【実施例】
【0023】
4−アルキルウンベリフェロンの新規医薬用途として、炎症性関節疾患の治療への適用を検討した。
【0024】
1.材料と方法
(1)コラーゲン誘発関節炎(collagen-induced arthritis CIA)の作製
7週齢のDBA/1Jマウスを日本エスエルシー株式会社(静岡)から購入した。すべての動物実験は実験動物のケアと使用のための国際的なガイドラインに従い、動物倫理委員会の承認のもとに行われた。
【0025】
0.01M酢酸で溶解したウシタイプIIコラーゲン(2mg/ml)を1:1の比率でフロイド完全アジュバントで乳化し、マウスの尾の皮下に100μl注射し、免疫した。その21日後にフロイド不完全アジュバントで乳化させた50μgのウシタイプIIコラーゲンをマウスの尾の皮下に注射し、追加免疫した。
【0026】
(2)4-MUによる治療
マウス25匹(治療群)を3群に分けた。それぞれの群(体重あたり0.5mg/g(n=5)、1.5mg/g(n=5)、3.0mg/g(n=15))のマウスに対し、4-MUを5%アラビアガムで混濁し、混濁液300μlを初回免疫後23日目から実験終了の42日目まで毎日、経口投与した。コントロール群(n=15)には5%アラビアガムのみを毎日、経口投与した。関節リウマチ(RA)患者より分離した滑膜様線維芽細胞(fibroblast like synoviocyte FLS)をin vitroにおいて10ng/mlのTNF-αと4-MU(0mM、0.1mM、0.5mM、1.0mM、1.5mM)で同時に処置した。続いて、単層培養し、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の発現やヒアルロン酸(HA)の分布、ヒアルロン酸合成酵素(HAS)mRNAのノックダウンの解析を行った。
【0027】
(3)関節炎の臨床的な評価
ウシタイプIIコラーゲンによる初回免疫後より、マウスの関節炎の進展をモニタリングした。少なくとも1つの足趾の腫脹もしくは足の腫脹が認められたとき、CIAが発症したと判断した。関節炎の程度はそれぞれの足で次のように0-3で等級分けを行った。0;正常、1;1つの足趾の腫脹、2;2つかそれ以上の足趾の腫脹、3;足全体の腫脹。病状全体の程度と進展を表すためにそれぞれのマウスの四肢のスコアの合計(1匹あたり最大で12点)を関節炎スコア(arthritis score)として使用した。腫脹は足の腫脹の最大の前後径を電気式ノギスで測定し、4つの足の腫脹増加量の合計を2日おきに記録した。
【0028】
(4)膝関節の腫脹の組織学的解析
初回免疫から42日後にマウスを全身麻酔下に4%パラホルムアルデヒド(PFA)で潅流固定した。膝関節を摘出し、4%PFAで3日間固定、10%EDTAで30日間、4℃で脱灰した。各種濃度のエタノールで脱水後、パラフィンにて包埋した。それぞれのサンプルはヘマトキシリンとエオジンで染色した。1つの膝関節に対していつくかの矢状断の切片を調べ、最も所見を認める切片を評価し、スコアリングした。典型的なものでは内顆の中央の切片を調べた。関節の組織学的変化には過去に報告されているパラメーターを使用した。それぞれのマウスから得られたすべての切片は予備知識のない観察者によって次のように0-3に等級分けされた。0;正常、1;炎症細胞の浸潤、2;滑膜の肥厚とパンヌスの形成、3;骨びらんと骨破壊。両膝合計で最大6点満点とした。
【0029】
(5)免疫染色
パラフィン包埋された切片をキシレンとエタノールで脱パラフィンした。TBS(Tris-buffered saline)で水和した後、50mM トリス酢酸ナトリウムバッファー(50mM Tris、60mM 酢酸ナトリウム)で溶解した0.25U/mlのコンドロイチナーゼABCで処置した。3%H
2O
2を10分間作用させ、内因性ペルオキシダーゼを枯渇させた。3%ウシ血清アルブミン(BSA)で1時間ブロッキングし、特異的抗体を4℃で1晩、2μg/mlのビオチン化HABP(b-HABP)では室温で2時間反応させた。1次抗体としてマウス抗MMP-3抗体(100倍希釈)(ProteinTech)とマウス抗MMP-13抗体(100倍希釈)(ProteinTech)を使用した。TBS Tween-20で3回洗浄後、抗MMP抗体を使用した場合にはSimplestain mouse Max-PO(株式会社ニチレイ)を、ビオチン化HABPを使用した場合はストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ試薬(株式会社ニチレイ)をそれぞれ室温で30分間反応させた。続いてDAB溶液(3', 3'-diaminobenzidine (DAB)-hydrogen peroxide substrate medium:株式会社ニチレイ)を5分間反応させ、ヘマトキシリンで対比染色を行った。ネガティブコントロールとして1次抗体を使用せずに染色を行った。染色された細胞を顕微鏡下(倍率400倍)に3視野でそれぞれカウントし、その数を平均化した。視野におけるすべての軟骨細胞の数で染色されている軟骨細胞の数を割ることにより染色細胞の割合を算出した。
【0030】
(6)CIAマウスの血清HA濃度
それぞれの群(n=10)で血清HA濃度を測定するために、潅流固定前に心臓より血液を採取した。関節炎のないコントロールとして、免疫していない正常マウス(n=10)から血液を採取した。凝固した血液を15分3000rpm(503g)で遠心し、血清を-80℃で保存した。サンドイッチELISAにて血清HA濃度を測定した。
【0031】
(7)細胞培養
関節置換術を受けた関節リウマチ患者の滑膜組織より線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)を単離した。すべての患者(n=5)より同意が得られた。滑膜組織を小さな切片にし、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で溶解した4mg/ml コラゲナーゼを使用し、37℃で3時間分離させた。70-μm セルストレイナーでフィルタリング後、DMEMで洗浄した。10%ウシ胎仔血清と抗生剤(ペニシリン: 100U/ml, ストレプトマイシン: 100μg/ml, Amphotecerin-B: 0.25μg/ml)の入ったDMEMで滑膜細胞を混濁した後、単層培養した。4継代〜6継代の細胞を実験に使用した。
【0032】
(8)細胞への刺激とリアルタイムPCR
FLS(1×10
5細胞/ウェル)を6ウェルプレートで2日間、培養後、洗浄し、血清の入っていないDMEMで1晩飢餓状態とした。細胞を10ng/mlのTNF-αで刺激し、同時に4-MU(0mM、0.1mM、0.5mM、1.0mM、1.5mM)で12時間処置した。4-MUはジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解し、最終のDMSOの濃度が0.1%となるようにした。コントロールの細胞は血清の入っていないDMEMで培養した。12時間処置した後、添付のプロトコールに従い、RNeasy(登録商標)Min Kit (QIAGEN)により全RNAを調製した。High Capacity cDNA Reverse transcription kit (Applied Biosystems)を用い、cDNAへ逆転写を行った。
【0033】
MMP-1とMMP-3の定量的な発現解析のためにLightCycler 480 SYBR Green 1 kit (Roche Molecular Biochemical)とLightCycler instrument (Roche Diagnostics)を使用し、リアルタイムPCRを添付のプロトコールに従い行った。標的となるmRNAの相対的なレベルはGAPDHにより標準化した。MMP-1、MMP-3、GAPDHのプライマー配列は以下の通りである。
MMP-1用:5'-TGGACCTGGAGGAAATCTTG-3'(フォワード、配列番号1)、5'-AGTTCATGAGCTGCAACACG-3'(リバース、配列番号2)
MMP-3用:5'-TTCCTTGGATTGGAGGTGAC-3'(フォワード、配列番号3)、5'-TGCCAGGAAAGGTTCTGAAG-3'(リバース、配列番号4)
GAPDH用:5'-TGAACGGGAAGCTCACTGG-3'(フォワード、配列番号5)、5'-TCCACCACCCTGTTGCTGTA-3'(リバース、配列番号6)
【0034】
(9)ウエスタンブロット解析
FLSにおけるMMP-1とMMP-3のタンパクレベルの発現に対する4-MUの効果をウエスタンブロットで解析した。FLSをTNF-α(10ng/ml)で刺激し、同時に4-MU(0mM、0.1mM、0.5mM、1.0mM、1.5mM)で24時間処置した。コントロールとして血清の入っていないDMEMで細胞を培養した。細胞溶解液はRIPAバッファー(Santa Cruz Biotechnology)で調整し、タンパク濃度はブラッドフォード法で測定した。抽出したタンパク質(1レーンにつき40μg)をサンプルとして、抗MMP-1抗体、抗MMP-3抗体、抗β−アクチン抗体を使用したウエスタンブロット解析を行った。
【0035】
(10)siRNAでのFLSのトランスフェクション
4-MUの効果がHA合成の抑制によって誘導されているものであるか否かを調べるために、ヒアルロン酸合成酵素1(HAS1)とHAS2とHAS3をそれぞれ、もしくは3つともノックダウンした後に、FLSをTNF-α(10ng/ml)で刺激した。MMP-1とMMP-3のmRNA発現をリアルタイムで評価した。ヒトのHAS1、HAS2、HAS3に特異的なsiRNAはSigma-Aldrich社より購入した。siRNAの配列は以下のとおりである。
HAS1用:5'-CCUCUAGGCCUAUAUAGGATT-3'(配列番号7)
HAS2用:5'-CCAGUAUCAGUUUGGUUUATT-3'(配列番号8)
HAS3用:5'-GACCCUGACUACUUGCGCATT-3'(配列番号9)
【0036】
ネガティブコントロールとしてMISSION siRNA universal negative control (Sigma-Aldrich社)を使用した。添付のプロトコールに従ってLipofectamine2000 (Invitrogen)を使用し、FLSにsiRNAをトランスフェクトした。12時間後にリアルタイムPCRにて、siRNAを用いたノックダウン効率を測定した。HAS1とHAS2とHAS3のそれぞれ、もしくは3つのノックダウン下でのMMP-1とMMP-3のmRNA発現における4-MUの効果をリアルタイムPCRにて解析した。
【0037】
(11)FLSでのHAの集積
チャンバースライド(BD Biosciences)に細胞(1×10
4)を6時間培養した。その後、10ng/mlのTNF-αで刺激し、同時に4-MU(1.0mM)で12時間処置、一方は4-MUで処置しなかった。コントロールとして血清の入っていないDMEMのみで培養した。細胞を4%PFAで2時間室温で固定した。内因性ペルオキシダーゼを枯渇させるため、30%メタノールで希釈した0.3%H
2O
2で30分処置した。1%BSAで1時間室温で処置し、その後、2.0μg/mlのビオチン化HABPで2時間、室温で処置した。ビオチン化HABPをストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ試薬(株式会社ニチレイ)とDAB含有基質溶液(株式会社ニチレイ)で検出した。
【0038】
(12)HAの定量化
サブコンフルエントの状態のFLSを10ng/mlのTNF-αで刺激し、同時に4-MU(0mM、0.1mM、0.5mM、1.0mM、1.5mM)で24時間処置した。コントロールとして血清の入っていないDMEMで24時間培養した。以前報告された方法(Kakizaki et al, J Biol Chem, 2004; 279:33281-33289)でHAを採取した。培養液を分取し、「培養液サンプル」とした。細胞周囲のHAを取り除くため、細胞をトリプシン-EDTAで10分間、37℃で処置した後、PBSで洗浄した。トリプシン溶液と洗浄液を「細胞周囲サンプル」とした。細胞数を数えた後、細胞をプロテアーゼK溶液(0.15 M Tris-HCl, pH 7.5, 0.15 M NaCl, 10mM CaCl
2, 20ユニットのプロテアーゼKを含む5 mM deferoxaminemesylate)で2時間、55℃で処置し、その溶液を「細胞内サンプル」とした。すべてのサンプルについて、タンパク分解酵素を不活化するために100℃で15分間加熱した。その後、4℃で30分間15000gで遠心し、解析に供した。HA濃度はサンドイッチELISAで測定した。
【0039】
(13)既存薬(NSAID)との比較
4-MUの効果を、既存の非ステロイド抗炎症薬(インドメタシン、エトドラク、セレコキシブ)の効果と比較した。関節リウマチ患者由来のFLSを10ng/mlのTNF-αで刺激し、同時に4-MU又は非ステロイド薬で12時間処置した。処置後の細胞のMMP-1及びMMP-3のmRNA発現量を比較した。
【0040】
(14)統計解析
データは平均±標準偏差で表した。ボンフェローニ/ダン検定及びノンパラメトリック マン・ホイットニーのU検定を使用し、群間の統計的な有意差を求めた。P値が0.05以下で有意差ありと判断した。
【0041】
2.結果
(1)4-MUでの治療によるCIAの臨床的な徴候の抑制
この実験で使用したものと同じ免疫プロトコールを使用した過去の文献(Rosloniec EF, Cremer M, Kang AH, Myers LK, Brand DD: Collagen-induced arthritis. Current protocols in immunology / edited by John E Coligan [et al] 2010, Chapter 15:Unit 15 15 11-25.)では通常、初回免疫後、21日から28日に関節炎の徴候が現れ、病状が急速に進行すると報告している。この報告を踏まえ、関節炎発症の早い時期での4-MUの効果を調べるために、初回免疫から23日後に4-MUによる治療を開始した。実際にコントロールマウス(4-MUによる治療をしない群)は初回免疫後23日から30日の間にほぼ100%CIAを発症し、実験の正確性が裏付けられた。
【0042】
臨床的な関節炎を21日目から42日目まで評価した。関節炎スコア(Arthritis score)は濃度依存性に4-MUによって抑制された(
図1)。もっとも効果的であったのは3mg/gの4-MU投与群であった。関節炎スコア以外の評価として、関節炎の程度を評価するために足の腫脹を測定した。足の腫脹は4-MU治療群で有意に小さかった(P<0.05)(
図2)。
【0043】
4-MUの毒性は治療群とコントロール群の体重及び食事量を毎日モニタリングすることで評価した。加えて、HAがその細胞外基質の維持と保全に重要な役割を担っている関節軟骨をヘマトキシリン染色で評価した。すべてのマウスは実験の間、生存した。42日後、4群間で体重に差はなく、4-MUによって治療されたマウスの関節軟骨は顕微鏡的に正常であった(データ示さず)。
【0044】
(2)関節炎の程度の組織学的評価
42日目にコントロール群と4-MU治療群のマウスを安楽死させ、肢の組織学的解析を行った。コントロールマウスから得られた肢の膝関節は疾患による著明な変化を示した。その変化は炎症性細胞の浸潤を伴った滑膜の肥厚、パンヌスの形成、激しい軟骨及び関節の破壊等である(
図3)。MU治療群の膝関節では軽度な滑膜炎を示し、明らかな軟骨や骨を破壊は認められなかった。組織学的スコア(Histological score)はコントロール群より4-MU治療群で低く、濃度依存性であった(
図4)。滑膜炎の程度はコントロール群と比べ、1.5mg/g治療群と3.0mg/g治療群で有意に低かった(
図4)。
【0045】
(3)免疫組織学
MMPファミリーは関節軟骨の破壊において重要な因子である。in vivoの関節軟骨と滑膜組織でのMMPの発現における4-MUの効果を評価するために、CIAマウスから採取した膝関節の切片をサンプルとして免疫組織染色を行った。関節軟骨におけるMMP-3とMMP-13の発現はコントロール群で顕著に増加していた。そして4-MU治療によって抑制されていた(
図5、
図6)。また、コントロール群において、それらの発現は滑膜の浸潤部位や滑膜組織で著明に増加していた。一方で4-MUの治療により滑膜組織でのMMPの発現は抑制された(
図7)。
【0046】
さらに膝関節でのHAの局在とHAの集積に対する4-MUの効果を調べるために、CIAマウスの膝関節の切片について、b-HABPを使用した免疫染色を行った。コントロール群では骨への滑膜の浸潤部位においてHAの異常な集積を認めた。4-MU治療群や正常マウスにおいては滑膜細胞のHAの染色性は弱かった。軟骨細胞のHAの染色性は4-MU治療群と正常マウス群で同程度であった(
図8)。
【0047】
(4)CIAマウスにおける血清HA濃度
全身のHA濃度に対する4-MUの効果を調べるために血清のHA濃度を測定した。血清HA濃度は正常マウス群(CIAを誘発していない群)で696.2±335.2ng/ml、コントロール群(CIA誘発マウス無治療群)で1264.5±438.7 ng/ml、4-MU(3mg/g)治療CIAマウス群で539.4±191.6 ng/mlであった(
図9)。4-MU治療群の血清HA濃度は正常マウス群と同程度であった。一方で、無治療のCIAマウス群は血清HA濃度が4-MU治療群と正常群に比べ有意に高かった(p<0.01)。これらの結果は、4-MU(3mg/g)の治療がCIAマウスの異常なHA濃度を正常マウスの濃度まで正常化させることを示している。
【0048】
(5)RAFLS(関節リウマチ患者由来の線維芽細胞様滑膜細胞)でのMMP-1とMMP-3のmRNA、タンパク発現に対する4-MUの効果
関節軟骨破壊の因子であるMMPは関節リウマチ(RA)では主にFLSによって分泌されている。RAFLSでのMMP-1とMMP-3に対する4-MUの効果を調べるために、細胞をTNF-α(10ng/ml)で刺激し、同時に4-MU(0mM, 0.1mM, 0.5mM, 1.0mM, 1.5mM)で処置した。リアルタイムPCRと濃度測定を使ったウエスタンブロット解析の結果、MMP-1とMMP-3のmRNAとタンパクは濃度依存性に有意に4-MUによって抑制された(
図10、11)。
【0049】
HAS1とHAS2とHAS3のそれぞれのノックダウンと3つ同時のノックダウン下において、MMP-1、MMP-3のmRNA発現を調べた。HAS1、HAS2、HAS3それぞれ単独のノックダウンの効果は4-MUによる効果とは同等ではなかったが、3つ同時のノックダウンでは4-MUと同等の効果を示した。尚、単独のノックダウン効率はHAS1が95%、HAS2が61%、HAS3が72%であり、3つ同時のノックダウンではHAS1が98%、HAS2が88%、HAS3が92%であった。これらの結果はMMP-1、MMP-3発現における4-MUの抑制効果はHA依存の経路を介していることを示唆する。
【0050】
(6)RAFLSにおいて4-MUはHAの集積を抑制する
FLSにおけるHA集積に対する4-MUの効果を評価するためにビオチン化HABPを使用しHAを可視化した。さらにサンドイッチELISAを使用し、HA濃度を測定した。
図12に示すように、TNF-α(10ng/ml)で12時間刺激した細胞はHAの著明な染色性を示した。特に細胞表面と細胞周囲において著明であった。TNF-αで刺激した細胞でのHAの染色性は4-MUによって抑制された。さらに糸状仮足を連想させる部位はTNF-αの刺激によりHAが強く染色された。4-MUによる処置はHAの染色性を抑制し、特にその糸状仮足を連想させる部位で抑制した。一方で細胞内の染色性はTNF-α刺激のみのものと4-MUで処置したもので差がなかった。4-MUで処置した培養細胞における培地と細胞周囲のHA濃度は4-MUで処置しないものに比べ、用量依存性に低くなった。対照的に細胞内のHA濃度は4-MUで処置したものとしないもので有意な差はなかった。このことは4-MUがトリプシンに影響を受けるHAの集積を抑制していること示している。トリプシンに影響を受けるHAはCD44のような細胞表面のHAレセプターと結合するかもしれない。{しじょうかそく}を連想させる部位で抑制した。一方で細胞内の染色性はTNF-α刺激のみものと4-MUで処置したもので変わりなかった(Fig.6A)。4-MUで処置した培養細胞における培地と細胞周囲のHA濃度は4-MUで処置しないものに比べ、用量依存性に低くなった。対象的に細胞内のHA濃度は4-MUで処置したものとしないもので有意な差はなかった。このことは4-MUがtrypsinに影響を受けるHAの集積を抑制していること示している。trypsinに影響を受けるHAはCD44のような細胞表面のHAレセプターと結合するかもしれない。
【0051】
(7)既存薬(NSAID)との比較
既存の非ステロイド抗炎症薬(インドメタシン、エトドラク、セレコキシブ)と比較することによって、4-MUの効果を評価した。4-MUは、インドメタシン及びエトドラクに比較して、TNF-αで刺激されたRAFLSにおけるMMP-1及びMMP-3のmRNAの発現を有意に抑制した(
図13、14)。また、セレコキシブとの比較においても、4-MUの効果が高いことが示された(
図15)。