦電流)を発生させて、その抵抗により導電性物質自体を発熱させる原理を利用した加熱方式である。本実施形態に係る製造方法により製造される複合部材1における芯材11は、表面部材12よりも磁性が高い部材であるため、電磁誘導加熱装置による電磁誘導加熱によって、表面部材12よりも芯材11の方の発熱量が大きくなり、表面部材12の温度よりも芯材11の温度の方が高くなる。これにより、表面部材12と芯材11との対向領域13a,13bの少なくともいずれか一方を溶融させることが可能となる。例えば、表面部材12の融点が芯材11の融点よりも低い場合には、芯材11が発した熱が表面部材12に伝わって、表面部材12における芯材11との対向領域(接触領域)13aが溶融することとなる。また、電磁誘導加熱された芯材11に生じる誘導電流の密度は、芯材11の中心からその表面に近いほど高くなることから、芯材11の内部に比べてその表面の方が早く加熱(集中して加熱)されることとなる。したがって、芯材11の融点が表面部材12の融点よりも低い場合には、集中して加熱される芯材11の表面(芯材11における表面部材12との対向領域(接触領域)13bが)が溶融することとなる。ここで、電磁誘導加熱装置に流れる電流(コイルに流れる交流電流)の周波数を高く設定することにより、芯材11において発熱する部位をその表面に集めることができ、逆に、電流の周波数を低く設定することにより芯材11の内部も均一に発熱させることができるため、電磁誘導加熱装置に流れる電流の周波数を適宜変更できるように、電磁誘導加熱装置を構成することが好ましい。
【0027】
この融着ステップS3において使用される電磁誘導加熱装置としては、例えば、
図4に示すように、中空筒状型の形状のものを好適に使用することができる。中空筒状型電磁誘導加熱装置3の中央部における空間部31に、外周面上に表面部材12が配設された芯材11を配置して電磁誘導加熱を行う。所定時間の電磁誘導加熱が終了した後、中空筒状型電磁誘導加熱装置3の中央部における空間部31から、外周面上に表面部材12が配設された芯材11を取り出す、或いは、電磁誘導加熱装置を停止させることにより、表面部材12や芯材11の温度が低下し、溶解していた領域が固化して、表面部材12と芯材11とが互いに固着される。
【0028】
上記実施形態に係る複合部材1の製造方法は、導電性材料からなる芯材11の外周面に芯材11よりも磁性が低い表面部材12を配設した後、表面部材12の外側から芯材11を電磁誘導加熱して、加熱された芯材11の熱によって表面部材12と芯材11との対向領域13a,13bの少なくともいずれか一方(表面部材12における芯材11との対向領域13a、又は、芯材11における表面部材12との対向領域13b、或いは、その両方)を溶融させて、表面部材12を芯材11に融着させる融着ステップS3を備えるように構成しているため、芯材11の表面に配設された表面部材12の外表面の形状を熱溶解によって損なうこと無く当該表面部材12を芯材11の外周面上に確実に融着固定させることが可能となる。従って、複合部材1の外側に配設される部材(芯材11の外周面上に固着される表面部材12)の材料的特性と、複合部材1の外表面の形状的特性とを組み合わせた機能を複合部材1に付与することが可能となる。例えば、上記製造方法により、長尺状の金属製線材からなる芯材11の外周面に、表面部材12として耐食性のある材料からなる線材を螺旋状に巻回して製造した複合部材1は、表面部材12の材料的特性である耐食性に加えて、複合部材1の外表面の形状的特性から得られる優れた可撓性機能を有するものとなる。つまり、単に芯材11の外周面に耐食性コーティングを施して製造した複合部材1よりも、より一層可撓性に優れたものとなる。また、このようにして得られる複合部材1の外表面に潤滑油を浸潤させるような場合には、複合部材1の外表面の凹部14(
図2参照)に潤滑油が入り込むことになるため、この複合部材1は、潤滑油を長期間保持することができるという機能を発揮することができる。
【0029】
また、芯材11の外周面上に表面部材12を配置する段階において、液体状に生成することが困難な材料を表面部材12として選択する場合であっても、線材状或いは粒子状等の形態に表面部材12を形成することにより、このような表面部材12を芯材11の外周面上に融着させて固着することが可能となる。
【0030】
また、上記実施形態においては、融着ステップS3にて使用する電磁誘導加熱装置3として中空筒状型のもの(断面リング状の形態のもの)を採用し、表面部材12が外周面上に配設された芯材11を中央部の空間部31に配置して電磁誘導加熱を行うように構成している。つまり、芯材11の外周面上に配設された表面部材12の周囲を取り囲んで電磁誘導加熱するように構成しているため、芯材11の外周面全域から均一に熱が発せられ、熱溶解させようとする領域(表面部材12における芯材11との対向領域13a、又は、芯材11における表面部材12との対向領域13b、或いは、その両方)の全体を均一に熱溶解させることが可能となる。この結果、芯材11の外周面に配設される表面部材12と芯材11とをムラなく均一な固着力でもって結合することができる。
【0031】
また、このような複合部材1の製造方法において、表面部材12の融点が、芯材11の融点よりも低くなるように、表面部材12及び芯材11の材料を選定することにより、電磁誘導加熱される芯材11の熱によって、表面部材12における芯材11との対向領域(接触領域)13aを芯材11よりも先に溶融させることが可能となるため、芯材11の形状を熱溶解によって損なうことなく、表面部材12のみを確実に溶解させて、当該表面部材12を芯材11の外周面上に融着固定させることが可能となる。
【0032】
また、このような複合部材1の製造方法において、例えば、
図5に示すように、中心部分111と表面部分112とが異なる材料となるように芯材11を形成し、芯材11における表面部材12との対向領域(接触領域)13bに相当する芯材11の表面部分112が、電磁誘導加熱によって熱溶解するように構成してもよい。このような構成であっても、熱溶解した芯材11の表面部分112が、冷却されることにより固化する結果、表面部材12と芯材11とを強固に融着(固着)させることができる。
【0033】
具体的には、例えば、芯材11の中心部分111を鉄やステンレス等の比較的融点が高い材料により形成すると共に、芯材11の表面部分112を中心部分111よりも融点の低い亜鉛や錫等の金属材料により形成する。このような芯材11を、融着ステップS3において電磁誘導加熱した場合に、中心部分111よりも融点の低い表面部分112が先に熱溶解することとなり、この表面部分112の材料が冷却されて固化することによって、芯材11の外周面に配設されている表面部材12(芯材11の表面部分112上に配設された表面部材12)が、芯材11と固着することとなる。複合部材の製造方法をこのような構成とする場合、表面部材12における芯材11との対向領域13aが熱溶解するように表面部材12の材料を選定してもよく、或いは、表面部材12における芯材11との対向領域13aが熱溶解しないような表面部材12を選定してもよく、表面部材12の材料選択の幅が広がることとなる。
【0034】
また、
図5に示す芯材11は、中心部分111と表面部分112とを備える2層構造を有するものであるが、例えば、
図6に示すように、中心部分111が、それぞれ異なる材料により構成される複数の層111a,111b,111cを備えるように芯材11を構成してもよい。また、芯材11としては、表面部分112の材料が中心部分111よりも融点が低くなるように構成すると共に、芯材11全体として導電性を備えるように構成すればよいため、中心部分111を電気を通しにくい材料により構成し、表面部分112を導電性材料により構成してもよく、或いは、中心部分111を導電性材料により構成し、表面部分112を電気を通しにくい材料により構成してもよい。なお、電磁誘導加熱により表面部材12が外周面に配設された芯材11を加熱する際に、表面部材12よりも優先的に芯材11を加熱する必要があることから、表面部材12は、芯材11よりも磁性が低い材料から形成されている。
【0035】
以上、本発明に係る複合部材1の製造方法について説明したが、具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態において、
図7のブロック図に示すように、前処理ステップS1と表面部材配設ステップS2との間に、接着剤層形成ステップS4を備えるようにして複合部材1を製造してもよい。
【0036】
この接着剤層形成ステップS4は、塗布ステップS41と乾燥ステップS42とを備えている。塗布ステップS41は、芯材11の融点よりも低い融点を有する接着剤を芯材11の外周面に塗布する工程である。芯材11の外周面に接着剤を塗布する方法としては、スプレーガン等により霧化した接着剤を芯材11の外周面に吹き付けることにより芯材11の外周面上に接着剤層を形成する方法(スプレー方式)や、接着剤が貯留される貯留槽内に芯材11を浸漬させて芯材11の外周面(外表面)に接着剤層を形成する方法(ディッピング方式)等を採用することができる。なお、接着剤層形成ステップS4において用いられる接着剤としては、その接着力により、芯材11の外周面の所望位置に表面部材12を配設した状態を維持できれば特に限定されず、例えば、接着剤の融点が、表面部材12の融点と略同等以下のものを採用してもよく、或いは、接着剤の融点が、表面部材12の融点以上のものを採用してもよい。ここで、接着剤として、その融点が表面部材12の融点よりも大きいものを採用する場合、加熱された芯材11の熱を、効率よく表面部材12に伝えることができる熱伝導性の高いものを選定することが好ましい。また、接着剤としては、種々の機能を有するものを選択することができる。例えば、接着剤として断熱性に富むものを採用した場合には、芯材が発揮する機能及び表面部材が発揮する機能の他、接着剤が発揮する断熱機能を更に有する複合部材を製造することが可能となる。また、接着剤としては、熱可塑性樹脂を主成分としたホットメルト接着剤を使用することもできる。このホットメルト接着剤を使用する場合には、当該ホットメルト接着剤を加熱溶融させた後、芯材11の外周面に塗布する。
【0037】
乾燥ステップS42は、芯材11の外周面に塗布された接着剤を乾燥させる工程であり、例えば、送風手段により、接着剤が塗布された芯材11に対して所定風量の風を当てて接着剤の乾燥を行う。なお、送風手段が発熱体を備えるように構成し、接着剤が塗布された芯材11に対して温風を吹き付けるように構成してもよく、或いは、風を吹き付けずに自然乾燥によって接着剤を乾燥させてもよい。
【0038】
このように、表面部材配設ステップS2の前段階として、芯材11の融点よりも低い融点を有する接着剤を芯材11の外周面に塗布する接着剤層形成ステップS4(塗布ステップS41)を備えるように構成する場合、例えば、表面部材12として、芯材11の融点よりも低い融点を有する部材を用いると共に、接着剤層形成手段5において用いられる接着剤として、接着剤の融点が、表面部材12の融点と略同等以下のものを採用した場合、芯材11を電磁誘導加熱することにより、表面部材12における芯材11との対向領域13a及び表面部材12と芯材11との間に介在する接着剤を溶解させることができ、表面部材12をより一層強固に芯材11に固着することができる。具体的に説明すると、表面部材12として、芯材11の外周面に螺旋状に巻回して配置される線材や、或いは、吹き付けることにより芯材11の外周面に配置される粒状或いは繊維状の部材を使用する場合には、溶解した接着剤が、隣接して配置される線材や粒状の部材(表面部材12)の隙間に進入することになるため、確実に表面部材12を芯材11に固着させることが可能となる。また、表面部材12として、芯材11の融点よりも高い融点を有する部材を用いた場合には、芯材11を加熱することにより表面部材12と芯材11との間に介在する接着剤が溶解し、この溶解した接着剤が、隣接して配置される表面部材12の隙間に進入して、表面部材12と芯材11とを確実に固着させることが可能となる。また、接着剤として、表面部材12の融点よりも高い融点を有するものを用いた場合であっても、芯材11の熱が、接着剤層を介して表面部材12に伝わることにより、表面部材12における芯材11との対向領域13aを溶解させることが可能であり、この溶解した対向領域13aが冷却されることにより、接着剤層を介して、表面部材12を芯材11上に固着させることができる。
【0039】
また、表面部材12を芯材11の外周面に配設する前段階である接着剤層形成ステップS4が、芯材11の外周面に塗布された接着剤を乾燥させる乾燥ステップS42を備えるように構成しているため、接着剤の接着力が失われた状態で表面部材12を芯材11の外周面に配設することが可能となる。接着剤の接着力が存在する状況下、つまり、接着剤が乾燥していない状態でも表面部材12を芯材11の外周面上に配設してもよいが、接着剤が乾燥しておらず、接着剤が液体状或いは半液体状の状態で表面部材12を芯材11の外周面に配設する場合、配設された表面部材12の周りから液体状(或いは半液体状)の接着剤が浸み出て、最終的に得られる複合部材1の外表面に接着剤が残ってしまうおそれがある。或いは、液体状(或いは半液体状)の接着剤が芯材11の外周面上に沿って流動し、接着剤が芯材11の外周面上に均一の厚さで分布しなくなるおそれがある。このような場合に電磁誘導加熱を行うと、例えば、接着剤及び/又は表面部材12における芯材11との対向領域13aを溶融させて表面部材12を芯材11に固着する際に、接着剤が薄く芯材11表面に塗布されている部分において表面部材12と芯材11との固着力が低下する恐れがある。これに対し、表面部材12を芯材11の外周面に配設する前段階において、芯材11の外周面に塗布した接着剤を乾燥させ、その後に表面部材12を芯材11の外周面に配設する場合には、上述したような接着剤の浸出や接着剤の厚み分布が不均一になることを効果的に防止することができ、最終的に得られる複合部材1の外表面に接着剤が残留することや、表面部材12と芯材11との固着力が低下する部分が発生することを確実に防止することができる。
【0040】
また、上記実施形態においては、融着ステップS3において使用される電磁誘導加熱装置3として、
図4に示す中空筒状型の形状のものを採用しているが、このような構成に特に限定されず、表面部材配設ステップS2により表面部材12が配設された芯材11に対して磁界(磁束密度)を変化させて芯材11に渦電流を発生させることができる構成であれば、どのような形状のものであってもよい。例えば、電磁調理器(IHクッキングヒーター)に用いられるような、プレート状のものを電磁誘導加熱装置3として採用し、当該プレート状電磁誘導加熱装置3の近傍に表面部材12が配設された芯材11を配置することにより芯材11を加熱するように構成してもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、表面部材配設ステップS2における芯材11の外周面への表面部材12の配設方法(被覆ステップ)として、線材からなる表面部材12を芯材11の外周面に螺旋状に巻回することにより、芯材11の外周面を表面部材12で被覆する方法(カバリング装置2を用いた方法)について説明したが、芯材11の外周面に表面部材12を配設する方法(被覆ステップ)はこのような方法に特に限定されない。例えば、芯材11を回転させることにより、線材状或いは帯状の表面部材12を芯材11の外周面上に螺旋状に巻回して、芯材11の外周面を表面部材12で被覆する方法を採用してもよい。なお、帯状の表面部材12を芯材11上に巻回して配設する場合、巻回するピッチについては、表面部材12が重なってもよく、或いは重ならなくてもよい。ここで、芯材11の径が比較的太い棒状の形状を有する場合、このように芯材11を回転させながら帯状等の表面部材12を芯材11の外周面上に螺旋状に巻回する方法を採用することにより、効率よく表面部材12を芯材11上に配設することができる。また、芯材11の外周面に、粒状或いは繊維状の表面部材12を吹き付けることにより、芯材11の外周面を表面部材12で被覆するようにしてもよい。粒状或いは繊維状の表面部材12を吹き付けて芯材11の外周面上に配設する場合、例えば、芯材11の外表面がプラスの電荷を有するように帯電させると共に、粒状或いは繊維状の表面部材12がマイナスの電荷を有するように帯電させて、当該粒状或いは繊維状の表面部材12を芯材11の外周面に付着させるようにすることが好ましい。或いは、上記接着剤層形成ステップS4における塗布ステップS41のみを備えるようにして(乾燥ステップS42を省略するようにして)複合部材1の製造方法を構成し、乾燥していない接着剤層に向けて粒状或いは繊維状の表面部材12を吹き付けるように構成することが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
S1 前処理ステップ
S2 表面部材配設ステップ
S3 融着ステップ
S4 接着剤層形成ステップ
S41 塗布ステップ
S42 乾燥ステップ
1 複合部材
11 芯材
111 芯材の中心部分
112 芯材の表面部分
12 表面部材
13a 表面部材における芯材との対向領域
13b 芯材における表面部材との対向領域
14 凹部
2 カバリング装置
21 スプール
3 電磁誘導加熱装置
31 空間部