特許第5910080号(P5910080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910080
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   G02B6/42
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-289123(P2011-289123)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-137465(P2013-137465A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116182
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 照雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165227
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 純
(72)【発明者】
【氏名】荒生 肇
(72)【発明者】
【氏名】島津 貴之
(72)【発明者】
【氏名】横地 寿久
【審査官】 里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−002579(JP,A)
【文献】 特表2009−536362(JP,A)
【文献】 特開2008−257094(JP,A)
【文献】 特開2002−365472(JP,A)
【文献】 特表2002−537577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36−6/38
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを保持する光ファイバ保持部材と、前記光ファイバからの光信号を回路基板に搭載された光素子に向けて光路変換させる光結合部材と、の間に、前記光ファイバと前記光結合部材とが光結合する隙間である光結合空間を形成するように、前記光ファイバ保持部材と前記光結合部材とを接合し、
前記光ファイバ保持部材と前記光結合部材とに密着しつつ前記光結合空間をカバー部材で覆う、光モジュールの製造方法であって、
前記カバー部材は、前記光ファイバ保持部材と前記光結合部材とを機械的に連結させるクリップ部材であり、
前記クリップ部材は、前記光ファイバ保持部材と前記光保持部材とを覆う長方形状の天板部と、前記天板部の前方の両端から下方に張り出す一対の前方脚部と、前記天板部の後方の両端から下方に張り出す一対の後方脚部と、前記天板部と前記後方脚部との間に形成されている屈曲予定線と、を有し、
前記天板部は上方に凸になるように屈曲し、前記前方脚部は前記天板部の中心部に向けて傾いており、
前記前方脚部の内面部を前記光結合部材の前方面に当接させつつ、前記天板部を前記光結合部材と前記光ファイバ保持部材の後背部に密着させ、前記後方脚部を前記屈曲予定線に沿って屈曲させ、前記後方脚部の内面部を前記光ファイバ保持部材の後方面に当接させ、
前記クリップ部材の弾性力により、前記光結合部材と前記光ファイバ保持部材とが前後方向に固定支持されると共に、前記天板部が略平面形状となって、前記光結合部材と前記光ファイバ保持部材との後背部に密着した状態が維持される、
光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記光結合部材は、前記光ファイバと前記光素子との間の光路で光信号を反射する反射面を有し、
前記カバー部材は、前記反射面の後背部を覆う請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記光結合部材の後背部を覆う請求項1または請求項2に記載の光モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光素子が搭載された回路基板を備える光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク機器に用いられる光モジュールにおいて、多チャンネル化・高速化・小型化が進んでいる。多チャンネル化・高速化・小型化に対応した光モジュールの一例として、回路基板に設けられ、受光素子と発光素子とからなる光素子と、その光素子と対向するようにレンズを有するレンズブロックと、レンズブロックに接続され、光ファイバが挿入されたフェルールとを備える光モジュールがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/116166号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される光モジュールは、レンズブロックとフェルールとの間に形成される、光ファイバとレンズが光結合する空間(光結合空間)が露出している。また、レンズブロックは、光ファイバから発信された光信号を回路基板上の光素子に向けて反射させる反射面を有しているが、この反射面も露出している。レンズブロックとフェルールはハウジングによって外部空間と区分けされているが、ハウジングの内部に塵等のゴミが侵入するのを防ぐのは困難である。従って、上述の光結合空間にゴミが侵入したり、反射面にゴミが付着したりして、通信品質を劣化させてしまう。
【0005】
また、光モジュールが寒冷地で使用される場合、レンズブロックが露出している構成では、レンズブロックの露出面上に結露した水滴が付着することが考えられるが、反射面の裏側に水滴が付着すると通信品質を劣化させる恐れがある。
【0006】
本発明は、ゴミや結露による通信品質の劣化を防ぐことができる光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の光モジュールは、光素子が搭載された回路基板と、光ファイバを保持する光ファイバ保持部材と、前記光ファイバからの光信号を前記光素子に向けて光路変換させる光結合部材と、を備え、前記光ファイバ保持部材と前記光結合部材とが接合された状態で、前記光ファイバ保持部材と前記光結合部材との間には、前記光ファイバと前記光結合部材とが光結合する隙間である光結合空間が形成され、前記光ファイバ保持部材と前記光結合部材とに密着しつつ前記光結合空間を覆うカバー部材を備えるものである。
【0008】
また、本発明の光モジュールの前記カバー部材は、前記光ファイバ保持部材と前記光結合部材とを機械的に連結させるクリップ部材であるものが好ましい。
【0009】
また、本発明の光モジュールは、前記光結合部材は、前記光ファイバと前記光素子との間の光路で光信号を反射する反射面を有し、前記カバー部材は、前記反射面の後背部を覆うものが好ましい。
【0010】
また、本発明の光モジュールの前記カバー部材は、前記光結合部材の後背部を覆うものが好ましい。
【0011】
また、本発明の光モジュールの前記クリップ部材は、前記光ファイバ保持部材と前記光結合部材とを機械的に連結した状態のとき、前記光ファイバ保持部材と前記光保持部材とを覆う部分は略平面形状であるものが好ましい。
【0012】
また、本発明の光モジュールの前記クリップ部材は、前記回路基板を収容するハウジングの一部で構成されるものが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光モジュールによれば、カバー部材が、光ファイバ保持部材と光結合部材とに密着しつつ光結合空間を覆うため、光結合空間にゴミが侵入するのを防ぐとともに、光結合部材の表面に結露による水滴が付着するのを防ぐことができる。従って、ゴミや水滴による光信号の損失を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る光モジュールを示す斜視図である。
図2】樹脂ハウジングを外した状態を示す斜視図である。
図3】金属ハウジングを外した状態を示す斜視図である。
図4】クリップ部材を搭載した状態を示す斜視図である。
図5図5中の(a)は、図3に示す基板を上から見た図であり、図5中の(b)は、図3に示す基板を横から見た図である。
図6図6中の(a)は、光結合空間を示す図であり、図6中の(b)は、図3に示す基板を横から見た図である。
図7図3に示す回路基板及び固定部材を横から見た図である。
図8図8中の(a)はクリップ部材の斜視図であり、図8中の(b)はクリップ部材を横から見た図であり、図8中の(c)はクリップ部材を後方から見た図であり、図8中の(d)はクリップ部材を前方から見た図であり、図8中の(e)は脚部を折り曲げる前の状態のクリップ部材を示す図である。
図9図1に示す光モジュールの断面図である。
図10】クリップ部材を金属ハウジングと一体に設けた変形例を示す図である。
図11図11中の(a)は変形例のクリップ部材の装着前の状態を示す図であり、図11中の(b)は変形例のクリップ部材の装着後に状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に示す光モジュール1は、光通信技術などにおいて信号(データ)の伝送に用いられるものであり、接続先のパソコンなどといった電子機器に電気的に接続され、入出力される電気信号を光信号に変換して光信号を伝送するものである。
【0017】
図1に示すように、光モジュール1は、光ケーブル3と、コネクタモジュール5とを備えている。光モジュール1では、単芯或いは多芯の光ケーブル3の末端がコネクタモジュール5に取り付けられて構成されている。
【0018】
光ケーブル3は、図1から図3に示されるように、複数本(ここでは4本)の光ファイバ心線(光ファイバ)7と、この光ファイバ心線7を被覆する樹脂製の外被9と、光ファイバ心線7と外被9との間に介在された極細径の抗張力繊維(ケブラー)11(図9図10を参照)と、外被9と抗張力繊維11との間に介在された金属編組13とを有している。つまり、光ケーブル3では、光ファイバ心線7、抗張力繊維11、金属編組13及び外被9が、その中心から径方向の外側に向けてこの順に配置されている。
【0019】
光ファイバ心線7は、コアとクラッドが石英ガラスである光ファイバ(AGF:All Glass Fiber)、クラッドが硬質プラスチックからなる光ファイバ(HPCF:Hard Plastic Clad Fiber)、等を用いることができる。ガラスのコア径が80μmの細径HPCFを用いると、光ファイバ心線7が小径に曲げられても破断しにくい。外被9は、ノンハロゲン難燃性樹脂である例えばPVC(polyvinylchloride)から形成されている。外被9の外径は、4.2mm程度であり、外被9の熱伝導率は、例えば0.17W/m・Kである。抗張力繊維11は、例えばアラミド繊維であり、束状に集合された状態で光ケーブル3に内蔵されている。
【0020】
金属編組13は、例えば錫めっき導線から形成されており、編組密度が70%以上、編み角度が45°〜60°である。金属編組13の外径は、0.05mm程度である。金属編組13の熱伝導率は、例えば400W/m・Kである。金属編組13 は、熱伝導を良好に確保するために高密度に配置することが好ましく、一例としては平角線の錫めっき導線で構成されていることが好ましい。
【0021】
コネクタモジュール5は、ハウジング20と、ハウジング20の前端(先端)側に設けられる電気コネクタ22と、ハウジング20に収容される回路基板24とを備えている。
【0022】
ハウジング20は、金属ハウジング(第1ハウジングの一例)26と、樹脂ハウジング(第2ハウジングの一例)28とから構成されている。金属ハウジング26は、収容部材30と、収容部材30の後端部に連結され、光ケーブル3を固定する固定部材32とから構成されている。金属ハウジング26は、鋼(Fe系)、ブリキ(錫めっき銅)、ステンレス、銅、真鍮、アルミなどの熱伝導率の高い(好ましくは100W/m・K以上)金属材料により形成されている。金属ハウジング26は、熱伝導体を構成している。
【0023】
収容部材30は、断面が略矩形形状を呈する筒状の中空部材である。収容部材30は、回路基板24などを収容する収容空間Sを画成している(図9図10を参照)。収容部材30の前端側には、電気コネクタ22が設けられ、収容部材30の後端側には、固定部材32が連結される。
【0024】
固定部材32は、板状の基部34と、筒部36と、基部34の両側から前方に張り出す一対の第1張出片38と、基部34の両側から後方に張り出す一対の第2張出片40とを有している。一対の第1張出片38は、収容部材30の後部からそれぞれ挿入され、収容部材30に当接して連結される。一対の第2張出片40は、後述する樹脂ハウジング28のブーツ46に連結される。なお、固定部材32は、基部34、筒部36、第1張出片38及び第2張出片40が板金により一体に形成されている。
【0025】
筒部36は、略円筒形状をなしており、基部34から後方に突出するように設けられている。筒部36は、カシメリング42との協働により光ケーブル3を保持する。具体的には、外被9を剥いだ後、光ケーブル3の光ファイバ心線7を筒部36の内部に挿通させると共に、抗張力繊維11を筒部36の外周面に沿って配置する。そして、筒部36の外周面に配置された抗張力繊維11上にカシメリング42を配置して、カシメリング42をかしめる。これにより、抗張力繊維11が筒部36とカシメリング42との間に挟持されて固定され、固定部材32に光ケーブル3が保持固定される。
【0026】
基部34には、光ケーブル3の金属編組13の端部がはんだにより接合されている。具体的には、金属編組13は、固定部材32においてカシメリング42(筒部36)の外周を覆うように配置されており、その端部が基部34の一面(後面)にまで延ばされてはんだにより接合されている。これにより、固定部材32と金属編組13とは、熱的に接続されている。さらに、収容部材30の後端部に固定部材32が結合することにより、収容部材30と固定部材32とが物理的且つ熱的に接続される。つまり、収容部材30と光ケーブル3の金属編組13とが熱的に接続される。
【0027】
樹脂ハウジング28は、例えばポリカーボネートなどの樹脂材料から形成されており、金属ハウジング26を覆っている。樹脂ハウジング28は、外装ハウジング44と、外装ハウジング44と連結するブーツ46とを有している。外装ハウジング44は、収容部材30の外面を覆うように設けられている。ブーツ46は、外装ハウジング44の後端部に連結され、金属ハウジング26の固定部材32を覆っている。ブーツ46の後端部と光ケーブル3の外被9とは、接着剤(図示しない)により接着される。
【0028】
電気コネクタ22は、接続対象(パソコンなど)に挿入され、接続対象と電気的に接続される部分である。電気コネクタ22は、ハウジング20の前端側に配置されており、ハウジング20から前方に突出している。電気コネクタ22は、接触子22aにより回路基板24に電気的に接続されている。
【0029】
回路基板24は、金属ハウジング26(収容部材30)の収容空間Sに収容されている。回路基板24には、制御用半導体50と、受発光素子52(光素子の一例)とが搭載されている。回路基板24は、制御用半導体50と受発光素子52とを電気的に接続している。回路基板24は、平面視で略矩形形状を呈しており、所定の厚みを有している。回路基板24は、例えば、ガラスエポキシ基板、セラミック基板などの絶縁基板であり、その表面又は内部には、金(Au)、アルミ(Al)又は銅(Cu)などにより回路配線が形成されている。制御用半導体50と受発光素子52とは、光電変換部を構成している。
【0030】
制御用半導体50は、駆動IC(Integrated Circuit)50aや波形整形器であるCDR(Clock Data Recovery)装置50bなどを含んでいる。制御用半導体50は、回路基板24において、表面24aの前端側に配置されている。制御用半導体50は、電気コネクタ22と電気的に接続されている。
【0031】
受発光素子52は、複数(ここでは2つ)の発光素子52aと、複数(ここでは2つ)の受光素子52bとを含んで構成されている。発光素子52a及び受光素子52bは、回路基板24において、表面24aの後端側に配置されている。発光素子52aとしては、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、レーザダイオード(LD:Laser Diode)、面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)などを用いることができる。受光素子52bとしては、例えば、フォトダイオード(PD:Photo Diode)などを用いることができる。
【0032】
受発光素子52は、光ケーブル3の光ファイバ心線7と光学的に接続されている。具体的には、図5(b)に示すように、回路基板24には、受発光素子52及び駆動IC50aを覆うようにレンズアレイ部品55(光結合部材の一例)が配置されている。レンズアレイ部品55には、発光素子52aから出射された光、又は、光ファイバ心線7から出射された光を反射して屈曲させる反射膜55a(反射面)が配置されている。光ファイバ心線7の末端にはコネクタ部品54(光ファイバ保持部材の一例)が取り付けられており、コネクタ部品54とレンズアレイ部品55とが位置決めピンによって位置決めされて結合することにより光ファイバ心線7と受発光素子52とが光学的に接続される。
【0033】
図6(a)に示されるように、レンズアレイ部品55はコネクタ部品54と接合する面に凹部が形成されており、レンズアレイ部品55とコネクタ部品54とが結合した状態で、台形状の光結合空間Cが形成される。コネクタ部品54に保持される光ファイバ心線7の端面から導出される光は、光結合空間Cを通過して、レンズアレイ部品55のレンズに導入される。また、レンズアレイ部品55から導出される光は、光結合空間Cを通過して、コネクタ部品54に保持される光ファイバ心線7の端面に導入される。レンズアレイ部品55は、光の入射部および出射部に、入射光を平行光とし、平行光を集光して出射するコリメートレンズを備えることが好ましい。このようなレンズアレイ部品55は、樹脂の射出成形により、一体に構成することができる。
【0034】
また、上述の実施形態では、図4(b)に示されるように、受発光素子52と光ファイバ心線7は異なる光軸を有しており、光結合部材であるレンズアレイ部品55の反射膜55aによって、両者が光結合されるように光軸方向が変換されている。また、レンズアレイ部品55に形成されている位置決めピンは、光ファイバ心線7の光軸と略平行な方向に向けて突出するように形成されている。光ファイバ心線7を保持するコネクタ部品54を光ファイバ心線7の光軸と略平行な方向に移動させることによって、コネクタ部品54をレンズアレイ部品55の位置決めピンと嵌合させ、光ファイバ心線7と受発光素子52とを光結合している。位置決めピンの突出方向は回路基板24の面方向と略平行であるので、コネクタ部品54を回路基板24の表面に沿わせながら接続することができ、組立作業の効率性(作業性)が向上する。
【0035】
また、光結合部材が、異なる光軸を有する受発光素子と光ファイバを光結合する構成は上記レンズアレイ部品55の形態に限定されない。即ち、反射膜55a設けることは必須ではなく、図10に示すように、レンズアレイ部品の反射膜55aに相当する位置に、当該反射面と同じ傾斜面を有する陥没部を形成し、レンズアレイ部品55の材料と空気との界面における屈折率差を利用した反射面を形成しても良い。
【0036】
上記のような光結合部材の構成は任意に選択され得るが、異なる光軸を有する受発光素子と光ファイバ心線とを光結合する構成をとるため、光結合部材の高さが回路基板24の表面24aから電気コネクタ22の上面までの距離よりも大きくなることがある。即ち、回路基板24に搭載される部材のうち、レンズアレイ部品55とコネクタ部品54が、最も背が高くなる場合がある。このような場合においては、後述するように、クリップ部材60は、コネクタ部品54とおよびレンズアレイ部品55とを機械的に連結した状態のとき、コネクタ部品54とレンズアレイ部品55とを覆う部分を略平面形状とするか、もしくは、回路基板24を収容するハウジング26の一部でクリップ部材60を構成してもよい。このように構成することで光モジュール1を小型化することができる。
【0037】
また、図4に示すように、コネクタ部品54とレンズアレイ部品55の後背部(基板と対向する面とは反対側の面)には、互いに結合したコネクタ部品54とレンズアレイ部品55とを挟みこむように固定支持するクリップ部材60(カバー部材の一例)が設けられている。
【0038】
クリップ部材60は、金属製の材料を機械加工して形成したものであり、図8(a)から図8(d)に示されるように、長方形状で平坦な天板部60aと、天板部60aの前方の両端から下方に張り出す一対の前方脚部60bと、天板部60aの後方の両端から下方に張り出す一対の後方脚部60cと、を有している。また、天板部60aと後方脚部60cとの間には屈曲予定線60dが形成されている。図8(a)から図8(d)に示されるクリップ部材60は、屈曲予定線60dに沿って後方脚部60cが折れ曲がった状態を示しており、図8(e)は、クリップ部材60の後方脚部60cが折れ曲がる前の状態を示している。
【0039】
前方脚部60bの長さは、レンズアレイ部品55やコネクタ部品54の高さよりも短いものである。従って、クリップ部材60をレンズアレイ部品55とコネクタ部品54に装着する際には、まず、前方脚部60bの内面部をレンズアレイ部品55の前方面に当接させつつ、天板部60aをレンズアレイ部品55とコネクタ部品54の後背部に密着させる。前方脚部60bの長さは、レンズアレイ部品55やコネクタ部品54の高さよりも短いため、前方脚部60bは回路基板24の表面24aに当接しない。天板部60aをレンズアレイ部品55とコネクタ部品54の後背部に密着させた後は、屈曲予定線60dに沿って後方脚部60cを屈曲させ、後方脚部60cの内面部をコネクタ部品54の後方面に当接させる。クリップ部材60の弾性力により、レンズアレイ部品55やコネクタ部品54は前後方向に固定支持され、また、天板部60aがレンズアレイ部品55とコネクタ部品54の後背部に密着した状態が維持される。
【0040】
天板部60aがレンズアレイ部品55とコネクタ部品54の後背部に密着している状態では、レンズアレイ部品55とコネクタ部品54との間に形成される光結合空間Cは、その上方が天板部60aにカバーされ、その下方が回路基板24の表面24aにカバーされて、ほぼ密閉した空間となる。
【0041】
また、天板部60aがレンズアレイ部品55とコネクタ部品54の後背部に密着している状態では、レンズアレイ部品55の反射膜55a(反射面)の後背面に形成される空間は、天板部60aの裏面とレンズアレイ部品55の後背部によりカバーされる状態となる。
【0042】
また、図7に示すように、天板部60aがレンズアレイ部品55とコネクタ部品54の後背部に密着している状態では、図8(c)に示すように、一対の後方脚部60c間には光ファイバ心線7が配索される開口部60eが形成されている。
【0043】
図9に示すように、回路基板24と収容部材30(金属ハウジング26)との間には、放熱シート(接続部材)56が配置されている。放熱シート56は、熱伝導性及び柔軟性を有する材料から形成される熱伝導体である。放熱シート56は、回路基板24の裏面24bにおいて、回路基板24の幅方向に沿って延在して設けられている。放熱シート56は、例えば受発光素子52の下方に配置される。放熱シート56は、その上面が回路基板24の裏面24bに物理的且つ熱的に接続されていると共に、その下面が収容部材30の内側面に物理的且つ熱的に接続されている。この放熱シート56により、回路基板24と金属ハウジング26とが熱的に接続され、回路基板24の熱が収容部材30に伝達される。
【0044】
なお、ここで言う熱的に接続されているとは、物理的な接続によって熱を伝達可能な経路が確立されていることを言う。したがって、本実施形態では、空気などの媒体を介して熱を伝達することは、熱的に接続されていることとはならない。
【0045】
また、放熱シート56は、その上面が回路基板24の裏面24bに物理的且つ熱的に接続されていると共に、その下面が収容部材30の内側面に物理的且つ熱的に接続されている。この放熱シート56により、回路基板24と金属ハウジング26とが熱的に接続され、回路基板24の熱が収容部材30に伝達される。
【0046】
上記構成を有する光モジュール1では、電気コネクタ22から電気信号を入力し、回路基板24の配線を介して制御用半導体50が電気信号を入力する。制御用半導体50に入力された電気信号は、レベルの調整やCDR装置50bにより波形整形などが行われた後に、制御用半導体50から回路基板24の配線を介して受発光素子52に出力される。電気信号を入力した受発光素子52では、電気信号を光信号に変換し、発光素子52aから光ファイバ心線7に光信号を出射する。
【0047】
また、光ケーブル3で伝送された光信号は、受光素子52bにより入射される。受発光素子52では、入射された光信号を電気信号に変換し、この電気信号を回路基板24の配線を介して制御用半導体50に出力する。制御用半導体50では、電気信号に所定の処理を施した後、電気コネクタ22にその電気信号を出力する。
【0048】
続いて、光モジュール1における放熱方法について、図9を参照しながら説明する。回路基板24に搭載された制御用半導体50及び受発光素子52で発生した熱は、まず回路基板24に伝わる。回路基板24に伝達された熱は、放熱シート56を介して収容部材30に伝えられる。次に、熱は、収容部材30からこれに連結された固定部材32に伝わり、固定部材32に接続された光ケーブル3の金属編組13に伝えられる。そして、金属編組13に伝わった熱は、光ケーブル3の外被9 を介して外部に放熱される。以上のようにして、光モジュール1では、発熱体である制御用半導体50及び受発光素子52で発生した熱が外部に放出される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、クリップ部材60の天板部60aがレンズアレイ部品55とコネクタ部品54の後背部に密着しつつ、レンズアレイ部品55とコネクタ部品54とを固定支持する。そのため、レンズアレイ部品55とコネクタ部品54との間に形成される光結合空間Cは、その上方が天板部60aにカバーされ、その下方が回路基板24の表面24aにカバーされて、ほぼ密閉した空間となる。従って、コネクタ部品54とレンズアレイ部品55との間に形成される光結合空間Cにゴミが侵入するのを防ぐとともに、レンズアレイ部品55の後背面に結露による水滴が付着するのを防ぐことができる。従って、ゴミや水滴による光信号の損失を防ぐことができる。なお、本実施形態で説明したクリップ部材60はカバー部材の一例であり、レンズアレイ部品55とコネクタ部品54とをカバーする機能と固定支持する機能とを兼ねるものであるが、カバーする機能だけを備えるカバー部材であっても良い。
【0050】
また、本実施の形態では、一つの部品であるクリップ部材60によって、光結合空間Cをカバーする機能と、コネクタ部品54とレンズアレイ部品55とを固定支持する機能とを両立させている。
【0051】
なお、上述のように本実施形態では、クリップ部材60を一つの部品として用いたが、図10に示すように、クリップ部材60を、金属ハウジング26の内面の一部に一体的に設ける構成としてもよい。図10に示すように、前方脚部と天板部と後方脚部とを金属ハウジング26の内面に設けることで、部品点数を削減することができるとともに、受発光素子52や駆動IC50aで発生する熱を金属ハウジング26に逃がすことができる。
【0052】
また、本実施形態では、クリップ部材60の天板部60aは、レンズアレイ部品55の後背部に密着しているため、レンズアレイ部品55の反射膜55a(反射面)の後背面に形成される空間は、天板部60aの裏面とレンズアレイ部品55の後背部によりカバーされる状態となる。従って、反射膜55aの裏面にゴミが侵入したり、結露した水滴が付着するのを防ぐことができ、反射膜55aでの光信号の損失を防ぐことができる。
【0053】
また、本実施形態では、クリップ部材60の天板部60aは、後方脚部60cを折り曲げた状態では、平坦な平面形状である。従って、金属ハウジング26の収容部材30の内部の限られた収容空間において、回路基板24の表面24a側の高さを抑えることができ、光モジュール1を小型化することができる。
【0054】
なお、クリップ部材は、図11に示される形状のものでもよい。図11(a)に示されるクリップ部材70は、レンズアレイ部品55とコネクタ部品54が装着される前の状態で、天板部60aが屈曲しており、前方脚部70bは、天板部70aの中心部に向けてやや傾いている。このクリップ部材70は、レンズアレイ部品55とコネクタ部品54に装着された後の状態では、図11(b)に示されるように、天板部60aがほぼ平坦な形状となる。従って、金属ハウジング26の収容部材30の内部の限られた収容空間において、回路基板24の表面24a側の高さを抑えることができ、光モジュール1を小型化することができる。
【0055】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0056】
1:光モジュール、3:光ケーブル、5:コネクタモジュール、7:光ファイバ心線、9:外被、11:抗張力繊維、13:金属編組、20:ハウジング、24:回路基板、26:金属ハウジング(第1ハウジングの一例)、28:樹脂ハウジング(第2ハウジングの一例)、30:収容部材、32:固定部材、50:制御用半導体(電子部品の一例)、52:受発光素子(光素子の一例)、54:コネクタ部品(光ファイバ保持部材の一例)、55:レンズアレイ部品(光結合部材の一例)、56:放熱シート、60:クリップ部材(カバー部材の一例)、S:収容空間、C:光結合空間
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