特許第5910441号(P5910441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910441
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20160414BHJP
   B60R 21/2334 20110101ALI20160414BHJP
【FI】
   B60R21/207
   B60R21/2334
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-216694(P2012-216694)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-69681(P2014-69681A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】山中 孝之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】山田 広明
(72)【発明者】
【氏名】川邉 仁志
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−057208(JP,A)
【文献】 特開2011−116153(JP,A)
【文献】 特開2011−178188(JP,A)
【文献】 特開2011−178189(JP,A)
【文献】 特開2007−230310(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/133280(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0119083(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/207
B60R 21/2334
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の座席を並設させて構成される車両に搭載されて、該座席の並設方向の一方側からの衝撃力の作用時に、衝撃力作用側から遠い離隔側座席に着座した離隔側乗員を保護可能な構成のエアバッグ装置であって、
前記離隔側座席の背もたれ部のシートフレームにおける衝撃力作用側面に取り付けられて、前記背もたれ部内に収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、前記離隔側乗員の衝撃力作用側を覆い可能に展開膨張する構成のエアバッグと、
車体側の部材内に収納されて、前記エアバッグの展開膨張時に突出し、膨張完了時の前記エアバッグにおける衝撃力作用側から離れた離隔側を支持可能な支持部材と、
を備え、
前記エアバッグが、膨張完了時の膨張部位として、
前記シートフレームにおける前記衝撃力作用側面に取り付けられた部位の取付部と、
該取付部の前側に配置されて、前記離隔側乗員の衝撃力作用側を覆い可能に前記背もたれ部より前方に突出する離隔側乗員保護部と、
前記取付部の後側に配置されて、前記背もたれ部より後方に突出する後側膨張部と、
を備える構成とされて、
前記支持部材が、膨張完了時の前記後側膨張部の離隔側を支持可能に、待機位置から支持位置まで突出するように構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記支持部材が、前記背もたれ部内に収納されて、前記エアバッグの展開膨張時に後方に突出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の座席を並設させて構成される車両に搭載されて、該座席の並設方向の一方側からの衝撃力の作用時に、衝撃力作用側から遠い離隔側座席に着座した離隔側乗員を保護可能なエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、離隔側乗員を保護するためのエアバッグ装置としては、背もたれ部のシートフレームにおける衝撃力作用側面に取り付けられて、離隔側乗員の衝撃力作用側を覆うように膨張するエアバッグが、シートフレームへの取付点よりも後方に延びる後側膨張部を備える構成とされ、この後側膨張部の衝撃力作用側から離れた離隔側を、シートフレームにより支持させている構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。この従来のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時に、衝撃力作用側に向かって移動してくる離隔側乗員を受け止めた際に、取付点より後方に延びている後側膨張部の離隔側を、シートフレームに支持させることにより、エアバッグの先端側が衝撃力作用側に移動することを抑制していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−70003公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエアバッグ装置では、後側膨張部は、背もたれ部内で膨張する構成であり、前後方向の幅寸法が小さいことから、シートフレームによる支持が充分ではなく、膨張したエアバッグにより、離隔側乗員を的確に保護する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張したエアバッグにより、離隔側乗員を的確に保護可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、複数の座席を並設させて構成される車両に搭載されて、座席の並設方向の一方側からの衝撃力の作用時に、衝撃力作用側から遠い離隔側座席に着座した離隔側乗員を保護可能な構成のエアバッグ装置であって、
離隔側座席の背もたれ部のシートフレームにおける衝撃力作用側面に取り付けられて、背もたれ部内に収納されるとともに、内部に膨張用ガスを流入させて、離隔側乗員の衝撃力作用側を覆い可能に展開膨張する構成のエアバッグと、
車体側の部材内に収納されて、エアバッグの展開膨張時に突出し、膨張完了時のエアバッグにおける衝撃力作用側から離れた離隔側を支持可能な支持部材と、
を備え、
エアバッグが、膨張完了時の膨張部位として、
シートフレームにおける衝撃力作用側面に取り付けられた部位の取付部と、
取付部の前側に配置されて、離隔側乗員の衝撃力作用側を覆い可能に背もたれ部より前方に突出する離隔側乗員保護部と、
取付部の後側に配置されて、背もたれ部より後方に突出する後側膨張部と、
を備える構成とされて、
支持部材が、膨張完了時の後側膨張部の離隔側を支持可能に、待機位置から支持位置まで突出するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアバッグ装置では、エアバッグが、膨張完了時に背もたれ部より後方に突出する後側膨張部を、有し、この後側膨張部の衝撃力作用側から離れた離隔側を、エアバッグの展開膨張時に突出して支持位置に配置される支持部材によって支持させる構成であることから、エアバッグの膨張完了時において、衝撃力作用側に向かって移動してくる離隔側乗員を受け止めた離隔側乗員保護部が、シートフレームへの取付部位を中心として回転するように、衝撃力作用側に移動しようとした場合に、取付部位から大きく後方へ突出して前後で広く膨張している後側膨張部の離隔側面を支持位置に配置される支持部材によって支持させることができて、離隔側乗員保護部のこのような回転移動を的確に規制できる。また、本発明のエアバッグ装置では、後側膨張部は、離隔側乗員保護部から膨張状態を連ならせるように形成されていることから、隔側乗員保護部が離隔側乗員を受け止めた際に、エアバッグが、離隔側乗員保護部と後側膨張部との間で屈曲されることも、抑制できる。そのため、離隔側乗員保護部が、膨張完了時の先端を衝撃力作用側へ向けるようにして、背もたれ部から離れるように移動することを抑制できて、離隔側乗員保護部によって、離隔側乗員を的確に受け止めることができる。
【0008】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、膨張したエアバッグにより、離隔側乗員を的確に保護することができる。
【0009】
また、本発明のエアバッグ装置において、支持部材を、背もたれ部内に収納させて、エアバッグの展開膨張時に後方に突出させるように構成すれば、他の車体側部材に配置させる場合と比較して、座席に着座した乗員が背もたれ部の角度調整等を行っていても、支持部材により、円滑に後側膨張部を支持可能であり、また、支持部材が、折り畳まれたエアバッグと近接した位置に配置されることから、後側膨張部支持位置への突出も容易であり、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態であるエアバッグ装置を搭載させた座席の側面図である。
図2図1の座席において、背もたれ部の部位を拡大した部分拡大側面図である。
図3図2のIII−III部位の部分拡大断面図である。
図4】実施形態のエアバッグ装置に使用するエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
図5図4のエアバッグを単体で膨張させた状態の断面図であり、図4のIV−IV部位を示す。
図6】実施形態のエアバッグ装置に装置に使用する支持部材を示す正面図である。
図7図6のVII−VII部位の部分拡大断面図である。
図8図6のVIII−VIII部位の部分拡大断面図である。
図9】実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す側面図である。
図10】実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す前後方向に沿った概略横断面図である。
図11】実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す車両前方側から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両の前後・上下・左右の方向と一致するものである。
【0012】
実施形態では、図11に示すように、左右方向に沿って並設される運転席DSと助手席PSとを備える車両Vにおいて、左側LW(助手席PS側)から側面衝突された場合を、例に採り説明する。すなわち、実施形態では、右側RWに位置する運転席DSが、衝突側(衝撃力作用側)から遠い離隔側座席とされ、左側LWに位置する助手席PSが、衝突側(衝撃力作用側)に近い近接側座席とされて、運転席DSに着座した運転者DPを、離隔側乗員として保護するエアバッグ装置Mを、例に採り説明する。
【0013】
エアバッグ装置Mを搭載させる運転席DSは、図1に示すように、座部1と、座部1の後端側から上方に向かって延びる背もたれ部2と、背もたれ部2の上端から上方に突出するヘッドレスト7と、を備えている。
【0014】
背もたれ部2は、図1〜3に示すように、板金素材からなるシートフレーム3と、シートフレーム3の周囲を覆うように配置されるクッション6と、を備える構成である。シートフレーム3は、背もたれ部2の左右両縁側と上縁側とにかけて、前後方向側から見て略逆U字形状に、配置されるものであり、実施形態では、シートフレーム3において、衝撃力作用側となる左側LWに位置する左縦フレーム部4に、エアバッグ装置Mが取り付けられている。左縦フレーム部4は、略平板状として、運転席DSおよび助手席PSの並設方向と略直交する方向、すなわち、前後方向に略沿って、配置されるもので、背もたれ部2の上下の略全域にわたって、配置されている。そして、実施形態の場合、エアバッグ装置Mは、図3に示すように、背もたれ部2におけるシートフレーム3の左縦フレーム部4とクッション6との間に形成される隙間に、収納されている。なお、背もたれ部2のクッション6の外表面側には、表皮(図符号省略)が配置されているが、この表皮は、エアバッグ16の展開膨張時に、クッション6の一部の破断に伴って一部を破断させて、エアバッグ16を前後両側に突出させることとなる。
【0015】
エアバッグ装置Mは、運転席DSの衝撃力作用側である左側LWの側面側(左縦フレーム部4の左側面側)に配置されるもので、図1〜3に示すように、運転席DSの背もたれ部2内に折り畳まれて収納されるエアバッグ16と、エアバッグ16に膨張用ガスを供給するインフレーター10と、背もたれ部2内に配置されてエアバッグ16の展開膨張時に車両後方側へ突出する支持部材27と、を備えている。
【0016】
インフレーター10は、図1〜3に示すように、略円柱状の本体11と、本体11の外周側を覆うように配置される取付ブラケット12と、を備えている。本体11は、長手方向を左縦フレーム部4に略沿わせるように、配置されるもので、実施形態の場合、円柱状の大径部11aと、大径部11aの上端側に設けられてガス吐出口11cを有した小径部11bと、を備えるとともに、大径部11aの下端側に、図示しないエアバッグ作動回路と電気的に接続されるリード線11dを結線させて構成されている。取付ブラケット12は、本体11を保持可能な略円筒状の保持部12aと、保持部12aから右側RW(左縦フレーム部4側)に向かって突出する取付ボルト12bと、を備えている。取付ボルト12bは、保持部12aの軸方向に沿って、2箇所に形成されている。
【0017】
そして、実施形態の場合、インフレーター10は、エアバッグ16に形成される後述する取付孔18aから取付ボルト12bを突出させ、リード線11dを外部に突出させるようにして、エアバッグ16内に収納された状態で、エアバッグ16から突出している取付ボルト12bを、左縦フレーム部4から突出させてナット13止めすることにより、エアバッグ16とともに左縦フレーム部4の左側面4aに、取り付けられる構成である。
【0018】
エアバッグ16は、上述したごとく、インフレーター10とともに、左縦フレーム部4に取り付けられるもので、実施形態の場合、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体17と、支持部材27と連結されるテザー24と、を備えている。
【0019】
バッグ本体17は、図9,11に示すように、膨張完了時に、運転席DSに着座した運転者DP(離隔側乗員)の左側LW(衝撃力作用側)を覆うように配置されるもので、詳細には、図4に示すように、内部にインフレーター10を配置させて左縦フレーム部4の左側面4a(衝撃力作用側面)に取り付けられる取付部18と、取付部18の前側に配置されて膨張完了時に運転席DSに着座した運転者DPの左側LW(衝撃力作用側)を覆う離隔側乗員保護部19と、取付部18の後側に配置されて膨張完了時に背もたれ部2より後方に突出するように配置される後側膨張部22と、を備える構成とされている。離隔側乗員保護部19は、実施形態の場合、膨張完了時に、図9に示すように、運転者DPの胸部DBの左側LWを覆うように配置される胸部保護部20と、胸部保護部20の上方に連なるように配置されて運転者DPの頭部DHの左側LWを覆うように配置される頭部保護部21と、を備えている。また、実施形態のバッグ本体17では、胸部保護部20は、取付部18から連なって前方に延びるように形成され、後側膨張部22は、取付部18から連なって後方に延びるように形成されている。詳細には、胸部保護部20と取付部18と後側膨張部22とは、上下の幅寸法を略一致させるように構成されている。また、実施形態のバッグ本体17では、図5に示すように、胸部保護部20から後側膨張部22にかけての部位が、膨張完了時の厚さを略一定とするように、構成されており、換言すれば、後側膨張部22は、離隔側乗員保護部19の胸部保護部20から、取付部18を経て、膨張状態を連ならせるように、形成されている。なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ16の膨張完了時に、取付部18の左側LWには、表皮及びクッション6が配置されることとなるが、この表皮及びクッション6において取付部18の左側LWに配置される部位は、エアバッグ16の膨張を妨げず、エアバッグ16は、胸部保護部20から後側膨張部22にかけての前後の全域にわたって、厚さを略一定として、配置されることとなる。
【0020】
また、実施形態の場合、バッグ本体17は、図4,5に示すように、外形形状を略同一とされて、膨張完了時に運転者DP側となる内側に配置される内側壁部17aと、外側に配置される外側壁部17bと、を、有し、この内側壁部17aと外側壁部17bとの周縁相互を結合させて、袋状とされている。実施形態の場合、バッグ本体17は、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布の表面にシリコン等のコーティング剤を塗布したコート布から、形成されている。取付部18における内側壁部17aの部位には、インフレーター10の取付ボルト12bを挿通させるための取付孔18aが、上下2箇所に、形成されている。
【0021】
テザー24は、図4に示すように、膨張完了時のバッグ本体17において、衝撃力作用側から離れた離隔側(右側RW)となる内側壁部17aの外表面側に配置されるもので、元部24a側を、後側膨張部22の後下端側に連結され、先端24b側を、後述するごとく、支持部材27の先端27b側に連結されている。実施形態の場合、テザー24の元部24a側は、内側壁部17aと外側壁部17bとの周縁相互を、縫合糸を用いて縫着させてバッグ本体17を製造する際に、共縫いされて、後側膨張部22の後下端側に連結されている。このテザー24は、バッグ本体17の展開膨張時に、背もたれ部2から後方に突出するように膨張する後側膨張部22の膨張に伴って、待機位置P1に配置される支持部材27を、先端27b側を後方に向けるように後側に向かって回転させて、支持位置P2に配置させるために、配設されるものである、実施形態の場合、テザー24は、バッグ本体17の膨張完了時であって支持部材27の突出完了後に、側方から見て、バッグ本体17に連結される元部24a側を後下方に位置させ、支持部材27に連結される先端24b側を前上方に位置させるように、傾斜して配置されることとなる。
【0022】
支持部材27は、背もたれ部2内に収納されて、エアバッグ16の展開膨張時に後方に突出して、後側膨張部22の衝撃力作用側から離れた離隔側(右側RW)を支持可能に、構成されている。具体的には、実施形態の場合、支持部材27は、実施形態の場合、図6に示すように、板金素材からなる長尺の平板状として、待機位置P1においては、図2,3に示すように、左縦フレーム部4の右方において、長手方向を左縦フレーム部4に略沿わせるようにして、背もたれ部2内に収納されている。実施形態の場合、支持部材27は、左縦フレーム部4の右側面4bから右方に突出しているインフレーター10の取付ボルト12b及びナット13と接触しないように、左縦フレーム部4の右側面4b側から一段右方に突出するように形成される取付ブラケット5に、取り付けられている(図6〜8参照)。具体的には、支持部材27は、元部27a側を、側方から見てインフレーター10の略直下となる位置に配置される取付ブラケット5に、回動可能に取り付けられるもので(図2参照)、エアバッグ16の展開膨張時に、先端27bを後方に向けるように回転することにより、後方に突出して支持位置P2に配置される構成である。詳細には、支持部材27は、元部27a側を、軸方向を左右方向に沿わせて配置される回動軸部28によって、回動自在に、取付ブラケット5に取り付けられている。また、取付ブラケット5の右側面側において、回動軸部28を挿通させる挿通孔5aの周囲には、支持部材27の回転移動をガイドするガイド溝5bが、挿通孔5aを中心とした略円弧状の溝状として、切り欠かれて形成されている(図6,8参照)。そして、支持部材27の左側面側には、このガイド溝5bに挿通可能とされるガイドピン29が、左側LW(取付ブラケット5側)に突出するように、形成され、支持部材27の回転移動時に、ガイドピン29は、ガイド溝5bに沿って移動することとなる。ガイド溝5bの前縁5c側は、支持部材27の後方側への回転移動を規制するストッパを構成することとなり、ガイドピン29がガイド溝5bの前縁5cに当接すれば、支持部材27の後方側への回転移動(突出)が完了して、支持部材27が支持位置P2に配置されることとなる(図6の二点鎖線参照)。また、実施形態の場合、支持部材27は、ガイドピン29をガイド溝5bの後縁5dに当接させるようにして、左縦フレーム部4に略沿って、待機位置P1で、背もたれ部2内に収納される構成である。さらに、支持部材27は、図6に示すように、先端27b近傍となる後縁側(突出完了時における下縁側)に、テザー24の先端24b側を挿通させて連結させる連結孔30を、備えている。
【0023】
この支持部材27は、エアバッグ16の展開膨張時、後側膨張部22の後方への突出に伴うテザー24の後方移動により、待機位置P1から、先端27b側を後方へ引っ張られるような態様となって、回動軸部28を中心として、先端27bを後方に向けるように回転しつつ、背もたれ部2から後方へ突出することとなる(図9参照)。そして、ガイドピン29がガイド溝5bの前縁5cに当接すれば、支持部材27の後方側への回転移動(突出)が完了して支持位置P2に配置されることとなり、この支持位置P2に配置された状態で、図10に示すように、膨張を完了させた後側膨張部22の離隔側(右側RW)を支持することとなる。実施形態の場合、この支持部材27は、後方への突出完了時に、先端27bを後上方に位置させるように、上下方向に対して傾斜して配置されるとともに、先端を、後側膨張部22の後端近傍において上下の中央よりやや上方に位置させるような、長さ寸法として、構成されている(図9参照)。
【0024】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、車両Vの左側LWから図示しない衝突物が衝突した側面衝突時に、エアバッグ作動回路からの作動信号を受けて、インフレーター10が作動されることとなり、バッグ本体17が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張して、背もたれ部2から前後両側に向かって突出し、また、このバッグ本体17の後方への突出に伴って、待機位置P1において背もたれ部2内に収納されている支持部材27が、先端27bを後方に向けるように回転しつつ、後方へ突出されることとなる。そして、エアバッグが、図9,11に示すように、運転者DPの左側LW(衝撃力作用側)を覆うように、膨張を完了させることとなり、支持部材27が、図9,10に示すように、膨張を完了させたエアバッグ16の後側膨張部22の右側RW(離隔側)となる支持位置P2に、配置されることとなる。
【0025】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ16が、膨張完了時に背もたれ部2より後方に突出する後側膨張部22を、有し、この後側膨張部22の衝撃力作用側から離れた離隔側(右側RW)を、エアバッグ16の展開膨張時に突出して支持位置P2に配置される支持部材27によって支持させる構成であることから、エアバッグ16の膨張完了時において、衝撃力作用側(左側LW)に向かって移動してくる離隔側乗員としての運転者DPを受け止めた離隔側乗員保護部19が、シートフレーム3(左縦フレーム部4)への取付部位を中心として回転するように、衝撃力作用側となる左側LWに移動しようとした場合に、取付部位から大きく後方へ突出して前後で広く膨張している後側膨張部22の右側面22a(離隔側面)を支持位置P2に配置されている支持部材27によって支持させることができて、離隔側乗員保護部19のこのような回転移動を的確に規制できる。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、後側膨張部22は、離隔側乗員保護部19から膨張状態を連ならせるように形成されていることから、離隔側乗員保護部19が運転者DPを受け止めた際に、エアバッグ16(バッグ本体17)が、離隔側乗員保護部19と後側膨張部22との間で屈曲されることも、抑制できる。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、離隔側乗員保護部19が、膨張完了時の先端19aを衝撃力作用側となる左側LWへ向けるようにして、背もたれ部2から離れるように移動することを抑制できて、離隔側乗員保護部19によって、運転者DPを的確に受け止めることができる。
【0026】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、膨張したエアバッグ16により、離隔側乗員としての運転者DPを的確に保護することができる。
【0027】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、支持部材27を、背もたれ部2内に収納させて、エアバッグ16の展開膨張時に後方に突出させるように構成していることから、他の車体側部材に配置させる場合と比較して、運転席DSに着座した運転者DPが背もたれ部2の角度調整等を行っていても、支持部材26により、円滑に後側膨張部22を支持可能であり、また、支持部材27が、折り畳まれたエアバッグ16と近接した位置に配置されることから、後側膨張部支持位置への突出も容易である。勿論、このような点を考慮しなければ、例えば、支持部材を、運転席DSと助手席PSとの間に設置されるコンソールボックス内に収納させ、コンソールボックスから後上方に向かって突出させる構成としてもよい。また、実施形態では、エアバッグ16に、支持部材27の先端27b側を連結させるテザー24を配置させて、支持部材27を、後方に突出するように展開膨張する後側膨張部22を利用して、待機位置P1から支持位置P2に突出させる構成であるが、支持部材は、ばね等を利用して、エアバッグと別に、支持位置に突出させる構成としてもよい。
【0028】
なお、実施形態では、助手席の側方(左側)からの側面衝突時に、離隔側座席としての運転席に着座した運転者を、離隔側乗員として保護するエアバッグ装置を例に採り説明したが、もちろん、運転者の側方(右側)からの側面衝突時に、離隔側座席としての助手席に着座した乗員を、離隔側乗員として保護する装置に、本発明を適用してもよい。さらには、本発明のエアバッグ装置は、車両の前席に着座した乗員を保護する装置に限られるものではなく、車両の功績に着座した乗員を保護するように構成してもよく、また、前後方向に沿って並設される座席を備える車両にも、適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
2…背もたれ部、3…シートフレーム、4…左縦フレーム部、4a…左側面(衝撃力作用側面)、10…インフレーター、16…エアバッグ、18…取付部、19…離隔側乗員保護部、19a…先端、22…後側膨張部、22a…右側面(離隔側面)、27…支持部材、DP…運転者(離隔側乗員)、DS…運転席(離隔側座席)、LW…左側(衝撃力作用側)、RW…右側(離隔側)、P1…待機位置、P2…支持位置、M…エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11