【実施例1】
【0012】
この発明の実施例1を
図1と
図2にしたがって説明する。
図1と
図2に示すように、ターボチャージャの回転軸3を回転可能に支持する転がり軸受装置は、軸受ハウジング10と、第1、第2の両転がり軸受20、30と、スペーサ部材40とを備える。
【0013】
軸受ハウジング10は筒状に形成され、ターボチャージャーの本体ケース1に形成された軸受ハウジング組付部2に挿入されて装着される。
図2に示すように、軸受ハウジング10の内周面の両端部には、第1、第2の両転がり軸受20、30がそれぞれ嵌込まれるハウジング部11、12が形成されている。
また、軸受ハウジング10の外周面の両端部寄り部分には、縦断面V溝状の環状溝17、18がそれぞれ形成されている。
【0014】
軸受ハウジング10には、第1、第2の両転がり軸受20、30に対し潤滑油を強制的に供給する油路13がそれぞれ形成されている。
この実施例1において、
図2に示すように、第1の転がり軸受20に対する油路13は、軸受ハウジング10の内部側から第1の転がり軸受20に潤滑油を供給するために、軸受ハウジング10の外周面の環状溝17から軸受ハウジング10の内周面にわたって貫設され、かつ軸受ハウジング10の内周面側が小径に絞られたノズル孔14によって構成されている。
また、第2の転がり軸受30に対する油路13は、軸受ハウジング10の外部側から第2の転がり軸受30に潤滑油を供給するために、軸受ハウジング10の他端面の径方向に沿って形成された油溝15によって形成されている。
また、軸受ハウジング10の下部の両ハウジング部11、12の間に位置する部分(この実施例1では中央部)に潤滑油の排出孔16が形成されている。
【0015】
第1の転がり軸受20は、内輪21と、外輪22と、これら内・外輪21、22の間の環状空間に保持器24によって保持された状態で転動可能に配設される複数の転動体(図では玉)23とを備える。
また、第2の転がり軸受30は、第1の転がり軸受20と同一形状大きさに形成された内輪31と、外輪32と、複数の転動体33と保持器34とを備える。
そして、第1、第2の両転がり軸受20、30は、各内輪31の間にスペーサ部材40が配設された状態で、各外輪22、32が軸受ハウジング10のハウジング部11、12に嵌挿(圧入)されて固定される。
【0016】
スペーサ部材40は、回転軸3が挿通可能な中心孔を有する円筒状に形成されている。このスペーサ部材40の外周面41は、その両端部が第1、第2の両転がり軸受20、30のの各内輪21、31の端部外周面に近い外径寸法に形成されると共に、両端部から軸受ハウジング10の排出孔16に向けて徐々に大径に形成されたテーパ状に形成されている。
この実施例1において、軸受ハウジング10の排出孔16は、第1、第2の両転がり軸受20、30の間の中間に配設される。
そして、スペーサ部材40の外周面41は、その両端部から軸方向中央部に向けてテーパ角度が徐々に緩められたクラウニング形状をなしている。
【0017】
なお、軸受ハウジング10のハウジング部11、12に第1、第2の両転がり軸受20、30がスペーサ部材40を介してそれぞれ嵌込まれ、その後、軸受ハウジング10が、ターボチャージャーの本体ケース1の軸受ハウジング組付部2に組み込まれる。
その後、回転軸3が、第1の転がり軸受20の内輪21と、スペーサ部材40と、第2の転がり軸受30の内輪31との順に嵌挿されて組み付けられる。これによって、回転軸3の軸上に所定の間隔を隔てて第1、第2の両転がり軸受20、30が配設される。
また、周知のように、回転軸31の一端部にはタービンホイール4が装着され、同回転軸31の他端部にはコンプレッサインペラ7が装着される。
【0018】
この実施例1に係る転がり軸受装置は上述したように構成される。
したがって、ターボチャージャーの作動時には、軸受ハウジング10の油路13としてのノズル孔14と、油溝15とにそれぞれ供給される潤滑油が第1、第2の両転がり軸受20、30に向けて強制的に供給される。
前記潤滑油のうち、一部の潤滑油がスペーサ部材40の外周面41に付着することがある。
スペーサ部材40の外周面41の両端部あるいはその近傍に付着した潤滑油がスペーサ部材40の回転による遠心力の作用を受けると、スペーサ部材40の外周面41の端部から最大径となる部分、すなわち、軸受ハウジング10の排出孔16の上方に対応する部分に向けて誘導されて流れる。
これによって、スペーサ部材40の外周面41の両端部あるいはその近傍に付着した潤滑油を排出孔16から迅速に排出することが可能となる。
このため、第1、第2の両転がり軸受20、30内に必要以上の潤滑油が滞留されることを防止することができ、潤滑油の攪拌抵抗の増大によるトルク損失を抑制することができる。
【0019】
この実施例1において、スペーサ部材40の外周面41がクラウニング形状をなすことによって、
図2の矢印で示すように、スペーサ部材40の外周面41の両端部あるいはその近傍に付着した潤滑油は、スペーサ部材40の外周面41の両端部から軸方向中央部に向けて円滑に誘導されて流れる。そして、スペーサ部材40の外周面41の軸方向中央部に達した潤滑油は、軸受ハウジング10の排出孔16に向けて流れて排出される。
【0020】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。
例えば、前記実施例1においては、ターボチャージャーの本体ケース1と、軸受ハウジング10とがそれぞれ個別に製作されて一体状に組み付けられる場合を例示したが、ターボチャージャーの本体ケース1と軸受ハウジング10とが一体をなして一部品で構成される場合においてもこの発明を実施することができる。
また、前記実施例1において、第1の転がり軸受20に対する油路13が軸受ハウジング10の内部側から第1の転がり軸受20に潤滑油を供給するノズル孔14によって構成され、第2の転がり軸受30に対する油路13が軸受ハウジング10の他端面の径方向に沿って形成された油溝15によって形成される場合を例示したが、第2の転がり軸受30に対する油路13を軸受ハウジング10の内部側から第2の転がり軸受30に潤滑油を供給するノズル孔によって構成されてもよい。
また、第1の転がり軸受20に対する油路13が軸受ハウジング10の一端面の径方向に沿って形成される油溝によって構成されてもよい。
また、ターボチャージャー以外の転がり軸受装置としても使用することが可能である。