特許第5910060号(P5910060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910060
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/028 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   H01G9/02 331G
   H01G9/02 331H
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-277914(P2011-277914)
(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-131514(P2013-131514A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】奈良谷 一徳
【審査官】 堀 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−155964(JP,A)
【文献】 特開2010−087014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡面化層を有する陽極体の表面に形成された誘電体酸化皮膜と、前記酸化皮膜上に形成された導電性高分子層と、この導電性高分子層上に形成された陰極体と、を備えた固体電解コンデンサにおいて、
前記導電性高分子層が、少なくともエチレングリコール及びニトロ化合物を含む溶液に導電性高分子化合物が分散された混合溶液を用いて得られ、 前記導電性高分子層における前記導電性高分子化合物と前記ニトロ化合物との重量割合が、前記導電性高分子化合物の量を1とした場合に、前記ニトロ化合物の量が0.6以上7以下であることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記ニトロ化合物は、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール又はm−ニトロアセトフェノンであることを特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記導電性高分子層は、前記酸化皮膜上に形成された第1の導電性高分子層とその外側に形成された第2の導電性高分子層とを備え、前記第2の導電性高分子層が前記混合溶液を用いて形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
拡面化層を有する陽極体の表面に誘電体酸化皮膜を形成する工程と、
前記酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程と、
前記導電性高分子層上に陰極体を形成する工程と、
を備えた固体電解コンデンサの製造方法において、
前記導電性高分子層を形成する工程は、水、エチレングリコール及びニトロ化合物を含む溶液に導電性高分子化合物を分散した混合溶液を用いて形成し、前記ニトロ化合物は、混合溶液全体を100重量部とした場合、1重量部以上10重量部以下であることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記ニトロ化合物は、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール又はm−ニトロアセトフェノンであることを特徴とする請求項4記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記導電性高分子層を形成する工程は、前記酸化皮膜上に第1の導電性高分子層を形成する工程と、前記第1の導電性高分子層上に第2の導電性高分子層を形成する工程とを備え、前記第2の導電性高分子層を形成する工程は、前記混合溶液を前記第1の導電性高分子層に適用して形成することを特徴とする請求項4又は5記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子化合物を固体電解質とする固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、導電性高分子を固体電解質として用いた固体電解コンデンサが知られているが、近年、導電性高分子の層を2層形成するものが提案されている。この種の固体電解コンデンサは、化学酸化重合や電解酸化重合に伴い作製された従来の導電性高分子の欠点を補う目的で、例えば、内側に化学重合による第1の導電性高分子層を形成し、さらにその外側に導電性高分子化合物の懸濁水溶液を浸漬・乾燥することによる第2の導電性高分子層を形成するものである(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記の固体電解コンデンサでは、素子外表面に形成される導電性高分子層を一定の厚さとするため、第2の導電性高分子層を形成する際に導電性高分子化合物の懸濁水溶液の粘度を高くする場合がある。この場合、導電性高分子化合物の懸濁水溶液がエッチングピット内に十分に浸透しないため、第1の導電性高分子層と第2の導電性高分子層の間の接続状態が悪くなり、ESRを低減することができないという問題が生じていた。
【0004】
そこで、前記の問題を解決するため、グリコール系溶媒を添加した導電性高分子化合物の分散液を塗布して外側の導電性高分子層を形成して固体電解コンデンサを作製する方法が提案されている。この方法では、グリコール系溶媒を分散液に添加することで、下地の高分子層との密着性が向上し、ESRの上昇を抑制する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−121281号公報
【特許文献2】特開平2007−299856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、導電性高分子を固体電解質として用いた固体電解コンデンサでは、初期ESR特性だけでなく、高温雰囲気下でのESR特性、リフロー時のESR特性の改善が要望されている。しかしながら、前述した固体電解コンデンサでは、これらの特性が必ずしも十分とは言えなかった。
【0007】
本発明は、前記のような課題を解消するためになされたものであって、その目的は、高温雰囲気下でのESR特性、リフロー時のESR特性を改善可能な固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく固体電解コンデンサについて鋭意検討を重ねた結果、水、エチレングリコール及びニトロ化合物を含む溶液に導電性高分子化合物を分散した混合溶液を用いて導電性高分子層を形成することにより、高温雰囲気下及びリフロー時のESRを低減できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、拡面化層を有する陽極体の表面に形成された誘電体酸化皮膜と、前記酸化皮膜上に形成された導電性高分子層と、この導電性高分子層上に形成された陰極体と、を備えた固体電解コンデンサにおいて、前記導電性高分子層が、少なくともエチレングリコール及びニトロ化合物を含む溶液に導電性高分子化合物が分散された混合溶液を用いて得られ、 前記導電性高分子層における前記導電性高分子化合物と前記ニトロ化合物との重量割合が、前記導電性高分子化合物の量を1とした場合に、前記ニトロ化合物の量が0.6以上7以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、拡面化層を有する陽極体の表面に誘電体酸化皮膜を形成する工程と、前記酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程と、前記導電性高分子層上に陰極体を形成する工程と、を備えた固体電解コンデンサの製造方法において、前記導電性高分子層を形成する工程は、水、エチレングリコール及びニトロ化合物を含む溶液に導電性高分子化合物を分散した混合溶液を用いて形成し、前記ニトロ化合物は、混合溶液全体を100重量部とした場合、1重量部以上10重量部以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温雰囲気下でのESR特性、リフロー時のESR特性を改善可能な固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る固体電解コンデンサについて、その製造方法の一例に従って順に説明する。
【0013】
(誘電体酸化皮膜の形成)
まず、10×10mm等の大きさを有する平板状のアルミニウムエッチド箔(陽極体)の表面に、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液中で5V、30分間程度の化成処理を行うことにより、アルミニウム誘電体酸化皮膜を形成する。次に、この陽極体を所定の化成液に浸漬し、電圧印加して修復化成を行う。
【0014】
修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、コンデンサ素子を化成液に浸漬し、電圧印加して修復化成する時間は、5〜120分が望ましい。
【0015】
(第1の導電性高分子層の形成)
次に、アルミニウム誘電体酸化皮膜上に、導電性高分子化合物を分散させた分散液を例えば5回塗布した後、150℃で60分間加熱することで第1の導電性高分子層を形成する。
【0016】
導電性高分子化合物を分散させた分散液としては、例えば、ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下、PEDOTという)からなる導電性高分子化合物の粉末とポリスチレンスルホン酸からなるドーパントの固形分を混合したものを溶媒の水に溶解したものを用いることができる。また、導電性高分子化合物の濃度は、水溶液に対して1〜10%とすることができる。なお、導電性高分子化合物の分散液の溶媒は、導電性高分子化合物が溶解するものであれば水以外でも良い。
【0017】
(第2の導電性高分子層の形成)
次いで、前記導電性高分子化合物と同一又は異なる導電性高分子化合物を分散させた分散液とエチレングリコールとニトロ化合物とからなる混合溶液を第1の導電性高分子層上に、例えば5回塗布した後、150℃で60分間加熱することで第2の導電性高分子層を形成する。
【0018】
導電性高分子化合物を分散させた分散液としては、第1の導電性高分子層を形成する際に用いた分散液と同様に、水溶液に対して1〜10%の濃度のPEDOTからなる導電性高分子化合物を含んだ分散液を用いることができる。この分散液に対して、さらにエチレングリコール及びニトロ化合物を添加する。添加量としては、後述する実施例の結果から明らかなように、混合溶液全体を100重量部とした場合、分散液50重量部、エチレングリコール35〜49重量部、ニトロ化合物1以上15重量部未満とすることが好ましい。
【0019】
また、ニトロ化合物としては、脂肪族ニトロ化合物や芳香族ニトロ化合物が挙げられ、なかでも後述する実施例の結果から明らかなように、m−ニトロフェノール(mNPh)、p−ニトロフェノール(pNPh)又はm−ニトロアセトフェノン(mNAc)が好ましい。
【0020】
前記のような割合の混合溶液を用いて第2の導電性高分子層を形成すると、乾燥後の第2の導電性高分子層全体におけるニトロ化合物の含有量は、重量比率で導電性高分子を1とした場合にニトロ化合物が10未満の範囲となる。
【0021】
(陰極導電体層の形成)
さらに、この第2の導電性高分子層の上にカーボン層を塗布して150℃で30分間乾燥し、次いで、銀ペースト層を塗布して180℃で60分間乾燥することにより陰極導電体層を形成する。
【0022】
なお、前記第1の導電性高分子層は、導電性高分子化合物を分散させた分散液を誘電体酸化皮膜上に塗布・乾燥して形成したが、従来のように、誘電体酸化皮膜が形成された陽極体を酸化剤(p−トルエンスルホン酸第二鉄)と3,4−エチレンジオキシチオフェン(エタノール溶液)に浸漬し、60℃で30分間、150℃で60分間の加熱重合を行うことにより形成することもできる。
【0023】
(作用・効果)
水、エチレングリコール及びニトロ化合物を含む溶液に導電性高分子化合物を分散した混合溶液を用いて、導電性高分子層を形成することで、得られた固体電解コンデンサのESR特性が改善され、さらに高温下でのESR特性も良好であった。この理由は、混合溶液に含まれるエチレングリコールが導電性高分子化合物の配向性を向上させて良好な導電性高分子層を形成することでき、さらには、この配向性が向上した導電性高分子層に取り込まれたニトロ化合物がこの導電性高分子層の熱劣化を抑制し、高温化でのESR特性を改善せしめているものと推定される。なお、2層からなる導電性高分子層を用い、水、エチレングリコール及びニトロ化合物を含む溶液に導電性高分子化合物を分散した混合溶液を用いて形成した導電性高分子層を外側に形成することが、熱劣化の抑制や高温化でのESR特性の改善により効果的であると考えられる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の効果につき、実施例により実証する。
[実験例1](各種添加剤の検討)
大きさが10×10mmの平板状のアルミニウムエッチド箔を、アジピン酸アンモニウム水溶液中で5V、30分間化成し、その表面にアルミニウム誘電体酸化皮膜を形成した。続いて、リン酸二水素アンモニウム水溶液に浸漬し、電圧印加して40分間修復化成を行った。次に、PEDOTからなる導電性高分子化合物の粉末とポリスチレンスルホン酸からなるドーパントの固形分とを水に混合し、水溶液に対して導電性高分子化合物を3%の濃度とした分散液を作製した。この分散液をアルミニウム誘電体酸化皮膜上に5回塗布後、150℃で60分間加熱することで第1の導電性高分子層を形成した。
【0025】
次いで、水溶液に対して導電性高分子化合物を3%の濃度とした前記分散液を用いて、この分散液50重量部、エチレングリコール50重量部とした混合溶液(従来例1)、分散液50重量部、水49重量部、p-ニトロフェノール(pNPh)1重量部とした混合溶液(従来例2)、分散液50重量部、エチレングリコール49重量部、p-ニトロフェノール(pNPh)1重量部とした混合溶液(実施例1)、分散液50重量部、エチレングリコール49重量部、m-ニトロアセトフェノン(mNAc)1重量部とした混合溶液(実施例2)、分散液50重量部、エチレングリコール49重量部、m-ニトロフェノール(mNPh)1重量部とした混合溶液(実施例3)、分散液50重量部、エチレングリコール49重量部、p-アミノフェノール(pAmPh)1重量部とした混合溶液(比較例1)をそれぞれ第1の導電性高分子層の上に1回塗布し、150℃で60分間加熱することで第2の導電性高分子層を形成した。さらに、この第2の導電性高分子層の上にカーボン層を塗布して150℃で30分間乾燥し、次いで銀ペースト層を塗布して180℃で60分間乾燥することにより陰極導電体層を形成した。
【0026】
このようにして作製した従来例1、2、実施例1乃至3及び比較例1の固体電解コンデンサについて、初期容量、リフロー後のESR(100kHz)及び170℃66時間後のESR(100kHz)を測定した。測定結果を表1に示す。
【表1】
【0027】
表1の結果より、実施例1乃至3では従来例1及び2と比較してリフロー実施後のESRを低減できることが確認できた。また、170℃66時間後のESRも、実施例1乃至3では従来例1及び2と比較してESRの上昇が抑えられている。これに対して、比較例1では、従来例1及び2と比較して初期容量が低下し、且つ170℃66時間後のESRも大幅に悪化していた。これより、p-ニトロフェノール(pNPh)、m-ニトロアセトフェノン(mNAc)又はm-ニトロフェノール(mNPh)の添加は、リフロー後及び170℃66時間後のESRの低減に効果があることが判明した。
【0028】
[実験例2](添加溶媒の比較)
実施例1と同様に第2の導電性高分子層を形成するための混合溶液として、分散液50重量部、エチレングリコール49重量部、p-ニトロフェノール(pNPh)1重量部として固体電解コンデンサを作成した(実施例4)。また第2の導電性高分子層を形成するための混合溶液として、分散液50重量部、ジエチレングリコール49重量部、p-ニトロフェノール(pNPh)1重量部としたもの(比較例2)、分散液50重量部、グリセリン49重量部、p-ニトロフェノール(pNPh)1重量部としたもの(比較例3)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で固体電解コンデンサを作製した。これらの固体電解コンデンサについて、リフロー後のESR(100kHz)及び170℃66時間後のESR(100kHz)を測定した結果を表2に示す。
【表2】
【0029】
表2の結果より、実施例4と比較して、比較例2及び3では170℃66時間後のESRが増大した。これより、添加溶媒としては、エチレングリコールが好ましいことが判明した。
【0030】
[実験例3](p-ニトロフェノールの添加量の変更)
従来例1と同様に第2の導電性高分子層を形成するための混合溶液として、分散液50重量部、エチレングリコール50重量部として固体電解コンデンサを作成した(従来例3)。実施例1と同様に第2の導電性高分子層を形成するための混合溶液として、分散液50重量部、エチレングリコール49重量部、p-ニトロフェノール(pNPh)1重量部として固体電解コンデンサを作成した(実施例5)。また、第2の導電性高分子層を形成するための混合溶液として、分散液50重量部、エチレングリコール45重量部、p-ニトロフェノール(pNPh)5重量部としたもの(実施例6)、分散液50重量部、エチレングリコール40重量部、p-ニトロフェノール(pNPh)10重量部としたもの(実施例7)、分散液50重量部、エチレングリコール35重量部、p-ニトロフェノール(pNPh)15重量部としたもの(比較例4)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で固体電解コンデンサを作製した。これらの固体電解コンデンサについて、初期容量、リフロー後のESR(100kHz)及び170℃66時間後のESR(100kHz)を測定した結果を表3に示す。
【表3】
【0031】
表3の結果より、実施例5〜7ではリフロー後のESR及び170℃66時間後のESR共に良好であった。これに対して、従来例3ではリフロー後のESRは良好であるものの、170℃66時間後のESRは大幅に悪化した。また、比較例4ではリフロー後のESR及び170℃66時間後のESRは共に悪化していた。これより、p-ニトロフェノールの添加量は、1重量部以上15重量部未満が好ましいと考えられる。またこれらの導電性高分子層を分析したところ、導電性高分子層に含まれる導電性高分子とp−ニトロフェノールとの重量比率は導電性高分子を1とした場合にp−ニトロフェノールが10未満、特に7以下が好ましいことが分かった。