【文献】
S. H. Tian, D. Shu, S. J. Wang, M. Xiao, Y. Z. Meng,Sulfonated poly(fluorenyl ether ketone nitrile) electrolyte membrane with high proton conductivity and low water uptake,Journal of Power Sources,2010年,195(1),97-103
【文献】
Takuya Shimura, Kenji Miyatake, Masahiro Watanabe,Poly(arylene ether) ionomers containing sulfofluorenyl groups: Effect of electron-withdrawing groups on the properties,European Polymer Journal,2008年,44(12),4054-4062
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合体が、該重合体の末端構造の75%以上が、式(2)で表される構造単位および式(3)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造である、請求項1に記載のフィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献に記載の芳香族ポリエーテルを含むフィルムは、耐着色性が十分ではない場合があった。
【0006】
本発明は前記した問題点に鑑みてなされたもので、着色性が低く、耐熱性および光透過性に優れたフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、フィルムが特定の構造単位を有する重合体を含むことにより、前記課題を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[20]を提供するものである。
【0009】
[1] 下記式(1)で表わされる構造単位を有する重合体を含むフィルムであって、
前記重合体の末端構造の少なくとも一部が、下記式(2)で表される構造単位および下記式(3)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造であるフィルム。
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【0012】
【化2】
【0013】
(式(2)中、*は結合手を示す。)
【0014】
【化3】
【0015】
(式(3)中、Yは単結合、−SO
2−または>C=Oを示し、R
7およびR
8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示し、*は結合手を示す。)
【0016】
[2] 前記重合体が、該重合体の末端構造の75%以上が、下記式(2)で表される構造単位および下記式(3)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造である、[1]に記載のフィルム。
【0017】
[3] 前記重合体が、さらに、下記式(4)で表される構造単位、下記式(5)で表わされる構造単位および下記式(6)で表わされる構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位を有する、[1]または[2]に記載のフィルム。
【0018】
【化4】
【0019】
(式(4)中、R
1〜R
4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR
1〜R
4およびa〜dと同義であり、R
7、R
8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(3)中のR
7、R
8、Y、m、gおよびhと同義である。)
【0020】
【化5】
【0021】
(式(5)中、R
5およびR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO
2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。)
【0022】
【化6】
【0023】
(式(6)中、R
7、R
8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(3)中のR
7、R
8、Y、m、gおよびhと同義であり、R
5、R
6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(5)中のR
5、R
6、Z、n、eおよびfと同義である。)
【0024】
[4] 下記式(7)で表わされる化合物および下記式(8)で表わされる化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む成分(A)と、
下記式(B)で表わされる化合物を含む成分(B)とを、
成分(B)に対する成分(A)のモル比Pが1.0005<P≦1.05となる量で反応させてなる重合体を含むフィルム。
【0025】
【化7】
【0026】
【化8】
【0027】
(式(8)中、Yは単結合、−SO
2−または>C=Oを示し、R
7およびR
8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。)
【0028】
【化9】
【0029】
(式(B)中、R
bは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、アセチル基、メタンスルホニル基またはトリフルオロメチルスルホニル基を示し、R
1〜R
4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【0030】
[5] 前記成分(B)がさらに、下記式(B')で表わされる化合物を含む[4]に記載のフィルム。
【0031】
【化10】
【0032】
(式(B')中、R
bは、それぞれ独立に前記式(B)中のR
bと同義であり、R
5およびR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO
2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。)
【0033】
[6] 動的粘弾性測定(昇温速度2℃/分、周波数10Hz)によるガラス転移温度(Tg)が、230〜350℃である、[1]〜[5]のいずれかに記載のフィルム。
[7] 前記フィルムの厚み30μmにおけるJIS K7105透明度試験法による全光線透過率が、85%以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載のフィルム。
[8] 前記フィルムの厚み30μmにおけるYI値(イエローインデックス)が、3.0以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載のフィルム。
【0034】
[9] 下記式(1)で表わされる構造単位を有する重合体であって、
前記重合体の末端構造の少なくとも一部が、下記式(2)で表される構造単位および下記式(3)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造である重合体と、有機溶媒とを含む樹脂組成物。
【0035】
【化11】
【0036】
(式(1)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【0037】
【化12】
【0038】
(式(2)中、*は結合手を示す。)
【0039】
【化13】
【0040】
(式(3)中、Yは単結合、−SO
2−または>C=Oを示し、R
7およびR
8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示し、*は結合手を示す。)
【0041】
[10] 前記重合体が、さらに、下記式(4)で表される構造単位、下記式(5)で表わされる構造単位および下記式(6)で表わされる構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位を有する、[9]に記載の樹脂組成物。
【0042】
【化14】
【0043】
(式(4)中、R
1〜R
4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR
1〜R
4およびa〜dと同義であり、R
7、R
8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(3)中のR
7、R
8、Y、m、gおよびhと同義である。)
【0044】
【化15】
【0045】
(式(5)中、R
5およびR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO
2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。)
【0046】
【化16】
【0047】
(式(6)中、R
7、R
8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(3)中のR
7、R
8、Y、m、gおよびhと同義であり、R
5、R
6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(5)中のR
5、R
6、Z、n、eおよびfと同義である。)
【0048】
[11] 下記式(7)で表わされる化合物および下記式(8)で表わされる化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む成分(A)と、
下記式(B)で表わされる化合物を含む成分(B)とを、
成分(B)に対する成分(A)のモル比Pが1.0005<P≦1.05となる量で反応させてなる重合体、および
有機溶媒を含む樹脂組成物。
【0049】
【化17】
【0050】
【化18】
【0051】
(式(8)中、Yは単結合、−SO
2−または>C=Oを示し、R
7およびR
8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。)
【0052】
【化19】
【0053】
(式(B)中、R
bは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、アセチル基、メタンスルホニル基またはトリフルオロメチルスルホニル基を示し、R
1〜R
4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【0054】
[12] 前記成分(B)がさらに、下記式(B')で表わされる化合物を含む[11]に記載の樹脂組成物。
【0055】
【化20】
【0056】
(式(B')中、R
bは、それぞれ独立に前記式(B)中のR
bと同義であり、R
5およびR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO
2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。)
【0057】
[13] [9]〜[12]のいずれかに記載の樹脂組成物を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、
該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させることにより除去してフィルムを得る工程と
を含む、[1]〜[8]のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
【0058】
[14] 下記式(1)で表わされる構造単位を有する重合体であって、
前記重合体の末端構造の少なくとも一部が、下記式(2)で表される構造単位および下記式(3)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造である重合体。
【0059】
【化21】
【0060】
(式(1)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【0061】
【化22】
【0062】
(式(2)中、*は結合手を示す。)
【0063】
【化23】
【0064】
(式(3)中、Yは単結合、−SO
2−または>C=Oを示し、R
7およびR
8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示し、*は結合手を示す。)
【0065】
[15] 前記重合体が、さらに、下記式(4)で表される構造単位、下記式(5)で表わされる構造単位、および下記式(6)で表わされる構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位を有する、[14]に記載の重合体。
【0066】
【化24】
【0067】
(式(4)中、R
1〜R
4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR
1〜R
4およびa〜dと同義であり、R
7、R
8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(3)中のR
7、R
8、Y、m、gおよびhと同義である。)
【0068】
【化25】
【0069】
(式(5)中、R
5およびR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO
2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。)
【0070】
【化26】
【0071】
(式(6)中、R
7、R
8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(3)中のR
7、R
8、Y、m、gおよびhと同義であり、R
5、R
6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(5)中のR
5、R
6、Z、n、eおよびfと同義である。)
【0072】
[16] 下記式(7)で表わされる化合物および下記式(8)で表わされる化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む成分(A)と、
下記式(B)で表わされる化合物を含む成分(B)とを、
成分(B)に対する成分(A)のモル比Pが1.0005<P≦1.05となる量で反応させてなる重合体。
【0073】
【化27】
【0074】
【化28】
【0075】
(式(8)中、Yは単結合、−SO
2−または>C=Oを示し、R
7およびR
8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。)
【0076】
【化29】
【0077】
(式(B)中、R
bは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、アセチル基、メタンスルホニル基またはトリフルオロメチルスルホニル基を示し、R
1〜R
4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【0078】
[17] 前記成分(B)がさらに、下記式(B')で表わされる化合物を含む[16]に記載の重合体。
【0079】
【化30】
【0080】
(式(B')中、R
bは、それぞれ独立に前記式(B)中のR
bと同義であり、R
5およびR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO
2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。)
【0081】
[18] 下記式(7)で表わされる化合物および下記式(8)で表わされる化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む成分(A)と、
下記式(B)で表わされる化合物を含む成分(B)とを、
成分(B)に対する成分(A)のモル比Pが1.0005<P≦1.05となる量で反応させる工程(I)を含む、[14]〜[17]のいずれかに記載の重合体の合成方法。
【0082】
【化31】
【0083】
【化32】
【0084】
(式(8)中、Yは単結合、−SO
2−または>C=Oを示し、R
7およびR
8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。)
【0085】
【化33】
【0086】
(式(B)中、R
bは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、アセチル基、メタンスルホニル基またはトリフルオロメチルスルホニル基を示し、R
1〜R
4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。)
【0087】
[19] 前記成分(B)がさらに、下記式(B')で表わされる化合物を含む[18]に記載の重合体の合成方法。
【0088】
【化34】
【0089】
(式(B')中、R
bは、それぞれ独立に前記式(B)中のR
bと同義であり、R
5およびR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO
2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。)
【0090】
[20] 前記式(7)で表わされる化合物を、前記工程(I)の前に予め蒸留する工程を含む、[18]または[19]に記載の重合体の合成方法。
【発明の効果】
【0091】
本発明のフィルムは、着色性が低く、耐熱性および光透過性に優れたフィルムであるため、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、導波路板などのフィルムとして好適に使用できる。
【0092】
また、本発明の樹脂組成物は、主に上述のフィルムを製造するために用いられる樹脂組成物として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0093】
本発明のフィルムは、下記式(1)で表わされる構造単位(以下「構造単位(1)」ともいう。)を有する重合体を含むフィルムであって、前記重合体の末端構造の少なくとも一部が、下記式(2)で表される構造単位および下記式(3)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造(以下「フッ素含有末端構造」ともいう。)である重合体を含むことを特徴とする。
【0094】
前記重合体としては、重合体の末端構造の好ましくは75〜100%、より好ましくは85〜100%、さらに好ましくは90〜100%が、前記フッ素含有末端構造である重合体が望ましい。
【0095】
なお、「末端構造の少なくとも一部がフッ素含有末端構造である重合体」とは、重合体を構成するn個の化合物(分子量や構造の異なってもよい)の主鎖末端2n個のうち、その一部がフッ素含有末端構造である重合体のことをいい、例えば、「末端構造の90%以上がフッ素含有末端構造である重合体」とは、重合体を構成するn個の化合物(分子量や構造の異なってもよい)の主鎖末端2n個のうち、その90%(0.9×2n個)以上がフッ素含有末端構造である重合体のことをいい、1H−NMRにより測定することができる。
【0096】
<重合体>
本発明のフィルムは、構造単位(1)およびフッ素含有末端構造を有する重合体を含むため、耐熱性および光透過性に優れ、着色性が低い。また、本発明のフィルムは、主鎖末端がフッ素原子である重合体を含むため、主鎖末端が塩素等の他の原子である重合体を含むフィルムに比べ、特に耐着色性に優れる。
【0098】
前記式(1)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示す。a〜dは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0または1である。
【0099】
炭素数1〜12の1価の有機基としては、炭素数1〜12の1価の炭化水素基、ならびに酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の1価の有機基等を挙げることができる。
【0100】
炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0101】
前記炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖の炭化水素基がより好ましい。
【0102】
前記直鎖または分岐鎖の炭化水素基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基およびn−ヘプチル基等が挙げられる。
【0103】
前記炭素数3〜12の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜8の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3または4の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0104】
炭素数3〜12の脂環式炭化水素基の好適な具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロへキシル基等のシクロアルキル基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基などが挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素でもよい。
【0105】
前記炭素数6〜12の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。当該芳香族炭化水素基の結合部位は、芳香族環上のいずれの炭素でもよい。
【0106】
酸素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子および酸素原子からなる有機基が挙げられ、中でも、エーテル結合、カルボニル基またはエステル結合と炭化水素基とからなる総炭素数1〜12の有機基等を好ましく挙げることができる。
【0107】
エーテル結合を有する総炭素数1〜12の有機基としては、例えば、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアルケニルオキシ基、炭素数2〜12のアルキニルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基および炭素数1〜12のアルコキシアルキル基などを挙げることができる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、プロペニルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基およびメトキシメチル基等が挙げられる。
【0108】
また、カルボニル基を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数2〜12のアシル基等を挙げることができる。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基およびベンゾイル基等が挙げられる。
【0109】
エステル結合を有する総炭素数1〜12の有機基としては、炭素数2〜12のアシルオキシ基等が挙げられる。具体的には、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、イソプロピオニルオキシ基およびベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0110】
窒素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子および窒素原子からなる有機基が挙げられ、具体的には、シアノ基、イミダゾール基、トリアゾール基、ベンズイミダゾール基およびベンズトリアゾール基等が挙げられる。
【0111】
酸素原子および窒素原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子、炭素原子、酸素原子および窒素原子からなる有機基が挙げられ、具体的には、オキサゾール基、オキサジアゾール基、ベンズオキサゾール基およびベンズオキサジアゾール基等が挙げられる。
【0112】
前記式(1)におけるR
1〜R
4としては、炭素数1〜12の1価の炭化水素基が好ましく、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0116】
前記式(3)中、Yは単結合、−SO
2−または>C=Oを示し、R
7およびR
8は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、mは0または1を示し、*は、結合手を示す。gおよびhは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0である。
【0117】
炭素数1〜12の1価の有機基としては、前記式(1)における炭素数1〜12の1価の有機基と同様の有機基等を挙げることができる。
【0118】
また、本発明の重合体は、さらに、下記式(4)で表される構造単位(以下「構造単位(4)」ともいう。)、下記式(5)で表わされる構造単位(以下「構造単位(5)」ともいう。)、および下記式(6)で表わされる構造単位(以下「構造単位(6)」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位を有してもよい。本発明の重合体がこのような構造単位を有すると、該重合体を有するフィルムは力学的特性が向上するため好ましい。
【0120】
前記式(4)中、R
1〜R
4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR
1〜R
4およびa〜dと同義であり、R
7、R
8、Y、m、gおよびhは、それぞれ前記式(3)中のR
7、R
8、Y、m、gおよびhと同義である。但し、mが0の時、R
7はシアノ基ではない。
【0122】
前記式(5)中、R
5およびR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO
2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、nは0または1を示す。eおよびfは、それぞれ独立に0〜4の整数を示し、好ましくは0である。
【0123】
炭素数1〜12の1価の有機基としては、前記式(1)における炭素数1〜12の1価の有機基と同様の有機基等を挙げることができる。
【0124】
炭素数1〜12の2価の有機基としては、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の2価の有機基、ならびに酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の2価のハロゲン化有機基等を挙げることができる。
【0125】
炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基、炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0126】
炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基およびヘプタメチレン基等が挙げられる。
【0127】
炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基等のシクロアルキレン基;シクロブテニレン基、シクロペンテニレン基およびシクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基などが挙げられる。
【0128】
炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基およびビフェニレン基等が挙げられる。
【0129】
炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価のハロゲン化炭化水素基、炭素数3〜12の2価のハロゲン化脂環式炭化水素基および炭素数6〜12の2価のハロゲン化芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0130】
炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖の2価のハロゲン化炭化水素基としては、ジフロオロメチレン基、ジクロロメチレン基、テトラフルオロエチレン基、テトラクロロエチレン基、ヘキサフルオロトリメチレン基、ヘキサクロロトリメチレン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基およびヘキサクロロイソプロピリデン基等が挙げられる。
【0131】
炭素数3〜12の2価のハロゲン化脂環式炭化水素基としては、前記炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0132】
炭素数6〜12の2価のハロゲン化芳香族炭化水素基としては、前記炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0133】
酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の有機基としては、水素原子および炭素原子と、酸素原子および/または窒素原子とからなる有機基が挙げられ、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合またはアミド結合と炭化水素基とを有する総炭素数1〜12の2価の有機基等が挙げられる。
【0134】
酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の2価のハロゲン化有機基としては、具体的には、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子を含む炭素数1〜12の2価の有機基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0135】
前記式(5)におけるZとしては、単結合、−O−、−SO
2−、>C=Oまたは炭素数1〜12の2価の有機基が好ましく、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基または炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0137】
前記式(6)中、R
7、R
8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(3)中のR
7、R
8、Y、m、gおよびhと同義であり、R
5、R
6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(5)中のR
5、R
6、Z、n、eおよびfと同義である。
【0138】
前記重合体は、(a)前記構造単位(1)と、
(b)前記構造単位(4)、前記構造単位(5)および前記構造単位(6)と、
のモル比(但し、(a)と(b)両者の合計は100である。)が、光学特性、耐熱性および力学的特性の観点から(a):(b)=50:50〜100:0であることが好ましく、(a):(b)=70:30〜100:0であることがより好ましく、(a):(b)=75:25〜100:0であることがさらに好ましく、(a):(b)=80:20〜100:0であることが特に好ましい。
【0139】
ここで、力学的特性とは、重合体の引張強度、破断伸びおよび引張弾性率等の性質のことをいう。
【0140】
本発明の重合体は、光学特性、耐熱性および力学的特性の観点から前記構造単位(1)、前記構造単位(4)、前記構造単位(5)および前記構造単位(6)を全構造単位中70モル%以上含むことが好ましく、全構造単位中95モル%以上含むことがより好ましい。
【0141】
本発明の重合体は、TOSOH製HLC−8220型GPC装置(カラム:TSKgelα―M、展開溶剤:テトラヒドロフラン(以下「THF」ともいう。)で測定した、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは15,000〜400,000、さらに好ましくは30,000〜300,000である。
【0142】
本発明の重合体は、計測制御社製DVA−225型動的粘弾性装置を用いて、大気下昇温速度2℃/min、測定周波数10Hzとして測定を行い、Tanδのピーク温度から評価したガラス転移温度(Tg)が好ましくは230〜350℃、より好ましくは240〜330℃、さらに好ましくは250〜300℃である。
【0143】
本発明の重合体は、熱重量分析法(TGA)で測定した熱分解温度が、好ましくは450℃以上、より好ましくは475℃以上、さらに好ましくは490℃以上である。
【0144】
<重合体の合成方法>
本発明の重合体は、例えば、下記式(7)で表わされる化合物(以下「化合物(7)」ともいう。)および下記式(8)で表わされる化合物(以下「化合物(8)」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む成分(A)と、
下記式(B)で表わされる化合物(以下「化合物(B)」ともいう。)を含む成分(B)とを、
成分(B)に対する成分(A)のモル比Pが1.0005<P≦1.05となる量で反応させる工程(I)を含むことが好ましい。
【0145】
工程(I)を含む方法で重合体を合成することにより、フッ素含有末端構造を有する重合体を得ることができる。
【0146】
なお、本発明において、成分(A)とは、本発明の重合体における、前記構造単位(1)、構造単位(4)、構造単位(5)、構造単位(6)およびフッ素含有末端構造を形成し得る−Fを有する化合物のことをいい、成分(B)とは、本発明の重合体における、前記構造単位(1)、構造単位(4)、構造単位(5)および構造単位(6)を形成し得る−OR
b(R
bは下記式(B)中のR
bと同義である。)を有する化合物のことをいう。
【0147】
本発明の重合体は、このような方法で合成された重合体であってもよい。
【0149】
前記化合物(7)としては、具体的には、2,6−ジフルオロベンゾニトリル(DFBN)、2,5−ジフルオロベンゾニトリルおよび2,4−ジフルオロベンゾニトリル等を挙げることができる。特に、反応性、経済性、耐熱性および機械的強度の観点から、2,6−ジフルオロベンゾニトリルが好適に用いられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0151】
前記式(8)中、R
7、R
8、Y、m、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(3)中のR
7、R
8、Y、m、gおよびhと同義である。
【0152】
前記式(8)で表わされる化合物としては、具体的には、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、2,4’−ジフルオロベンゾフェノン、2,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、2,2’−ジフルオロベンゾフェノン、2,2’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、および3,3’−ジニトロ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン等を挙げることができる。これらの中でも、4,4'−ジフルオロベンゾフェノンが好ましい。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0154】
前記式(B)中、R
bは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、アセチル基、メタンスルホニル基またはトリフルオロメチルスルホニル基を示し、この中でも水素原子が好ましい。なお、式(B)中、R
1〜R
4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR
1〜R
4およびa〜dと同義である。
【0155】
前記式(B)で表わされる化合物としては、下記式(9)で表わされる化合物が好ましい。
【0157】
前記式(9)中、R
1〜R
4およびa〜dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR
1〜R
4およびa〜dと同義である。
【0158】
前記化合物(9)としては、具体的には、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPFL)、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンおよびこれらの反応性誘導体等が挙げられる。上述の化合物の中でも、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが好適に使用できる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0159】
また、成分(B)は、前記式(9)で表わされる化合物(以下「化合物(9)」ともいう。)を含むことが好ましく、必要に応じて下記式(B')で表わされる化合物を含むことが好ましい。
【0161】
前記式(B')中、R
bは、それぞれ独立に前記式(B)中のR
bと同義であり、R
5、R
6、Z、n、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(5)中のR
5、R
6、Z、n、eおよびfと同義である。
【0162】
前記式(B')で表わされる化合物としては、下記式(10)で表わされる化合物が好ましい。
【0164】
前記式(10)中、R
5、R
6、Z、n、eおよびfは、それぞれ前記式(5)中のR
5、R
6、Z、n、eおよびfと同義である。
【0165】
前記式(10)で表わされる化合物としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、2−フェニルヒドロキノン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1’−ビ−2−ナフトール、1,1’−ビ−4−ナフトール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンおよびこれらの反応性誘導体等が挙げられる。上述の化合物の中でも、反応性および力学的特性の観点から、4,4’−ビフェノールが好適に用いられる。これらの化合物は2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0166】
化合物(7)は、成分(A)100モル%中に、80モル%〜100モル%で含まれることが好ましく、90モル%〜100モル%で含まれることがより好ましい。
【0167】
化合物(9)は、成分(B)100モル%中に、50モル%〜100モル%含まれていることが好ましく、80モル%〜100モル%で含まれることがより好ましく、90モル%〜100モル%で含まれることがさらに好ましい。
【0168】
つまり、本発明の重合体の合成方法は、化合物(7)と化合物(9)とを反応させる工程(i)を含むことが好ましい。
【0169】
化合物(7)は、蒸留が可能な化合物である。そのため、前記工程(I)または(i)の前に、予め化合物(7)を蒸留しておくことが好ましい。前記工程(I)および(i)の前に、予め化合物(7)を蒸留しておくことにより、より耐着色性に優れる重合体を得ることができる。
【0170】
化合物(7)を蒸留する方法としては、特に制限されないが、例えば、不活性ガス雰囲気下で減圧蒸留する方法が挙げられる。
【0171】
本発明の重合体は、より具体的には、以下に示す方法で合成することができる。
成分(B)を有機溶媒中でアルカリ金属化合物と反応させて、成分(B)(化合物(B)および/または化合物(B')等)のアルカリ金属塩を得た後に、得られたアルカリ金属塩と、成分(A)とを反応させる。なお、成分(B)とアルカリ金属化合物との反応を成分(A)の存在下で行うことで、成分(B)のアルカリ金属塩と成分(A)とを反応させることもできる。
【0172】
反応に使用するアルカリ金属化合物としては、リチウム、カリウムおよびナトリウムなどのアルカリ金属;水素化リチウム、水素化カリウムおよび水素化ナトリウムなどの水素化アルカリ金属;水酸化リチウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリ金属;炭酸リチウム、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;等を挙げることができる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0173】
アルカリ金属化合物は、前記成分(B)中の全ての−O−R
aに対し、アルカリ金属化合物中の金属原子の量が通常1〜3倍当量、好ましくは1.1〜2倍当量、さらに好ましくは1.2〜1.5倍当量となる量で使用される。
【0174】
また、反応に使用する有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチルラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ジアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)およびトリアルコキシベンゼン(アルコキシ基の炭素数1〜4)などを使用することができる。これらの溶媒の中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホンおよびジメチルスルホキシド等の誘電率の高い極性有機溶媒が特に好適に用いられる。これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0175】
さらに、前記反応の際には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールなどの水と共沸する溶媒をさらに用いることもできる。
【0176】
成分(A)と成分(B)の使用割合は、成分(A)と成分(B)とのモル比P(成分(A)/成分(B))の下限は、好ましくは1.0005を超え、より好ましくは1.001以上、さらに好ましくは1.003以上、特に好ましくは1.01以上であり、Pの上限は、好ましくは1.05以下、より好ましくは1.03以下、さらに好ましくは1.025以下、特に好ましくは1.02以下である。上記工程(i)における化合物(7)と化合物(9)の使用割合もこの範囲にあることが好ましい。
【0177】
成分(A)と成分(B)とのモル比が前記範囲にある場合、フッ素含有末端構造を有する重合体を得ることができる点、さらに、末端構造の75〜100%以上がフッ素含有末端構造である重合体を得ることができる点、着色が少なく、フィルム化に十分な分子量の重合体が得られる点で好適である。
【0178】
また、成分(A)と成分(B)を反応させる際の、反応系中の成分(A)および成分(B)のモノマーの質量の和は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。また、反応温度は、好ましくは60℃〜250℃、さらに好ましくは80℃〜200℃の範囲である。反応時間は、好ましくは15分〜100時間、さらに好ましくは1時間〜24時間の範囲である。
【0179】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、前記本発明の重合体および有機溶媒を含む。
【0180】
前記の方法で得られた重合体と有機溶媒との混合物は、本発明のフィルムを製造するための樹脂組成物としてそのまま使用することができる。このような樹脂組成物を用いることで、容易に、安価にフィルムを製造することができる。
【0181】
また、前記の方法で得られた重合体と有機溶媒との混合物から、重合体を固体分として単離(精製)した後、有機溶媒に再溶解させて樹脂組成物を調製することもできる。このような樹脂組成物を用いることで、より着色が少なく、光透過性に優れるフィルムを製造することができる。
【0182】
前記重合体を固体分として単離(精製)する方法は、例えば、メタノール等の重合体の貧溶媒に重合体を再沈殿させ、その後ろ過し、次いで減圧乾燥すること等により行うことができる。
【0183】
前記重合体を溶解する有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびγ−ブチロラクトンが好適に用いられ、塗工性、経済性の観点から、塩化メチレン、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチルピロリドンが好適に使用される。これらの溶媒は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0184】
また、樹脂組成物にはさらに老化防止剤を含有させることができ、老化防止剤を含有することで得られるフィルムの耐久性をより向上させることができる。
【0185】
老化防止剤としては、好ましくはヒンダードフェノール系化合物を挙げることができる。
【0186】
本発明で使用することのできるヒンダードフェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス[2−メチル−4−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−5−tert−ブチルフェニル]ブタン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、および、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどを挙げることができる。これらの老化防止剤は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0187】
本発明において、老化防止剤は、重合体100重量部に対して、0.01〜10重量部の量で使用することが好ましい。
【0188】
本発明の樹脂組成物中の重合体濃度は、重合体の分子量にもよるが、通常、5〜40質量%、好ましくは7〜25質量%である。組成物中の重合体の濃度が前記範囲にあると、厚膜化可能で、ピンホールが生じにくく、表面平滑性に優れるフィルムを形成することができる。
【0189】
なお、樹脂組成物の粘度は、重合体の分子量や濃度にもよるが、好ましくは50〜100,000mPa・s、より好ましくは500〜50,000mPa・s、さらに好ましくは1000〜20,000mPa・sである。組成物の粘度が前記範囲にあると、成膜中の組成物の滞留性に優れ、厚みの調整が容易であるため、フィルムの成形が容易である。
【0190】
<フィルム>
本発明のフィルムは、前記本発明の重合体を含んでなる。本発明のフィルムは、所望の用途に応じて、前記本発明の重合体の他に添加剤を含んでもよいが、本質的に、上記本発明の重合体のみからなることが好ましい。
【0191】
本発明のフィルムの製造方法は、前記樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜から前記有機溶媒を蒸発させることにより除去することでフィルムを得る工程とを含むことが好ましい。
【0192】
前記樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する方法としては、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、スリットコート法およびドクターブレードを用いる方法等が挙げられる。
【0193】
前記基板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムおよびSUS板などが挙げられる。
【0194】
塗膜の厚さは、特に限定されないが、例えば1〜250μmであり、好ましくは2〜150μmであり、より好ましくは5〜125μmである。
【0195】
また、塗膜から前記有機溶媒を蒸発させることにより前記有機溶媒を除去する工程は、具体的には塗膜を加熱することにより行うことができる。塗膜を加熱することにより、該塗膜中の有機溶媒を蒸発させて除去することができる。前記加熱の条件は、有機溶媒が蒸発すればよく、基板や重合体に応じて適宜決めればよいが、例えば加熱温度は30℃〜300℃であることが好ましく、40℃〜250℃であることがより好ましく、50℃〜230℃であることがさらに好ましい。
【0196】
また、加熱時間としては、10分〜5時間であることが好ましい。なお、加熱は二段階以上で行ってもよい。具体的には、30〜80℃の温度で10分〜2時間乾燥後、100℃〜250℃でさらに10分〜2時間加熱するなどである。また、必要に応じて、窒素雰囲気下、もしくは減圧下にて乾燥を行ってもよい。
【0197】
得られたフィルムは、基板から剥離して用いることが好ましく、用いる基板の種類にもよるが、剥離せずにそのまま用いることもできる。
【0198】
本発明のフィルムは、計測制御社製DVA−225型動的粘弾性装置を用いて、大気下昇温速度2℃/min、測定周波数10Hzとして測定を行い、Tanδのピーク温度から評価したガラス転移温度(Tg)が、230〜350℃であることが好ましく、240〜330℃であることがより好ましく、250〜300℃であることがさらに好ましい。本発明のフィルムは、このようなガラス転移温度を有することにより、優れた耐熱性を有する。
【0199】
また、本発明のフィルムは、厚みが好ましくは1〜250μm、より好ましくは2〜150μmである。また、本発明のフィルムを基材として使用する場合には10〜125μmであることが特に好ましい。
【0200】
また、本発明のフィルムは、厚みが30μmである場合に、JIS K7105透明度試験法における全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。全光線透過率は、ヘイズメーターSC−3H(スガ試験機社製)を用いて測定することができる。
【0201】
また、本発明のフィルムは、厚みが30μmである場合に、波長400nmにおける光線透過率が、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。波長400nmにおける光線透過率は、紫外・可視分光光度計V−570(JASCO社製)を用いて測定することができる。
【0202】
本発明のフィルムは、厚みが30μmである場合に、YI値(イエローインデックス)が、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。YI値は、スガ試験機社製SM−T型色彩測定器を用いて測定することができる。
【0203】
本発明のフィルムは、厚みが30μmである場合に、熱風乾燥機にて大気中230℃で1時間の加熱を行った後のYI値が3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。
【0204】
本発明のフィルムは、厚みが30μmである場合に、厚み方向の位相差(Rth)が、300nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。位相差は、大塚電子社製RETS分光器を用いて測定することができる。
【0205】
本発明のフィルムは、波長633nmの光に対して、好ましくは1.55〜1.75、より好ましくは1.60〜1.70の屈折率を有する。屈折率は、ヘイズメーターSC−3H(スガ試験機社製)を用いて測定することができる。
【0206】
本発明のフィルムは、引張強度が、50〜200MPaであることが好ましく、80〜150MPaであることがより好ましい。引張強度は、引張試験機5543(INSTRON社製)を用いて測定することができる。
【0207】
また、本発明のフィルムは、破断伸びが、10〜100%であることが好ましく15〜100%であることがより好ましい。破断伸びは、引張試験機5543(INSTRON社製)を用いて測定することができる。
【0208】
また、本発明のフィルムは、引張弾性率が、2.5〜4.0GPaであることが好ましく、2.7〜3.7GPaであることがより好ましい。引張弾性率は、引張試験機5543(INSTRON社製)を用いて測定することができる。
【0209】
本発明のフィルムは、着色性が低く、光透過性に優れたフィルムからなるため、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、導波路板などのフィルムとして好適に使用できる。
【0210】
また、本発明の重合体および樹脂組成物は、主に上述のフィルムを製造するために用いられる樹脂組成物として好適に使用できる。
【実施例】
【0211】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0212】
(1)構造分析
下記実施例および比較例で得られた重合体のIR(ATR法、FT−IR,6700、NICOLET社製)および1H−NMR(ADVANCE500型,BRUKAR社製)により行った。
【0213】
(2)重量平均分子量および数平均分子量
下記実施例および比較例で得られた重合体の重量平均分子量および数平均分子量は、TOSOH製HLC−8220型GPC装置(カラム:TSKgelα―M、展開溶剤:テトラヒドロフラン(以下「THF」ともいう。))を用いて測定した。
【0214】
(3)ガラス転移温度(Tg)
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムのガラス転移温度は、計測制御社製DVA−225型動的粘弾性装置を用いて、大気下昇温速度2℃/min、測定周波数10Hzとして測定を行い、Tanδのピーク温度から評価した。
【0215】
(4)機械的強度
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムの室温における破断伸びを、JIS K7127に準じて測定した。
【0216】
(5)光学特性
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムについて、全光線透過率、YI(イエローインデックス)をJIS K7105透明度試験法に準じて測定した。具体的には、全光線透過率を、YI値を、スガ試験機社製ヘイズメーターSC−3Hを用いて測定し、YI値を、スガ試験機社製SM−T型色彩測定器を用いて測定した(加熱前YI)。
【0217】
さらに、下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムを熱風乾燥機にて大気中230℃で1時間の加熱を行った後のYI値を、スガ試験機社製SM−T型色彩測定器を用いて測定した(加熱後YI)。なお、測定は、JIS K 7105条件に準じて行った。
【0218】
下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムの位相差(Rth)は、大塚電子社製RETS分光器を用いて測定した。位相差の評価膜厚は30μmに規格化した値で示した。
【0219】
また、下記実施例および比較例で得られた評価用フィルムを、大気中230℃で1時間熱処理した後、N,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、重合体濃度10重量%の溶液を調製し、JASCO社製V−570型UV/VIS/NIR分光器を用いて得られた溶液のYI値を測定した(加熱後溶液YI)。
【0220】
[実施例1]
3Lの4つ口フラスコに成分(A):2,6−ジフルオロベンゾニトリル(DFBN)70.59g(0.5075mol)、成分(B):9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPFL)175.21g(0.5000mol)、炭酸カリウム82.93g(0.6mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」ともいう。)983gおよびトルエン496gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、Dean−Stark管および冷却管を取り付けた。
【0221】
次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をDean−Stark管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇させ、そのままの温度で5時間反応させた。
【0222】
室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(重合体)を得た(収量219g、収率97%)。
【0223】
得られた重合体について、構造分析、末端基分析および重量平均分子量、数平均分子量の測定を行った。
【0224】
結果は、赤外吸収スペクトルの特性吸収が、3035(C−H伸縮)、2229cm
-1(CN)、1574cm
-1、1499cm
-1(芳香環骨格吸収)、1240cm
-1(−O−)であった。得られた重合体は前記構造単位(1)を有していた。
【0225】
1H−NMRにより、6.60〜6.62ppm(末端基フッ素原子に対するパラ位水素)、6.83〜6.86ppm(末端基フッ素原子に対するオルト位水素)を確認した。1H−NMRの測定結果から、重合体の末端構造の95%が上記式(2)で表わされる構造であることを確認した。
【0226】
また、重量平均分子量が82,000、数平均分子量20,500であった。
【0227】
得られた重合体の物性を表1に示す。
【0228】
次いで、得られた重合体をDMAcに再溶解させ、重合体濃度20質量%の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタラート(PET)からなる基板上にドクターブレードを用いて塗布し、80℃で30分乾燥させ、ついで150℃で60分乾燥してフィルムとした後、PET基板より剥離した。その後、フィルムを金枠に固定し、さらに200℃、2時間乾燥して、膜厚30μmの評価用フィルムを得た。得られた評価用フィルムの物性を表1に示す。
【0229】
[実施例2]
2,6−ジフルオロベンゾニトリルの配合量を70.25g(0.5050mol)に変更した以外は実施例1と同様に行った。1H−NMRの測定結果から、重合体の末端構造の94%が上記式(2)で表わされる構造であることを確認した。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。
【0230】
[実施例3]
2,6−ジフルオロベンゾニトリルの配合量を71.29g(0.5125mol)に変更した以外は実施例1と同様に行った。1H−NMRの測定結果から、重合体の末端構造の98%が上記式(2)で表わされる構造であることを確認した。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。
【0231】
[実施例4]
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの代わりに9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを251.30g(0.5000mol)を使用した以外は実施例2と同様に行った。1H−NMRの測定結果から、重合体の末端構造の95%が上記式(2)で表わされる構造であることを確認した。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。
【0232】
[実施例5]
成分(B)として、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン175.21gの代わりに、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.2500mol)および9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン125.65g(0.2500mol)を使用した以外は実施例2と同様に行った。1H−NMRの測定結果から、重合体の末端構造の92%が上記式(2)で表わされる構造であることを確認した。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。
【0233】
[実施例6]
成分(B)として、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン175.21gの代わりに、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン140.16g(0.4000mol)および4,4’−ビフェノール18.62g(0.1000mol)を使用した以外は実施例2と同様に行った。1H−NMRの測定結果から、重合体の末端構造の93%が上記式(2)で表わされる構造であることを確認した。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。
【0234】
[実施例7]
成分(B)として、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン175.21gの代わりに、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.2500mol)および4,4’−ビフェノール46.55g(0.2500mol)を使用した以外は実施例1と同様に行った。1H−NMRの測定結果から、重合体の末端構造の96%が上記式(2)で表わされる構造であることを確認した。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。
【0235】
[実施例8]
成分(A)として、2,6−ジフルオロベンゾニトリル70.59gの代わりに、2,6−ジフルオロベンゾニトリル52.94g(0.3806mol)および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン27.69g(0.1269mol)使用した以外は実施例1と同様に行った。1H−NMRの測定結果から、重合体の末端構造の91%が上記式(2)で表わされる構造および上記式(3)で表わされる構造であることを確認した。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。
【0236】
なお、1H−NMRにより、7.13〜7.16ppm(末端基フッ素原子に対するオルト位水素)、7.89〜7.93ppm(末端基フッ素原子に対するメタ位水素)であった。
【0237】
[比較例1]
2,6−ジフルオロベンゾニトリルの配合量を69.55g(0.5000mol)に変更した以外は実施例1と同様に行った。得られた重合体および評価用フィルムの物性を表1に示す。1H−NMRの測定結果から、重合体の末端構造として上記式(2)で表わされる構造の存在は確認できなかった。
【0238】
[比較例2]
3Lの4つ口フラスコに成分(A):2,6−ジクロロベンゾニトリル104.24g(0.612mol)、成分(B):9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン210.25g(0.600mol)、炭酸ナトリウム73.13g(0.69mol)およびN−メチルピロリドン(NMP)1000mLを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、Dean−Stark管、および冷却管を取り付けた。
【0239】
次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を195℃まで50分間かけて昇温した後、少量のトルエンを加えて1時間還流させ、トルエンと生成する水をDean−Stark管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を200℃まで上昇し、そのままの温度で4時間反応させた。
【0240】
室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(重合体)を得た(収量267g、収率97%)。得られた重合体の物性を表1に示す。1H−NMRの測定結果から、重合体の末端構造として上記式(2)で表わされる構造の存在は確認できなかった。
【0241】
次いで、得られた重合体をDMAcに再溶解させ、重合体濃度20質量%の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタラート(PET)からなる基板上にドクターブレードを用いて塗布し、80℃で30分乾燥させ、ついで150℃で60分乾燥してフィルムとした後、PET基板より剥離した。その後、フィルムを金枠に固定し、さらに200℃、2時間乾燥して、膜厚30μmの評価用フィルムを得た。得られた評価用フィルムの物性を表1に示す。
【0242】
【表1】