【文献】
Applied Catalysis, B: Environmental,2012年 1月12日,111-112,p.27-37
【文献】
Journal of the American Chemical Society,2011年,133(32),p.12675-12689
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(水素化分解用触媒)
本発明の水素化分解用触媒は、
(A)周期表第3族乃至11族の金属のいずれかを含む金属化合物と、
(B)周期表第5族、6族又は7族の金属を含む金属酸化物
及び
(C)周期表第8族乃至11属の金属のいずれかを含む高原子価金属化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を混合した後、得られた混合物を還元処理することによって得られる。
【0011】
また、(A)周期表第3族乃至11族の金属のいずれかを含む金属化合物と、
(B)周期表第5族、6族又は7族の金属を含む金属酸化物
及び
(C)周期表第8族乃至11属の金属のいずれかを含む高原子価金属化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物、
アミン化合物を混合した後、得られた混合物を還元処理することによって得られるものも、本発明の水素化分解用触媒として使用できる。
【0012】
(A)周期表第3族乃至11族の金属のいずれかを含む金属化合物(以下、単に金属化合物と称することもある)
本発明において使用する周期表第3族乃至11族の金属のいずれかを含む金属化合物の金属としては、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、イッテルビウム、ルテチウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金等が挙げられるが、好ましくはランタン、イッテルビウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、金、更に好ましくはルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金である。
【0013】
前記金属化合物の形態は特に限定されず、例えば、金属単体、金属合金、金属塩、金属錯体、金属酸化物等のいずれの形態であっても良く、水和物や有機化合物の付加体であっても良い。又、担体に担持されていても良い。なお、これらの金属化合物は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0014】
金属化合物の具体的な例としては、例えば、三塩化ランタン、三臭化ランタン、三ヨウ化ランタン、三硝酸ランタン、リン酸ランタン、三硫酸二ランタン、三炭酸二ランタン等のランタン化合物;三塩化イッテルビウム、三臭化イッテルビウム、三硝酸イッテルビウム、三硫酸二イッテルビウム等のイッテルビウム化合物;四塩化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、四硝酸ジルコニウム、二硫酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物;四塩化ハフニウム、四臭化ハフニウム、四ヨウ化ハフニウム、四硝酸ハフニウム、二硫酸ハフニウム等のハフニウム化合物;五塩化ニオブ、五臭化ニオブ、五ヨウ化ニオブ等のニオブ化合物;五塩化タンタル、五臭化タンタル、五ヨウ化タンタル等のタンタル化合物;三塩化モリブデン、五塩化モリブデン、三臭化モリブデン等のモリブデン化合物;四塩化タングステン、六塩化タングステン、五臭化タングステン等のタングステン化合物;三塩化レニウム、五塩化レニウム、三ヨウ化レニウム等のレニウム化合物、三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム、五塩化ルテニウム二アンモニウム、六塩化ルテニウム三アンモニウム、六塩化ルテニウム二カリウム、六塩化ルテニウム二ナトリウム、六臭化ルテニウム三カリウム、六臭化ルテニウム二カリウム等のルテニウム化合物;二塩化コバルト、二臭化コバルト、二ヨウ化コバルト、二フッ化コバルト、二硝酸コバルト、酸化コバルト、リン酸コバルト、二酢酸コバルト等のコバルト化合物;三塩化ロジウム、六塩化ロジウム三アンモニウム、六塩化ロジウム三カリウム、六塩化ロジウム三ナトリウム、三硝酸ロジウム等のロジウム化合物;三塩化イリジウム、三臭化イリジウム、四塩化イリジウム、四臭化イリジウム、イリジウム酸アンモニウム塩、ヘキサアンミンイリジウム三塩化物、ペンタアンミンクロロイリジウム二塩化物、六塩化イリジウム三アンモニウム、六塩化イリジウム三カリウム、六塩化イリジウム三ナトリウム、四塩化イリジウム二アンモニウム、六塩化イリジウム二アンモニウム、六塩化イリジウム二カリウム、六塩化イリジウム酸、六塩化イリジウム二ナトリウム等のイリジウム化合物;二塩化ニッケル、二臭化ニッケル、二ヨウ化ニッケル等のニッケル化合物;二塩化パラジウム、二臭化パラジウム、二ヨウ化パラジウム、二酢酸パラジウム、二硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酸化パラジウム等のパラジウム化合物;二塩化白金、四塩化白金、六塩化白金酸、二臭化白金、四臭化白金、六臭化白金酸、二ヨウ化白金、四ヨウ化白金、二塩化白金二アンモニウム、六塩化白金二アンモニウム、六塩化白金二アンモニウム、四塩化白金二アンモニウム、六塩化白金二ナトリウム、四塩化白金二カリウム、六塩化白金二カリウム、二臭化白金二アンモニウム、四臭化白金二カリウム、六臭化白金二アンモニウム、六ヨウ化白金酸ナトリウム、六ヨウ化白金酸カリウム、酸化白金、ヘキサヒドロキソ白金酸等の白金化合物;一塩化銅、二塩化銅、二塩化銅二アンモニウム等の銅化合物;一塩化金、三塩化金、四塩化金酸、三臭化金、三ヨウ化金等の金化合物が挙げられるが、好ましくは三塩化ルテニウム、二塩化コバルト、三塩化ロジウム、三塩化イリジウム、四塩化イリジウム、六塩化イリジウム酸、二塩化ニッケル、二塩化パラジウム、二塩化白金、二塩化銅、四塩化金酸が使用される。
【0015】
(B)周期表第5族、6族又は7族の金属を含む金属酸化物(以下、単に金属酸化物と称することもある)
本発明において使用する周期表第5族、6族又は7族の金属を含む金属酸化物の金属としては、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクノチウム、レニウム等が挙げられるが、好ましくはバナジウム、モリブデン、タングステン、レニウムである。
【0016】
前記金属酸化物の形態は、ひとつの金属−酸素結合を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、水和物や有機化合物の付加体であっても良い。又、担体に担持されていても良い。なお、これらの金属酸化物は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0017】
前記金属酸化物としては、酸化金属及び過酸化金属酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好適に使用されるが、その具体的な例としては、例えば、三塩化バナジウム、酸化バナジウム、三酸化二バナジウム、二酸化バナジウム、五酸化二バナジウム、三臭化バナジウム、ピロバナジン酸カリウム、テトラオキソバナジン(V)酸カリウム、トリオキソバナジン(V)酸カリウム、トリオキソバナジン(V)酸ナトリウム、ピロバナジン酸ナトリウム、トリオキソバナジン(V)酸リチウム等のバナジウム酸化物;ケイモリブデン酸、五塩化モリブデン、テトラコサオキソヘプタモリブデン(VI)酸アンモニウム、テトラオキソモリブデン(VI)酸カリウム、テトラオキソモリブデン酸カルシウム、テトラオキソモリブデン(VI)酸ナトリウム、テトラオキソモリブデン(VI)酸マグネシウム、テトラオキソモリブデン(VI)酸リチウム、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン等のモリブデン酸化物;テトラオキソタングステン(VI)酸ナトリウム、テトラオキソタングステン(VI)酸カドミウム(II)、テトラオキソタングスステン(VI)酸カリウム、テトラオキソタングステン(VI)酸カルシウム等;三塩化レニウム、五塩化レニウム、テトラオキソレニウム(VII)酸アンモニウム、テトラオキソレニウム(VII)酸カリウム、テトラオキソレニウム(VII)酸ナトリウム、六塩化レニウム三カリウム、六塩化レニウム二カリウム、二酸化レニウム、三酸化レニウム、七酸化二レニウム等のレニウム酸化物が挙げられるが、好ましくは五酸化二バナジウム、トリオキソバナジン(V)酸カリウム、トリオキソバナジン(V)酸ナトリウム、ピロバナジン酸ナトリウム、テトラオキソタングステン(VI)酸ナトリウム、ケイモリブデン酸、テトラコサオキソヘプタモリブデン(VI)酸アンモニウム、テトラオキソモリブデン(VI)酸ナトリウムテトラオキソレニウム(VII)酸アンモニウム、テトラオキソレニウム(VII)酸カリウム、七酸化二レニウムが使用される。
【0018】
(C)周期表第8族乃至11属の金属のいずれかを含む高原子価金属化合物(以下、単に高原子価金属化合物と称することもある)
本発明において使用する周期表第3族乃至11族の金属のいずれかを含む高原子価金属化合物の金属としては、例えば、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金等が挙げられるが、好ましくはルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、金である。
【0019】
本発明の高原子価金属とは、金属の原子価が3価以上の金属を示す。
【0020】
前記高原子価金属化合物の形態は、特に限定されず、例えば、水和物や有機化合物の付加体であっても良い。又、担体に担持されていても良い。なお、これらの高原子価金属化合物は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0021】
前記高原子価金属化合物としては、高原子価金属酸化物、ヒドロキシ金属及びヒドロキシ金属酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好適に使用されるが、その具体的な例としては、例えば、二酸化ルテニウム、三酸化ルテニウム、四酸化ルテニウム、過ルテニウム酸カリウム、過ルテニウム酸(テトラプロピルアンモニウム)、過ルテニウム酸(テトラブチルアンモニウム)、テトラオキソルテニウム(VI)酸二カリウム、テトラオキソルテニウム(VI)酸二ナトリウム等の高原子価金属酸化物や、トリヒドロキシ鉄(III)、テトラヒドロキシルテニウム(IV)、テトラヒドロキシオスミウム(IV)、トリヒドロキシコバルト(III)、ヘキサヒドロキシロジウム(III)酸三ナトリウム、ヘキサヒドロキシロジウム(III)酸三カリウム、ヘキサヒドロキシロジウム(IV)酸二ナトリウム、ヘキサヒドロキシロジウム(IV)酸二カリウム、ヘキサヒドロキシイリジウム(IV)酸二ナトリウム、ヘキサヒドロキシイリジウム(IV)酸二カリウム、ヘキサヒドロキシパラジウム(IV)酸二ナトリウム、ヘキサヒドロキシパラジウム(IV)酸二カリウム、ヘキサヒドロキシ白金(IV)酸、ヘキサヒドロキシ白金(IV)酸二ナトリウム、ヘキサヒドロキシ白金酸(IV)二カリウム、トリヒドロキシ金(III)等のヒドロキシ金属及びヒドロキシ金属酸塩挙げられるが、好ましくは、四酸化ルテニウム、過ルテニウム酸カリウム、過ルテニウム酸(テトラプロピルアンモニウム)、テトラオキソルテニウム(VI)酸二カリウム、テトラオキソルテニウム(VI)酸二ナトリウム、テトラヒドロキシルテニウム(IV)、ヘキサヒドロキシロジウム(III)酸三ナトリウム、ヘキサヒドロキシロジウム(III)酸三カリウム、ヘキサヒドロキシロジウム(IV)酸二ナトリウム、ヘキサヒドロキシロジウム(IV)酸二カリウム、ヘキサヒドロキシイリジウム(IV)酸二ナトリウム、ヘキサヒドロキシイリジウム(IV)酸二カリウム、ヘキサヒドロキシパラジウム(IV)酸二ナトリウム、ヘキサヒドロキシパラジウム(IV)酸二カリウム、ヘキサヒドロキシ白金(IV)酸、ヘキサヒドロキシ白金(IV)酸二ナトリウム、ヘキサヒドロキシ白金酸(IV)二カリウム、トリヒドロキシ金(III)、より好ましくは四酸化ルテニウム、過ルテニウム酸カリウム、過ルテニウム酸(テトラプロピルアンモニウム)、テトラオキソルテニウム(VI)酸二カリウム、テトラオキソルテニウム(VI)酸二ナトリウム、テトラヒドロキシルテニウム(IV)、ヘキサヒドロキシロジウム(III)酸三ナトリウム、ヘキサヒドロキシイリジウム(IV)酸二カリウム、ヘキサヒドロキシパラジウム(IV)酸二カリウム、ヘキサヒドロキシ白金(IV)酸、ヘキサヒドロキシ白金(IV)酸二ナトリウム、トリヒドロキシ金(III)が使用される。これらの高原子価金属化合物は、水和物や有機化合物の付加体であっても良く、又、担体に担持されていても良い。
【0022】
本発明の水素化分解用触媒の製造においては、まずは金属化合物、高原子価金属化合物及び金属酸化物を混合する。その混合順序は特に限定されないが、金属化合物と高原子価金属化合物とを混合した後、金属酸化物を加える方法が好適に採用される。
【0023】
より具体的には、金属化合物と高原子価金属化合物とを溶媒(例えば、水等)に加えて溶液(例えば、水溶液等)とした後、得られた溶液を、好ましくは60〜200℃、更に好ましくは100〜150℃で加熱攪拌させ、次いで、金属酸化物を加えて、好ましくは60〜200℃、更に好ましくは100〜150℃で加熱攪拌させて混合物を得る。
【0024】
前記混合する際の高原子価金属化合物の使用量は、金属化合物1モルに対して、好ましくは0.1〜30モル、更に好ましくは0.2〜20モルである。又、金属酸化物の使用量は、金属化合物1モルに対して、好ましくは0.5〜30モル、更に好ましくは1〜20モルである。なお、これらの値は、金属原子換算である。
【0025】
得られた混合物は、その後、そのまま還元処理することにより水素化分解用触媒とすることができる。還元処理においては、水素を発生させることが可能な通常の還元剤を用いて行うことができるが、水素ガスと接触させる方法が好適に採用される。当該混合物と水素ガスとを接触させる際の接触温度は、好ましくは40〜300℃、更に好ましくは50〜200℃であり、接触圧力は、好ましくは1〜12MPa、更に好ましくは4〜8MPaである。
【0026】
前記の還元処理によって得られた水素化分解用触媒は、例えば、濾過、洗浄する等して一旦単離しても良く、そのままヒドロキシ化合物の製造に使用できる。
【0027】
又、水素化反応用触媒は担体に担持した触媒でも良く、そのような担持触媒は前記の混合物を得る際に担体を存在させることによって製造できる。使用される担体は、多孔質の担体が好適に用いられるが、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ(アルミノシリケート)、セリア、マグネシア、カルシア、チタニア、シリカチタニア(チタノシリケート)、ジルコニア及び活性炭、ゼオライト、メソ孔体(メソポーラス-アルミナ、メスポーラス-シリカ、メスポーラス-カーボン)等が使用される。なお、これらの担体は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0028】
水素化分解用触媒が担持触媒である場合には、焼成を行った上で使用しても良い。焼成をする場合の温度は、好ましくは50〜800℃、更に好ましくは100〜600℃であり、焼成時間は適宜調整するが、好ましくは0.1〜20時間、更に好ましくは0.25〜15時間である。
【0029】
以上の方法によって得られた水素化分解用触媒は、ヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物からヒドロキシ化合物を製造するための触媒となり得る。
【0030】
(ヒドロキシ化合物の製造)
水素源の存在下、ヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物と水素化分解触媒とを、アミン化合物の存在下で接触させることによりヒドロキシ化合物を製造することができる。前記エーテル化合物としては、環状又は鎖状のエーテル化合物が挙げられるが、好ましくは五員環エーテル化合物、六員環エーテル化合物又はジアルキルエーテル化合物である。
【0031】
(ヒドロキシメチル基を有する五員環エーテル化合物の製造)
エーテル化合物が五員環エーテル化合物の場合には、水素源の存在下、一般式(1)
【0033】
(式中、R
1は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基、R
2及びR
3は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を示し、隣接する炭素に結合しているR
1及びR
2、R
2及びR
3は、互いに結合して環を形成していても良い。なお、
【0035】
は、単結合又は二重結合を示す。)
で示されるヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物と水素化分解触媒とを、アミン化合物の存在下で接触させることを特徴とする、一般式(2)
【0039】
は、前記と同義である。)
で示されるヒドロキシ化合物の製造となる。なお、一般式(2)で示されるヒドロキシ化合物は、1,5−ジオール化合物である。
【0040】
前記の一般式(1)において、R
1は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基であり、具体的には、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基である。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0041】
R
2、R
3及びR
4は、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を示すが、当該アルキル基は、前記のR
1で示したものと同義である。なお、隣接する炭素に結合しているR
1、R
2、R
3及びR
4は、互いに結合して環(例えば、シクロヘキサン環等)を形成していても良い。なお、
【0044】
一般式(1)で示されるヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物としては、具体的には、一般式(1a)〜(1d)
【0046】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、前記と同義である。)
で示される化合物が挙げられる。
【0047】
一般式(1)で示されるヒドロキシメチル基を有する五員環エーテル化合物の具体例としては、例えば、テトラヒドロフルフリルアルコール、2,3−ジヒドロフルフリルアルコール、4,5−ジヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、5-メチルテトラヒドロフルフリルアルコール、5−エチルテトラヒドロフルフリルアルコール、5−プロピルテトラヒドロフルフリルアルコール、5−ブチルテトラヒドロフルフリルアルコール、5−ペンチルテトラヒドロフルフリルアルコール、等が挙げられるが、好ましくはフルフリルアルコール、4,5−ジヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、5-メチルテトラヒドロフルフリルアルコール、更に好ましくはテトラヒドロフルフリルアルコールが使用される。
【0048】
一般式(1)で示されるヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物と水素化分解用触媒とを接触させて得られるヒドロキシ化合物は、前記の一般式(2)で示される(即ち、1,5−ジオール化合物である)。その一般式(2)において、R
1、R
2、R
3及び
【0051】
一般式(1a)〜(1d)で示されるヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、1,5−ペンタンジオール、1−ペンテン−1,5−ジオール、2−ペンテン−1,5−ジオール、ペンタ−1,3−ジエン−1,5−ジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,5−オクタンジオール、1,5−ノナンジオール、1,5−デカンジオール等が挙げられるが、好ましくは1,5−ペンタンジオール、1−ペンテン−1,5−ジオール、2−ペンテン−1,5−ジオール、1,5−ヘキサンジオール、更に好ましくは1,5−ペンタンジオールが使用される。
【0052】
以下、水素源の存在下、ヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物と水素化分解触媒とを、アミン化合物の存在下で接触させることを特徴とするヒドロキシ化合物の製造のことを、本発明の反応と称することもある。
【0053】
本発明の反応をより具体的に説明すると、ヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物において、ヒドロキシメチル基が結合している炭素と、エーテル基を形成している酸素との結合を切断して、対応するヒドロキシ化合物を得る反応である。
【0058】
本発明の反応において使用する水素化分解用触媒の量は、金属化合物の原子換算で、ヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物1モルに対して、好ましくは0.0005〜0.1モル、より好ましくは0.001〜0.075モルである。この使用量とすることで、十分な反応速度を得つつ、高収率且つ高選択的にヒドロキシ化合物を得ることができる。なお、水素化分解用触媒は、複数種の触媒を別々に調製して使用しても良い。
【0059】
本発明の反応において使用する水素源とは、水素を提供する化合物ならば特に限定されず、例えば、水素ガス、アンモニアガス等の還元性ガス(窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈されていても良い);水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ギ酸、酢酸、クロロギ酸等の有機酸類;塩酸、硫酸等の無機酸類が挙げられるが、好ましくは還元性ガス、更に好ましくは水素ガスが使用される。
【0060】
前記水素源の量は、ヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物1モルに対して、好ましくは5〜200モル、更に好ましくは10〜160モルである。この使用量とすることで、十分な反応速度を得つつ、高収率且つ高選択的にヒドロキシ化合物を得ることができる。なお、水素化分解用触媒は、複数種の触媒を別々に調製して使用しても良い。
【0061】
本発明の反応は溶媒中で行うのが望ましく、使用する溶媒としては反応に阻害しないものならば特に限定されず、たとえば、水;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルルコール、エチレングリコール等のアルコール類;ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロシクロヘキサン等のハロゲン化炭化水素類が挙げられるが、好ましくは水、炭化水素類、エーテル類、更に好ましくは、水、シクロヘキサン、1,2−ジエトキシエタンである。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0062】
前記溶媒の使用量は、ヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物1gに対して、好ましくは0.05〜100g、より好ましくは0.1〜20gである。この使用量とすることで、攪拌が速やかに行われ、反応をスムーズに進行させることができる。
【0063】
本発明の反応では、アミン化合物を存在させて反応を行うが、水素化分解用触媒とヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物とを混合した後にアミン化合物を添加して反応に共存させる、又は、水素化分解用触媒の製造時点でアミン化合物を添加して混合するなど、反応を行う際にアミン化合物が反応系内に存在している態様ならば、いずれの方法でアミン化合物を存在させても良い。
【0064】
前記アミン化合物としては、より好適には窒素原子を二個以上有するアミン化合物が使用され、例えば、ジアミノメタン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン等の脂肪族ジアミン;1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、2,3−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン等の芳香族ジアミン;2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、4−アミノピペリジン、2、3−ジアミノピリジン、2、4−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2−アミノキノリン、3−アミノキノリン、4−アミノキノリン等のヘテロ環アミンが挙げられるが、好ましくは1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジンであり、より好ましくは、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノベンゼンが使用される。なお、これらのアミン化合物は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0065】
前記アミン化合物の使用量は、(B)で示した周期表第5族、6族又は7族の金属1モルに対して、好ましくは0.01〜5.0モル、更に好ましくは0.1〜1.0モルである。この使用量とすることで、反応中での逐次反応や低分子化分解反応により、目的とするヒドロキシ化合物の選択率の低下を抑制することができる。
【0066】
本発明の反応形態は、触媒の形態により回分式(バッチ式)又は連続式のいずれの方法も選択することができる。又、触媒の性質により均一系、不均一系(懸濁反応)のいずれの反応系でも実施でき、担体に担持させた触媒であれば、固定床で連続的に反応を行うこともできる。
【0067】
本発明の反応は、例えば、ヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物、水素化分解用触媒、アミン化合物及び溶媒を混合し、水素源の存在下にて、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは25〜200℃、より好ましくは50〜150℃、反応圧力は、水素分圧として、好ましくは常圧〜20MPa、より好ましくは0.2〜15MPaである。この反応温度、反応圧力とすることで、副生成物を生じさせることなく、高い反応速度で、高収率且つ高選択的に目的物であるヒドロキシ化合物を得ることができる。なお、反応を促進させるために、必要に応じて、塩酸、硫酸、リン酸等の酸を存在させてもよく、その量はヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.1モル、更に好ましくは0.001〜0.04モルである。
【0068】
本発明の反応により、目的とするヒドロキシ化合物が得られるが、このヒドロキシ化合物は、反応終了後、得られた反応液から、例えば、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な操作によって単離・精製することができる。
【実施例】
【0069】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。なお、水素化分解用触媒の略語は以下の構成からなる。
(周期表第3族乃至11族の金属のいずれかを含む金属化合物の金属)−(周期表第8族乃至11属の金属のいずれかを含む高原子価金属化合物)−(周期表第5族、6族又は7族の金属を含む金属酸化物の金属)触媒
【0070】
実施例1(水素化分解用触媒の製造)
50mlのガラス製内筒管を備えたオートクレーブに、三塩化イリジウム・n水和物(石津試薬製、イリジウム含量53%)22.2mg(イリジウムが0.061mmol)、過ルテニウム(VII)酸カリウム19.6mg(0.095mmol)及び水5mlを加え、120℃で30分間加熱攪拌した。これを一旦室温まで冷却した溶液に、テトラオキソレニウム(VII)酸カリウム27.8mg(0.095mmol)と1,2−ジアミノエタン2.8mg(0.047mmol)を加え、再び120℃で30分間加熱攪拌した。次いで、室温にて水素雰囲気にて8MPaまで加圧し、120℃で1時間加熱攪拌して混合物を還元処理した。得られた溶液を室温まで冷却し、デカンテーションにより水層を除き、残渣として水素化分解用触媒(以下、「Ir−Ru−Re触媒(1)」と称することもある)を得た。
【0071】
実施例2(1,5−ペンタンジオールの合成)
【0072】
【化10】
【0073】
実施例1と同じ装置に、実施例1で得られた残渣(Ir−Ru−Re触媒(1))、5%テトラヒドロフルフリルアルコール水溶液5.00g(2.45mmol)を入れ、水素ガスで8MPaまで加圧した後、攪拌しながら100℃で2時間反応させた(1,2−ジアミノエタンが共存している)。反応終了後、得られた反応液を室温まで冷却し、次いでメンブランフィルター(0.45μm)を備えた注射器で濾過した。
得られた濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は74.3%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は64.6%、同選択率は87.0%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0074】
実施例3(1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例2の反応温度を80℃とし、反応時間を4時間に代えたこと以外は全て実施例2同様に反応を行った(1,2−ジアミノエタンが共存している)。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は70.8%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は64.5%、同選択率は91.1%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0075】
比較例1(水素化分解用触媒の製造及びそれを用いた1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例1で添加した1,2−ジアミノエタンを用いないこと以外は、全て実施例1と同様に触媒の製造を行い、水素化分解用触媒(以下、「Ir−Ru−Re触媒(2)」と称することもある)を得た。こうして得られた触媒を実施例2で用いた触媒に代えて使用し、反応時間を1時間にしたこと以外は、全て実施例2同様に反応を行った。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は74.7%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は59.7%、同選択率は79.9%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0076】
実施例4(水素化分解用触媒の製造及びそれを用いた1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例1で添加した1,2−ジアミノエタンを1,3−ジアミノプロパン3.5mg(0.047mmol)に代えた以外は、全て実施例1と同様に触媒の製造を行い、水素化分解用触媒(以下、「Ir−Ru−Re触媒(3)」と称することもある)を得た。こうして得られた触媒を実施例2で用いた触媒に代えて使用したこと以外は、全て実施例2同様に反応を行った(1,3−ジアミノプロパンが共存している)。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は89.4%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は72.6%、同選択率は81.2%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0077】
実施例5(水素化分解用触媒の製造及びそれを用いた1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例1で添加した1,2−ジアミノエタンを1,4−ジアミノブタン4.1mg(0.047mmol)に代えたこと以外は、全て実施例1と同様に触媒の製造を行い、水素化分解用触媒(以下、「Ir−Ru−Re触媒(4)」と称することもある)を得た。こうして得られた触媒を実施例2で用いた触媒に代えて使用したこと以外は、全て実施例2同様に反応を行った(1,4−ジアミノブタンが共存している)。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は83.7%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は70.0%、同選択率は83.3%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0078】
実施例6(水素化分解用触媒の製造及びそれを用いた水素化分解)
実施例1で添加した1,2−ジアミノエタンを2−アミノピリジン4.4mg(0.047mmol)に代えた以外は、全て実施例1と同様に触媒の製造を行い、水素化分解用触媒(以下、「Ir−Ru−Re触媒(5)」と称することもある)を得た。こうして得られた触媒を実施例2で用いた触媒に代えて使用した以こと以外は、全て実施例2同様に反応を行った(2−アミノピリジンが共存している)。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は77.7%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は66.2%、同選択率は85.2%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0079】
実施例7(水素化分解用触媒の製造及びそれを用いた水素化分解)
実施例1で添加した1,2−ジアミノエタンを1,4−ジアミノシクロヘキサン5.4mg(0.047mmol)に代えたこと以外は、全て実施例1と同様に触媒の製造を行い、水素化分解用触媒(以下、「Ir−Ru−Re触媒(6)」と称することもある)を得た。こうして得られた触媒を実施例2で用いた触媒に代えて使用したこと以外は、全て実施例2同様に反応を行った(1,4−ジアミノシクロヘキサンが共存している)。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は91.8%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は73.5%、同選択率は80.1%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0080】
実施例8(水素化分解用触媒の製造及びそれを用いた水素化分解)
実施例1で添加した1,2−ジアミノエタンを1,2−ジアミノシクロヘキサン5.4mg(0.047mmol)に代えた以外は、全て実施例1と同様に触媒の製造を行い、水素化分解用触媒(以下、「Ir−Ru−Re触媒(7)」と称することもある)を得た。こうして得られた触媒を実施例2で用いた触媒に代えて使用したこと以外は、全て実施例2同様に反応を行った(1,2−ジアミノシクロヘキサンが共存している)。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は52.2%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は48.4%、同選択率は92.7%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0081】
実施例9(水素化分解用触媒の製造及びそれを用いた1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例1で添加した1,2−ジアミノエタンを1,2−ジアミノベンゼン5.1mg(0.047mmol)に代えたこと以外は、全て実施例1と同様に触媒の製造を行い、水素化分解用触媒(以下、「Ir−Ru−Re触媒(8)」と称することもある)を得た。こうして得られた触媒を実施例2で用いた触媒に代えて使用したこと以外は、全て実施例2同様に反応を行った(1,2−ジアミノベンゼンが共存している)。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は30.6%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は28.8%、同選択率は94.0%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0082】
実施例10(水素化分解用触媒の製造)
シリカ(SiO
2;富士シリシア化学株式会社製、CARiACT G−6)0.50gにテトラオキソルテニウム(VI)酸二カリウム水溶液((株)フルヤ金属製、ルテニウム濃度4.3%)0.244g(ルテニウムが0.104mmol)を水0.2gに溶解させた水溶液を含侵させ、110℃で7時間乾燥した。次に六塩化イリジウム酸(和光純薬製、イリジウム濃度37.7%)53.0mg(イリジウムが0.104mmol)を水0.4gに溶解させた水溶液を含侵させ、110℃で7時間乾燥後、最後にテトラコサオキソヘプタモリブデン(VI)酸アンモニウム4水和物18.4mg(モリブデンが0.104mmol)を水0.4gに溶解させた溶液で含侵させ、110℃で7時間乾燥させた。この粉末を250℃で4時間乾燥して、シリカにイリジウムが4%、ルテニウムが2.1%、モリブデン2.0%が担持した固体(以下、「Ir−Ru−Mo/SiO
2触媒(1)」と称することもある)575mgを得た。
【0083】
実施例11(1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例1と同じ装置に、実施例10で得られた「Ir−Ru−Mo/SiO
2触媒(1)」25mg、5%テトラヒドロフルフリルアルコール水溶液5.00g(2.45mmol)及び1,2−ジアミノエタンの1%水溶液15.6mg(0.0026mmol)を入れ、水素ガスで8MPaまで加圧した後、攪拌しながら150℃で4時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を室温まで冷却し、次いでメンブランフィルター(0.45μm)を備えた注射器で濾過した。
得られた濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は40.2%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は31.1%、同選択率は77.4%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0084】
実施例12(1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例11の1,2−ジアミノエタンの1%水溶液の使用量を7.8mg(0.0013mmol)に代えたこと以外は、全て実施例11同様に反応を行った。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は51.2%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は36.6%、同選択率は71.4%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0085】
比較例2(1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例11で添加した1,2−ジアミノエタンを使用せず、反応時間を2時間に代えたこと以外は、全て実施例11同様に反応を行った。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は43.5%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は30.5%、同選択率は70.2%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0086】
実施例13(水素化分解用触媒の製造)
シリカ(SiO
2;富士シリシア化学株式会社製、CARiACT G−6)0.500gにテトラオキソルテニウム(VI)酸二カリウム水溶液((株)フルヤ金属製、ルテニウム濃度4.3%)0.244g(ルテニウムが0.104mmol)を水0.2gに溶解させた水溶液を含侵させ、110℃で7時間乾燥した。次に六塩化イリジウム酸(和光純薬製、イリジウム濃度37.7%)53.0mg(イリジウムが0.104mmol)を水0.4gに溶解させた水溶液を含侵させ、110℃で7時間乾燥させた。この粉末を250℃で4時間乾燥して、シリカにイリジウムが4%、ルテニウムが2.1%担持した固体(以下、「Ir−Ru/SiO
2触媒(1)」と称することもある)570mgを得た。
【0087】
実施例14(1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例1と同じ装置に、実施例13で得られた「Ir−Ru/SiO
2触媒(1)」25mg、七酸化二レニウム1.4mg(0.0029mmol)、5%テトラヒドロフルフリルアルコール水溶液5.00g(2.45mmol)及び1,2−ジアミノエタンの1%水溶液15.6mg(0.0026mmol)を入れ、水素ガスで8MPaまで加圧した後、攪拌しながら150℃で2.5時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を室温まで冷却し、次いでメンブランフィルター(0.45μm)を備えた注射器で濾過した。
得られた濾液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は84.5%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は64.6%、同選択率は76.5%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0088】
比較例3(1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例14で添加した1,2−ジアミノエタンを使用せず、反応時間を2時間に代えたこと以外は、全て実施例14同様に反応を行った。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は77.8%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は60.6%、同選択率は77.9%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0089】
実施例15(水素化分解用触媒の製造)
ダイアソープ(活性炭;(株)カルゴンカーボンジャパン)0.500gにテトラオキソルテニウム(VI)酸二カリウム水溶液((株)フルヤ金属製、ルテニウム濃度4.3%)0.244g(ルテニウムが0.104mmol)を水1.0gに溶解させた水溶液を含侵させ、110℃で7時間乾燥した。次に六塩化イリジウム酸(和光純薬製、イリジウム濃度37.7%)53.0mg(イリジウムが0.104mmol)を水1.0gに溶解させた水溶液を含侵させ、110℃で7時間乾燥させた。この粉末を250℃で4時間乾燥して、活性炭にイリジウムが4%、ルテニウムが2.1%担持した固体(以下、「Ir−Ru/C触媒(1)」と称することもある)580mgを得た。
【0090】
実施例16(1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例14の触媒を「Ir−Ru/C触媒(1)」25mgに代え、反応時間を4時間とした以外は、全て実施例14同様に反応を行った。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は55.0%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は49.9%、同選択率は90.7%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0091】
比較例4(1,5−ペンタンジオールの合成)
実施例16で添加した1,2−ジアミノエタンを使用せず、反応時間を2.5時間に代えた以外は、全て実施例14同様に反応を行った。その結果、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率は46.3%であり、1,5−ペンタンジオールの収率は40.3%、同選択率は87.0%であった。なお、副生成物である1,2−ペンタンジオールは、全く生成していなかった。
【0092】
以上により、本発明の水素化分解用触媒、即ち、
(A)周期表第3族乃至11族の金属のいずれかを含む金属化合物と、
(B)周期表第5族、6族又は7族の金属を含む金属酸化物
及び
(C)周期表第8族乃至11属の金属のいずれかを含む高原子価金属化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を混合した後、得られた混合物を還元処理した触媒
または、
(A)周期表第3族乃至11族の金属のいずれかを含む金属化合物と、
(B)周期表第5族、6族又は7族の金属を含む金属酸化物
及び
(C)周期表第8族乃至11属の金属のいずれかを含む高原子価金属化合物
からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物、
アミン化合物を混合した後、得られた混合物を還元処理した水素化分解用触媒
を用いて、水素源の存在下、ヒドロキシメチル基を有するエーテル化合物を水素化分解させる際に、アミン化合物を存在させることにより、高い反応速度で、高収率且つ高選択的に対応するヒドロキシ化合物を与えることが分かった。