(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムが、エチレン−α−オレフィン共重合体またはエチレン−不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エチレン−ビニルアルコール共重合体を併用することにより、ポリアミド樹脂の通気度は減る。しかし、疲労による通気度の変化率については、着目していない。本発明は、低通気度でかつ疲労による通気度の変化率の小さい熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、疲労による通気度の変化率に着目し、ポリアミド樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体の配合比を最適化することにより、低通気度でかつ疲労による通気度の変化率の小さい熱可塑性樹脂組成物を得ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、ポリアミド樹脂およびエチレン−ビニルアルコール共重合体に酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムが分散してなる熱可塑性樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体の配合比が47/53〜61/39であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
【0007】
ポリアミド樹脂は、好ましくは、ナイロン6、ナイロン66およびナイロン6/66からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムは、好ましくは、エチレン−α−オレフィン共重合体またはエチレン−不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体である。
変性ゴムは、好ましくは、ポリアミド樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体の合計量100質量部に対して、70〜280質量部である。
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、室温において20%伸張ひずみを100万回繰返し与えたときの通気度の変化率が1.30倍以下である。
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、室温において20%伸張ひずみを100万回繰返し与えた後の通気度が10×10
12cc・cm/cm
2・sec・cmHg以下である。
前記ポリアミド樹脂は、好ましくは、ポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂の末端アミノ基と反応し得る化合物を溶融ブレンドして得られる変性ポリアミド樹脂である。
ポリアミド樹脂の末端アミノ基と反応し得る化合物は、好ましくは、単官能エポキシ化合物である。
【0008】
本発明は、また、前記熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムをインナーライナーに用いた空気入りタイヤである。
前記空気入りタイヤは、好ましくは、室内で7万km走行後のエア漏れの変化率が1.30倍以下である。
前記空気入りタイヤは、好ましくは、室内で7万km走行後のエア漏れが1.5%以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、低通気度でかつ疲労による通気度の変化率も小さい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ポリアミド樹脂およびエチレン−ビニルアルコール共重合体に酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムが分散してなる熱可塑性樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体の配合比が47/53〜61/39であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。ポリアミド樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体の配合比は、好ましくは、47/53〜58/42である。この配合比が小さすぎると疲労後の通気度変化が大きくなり、逆に大きすぎると疲労前通気度の悪化を招き、その結果、疲労後の通気度の悪化を招く。
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂およびエチレン−ビニルアルコール共重合体に変性ゴムが分散してなる熱可塑性樹脂組成物であり、ポリアミド樹脂およびエチレン−ビニルアルコール共重合体がマトリックス相を形成し、変性ゴムが分散相を形成している。
【0012】
本発明において使用するポリアミド樹脂は、限定するものではないが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tが単独でまたは混合物として使用できる。なかでも、ナイロン6、ナイロン66、およびナイロン6/66が耐疲労性とガスバリヤ性の両立という点で好ましい。
【0013】
本発明において使用するエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」ともいう。)は、エチレン単位(−CH
2CH
2−)とビニルアルコール単位(−CH
2−CH(OH)−)とからなる共重合体であるが、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の構成単位を含有していてもよい。本発明において使用するエチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン単位の含量が20〜50モル%のものを使用することが好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン単位の含量が少なすぎるとエチレン−ビニルアルコール共重合体の柔軟性が減り、耐久性が落ちる。逆にエチレン単位の含量が多すぎると通気度が増加する。エチレン−ビニルアルコール共重合体はエチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物であるが、そのケン化度は98%以上であることが好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度が小さすぎると通気度が増加する。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、市販されており、たとえば、日本合成化学工業株式会社製「ソアノール」(登録商標)H4815B、A4412B、DC3212B、V2504RB、株式会社クラレ製「エバール」(登録商標)H171Bなどがある。
【0014】
本発明に用いる変性ゴムは、酸無水物基またはエポキシ基を有する。ポリアミド樹脂との相溶性という観点から、特に好ましくは、変性ゴムは酸無水物基を有する。
【0015】
変性ゴムを構成するゴムとしては、エチレン−α−オレフィン共重合体、またはエチレン−不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体などが挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。エチレン−不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。
【0016】
酸無水物基を有する変性ゴムは、たとえば、酸無水物とペルオキシドをゴムに反応させることにより製造することができる。酸無水物基を有する変性ゴム中の酸無水物基の含有量は、好ましくは0.01〜1モル/kg、より好ましくは0.05〜0.5モル/kgである。酸無水物基の含有量が少なすぎると変性ゴム分散の悪化を招き、逆に多すぎると加工性の悪化を招く。また、酸無水物基を有する変性ゴムは、市販されており、市販品を用いることができる。市販品としては、三井化学株式会社製無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(タフマー(登録商標)MP−0620)、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(タフマー(登録商標)MP−7020)などがある。
【0017】
エポキシ基を有する変性ゴムは、たとえば、グリシジルメタクリレートをゴムに共重合させることにより製造することができる。共重合比率は、限定するものではないが、たとえば、ゴム100質量部に対し、グリシジルメタクリレート10〜50質量部である。エポキシ基を有する変性ゴム中のエポキシ基の含有量は、好ましくは0.01〜5モル/kg、より好ましくは0.1〜1.5モル/kgである。エポキシ基の含有量が少なすぎると変性ゴム分散の悪化を招き、逆に多すぎると加工性の悪化を招く。また、エポキシ基を有する変性ゴムは、市販されており、市販品を用いることができる。市販品としては、住友化学株式会社製エポキシ変性エチレンアクリル酸メチル共重合体(エスプレン(登録商標)EMA2752)などがある。
【0018】
特に好ましい変性ゴムは、酸無水物基でグラフト変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体であり、その例としては、前述の三井化学株式会社製無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(タフマー(登録商標)MP−7020)がある。
【0019】
熱可塑性樹脂組成物中の変性ゴムの量は、好ましくは、ポリアミド樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体の合計量100質量部に対して、70〜280質量部であり、より好ましくは80〜180質量部である。変性ゴムの量が少なすぎると、低温耐久性に劣り、逆に多すぎると、溶融時の流動性が低下し、フィルム製膜性が悪化する。
【0020】
ポリアミド樹脂は、変性ポリアミド樹脂であってもよい。ここで、変性ポリアミド樹脂とは、ポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂の末端アミノ基と反応し得る化合物を溶融ブレンドして得られるものをいう。ポリアミド樹脂の末端アミノ基と反応し得る化合物を、以下、「アミノ基反応性化合物」ともいう。変性ポリアミド樹脂は、末端アミノ基が少ないまたは末端アミノ基を有しないので、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムを高充填しても流動性を維持し、フィルム製膜が容易である。
【0021】
アミノ基反応性化合物としては、単官能エポキシ化合物、イソシアネート基含有化合物、酸無水物基含有化合物、ハロゲン化アルキル基含有化合物などが挙げられるが、ポリアミド樹脂の末端アミノ基との反応性という観点で、好ましくは、単官能エポキシ化合物である。
【0022】
単官能エポキシ化合物としては、エチレンオキシド、エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、3−メチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、3−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−2,3−エポキシペンタン、3−エチル−1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘキサン、3,4−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、3−エチル−1,2−エポキシヘキサン、3−プロピル−1,2−エポキシヘキサン、4−エチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−2,3−エポキシヘキサン、4−エチル−2,3−エポキシヘキサン、2−メチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−1,2−エポキシヘプタン、5−メチル−1,2−エポキシへプタン、6−メチル−1,2−エポキシヘプタン、3−エチル−1,2−エポキシヘプタン、3−プロピル−1,2−エポキシヘプタン、3−ブチル−1,2−エポキシヘプタン、4−プロピル−2,3−エポキシヘプタン、5−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−2,3−エポキシヘプタン、4−エチル−2,3−エポキシへプタン、4−プロピル−2,3−エポキシヘプタン、2−メチル−3,4−エポキシヘプタン、5−メチル−3,4−エポキシヘプタン、6−エチル−3,4−エポキシヘプタン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘプタン、2−メチル−5−エチル−3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシヘプタン、2,3−エポキシヘプタン、3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシオクタン、2,3−エポキシオクタン、3,4−エポキシオクタン、4,5−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、2,3−エポキシノナン、3,4−エポキシノナン、4,5−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、2,3−エポキシデカン、3,4−エポキシデカン、4,5−エポキシデカン、5,6−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、2,3−エポキシウンデカン、3,4−エポキシウンデカン、5,6−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、2,3−エポキシドデカン、3,4−エポキシドデカン、4,5−エポキシドデカン、5,6−エポキシドデカン、6,7−エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1−フェニル−1,2−エポキシプロパン、3−フェニル−1,2−エポキシプロパン、1−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシブタン、4−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシペンタン、4−フェニル−1,2−エポキシペンタン、5−フェニル−1,2−エポキシペンタン、1−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、3−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、4−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、5−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、6−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、グリシドール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール、6,7−エポキシ−1−ヘプタノール、7,8−エポキシ−1−オクタノール、8,9−エポキシ−1−ノナノール、9,10−エポキシ−1−デカノール、10,11−エポキシ−1−ウンデカノール、3,4−エポキシ−2−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノール、1,2−エポキシ−3−ペンタノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘキサノール、4,5−エポキシ−3−ヘキサノール、1,2−エポキシ−3−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−エチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジエチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノ−ル、3,4−エポキシ−5−メチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5,5−ジメチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−へプタノール、4,5−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−4−ヘプタノール、1,2−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−オクタノール、3,4−エポキシ−3−オクタノール、4,5−エポキシ−3−オクタノール、5,6−エポキシ−4−オクタノール、2,3−エポキシ−4−オクタノール、1,2−エポキシ−3−オクタノール、2,3−エポキシ−1−ノナノール、3,4−エポキシ−2−ノナノール、4,5−エポキシ−3−ノナノール、5,6−エポキシ−5−ノナノ−ル、3,4−エポキシ−5−ノナノール、2,3−エポキシ−4−ノナノール、1,2−エポキシ−3−ノナノール、2,3−エポキシ−1−デカノール、3,4−エポキシ−2−デカノール、4,5−エポキシ−3−デカノール、5,6−エポキシ−4−デカノール、6,7−エポキシ−5−デカノール、3,4−エポキシ−5−デカノール、2,3−エポキシ−4−デカノール、1,2−エポキシ−3−デカノール、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロドデカン、3,4−エポキシシクロペンテン、3,4−エポキシシクロヘキセン、3,4−エポキシシクロヘプテン、3,4−エポキシシクロオクテン、3,4−エポキシシクロノネン、1,2−エポキシシクロデセン、1,2−エポキシシクロウンデカン、1,2−エポキシシクロドデセン、1−ブトキシ−2,3−エポキシプロパン、1−アリルオキシ−2,3−エポキシプロパン、ポリエチレングリコールブチルグリシジルエーテル、2−エチルへキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられ、ポリアミド樹脂の相溶性の観点から、炭素数が3〜20、好ましくは3〜13であり、エーテルおよび/または水酸基を有するエポキシ化合物が特に好ましい。
【0023】
ポリアミド樹脂とアミノ基反応性化合物を溶融ブレンドする方法は、特に限定されないが、たとえば、ポリアミド樹脂とアミノ基反応性化合物を二軸混練機に投入し、ポリアミド樹脂の融点以上、好ましくは融点より20℃以上高い温度で、たとえば240℃で溶融混練する。溶融混練する時間は、たとえば、1〜10分、好ましくは2〜5分である。
【0024】
ポリアミド樹脂の変性に用いるアミノ基反応性化合物の量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して0.05〜5質量部であり、好ましくは1〜3質量部である。アミノ基反応性化合物の量が少なすぎると、変性ゴムを高充填した際の流動性改善効果が小さいため好ましくない。逆に、多すぎると、ポリアミド樹脂の低温耐久性(繰り返し疲労性)を悪化させるので好ましくない。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、室温において20%伸張ひずみを100万回繰返し与えた後の通気度が、好ましくは10×10
12cc・cm/cm
2・sec・cmHg以下であり、より好ましくは1×10
12〜8×10
12cc・cm/cm
2・sec・cmHgである。
ここで、通気度とは、JIS K7126−1「プラスチックフィルムおよびシートの気体透過度試験方法(差圧法)」に準じて、55℃で測定した空気透過係数をいう。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、室温において20%伸張ひずみを100万回繰返し与えたときの通気度の変化率が、好ましくは1.30倍以下であり、より好ましくは1.00〜1.20倍である。
ここで、通気度の変化率とは、繰返しひずみを与えた後の通気度を繰返しひずみを与える前の通気度で割った値をいい、次式で定義される。
通気度の変化率=繰返しひずみを与えた後の通気度/繰返しひずみを与える前の通気度
【0027】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体および変性ゴムを、たとえばポリアミド樹脂の融点より20℃高い温度で溶融混合することによって製造することができる。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫または架橋剤、加硫又は架橋促進剤、可塑剤、各種オイル、老化防止剤などの樹脂およびゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0029】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、T型ダイス付きの押出機や、インフレーション成形機などでフィルムとすることができる。そのフィルムは、通気度が低いため、空気入りタイヤのインナーライナーとして好適に使用することができる。
【0030】
本発明の空気入りタイヤは、前記の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムをインナーライナーとして用いた空気入りタイヤである。タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。たとえば、予め本発明の熱可塑性樹脂組成物を所定の幅と厚さのフィルム状に押し出し、それをタイヤ成形用ドラム上に円筒に貼りつける。その上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望の空気入りタイヤを製造することができる。
【0031】
本発明の空気入りタイヤは、室内で7万km走行後の「エア漏れ」が、好ましくは1.5%以下である。
ここで、「エア漏れ」とは、タイヤを空気圧250kPa、25℃雰囲気下で3か月間放置し、タイヤ空気圧変化を測定し、タイヤ空気圧の減少量を%表示したものをいい、次式で定義される。
エア漏れ(%)=(初期のタイヤ空気圧−3か月間放置後のタイヤ空気圧)/初期のタイヤ空気圧×100
【0032】
本発明の空気入りタイヤは、室内で7万km走行後のエア漏れの変化率が、好ましくは1.30倍以下であり、より好ましくは1.00〜1.20倍である。
ここで、「エア漏れの変化率」とは、室内で7万km走行後の「エア漏れ」を初期(走行前)の「エア漏れ」で割った比をいい、次式で定義される。
エア漏れの変化率=室内で7万km走行後のエア漏れ/初期(走行前)のエア漏れ
【実施例】
【0033】
(1)原材料
実施例および比較例に用いた原材料は次のとおりである。
ポリアミド樹脂として、宇部興産株式会社製ナイロン6/66「UBEナイロン」5033Bを用いた。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(「EVOH」と略す。)として、日本合成化学工業株式会社製ソアノール(登録商標)H4412Bを用いた。
変性ゴムとして、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(三井化学株式会社製タフマー(登録商標)MH−7020)を用いた。
ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物として、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル(日油株式会社製エピオール(登録商標)SB)を用いた。
【0034】
(2)熱可塑性樹脂組成物の調製
ポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体および変性ゴムを、表1および2に示す質量比率で、二軸混練機に投入し、混練機温度230℃で溶融混練し、押出機から連続してストランド状に排出し、水冷後カッターで切断することによりペレット状の熱可塑性樹脂組成物を調製した。
また、ポリアミド樹脂100.0質量部およびp−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル2.0質量部を二軸混練機(日本製鉄所製TEX44)に投入し、混練機温度230℃で溶融混練し、変性ポリアミド樹脂を調製した。その変性ポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体および変性ゴムを、表3に示す質量比率で、二軸混練機に投入し、混練機温度230℃で溶融混練し、押出機から連続してストランド状に排出し、水冷後カッターで切断することによりペレット状の熱可塑性樹脂組成物を調製した。
【0035】
(3)熱可塑性樹脂組成物の評価方法
調製した熱可塑性樹脂組成物について、通気度およびタイヤエア漏れを評価した。
【0036】
(a)通気度
熱可塑性樹脂組成物を0.15mmのフィルムに成形し、150℃で3時間以上乾燥し、JIS K7126−1「プラスチックフィルムおよびシートの気体透過度試験方法(差圧法)」に準じて、試験気体として空気を用い、試験温度55℃で、熱可塑性樹脂組成物フィルムの通気度を測定した。
(b)疲労後の通気度変化率
表4に示す配合において作成した未加硫ゴム組成物を0.5mm厚のフィルムに成形した。得られた未加硫ゴム組成物フィルムを、上記「(a)通気度」の試験法と同様に作製した熱可塑性樹脂組成物フィルムと積層し、180℃で10分間加硫させた。得られた積層体を、上記「(a)通気度」の試験法と同様に通気度を測定した。通気度を測定した後、試験片を、室温で伸張率20%および毎分400回の条件のもとで100万回繰り返し伸張させることにより疲労させた。疲労後の試験片について、上記「(a)通気度」の試験法と同様に通気度を測定し、次式により定義される通気度の変化率を算出した。
疲労による通気度の変化率=疲労後通気度/疲労前通気度
疲労による通気度の変化率が1.30倍以下であれば合格である。
疲労後通気度が10×10
12cc・cm/cm
2・sec・cmHg以下であれば合格である。
【0037】
[タイヤエア漏れ]
熱可塑性樹脂組成物を厚さ80μmのフィルムに成形し、そのフィルムをインナーライナーとして用い、常法によりラジアルタイヤ195/65R15を作製した。作製したタイヤを空気圧250kPa、21℃雰囲気下で3か月間放置し、タイヤ空気圧変化を測定し、タイヤ空気圧の減少量を%表示したものを「タイヤエア漏れ」という。タイヤエア漏れは、作製したタイヤを、室内で、JATMA規格で規定された標準リムにて140kPaの圧力で空気を封入し、外形1700mmのドラム上を用い、38℃の室温にて、荷重300kN、速度80km/hで距離7万km走行させた後にも測定した。走行前のタイヤエア漏れを「疲労前タイヤエア漏れ」といい、走行後のタイヤエア漏れを「疲労後タイヤエア漏れ」という。疲労前タイヤエア漏れに対する疲労後タイヤエア漏れの比率を、「疲労によるタイヤエア漏れの変化率」という。疲労によるタイヤエア漏れの変化率が1.30倍以下であれば合格である。
【0038】
(4)熱可塑性樹脂組成物の評価結果
評価結果を表1〜表3に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】