(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電力量消費速度に基づき、前記燃料電池の許容起動時間の残余値に相当する残存時間内で前記燃料電池を起動させうる回数の推定値としての推定起動回数を推定する起動回数推定手段を備え、
前記制御手段は、
前記推定起動回数が前記残存起動回数より大きい場合に、前記燃料電池の非発電状態をアイドル状態とし、
前記推定起動回数が前記残存起動回数以下である場合に、前記燃料電池の非発電状態を停止状態とする
ことを特徴とする、請求項2又は3記載の電力制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、燃料電池のアイドル運転時には、関連補機類などへの通電電力が消費される。そのため、燃料電池が非発電状態で待機している時間が長引くほど車両全体の電費が低下し、航続可能距離が短縮されることになる。一方、電費の改善を目的として燃料電池の起動・停止を頻繁に行った場合には、燃料電池の劣化の進行が加速する。
このように、従来の二次電池を備えた電力制御システムでは、燃料電池の劣化抑制とエネルギー消費率の改善とを両立させることが困難であるという課題がある。
【0007】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、燃料電池の優れた発電効率を損なうことなく、エネルギー効率を改善することができる電力制御装置を提供することである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)ここで開示する電力制御装置は、電気機器に接続された二次電池と、燃料供給を受けたまま発電を休止するアイドル状態と燃料供給を遮断されて発電を停止する停止状態との二つの非発電状態を有し、前記電気機器及び前記二次電池の各々に対して接続された燃料電池とを備える。
また、前記燃料電池の許容起動回数の残余値に相当する残存起動回数を推定する推定手段と、前記推定手段で推定された前記残存起動回数に基づき、前記二次電池の非充電時における前記燃料電池の状態を前記二つの非発電状態の何れか一方に制御する制御手段とを備える。
【0009】
ここでいう電気機器とは、電力で作動する機械,器械,器具のことを意味する。また、「許容起動回数の残余値」とは、燃料電池を使用しなくなるまでに起動させる回数(燃料電池を使用しなくなるまでに起動させたい回数,起動が許容される回数)を意味する。この「残余値」とは、必ずしも燃料電池が発電不能となるまでの回数を意味するのではなく、燃料電池に所望の発電能力が期待される状態でなくなるまでの回数を意味する。
【0010】
例えば、所望の発電能力が新品時の80%の能力であれば、発電能力が新品時の80%以下に低下するまでの起動回数を現在から数えたときの回数が許容起動回数の残余値である。また、所望の発電能力が80%よりも低ければ、それに応じて残余値は増加する。このように、許容起動回数の残余値は、所望の発電能力に応じて任意に定義される。
かみ砕いていえば、許容起動回数の残余値とは、燃料電池を廃棄又は交換するまでにあと何回起動させる予定であるか、を表す回数である。
【0011】
(2)また、前記電気機器による前記二次電池の電力量消費速度を推定する消費速度推定手段を備え、前記制御手段が、前記残存起動回数と前記電力量消費速度とに基づき、前記非発電状態を制御することが好ましい。
(3)また、前記消費速度推定手段が、前記二次電池の充電時における前記燃料電池の発電量及び前記二次電池の充電量に基づいて前記電力量消費速度を算出し、前記制御手段が、前記二次電池の充電完了時に前記燃料電池の状態を前記二つの非発電状態の何れか一方に制御することが好ましい。
【0012】
(4)また、前記電力量消費速度に基づき、前記燃料電池の許容起動時間の残余値に相当する残存時間内で前記燃料電池を起動させうる回数の推定値としての推定起動回数を推定する起動回数推定手段を備えることが好ましい。
この場合、前記制御手段は、前記推定起動回数が前記残存起動回数より大きい場合に、前記燃料電池の非発電状態をアイドル状態とし、前記推定起動回数が前記残存起動回数以下である場合に、前記燃料電池の非発電状態を停止状態とすることが好ましい。
【0013】
ここでいう「許容起動時間の残余値」とは、燃料電池を使用しなくなるまでに起動させる時間(起動させたい時間,起動が許容される時間)を意味する。この「残余値」も、上述の「許容起動回数の残余値」と同じように、燃料電池に所望の発電能力が期待される状態でなくなるまでの時間を意味する。
かみ砕いていえば、許容起動時間の残余値とは、燃料電池を廃棄又は交換するまでの時間があとどのくらい残っているのか、を表す時間である。
【0014】
(5)また、前記制御手段が、前記二つの非発電状態の何れか一方の状態を前記二次電池の充電開始時まで継続させることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
開示の電力制御装置によれば、残存起動回数の推定値に基づいて、燃料電池の状態が二つの非発電状態の何れか一方に制御されるため、エネルギー消費量を削減しつつ、燃料電池の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、車両に適用された電力制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
[1.装置構成]
本実施形態の電力制御装置1が適用された車両20を
図1に示す。この車両20は、電動式のモーター4(電気機器)と、モーター4の走行用バッテリーとしての二次電池2及び燃料電池3とを搭載したハイブリッド燃料電池車両である。
【0019】
二次電池2は、車両20の回生発電電力や外部電源,燃料電池3から供給される電力で充電可能な蓄電装置であり、例えばリチウムイオン二次電池やリチウムイオンポリマー二次電池等である。二次電池2は、モーター4及び燃料電池3に対して接続される。二次電池2の電力は、モーター4や車載の各種電装品(電気機器)に供給される。
燃料電池3は、発電燃料としての水素と空気中の酸素との電気化学反応を利用して電力を取り出す発電装置であり、例えば固体高分子形燃料電池やリン酸形燃料電池等である。燃料電池3で発生する電力は、モーター4等の電気機器に供給されるほか、二次電池2の充電に使用される。燃料電池3の燃料(例えば、水素ガス,水素を含むガス等)は、燃料タンク5内に貯留される。
【0020】
二次電池2と燃料電池3とを接続する電気回路上には、電圧変換用のコンバーター6(DC-DCコンバーター)が介装される。コンバーター6は、燃料電池3で生じる直流電力を昇圧して二次電池2,モーター4側へと供給する。また、二次電池2とモーター4とを接続する電気回路上にはインバーター7(DC-ACインバーター)が介装され、ここで直流電力と交流電力とが変換される。
【0021】
車両20の外表面には、外部充電時に充電ケーブル22を接続するためのインレット21(電力引き込み口)が設けられる。また、二次電池2とインレット21とを接続する回路上には、車載充電器8が設けられる。車載充電器8は、車両20の外部の家庭用電源や充電ステーション等から供給される交流電力を直流に変換する電力変換装置である。上記の二次電池2の充放電状態や燃料電池3,モーター4,車載充電器8の作動状態は、後述する電子制御装置10で制御される。
【0022】
[2.回路構成]
図2は、モーター4の駆動回路の模式図である。ここでは、モーター4及びインバーター7間の回路と車載充電器8及びインレット21間の回路とが三相交流回路であって、その他が直流回路であるものを示す。
図2の直流回路は、二次電池2,コンバーター6,インバーター7及び車載充電器8のそれぞれが、制御回路9を介して相互に接続された構造を持つ。制御回路9は、それぞれの装置間で授受される電力の大きさや給電方向を統括的に管理するための回路であり、その動作は電子制御装置10によって制御される。
【0023】
燃料電池3は、二次電池2の充電率が下限充電率SOC
MINまで低下すると発電を開始し、二次電池2を充電しながらモーター4を駆動する。また、二次電池2の充電率が上限充電率SOC
MAXまで上昇すると、燃料電池3は発電を停止する。
燃料電池3が発電していない非発電状態での制御モードには、アイドルモードと停止モードとの二種類がある。
【0024】
アイドルモードとは、燃料タンク5から燃料供給を受けたまま発電を休止した状態(アイドル状態)とするモードである。このアイドルモードでは、例えば燃料電池3に併設された関連補機類などが通電されており、燃料電池3の発電のみが休止した状態とされる。また、例えば燃料電池3の電極とコンバーター6との間の直流回路上に介装されたスイッチを切断することで、アイドルモードが実現される。
【0025】
一方、停止モードとは、燃料電池3への燃料供給を遮断されて発電を停止した状態(停止状態)とするモードである。この停止モードでは、関連補機類などの電源も切断され、燃料電池3による発電機能が完全に停止した状態とされる。これらの二種類のモードは、二次電池2の充電中又は充電が完了した後に電子制御装置10で制御される。
【0026】
電子制御装置10は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスである。電子制御装置10の信号入力側及び信号出力側として、二次電池2,燃料電池3,モーター4,コンバーター6,インバーター7,車載充電器8及び制御回路9が接続され、各装置の作動状態に関する情報が電子制御装置10に伝達される。電子制御装置10に入力される情報の具体例としては、二次電池2の充放電電圧情報及び充放電電流情報,電池温度の情報,電池冷却ファンの回転速度情報,燃料電池3の出力電圧情報及び出力電流情報,モーター4の要求出力情報,外部充電の有無に関する情報等である。電子制御装置10は、これらの情報に基づいて各装置の作動状態を制御する。
【0027】
[3.制御構成]
図2に示すように、電子制御装置10には、残り起動回数推定部11,電力量消費速度推定部12,消費時間推定部13,目標残存時間推定部14,起動回数推定部15及び制御部16が設けられる。これらの各要素は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、あるいはソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0028】
残り起動回数推定部11(推定手段)は、燃料電池3の許容起動回数の残余値(燃料電池の起動が許容される回数;燃料電池を使用しなくなるまでに起動させたい回数)に相当する残存起動回数N
REMを推定するものである。残存起動回数N
REMは、例えば式1に示すように、燃料電池3の起動回数と発電性能との関係に基づいて設定される生涯起動回数N
LIFEから、実際に燃料電池3が起動した回数である累積起動回数N
FCSTを減じた値とされる。ここで推定された残存起動回数N
REMの値は、制御部16に伝達される。
【0029】
生涯起動回数N
LIFEは、予め設定された固定値としてもよいし、
図3に示すような発電性能特性に基づいて設定してもよい。例えば、新品時を基準とした発電性能の許容下限(例えば70%)に設定し、その許容下限に対応する起動回数を生涯起動回数N
LIFEとする。なお、許容下限の値は、車両20のユーザーが指定してもよい。また、累積起動回数N
FCSTは、燃料電池3が停止状態から起動した回数であり、累積的に加算されるものとする。なお、アイドル状態からの復帰時には、累積起動回数N
FCSTは加算されない。
【0031】
電力量消費速度推定部12(消費速度推定手段)は、燃料電池3の実際の使用状況から、車両20の電力量消費速度ΔQ/dtの推定値を算出するものである。電力量消費速度ΔQ/dtは、車両20が単位時間あたりに消費する二次電池2の電力量(エネルギー)に相当する。電力量消費速度算出部12は、燃料電池3による二次電池2の充電中の所定時間T
1を対象として、その期間内で消費された電力の積算値ΣWを所定時間T
1で除した値を電力量消費速度ΔQ/dtとして算出する。ここで推定された電力量消費速度ΔQ/dtの値は、消費時間推定部13に伝達される。
【0032】
二次電池2の充電中にモーター4へと供給される電力は、燃料電池3の発電出力から二次電池2に充電された電力を減じたものに対応する。所定時間T
1での燃料電池3の発電電力量をQ
FCGENとおき、二次電池2の充電電力量をQ
BCとおくと、電力量消費速度ΔQ/dtは以下の式2で与えられる。なお、式2中のkはコンバーター6やインバーター7での変換ロスに応じて予め設定される補正係数である。
【0034】
消費時間推定部13は、二次電池2に充電された電力で車両20を駆動しうる時間の推定値を推定時間T
2として算出するものである。この推定時間T
2は、現在のペースで車両20を使用したと仮定して、二次電池2の充電が必要となる(充電率SOCが下限充電率SOC
MIN以下になる)までの時間を推定したものであり、二次電池2に充電されている総電力Q
B(充電電力の合計値)を電力量消費速度ΔQ/dtで除算して求められる。また、二次電池2の総電力Q
Bは、例えば式3に示すように、二次電池2の上限充電率SOC
MAXに対応する上限充電容量Q
BHIGHと下限充電率SOC
MINに対応する下限充電容量Q
BLOWとの差として求められる。ただし、電力量消費速度ΔQ/dtが小さいほど、電力量消費速度ΔQ/dtに含まれる誤差の影響で推定時間T
2の演算誤差が大きくなるため、演算後の推定時間T
2に上限クリップ(例えば、数十時間)をかけることが好ましい。
【0036】
また、消費時間推定部13は、燃料電池3による前回の二次電池2の充電時間T
3を実測する。充電時間T
3は、二次電池2の充電率SOCが下限充電率SOC
MINから上限充電率SOC
MAXまで上昇するのにかかった時間である。なお、電力量消費速度推定部12での演算に使用される所定時間T
1が充電時間T
3に一致するとき、上記の充電電力量Q
BCは総電力Q
Bに一致する。ここで推定された推定時間T
2の値と実測された充電時間T
3の値は、起動回数推定部15に伝達される。
【0037】
目標残存時間推定部14は、燃料電池3の許容起動時間の残余値(燃料電池の起動が許容される時間や年数;燃料電池を使用しなくなるまでの時間や年数)に相当する残存時間T
REMを推定するものである。この残存時間T
REMは、残り起動回数推定部11での推定演算で使用される生涯起動回数N
LIFEをどの程度の年数(時間)をかけて使用するのかを考慮して推定される時間であり、例えば燃料電池3の使用回数が生涯起動回数N
LIFEになるまでの車両20の所有年数(車両20の使用時間)や、燃料電池3を交換するまでの年数(燃料電池3のメンテナンス時間)等に対応する。なお、前述の残存起動回数N
REMとここで推定される残存時間T
REMとの関係は必ずしも一定ではなく、車両20の使い方や用途によって大きく変化する。そこで、本実施形態では残存時間T
REMを残存起動回数N
REMとは別個に推定する。
【0038】
残存時間T
REMは、車両20の希望使用年数(ユーザーがこの車両20に何年間乗り続けるつもりなのか)や燃料電池3の目標交換回数(ユーザーが燃料電池3を何年後に交換するつもりなのか)といった、車両20の使い方,用途等に応じて設定される。目標残存時間推定部14は、例えば式4に示すように、ユーザーが希望する車両20(又は燃料電池3)の使用年数T
LIFEから、車両20の累計運転時間ΣT
VEHICLEを減じたものを残存時間T
REMとして算出する。ここで推定された残存時間T
REMの値は、起動回数推定部15に伝達される。
【0040】
起動回数推定部15(起動回数推定手段)は、消費時間推定部13及び目標残存時間推定部14で推定された推定時間T
2,充電時間T
3及び残存時間T
REMに基づき、燃料電池3の推定起動回数N
ESTを演算するものである。推定起動回数N
ESTとは、現在のペースで車両20を使用したと仮定したときに、燃料電池3が残存時間T
REMの間に起動できる回数に相当する。ここでは、例えば式5に示すように、残存時間T
REMを推定時間T
2及び充電時間T
3の加算値で除したものが推定起動回数N
ESTとして算出される。ここで推定された推定起動回数N
ESTの値は、制御部16に伝達される。
【0042】
制御部16(制御手段)は、起動回数推定部15で推定された推定起動回数N
ESTと残り起動回数推定部11で推定された残存起動回数N
REMとの比較結果に基づいて、燃料電池3の非発電状態での制御モードを制御する。すなわち、推定起動回数N
ESTが残存起動回数N
REM以下の場合には、現在のペースで燃料電池3の起動及び停止を繰り返したとしても、残存起動回数N
REMがゼロになるまでの時間が残存時間T
REM以上になるものと判断し、燃料電池3の非発電状態での制御モードとして停止モードを選択する。この場合、燃料電池3が発電していなければ燃料供給が遮断され、停止状態に制御される。
【0043】
一方、推定起動回数N
ESTが残存起動回数N
REMを超える場合には、残存時間T
REMが経過するまでの間に残存起動回数N
REMがゼロになる可能性があると判断し、燃料電池3の制御モードとしてアイドルモードを選択する。この場合、燃料電池3が発電していなくても通電,燃料供給が継続され、アイドル状態とされる。
【0044】
制御部16による燃料電池3の非発電状態における制御モードの制御タイミングは、充電完了時又は充電完了後である。例えば、充電中又は充電完了時に上記の推定演算や判定を実施した場合には、充電が完了すると同時に燃料電池3をアイドル状態に制御することができる。また、充電完了後に上記の推定演算や判定を実施した場合には、判定結果が得られるまでの間はアイドル状態とし、判定結果が出た時点でアイドル状態,停止状態の何れか一方に制御すればよい。ここでの判定結果に基づく制御モードの制御は、少なくとも燃料電池3による二次電池2の次回の充電が開始されるまで継続されることが好ましい。
【0045】
[4.作用]
図4(a),(b)を使って、二次電池2の充電完了時に燃料電池3の制御モードの判定を実施する場合の演算手順を説明する。
時刻t
1に二次電池2の充電率SOCが下限充電率SOC
MINまで低下すると燃料電池3が起動し、燃料電池3の発電電力が二次電池2とモーター4とに供給される。このとき、残り起動回数推定部11では累積起動回数N
FCSTに1が加算されるとともに、生涯起動回数N
LIFEから累積起動回数N
FCSTが減算されて残存起動回数N
REMが推定される。また、消費時間推定部13では、充電時間T
3の実測が開始される。さらに、目標残存時間推定部14ではこの時点までの車両20の累積運転時間ΣT
VEHICLEが決定されるとともに、使用年数T
LIFEから累積運転時間ΣT
VEHICLEが減算されて残存時間T
REMが演算される。
【0046】
図4(a)に示すように、二次電池2に充電される電力量はモーター4の負荷に応じて変動するものの、その充電率SOCは時間経過とともに徐々に上昇する。充電中は、電力量消費速度推定部12において単位時間あたりの燃料電池3の発電電力Q
FCGEN/dtと単位時間あたりの二次電池2の充電電力Q
BC/dtとが実測され、図示しないメモリーや記憶装置に記録される。
【0047】
時刻t
2に二次電池2の充電率SOCが上限充電率SOC
MAX以上になると、燃料電池3の発電が停止する。このとき、電力量消費速度推定部12では、充電が完了した時刻t
2を基準として所定時間T
1を隔てた過去の時刻t
3が算出されるとともに、時刻t
3から時刻t
2までの間に二次電池2に充電された充電電力量Q
BCと、同期間に燃料電池3で発電された発電電力量Q
FCGENとが演算される。また、例えば上記の式2に基づき、所定時間T
1での電力量消費速度ΔQ/dtが算出される。
【0048】
消費時間推定部13では、充電時間T
3の計測が終了し、電力量消費速度ΔQ/dtで表される電力消費ペースで車両20を走行させたときに二次電池2の電力が枯渇するまでの推定時間T
2、すなわち、二次電池2の次回の充電予定時刻t
4までの時間が算出される。なお、上限充電容量Q
BHIGH及び下限充電容量Q
BLOWは、上限充電率SOC
MAX及び下限充電率SOC
MINが定まれば、二次電池2の充放電特性から求めることができ、すなわち充電中に予め算出しておくことができる。
【0049】
上記の演算で得られた残存時間T
REM,推定時間T
2及び充電時間T
3に基づき、起動回数推定部15では推定起動回数N
ESTが演算される。そして制御部16において、推定起動回数N
ESTと残存起動回数N
REMとが比較され、N
EST>N
REMであるときには燃料電池3がアイドル状態に制御される。一方、N
EST≦N
REMであるときには燃料電池3が停止状態に制御される。
【0050】
[5.効果]
(1)このように、上記の電力制御装置1では、残存起動回数N
REMの推定値に基づいて、発電を停止した燃料電池3がアイドル状態か停止状態かに制御される。ここで、アイドル状態が選択された場合には、例えば燃料電池3に併設された関連補機類などの電源がオンの状態のままとされるため、僅かに二次電池2の電力が消費され続けることになる。しかしながら、アイドル状態を継続することで、燃料電池3の停止,再起動に伴って電極に高電位が発生することを防止することができ、例えばカーボン担体(カーボンブラック等)の腐食を抑制することができる。また、担体の状態が健全化されることから、金属触媒の粗大化も生じにくくなり、燃料電池3の劣化を効率的に抑制することができる。これにより、車両20の使用年数T
LIFEの間に燃料電池3の生涯起動回数N
LIFEを確実に達成することができる。
【0051】
一方、その時点で燃料電池3を停止したとしても、使用年数T
LIFEの間に生涯起動回数N
LIFEを確保することができるものと推定された場合には、燃料電池3が停止状態に制御される。これにより、アイドル状態と比較して電力消費を抑えることができ、車両20の航続可能距離を延長することができる。
したがって、上記の電力制御装置1によれば、二次電池2のエネルギー消費量を削減しつつ、燃料電池3の劣化を抑制することができる。
【0052】
(2)また、上記の電力制御装置1では、車両20のモーター4で消費される電気エネルギーの減少速度の推定値である、電力量消費速度ΔQ/dtに基づいて燃料電池3が制御される。つまり、車両20のエネルギー消費速度を考慮しながら、燃料電池3の非発電状態を制御することができ、燃料電池3の劣化を抑制する強度や頻度を実際の車両20の運用状況に合わせることができる。例えば、急加速や急減速を避けた穏やかな運転を行うユーザーの車両20においては、推定時間T
2の推定値がやや大きくなりやすく、その分、推定起動回数N
ESTが小さく見積もられやすい。したがって、残存起動回数N
REMが確保される限り、非発電状態の燃料電池3を停止状態にすることができ、電費を向上させることができる。
【0053】
(3)また、上記の電力制御装置1では、二次電池2の充電時の充電電力量Q
BCと燃料電池3の発電電力量Q
FCGENとに基づいて電力量消費速度ΔQ/dtが推定される。これに基づき、充電完了時に非発電状態を制御することで、充電が完了した時点での燃料電池3の残存起動回数N
REMや残存時間T
REMを精度よく評価することができる。つまり、燃料電池3の発電が不要となった時点でただちに適切な非発電状態を選択することができ、停止状態が選択された場合にはエネルギー消費量を最小限に抑えることができる。
【0054】
また、実際の充電制御における充電電力量Q
BCと発電電力量Q
FCGENとを用いることで、燃料電池3の発電効率が低下したような場合や、二次電池2の充電受入性が低下したような場合であっても、それらの影響を受けることなく、電力量消費速度ΔQ/dtを精度よく推定することができる。したがって、制御の信頼性を向上させることができる。
【0055】
(4)また、上記の電力制御装置1では、推定起動回数N
ESTと残存起動回数N
REMとの大小関係に基づいて燃料電池3が制御される。これにより、燃料電池3の劣化状態を定量的に評価することができ、制御性を向上させることができる。また、上記の制御により燃料電池3の残存起動回数N
REMがほぼ確実に確保されることになり、ユーザーに対して燃料電池3の交換のタイミングを明確に報知することができ、ユーザビリティーを向上させることができる。
【0056】
(5)さらに、上記の電力制御装置1では、アイドル状態,停止状態の何れかの状態が制御された後、その状態が次回の充電開始時まで継続される。したがって、アイドル状態が選択された場合には、確実に燃料電池3の残存起動回数N
ESTを維持することができるとともに、燃料電池3の劣化を防止することができる。また、停止状態が選択された場合にはエネルギー消費量を最小限に抑えることができ、電費を向上させることができる。
【0057】
[6.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0058】
例えば、車両20の駆動源としてエンジン及びモーター4を備えたハイブリッド車両に対して上記の電力制御装置1を適用することも可能である。少なくとも、モーター4の電力源として二次電池2を備え、さらにそれらの二次電池2を充電する燃料電池3を備えた車両20であれば、上述の制御を実施することができる。
また、上述の実施形態では、モーター4に電力を供給する二次電池2及び燃料電池3を含むシステムを例示したが、電力の供給先はこれに限定されず、少なくとも電力で作動する電気機器であればよい。
【0059】
また、上述の実施形態では、残り起動回数推定部11において、累積起動回数N
FCSTから残存起動回数N
REMを推定するものを例示したが、累積起動回数N
FCSTに加えて累積発電時間や燃料電池温度に基づいて残存起動回数N
REMの推定値を補正する構成としてもよい。このような演算構成により、残存起動回数N
REMの推定精度を向上させることができる。
また、上述の実施形態では、二次電池2の個数が一個の場合について詳述したが、二次電池2の個数は複数であってもよい。例えば、燃料電池3が複数の二次電池2のうちの何れかに対して充電を行ったときに上記の演算を実施し、充電の完了時に上記の非充電状態の選択を実施する。この場合、別の二次電池2に対して再び充電が実施されるときまで、その非充電状態を維持するような制御構成とすればよい。