特許第5909844号(P5909844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5909844
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】表示体及び情報印刷物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20160414BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20160414BHJP
   B42D 25/30 20140101ALI20160414BHJP
   G07D 7/12 20160101ALI20160414BHJP
【FI】
   G02B5/18
   G02B5/30
   B42D15/10 300
   G07D7/12
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-163689(P2010-163689)
(22)【出願日】2010年7月21日
(65)【公開番号】特開2012-27115(P2012-27115A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三井 一成
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−524858(JP,A)
【文献】 特開2009−198549(JP,A)
【文献】 特表2009−535670(JP,A)
【文献】 特開2009−271119(JP,A)
【文献】 特開2010−107903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
B42D 25/30
G02B 5/30
G07D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(a)平坦な基材と、
前記平坦な基材上の少なくとも一部に、
(b)特定方向に配向したストライプ状の複数の凸部及び凹部が設けられた第一領域と、
(c)最表面が略平坦となっている第二領域と、
(d)前記第一領域の構成と、前記第二領域の構成と、が繰り返しパターンとなるように形成された第三領域と、
が任意に組み合わされて形成されている構造部と、
(e)前記構造部の最外面の少なくとも一部に積層された金属膜層と、
を含む表示体であって、
前記構造部において、
複数の前記第一領域は、少なくとも各前記第一領域ごとに凹凸の配向方向を有するものであり、前記第一領域の隣接した凸部と凸部又は凹部と凹部の中心間距離は、直線偏光を吸収させるために可視光の短波長未満の間隔で配置され、
前記第一領域の前記凹部と前記第二領域は同一面上にあり、
前記第三領域は、可視光を回折させるために、前記第一領域の構成と前記第二領域の構成を、3000nm以上11000nm以下の範囲で繰り返しパターンとなるように配置し
前記第一領域及び前記第二領域及び前記第三領域を少なくともそれぞれ1つ以上有することを特徴とする表示体。
【請求項2】
隣接した前記第一領域における前記凹凸の配向方向は、平行又は直交することを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記表示体が、ビットマップパターンからなる画像を表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示体。
【請求項4】
前記凸部又は凹部の中心間距離が、100nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項5】
前記凸部又は凹部の高さ又は深さが、100nm以上350nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項6】
前記第三領域における前記第二領域の構成は、前記第一領域の構成を多角形で囲むように配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項7】
印刷物基材と、前記印刷物基材の表面の少なくとも一部の領域に設けられた請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示体とを備えることを特徴とする情報印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体及び情報印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、商品券や小切手等の有価証券類やクレジットカードやキャッシュカード、IDカード等のカード類、パスポートや免許証等の証明書類の偽造防止を目的として、通常の印刷物とは異なる視覚効果をもつ表示体を転写箔やステッカー等の形態にして、前記証券類やカードなどの証明書類の表面に貼付、圧着するなどして設けることが行われている。また、有価証券類や証明書類以外の物品においても偽造品の流通が社会問題化しており、そのような物品についても同様の偽造防止技術を適用する機会が多くなってきている。
【0003】
通常の印刷物とは異なる光学的作用を発揮する表示体としては、複数の溝を並べてなる回折格子を含んだ表示体が知られている。この表示体には、例えば、観察条件に応じて変化する像を表示させることや、立体像を表示させることができ、さらには、フルカラーの写真のような表示像を得ることも可能である。また、回折格子が表示する虹色に輝く分光色は、通常の印刷技術では表現することができない。そのため、回折格子を含んだ表示体は、偽造防止対策が必要な物品に広く用いられている。
【0004】
本発明の表示体では、偏光素子を利用して隠蔽画像を形成することによって、偽造防止効果を持たせている。偏光素子の作製方法としては、2種以上の材料が交互に配置された(1つは圧力誘起複屈折特性を有している)多層積層体を2軸方向延伸することによって作製される(特許第4122057号)。この方法では大きな偏光素子などは比較的簡単であるが、多層膜にするためコストが高いことが問題点として上げられる。
【0005】
本発明の表示体では、比較的小さい面積に偏光特性の異なることが必要である。そのため、上記のような延伸による偏光素子の作製方法では、困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4122057号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとしている課題は、従来の技術とは差別化でき偽造・模造が困難である表示体及び情報印刷物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、少なくとも、(a)平坦な基材と、前記平坦な基材上の少なくとも一部に、(b)特定方向に配向したストライプ状の複数の凸部及び凹部が設けられた第一領域と、(c)最表面が略平坦となっている第二領域と、(d)前記第一領域の構成と、前記第二領域の構成と、が繰り返しパターンとなるように形成された第三領域と、が任意に組み合わされて形成されている構造部と、(e)前記構造部の最外面の少なくとも一部に積層された金属膜層と、を含む表示体であって、前記構造部において、複数の前記第一領域は、少なくとも各前記第一領域ごとに凹凸の配向方向を有するものであり、前記第一領域の隣接した凸部と凸部又は凹部と凹部の中心間距離は、直線偏光を吸収させるために可視光の短波長未満の間隔で配置され、前記第一領域の前記凹部と前記第二領域は同一面上にあり、
前記第三領域は、可視光を回折させるために、前記第一領域の構成と前記第二領域の構成を、3000nm以上11000nm以下の範囲で繰り返しパターンとなるように配置し、前記第一領域及び前記第二領域及び前記第三領域を少なくともそれぞれ1つ以上有することを特徴とする表示体である。
【0009】
請求項2の発明は、隣接した前記第一領域における前記凹凸の配向方向は、平行又は直交することを特徴とする請求項1に記載の表示体である。
【0010】
請求項3の発明は、前記表示体が、ビットマップパターンからなる画像を表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示体である。
【0011】
請求項4の発明は、前記凸部又は凹部の中心間距離が、100nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示体である。
【0012】
請求項5の発明は、前記凸部又は凹部の高さ又は深さが、100nm以上350nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示体である。
【0013】
請求項6の発明は、前記第二領域における前記(c−2)平坦領域は、前記(c−1)領域を多角形で囲むように配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の表示体である。
【0014】
請求項7の発明は、印刷物基材と、前記印刷物基材の表面の少なくとも一部の領域に設けられた請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示体とを備えることを特徴とする情報印刷物である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、一般的な照明光(ランダム偏光)を表示体に入射させても濃淡画像を確認することはできないが、直線偏光を入射させると濃淡画像を確認することができる。また表面は虹色の光沢を持っており、一般の印刷物と区別することが可能である。
【0017】
請求項2の発明によれば、濃淡を2値にすることにより表示体に隠された隠蔽画像をより確認しやすくなる。
【0018】
請求項3の発明によれば、画像がビットマップパターンであることにより、情報の扱いが容易である。
【0019】
請求項4の発明によれば、前記凸部又は凹部の中心間距離が100nm以上200nm以下により、前記凸部及び凹部の格子方向と同一の直線偏光を入射させた場合の反射率が高くなる。
【0020】
請求項5の発明によれば、前記凸部又は凹部の高さ又は深さが100nm以上350nm以下により、前記凸部及び凹部の格子方向と同一の直線偏光を入射させた場合の反射率が高くなる。
【0022】
請求項の発明によれば、前記略平坦領域は前記凸部及び凹部を多角形で囲むように配置されていることにより、全方向にて回折光を確認することが可能になる。
【0023】
請求項の発明によれば、表示体をステッカー、転写箔などの媒体とし、情報印刷物などに容易に添付することが可能で、添付した情報印刷物の偽造防止効果の向上、真偽判定の容易さを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の表示体の概略図。
図2図1に示す表示体の1−1線での断面を示した図。
図3】レリーフ構造にs偏光を入射させたときの反射光を示した図。
図4】レリーフ構造にp偏光を入射させたときの反射光を示した図。
図5】本発明の実施の形態1の表示体を示した図。
図6図5の表示体の拡大図。
図7図5に示す表示体の2―2線での断面を示した図。
図8図5の表示体に一般的な照明を照射したときの図。
図9図5の表示体に直線偏光を照射したときの図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、前記凸部又は凹部の構造をレリーフ構造として記載する。
本発明の表示体は、基材と、基材上に設けられた構造部と、構造部の上部を覆うように設けられた金属膜層からなるものである。
図1は本発明の実施の形態における表示体の一例を示す説明図であり、図2図1の1−1線に沿う断面図である。
【0026】
表示体10は、図1に示すように、基材と構造部と金属膜層が積層されて形成されている。構造部には、基材上の一部の領域に凹部又は凸部(以下、レリーフ構造とも言う)11、12、17と平坦領域13が形成されている。レリーフ構造11には格子間隔が100nmで格子の深さが300nmであり、格子の方向はY軸方向に並んでストライプ状に形成されている。またレリーフ構造12は、格子間隔と深さはレリーフ構造11と同じで格子の方向がX軸方向となるようにストライプ状に形成されている。また表示体の領域13はレリーフ構造のない平坦か略平坦な平坦領域を示している。表示体の領域17は、格子間隔が100nmで格子の深さが300nmで格子の方向はY軸方向に並んでおり、3000nm毎に平坦領域を有している。もちろん、平坦領域は、完全に平坦な形状でもよい。ここでいう平坦領域とは、光を回折させることができる程度の平坦性を有していればよいということである。また、本発明の構造は、平坦な基材上に、レリーフ構造と光を回折させる為の平坦領域が組み合わされた構造からなり、その上に金属膜層が選択的に形成されていることを特徴としている。
【0027】
平坦な基材として、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、もしくはポリオレフィンビニルアルコールポリエステルフィルムを用いることができるが、特にポリエステルフィルムは透明性や汎用性が高く使用されることが多い。
【0028】
前述したように、構造部は凹部又は凸部からなる領域(レリーフ構造)と平坦領域からなるものであり、例えば、材料としてUV硬化樹脂を用いて形成することができる。UV硬化樹脂は微細構造を転写する(ナノインプリント用)が多く開発されており、微細構造の転写性に優れている。
レリーフ構造は、電子線描画装置及びエッチングを利用して石英上に形成することでモールドを作製し、そこからUV樹脂などで複製することで得られる。
格子の中心間距離は直線偏光を吸収させるために可視光の短波長未満の間隔で配置されることが望ましい。例えば、100nm以上で格子の深さは350nm以下が好ましい。格子の中心間距離が80nmで格子の深さが100nm以上の場合には、実験結果から形状が20%以上崩れてしまい作製が難しい。また格子の中心間距離が80〜220nmで格子の深さが370nm以上の場合にも、同様にモールドの形状が20%程度崩れてしまい作製は困難であった。一方、格子間隔が100nm以上で深さは350nm以下とした場合には、モールドの設計値に対して作製されたモールドの再現性が90%以上得られることや複製において90%以上の転写率が得られ、安定した性能のレリーフ構造を簡便に作れることがわかった。
格子間隔が220nm以上又は深さが80nm以下の場合には、実験結果から格子の方向に垂直又は平行な直線偏光光を入射させた場合に、当該格子による反射率と、当該格子と直交する格子による反射率との差が小さいため、画像を表現するために必要なコントラストが得られない。一方、格子間隔が200nm以下で、深さが100nm以上の場合には、格子の方向に垂直又は平行な直線偏光光を入射させた場合に、当該格子による反射率が30%以下で当該格子と直交する格子による反射率が70%以上の光学特性が得られ、十分なコントラストのある画像を表現することが可能である。
よって格子の中心間距離を100nm以上200nm以下、深さを100nm以上350nm以下と設定する。
本発明では、ストライプ状の複数の凸部又は凹部が設けられた領域は、その凹部または凸部の配向の向きが異なるように複数含まれる。尚、コントラストを最も高くするために上記X軸とY軸の例のように、複数の凸部又は凹部が設けられた領域の凹凸の配向の向きが直交することが望ましい。
【0029】
構造部には、凸部又は凹部が設けられた領域(レリーフ構造)とは別に平坦領域が設けられている。
この平坦領域は、複数の凸部又は凹部が設けられた領域を区切るように複数の領域ごとの境界部に設けられ、最表面が略平坦となっている。この平坦領域は、単独で回折格子として機能するように、複数の凸部又は凹部が設けられた領域の境界を形成するように繰り返しパターン状に配置されている。
また、この平坦領域の中心間距離は、前記凸部と凸部又は凹部と凹部の中心間距離よりも長い中心間距離の繰り返しパターンとなるように配置されている。好ましくは、3000nm以上にするのが好ましい。3000nm以上の場合には、格子の方向に垂直又は平行な直線偏光光を入射させた場合に、当該格子による反射率が35%以下で当該格子と直交する格子による反射率が65%以上の光学特性が得られ、コントラストのある画像を表現することが可能である。中心間距離が11000nm以下で、レリーフ形成層に対して可視光が垂直入射した場合、回折光の角度は2度以上(波長400nm以上)得られる。つまり、観察者がレリーフ形成層から300mmの距離から観察した場合には、回折光は正反射光から10mm以上離れた位置に観察される。よって、人の目の虹彩を8mmと仮定した場合には、レリーフ形成層からの正反射光と回折光が同時に人の目に入らず、回折光だけを視認することができることから中心間距離を11000nm以下としている。
【0030】
図2図1の1−1線に沿う断面図である。図2に示すようにレリーフ形成層10のレリーフ構造11、12、17及びレリーフ構造のない領域13に隣接する面に、金属膜層としてアルミニウム14が積層されている。金属膜層として積層する金属の材料は特に限定されないが、可視光に対し高い反射率を示し、かつ高導電率を有する銀、アルミニウムなどの金属材料を用いることが好ましい。また金属膜層は光学特性から20〜50nm程度が好ましい。レリーフ構造に金属を積層する方法として、金属蒸着を用いる。
【0031】
上記のように可視光の波長400nmから800nmに比べて小さいレリーフ構造に導電体のアルミニウムなどを蒸着した場合、格子に対して平行に振動する電場ベクトル成分を反射し、垂直な電場ベクトル成分を透過させる偏光素子が得られる。
【0032】
図3は、表示体の右方向からアルミニウムが積層された面側にs偏光を入射させた場合の光の反射を示したものである。レリーフ構造領域11では、光の振動方向と格子の方向が水平であるため入射光を反射する。レリーフ構造領域12では、光の振動方向と格子の方向が垂直であるため入射光は透過する。また、レリーフ構造のない略平坦領域13では、入射光は反射する。
よって、レリーフ構造領域11は光の反射が起こるため明るく表現され、レリーフ構造領域12は透過するため暗く表現される。また、レリーフ構造のない略平坦領域13では、入射光を反射するためレリーフ構造領域11と同等に明るく表現される。つまり、レリーフ構造領域11とレリーフ構造のない略平坦領域13では光の反射が起こるため区別できない。またレリーフ構造領域11とレリーフ構造領域12では明暗を確認することができ、区別することができる。レリーフ構造領域17では領域11と同じく光の反射が起こるため明るく表現され、さらに平坦領域が3000nmの周期を有しているため回折光を生じる。よって領域11とは異なり虹色の光沢を有している。
【0033】
図3の表示体の右側から一般的な光(ランダム偏光)を入射させた場合には、レリーフ構造領域11,12では反射と透過が同等に起こるためレリーフ構造領域11、12を区別することができない。
【0034】
つまり、表示体10に一般的な光(ランダム偏光)を入射した場合には隠蔽画像を視認することはできないが、直線偏光を入射させた場合にのみ隠蔽画像を視認することが可能である。
【0035】
図4は、表示体10の右方向からアルミニウムが積層された面側にp偏光を入射させた場合の光の反射を示したものである。レリーフ構造11では、光の振動方向と格子の方向が垂直であるため入射光を透過する。またレリーフ構造12では、光の振動方向と格子の方向が垂直であるため入射光は反射する。またレリーフ構造のない略平坦領域13では、入射光は反射する。よって、レリーフ構造11は反射するため暗く表現され、レリーフ構造12は透過光するため明るく表現される。またレリーフ構造のない略平坦領域13では、入射光を反射するためレリーフ構造12と同等に明るく表現される。
【0036】
このように、格子の方向によって入射光(偏光)を反射又は透過と制御することが可能である。また一般光を入射した場合にはレリーフ構造11,12を判別することができない。しかし、入射光に偏光を用いたときにはレリーフ構造11,12で明暗が表現されるため判別することが可能である。
レリーフ構造17では、レリーフ構造11と光学特性は酷似しているが、回折光を射出することが異なる。回折光を射出することから一般の印刷物とも区別することが可能である。
【0037】
表示体10をステッカー、転写箔などの媒体とし、情報印刷物などに容易に添付することで、添付した情報印刷物の偽造防止効果の向上、真偽判定の容易さを向上させることができる。
【0038】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態における表示体の一例を示す説明図であり図7図5の2−2線に沿う断面図である。また図6は表示体の領域16を拡大した図を示した。
【0039】
表示体19は、レリーフ構造領域11、12で形成されている。背景部であるレリーフ構造領域11は格子の方向がY軸方向であり、黒地「T」及び「P」のレリーフ構造領域12は格子の方向がX軸方向で、周期的な平坦領域21を有している。また白地で上下逆の「T」及び「☆」のレリーフ構造領域15はレリーフ構造11と同一のレリーフ構造が形成されている。また白地の部分のレリーフ構造15には、金属が積層されていない。背景部や黒地「T」及び「P」には金属が積層されている。
【0040】
上記のように表示体に部分的に金属を積層する方法としては、まず表示体全体に金属蒸着によって積層する。次に金属膜の残したい部分を覆うようなマスクを作製し、マスクを表示体に密着させた状態でアルカリ溶液に液侵することによって作製する。
【0041】
図6は、表示体の領域16を拡大した図で絵柄をビットマップパターンの集まりで構成していることを示している。
【0042】
図7は、図5の2−2線に沿う断面図である。また表示体の右側から携帯電話の照明光を入射させた図である。
【0043】
図8図5の表示体19に一般的な光(ランダム偏光)を入射させて観察したときの図である。白地の上下逆の「T」及び「☆」は光を透過する。黒地「T」と「P」及び背景は、反射と透過が双方の作用が起こるためコントラスト差が生じにくく、黒地の「T」と「P」と背景は同じコントラストに認識されるため区別することはできない。よって、図8のような絵柄が観察される。
【0044】
図9は、図7のように右側から携帯電話の照明光(偏光)を入射させて観察したときの図である。黒地「T」と「P」及び背景の格子方向が異なる。よって領域によって反射又は透過が起こるためコントラストに差が生じる。よって、図のような絵柄を観察することが可能である。
【0045】
また、表示体の反射と透過の関係は、偏光方向と格子の方向によって決まる。よって、表示体を90度回転させるか照明光の偏光方向を90度回転させることによって、反射透過の関係を変えることが可能でネガポジ反転させることができる。
【符号の説明】
【0046】
10…表示体、11…レリーフ構造領域(X軸と垂直の格子)、12…レリーフ構造領域(X軸と平行の格子)、13…レリーフ構造のない略平坦領域、14…金属層、15…レリーフ構造領域(X軸と垂直の格子、光反射層なし)、16…照明光(携帯電話)、17…レリーフ構造領域(周期的な平坦領域(レリーフ構造のない領域))18…レリーフ成形層、19…表示体、21…周期的な平坦領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9