特許第5910347号(P5910347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

<>
  • 特許5910347-転がり軸受装置 図000002
  • 特許5910347-転がり軸受装置 図000003
  • 特許5910347-転がり軸受装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910347
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】転がり軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20160414BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   F16C33/78 C
   F16C19/38
   F16C33/78 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-143033(P2012-143033)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-5903(P2014-5903A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(74)【代理人】
【識別番号】100176463
【弁理士】
【氏名又は名称】磯江 悦子
(72)【発明者】
【氏名】小山 顕
【審査官】 北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−249034(JP,A)
【文献】 特開2003−4035(JP,A)
【文献】 特開2012−172723(JP,A)
【文献】 特開2009−210018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/16−15/30、15/32、
15/46−15/52
F16C 19/00−19/56、33/30−33/66、
33/72−33/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道面を有する外輪と、
軌道面を有する内輪と、
上記外輪の軌道面と上記内輪の軌道面との間に配置される転動体と、
上記外輪の内周面の軸方向の一端部に内嵌されて固定される嵌合部を有する環状のシールケースと
を備え、
上記シールケースの外面は、
外部に露出する露出部と、
上記嵌合部の上記軸方向の上記転動体側とは反対側の端部から上記露出部まで延在する一以上の溝と
を有し、
上記シールケースの内面は、
上記嵌合部の上記軸方向の上記転動体側とは反対側の端部に位置する一以上の溝を有することを特徴とする転がり軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転がり軸受装置において、
上記シールケースの上記内面は、上記シールケースの上記外面の上記各溝に対して上記シールケースの周方向に上記各溝を挟み込むように存在する二つの溝を有することを特徴とする転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受装置に関し、例えば、鉄道車両の車軸等を回転自在に支持するのに好適に使用できる転がり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転がり軸受装置としては、特開2009−210018号公報(特許文献1)に記載されているものがある。この転がり軸受装置は、外輪と、内輪と、複数の円錐ころと、環状のシールケースとを備え、外輪は、軸箱の内周面に内嵌されて固定される一方、内輪は、鉄道車両の車軸に外嵌されて固定されている。また、上記複数の円錐ころは、外輪の軌道面と、内輪の軌道面との間に保持器によって保持された状態で周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0003】
上記シールケースは、嵌合部を有し、この嵌合部は、外輪の内周面の軸方向の端部に締め代を有した状態で内嵌されて固定されている。上記シールケースの外面は、外部に露出する露出部を有している。上記シールケースの露出部は、傾斜凹部を有している。この傾斜凹部は、転動体から軸方向に離れるにしたがって深さが深くなる部分を有している。
【0004】
この転がり軸受装置は、タガネの先端部を上記傾斜凹部の底面の軸方向の外方側の角部に接触させた状態で、タガネを軸方向の外方側かつ径方向の内方側に押し出すように押圧することにより、タガネからシールケースに軸方向の外方側かつ径方向の内方側に力を付与できるようになっている。また、この転がり軸受装置をメンテナンス等で分解する場合には、タガネからシールケースに上記軸方向の外方側かつ径方向の内方側への力を付与して、シールケースを径方向の内方側に変形させて、シールケースを取り外すようになっている。
【0005】
しかしながら、上記従来の転がり軸受装置では、シールケースを外すのに、タガネを上記軸方向の外方側かつ径方向の内方側へ大きな力で押圧しなければならないから、タガネの先端が傾斜凹部から抜け出た場合、タガネの鋭い先端が高速で直進することが避けられず、非常に危険である。
【0006】
また、上記従来の転がり軸受装置では、傾斜凹部に大きな力を付与できる一方、シールケースの嵌合部に大きな力を付与しにくくて、シールケースの取り外しを容易に行うことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−210018号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、外輪からシールケースを安全かつより容易に取り外しできる転がり軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明の転がり軸受装置は、
軌道面を有する外輪と、
軌道面を有する内輪と、
上記外輪の軌道面と上記内輪の軌道面との間に配置される転動体と、
上記外輪の内周面の軸方向の一端部に内嵌されて固定される嵌合部を有する環状のシールケースと
を備え、
上記シールケースの外面は、
外部に露出する露出部と、
上記嵌合部の上記軸方向の上記転動体側とは反対側の端部から上記露出部まで延在する一以上の溝と
を有し、
上記シールケースの内面は、
上記嵌合部の上記軸方向の上記転動体側とは反対側の端部に位置する一以上の溝を有することを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、シールケースの外面が、嵌合部の軸方向の転動体側とは反対側の端部から露出部まで延在する溝を有しているから、タガネ等の工具の先端を溝の露出部に存在する部分を介して外部から嵌合部の内周面に引っ掛けることができて、その後、タガネ等の工具の後方側を金槌等の工具で叩くことができる。したがって、外輪の内周面からの反力も利用して、シールケースの嵌合部にテコの原理に基づいて径方向の内方側に大きな力を付与できて、外輪からシールケースを容易に取り外しできる。
【0011】
また、本発明によれば、タガネ等の工具の後方側を金槌等の工具で叩いてシールケースに力を付与するから、タガネ等の工具が高速で直進する虞が一切なくて、外輪からシールケースを安全に取り外しできる。
【0012】
また、本発明によれば、シールケースの内面が、嵌合部の軸方向の転動体側とは反対側の端部に溝を有して、シールケースの嵌合部の剛性が低くなっているから、外面側の溝に径方向の内方側に大きな力が付与されたとき、シールケースをより容易に変形させることができて、外輪からシールケースをより容易に取り外しできる。
【0013】
また、一実施形態では、
上記シールケースの上記内面は、上記シールケースの上記外面の上記各溝に対して上記シールケースの周方向に上記各溝を挟み込むように存在する二つの溝を有する。
【0014】
上記実施形態によれば、シールケースの内面が、シールケースの外面の各溝に対してシールケースの周方向に上記各溝を挟み込むように存在する二つの溝を有するから、外面の溝がある箇所が、上記二つの溝の存在位置を支点として径方向の内方側に変形し易くなる。したがって、外面の溝がある箇所を径が小さくなるように容易に変形させることができて、外輪からシールケースを更に容易に取り外しできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外輪からシールケースを安全かつより容易に取り外しできる転がり軸受装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の転がり軸受装置の一実施形態である車軸用軸受装置の軸方向の模式断面図である。
図2】第1シールケースの一部の斜視図である。
図3】第1シールケースの嵌合部の周方向の一部分における軸方向の円環部側の端部の径方向の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の転がり軸受装置の一実施形態である車軸用軸受装置の軸方向の模式断面図である。
【0019】
この車軸用軸受装置(以下、単に、軸受装置という)は、第1内輪6と、第2内輪7と、外輪8と、転動体としての複数の第1円錐ころ10と、転動体としての複数の第2円錐ころ11と、第1シールケース37と、第2シールケース38と、第1密封装置47と、第2密封装置48とを備える。上記第1内輪6と第2内輪7とは、複合内輪を構成している。上記第1内輪6と第2内輪7とは、鉄道車両の車軸1上に外嵌されている一方、外輪8は、軸箱9の内周面に内嵌されている。
【0020】
上記車軸1は、円筒外周面部14と、拡径外周面部17とを有し、上記拡径外周面部17は、円筒外周面部14につながっている。上記拡径外周面部17は、軸方向に円筒外周面部14から離れるにしたがって、外径が大きくなっている。上記拡径外周面部14は、軸方向の断面において、略放物線状の形状を有している。
【0021】
上記第1内輪6は、外周に円錐軌道面21を有すると共に、第2内輪7は、外周に円錐軌道面22を有している。上記第1内輪6と第2内輪7とは、略同一である。上記第1内輪6の円錐軌道面21の小径側の端面は、第2内輪7の円錐軌道面22の小径側の端面に当接している。
【0022】
上記外輪8は、互いに軸方向に隣接する第1円錐軌道面31および第2円錐軌道面32を有している。上記第1円錐軌道面31の内径は、第2円錐軌道面32側にいくにしたがって小さくなり、第2円錐軌道面32の内径は、第1円錐軌道面31側にいくにしたがって小さくなっている。
【0023】
上記複数の第1円錐ころ10は、第1内輪6の円錐軌道面21と、外輪8の第1円錐軌道面31との間に、第1保持器41に保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。また、上記複数の第2円錐ころ11は、第2内輪7の円錐軌道面22と、外輪8の第2円錐軌道面32との間に、第2保持器42に保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0024】
上記車軸1の外周面には、後蓋3と油切り4とが外嵌されている。上記後蓋3は、環状部材であり、第2内輪7の軸方向の第1内輪6側とは反対側に位置している。上記後蓋3の軸方向の第2内輪7側の端面は、第2内輪7の軸方向の第1内輪6側とは反対側の端面に当接している。上記後蓋3は、車軸1の拡径外周面部17に対応する形状を有する拡径内周面部44を有している。上記後蓋3の拡径内周面部44が、車軸1の拡径外周面部17に嵌り込むことにより、後蓋3を、車軸1の所定位置に固定するようになっている。
【0025】
上記油切り4は、環状部材であり、第1内輪6の軸方向の第2内輪7側とは反対側に位置している。上記油切り4の軸方向の第1内輪6側の端面は、第1内輪6の軸方向の第2内輪7側とは反対側の端面に当接している。上記油切り4は、車軸1の端部にネジで固定された前蓋(図示せず)によって、後蓋3側に力を付与されている。上記車軸1に対して位置決めされた前蓋および後蓋3で、第1内輪6、第2内輪7および油切り4を挟み込むことにより、第1内輪6、第2内輪7および油切り4を軸方向に位置決めしている。
【0026】
上記第1シールケース37は、環状部材であり、金属からなっている。上記第1シールケース37は、円筒状の嵌合部60と、円環部61と、密封装置固定部62とを有し、嵌合部60は、外輪8の軸方向の一端部にある円筒内周面に締まり嵌めにより内嵌されて固定されている。上記円環部61は、嵌合部60の軸方向の第1円錐ころ10側とは反対側の端部から径方向の内方側に延在している。また、上記密封装置固定部62は、円環部61の径方向の内方側の端部から軸方向の第1円錐ころ10側とは反対側に延在している。上記第1密封装置47は、密封装置固定部62と油切り4との間を密封している。上記円環部61の外面と、密封装置固定部62の外面とは、外部に露出している。上記円環部61の外面および密封装置固定部62の外面は、露出部88を構成している。
【0027】
上記第2シールケース38は、環状部材であり、金属からなっている。上記第2シールケース38は、円筒状の嵌合部70と、円環部71と、密封装置固定部72とを有し、嵌合部70は、外輪8の軸方向の他端部にある円筒内周面に締まり嵌めにより内嵌されて固定されている。上記円環部71は、嵌合部70の軸方向の第2円錐ころ11側とは反対側の端部から径方向の内方側に延在している。また、上記密封装置固定部72は、円環部71の径方向の内方側の端部から軸方向の第2円錐ころ11側とは反対側に延在している。上記第2密封装置48は、密封装置固定部72と後蓋3との間を密封している。
【0028】
図2は、上記第1シールケース37の一部の斜視図であり、周方向の一部の位相において、嵌合部60と、円環部61と、密封装置固定部62の一部とを示す斜視図である。
【0029】
図2に示すように、周方向の一部の位相部分において、第1シールケース37の外面は、軸方向に延在する溝80を有する一方、第1シールケース37の内面は、第1溝91と、第2溝92とを有する。上記内面の第1溝91および第2溝92は、上記外面の溝80に対して第1シールケース37の周方向に上記外面の溝80を挟み込むように存在している。図2に示すように、上記第1溝91と、外面の溝80との周方向の距離は、第2溝92と、外面の溝80との周方向の距離と略一致している。
【0030】
上記外面の溝80は、嵌合部60の軸方向の第1円錐ころ10側とは反対側の端部から円環部61を経由して密封装置固定部62の軸方向の円環部61側の端部まで軸方向に延在している。上記外面の溝80の軸方向の第1円錐ころ10側の端には、径方向に広がる端面が存在している。上記外面の溝80は、軸方向の第1円錐ころ10側に軸方向に開口しないようになっている。このようにして、転動体配置室50(図1参照)内の潤滑剤が外面の溝80を伝って外部に漏れ出ることを防止している。
【0031】
上記内面の溝91,92の夫々は、嵌合部60の軸方向の第1円錐ころ10側とは反対側の端部から円環部61を経由して密封装置固定部62の軸方向の円環部61側の端部まで軸方向に延在している。図示はしないが、この第1シールケース37は、一の溝80を外面に形成すると共に、その一の溝80を挟み込むように、二つの溝91,92を内面に形成する構造を、4組有し、その4組の構造は、全て同一であり、かつ、周方向に略等間隔に配置されている。
【0032】
上記構成において、メンテナンス等を行う際に、この転がり軸受装置は、次の手順で分解されることができる。
【0033】
すなわち、タガネ等の工具の先端を、溝80の露出部88に存在する部分を介して外部から嵌合部60の内周面に引っ掛ける。その後、タガネ等の工具の後方側を金槌等の工具で叩いて、テコの原理に基づいて第1シールケース37の嵌合部60の外面の溝80の周辺に、径方向の内方側に力を付与する。このようにして、図3、すなわち、嵌合部60の周方向の一部分における軸方向の円環部61側の端部の径方向の模式断面図に示すように、第1シールケース37の嵌合部60の外面の溝80の周辺を、径が小さくなるように、径方向の内方側に変形させる。このようにして、外輪8の内周面に対する第1シールケース37の嵌合部60の嵌合を解除して、外輪8から第1シールケース37を取り外す。
【0034】
上記実施形態の軸受装置によれば、第1シールケース37の外面が、嵌合部60の軸方向の第1円錐ころ10側とは反対側の端部から露出部88まで延在する溝80を有しているから、タガネ等の工具の先端を溝80の露出部88に存在する部分を介して外部から嵌合部60の内周面に引っ掛けることができて、その後、タガネ等の工具の後方側を金槌等の工具で叩くことができる。したがって、上記外輪8の内周面からの反力も利用して、第1シールケース37の嵌合部60にテコの原理に基づいて径方向の内方側に大きな力を付与できて、外輪8から第1シールケース37を容易に取り外しできる。本実施形態の軸受装置とは異なり、上述の従来の軸受装置では、シールケースの嵌合部から離れた箇所にしか力を付与できないから、外輪からシールケースを容易に取り外しできないのである。
【0035】
また、上記実施形態の軸受装置によれば、タガネ等の工具の後方側を金槌等の工具で叩いて第1シールケース37に力を付与するから、タガネ等の工具が高速で直進する虞が一切なくて、外輪8から第1シールケース37を安全に取り外しできる。
【0036】
また、上記実施形態の軸受装置によれば、第1シールケース37の内面が、嵌合部60の軸方向の第1円錐ころ10側とは反対側の端部に溝91,92を有して、第1シールケース37の嵌合部60の剛性が低くなっているから、外面側の溝80に径方向の内方側に大きな力が付与されたとき、第1シールケース37をより容易に変形させることができて、外輪8から第1シールケース37をより容易に取り外しできる。
【0037】
また、上記実施形態の軸受装置によれば、第1シールケース37の内面が、第1シールケース38の外面の各溝80に対して第1シールケース37の周方向に上記各溝80を挟み込むように存在する二つの溝91,92を有するから、外面の溝80がある箇所が、上記二つの溝91,92の存在位置を支点として径方向の内方側に変形し易くなる。したがって、上記外面の溝80がある箇所を径が小さくなるように容易に変形させることができて、外輪8から第1シールケース37を更に容易に取り外しできる。
【0038】
尚、上記実施形態の軸受装置では、外輪8の軸方向の油切り4側の端部に固定される第1シールケース37の外面および内面に溝80,91,92を形成する一方、外輪8の軸方向の後蓋3側の端部に固定される第2シールケース38に溝を形成しなかった。しかしながら、この発明では、外輪の軸方向の油切り側の端部に固定される第1シールケースに溝を形成しない一方、外輪の軸方向の後蓋側の端部に固定される第2シールケースの外面および内面に溝を形成しても良い。また、この発明では、外輪の軸方向の油切り側の端部に固定される第1シールケースの外面および内面に溝を形成すると共に、外輪の軸方向の後蓋側の端部に固定される第2シールケースの外面および内面に溝を形成しても良い。
【0039】
また、上記実施形態の軸受装置では、第1シールケース37の内面に形成された溝91,92の数が、第1シールケース37の外面に形成された溝80の数よりも多かったが、この発明では、シールケースの内面に形成された溝の数は、シールケースの外面に形成された溝の数と同じでも良く、または、シールケースの外面に形成された溝の数よりも少なくても良い。
【0040】
また、上記実施形態の軸受装置では、第1シールケース37の外面に形成された溝80が、軸方向の第1円錐ころ10側の端に、径方向に広がる端面を有し、上記外面の溝80が、軸方向の第1円錐ころ10側に軸方向に開口しないようになっていた。しかしながら、この発明では、シールケースの外面に形成された溝は、軸方向の転動体側および軸方向の転動体側とは反対側のうちの少なくとも一方が、軸方向に開口していても良く、または、シールケースの外面に形成された溝は、軸方向の転動体側および軸方向の転動体側とは反対側の両方が、軸方向に開口していなくても良い。要は、シールケースの外面に形成された溝は、嵌合部の軸方向の転動体側とは反対側の端部から露出部まで延在していさえすれば、如何なる構造を有していても良い。
【0041】
また、上記実施形態の軸受装置では、第1シールケース37の内面に形成された溝91,92が、軸方向の第1円錐ころ10側の端に、径方向に広がる端面を有し、上記内面の溝91,92が、軸方向の第1円錐ころ10側に軸方向に開口しないようになっていた。しかしながら、この発明では、シールケースの内面に形成された溝は、軸方向の転動体側および軸方向の転動体側とは反対側のうちの少なくとも一方が、軸方向に開口していても良く、または、シールケースの内面に形成された溝は、軸方向の転動体側および軸方向の転動体側とは反対側の両方が、軸方向に開口していなくても良い。要は、シールケースの内面に形成された溝は、嵌合部の軸方向の転動体側とは反対側の端部に位置する部分を有していさえすれば、如何なる構造を有していても良い。
【0042】
また、上記実施形態の軸受装置では、上記第1シールケース37が、一の溝80を外面に形成すると共に、その一の溝80を挟み込むように、二つの溝91,92を内面に形成する構造を、4組有していた。しかしながら、この発明では、シールケースは、一の溝を外面に形成すると共に、その一の溝を挟み込むように、二つの溝を内面に形成する構造を、1〜3組有しても良く、または、5組以上有していても良い。
【0043】
また、上記実施形態の軸受装置では、第1シールケース37が、一の溝80を外面に形成すると共に、その一の溝80を挟み込むように、二つの溝91,92を内面に形成する構造が、第1シールケース37の周方向に略等間隔に複数組形成されていた。しかしながら、この発明では、シールケースが、一の溝を外面に形成すると共に、その一の溝を挟み込むように、二つの溝を内面に形成する構造が、シールケースの周方向に等間隔でない間隔で複数組形成されていても良い。
【0044】
また、上記実施形態の軸受装置では、周方向の一定の範囲において、第1シールケース37の内面が、第1シールケース37の外面の各溝80に対して第1シールケース37の周方向に上記各溝80を挟み込むように存在する二つの溝91,92を有する局所構造が周方向に繰り返される構成であった。しかしながら、この発明では、例えば、周方向の一定の範囲において、シールケースの内面が、シールケースの外面の各溝に対して径方向に重なる位置に一つの溝を有する局所構造が周方向に繰り返される構成であっても良く、または、周方向の一定の範囲において、シールケースの内面が、シールケースの外面の各溝に対してシールケースの周方向に上記外面の各溝を挟み込むように存在する二つの溝と、外面の各溝に対して径方向に重なる位置に存在する一つの溝とを有する局所構造が、周方向に繰り返される構成であっても良い。また、例えば、この発明では、シールケースの周方向の一定の範囲に形成されて周方向に繰り返される局所構造において、外面に形成される溝の数が、内面に形成される溝の数と同一または内面に形成される溝の数よりも多くても良い。要は、シールケースの周方向の一定の範囲に形成されて周方向に繰り返される局所構造は、外面に少なくとも一の溝を有し、かつ、内面に少なくとも一の溝を有していさえすれば、如何なる構造であっても良い。また、この発明では、シールケースの周方向の一定の範囲に形成される局所構造が、周方向の位相で、異なっていても良い。また、この発明では、シールケースの外面が、少なくとも一つの溝を有し、また、シールケースの内面が、少なくとも一つの溝を有しさえすれば良い。
【0045】
また、上記実施形態の軸受装置では、第1シールケース37の外面および内面に形成された全ての溝80,91,92が、軸方向に延在していたが、この発明では、シールケースに形成される少なくとも一の溝は、軸方向に傾斜する方向に延在していても良く、または、湾曲している部分を有していても良い。要は、シールケースに形成される各溝は、軸方向に延在していても良く、軸方向に延在していなくても良い。
【0046】
また、上記実施形態の軸受装置では、溝80,91,92を有する第1シールケース37において、密封装置固定部62が、円環部61を介して嵌合部60に接続していたが、この発明では、溝を有するシールケースにおいて、密封装置固定部が、嵌合部に直接接続されても良い。
【0047】
また、上記実施形態の軸受装置では、転動体が、複列に配置された円錐ころ10,11であったが、この発明では、転動体は、軸方向に一列または複数列配置されていても良く、かつ、転動体は、円錐ころ、円筒ころ、凸面ころ(球面ころ)および玉のうちの一以上であっても良い。また、外輪または内輪は、一体型であっても、複数の環状部材からなる複合型であってもどちらでも良い。
【0048】
また、上記実施形態では、転がり軸受装置が、鉄道車両の車軸を回転自在に支持するのに使用された。ここで、転がり軸受装置が、鉄道車両の車軸を回転自在に支持する場合、第1および第2シールケース37,38は、振動で外れないことが必須であり、外輪8へ第1および第2シールケース37,38を圧入する際の締め代が大きくなり、かつ、第1および第2シールケース37,38の厚さも、数mm程度と厚くなる。したがって、鉄道車両においては、シールケースが外輪から外れにくくされているから、この発明の転がり軸受装置は、鉄道車両の車軸を回転自在に支持するのに好適に使用できる。しかしながら、この発明は、鉄道車両の車軸支持以外でシールケースが外輪に圧入される如何なる用途で使用しても良い。発明の転がり軸受装置を、鉄道車両の車軸支持以外でシールケースが外輪に圧入される用途で使用したとしても、シールケースを外輪から容易に取り外しできる作用効果が得られるからである。
【符号の説明】
【0049】
6 第1内輪
7 第2内輪
8 外輪
10 第1円錐ころ
11 第2円錐ころ
21 第1内輪の円錐軌道面
22 第2内輪の円錐軌道面
31 外輪の第1円錐軌道面
32 外輪の第2円錐軌道面
37 第1シールケース
60 第1シールケースの嵌合部
80 第1シールケースの外面の溝
88 第1シールケースの外面の露出部
91 第1シールケースの内面の第1溝
92 第1シールケースの内面の第2溝
図1
図2
図3