【0014】
本発明においてハイアミローススターチとは、アミロース含量が50%以上のスターチを言う。本発明で比較例として用いるコーンスターチ、タピオカスターチ、ポテトスターチなどの穀物由来のスターチのアミロース含量は0〜30%である。
またハイアミローススターチの中でも、ハイアミロースコーンスターチが高フィルム性、低粘度の点で好ましい。ハイアミローススターチ原料がポテトやタピオカでは、粘性・フィルム性の点で劣っており、一般的に入手しにくいと考えられるため好ましくない。
またハイアミローススターチの中でも、湿熱処理したハイアミローススターチ、更には湿熱処理したハイアミロースコーンスターチが詳細な機構は不明であるが、ハイアミロースコーンスターチがもつ高フィルム性、低粘度がより顕著になっている点で好ましい。アルファ化したハイアミロースコーンスターチは、フィルム性や低粘性の特徴が弱くなり、シートがラバー化し、乾燥適正が劣る点で好ましくない。
またハイアミローススターチの中でも、リン酸架橋処理したハイアミローススターチ、更にはリン酸架橋処理したハイアミロースコーンスターチが、シート性およびドラムからの剥離性の観点から好ましい。
【実施例】
【0021】
(実施例1 各種賦形剤、およびその割合がドラムドライヤー乾燥機に与える製造適性の検討)
煮たリンゴを微粉砕して製造されたリンゴペースト(果香(株)社製)の固形分1重量部に対して、各賦形剤を0.5重量部、1重量部それぞれ加え、ミキサーで均一に混合したサンプルをダブルドラムドライヤー(ジョンソンボイラー社製、型式「JM-T」)で、乾燥温度:145℃、ドラムのクリアランス:0.25mm、ドラム回転数:3rpmの条件で乾燥した。各賦形剤の名称と配合割合を表1に示す。
ダブルドラムドライヤーで行った乾燥物の乾燥状態から、乾燥適性を判断した。乾燥適性は、
4:非常に良好なシート性を示し好ましい
3:良好なシート性を示し好ましい
2:シートがラバー状となり好ましくない
1:シートが得られない
の4点評価で行った。乾燥適性の結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1の結果から、リンゴペーストの固形分1重量部に対して、ハイアミローススターチを0.5重量部以上の割合で混合したものの製造適性が良いことが判明した。またハイアミローススターチを1重量部以下の割合で混合したものの製造適性が良いことが判明した。またハイアミロースコーンスターチの中でも特に湿熱処理ハイアミロースコーンスターチが好ましく、賦形剤量を減らしても製造適性が好ましいことが判明した。また製造適性という点では、グアガム加水分解物も好ましいことが判明した。
【0024】
(実施例2 各種賦形剤を用いてドラムドライヤー乾燥したサンプルの官能評価)
実施例1のうち、リンゴペースト(果香(株)社製)の固形分1重量部に対して、各賦形剤を1重量部それぞれ加えて製造した乾燥サンプルの一部について官能評価を行った。
官能評価は、各乾燥サンプルを粉砕して粉末化したものを作成し、粉末1重量部に対して10℃の冷水30重量部中で攪拌し、風味・香り・見た目の評価を行った。官能評価は食品業務に平均して3年以上従事している充分に訓練された3名の専門パネルを用いて実施した。官能評価の結果は、
4:非常に良好
3:良好
2:やや劣る
1:許容不可
の4点評価で行い、あわせてフリーコメントも採取した。サンプルで用いた賦形剤の名称と官能評価の結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2の結果から、ハイアミロースコーンスターチが好ましく、特に湿熱処理ハイアミロースコーンスターチが、賦形剤によって果実本来の風味がマスキングされず、特に好ましいことが判明した。製造適性という点では好ましかったグアガム加水分解物は、マスキングが少なく、風味が良好である点から官能評価結果は良好であったが、冷水中で膨潤し、分散性が悪く、好ましくないことが判明した。
【0027】
(実施例3 ハイアミロースコーンスターチの割合がドラムドライヤー乾燥機に与える製造適性の検討)
実施例1のリンゴペースト(果香(株)社製)の固形分1重量部に対して、ハイアミロースコーンスターチ(「HF-200」、敷島スターチ社製)および湿熱処理ハイアミロースコーンスターチ(「HB−450」、三和澱粉社製)の割合を0.15重量部、0.25重量部、0.4重量部、0.5重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部と振ったものをそれぞれ加え、ミキサーで均一に混合したサンプルを実施例1と同じダブルドラムドライヤーで、実施例1と同じ条件で乾燥した。ハイアミロースコーンスターチ、湿熱処理ハイアミロースコーンスターチの割合と乾燥適性の結果を表3に示す。乾燥適性は実施例1と同じ評価で行った。また、官能評価の結果を表4に示す。官能評価は、実施例2と同じ評価で行った。
【0028】
【表3】
【表4】
【0029】
表3の結果から、リンゴペーストの固形分1重量部に対して、ハイアミローススターチおよび湿熱処理ハイアミロースコーンスターチを0.25重量部以上、特に好ましくは0.4重量部以上の割合で混合したものの製造適性が良いことが判明した。また、表4の結果よりハイアミローススターチおよび湿熱処理ハイアミロースコーンスターチを2重量部未満、好ましくは1.5重量部以下、更に好ましくは1重量部以下の割合で混合したものの風味が良いことが判明した。
【0030】
(実施例4 ハイアミロースコーンスターチと他の澱粉類を混合した時の割合がドラムドライヤー乾燥機に与える製造適性の検討)
牛肉を煮込み、これをろ過して得られるビーフエキス(水分85重量%)、およびタマネギ、人参、セロリなどの野菜を炒めて粉砕して得られるミルポア(水分70重量%)の固形分1重量部に対して、ポテトスターチ(「特士幌」、士幌農協製)と湿熱処理ハイアミロースコーンスターチ(「HB−450」、三和澱粉社製)を100:0〜0:100の重量割合で配合した混合物を0.5重量部加え、ミキサーで均一に混合したサンプルを実施例1と同じダブルドラムドライヤーで、実施例1と同じ条件で乾燥した。ポテトスターチと湿熱処理ハイアミロースコーンスターチの割合と乾燥適性の結果を表5に示す。乾燥適性は実施例1と同じ評価で行った。また、官能評価の結果を表6に示す。官能評価は、実施例2と同じ評価で行った。
【0031】
【表5】
【表6】
【0032】
表5および表6の結果から、ビーフエキスおよびミルポアの固形分1重量部に対して、湿熱処理ハイアミロースコーンスターチを混合物中の0.25重量部以上含む混合物の製造適性かつ官能評価が良いことが判明した。
【0033】
(実施例5 ハイアミロースコーンスターチの添加量がドラムドライヤー乾燥機に与える製造適性の検討)
トマトペースト(「トマトペースト」Merko Gida Sanayi ve Ticaret A.S.社製)に、賦形剤としてポテトスターチ(「特士幌」、士幌農協製)と湿熱処理ハイアミロースコーンスターチ(「アミロジェルHB−450」、三和澱粉社製)を100:0〜0:100の重量割合で配合した混合物を加え、ミキサーで均一に混合したサンプルをダブルドラムドライヤー(ジョンソンボイラー社製、型式「JM−T」)で、蒸気圧0.35Mpa、乾燥温度:143℃、ドラムのクリアランス:0.35mm、ドラム回転数:2rpmの条件で乾燥し、乾燥物を製造した。トマトペーストの固形分1重量部に対する賦形剤の混合量を0.053〜0.176重量部と変化させそれぞれ乾燥物を製造し、実施例1と同様に乾燥適性を評価した。乾燥適性の評価結果を表7に示す。
【表7】
【0034】
表7に示す通り、賦形剤の混合量が0.111重量部または0.176重量部であり賦形剤中のポテトスターチ:湿熱処理ハイアミロースコーンスターチの重量割合が75:25〜25:75の場合に、乾燥適性が良好であった。
【0035】
(実施例6 各種澱粉がドラムドライヤー乾燥機に与える製造適性の検討)
アップルピューレ(「アップルピューレ」、(株)果香)の固形分1重量部に対して、賦形剤全体として1重量部となるよう0.5重量部のポテトスターチ(「特士幌」、士幌農協製)および表7に記載の各種澱粉0.5重量部をそれぞれ加え、ミキサーで均一に混合したサンプルを、ダブルドラムドライヤー(ジョンソンボイラー(株)製、型式「JM−T」)を用い、蒸気圧0.35Mpa(ドラム表面温度約140℃)、ドラムのクリアランス0.4mm、ドラム回転数2rpmの条件で乾燥し、乾燥物を製造した。
各種澱粉のドラムドライヤー乾燥における乾燥適性を表8に示す。乾燥適性は実施例1と同じ評価方法にて評価した。
【0036】
【表8】
【0037】
表8より、賦形剤としてポテトスターチのみを用いた場合より、リン酸架橋コーンスターチ、リン酸架橋タピオカスターチ、リン酸架橋ハイアミロースコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、または、湿熱処理ハイアミロースコーンスターチを、ポテトスターチと併用した場合に、乾燥能力適性が良好であることが示された。
【0038】
(実施例7 示差走査熱量測定法による各種澱粉の吸熱終了温度の測定)
示差走査型熱量計測定計(「DSC6100」セイコーインスツル(株)社製)を用い、各澱粉の乾物質量10mgに対し40mgの蒸留水を銀製70μlパンに入れ測定試料とし、25℃から170℃まで毎分5℃ずつ昇温させて測定した。測定は、各澱粉につき3回ずつ行った。表9に示差走査熱量測定法による各澱粉の吸熱開始温度(Ts)、ピーク温度(Tp)、吸熱終了温度(Tc)(それぞれ平均値)を示す。
【0039】
【表9】
【0040】
表9の通り、実施例1〜6においてドラムドライヤーの賦形剤として用いた際に製造適性、官能評価結果の良好であったハイアミローススターチ類、リン酸架橋コーンスターチ、リン酸架橋タピオカスターチの示差走査熱量測定法による吸熱終了温度は95℃以上であった。製造適性、官能評価結果の劣った澱粉種の示差走査熱量測定法による吸熱終了温度は95℃未満であった。