【実施例】
【0066】
以下に、本発明を具体的に説明するために実施例及び比較例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本発明の特徴を示す物性の評価には、以下の試験を実施した。
【0067】
<液状食品組成物の粘度の確認>
液状食品組成物の粘度の確認は、「B型粘度計(トキメック社製)」により測定した。詳しくは、内径60mmのガラス製容器に測定サンプルを投入し、液温度25℃、ロータNo.2、回転数60回転/分、保持時間30秒の条件で3回測定し、その平均値を測定値(粘度)とした。
【0068】
<液状食品組成物の酸性領域における半固形化確認および固形化率の算出>
液状食品組成物の酸性領域における半固形化の確認は、以下の方法で実施した。尚、固形化率の算出は、実施例3、4、比較例3〜5、および後述の乳化剤の添加量依存性の評価において行った。
(1) 50ml容量のプラスチック製チューブに、37℃に保温した人工胃液(日本薬局方)20gを投入する。
(2) 25℃にて保存した液状食品組成物10gを人工胃液中に投入し、人工胃液と液状食品組成物を含むプラスチック製チューブの重量を測定(〔ろ過前チューブ重量〕とする)する。
(3) プラスチック製チューブは、「HL−2000 HybriLinker(UVP Laboratory Products社製)」により穏やかに攪拌する。詳しくは、チューブをチャンバー内の固定具に固定し、機器のMotor Controlつまみを“MIN”に設定のうえ、37℃の条件に2分30秒の条件で攪拌する。
(4) 固形物をナイロン製網(40メッシュ;(株)相互理化学硝子製作所製)上にて吸引ろ過し、液部分を除いた後に、ナイロン製網ごとペーパータオル等の上に置いて、2分間、余分な水分を除去し、ナイロン製網を含む固形物の重量を測定(〔ろ過後固形物重量〕とする)し、さらに、内溶液を払い出した後のプラスチック製チューブの重量を測定(〔ろ過後風袋重量〕とする)する。
(5) ナイロン製網上に残存した固形物を確認する。また、固形化率を、式(1)にて計算する。
【0069】
【数1】
【0070】
<液状食品組成物の粒度分布の測定>
実施例1、3、4、比較例3〜5、および乳化剤の添加量依存性の評価においては、上述した、粒度分布測定装置としてレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、LA−950)を用いた方法に従って、液状食品組成物の凝集物の粒度分布を測定した。
【0071】
<液状食品組成物の凝集物の測定>
上述した、ナイロン製網を使用した液状食品組成物の凝集物の測定方法に従って、ろ過前後の乾燥重量差より、凝集物の重量を算出した。
【0072】
<経口摂取による評価>
実施例1、3、4、比較例3〜5、および後述の乳化剤の添加量依存性の評価においては、液状食品組成物の経口摂取における評価を行った。当該評価は、ザラつき感の有無とノドごしの良さを指標として評価した。ザラつき感の評価は、経口摂取時にザラつき感を感じるものは「あり」、ザラつき感を感じないものを「なし」として評価した。また、ノドごしの評価は、ノドごし良く飲むことができるものを「○」、トロミを感じるが飲みやすいものを「△」、流動性が悪く飲みにくいものを「×」として評価した。
【0073】
(参考例1)
400mlの蒸留水に2.5gのアルギン酸ナトリウム(キミカアルギンIL−2:(株)キミカ製)を添加し、0.5wt%のアルギン酸ナトリウム水溶液を調製した。次に、1.15gの炭酸カルシウムと0.75gの炭酸マグネシウムを、アルギン酸ナトリウム水溶液に混合した。室温にまで冷却した後、蒸留水を加え、500mlとした。調製した液状食品組成物 200gをソフトバック(R1420H:(株)メイワパックス製)に充填し、オートクレーブ滅菌機により滅菌処理(121℃、20分)した。
本調製物は液状であり、pH9.9、粘度が10cPであった。また、酸性での半固形化を確認したところ、本調製物は人工胃液中にて半固形化し、ナイロン製網上に固形物が残存した。本調製物は1ヶ月の静置保存(25℃)後においても、そのpH、粘度に変化はなく、酸性での半固形化の度合いも変化しなかった。
このように、アルギン酸ナトリウム、中性領域にて難溶性のカルシウム化合物、マグネシウム化合物を基本成分として配合した液状食品組成物は、調製時及び保存後においてもその液状の物性に変化が無く、さらに酸性にて半固形化することが確認された。また、マグネシウム化合物を配合したことから、本調製物は栄養的にも満足し得る液状食品組成物であった。
【0074】
(実施例1)
表1に記載した組成に基づき、0.5wt%のアルギン酸ナトリウムを含有する液状食品組成物を調製した。
【0075】
【表1】
【0076】
650mlの蒸留水に5gのアルギン酸ナトリウムを添加した。次に、デキストリン粉末と大豆タンパク質粉末(不二製油(株)製)を添加した。さらに、油脂(乳化剤含)を添加し、その後、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、その他のミネラル類、さらに、ビタミン類を順次、添加し、攪拌した。なお、その他のミネラル類には、亜鉛含有酵母、銅含有酵母、マンガン含有酵母、クロム含有酵母、セレン含有酵母、モリブデン含有酵母(ここまでのミネラル含有酵母:メディエンス(株)製)、クエン酸鉄ナトリウム(恵美須薬品化工(株)製)の混合物を使用した。その後、蒸留水を加え1000mlとし、マントン・ゴーリン型高圧乳化機(Rannie2000:APV社製)により均質化処理(1回目:20MPa、2回目:48MPa)した。調製した0.5wt%のアルギン酸ナトリウムを含有する液状食品組成物は、200gずつソフトバック(R1420H:(株)メイワパックス製)に充填し、オートクレーブ滅菌機により滅菌処理(121℃、20分)した。
本液状食品組成物は、均一な液状であり、固形物の発生や栄養成分の分離は認められなかった。また、本液状食品組成物は、pH6.7、粘度が110cPであり流動性を有していた。さらに、酸性での半固形化を確認したところ、本液状食品組成物は人工胃液中にて半固形化し、ナイロン製網上に固形物が残存した。本液状食品組成物のpH、粘度、固形物や成分分離の発生の程度を表1に示した。
本液状食品組成物は3ヶ月の静置保存(25℃)後においても、そのpH、粘度に変化はなく、保存中にも成分の分離などの物性変化は少なかった。さらに、酸性での半固形化度合いも変化しなかった。
このように、アルギン酸ナトリウム、中性領域にて難溶性のカルシウム化合物、マグネシウム化合物、酵母中に含有された状態である亜鉛、銅、マンガン、クロム、セレン、モリブデンの金属化合物、添加量がアルギン酸ナトリウムのゲル化の原因にならない程度に少なかった鉄化合物、さらに大豆タンパク質を基本成分として配合した液状食品組成物は、調製時及び保存後においてもその液状が維持され、成分の分離などの物性変化が少なく、さらに酸性にて半固形化することが確認された。また、ヒトに必要なミネラル分、タンパク質を配合したことから、栄養的にもより満足し得る液状食品組成物であった。
また、本液状食品組成物(実施例1)について、粒子の粒度分布を測定したところ、
図1(a)に示すように、粒度分布には、2つのピークが存在し、粒子径3000nm以下の位置に小さい方のピークが存在した(粒子径259nm、頻度6.940%)。さらに超音波処理により、大きい方のピークの頻度が減少し、かつ、粒子径3000nm以下の位置に存在する小さい方のピークの頻度が増加した。超音波処理前後において増減する各ピークの頻度を前記した式(超音波処理後のピークの頻度)/(超音波処理前のピークの頻度)×100)にて評価すると、ピークの頻度が増加した小さい方のピークは、154%(=10.700%/6.940%×100)、ピークの頻度が減少した大きい方のピークは、47%(=2.548%/5.401%×100)であった。
また、本液状食品組成物(実施例1)の粒度分布を
図1(b)に示すように縦軸を体積基準の通過分積算値(%)とする分布曲線により表した場合、粒度分布曲線における変曲点は3点存在し、(1)通過分積算値:20.23%、粒子径:226nm付近、(2)39.75%、669nm付近、(3)74.55%、5133nm付近にあった。さらに超音波処理により、変曲点(2)の通過分積算値は、前記超音波処理前に比べて前記超音波処理後に、21%増加し、超音波処理後の変曲点は(2’)60.86%、669nm付近であった。
また、本液状食品組成物を経口摂取した際には、ザラつき感が少なく、ノドごしが良く、飲みやすいものであった。
【0077】
(比較例1)
表1に記載した組成に基づき、実施例1と同様の方法により、0.5wt%のアルギン酸ナトリウムを含有する液状食品組成物を調製した。
なお、カルシウム化合物には「リン酸二水素カルシウム・1水和物」、マグネシウム化合物には「硫酸マグネシウム・7水和物」を使用した。これらは中性領域にて可溶性の金属塩である。
この液状食品組成物は、組成物の製造工程中より固形物の発生が認められ、さらに滅菌処理後に全体がゲル化した。
これはCa量、Mg量は同じでも、可溶性のカルシウム化合物とマグネシウム化合物を使用したことから、それらに由来するカルシウムイオン、マグネシウムイオンの2価イオン類によりアルギン酸ナトリウムがゲル化したと考えられた。
このように、可溶性のカルシウム化合物、マグネシウム化合物を使用した場合には、本発明の目的とする液状食品組成物を調製することは出来なかった。
【0078】
(比較例2)
表1に記載した組成に基づき、実施例1と同様の方法により、0.5wt%のアルギン酸ナトリウムを含有する液状食品組成物を調製した。
なお、タンパク質源としては、大豆タンパク質の代わりにカゼインナトリウムを使用した。
得られた食品組成物は液状であり、pH6.8、半固形化前の粘度が110cPであった。また、酸性での半固形化を確認したところ、この液状食品組成物は人工胃液中にて半固形化し、ナイロン製網上に固形物が残存した。しかし、この液状食品組成物は、滅菌処理後、成分が2層に分離した。本液状食品組成物のpH、粘度、固形物や成分分離の発生の程度を表1に示した。
このように、植物性タンパク質である大豆タンパク質の代わりに乳タンパク質であるカゼインナトリウムを使用した場合には、食品組成物全体がゲル化することはなかったが、成分の分離が生じ、本発明の目的とする液状食品組成物を調製することが出来なかった。
【0079】
(実施例2)
実施例1と同様の方法により、(1)アルギン酸ナトリウム無添加、(2)0.3wt%、(3)0.5wt%、(4)1.0wt%、(5)1.5wt% のアルギン酸ナトリウムを含有する液状食品組成物を調製した。なお、アルギン酸ナトリウムとして、(2)〜(4)では「キミカアルギンIL−2:(株)キミカ製」、(5)では「キミカアルギンIL−1:(株)キミカ製」を使用し、タンパク質源に大豆タンパク質を使用した。
【0080】
【表2】
【0081】
得られた食品組成物は、すべて液状であった。
また、酸性での半固形化を確認したところ、(1)アルギン酸ナトリウム無添加の組成物は、人工胃液と完全に混合し、ナイロン製網上に固形物は観察されなかった。(2)〜(5)の各液状食品組成物は、人工胃液中にて半固形化し、ナイロン製網上に固形物が残存した。各液状組成物のpH、半固形化前の粘度、半固形化の程度を表2に示した。
【0082】
(実施例3)
表3に記載した組成に基づき、乳化剤としてリゾレシンを含有する液状食品組成物を下記の方法により調製した。
223mlの蒸留水に、3.6gのリゾレシチン(辻製油社製(製品名:SLP−ホワイトリゾ、HLB値:約12)及び36gの油脂(コーン油)を投入し、攪拌しながらマントン・ゴーリン型高圧乳化機(Rannie2000:APV社製)により均質化処理(20MPa)することで、260mlの乳化液を得た。
次に、蒸留水320mlに、先の乳化液173mlを投入した。適度な速度で攪拌しながら、蒸留水と乳化液を混合した後、7gのアルギン酸ナトリウムを添加した。次に、デキストリン粉末と大豆タンパク質(不二製油(株)製)を添加し、完全に溶解するまで添加した。その後、リン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、その他のミネラル類、さらに、ビタミン類を順次添加し攪拌した。その後、蒸留水を加え700mlとし、マントン・ゴーリン型高圧乳化機により均質化処理(1回目:20MPa、2回目:48MPa)した。調製した液状食品組成物は、200gずつソフトバック(R1420H:(株)メイワパックス社製)に充填し、オートクレーブ滅菌機により滅菌処理(121℃、20分)した。
本液状食品組成物は、均一な液状であり、固形物の発生や栄養成分の分離は認められなかった。本液状食品組成物は、固形化率が51%、凝集物重量が0.01g、半固形化前の粘度が77cPであった。また、本液状食品組成物の粒度分布は、
図2(a)に示すように2つのピークが存在し、粒子径3000nm以下の位置に小さい方のピークが存在した(粒子径259nm)。さらに超音波処理により、大きい方のピークの頻度が減少し、かつ、粒子径3000nm以下の位置に存在する小さい方のピークの頻度が増加した。超音波処理前後において増減する各ピークの頻度を前記した式((超音波処理後のピークの頻度)/(超音波処理前のピークの頻度)×100)にて評価すると、ピークの頻度が増加した小さい方のピークは、137%(=12.32%/8.999%×100)、ピークの頻度が減少した大きい方のピークは、40%(=2.188%/5.482%×100)であった。
また、本液状食品組成物の粒度分布を
図2(b)に示すように縦軸を体積基準の通過分積算値(%)とする分布曲線により表した場合、粒度分布曲線における変曲点は3点存在し、(1)通過分積算値:15.79%、粒子径:226nm付近、(2)33.76%、877nm付近、(3)62.21%、5876nm付近にあった。さらに超音波処理により、変曲点(2)の通過分積算値は、前記超音波処理前に比べて前記超音波処理後に、29%増加し、超音波処理後の変曲点は(2’)62.92%、877nm付近であった。
また、本液状食品組成物を経口摂取した際には、ザラつき感が少なく、ノドごしが良く、飲みやすいものであった。
【0083】
(実施例4)
表3に記載した組成に基づき、乳化剤としてリゾレシンに替えてショ糖ラウリン酸エステル(三菱化学フーズ社製(製品名:リョートーシュガーエステル L−1695、HLB値:16))を用いた以外は、実施例3と同様にして液状食品組成物を調製した。
本液状食品組成物は、均一な液状であり、固形物の発生や栄養成分の分離は認められなかった。本液状食品組成物は、固形化率が46%、凝集物重量が0.07g、半固形化前の粘度が161cPであった。本液状食品組成物の粒度分布は、
図3(a)に示すように2つのピークが存在し、粒子径3000nm以下の位置に小さい方のピークが存在した(粒子径197nm)。さらに超音波処理により、大きい方のピークの頻度が減少し、かつ、粒子径3000nm以下の位置に存在する小さい方のピークの頻度が増加した。超音波処理前後において増減する各ピークの頻度を前記した式にて評価すると、ピークの頻度が増加した小さい方のピークは、(11.13/4.269×100)261%、ピークの頻度が減少した大きい方のピークは、38%(=4.882%/12.528%×100)であった。
また、本液状食品組成物の粒度分布を
図3(b)に示すように縦軸を体積基準の通過分積算値(%)とする分布曲線により表した場合、粒度分布曲線における変曲点は3点存在し、(1)通過分積算値:5.70%、粒子径:172nm付近、(2)19.30%、1005nm付近、(3)50.44%、7696nm付近にあった。さらに超音波処理により、変曲点(2)の通過分積算値は、前記超音波処理前に比べて前記超音波処理後に、37%増加し、超音波処理後の変曲点は(2’)56.11%、1005nm付近であった。
また、本液状食品組成物を経口摂取した際には、ザラつき感が少なく、若干のトロミを感じるが、飲みやすいものであった。
【0084】
(比較例3)
表3に記載した組成に基づき、乳化剤としてリゾレシンに替えてレシチン(Wako社製、HLB値:約3.5)を用いた以外は、実施例3と同様にして液状食品組成物を調製した。
本液状食品組成物は、固形化率が36%、凝集物重量が0.3g、半固形化前の粘度が190cPであり、実施例3の液状食品組成物と比較すると、固形化率が低く、液状であったが凝集物が目視により確認できるなど不均一な状態であり、粘度も大きかった。
また、本液状食品組成物の粒度分布は
図4(a)に示すように、3000nm以上の位置に1つのピークが存在した。さらに超音波処理により、ピークの頻度が減少したが、粒子径3000nm以下の位置にはピークが認められなかった。
また、本液状食品組成物の粒度分布を
図4(b)に示すように縦軸を体積基準の通過分積算値(%)とする分布曲線により表した場合、粒度分布曲線における変曲点は1点存在し、通過分積算値:42.43%、粒子径:10097nm付近にあった。さらに超音波処理した場合に、その通過分積算値は前記超音波処理前に比べて前記超音波処理後に、5%増加し、超音波処理後の変曲点は、47.54%、5867nm付近であった。
また、本液状食品組成物を経口摂取した際には、ザラつき感が感じられ、流動性が悪く、飲みにくい性状であった。
尚、本液状組成物を凝集物の測定と同様にして、ろ過した時の残渣としての凝集物の発生状況を
図13に示した。本図では、白色部分が凝集物であり、多量の凝集物が発生していることが分かる。
【0085】
(比較例4)
表3に記載した組成に基づき、乳化剤としてリゾレシンに替えてジアセチル酒石酸エステル(太陽化学社製(製品名:サンソフト No.641D、HLB値:9.0))を用いた以外は、実施例3と同様にして液状食品組成物を調製した。
本液状食品組成物は、固形化率が41%、凝集物重量が0.14g、半固形化前の粘度が182cPであった。実施例3の液状食品組成物と比較すると、固形化率が低く、液状であったが凝集物が目視により確認できるなど不均一な状態であり、粘度も大きかった。また、本液状食品組成物の粒度分布は
図5(a)に示すように、1000nm以上の位置に1つのピークが存在した。さらに超音波処理により、ピークの頻度が減少したが、粒子径1000nm以下の位置にはピークが認められなかった。
また、本液状食品組成物の粒度分布を
図5(b)に示すように縦軸を体積基準の通過分積算値(%)とする分布曲線により表した場合、粒度分布曲線における変曲点は1点存在し、通過分積算値:40.75%、粒子径:8816nm付近にあった。さらに超音波処理した場合に、その通過分積算値は前記超音波処理前に比べて前記超音波処理後に、9%増加し、超音波処理後の変曲点は、49.93%、5867nm付近であった。
また、本液状食品組成物を経口摂取した際には、ザラつき感が感じられ、流動性が悪く、飲みにくい性状であった。
尚、本液状組成物を凝集物の測定と同様にして、ろ過した時の残渣としての凝集物の発生状況を
図14に示した。本図では、点在する略円状の濃色部分が凝集物であり、ナイロン製網全体に凝集物が見受けられ、凝集物が多く発生していることが分かる。
【0086】
(比較例5)
表3に記載した組成に基づき、乳化剤としてリゾレシンに替えてヘキサグリセリントリステアリン酸エステル(阪本薬品工業社製(製品名:TS−5S、HLB値:7.0))を用いた以外は、実施例3と同様にして液状食品組成物を調製した。
本液状食品組成物は、固形化率が44%、凝集物重量が0.13g、半固形化前の粘度が185cPであった。実施例3の液状食品組成物と比較すると、固形化率が低く、液状であったが凝集物が目視により確認できなど不均一な状態であり、粘度も大きかった。また、本液状食品組成物の粒度分布は
図6(a)に示すように、3000nm以上の位置に1つのピークが存在した。さらに超音波処理により、ピークの頻度が減少したが、粒子径3000nm以下の位置にはピークが認められなかった。
また、本液状食品組成物の粒度分布を
図6(b)に示すように縦軸を体積基準の通過分積算値(%)とする分布曲線により表した場合、粒度分布曲線における変曲点は1点存在し、通過分積算値:47.17%、粒子径:8816nm付近にあった。さらに超音波処理した場合に、その通過分積算値は前記超音波処理前に比べて前記超音波処理後に、5%増加し、超音波処理後の変曲点は、52.20%、5122nm付近であった。
また、本液状食品組成物を経口摂取した際には、ザラつき感が感じられ、流動性が悪く、飲みにくい性状であった。
【0087】
尚、実施例3、4および比較例3〜5の評価結果を表4にまとめた。
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
(経管投与における通過性の評価)
実施例3、4、比較例3にて調製した液状食品組成物を使用し、液状食品組成物の経管(チューブ)投与時における通過性を試験した。
試験に使用したチューブは、チューブ太さ:16Fr、チューブ長:135cm、チューブの片側の末端から30cmの位置に速度調節用の絞りを有する経腸栄養剤投与用の汎用チューブであった。試験は、液状食品組成物をプラスチック製ボトル(JMS栄養ボトル)に移し替え、プラスチック製ボトルの下端が床上150cmの高さになるように設置のうえ、前記チューブの片側末端をプラスチック製ボトルの下端に接続した。さらに、プラスチック製ボトルとの接続部と反対側のチューブ末端は、床上50cmの高さになるように設置した。試験は、チューブの速度調節用絞りを、蒸留水が200g/分の流速で流れる位置に調節したうえで、各液状食品組成物を流し、その通過性を観察した。
結果を、
図7に示す。リゾレシチンを含有する組成物は凝集物の詰まりがほとんどなく、チューブ通過性が極めて良好であった。ショ糖ラウリン酸エステルを含有する液状食品組成物は凝集物の詰まりが少なく、チューブ通過性は良好であった。このように、リゾレシチン、ショ糖ラウリン酸エステルを含有する組成物は経管投与に好適に使用することができた。しかし、レシチンを含有する組成物は凝集物の詰まりが発生し、チューブ通過性が悪く、最終的に流れなくなった。このように、レシチンを含有する液状食品組成物は経管投与に使用することができなかった。
【0091】
(乳化剤の添加量依存性の評価)
乳化剤としてリゾレシチンを用い、その添加量(乳化剤/油脂の重量基準の混合比)を表5に示すよう変化させた以外は実施例1と同様にして液状食品組成物を調製した。但し、実施例1の組成において、油脂の添加量を一定にして、乳化剤の添加量を替えた。調製した液状食品組成物A〜Eについて、上記と同様の評価を行った。評価結果を表5に示す。
液状食品組成物A、Bは、固形化率が41%以下、凝集物重量が0.13g以上、粘度が158cP以上であり、液状食品組成物C〜Eと比較すると、固形化率が低く、液状であったが凝集物が目視により確認できるなど不均一な状態であり、粘度も大きかった。また、液状食品組成物A、Bの粒子の粒度分布をそれぞれ
図8(a)、9(a)に示した。液状食品組成物A、Bのいずれも、粒子径3000nm以上の位置に1つのピークが存在した。さらに超音波処理により、ピークの頻度が減少したが、粒子径3000nm以下の位置にはピークが認められなかった。
また、液状食品組成物A、Bの粒度分布を縦軸を体積基準の通過分積算値(%)とする分布曲線により表した場合の粒度分布を
図8(b)、9(b)に示した。粒度分布曲線における変曲点は各組成物A、Bともに1点しか存在しなかった。また、経口摂取した際には、ザラつき感が感じられ、流動性が悪く、飲みにくい性状であった。
液状食品組成物C〜Eは、均一な液状であり、固形物の発生や栄養成分の分離は認められなかった。固形化率は49%以上、凝集物重量は0.03g以下、粘度は133cP以下であった。また、液状食品組成物C〜Eの粒子の粒度分布をそれぞれ
図10(a)、
図11(a)、
図12(a)に示した。液状食品組成物C〜Eのいずれも、粒度分布に2つのピークが存在し、粒子径3000nm以下の位置に小さい方のピークが存在した。さらに超音波処理により、大きい方のピークの頻度が減少し、かつ、粒子径3000nm以下の位置に存在する小さい方のピークの頻度が増加した。超音波処理前後において増減する各ピークの頻度を前記した式にて評価すると、液状食品組成物Cにてピークの頻度が増加した小さい方のピークは、190%(=10.569%/5.618%×100)、ピークの頻度が減少した大きい方のピークは、26%(=2.550%/9.755%×100)であった。液状食品組成物Dにてピークの頻度が増加した小さい方のピークは、140%(=12.32%/8.999%×100)、ピークの頻度が減少した大きい方のピークは、40%(=2.188%/5.482%×100)であった。液状食品組成物Eにてピークの頻度が増加した小さい方のピークは、150%(=11.676%/7.871%×100)、ピークの頻度が減少した大きい方のピークは、36%(=2.819%/7.764%×100)であった。
また、液状食品組成物C〜Eの粒度分布を縦軸を体積基準の通過分積算値(%)とする分布曲線により表した場合の粒度分布を
図10(b)、
図11(b)、
図12(b)に示した。粒度分布曲線における変曲点は各組成物C〜Eともに3点存在し、C:(1)通過分積算値:12.27%、粒子径:226nm付近、(2)30.12%、1005nm付近、(3)66.19%、6720nm付近、D:(4)16.58%、226nm付近、(5)49.19%、766nm付近、(6)76.27%、5122nm付近、E:(7)15.63%、197nm付近、(8)40.82%、766nm付近、(9)71.13%、5867nm付近にあった。さらに超音波処理により、組成物C〜Eの各変曲点(2,5,8)における通過分積算値は、前記超音波処理前に比べて前記超音波処理後に、C:(2’)64.58%、877nm付近、D:(5’)70.79%、877nm付近、E:(8’)62.08%、766nm付近にあり、通過分積算値の変化は、C:34%増加、D:22%増加、E:21%増加であった。
また、経口摂取した際には、ザラつき感がすくなく、ノドごしが良く、飲みやすいものであった。
尚、液状組成物D、Eを凝集物の測定と同様にして、ろ過した時の残渣としての凝集物の発生状況をそれぞれ
図15、16に示した。液状組成物D、Eでは、点在する濃色部分が凝集物であるが、濃色部分がナイロン製網上に殆ど見受けられず、凝集物の発生が効果的に抑制されていることが分かる。
【0092】
【表5】
【0093】
(液状食品組成物の半固形化後の粘度測定)
表6に記載した組成に基づき、液状食品組成物を調製した。
650mlの蒸留水に10gのアルギン酸ナトリウムを添加した。次に、デキストリン粉末と大豆タンパク質粉末を順次添加しさらに、油脂(乳化剤含)を添加した。その後、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸塩、カリウム塩、ナトリウム塩、その他のミネラル類、ビタミン類を加え、攪拌した。なお、その他のミネラル類には、亜鉛含有酵母、銅含有酵母、マンガン含有酵母、クロム含有酵母、セレン含有酵母、モリブデン含有酵母(ここまでのミネラル含有酵母:メディエンス(株)製)、クエン酸鉄ナトリウム(恵美須薬品化工(株)製)の混合物を使用した。その後、蒸留水を加え1000mlとし、マントン・ゴーリン型高圧乳化機(Rannie2000:APV社製)により均質化処理(1回目:20MPa、2回目:48MPa)した。調製した液状食品組成物は、200gずつソフトバック(R1420H:(株)メイワパックス製)に充填し、オートクレーブ滅菌機により滅菌処理(121℃、20分)した。pH調整前の液状食品組成物のpHは6.7であった。
粘度は、B型粘度計によって測定した。液状食品組成物200mlを内径60mmのガラス製容器に投入し、5N HClを用いて組成物のpHをpH4.5〜5.5(固形化物の崩壊を防ぐため、極めて穏やかに攪拌する)に調製し、5分間静置した。静置後、回転数12回転/分、保持時間1分の条件にて測定値を読み取った。尚、ロータNo.は、サンプルの粘度に応じて、表7に示すように適宜変更した。
測定結果を表7に示す。表7に示したとおり、酸性領域では液状食品組成物の粘度は1000cP以上に上昇した。特にpH4.5になると粘度が10000cP以上となった。
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】