(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変調信号生成部(13)は、前記スイッチング用キャリア(C0)で前記直流電圧(Vdc)をサンプリングした値(Vdc0)にも基づいて、前記信号(G)を生成する、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の電力変換装置。
前記スイッチング用キャリア(C0)が最大値近傍を採るタイミングで、前記脈動成分と前記主閾値との比較結果に基づいて前記主キャリア及び前記副キャリアが切り替わり、
前記主キャリア(C1)の最大値と全ての前記副キャリア(C2,C3)の最大値とは等しく、
前記主キャリアの最小値と全ての前記副キャリアの最小値とは等しく、
全ての前記副キャリアの前記周波数(Fc2,Fc3)は前記主キャリアの前記周波数(Fc1)の整数分の一(当該整数は2以上)であり、
全ての前記副キャリアのうち最も周波数が低いもの(C2)が前記最大値を採るタイミングでは、他の前記副キャリアの全て(C3)及び前記主キャリアが前記最大値を採って同期する、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の電力変換装置。
前記スイッチング用キャリア(C0)が最小値近傍を採るタイミングで、前記脈動成分と前記主閾値との比較結果に基づいて前記主キャリア及び前記副キャリアが切り換わり、
前記主キャリア(C1)の最大値と全ての前記副キャリア(C2,C3)の最大値とは等しく、
前記主キャリアの最小値と全ての前記副キャリアの最小値とは等しく、
全ての前記副キャリアの前記周波数(Fc2,Fc3)は前記主キャリアの前記周波数(Fc1)の整数分の一(当該整数は2以上)であり、
全ての前記副キャリアのうち最も周波数が低いもの(C2)が前記最小値を採るタイミングでは、他の前記副キャリアの全て(C3)及び前記主キャリアが前記最小値を採って同期する、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の電力変換装置。
前記副キャリア(C2,C3)の前記周波数(Fc2,Fc3)は前記主キャリア(C1)の前記周波数(Fc1)の奇数分の一(当該奇数は3以上)である、請求項1乃至請求項7のいずれか一つに記載の電力変換装置。
第1の前記副キャリア(C3)の前記周波数(Fc3)は第2の前記副キャリア(C2)の前記周波数(Fc2)の整数(当該整数は2以上)倍である、請求項8又は請求項9に記載の電力変換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
脈動する直流電圧をパルス幅変調に使用するためは、脈動成分を正確にサンプリングする必要がある。一般に直流電圧は、パルス幅変調に使用するキャリアのトップ及び/又はボトムでサンプリングされるので、直流電圧の脈動成分を正確にサンプリングするためにはキャリア周波数が高くなる。
【0013】
また、直流電圧の脈動に対してシステムの安定性を確保することから制御応答を高く保つためにも、キャリア周波数を高くすることが望ましい。よって特許文献2に示された構成では、キャリア周波数を高く設定しなければならない課題があった。但し、特許文献2では直流電圧の脈動成分と、サンプリング周波数についての明確な検討はない。
【0014】
このように、電解コンデンサレスインバータ装置では、直流電圧の脈動、当該脈動を補正するための直流電圧のサンプリング精度向上、当該精度向上のためのキャリア周波数の上昇、という課題が連鎖し、ひいてはキャリア周波数の上昇による電力変換装置の損失の増大、当該損失を低減するための冷却装置の大型化、という課題が連鎖して発生する。
【0015】
よって本発明の目的は、直流電圧の脈動に対する制御の追従性を確保しつつ、キャリア周波数に依存したスイッチング損失を抑制し、ひいては電力変換装置を小型化することに資する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明にかかる電力変換装置は、単相若しくは多相の交流電圧を整流して直流電圧(Vdc)を出力する整流回路(5)と、前記直流電圧を両端に受けるコンデンサ(3)と、前記直流電圧をスイッチングすることによって他の交流電圧に変換する電力変換器(2)と、前記直流電圧に基づいて前記電力変換器を制御する制御部(4,14,4A,14A)とを備える。
【0017】
そしてその第1の態様では、前記制御部は、スイッチング用キャリア(C0)と前記他の交流電圧の指令値(V*)とに基づいて前記スイッチングを制御する信号(G)を生成して前記電力変換器に与える変調信号生成部(13,13A)と、前記直流電圧の脈動成分(Vrp,Vrp1)を検出する電圧脈動検出部(8)とを有する。そして前記脈動成分が主閾
値以下の場合に主キャリア(C1)を、前記脈動成分が前記主閾値より大きい場合に前記主キャリアの周波数(Fc1)よりも低い周波数(Fc2,Fc3)を有する少なくとも一つの副キャリア(C2,C3)を、それぞれ前記スイッチング用キャリアとして採用することを特徴とする。
【0018】
望ましくは前記制御部(4、14)は、前記主キャリア(C1)の前記周波数(Fc1)、前記副キャリア(C2,C3)の前記周波数(Fc2,Fc3)を生成する周波数生成手段(9,10,15)と、前記脈動成分(Vrp,Vrp1)が前記主閾
値以下の場合に前記主キャリアの周波数を、前記脈動成分が前記主閾値より大きい場合に前記副キャリアの前記周波数(Fc2,Fc3)を、それぞれ前記スイッチング用キャリア(C0)の周波数(Fc0)として出力する切替手段(11,16)とを更に有する。そして前記変調信号生成部(13)は前記切替手段から出力された周波数を有するスイッチング用キャリア(C0)を採用して前記信号(G)を生成する。
【0019】
あるいは望ましくは前記制御部(4A、14A)は、前記主キャリア(C1)、前記副キャリア(C2,C3)を生成するキャリア生成手段(9A,10A,15A)と、前記脈動成分(Vrp,Vrp1)が前記主閾
値以下の場合に前記主キャリアを、前記脈動成分が前記主閾値より大きい場合に前記副キャリアを、それぞれ前記スイッチング用キャリア(C0)として出力する切替手段(11,16)とを更に有する。そして前記変調信号生成部(13A)は前記切替手段から出力されたスイッチング用キャリア(C0)を採用して前記信号(G)を生成する。
【0020】
この発明にかかる電力変換装置の第2の態様は、その第1の態様であって、前記電圧脈動検出部(8)は、前記主キャリアによって前記直流電圧(Vdc)をサンプリングして離散化した値を有する離散化直流電圧(Vdc1)を得て、前記離散化直流電圧に対して低域通過濾波の処理を行って、前記離散化直流電圧の平均値(Vav1)を得て、前記離散化直流電圧(Vdc1)からその前記平均値を差し引いて前記脈動成分(Vrp1)を検出する。
【0021】
この発明にかかる電力変換装置の第3の態様は、その第1の態様又は第2の態様であって、前記変調信号生成部(13)は、前記スイッチング用キャリア(C0)で前記直流電圧(Vdc)をサンプリングした値(Vdc0)にも基づいて、前記信号(G)を生成する。
【0022】
この発明にかかる電力変換装置の第4の態様は、その第1の態様乃至第3の態様のいずれかであって、前記スイッチング用キャリア(C0)が最大値近傍を採るタイミングで、前記脈動成分と前記主閾値との比較結果に基づいて前記主キャリア及び前記副キャリアが切り替わる。そして前記主キャリア(C1)の最大値と全ての前記副キャリア(C2,C3)の最大値とは等しく、前記主キャリアの最小値と全ての前記副キャリアの最小値とは等しい。そして全ての前記副キャリアの前記周波数(Fc2,Fc3)は前記主キャリアの前記周波数(Fc1)の整数分の一(当該整数は2以上)である。全ての前記副キャリアのうち最も周波数が低いもの(C2)が前記最大値を採るタイミングでは、他の前記副キャリアの全て(C3)及び前記主キャリアが前記最大値を採って同期する。
【0023】
この発明にかかる電力変換装置の第5の態様は、その第1の態様乃至第3の態様のいずれかであって、前記スイッチング用キャリア(C0)が最小値近傍を採るタイミングで、前記脈動成分と前記主閾値との比較結果に基づいて前記主キャリア及び前記副キャリアが切り換わる。そして前記主キャリア(C1)の最大値と全ての前記副キャリア(C2,C3)の最大値とは等しく、前記主キャリアの最小値と全ての前記副キャリアの最小値とは等しい。そして全ての前記副キャリアの前記周波数(Fc2,Fc3)は前記主キャリアの前記周波数(Fc1)の整数分の一(当該整数は2以上)である。全ての前記副キャリアのうち最も周波数が低いもの(C2)が前記最小値を採るタイミングでは、他の前記副キャリアの全て(C3)及び前記主キャリアが前記最小値を採って同期する。
【0024】
この発明にかかる電力変換装置の第6の態様は、その第1の態様乃至第5の態様のいずれかであって、前記副キャリア(C2,C3)の前記周波数(Fc2,Fc3)は前記主キャリア(C1)の前記周波数(Fc1)の奇数分の一(当該奇数は3以上)である。
【0025】
この発明にかかる電力変換装置の第7の態様は、その第1の態様乃至第6の態様のいずれかであって、前記副キャリア(C2,C3)は複数であって、前記脈動成分が主閾
値より小さな副閾
値以下の場合に第1の前記副キャリア(C3)を、前記脈動成分が前記主閾値以下で前記副閾値より大きい場合に第2の前記副キャリア(C2)を、それぞれ前記スイッチング用キャリアとして採用する。前記第1の前記副キャリアの前記周波数(Fc3)は前記第2の前記副キャリアの前記周波数(Fc3)よりも高い。
【0026】
この発明にかかる電力変換装置の第8の態様は、その第6の態様又は第7の態様であって、第1の前記副キャリア(C3)の前記周波数(Fc3)は第2の前記副キャリア(C2)の前記周波数(Fc2)の整数(当該整数は2以上)倍である。
【発明の効果】
【0027】
整流波形を有する直流電圧は、その値が小さい領域ほど変化が大きい。この発明にかかる電力変換装置の第1の態様によれば、直流電圧の脈動成分が大きい領域でスイッチング用キャリアの周波数を小さくすることで、直流電圧の脈動に対する制御の追従性を確保しつつ、スイッチング用キャリアの周波数の平均値を下げることができる。よって電力変換装置のキャリア周波数に依存するスイッチング損失を下げることができる。これはスイッチング素子の冷却装置などを簡素化でき、引いては電力変換装置を小型化することに資する。
【0028】
この発明にかかる電力変換装置の第2の態様によれば、副キャリアよりも周波数が高い主キャリアを採用して直流電圧をサンプリングするので、主キャリアをスイッチング用キャリアとして採用する場合において、直流電圧の脈動に対する制御の追従性が高い。
【0029】
この発明にかかる電力変換装置の第3の態様によれば、直流電圧の脈動に対する制御の追従性を確保しつつ、スイッチング用キャリアの周波数の平均値を下げることができる。
【0030】
この発明にかかる電力変換装置の第4の態様によれば、スイッチング用キャリアとして採用される主キャリアと副キャリアとが切り替わるときは、いずれも最大値近傍を採る時点であるので、スイッチング用キャリアの最大値同士の間の一周期は損なわれることがない。通常、指令値はスイッチング用キャリアの最大値同士の間の一周期において維持されるので、スイッチングによって得られる他の交流電圧は指令値に応じたものとなる。
【0031】
この発明にかかる電力変換装置の第5の態様によれば、スイッチング用キャリアとして採用される主キャリアと副キャリアとが切り替わるときは、いずれも最小値近傍を採る時点であるので、スイッチング用キャリアの最小値同士の間の一周期は損なわれることがない。通常、指令値はスイッチング用キャリアの最小値同士の間の一周期において維持されるので、スイッチングによって得られる他の交流電圧は指令値に応じたものとなる。
【0032】
この発明にかかる電力変換装置の第6の態様によれば、スイッチング用キャリアが最大値を採るタイミングで周波数を切り替える場合にも、最小値を採るタイミングで周波数を切り替える場合にも、適用できる。
【0033】
この発明にかかる電力変換装置の第7の態様によれば、複数の副キャリア同士を切り替えてスイッチング用キャリアを採用することにより、スイッチング用キャリアの周波数の平均値を更に下げることができる。
【0034】
この発明にかかる電力変換装置の第8の態様によれば、複数の副キャリア同士を切り替えてスイッチング用キャリアを採用する場合も、スイッチングによって得られる他の交流電圧は指令値に応じたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
第1の実施の形態.
図1は、本発明の第1の実施の形態の動作を説明するグラフである。
図1では、三相電圧を全波整流することで、直流電圧Vdcが得られた場合を例示している。直流電圧Vdcは電源周波数の6倍で脈動する。全波整流は、例えばダイオードブリッジによって実現される。
【0037】
直流電圧Vdcを平均することにより、平均値Vavを採る。平均値Vavは例えば低域通過濾波の処理を行って、例えばローパスフィルタを用いたフィルタリングを行うことで、得られる。
【0038】
直流電圧Vdcから平均値Vavを差し引くことにより、直流電圧Vdcの脈動成分Vrpが得られる。
【0039】
直流電圧Vdcは平均値Vavと共に
図1(a)に、脈動成分Vrpは
図1(b)に、それぞれ示されている。
【0040】
直流電圧Vdcの波形は、正弦波に基づいているので、その値が小さい領域ほど変化が大きい。また、通常、スイッチング用キャリアの一周期毎にスイッチングを制御する信号(以下「スイッチング制御信号」とも称す)が決定される。よって脈動成分Vrpが大きい領域でスイッチング用キャリアの周波数を小さくすることで、直流電圧Vdcの脈動に対する制御の追従性を確保することができる。
【0041】
ここでは、
図1(c)に示されるように、時間領域を、脈動成分Vrpが0未満(あるいは0以下)の期間T1と、脈動成分Vrpが0以上(あるいは0より大)の期間T2とに分けて把握する。
【0042】
脈動成分Vrpの求め方に鑑みれば、期間T1は直流電圧Vdcが平均値Vav未満(あるいは平均値Vav以下)となる期間であり、期間T2は直流電圧Vdcが平均値Vav以上(あるいは平均値Vavより大)となる期間であると把握することもできる。
【0043】
直流電圧Vdcの波形は期間T1よりも期間T2において緩慢であり、その変化が小さい。よって期間T2において採用されるスイッチング用キャリアの周波数Fc2を、期間T1において採用されるスイッチング用キャリアの周波数Fc1よりも小さくしても、スイッチング制御の追従性を大きく損なうことはない。
【0044】
よって上述のようにスイッチング用キャリアの周波数を制御することにより、その平均値Fcavを周波数Fc1よりも下げることができる。これにより、電力変換装置のキャリア周波数に依存するスイッチング損失を下げることができる。これはスイッチング素子の冷却装置などを簡素化でき、引いては電力変換装置を小型化することに資する。
【0045】
なお、平均値Vavを求めるために必要なサンプリングの為の信号は、直流電圧Vdcの波形においてどの部分をサンプリングするかが未定な状況でサンプリングするのであるから、期間T1における直流電圧Vdcのように、急峻な変動にも対応できなければならない。よって直流電圧Vdcの脈動に対する制御の追従性を高めるためには、当該サンプリングの周波数は、期間T1においてスイッチング用キャリアに採用される周波数Fc1を採用することが望ましい。
【0046】
なお、ここでは期間T1,T2の切り分けのために直流電圧Vdcの平均値Vavを採用したが、直流電圧Vdcの最大値と最小値の間の値であれば、原理的には上記利点が得られる。直流電圧Vdcの変化率の絶対値は、理論的には直流電圧Vdcの絶対値が大きい程、低下するからである。
【0047】
なお、期間T1,T2における境界で、異なる周波数のスイッチング用キャリアが時間的に隣接するが、それぞれのスイッチング用キャリアの波形の最大値(あるいはその近傍)同士が隣接するか、もしくは最小値(あるいはその近傍)同士が時間的に隣接することが望ましい。
【0048】
このようにしてスイッチング用キャリアを切り替えることにより、それぞれのスイッチング用キャリアの最大値同士(あるいは最小値同士)の間の一周期は損なわれることがない。通常、スイッチング用キャリアと比較される指令値は、スイッチング用キャリアの最大値同士(あるいは最小値同士)の間の一周期において維持されるので、スイッチングによって出力される交流電圧は、指令値に応じたものとなる。
【0049】
もちろん、指令値はスイッチング用キャリアの振幅に対応して設定されるので、切り替えられる複数のスイッチング用キャリアは、いずれもその最大値同士が等しく、かつ最小値同士が等しいことが望ましい。
【0050】
図2はスイッチング用キャリアが切り替わる様子を示すグラフである。ここでは期間T2から期間T1への切り替わりが例示されている。ここでは周波数Fc2を有するスイッチング用キャリアC2から、周波数Fc1を有するスイッチング用キャリアC1への切り替わりが例示されており、それぞれの最大値同士が一致する時点で切り替わっている。
【0051】
周波数Fc2が周波数Fc1の整数分の一(当該整数は2以上)であれば、スイッチング用キャリアC1,C2同士の切り替わりにおいて、それぞれの最大値同士あるいは最小値同士を一致させることができる。
【0052】
但し、スイッチング用キャリアが切り替わるタイミングを、厳密に期間T1,T2の境界に一致させることは必ずしも容易ではない。例えば上述のように周波数Fc1で直流電圧Vdcをサンプリングする場合、特に期間T2から期間T1に移行するときの両者の境界は、必ずしもスイッチング用キャリアC2の最小値、あるいは最大値と一致するとは限らないからである。この点に鑑みた、スイッチング用キャリアの切り替えについては後述する。
【0053】
図3は第1の実施の形態にかかる電力変換装置の構成を例示する回路図である。当該電力変換装置は、整流回路5と、コンデンサ3と、電力変換器2と、制御部4とを備える。
【0054】
整流回路5は例えばダイオードブリッジで構成され、単相若しくは多相の交流電圧を整流して直流電圧Vdcを出力する。
図1では三相交流を全波整流する場合を例に採ったが、単相交流を全波整流する場合でも、単相交流を半波整流する場合でも、本実施の形態が適用できる。いずれの場合でも、上述のように、直流電圧Vdcの変化率の絶対値は、理論的には直流電圧Vdcの絶対値が大きい程、低下するからである。単相交流を全波整流する場合には直流電圧Vdcは電源周波数の2倍で脈動する。ここでは三相電源6から供給される三相電圧を全波整流する場合を例にとって示しており、
図1に例示されるように直流電圧Vdcは電源周波数の6倍で脈動する。
【0055】
コンデンサ3は直流電圧Vdcをその両端に受けるものの、ここでは必ずしも平滑機能が要求されるものではない。本実施の形態によれば、平滑機能が小さくて直流電圧Vdcの脈動が大きくても、これに追従した制御を行うことができる。
【0056】
電力変換器2は直流電圧Vdcをスイッチングすることによって、他の三相交流電圧に変換してこれを出力する。もちろん、出力する交流電圧が単相であってもよい。電力変換器2は、ここでは、三相交流回転機1を駆動させるための三相交流電圧を出力する。
【0057】
電力変換器2は、より具体的には当該スイッチングは、制御部4によって制御される。
【0058】
制御部4は、電圧脈動検出手段8、第1のキャリア周波数生成手段9、第2のキャリア周波数生成手段10、切替手段11、出力電圧指令演算手段12、PWM手段13を有している。
【0059】
第1のキャリア周波数生成手段9、第2のキャリア周波数生成手段10は、それぞれ周波数Fc1,Fc2を出力する。ここでFc1=k×Fc2(k=2、3、4…)の関係がある。
【0060】
電圧脈動検出手段8は、直流電圧Vdcの脈動成分Vrp1を検出する。
図1で示された脈動成分Vrpと、電圧脈動検出手段8で検出される脈動成分Vrp1とは、前者が時間的に連続した領域で把握される値であるのに対し、後者は時間的に離散した値であることで相違する。
【0061】
図4は、電圧脈動検出手段8の構成を例示するブロック図である。電圧脈動検出手段8は、検出手段83、一次遅れ手段82、減算器81を備える。検出手段83は周波数Fc1を入力し、当該周波数をサンプリング周波数として直流電圧Vdcをサンプリングする。これにより、周期(1/Fc1)で離散的にサンプリングされた直流電圧Vdc1が得られる。
【0062】
当該サンプリングは、例えばキャリアC1の波形がトップを採るタイミング、あるいははボトムを採るタイミング、あるいはその両方のタイミングで行う。キャリアC1の波形がトップを採るタイミング及びボトムを採るタイミングの両方でサンプリングを行う場合には、サンプリング周波数は実質的に2・Fc1となる。
【0063】
直流電圧Vdcは、例えばコンデンサ3の両端電圧を測定する直流電圧検出手段7によって得られる。その他の公知の手法を用いて直流電圧Vdcを得ても良い。
【0064】
直流電圧Vdc1は一次遅れ手段82によって低域通過濾波の処理を受け、平均値Vav1が得られる。
図1で示された平均値Vavと、一次遅れ手段82で得られる平均値Vav1とは、前者が時間的に連続した領域で把握される値であるのに対し、後者は時間的に離散した値であることで相違する。
【0065】
減算器81は直流電圧Vdc1から平均値Vav1を差し引いて、脈動成分Vrp1を検出する。
【0066】
図5は切替手段11の構成を例示するブロック図である。切替手段11は、選択部111、大小判断器112、スイッチングコントローラ113を有している。
【0067】
大小判断器112は、脈動成分Vrp1と閾値“0”とを入力し、比較結果信号Dを出力する。閾値が“0”であるので、比較結果信号Dは、脈動成分Vrp1が正であれば活性化し、零又は負であれば非活性する。
【0068】
選択部111は、第1のキャリア周波数Fc1(ここでは端子Aに入力)と第2のキャリア周波数Fc2(ここでは端子Bに入力)のいずれかを選択して、スイッチング用キャリアの周波数Fcとして選択して出力する(ここでは端子Cから出力)。
【0069】
おおまかには、比較結果信号Dが活性であれば(直流電圧Vdcの変動は緩やかであるので)端子Bを端子Cに接続して周波数Fcとして周波数Fc2を採用する。比較結果信号Dが非活性であれば端子Aを端子Cに接続する。しかしより具体的には、スイッチングコントローラ113が選択部111における選択動作を決定する。
【0070】
上述の通り、スイッチング用キャリアの切替は、当該キャリアの最大値が一致するタイミングあるいは最小値が一致するタイミングで行うことが望ましい。そのため、期間T1,T2と対応する比較結果信号Dの活性/非活性のみで選択部111の動作を制御することは望ましくない。
【0071】
そこで、スイッチングコントローラ113は、比較結果信号Dの活性/非活性が切り替わった後、キャリアC2に基づいて、選択部111に選択の切替を行わせる。後述するように、キャリアC2はPWM手段13から得られる。
【0072】
図6はスイッチングコントローラ113の動作を説明するグラフである。但しここではキャリアC2として三種のキャリアC2-1,C2-2,C2-3を例示した。
【0073】
キャリアC2-1,C2-2はキャリアC1の周波数Fc1の偶数分の一の周波数Fc2を有しており、ここではFc2=Fc1/2の場合が例示されている。キャリアC2-1は、その最大値を採るタイミングが、キャリアC1が最大値を採るタイミングから選択されるように同期する。キャリアC2-2は、その最小値を採るタイミングが、キャリアC1が最小値を採るタイミングから選択されるように同期する。
【0074】
キャリアC2-3はキャリアC1の周波数Fc1の奇数分の一(当該奇数は3以上)の周波数Fc2を有しており、ここではFc2=Fc1/3の場合が例示されている。キャリアC2-3が最大値を採るときにはキャリアC1も最大値を採り、キャリアC2-3が最小値を採るときにはキャリアC1も最小値を採る。
【0075】
このように、周波数が低い方のキャリアC2の最大値/最小値を検出し、そのタイミングで選択部111に選択の切替を行わせることが望ましい。
【0076】
具体的には、キャリアC2としてキャリアC2-1が採用される場合には、C2-1が最大値を採るタイミングで選択部111に選択の切替を行わせることにより、その切り替わりのタイミングにおいてキャリアC1,C2はいずれも最大値を採る。
【0077】
キャリアC2としてキャリアC2-2が採用される場合には、C2-2が最小値を採るタイミングで選択部111に選択の切替を行わせることにより、その切り替わりのタイミングにおいてキャリアC1,C2はいずれも最小値を採る。
【0078】
キャリアC2としてキャリアC2-3が採用される場合には、C2-3が最大値を採るタイミングで選択部111に選択の切替を行わせることにより、その切り替わりのタイミングにおいてキャリアC1,C2はいずれも最大値を採る。またC2-3が最小値を採るタイミングで選択部111に選択の切替を行わせることにより、その切り替わりのタイミングにおいてキャリアC1,C2はいずれも最小値を採る。
【0079】
かかる切替の観点からは、周波数Fc2が周波数Fc1の奇数分の一であることが望ましい。キャリアが最大値を採るタイミングで周波数を切り替える場合にも、最小値を採るタイミングで周波数を切り替える場合にも、適用できるからである。
【0080】
出力電圧指令演算手段12は、電力変換器2から出力される(「他の」)交流電圧についての指令値たる電圧指令V*を生成する。電圧指令V*を求める方法については、一般的なV/f制御や交流回転機の制御方式であるベクトル制御などを採用することができる。かかる技術は公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0081】
PWM手段13は、パルス幅変調(Pulse Width Modulation)に基づいてスイッチング制御信号Gを電力変換器2に与える変調信号生成部として機能する。具体的には、PWM手段13では、周波数Fc1を有するキャリアC1と、周波数Fc2を有するキャリアC2とを同期して生成している。そして切替手段11から出力された周波数Fcが周波数Fc1,Fc2のいずれであるかに対応して、それぞれキャリアC1、C2をスイッチング用キャリアとして採用して、スイッチング制御信号Gを生成する。電力変換器2が有するスイッチング素子(図示省略)は、スイッチング制御信号Gに基づいてスイッチングし、交流回転機1に三相交流電圧を出力する。電力変換器2の構造自体は公知であるので、その詳細な説明は割愛する。
【0082】
スイッチング制御信号Gは、スイッチング用キャリアと、出力電圧指令演算手段12から得られる電圧指令V*との比較により、また更に直流電圧Vdcを考慮して生成される。かかる生成自体は公知の技術であるので、詳細な説明は割愛する。しかしPWM手段13は直流電圧Vdcの脈動を考慮するために直流電圧Vdcをサンプリングする。このサンプリングについては本実施の形態に特有であるので、以下に説明する。
【0083】
図7〜
図16は、電源周波数が50Hz、電圧実効値200Vの三相交流を全波整流した場合の、直流電圧Vdcのサンプリングについて示すグラフである。
【0084】
図7は直流電圧Vdcと、サンプリング周波数を10kHzとして直流電圧Vdcをサンプリングして離散化した直流電圧Vdc1とを示すグラフである。
図8は上記サンプリングをした場合の偏差Er1(=Vdc−Vdc1)を示すグラフである。(離散化した)直流電圧Vdc1は直流電圧Vdcによく追従しており、直流電圧Vdcの変動が大きいタイミングでも、偏差Er1の絶対値は5V未満に収まっていることが分かる。よって検出手段83において採用されるサンプリング周波数は10kHzを採用することが望ましい。
【0085】
図9は直流電圧Vdcと、サンプリング周波数を5kHzとして直流電圧Vdcをサンプリングして離散化した直流電圧Vdc2とを示すグラフである。
図10は上記サンプリングをした場合の偏差Er2(=Vdc−Vdc2)を示すグラフである。直流電圧Vdcの変動が大きいタイミングでも、偏差Er2の絶対値は10V未満に収まっていることが分かる。
【0086】
図11は直流電圧Vdcと、サンプリング周波数を2.5kHzとして直流電圧Vdcをサンプリングして離散化した直流電圧Vdc3とを示すグラフである。
図12は上記サンプリングをした場合の偏差Er3(=Vdc−Vdc3)を示すグラフである。(離散化した)直流電圧Vdc3は、直流電圧Vdcが270Vから245Vに減少する時と245Vから270Vに上昇する脈動成分を十分に反映していない。
【0087】
図13は直流電圧Vdcと、サンプリング周波数を1kHzとして直流電圧Vdcをサンプリングして離散化した直流電圧Vdc4とを示すグラフである。
図14は上記サンプリングをした場合の偏差Er4(=Vdc−Vdc4)を示すグラフである。(離散化した)直流電圧Vdc4は、直流電圧Vdcの変動が緩やかな283Vから270Vに減少する時や、270Vから283Vに上昇するタイミングですら、脈動成分を十分に反映していない。
【0088】
以上のことから、直流電圧Vdcの最小電圧付近では、サンプリング周波数は10kHz程度必要であり、直流電圧Vdcの最大電圧付近では、サンプリング周波数は2.5kHz程度あれば十分であると考えられる。よって電源周波数が50Hzかつ三相交流を全波整流する場合には、周波数Fc1,Fc2として、それぞれ10kHz,2.5kHzを採用することができる。当然ながら、周波数Fc1,Fc2として適切な値は、電源周波数に比例する。
【0089】
また単相交流を全波整流する場合には直流電圧Vdcが電源周波数の二倍で変動する。よって、周波数Fc1,Fc2として適切な値は、電源周波数が同じであれば、三相交流を全波整流する場合と比較して1/3となる。
【0090】
図15は、直流電圧Vdcと、直流電圧Vdcの平均値から最小電圧の間でサンプリング周波数を10kHzとし、直流電圧Vdcの平均値から最大電圧の間でサンプリング周波数を2.5kHzとして、直流電圧Vdcをサンプリングして離散化した直流電圧Vdc0とを示すグラフである。
【0091】
図15において黒三角はサンプリング周波数が周波数Fc2から周波数Fc1に切り替わるタイミングであり、白三角はサンプリング周波数が周波数Fc1から周波数Fc2に切り替わるタイミングである。
【0092】
直流電圧Vdcのサンプリングは、スイッチング用キャリアがトップ及び/又はボトムを採るタイミングで行われる。よって、直流電圧Vdcのサンプリング周波数の切り替わりは、スイッチング用キャリアの切り替わりと同期することが望ましい。そして上述のようにスイッチング用キャリアが切り替わる際にはその波形の最大値同士、あるいは最小値同士が一致することが望ましい。よって直流電圧Vdcのサンプリング周波数の切り替わりは、スイッチング用キャリアの切り替わりと同様に、必ずしも直流電圧Vdcがその平均値を採るタイミングでは発生しない。
【0093】
(離散化した)直流電圧Vdc0は、直流電圧Vdcをスイッチング用キャリア(以下、「キャリアC0」とも称す)でサンプリングして得られた値であり、キャリアC0は周波数Fc1を有するキャリアC1と、周波数Fc2を有するキャリアC2とが、上記黒三角、白三角で切り替わって得られる、と把握することができる。
【0094】
図16は上記サンプリングを行った場合の偏差Er0(=Vdc−Vdc0)を示すグラフである。偏差Er0の絶対値は10V未満に収まっており、(離散化した)直流電圧Vdc0は直流電圧Vdcの変化が大きいタイミングでも、変化が小さいタイミングでも、追従性が良好なことが分かる。
【0095】
このように、直流電圧Vdcのサンプリングにも用いられるスイッチング用キャリアの周波数を切り替えてすることにより、制御の追従性を確保しつつ、キャリア周波数に依存した電力変換器2のスイッチング損失を抑制することができる。
【0096】
なお、PWM手段13はスイッチング用キャリアC1を生成し、
図7及び
図8を用いて説明したように、検出手段83において採用されるサンプリング周波数は10kHzを採用することが望ましい。よって電圧脈動検出手段8は、第1のキャリア周波数生成手段9から周波数Fc1を受ける代わりに、PWM手段13からスイッチング用キャリアC1を受け取ってもよい。
【0097】
第2の実施の形態.
PWM手段13において採用されるスイッチング用キャリアの周波数は、第1の実施の形態のように二者択一ではなく、更に三つ以上の周波数を切り替えて選択しても良い。
【0098】
図17は、本発明の第2の実施の形態の動作を説明するグラフである。第1の実施の形態と同様にして、直流電圧Vdc及びその脈動成分Vrpは
図17(a)(b)に、それぞれ示されている。
【0099】
第1の実施の形態と同様にして、脈動成分Vrpが0以上(あるいは0より大)の期間T2が設定される。第1の実施の形態とは異なり、脈動成分Vrpが0未満(あるいは0以下)の期間は期間T1、T3に区分されている。即ち脈動成分Vrpが0未満(あるいは0以下)の期間のうち、脈動成分Vrpが−10未満(あるいは−10以下)の期間T1と、脈動成分Vrpが0未満(あるいは0以下)かつ−10以上(あるいは−10より大)の期間T3が設定されている。
【0100】
期間T2よりも期間T3の方が、そして期間T3よりも期間T1の方が、いずれも直流電圧Vdcの変化は大きい。よって期間T1,T2,T3においてそれぞれスイッチング用キャリアの周波数Fc1,Fc2,Fc3が採用され、Fc1>Fc3>Fc2の関係にある。
【0101】
このようにすれば、脈動成分Vrpが0未満(あるいは0以下)におけるキャリア周波数の平均値を第1の実施の形態で採用された周波数Fc1よりも小さくし、よって期間T1,T2,T3に亘るキャリア周波数の平均値を更に低下させることができる。
【0102】
以下、最も高い周波数Fc1を有するキャリアC1をスイッチング用キャリアの主キャリアとも称し、それよりも低い周波数Fc2,Fc3を有するキャリアC2,C3をスイッチング用キャリアの副キャリアとも称する。
【0103】
なお、副キャリアが一つの場合は、第1の実施の形態において主キャリアはキャリアC1が、副キャリアはキャリアC2が、それぞれ対応する。
【0104】
副キャリアが一つの場合には、脈動成分Vrpの閾値は一つ(第1の実施の形態の例では値“0”)で足りる。主キャリアと副キャリアと切り替えるための閾値を主閾値として把握すれば、副キャリアが複数の場合に副キャリアを切り替えるための閾値を副閾値として把握することができる。上述の例では副閾値は値“−10”を採り、副キャリアの周波数Fc2,Fc3が切り替わるための、脈動成分Vrpについての基準となる。
【0105】
図18は第2の実施の形態にかかる電力変換装置の構成を例示する回路図である。当該構成は、第1の実施の形態で示された電力変換装置の制御部4を制御部14に置換した構成を有している。但し、PWM手段13は周波数Fc3のスイッチング用キャリアC3も、スイッチング用キャリアC1,C2と同期して生成する。
【0106】
制御部14は、制御部4に対して切替手段11を切替手段16と置換し、かつ第3のキャリア周波数生成手段15を追加した構成を有している。第3のキャリア周波数生成手段15は、周波数Fc3を出力する。ここでFc3=m×Fc1,Fc2=n×Fc3(m,n=2、3、4…)の関係がある。これは第1の実施の形態で
図2や
図6を用いて説明したのと同様に、スイッチング用キャリア同士の切り替わりにおいて、それぞれの最大値同士あるいは最小値同士を一致させるためである。第1の実施の形態の動作と、第2の実施の形態の動作との相違は、係数mが1であるか2以上であるかの相違と把握することもできる。
【0107】
図19は切替手段16の構成を例示するブロック図である。切替手段16は、切替手段11が有する選択部111、大小判断器112、スイッチングコントローラ113に加え、更に選択部161,大小判断器162を有している。
【0108】
大小判断器162は、脈動成分Vrp1と閾値“−10”とを入力し、比較結果信号Eを出力する。比較結果信号Eは、脈動成分Vrp1が−10以上であれば活性化し、−10未満であれば非活性する。
【0109】
選択部116は、第1のキャリア周波数Fc1(ここでは端子Aに入力)と第3のキャリア周波数Fc3(ここでは端子Bに入力)のいずれかを選択して、端子Cから出力する。
【0110】
選択部111の端子Aには、第1の実施の形態とは異なり、選択部116の端子Cが接続される。よって、おおまかには、比較結果信号Dが活性であれば(直流電圧Vdcの変動は緩やかであるので)端子Bを端子Cに接続して周波数Fcとして周波数Fc2を採用する。比較結果信号Dが非活性であれば端子Aを端子Cに接続する。比較結果信号Dが非活性であっても、つまり脈動成分Vrp1が零又は負であっても、選択部161の機能によって、周波数Fcとして周波数Fc1,Fc3のいずれかが周波数Fcとして採用される。
【0111】
第1の実施の形態において
図6を用いて説明されたように、周波数Fcを切り替えるタイミングは、周波数が低い方のスイッチング用キャリアと同期することが望ましい。よって第2の実施の形態でもスイッチングコントローラ113にはスイッチング用キャリアC2が入力する。
【0112】
第1の実施の形態では、三相交流を全波整流した場合、周波数Fc1として電源周波数の200倍(=10kHz/50Hz)を、周波数Fc2として電源周波数の50倍(=10kHz/50Hz)を、それぞれ選定した。つまりFc2=Fc1/4となる場合を例示した。第2の実施の形態でも、Fc2=Fc1/4としつつ、Fc3=Fc1/2に設定することができる。これは上述の係数m,nがいずれも値2を採ることに相当する。
【0113】
勿論、第1の実施の形態で説明したのと同様に、単相交流を全波整流した場合には適切な周波数Fc1,Fc2,Fc3は、三相交流を全波整流した場合の1/3の値となるし、電源周波数に比例もする。
【0114】
そしてPWM手段13では、切替手段16から出力された周波数Fcが周波数Fc1,Fc2,Fc3のいずれであるかに対応して、それぞれキャリアC1、C2,C3をスイッチング用キャリアとして採用して、スイッチング制御信号Gを生成する。またスイッチング用キャリアを用いて直流電圧Vdcをサンプリングする。
【0115】
図17を用いて説明したように、スイッチング用キャリアの周波数を、直流電圧Vdcの波形の変化に応じて切り替えるので、制御の追従性を確保しつつ、当該周波数の平均値を低減することができ、スイッチング損失を抑制することができる。
【0116】
変形.
PWM手段13はスイッチング用キャリアC1を生成し、
図7及び
図8を用いて説明したように、検出手段83において採用されるサンプリング周波数は10kHzを採用することが望ましい。よって第1の実施の形態や第2の実施の形態において、電圧脈動検出手段8は、第1のキャリア周波数生成手段9から周波数Fc1を受ける代わりに、PWM手段13からスイッチング用キャリアC1を受け取ってもよい。
【0117】
図20及び
図21は第1の実施の形態の変形を、
図22及び
図23は第2の実施の形態の変形を、それぞれ示すブロック図である。
【0118】
図20は制御部4の変形である制御部4Aの構成を、
図22は制御部14の変形である制御部14Aの構成を、それぞれ示している。これらの構成は、第1のキャリア周波数生成手段9,第2のキャリア周波数生成手段10,第3のキャリア周波数生成手段15は、それぞれキャリアC1を生成する第1のキャリア生成手段9A,キャリアC2を生成する第2のキャリア生成手段10A,キャリアC3を生成する第3のキャリア生成手段15Aと置換している。これらのキャリアを生成する手段9A,10A,15Aは、キャリア同士で最大値や最小値を採るタイミングが一致するように同期して動作することが望ましい(
図6参照)。
【0119】
この場合、PWM手段13は周波数Fcに替えてこれらのキャリアのいずれかをキャリアC0として受けるので、その内部でキャリアを生成する必要はない。よって
図20及び
図22ではキャリアを生成する必要がないPWM手段13Aで、制御部4,14中のPWM手段13(
図3、
図18参照)を置換した。
【0120】
この場合、
図21に示されるように切替手段11には周波数Fc1,Fc2に替えてキャリアC1,C2が、
図23に示されるように切替手段16には周波数Fc1,Fc2,Fc3に替えてキャリアC1,C2,C3が、それぞれ与えられる。切替手段11,16においてスイッチングコントローラ113はPWM手段13からではなく、キャリアC2を第2のキャリア生成手段10Aから入力する。また、電圧脈動検出手段8には周波数Fc1の代わりにキャリアC1が入力される。電圧脈動検出手段8はキャリアC1に基づいてサンプリングを行ってもよいし、キャリアC1から周波数Fc1を検出して、当該周波数Fc1をサンプリング周波数としてサンプリングを行ってもよい。
【0121】
第2の実施の形態ではスイッチング用キャリアの周波数として3種類が採用される場合を示したが、更に多くの種類を採用し、当該周波数の切替を細かく行ってもよい。
【0122】
スイッチング用キャリアの切り替わりが、それぞれの最大値同士、若しくは最小値同士が一致するタイミングで行われるには、それぞれのキャリアの一周期が保たれるためには、下記の関係があることが望ましい。
【0123】
(i)
図2を参照して、主キャリアC1の最大値と全ての副キャリアC2,C3,…の最大値とは等しく、主キャリアC1の最小値と全ての副キャリアC2,C3,…の最小値とは等しい。
【0124】
(ii)
図6を参照して、全ての副キャリアの周波数Fc2,Fc3,…は、主キャリアの周波数Fc1の整数分の一(当該整数は2以上)である。
【0125】
(iii-a)全ての副キャリアのうち最も周波数が低いもの(第2実施の形態に即していえば、キャリアC2)が最大値を採るタイミングでは、他の副キャリアの全て(第2実施の形態に即していえば、キャリアC3)及び主キャリアC1が最大値を採って同期する。この場合、スイッチング用キャリアの切替は、それらが最大値近傍を採るタイミングで行われる。
【0126】
図24は上記(i)(ii)(iii-a)の条件を満足するキャリアC1,C2,C3を例示するグラフである。ここで副キャリアC3の周波数Fc3は主キャリアC1の1/2であり、副キャリアC2の周波数Fc2は副キャリアC3の1/2であって、即ち主キャリアC1の1/4であある。上述の係数m,nについてみれば、m=n=2の場合が例示されている。スイッチング用キャリアの切替は、図中、矢印で示されたタイミングで行われる。
【0127】
上記条件(iii-a)に替えて下記条件(iii-b)が満足されても良い。
【0128】
(iii-b)全ての副キャリアのうち最も周波数が低いものが最小値を採るタイミングでは、他の副キャリアの全て及び主キャリアC1が最小値を採って同期する。この場合、スイッチング用キャリアの切替は、それらが最小値近傍を採るタイミングで行われる。
【0129】
図25は上記(i)(ii)(iii-b)の条件を満足するキャリアC1,C2,C3を例示するグラフである。ここでも
図24に例示された場合と同様にして、Fc2=Fc3/2=Fc1/4(m=n=2)の場合が例示されている。スイッチング用キャリアの切替は、図中、矢印で示されたタイミングで行われる。
【0130】
このように副キャリアが二つある場合には、一つ副キャリアC3の周波数Fc3は、他の副キャリアC2の周波数Fc2の整数倍であることが望ましい。勿論、副キャリアが3つ以上設定される場合でも、かかる条件を満足する副キャリアが存在することが望ましい。これにより、複数の副キャリア同士を切り替えてスイッチング用キャリアを採用する場合も、スイッチングによって電力変換器2から得られる交流電圧は、電圧指令V*に応じたものとなる。