(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吐出口(10a)と吸入口(10b)と電動機(M1)とを有し、前記電動機の動作によって、前記吸入口から吸入した気体を圧縮して前記吐出口から吐出する圧縮機(10)、を制御する圧縮機制御装置であって、
電源(E1)に接続され、前記電源からの電圧を所望の電圧に変換して前記電動機へと印加する電力変換部(1)と、
前記電動機の回転速度を取得する回転速度取得部(32)と、
前記電動機へと流れる電流を検出する電流検出部(33)と、
前記電流(I)と電流基準値(Iref)とを比較する比較部(351)を有し、前記電流が前記電流基準値よりも大きいときに前記電力変換部を制御して前記電動機を停止する圧縮機停止部(35)と、
前記回転速度(ω)が回転速度基準値(ωref1)よりも小さいときに前記電流基準値として第1値を前記圧縮機停止部に与え、前記回転速度が前記回転速度基準値よりも大きいときに前記電流基準値として前記第1値よりも大きい第2値を前記圧縮機停止部に与える電流基準値設定部(34)と
を備え、
前記電動機(M1)は界磁子と電機子とを備え、
前記圧縮機制御装置は、
前記回転速度(ω)が前記回転速度基準値(ωref1)よりも大きいときに、前記界磁子からの前記電機子への界磁を弱める弱め界磁制御または弱め磁束制御により前記電力変換部を制御する制御部(31)
を備える、圧縮機制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態.
図1に例示するように、圧縮機10は吐出口10aと吸入口10bと電動機M1と圧縮機構(不図示)とを備えている。圧縮機構は電動機M1によって駆動されて吸入口10bから吸入される気体を圧縮し、圧縮後の気体を吐出口10aから吐出する。
【0018】
このような圧縮機10は例えば公知の冷媒回路に用いられて冷媒を圧縮する。この冷媒回路は例えばヒートポンプユニット(例えば給湯システム、空気調和機又は冷凍装置など)に搭載される。なお圧縮機10が搭載される装置はこれに限らず任意である。
【0019】
電動機M1には電力変換部1が接続され、電力変換部1には電源E1が接続される。電力変換部1は圧縮機制御部3によって制御されて電源E1からの電圧を適宜に変換し、これを電動機M1へと印加する。電動機M1は印加される電圧に応じて回転し、圧縮機10を駆動する。
【0020】
ここでは電動機M1として、例えば永久磁石を有する界磁子と、巻線を有する電機子とを備えた公知の永久磁石同期電動機を想定する。この電動機M1の巻線には電力変換部1によって電圧が印加されて電流が流れる。巻線に適切に電流が流れることで、電機子は回転磁界を界磁子に印加する。界磁子は印加された回転磁界に応じて電機子に対して相対的に回転する。なお電動機M1は必ずしもこれに限らず、例えば永久磁石に替わりに巻線を有する界磁子が採用されてもよい。
【0021】
またこのような電動機M1には電力変換部1によって例えば交流電圧が印加される。このとき電力変換部1は例えばインバータであり、電源E1としては例えば
図1のように直流電源が採用される。電力変換部1は電源E1からの直流電圧を交流電圧に変換し、当該交流電圧を電動機M1(より詳細には電機子の巻線)へと印加する。
【0022】
より詳細には電力変換部1は例えばスイッチング素子1up,1un,1vp,1vn,1wp,1wnを備える。一対のスイッチング素子1xp,1xn(xはu,v,wを代表する)は電源E1の正極と負極との間で互いに直列に接続される。また一対のスイッチング素子1xp,1xnの間の接続点が出力線1xを介して電動機M1に接続される。なお
図1の例示では電動機M1として三相電動機を想定しているため、電力変換部1は一対のスイッチング素子を三相分備えている。ただし電動機M1の相数と電力変換部1の相数(出力線の数)とはこれに限らず、任意である。
【0023】
図1の例示ではスイッチング素子1xp,1xnは絶縁ゲートバイポーラトランジスタであるが、これに限らず、任意のトランジスタが採用され得る。また
図1に例示するように電力変換部1は、スイッチング素子1xp,1xnの各々に並列に接続されるダイオードを備えていても良い。ダイオードはそのアノードを電源E1の負極側に向けて設けられる。これによってスイッチング素子1xp,1xnに逆電圧が印加されることを抑制できる。なおスイッチング素子1xp,1xnが例えばMOS電界効果トランジスタのように寄生ダイオードを有する場合には当該ダイオードは寄生ダイオードで代用され得る。
【0024】
また電力変換部1はインバータに限らず、例えば交流電圧を任意の振幅・周波数を有する交流電圧に変換するマトリックスコンバータなどであってもよい。ここでは一例として電力変換部1はインバータであるとして説明する。
【0025】
圧縮機制御部3はスイッチング信号生成部31と電流基準値設定部34と圧縮機停止部35と回転速度検出部32とを備える。スイッチング信号生成部31は電力変換部1に与えるスイッチング信号を生成する。例えばスイッチング信号生成部31は外部から指令値(例えば電動機M1の回転速度、トルク又は電流などの指令値)を受け取って当該指令値に基づいて公知のパルス幅変調方式によってスイッチング信号を生成する。
【0026】
このようなスイッチング信号生成部31は、電動機M1の回転速度が高まるにしたがって電力変換部1の出力電圧の大きさ(ここでは交流電圧の振幅、以下同様)が高まるように、スイッチング信号を生成する。一方で、出力電圧の大きさが所定の基準値(例えば上限値)に達すると、より高い回転速度で電動機M1を駆動すべく、スイッチング信号生成部31は弱め界磁制御を実行してスイッチング信号を生成してもよい。このような弱め界磁制御は従来公知であるので、詳細な説明は省略し、その概要のみを説明する。
【0027】
弱め界磁制御とは、界磁子の界磁を弱めることで電機子の巻線に生じる誘起電圧を低減し、これによって出力電圧の大きさを高めることなく回転速度を高める制御である。ここでは電動機M1の界磁子は永久磁石を有するものを想定しているので、界磁そのものを直接制御することはできない。そこで電機子の巻線に流すd軸電流として負の値を採用することで、電機子反作用による減磁効果を利用してd軸方向の界磁磁束を低減し、等価的な弱め界磁制御を実現する。
【0028】
なお永久磁石を有する界磁子を例に挙げて説明したが、永久磁石の代わりに巻線を有する界磁子を採用してもよい。この場合、界磁子の巻線に流れる電流を制御して界磁を直接に弱めてもよい。また、永久磁石を有する界磁子における上述の制御は、界磁を直接に弱める弱め界磁制御と区別して、弱め磁束制御とも呼ばれる。また弱め磁束制御として、電機子の巻線に生じる誘起電圧を略一定に維持しつつ、つまり出力電圧の大きさを例えば上限値に維持しつつ、d軸電流として負の値を採用する制御を行っても良い。以下では弱め界磁制御も弱め磁束制御も、弱め界磁制御と総称する。
【0029】
また
図1に示すように圧縮機制御部3には電流検出部33が接続される。電流検出部33は電動機M1へと流れる電流を検出する。ただし
図1の例示では、電流検出部33は電力変換部1に入力される直流電流(以下、電流I)を検出する。これは、当該直流電流が例えば電力変換部1によって三相交流電流に変換されて電動機M1を流れるので、当該直流電流も電動機M1を流れる電流として把握することができるからである。なお
図1の例示とは異なって、電流検出部33は電動機M1を流れる三相の交流電流(線電流)の少なくとも何れか1相の線電流を検出しても良い。
【0030】
電流検出部33によって検出された電流Iは圧縮機停止部35に入力される。圧縮機停止部35は電流Iと電流基準値Irefとの大小を比較する比較器351を備えている。比較器351は例えばオペアンプによって形成される。圧縮機停止部35は電流Iが電流基準値Irefよりも大きいときに電力変換部1を制御して電動機M1を停止させる。ひいては圧縮機10を停止させる。なお電動機M1の停止は例えば次のようにして実行することができる。即ち、例えばスイッチング素子1up,1un,1vp,1vn,1wp,1wnの全てを非導通とする。これによって電動機M1を停止させることができる。或いはスイッチング素子1up,1vp,1wpの全て若しくはスイッチング素子1un,1vn,1wnの全てを導通させてもよい。これによって電動機M1へを停止させることができる。或いはスイッチング素子1up,1vp,1wpの全て若しくはスイッチング素子1un,1vn,1wnの全てを導通させてもよい。これによって出力線1u,1v,1wが短絡するので電動機M1を停止させることができる。
【0031】
図1の例示では、例えば圧縮機停止部35は論理回路352を備えている。論理回路352は比較器351の出力とスイッチング信号生成部31の出力とが入力される。論理回路352は、電流Iが電流基準値Irefよりも大きいときに電力変換部1を停止させるスイッチング信号を出力し、電流Iが電流基準値Irefよりも小さいときにスイッチング信号生成部31からのスイッチング信号を電力変換部1に出力する。例えば比較器351は電流Iが電流基準値Irefよりも大きいときに活性した信号を出力する。また例えばスイッチング素子1xp,1xnはいずれも活性したスイッチング信号(制御電圧)が入力されて導通する。この場合、論理回路352は例えばアンド回路である。これによって論理回路352は、比較器351から活性した信号を受け取っているときにスイッチング信号生成部31からのスイッチング信号を電力変換部1に出力し、比較器351から非活性した信号を受け取っているときに、非活性したスイッチング信号を電力変換部1に出力する。
【0032】
電流基準値Irefは電流基準値設定部34によって設定される。電流基準値設定部34は電動機M1の回転速度ωに応じて電流基準値Irefを設定する。回転速度ωは回転速度検出部32によって取得される。例えば回転速度検出部32は電動機M1に取り付けられる回転速度検出センサである。またスイッチング信号生成部31が例えば外部から入力される回転速度指令値に基づいてスイッチング信号を生成する場合、回転速度検出部32は当該回転速度指令値を受け取ってこれを回転速度ωとして取得しても良い。
【0033】
電流基準値設定部34は回転速度検出部32から回転速度ωを受け取り、当該回転速度に応じて電流基準値Irefを設定する。より詳細には、回転速度ωが回転速度基準値ωrefよりも小さいときには、電流基準値Irefとして第1値を圧縮機停止部35(より詳細には比較器351)に与える(
図2も参照)。また回転速度ωが回転速度基準値ωrefよりも大きいときには電流基準値Irefとして第2値(>第1値)を圧縮機停止部35(より詳細には比較器351)に与える。
【0034】
図1の例示では、例えば電流基準値設定部34は回転速度基準値出力部341と比較器342と電流基準値出力部343とを備えている。回転速度基準値出力部341は予め設定された回転速度基準値ωrefを比較器342に出力する。また比較器342には回転速度検出部32からの回転速度ωも入力される。比較器342は回転速度ωと回転速度基準値ωrefとを比較し、その比較結果を電流基準値出力部343に出力する。電流基準値出力部343は、回転速度ωが回転速度基準値ωrefよりも小さいときには電流基準値Irefとして第1値を出力し、回転速度ωが回転速度基準値ωrefよりも大きいときには電流基準値Irefとして第2値(>第1値)を出力する。
【0035】
したがって本圧縮機制御部3によれば、回転速度ωが回転速度基準値ωrefよりも小さい場合には電流Iが第1値よりも大きいときに圧縮機10を停止する。また回転速度ωが回転速度基準値ωrefよりも大きい場合には電流Iが第2値(>第1値)よりも大きいときに圧縮機10を停止する。
【0036】
図3には、回転速度ωを横軸に採り、圧縮機10の吐出口10a側を流れる気体の圧力(以下、高圧と呼ぶ)Hpを縦軸に採った座標上での、電動機M1に流れる電流(電流I或いは線電流の振幅)の等電流線が例示される。
図3の例示では、四角形、三角形、逆三角形、菱形、円形、星形、五角形および台形が付記された等電流線が、それぞれ電流値10A,12A,14A,16A,17A,18A,20A及び22Aを示す。
【0037】
図3から理解できるように、回転速度ωが一定であれば電動機M1に流れる電流が大きいほど高圧Hpは高い。
【0038】
また
図3の例示では、回転速度ωが高い領域において、電流が一定であれば高圧Hpは回転速度ωが高まるに伴って比較的急峻に低下する。言い換えれば、回転速度ωが80rpsより大きいときの、高圧Hpの回転速度ωに対する低下率は、回転速度ωが8rpsよりも小さいときの、当該低下率よりも高い。
【0039】
これは例えば次の理由に依る。即ち、ここでは回転速度ωが高い領域(例えば回転速度ωが回転速度基準値ωrefよりも高い領域)において、スイッチング信号生成部31は電動機M1を弱め界磁制御により駆動するからである。弱め界磁制御では回転速度ωを高めるほど界磁を弱める必要があるので、回転速度ωが高まるほどd軸電流の負の値を小さくする必要がある(絶対値としては大きくする必要がある)。言い換えれば、電動機M1に流れる三相電流が同じであれば、回転速度ωが高まるほど電動機M1のトルクが低下し、ひいては圧縮機10の高圧Hpが低下する。
【0040】
また高圧Hpには上限値Hpmax(例えば55.1kgf/cm
2)が設定される。電流基準値Irefは、高圧Hpが上限値Hpmaxを超えた状態で圧縮機10を駆動しないように、設定される。一例として回転速度基準値ωrefとして例えば85rpsを採用し、回転速度ωが85rpsよりも小さいときの電流基準値Iref(即ち第1値)として例えば18Aを採用し、回転速度ωが85rpsよりも大きいときの電流基準値Iref(即ち第2値)として例えば22Aを採用する。よって、電流基準値Irefは
図3において太線で示された線で表される。
【0041】
本圧縮機制御部3によれば、圧縮機停止部35は電流Iが電流基準値Irefよりも大きいときに圧縮機10を停止させる。よって、
図3において電流基準値Irefよりも上側の領域では圧縮機10は停止する。したがって高圧Hpがその上限値Hpmaxを超えることを防止できる。
【0042】
また本圧縮機制御部3とは異なって、電流基準値Irefが回転速度ωによらずに例えば一定の18Aを採る場合であれば、18Aの等電流線(
図3の星印)よりも上側で圧縮機10は停止する。一方、本圧縮機制御部3によれば、回転速度ωが85rpsよりも大きい領域では22Aの等電流線(
図3の台形)よりも上側で圧縮機10は停止する。したがって、電流基準値Irefが回転速度ωによらずに例えば18Aを採る場合に比べて、圧縮機10の運転領域を拡大することができる。より詳細には、回転速度ωが85rpsよりも大きい領域であって18Aの等電流線と22Aの等電流線とによって挟まれる領域(
図3において斜線の領域)の分、運転領域を広げることができる。
【0043】
しかも本実施の形態によれば、圧力センサを有する高圧保護装置を設ける必要がない。圧力センサは電流検出回路や電圧検出回路に比べて高コストであるので、圧力センサの省略は有効である。また回転速度検出部32は電動機M1の制御に用いられることが多く、電流検出部33も電動機M1の制御に用いられることが多い。よってこれらは既設である場合が多い。したがってこの場合であれば新たなセンサなどを追加する必要がなく、従来からのコストアップを抑制することもできる。
【0044】
なお上述の例では、電流基準値Irefとして第1値および第2値を採用した。しかしながら電流基準値Irefとして採用される値は2つの値に限らず2以上の値を採用してもよい。例えば
図4に例示するように、回転速度ωが回転速度基準値ωref1(例えば85rps)よりも小さいときに第1値(例えば18A)を採り、回転速度ωが回転速度基準値ωref1よりも大きく回転速度基準値ωref2(例えば95rps)よりも小さいときに第2値(>第1値、例えば22A)を採り、回転速度ωが回転速度基準値ωref2よりも大きいときに第3値(>第2値、例えば24A)を採っても良い。これによって圧縮機10の運転領域を更に広げることができる。
【0045】
また
図1の例示では、圧縮機停止部35は比較器351と論理回路352とを有している。よって高圧Hpをその上限値Hpmax以下に維持することをハードウェアで実現できる。したがってソフトウェアで実現する場合に比べて信頼性が高い。
【0046】
また
図5に例示するように電力変換部1はスイッチS1を備えていても良い。スイッチS1は電源E1と電力変換部1aとの間に設けられ、電源E1から電力変換部1aへの電源の供給/遮断を選択する。なお電力変換部1aは
図1の電力変換部1と同じであって例えば電源E1からの直流電圧を交流電圧に変換する。また
図5の例示では2つスイッチS1が電源E1と電力変換部1aとの間に設けられているが、いずれか一方のみが設けられてもよい。
【0047】
そして比較器351は電流Iと電流基準値Irefとを比較し、電流Iが電流基準値Irefよりも大きいときにスイッチS1を遮断する信号をスイッチS1へと与える。これによって電動機M1が停止し、ひいては圧縮機10が停止する。このような構成でも、ハードウェアで圧縮機停止部35を実現できるので信頼性が高い。
【0048】
<回転速度検出部32>
図6の例示では、回転速度検出部32は電力変換部1が有するスイッチング素子の制御電極に印加される制御電圧Vsu1を検出し、制御電圧Vsu1に基づいて電動機M1の回転速度ωを取得する。以下、まず電力変換部1について詳述した後に回転速度検出部32について述べる。
【0049】
電力変換部1は
図1に例示するように一対のスイッチング素子1xp,1xnを有するインバータである。これらのスイッチング素子1xp,1xnはそれぞれ制御電極を有し、この制御電極に印加される制御電圧に応じて導通/非導通する。この制御電圧はスイッチング信号生成部31によって印加される。そしてスイッチング信号生成部31がスイッチング素子1xp,1xnを適切に制御することで、電力変換部1に電源E1からの直流電圧を交流電圧に変換させて、この交流電圧を電動機M1へと出力させる。以下に、まず直流電圧から交流電圧への変換について概説する。
【0050】
スイッチング素子1xp,1xnは互いに排他的に制御される。これは、スイッチング素子1xp,1xnが同時に導通することによってスイッチング素子1xp,1xnに大電流が流れることを防止するためである。
【0051】
スイッチング素子1xpが導通しスイッチング素子1xnが非導通すれば、出力線1xには電源E1の正極が接続されて高電圧が印加される。一方、スイッチング素子1xpが非導通しスイッチング素子1xnが導通すれば、出力線1xには電源E1の負極が接続されて低電圧が印加される。よってスイッチング素子1xp,1xnの導通/非導通を適宜に制御することで、出力線1xに高電圧および低電圧を繰り返し印加することができる。
【0052】
そして、出力線1xに高電圧を印加する期間と低電圧を印加する期間とを調整することで、例えば
図7のように出力線1xに印加される交流電圧Vxを近似的に正弦波に近づけることができる。つまり、正弦波の山となる部分においてパルス幅を広げ、谷となる部分でパルス幅を狭めることで、交流電圧Vxを近似的に正弦波に近づける。
【0053】
電動機M1は入力される交流電圧Vxの周波数に応じた回転速度ωで回転する。上述のように交流電圧Vxは一対のスイッチング素子1xp,1xnの導通/非導通に基づいて生成される。言い換えれば、交流電圧Vxはスイッチング素子1xp,1xnの制御電圧と対応し、交流電圧Vxの基本波成分の周波数はスイッチング素子1xp,1xnの制御電圧の基本波成分の周波数とほぼ等しい。よって回転速度検出部32はこの制御電圧を検出する。
【0054】
より詳細には回転速度検出部32は
図6に例示するように、制御電圧検出部321とパルス/正弦波変換部322と比較部323と回転速度算出部324とを備える。制御電圧検出部321は一対のスイッチング素子1xp,1xnの一方の制御電極に印加される制御電圧を検出する。
図1の例示ではスイッチング素子1xp,1xnの三組が設けられているものの、制御電圧検出部321はいずれか一つの組のスイッチング素子1xpまたはスイッチング素子1xnの制御電圧を検出すればよい。ここではスイッチング素子1unの制御電圧を検出する。
【0055】
制御電圧検出部321は例えば抵抗を有し、当該抵抗は、スイッチング素子1unの制御電極(例えばゲート電極)と、スイッチング素子1unの両端のうち電源E1の負極側の一端(例えばエミッタ電極)との間に設けられる。制御電圧検出部321は当該抵抗に印加されるパルス状の制御電圧Vsu1(
図8も参照)をパルス/正弦波変換部322へと出力する。
【0056】
なお
図6の例示では、制御電圧検出部321とパルス/正弦波変換部322との間にバッファ325が設けられている。バッファ325は必須要件ではないものの、バッファ325によって、スイッチング素子1unの制御電極に印加される制御電圧Vsu1が、パルス/正弦波変換部322以降の動作によって変動することを抑制できる。このようなバッファとしては例えばオペアンプを採用することができる。反転入力端子と出力端子とを接続したオペアンプは高入力インピーダンス且つ低出力インピーダンスのバッファとして機能するからである。よって、非反転入力端子に制御電圧検出部321の出力を入力し、出力端子をパルス/正弦波変換部322に接続すればよい。
【0057】
パルス/正弦波変換部322はパルス状の制御電圧Vsu1を入力し、これを平均して略正弦波状の電圧(以下、正弦波電圧と呼ぶ)WV1を出力する(
図8も参照)。パルス/正弦波変換部322は例えばフィルタであって、制御電圧Vsu1の高調波成分を除去することで略正弦波状の正弦波電圧WV1を生成する。
図6の例示では、パルス/正弦波変換部322として抵抗3221とコンデンサ3223とからなるローパスフィルタが例示される。これによれば簡単な構成でパルス/正弦波変換部322を実現することができる。またローパスフィルタの時定数を調整することで、正弦波電圧WV1の波形を調整することができる。時定数は、制御電圧Vsu1の基本波成分の周波数がその最小値からその最大値を採る範囲の全てにおいて、制御電圧Vsu1を適切に略正弦波に変換できるように、設定される。
【0058】
比較部323は正弦波電圧WV1を入力し、正弦波電圧WV1と所定値とを比較してその比較結果に応じて活性/非活性する信号PS1(
図8も参照)を出力する。
図8の例示では、所定値として正弦波電圧WV1の振幅の中心が採用される。ただし所定値はこれに限らず、正弦波電圧WV1と交差する値であれば任意の値が採用される。また例えば所定値は予め設定される。
図6の例示ではこの所定値は設定部3231によって設定され、設定部3231は当該所定値を比較部323に出力する。
【0059】
比較部323によって出力される信号PS1は正弦波電圧WV1の周波数とほぼ同じ周波数で立ち上がり、同様に正弦波電圧WV1の周波数とほぼ同じ周波数で立ち下がる。
【0060】
回転速度算出部324は信号PS1を入力し、信号PS1が立ち上がる時点または立ち下がる時点に基づいて信号PS1の周波数fを検出する。正弦波電圧WV1の周波数は制御電圧Vsu1の基本波成分の周波数とほぼ同じであり、制御電圧Vsu1の基本波成分の周波数は交流電圧Vuの基本波成分の周波数とほぼ同じである。したがって、周波数fは交流電圧Vuの基本波成分の周波数と見なすことができる。回転速度算出部324は検出した周波数fに基づいて電動機M1の回転速度ωを算出する。例えば電動機M1が永久磁石同期電動機であれば、回転速度ωは周波数fを界磁子の極対数Pで除算することで求まる。
【0061】
以上のように、回転速度検出部32によれば、制御電圧Vsu1を検出して回転速度を算出している。この制御電圧Vsu1(例えば5V)は出力線1uに印加される交流電圧Vu(例えば振幅が数百V)に比べて小さい。したがって、交流電圧Vuを検出する場合に比べて、パルス/正弦波変換部322、比較部323、回転速度算出部324の耐圧を低減することができる。
【0062】
また交流電圧Vuを検出する場合、耐圧の低い回転速度検出部32を採用するためには例えば
図9に示すように抵抗R1,R2を有する分圧回路で交流電圧Vuを低減して電圧Vu1として検出する。これによって交流電圧Vuよりも小さい電圧Vu1を検出できる。一方で制御電圧検出部321が抵抗を用いて電圧を検出する場合には、一つの抵抗を採用すればよいので製造コストが低い。また交流電圧Vuを検出する場合には抵抗R1,R2には比較的大きな電力が供給されるので容量(例えば電流容量)の高い抵抗R1,R2を採用する必要があるのに対して、回転速度検出部32によれば容量の小さい抵抗を採用することができる。
【0063】
変形例.
実施の形態では回転速度ωに応じて電流基準値Irefを設定した。本変形例では電流基準値Irefよりも小さい電流基準値Iref2を設ける。電流基準値Iref2は例えば電流基準値Irefよりも予め決められた値の分小さい値である。
【0064】
スイッチング信号生成部31は電流Iが電流基準値Iref2よりも大きいときに、垂下制御を行ってスイッチング信号を生成する。ここでいう垂下制御とは、電力変換部1の出力電力を低減するための制御である。この垂下制御は例えば次のようにして実行できる。即ち、例えばスイッチング信号生成部31は生成したスイッチング信号のパルス幅を所定の割合で低減する補正を行い、補正後のスイッチング信号を電力変換部1に与える。或いは、スイッチング信号生成部31が電力変換部1の出力電流、出力電圧または電動機M1のトルクなどの指令値に基づいてスイッチング信号を生成する場合には、当該指令値を低減する補正を行い、補正後の指令値に基づいてスイッチング信号を生成する。
【0065】
このような垂下制御によって圧縮機10の高圧の増大を抑制することができるので、圧縮機10の運転を継続することができる。そして、このような垂下制御によっても電流Iが電流基準値Irefよりも大きくなると、実施の形態と同様にして圧縮機10を停止する。