特許第5910500号(P5910500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910500
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/26 20060101AFI20160414BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20160414BHJP
   G03F 7/42 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   G03F7/26 511
   G03F7/11 503
   G03F7/42
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-536407(P2012-536407)
(86)(22)【出願日】2011年9月22日
(86)【国際出願番号】JP2011071698
(87)【国際公開番号】WO2012043403
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2010-219347(P2010-219347)
(32)【優先日】2010年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 信也
(72)【発明者】
【氏名】村上 暁
(72)【発明者】
【氏名】松村 裕史
(72)【発明者】
【氏名】香村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】滝本 嘉夫
(72)【発明者】
【氏名】中藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】保田 慶友
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−014474(JP,A)
【文献】 特開2006−293207(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/105776(WO,A1)
【文献】 特開2010−134437(JP,A)
【文献】 特開2006−010779(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/097457(WO,A1)
【文献】 特開2004−177668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
G03F 7/26
G03F 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)フェノール性水酸基を有する樹脂を含むレジスト下層膜形成用組成物の塗布により、被加工基板の上面側にレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜形成工程と、
(2)上記レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
(3)上記レジストパターンをマスクとして、少なくとも上記レジスト下層膜及び被加工基板をドライエッチングし、被加工基板にパターンを形成するパターン形成工程と、
(4)上記被加工基板上のレジスト下層膜を塩基性溶液で除去するレジスト下層膜除去工程と
をこの順に有し、
上記フェノール性水酸基を有する樹脂がノボラック樹脂であり、
上記塩基性溶液が塩基性水溶液であるパターン形成方法。
【請求項2】
(1)レジスト下層膜形成工程における上記フェノール性水酸基を有する樹脂の少なくとも一部をキノン構造に変性させる請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
加熱により上記変性を行う請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
(1)レジスト下層膜形成工程と(2)レジストパターン形成工程との間に、
(1’)上記レジスト下層膜の上面側に中間層を形成する中間層形成工程
を含み、
(3)パターン形成工程において、さらに中間層をドライエッチングする請求項1、請求項2又は請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
上記レジスト下層膜形成用組成物における上記フェノール性水酸基を有する樹脂100質量部に対する架橋剤の含有量が、0質量部以上3質量部以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
上記フェノール性水酸基を有する樹脂が、ベンゼン骨格又はナフタレン骨格を有し、かつ重量平均分子量が1,500〜10,000のノボラック樹脂であり、キノン構造への変性のための加熱温度が230℃以上270℃以下である請求項3に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層レジストプロセスによるパターン形成方法、レジスト下層膜及びレジスト下層膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子等の製造においては、加工サイズの微細化に対応し、多層レジストプロセスを用いるパターン形成方法が広まりつつある。この多層レジストプロセスを説明するとまず、レジスト下層膜形成用組成物を基板上に塗布し、その上にフォトレジスト組成物をさらに塗布する。次いで、縮小投影露光装置(ステッパー)によってレジスト被膜にマスクパターンを転写し、適当な現像液で現像することによりフォトレジストパターンを得る。引き続きドライエッチングによりこのパターンをレジスト下層膜に転写する。最後にドライエッチングによりレジスト下層膜パターンを基板に転写することにより所望のパターン付き基板を得ることができる。なお、レジスト下層膜表面に中間層を更に設ける3層以上の多層レジストプロセスが採用される場合もある。また、レジストパターンを形成する際に、例えばナノインプリント法などのフォトレジスト以外の方法も用いられている。
【0003】
一般的に、基板直上のレジスト下層膜は炭素含有量の多い材料が用いられる。炭素含有量が多いと基板加工時のエッチング選択性が向上し、より正確なパターン転写が可能となる。このような下層膜の材料としては、特に熱硬化フェノールノボラック樹脂がよく知られている。また、アセナフチレン系の重合体を含有する組成物が下層膜として良好な特性を示すことが知られている(特開2000−143937号公報及び特開2001−40293号公報参照)。
【0004】
このレジスト下層膜は、エッチングによるパターン形成後は不要となるため、アッシング等により除去される。アッシングとは、通常、酸素プラズマを発生させてプラズマ中の酸素ラジカルで、レジスト下層膜中の有機成分を燃焼させる方法である。しかし、半導体基板に用いられる低誘電体材料に対してアッシングを行うと、低誘電体(Low−k)材料は耐性が弱いため、容易に表面が劣化したり、誘電率が増加してしまうという不都合がある。このような中、溶液を用いてレジスト下層膜を剥離する技術は提案されているものの(特開2004−177668号公報参照)、この技術によれば、エッチング工程を経た後にレジスト下層膜を剥離する場合には剥離性が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−143937号公報
【特許文献2】特開2001−40293号公報
【特許文献3】特開2004−177668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、低誘電体材料等の基板に与える影響を抑え、かつエッチング工程を経た後のレジスト下層膜を容易に除去することができるパターン形成方法、並びにこのようなパターン形成方法に好適に用いられるレジスト下層膜及びレジスト下層膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
(1)フェノール性水酸基を有する樹脂を含むレジスト下層膜形成用組成物の塗布により、被加工基板の上面側にレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜形成工程と、
(2)上記レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
(3)上記レジストパターンをマスクとして、少なくとも上記レジスト下層膜及び被加工基板をドライエッチングし、被加工基板にパターンを形成するパターン形成工程と、
(4)上記被加工基板上のレジスト下層膜を塩基性溶液で除去するレジスト下層膜除去工程と
をこの順に有するパターン形成方法である。
【0008】
当該パターン形成方法によれば、被加工基板にエッチングによりパターンを形成した後のレジスト下層膜除去工程において、レジスト下層膜を塩基性溶液によって除去するため、パターニングされた基板に与える影響を抑え、かつ容易にレジスト下層膜を除去することができる。
【0009】
(1)レジスト下層膜形成工程における上記フェノール性水酸基を有する樹脂の少なくとも一部をキノン構造に変性させるとよい。このようにフェノール性水酸基を有する樹脂の少なくとも一部をキノン構造に変性させることで、このレジスト下層膜の有機溶媒に対する溶解性が低下する。従って、当該パターン形成方法によれば、レジスト下層膜に含まれる樹脂が架橋されていなくても、層として機能し、レジスト下層膜の上面に塗布等により積層される他の層の侵食を抑えることができる。また、当該パターン形成方法によればレジスト下層膜が十分なエッチング耐性を発揮することができる。さらに、当該パターン形成方法によれば、レジスト下層膜が塩基性溶液と接触した際に、上記キノン構造がフェノール構造に変性して塗布時の状態に戻ることで、この塩基性溶液に可溶となるためレジスト下層膜を塩基性溶液で容易に除去することができる。
【0010】
上記変性を加熱により行うとよい。このように、加熱によりフェノール性水酸基を有する樹脂の少なくとも一部をキノン構造に変性させることで、架橋を進めることなく有機溶媒に対する不溶性を発現し、かつレジスト下層膜の塩基性溶液での除去をより容易に行うことができる。
【0011】
(1)レジスト下層膜形成工程と(2)レジストパターン形成工程との間に、(1’)上記レジスト下層膜の上面側に中間層を形成する中間層形成工程を含み、(3)パターン形成工程において、さらに中間層をドライエッチングするとよい。当該パターン形成方法によれば、このような3層又は4層以上の多層レジストプロセスの場合も、レジスト膜除去工程においてレジスト下層膜を塩基性溶液で容易に除去することができる。
【0012】
上記レジスト下層膜形成用組成物における上記フェノール性水酸基を有する樹脂100質量部に対する架橋剤の含有量が、0質量部以上3質量部以下であることが好ましい。上記レジスト下層膜形成用組成物における架橋剤含有量を上記範囲とすることで、塩基性溶液によるレジスト下層膜の除去がより容易になる。
【0013】
本発明のレジスト下層膜は、フェノール性水酸基を有する樹脂を含むレジスト下層膜形成用組成物から形成され、有機溶媒に難溶であり、かつ、塩基性溶液に可溶であるレジスト下層膜である。当該レジスト下層膜は有機溶媒に難溶であるため、上面に塗布等により積層される他の層の侵食を抑えることができ、層として機能する。また、当該レジスト下層膜は、塩基性溶液に可溶であるため、パターン形成後、塩基性溶液によって容易に、基板への影響を抑えつつ除去されることができる。
【0014】
上記フェノール性水酸基を有する樹脂の少なくとも一部がキノン構造に変性されているとよい。当該レジスト下層膜は上記樹脂のフェノール性水酸基がキノン構造に変性されているため有機溶媒に対する難溶性に優れる。また、当該レジスト下層膜は十分なエッチング耐性を発揮することができる。さらに、当該レジスト下層膜は、塩基性溶液と接触した際に上記キノン構造がフェノール構造に再度変性し、この塩基性溶液に可溶となる。従って、当該レジスト下層膜は塩基性溶液でよりに容易に除去されることができる。
【0015】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、
(1)レジスト下層膜形成用組成物の塗布により、被加工基板の上面側にレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜形成工程と、
(2)上記レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
(3)上記レジストパターンをマスクとして、少なくとも上記レジスト下層膜及び被加工基板をドライエッチングし、被加工基板にパターンを形成するパターン形成工程と、
(4)上記被加工基板上のレジスト下層膜を塩基性溶液で除去するレジスト下層膜除去工程と
をこの順に有するパターン形成方法に用いられるレジスト下層膜形成用組成物であって、フェノール性水酸基を有する樹脂を含むことを特徴とする。
【0016】
当該レジスト下層膜形成用組成物により形成されたレジスト下層膜は、エッチング工程後に容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明のパターン形成方法によれば、基板に与える影響を抑え、かつエッチング工程を経た後のレジスト下層膜を容易に除去することができる。また、本発明のレジスト下層膜によれば、塩基性溶液によって、容易にかつ基板への影響を抑えつつ除去されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のパターン形成方法、レジスト下層膜及びレジスト下層膜形成用組成物について、詳説する。
【0019】
<パターン形成方法>
当該パターン形成方法は、
(1)フェノール性水酸基を有する樹脂を含むレジスト下層膜形成用組成物の塗布により、被加工基板の上面側にレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜形成工程と、
(2)上記レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
(3)上記レジストパターンをマスクとして、少なくとも上記レジスト下層膜及び被加工基板をドライエッチングし、被加工基板にパターンを形成するパターン形成工程と、
(4)上記被加工基板上のレジスト下層膜を塩基性溶液で除去するレジスト下層膜除去工程と
をこの順に有する。なお、(1)レジスト下層膜形成工程と(2)レジストパターン形成工程との間に、(1’)上記レジスト下層膜の上面側に中間層を形成する中間層形成工程を含み、(3)パターン形成工程において、さらに中間層をもドライエッチングしてもよい。以下、各工程について、詳説する。
【0020】
<(1)レジスト下層膜形成工程>
(1)レジスト下層膜形成工程においては、フェノール性水酸基を有する樹脂を含むレジスト下層膜形成用組成物の塗布により、被加工基板の上面側にレジスト下層膜を形成する。
【0021】
上記レジスト下層膜形成用組成物としては、フェノール性水酸基を有する樹脂を含む組成物であれば特に限定されないが、例えば後述する組成物を好適に用いることができる。なお、本発明において、フェノール性水酸基を有する樹脂とは、このフェノール性水酸基が解離性の官能基で保護されている樹脂も含むものとする。
【0022】
上記被加工基板としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。この被加工基板としては、通常、無機物製の基板が用いられ、例えば、シリコンウェハー、アルミニウムで被覆したウェハー等を使用することができる。
【0023】
また、被加工基板へのレジスト下層膜形成用組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の方法で実施することができる。
【0024】
この(1)レジスト下層膜形成工程における上記フェノール性水酸基を有する樹脂の少なくとも一部をキノン構造に変性させるとよい。このように、フェノール性水酸基を有する樹脂の少なくとも一部をキノン構造に変性させることで、このレジスト下層膜の有機溶媒に対する溶解性が低下する。従って、当該パターン形成方法によれば、レジスト下層膜に含まれる樹脂が架橋されていなくても層として機能し、レジスト下層膜の上面に塗布等により積層される他の層の侵食を抑えることができる。また、当該パターン形成方法によれば、レジスト下層膜が十分なエッチング耐性を発揮することができる。さらに、当該パターン形成方法によれば、レジスト下層膜が塩基性溶液と接触した際に、上記キノン構造がフェノール構造に変性して塗布時の状態に戻ることで、この塩基性溶液に可溶となるためレジスト下層膜を塩基性溶液で容易に除去することができる。
【0025】
この変性は、レジスト下層膜の上面に他の層(中間層やレジストパターン)を形成する前に行われる。具体的には、塗布前の組成物中の樹脂に対して行ってもよいし、塗布後の組成物(塗膜)に対して行ってもよい。
【0026】
上記変性を加熱により行うとよい。このようにフェノール性水酸基を有する樹脂の少なくとも一部をキノン構造に変性させることで、この樹脂の架橋反応を進めることなく有機溶媒に対する不溶性を発現し、かつレジスト下層膜の塩基性溶液での除去をより容易に行うことができる。
【0027】
この変性のための加熱は、通常、被加工基板へのレジスト下層膜形成用組成物の塗布後、塗膜の乾燥とともに、大気下で行われる。
【0028】
この際の加熱温度は、200℃以上300℃以下が好ましく、より好ましくは230℃以上270℃以下である。この加熱温度が200℃未満である場合、フェノール性水酸基を有する樹脂のキノン構造への変性が十分に行われず、このレジスト下層膜の上面に塗布等により積層される他の層の侵食を抑えることができなくなるおそれがある。逆に、この加熱温度が300℃を超える場合は、フェノール性水酸基を有する樹脂の架橋反応が進行し、レジスト下層膜除去工程の際に、塩基性溶液で容易に除去されないおそれがある。
【0029】
この際の加熱時間は30秒以上600秒以下であり、好ましくは60秒以上240秒以下である。この加熱時間が30秒未満である場合、フェノール性水酸基を有する樹脂のキノン構造への変性が十分に行われず、このレジスト下層膜の上面に塗布等により積層される他の層の侵食を抑えることができなくなるおそれがある。逆に、この加熱時間が600秒を超える場合はフェノール性水酸基を有する樹脂の架橋反応が進行し、レジスト下層膜除去工程の際に、塩基性溶液で容易に除去されないおそれがある。
【0030】
さらに、この加熱時の周囲の酸素濃度は5容量%以上であることが好ましく、20容量%以上であることが更に好ましい。加熱時の酸素濃度が低い場合、フェノール性水酸基を有する樹脂のキノン構造への変性が十分に進行せず、下層膜として必要な特性が発現できないおそれがある。
【0031】
この(1)レジスト下層膜形成工程で形成されるレジスト下層膜の膜厚は、特に限定されないが、通常、0.01μm以上5μm以下である。
【0032】
<レジスト下層膜形成用組成物>
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト下層膜形成用組成物は、フェノール性水酸基を有する樹脂を含み、その他、溶媒等の任意成分を含んでいてもよい。
【0033】
<フェノール性水酸基を有する樹脂>
フェノール性水酸基を有する樹脂としては、例えばノボラック樹脂等を挙げることができる。
【0034】
ノボラック樹脂の具体例としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ビスフェノールA、パラターシャリーブチルフェノール、パラオクチルフェノール、フルオレンビスフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類、1H−インデン−4−オール、1H−インデン−6−オール等のインデン−オール類からなる群より選ばれる1種又は2種以上のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、及びトリオキサン等のアルデヒド源のうちの1種又は2種以上のアルデヒド類とを酸性触媒を用いて反応させて得られる樹脂が挙げられる。
【0035】
また、フェノール性水酸基を有する樹脂としては、例えば、下記式(a)で表される構造単位を有するものが挙げられる。
【0036】
【化1】
【0037】
上記式(a)中、Arは、(m11+m12+m13+1)価の芳香族基を示す。R10は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルコキシル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜14のアリール基、置換若しくは非置換のグリシジルエーテル基、置換若しくは非置換のアルキルグリシジルエーテル基(但し、アルキル部位の炭素数は1〜6である。)、又は−OR(但し、Rは解離性官能基)である。Zは、それぞれ独立して、単結合、メチレン基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルキレン基、置換若しくは非置換の炭素数6〜14のアリーレン基、又は置換若しくは非置換のアルキレンエーテル基である。m11は、ZがArに結合している結合数を示し、1〜6の整数である。m12は、0〜6の整数である。m13は、1〜6の整数である。*は、結合手を表す。
【0038】
Arで示される少なくとも(m11+m12+m13+1)価の芳香族基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、インデン環、フルオレニリデンビフェニル環等のベンゼン系芳香環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ホスホール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環等の複素芳香環等から(m11+m12+m13+1)個の水素原子を除いた基を挙げることができる。
【0039】
上記式(a)で表される構造単位を有する樹脂としては、例えば、下記式(a1)や式(a2)で表される構造単位を有するもの等が挙げられる。
【0040】
【化2】
【0041】
上記式(a1)及び(a2)中、R11及びR12は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルコキシル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜14のアリール基、置換若しくは非置換のグリシジルエーテル基、置換若しくは非置換のアルキルグリシジルエーテル基(但し、アルキル部位の炭素数は1〜6である。)、又は−OR(但し、Rは解離性官能基)である。Z及びZは、それぞれ独立して、単結合、メチレン基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルキレン基、置換若しくは非置換の炭素数6〜14のアリーレン基、又は置換若しくは非置換のアルキレンエーテル基である。
【0042】
m1は、Zが芳香環に結合している結合数を示し、1〜6の整数である。m2は、0〜6の整数である。m3は、1〜6の整数である。m4は、Zが芳香環に結合している結合数を示し、1〜4の整数である。m5は、0〜4の整数である。m6は、1〜5の整数である。但し、m1+m2+m3≦8、m4+m5+m6≦6である。R11、R12、Z及びZがそれぞれ複数の場合、複数のR11、R12、Z及びZは、同一又は異なっていてもよい。*は、結合手を表す。また、m1及びm3がそれぞれ2以上の場合、Z及びZが芳香環に2つ以上結合していることを示し、芳香環を有する重合体が分岐構造又は網目構造を有することを表す。
【0043】
11及びR12における非置換の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0044】
11及びR12における非置換の炭素数1〜6のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、2−プロピニルオキシ基等が挙げられる。
【0045】
11及びR12における非置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基としては例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0046】
11及びR12における非置換の炭素数6〜14のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0047】
11及びR12における非置換のアルキルグリシジルエーテル基としては、例えば、メチルグリシジルエーテル基、エチルグリシジルエーテル基、プロピルグリシジルエーテル基、ブチルグリシジルエーテル基等が挙げられる。
【0048】
また、Rで表される解離性官能基としては、塩基の存在下(例えば、23℃のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38質量%溶液中)で解離する基(以下、「塩基解離性基」ともいう。)、酸の存在下で解離する基やレジスト下層膜成膜時の加熱で解離する基(以下、「熱解離性基」ともいう。)を挙げることができる。塩基解離性基としては、フッ素含有アルキルカルボニル基、ベンジル基、N−イミドメチル基等が挙げられる。酸解離性基としてはt−BuOCO−等のアルコキシカルボニルオキシ基、メトキシメチル基等のアルコキシ置換メチル基等が挙げられる。アルコキシ熱解離性基としては、具体的には、t−BuOCOCH−等のアルコキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0049】
また、式(a1)及び式(a2)のZ及びZにおける非置換の炭素数2〜20のアルキレン基としては、例えば、エチレン基;1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基等のプロピレン基;テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0050】
及びZにおける非置換の炭素数6〜14のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。
【0051】
及びZにおけるアルキレンエーテル基のアルキレン部位の炭素数は2〜20であることが好ましい。具体的なアルキレンエーテル基としては、例えば、エチレンエーテル基;1,3−プロピレンエーテル基、1,2−プロピレンエーテル基等のプロピレンエーテル基;テトラメチレンエーテル基、ペンタメチレンエーテル基、ヘキサメチレンエーテル基等が挙げられる。
【0052】
また、式(a)、(a1)及び式(a2)における、R10、R11、R12、Z、Z及びZで表される各基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数6〜22のアリール基等が挙げられる。
【0053】
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0054】
更に、上記炭素数6〜22のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0055】
なお、このフェノール性水酸基を有する樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるMwとしては、1,000〜50,000が好ましく、1,500〜10,000がさらに好ましい。この樹脂のMwを上記範囲とすることで、(4)レジスト下層膜除去工程において、塩基性溶液によってより容易にレジスト下層膜を除去することができる。
【0056】
<溶媒>
上記レジスト下層膜形成用組成物は、通常、上記樹脂を溶解する溶媒を含む液状の組成物である。
【0057】
溶媒としては、上記樹脂を溶解しうるものであれば特に限定されないが、例えば、特開2004−168748号公報における段落[0070]〜[0073]に記載のもの等を用いることができる。
【0058】
これらの溶媒のなかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル;2−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトン等が好ましい。
【0059】
なお、この溶媒は、1種単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
溶媒の使用量としては、得られる組成物の固形分濃度が、通常1〜80質量%となる範囲であり、好ましくは3〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%となる範囲である。
【0061】
<その他の成分>
上記レジスト下層膜形成用組成物は、界面活性剤、保存安定剤、消泡剤等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0062】
但し、このレジスト下層膜形成用組成物は、レジスト下層膜除去工程にて塩基性溶液を用いて下層膜が除去されるため、実質的に架橋剤を含んでいないことが好ましい。この架橋剤の含有量としては、フェノール性水酸基を有する樹脂100質量部に対し、0質量部以上3質量部以下が好ましく、0質量部以上1質量部以下がより好ましく、0質量部以上0.1質量部以下がさらに好ましく、0質量部であることが特に好ましい。
【0063】
<(1’)中間層形成工程>
この工程にて形成される中間層は、レジストパターン形成において、レジスト下層膜及び/又はレジスト被膜が有する機能を補ったり、これらが有していない機能を得るためにこれらの機能が付与された層のことである。例えば、反射防止膜を中間層として形成した場合、レジスト下層膜の反射防止機能を補うことができる。
【0064】
この中間層は、有機化合物や無機酸化物により形成することができる。この有機化合物としては、例えば、Brewer Science社製の「DUV−42」、「DUV−44」、「ARC−28」、「ARC−29」等の商品名で市販されている材料や、ローム アンド ハース社製の「AR−3」、「AR―19」等の商品名で市販されている材料等を用いることができる。また、上記無機酸化物としては、例えば、JSR社製の「NFC SOG」シリーズ等の商品名で市販されている材料やCVD法により形成されるポリシロキサン、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化タングステン等を用いることができる。
【0065】
中間層を形成するための方法は特に限定されないが、例えば、塗布法やCVD法等を用いることができる。これらのなかでも、塗布法が好ましい。塗布法を用いた場合、レジスト下層膜を形成後、中間層を連続して形成することができる。
【0066】
また、中間層の膜厚は特に限定されず、中間層に求められる機能に応じて適宜選択されるが、10nm以上3,000nm以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは20nm以上300nm以下である。
【0067】
<(2)レジストパターン形成工程>
(2)レジストパターン形成工程においては、上記レジスト下層膜の上面側に、好ましくは上記中間層を介してレジストパターンを形成する。このレジストパターン形成工程としては、例えば、(2−a)フォトリソグラフィを用いる工程、(2−b)ナノインプリント法を用いる工程、(2−c)組成物の自己組織化を用いる工程、及び上記各工程に加えて行われる(2−α)反転プロセス又は側壁プロセスを経る工程等が挙げられる。以下、各工程について説明する。
【0068】
<(2−a)フォトリソグラフィを用いる工程>
(2−a)フォトリソグラフィを用いる工程は、例えば
(2−a−1)上記レジスト下層膜上に、レジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成する工程(以下、「工程(2−a−1)」ともいう。)と、
(2−a−2)上記レジスト被膜に、選択的に放射線を照射して、このレジスト被膜を露光する工程(以下、「工程(2−a−2)」ともいう。)と、
(2−a−3)露光された上記レジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成する工程(以下、「工程(2−a−3)」ともいう。)と
を有する。
【0069】
上記工程(2−a−1)では、レジスト組成物を用いて、レジスト下層膜上にレジスト被膜を形成する。具体的には、得られるレジスト被膜が所定の膜厚となるようにレジスト組成物を塗布した後、プレベークすることによって塗膜中の溶媒を揮発させ、レジスト被膜が形成される。
【0070】
レジスト組成物としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等が挙げられる。
【0071】
レジスト被膜をレジスト下層膜上に形成させる際に使用されるレジスト組成物は、固形分濃度が、通常、5〜50質量%程度であり、一般に、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過して、レジスト被膜の形成に供される。尚、この工程では、市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0072】
レジスト組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、スピンコート法等により実施することができる。
【0073】
また、プレベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。
【0074】
上記工程(2−a−2)では、得られたレジスト被膜の所定領域に放射線が照射され、選択的に露光が行われる。
【0075】
露光に用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用される光酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、遠紫外線であることが好ましく、特にKrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)、Krエキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)等が好ましい。
【0076】
上記工程(2−a−3)では、露光後のレジスト被膜を現像液で現像することで、レジストパターンが形成される。
【0077】
この工程で用いられる現像液は、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択される。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液や、有機溶媒が挙げられる。
【0078】
また、これらのアルカリ性水溶液には、水溶性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。
【0079】
また、上記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0080】
なお、この工程では、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、現像前の上記露光後に、ポストベークを行うことができる。このポストベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、50〜200℃程度、好ましくは70〜150℃である。
【0081】
<(2−b)ナノインプリント法を用いる工程>
(2−b)ナノインプリント法を用いる工程は、例えば、
(2−b−1)上記レジスト下層膜上に、レジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成する工程(以下、「工程(2−b−1)」ともいう。)と、
(2−b−2)このレジスト被膜に微細な凹凸パターンが形成されたスタンパを圧接及び脱離して、スタンパの凹凸を転写する工程(以下、「工程(2−b−2)」ともいう。)と
を有する。
【0082】
上記工程(2−b−1)に用いられるレジスト組成物としては特に限定されないが、例えば、重合性不飽和化合物と感放射線性重合開始剤を含む感放射線性樹脂組成物を用いることができる。この組成物の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、スピンコート法等により実施することができる。
【0083】
上記工程(2−b−2)におけるスタンパの圧接、脱離の条件は特に限定されず、例えば圧接圧力は0.1MPa以上100MPa以下が好ましく、0.1〜50MPaがより好ましく、圧接時間は1秒以上600秒以下が好ましく、1〜300秒がより好ましい。
【0084】
また、スタンパは、放射線に対して透過性を有していてもよく、有さなくてもよい。スタンパが透光性を有し、かつ、レジスト被膜に感放射線性重合開始剤が含まれる場合には、スタンパをレジスト被膜に圧接した状態で露光することで、スタンパの凸部を転写し易くすることができる。この場合、放射線に対する透過率は特に限定されないが、所望の放射線(上記感放射線性重合開始剤が官能し得る放射線)に対して、70%以上の透過率であることが好ましく、75〜100%がより好ましく、80〜100%が更に好ましい。
【0085】
上記スタンパをレジスト被膜に圧接した状態で露光する場合、露光によりレジスト被膜完全硬化させてもよく、不完全に硬化させたうえで更に後工程で加熱によって完全硬化を行ってもよい。露光に用いる放射線種は特に限定されず、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の荷電粒子線等の放射線(ArFエキシマレーザー(波長193nm)或いはKrFエキシマレーザー(波長248nm)などを含む)を用いることができる。
【0086】
このスタンパは、スタンパとしての機械的特性を有すればよく、さらには、上述のように放射線に対する透過性を有することができる。このような観点から、スタンパを構成する材料としては、特に透光性無機材料が好ましい。この透光性無機材料といては、石英質材料(石英(単結晶、多結晶)、各種ガラス(石英ガラス、フッ化物ガラス、リン酸カルシウム系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、ホウケイ酸塩系ガラス等))、シリコン、スピネル、コランダム、サファイア等が挙げられる。
【0087】
スタンパの表面(凸部を有する表面)には必要に応じて機能層を備えることができる。機能層としては、離型層、イオン化抑制層、密着性向上層(スタンパと透光性電極層との層間などの各種層間の密着性を向上する層)、熱拡散層、各種光学的機能層(反射抑制、屈折率制御層、光透過性向上層など)、絶縁層等が挙げられる。これらの各種層は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。すなわち、例えば各層は1層のみを有してもよく2層以上の多層構造としてもよい。機能層の厚さは各々特に限定されないが、各1層の厚みは1〜100nmが好ましく、1〜50nmがより好ましく、1〜20nmが特に好ましい。
【0088】
<(2−c)組成物の自己組織化を用いる工程>
(2−c)組成物の自己組織化を用いる工程は、例えば
(2−c−1)上記レジスト下層膜上に、2種のブロックコポリマー又はグラフトコポリマーを含む溶液を塗布してレジスト被膜を形成する工程(以下、「工程(2−c−1)」ともいう。)と、
(2−c−2)上記レジスト被膜をミクロ相分離させる工程(以下、「工程(2−c−2)」ともいう。)と、
(2−c−3)上記ミクロ相分離されたレジスト被膜の1つの相を選択的に除去して、レジストパターンを形成する工程(以下、「工程(2−c−2)」ともいう。)と
を有する。
【0089】
上記工程(2−c−1)における2種のブロックコポリマー又はグラフトコポリマーを含む溶液に用いられる溶媒としては、2種ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーに対して良溶媒であることが好ましい。また、均一溶液を調製できるように、150℃以上の例えば、エチルセロソルブアセテート(ECA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルラクテート(EL)などの高沸点を有する溶媒を用いることが好ましい。
【0090】
上記溶液の塗布方法は特に限定されず、例えば、スピンコート法等により実施することができる。
【0091】
上記工程(2−c−2)におけるレジスト被膜をミクロ相分離させる工程においては、例えば、この被膜をポリマーのガラス転移温度以上の温度でアニールすることによって、良好な相分離構造を形成することができる。
【0092】
上記工程(2−c−3)におけるレジスト被膜の1つの相の選択的除去手段としては、例えば2つのポリマー相の間でのドライエッチング速度の差、エネルギー線に対する分解性の差又は熱分解性の差を利用する方法を挙げることができる。
【0093】
<(2−α)反転プロセス又は側壁プロセスを経る工程>
反転プロセスを経る工程としては、例えば
(2−α−1)レジストパターンのパターン間に、ポリシロキサンと有機溶媒とを含有する樹脂組成物を埋め込む工程(以下、「工程(2−α−1)」ともいう。)と、
(2−α−2)上記レジストパターンを除去し、反転パターンを形成する工程(以下、「工程(2−α−2)」ともいう。)と
を有する。
【0094】
工程(2−α−1)では、レジストパターンのパターン間に樹脂組成物が埋め込まれる。具体的には、レジストパターンが形成された被加工基板上に、樹脂組成物が回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、上記被加工基板上に塗布されて、上記レジストパターン間にこの樹脂組成物が埋め込まれる。
【0095】
なお工程(2−α−1)においては、樹脂組成物を上記レジストパターンのパターン間に埋め込んだ後に、乾燥工程を設けることが好ましい。この乾燥手段は特に限定されないが、例えば、焼成することにより、組成物中の有機溶媒を揮発させることができる。この焼成条件は、樹脂組成物の配合組成によって適宜調整されるが、焼成温度は通常80〜250℃、好ましくは80〜200℃である。この焼成温度が、80〜180℃である場合には、後述の平坦化工程、特にウェットエッチバック法による平坦化加工を円滑に行うことができる。なお、この加熱時間は通常10〜300秒間、好ましくは30〜180秒間である。
【0096】
上記工程(2−α−2)では、上記フォトレジストパターンが除去され、反転パターンが形成される。
【0097】
具体的には、まず、上記レジスト膜の上表面を露出するための平坦化加工が行われる。次いで、ドライエッチング又は溶解除去により上記レジストパターンが除去され、所定の反転パターンが得られる。
【0098】
上記平坦化加工で利用される平坦化法としては、ドライエッチバック、ウェットエッチバック等のエッチング法や、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等を用いることができる。これらのなかでも、フッ素系ガス等を用いたドライエッチバック、CMP法が好ましい。なお、平坦化加工における加工条件は特に限定されず、適宜調整できる。
【0099】
また、レジストパターン除去にはドライエッチングが好ましく、具体的には、酸素エッチング、オゾンエッチング等が好ましく用いられる。上記ドライエッチングには、酸素プラズマ灰化装置、オゾンアッシング装置等の公知のレジスト剥離装置を用いることができる。なお、エッチング加工条件は特に限定されず、適宜調整できる。
【0100】
また、側壁プロセスを経る工程として、工程(2−α−1)の代わりに、
(2−α−1’)レジストパターンの側壁に、ポリシロキサンと有機溶媒とを含有する樹脂組成物を塗布する工程(以下、「工程(2−α−1’)」ともいう。)を採用してもよい。工程(2−α−1’)を経た後、レジストパターンを除去することで、レジストパターンの側壁形状を転写した側壁パターンを形成することができる。
【0101】
なお、(2−α)反転プロセス又は側壁プロセスを経る工程を採用した場合は、(3)パターン形成工程において反転パターン又は側壁パターンがレジストパターンとして用いられる。
【0102】
<(3)パターン形成工程>
(3)パターン形成工程においては、上記レジストパターンをマスクとして、少なくとも上記レジスト下層膜及び被加工基板をドライエッチングし、被加工基板にパターンを形成する。なお、中間層を形成した場合は、さらに中間層もドライエッチングする。
【0103】
上記ドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。また、ドライエッチング時のソースガスとしては、被エッチング物の元素組成にもよるが、O、CO、CO等の酸素原子を含むガス、He、N、Ar等の不活性ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、CHF、CF等のフッ素系ガス、H、NHのガス等を使用することができる。なお、これらのガスは混合して用いることもできる。
【0104】
<(4)レジスト下層膜除去工程>
(4)レジスト下層膜除去工程においては、上記被加工基板上のレジスト下層膜を塩基性溶液で除去する。
【0105】
この工程に用いる塩基性溶液としては、塩基性である限り特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の塩基性水溶液を用いることができる。また、これらの塩基性水溶液は、水溶性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加したものであってもよい。また、塩基性溶液であれば、水以外の有機溶媒を用いた溶液であってもよい。
【0106】
この塩基性溶液のpHとしては、例えば7.5以上が好ましく、8以上がさらに好ましい。pHが7.5未満の場合は、レジスト下層膜が十分に除去されないおそれがある。
【0107】
この塩基性溶液によるレジスト下層膜の除去方法としては、レジスト下層膜と塩基性溶液とが一定時間接触できる方法であれば特に限定されず、例えば、パターンが形成された被加工基板を塩基性溶液に浸漬する方法、塩基性溶液を吹き付ける方法、塩基性溶液を塗布する方法などが挙げられる。なお、この浸漬する方法における浸漬時間としては例えば0.2分〜30分程度とすることができる。これらの各方法の後、被加工基板を水洗し、乾燥させるとよい。
【0108】
当該パターン形成方法によれば、このように被加工基板にエッチングによりパターンを形成した後のレジスト下層膜除去工程において、レジスト下層膜を塩基性溶液によって除去するため、基板の影響を抑え、かつ容易にレジスト下層膜を除去することができる。特に当該パターン形成方法によれば、アッシング等によって影響を受けやすい低誘電材料を基板に用いた場合においても、影響を抑えてレジスト下層膜を除去することができる。
【0109】
<レジスト下層膜>
本発明のレジスト下層膜は、フェノール性水酸基を有する樹脂を含むレジスト下層膜形成用組成物から形成され、有機溶媒に難溶であり、かつ、塩基性溶液に可溶であるレジスト下層膜である。
【0110】
上記レジスト下層膜については、上記パターン形成方法で説明しているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0111】
なお、有機溶媒に難溶とは、成膜後のレジスト下層膜上に有機溶剤をまたは有機溶剤を含むレジスト溶液等を塗布した場合に、レジスト下層膜と塗布溶液が交じり合わないことである。具体的には、23℃のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに60秒間接触させた前後におけるRジスト下層膜の膜厚減少量が1nm未満であることを示す。
【0112】
また、塩基性溶液に可溶とは、成膜後のレジスト下層膜上に塩基性溶液を塗布した場合に、塩基性溶液に溶解し、レジスト下層膜が除去されることである。具体的には、50℃の10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に60秒間接触させた後にレジスト下層膜が実質的に残存しないことを示す。
【0113】
当該レジスト下層膜は有機溶媒に難溶であるため、上面に塗布等により積層される他の層の侵食を抑えることができ、層として機能する。また、当該レジスト下層膜は、塩基性溶液に可溶であるため、パターン形成後、塩基性溶液によって容易に、パターンへの影響を抑えつつ除去されることができる。
【0114】
上記フェノール性水酸基を有する樹脂の少なくとも一部がキノン構造に変性されているとよい。なお、上記フェノール性水酸基を有する樹脂の少なくとも一部をキノン構造に変性する手段としては、上記パターン形成方法で説明しているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0115】
当該レジスト下層膜は上記樹脂のフェノール性水酸基がキノン構造に変性されているため有機溶媒に対する難溶性に優れる。また、当該レジスト下層膜は、塩基性溶液と接触した際に上記キノン構造がフェノール構造に再度変性し、この塩基性溶液に可溶となる。従って、当該レジスト下層膜は塩基性溶液でよりに容易に除去されることができる。
【0116】
<レジスト下層膜形成用組成物>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、
(1)レジスト下層膜形成用組成物の塗布により、被加工基板の上面側にレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜形成工程と、
(2)上記レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
(3)上記レジストパターンをマスクとして、少なくとも上記レジスト下層膜及び被加工基板をドライエッチングし、被加工基板にパターンを形成するパターン形成工程と、
(4)上記被加工基板上のレジスト下層膜を塩基性溶液で除去するレジスト下層膜除去工程と
をこの順に有するパターン形成方法に用いられるレジスト下層膜形成用組成物であって、フェノール性水酸基を有する樹脂を含むことを特徴とする。
【0117】
当該レジスト下層膜形成用組成物により形成されたレジスト下層膜は、エッチング工程後に容易に除去することができる。当該レジスト下層膜形成用組成物の詳細は、本発明のパターン形成方法にて上述したとおりである。
【実施例】
【0118】
以下、合成例及び実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ここで、「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0119】
[1]樹脂の合成
<合成例1>
コンデンサー、温度計及び撹拌装置を備えた反応装置に1−ナフトール100部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部及びパラホルムアルデヒド50部を仕込み、シュウ酸2部を添加し、脱水しながら120℃に昇温して、5時間反応させた後、樹脂(A−1)を得た。得られた樹脂(A−1)の重量平均分子量(Mw)は2,000であった。
【0120】
<合成例2>
コンデンサー、温度計及び撹拌装置を備えた反応装置に2−ナフトール50部、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部及びパラホルムアルデヒド50部を仕込み、シュウ酸2部を添加し、脱水しながら120℃に昇温して、5時間反応させた後、樹脂(A−2)を得た。得られた樹脂(A−2)の重量平均分子量(Mw)は2,000であった。
【0121】
<合成例3>
コンデンサー、温度計及び撹拌装置を備えた反応装置に2,7−ジヒドロキシナフタレン100部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部及びパラホルムアルデヒド50部を仕込み、シュウ酸2部を添加し、脱水しながら120℃に昇温して、5時間反応させた後、樹脂(A−3)を得た。得られた樹脂(A−3)の重量平均分子量(Mw)は2,000であった。
【0122】
<合成例4>
コンデンサー、温度計及び撹拌装置を備えた反応装置に3−メチル−フェノール100部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部及びパラホルムアルデヒド100部を仕込み、シュウ酸3部を添加し、脱水しながら120℃に昇温して、5時間反応させた後、樹脂(A−4)を得た。得られた樹脂(A−4)の重量平均分子量(Mw)は8,000であった。
【0123】
<合成例5>
コンデンサー、温度計及び撹拌装置を備えた反応装置にレゾルシノール100部及びエタノール400部を仕込み、80℃に加熱後、4−ヒドロキシベンズアルデヒド120部及び濃塩酸15部を添加し、5時間反応させた。この反応溶液にN−メチル−2−ピロリドン1,000部、tert−ブチルブロモアセテート800部、テトラブチルアンモニウムブロミド50部及び塩化セシウム600部を加えて80℃に昇温して、40時間反応させた後、樹脂(A−5)を得た。得られた樹脂(A−5)の重量平均分子量(Mw)は1,600であった。
【0124】
<比較合成例1>
コンデンサー、温度計及び撹拌装置を備えた反応装置に4−ビニルベンゼンスルホン酸エチル100部及びメチルエチルケトン100部を仕込み、80℃に加熱後、アゾビスイソブチロニトリル3部を添加し、5時間反応させ樹脂(B−1)を得た。得られた樹脂(B−1)の重量平均分子量(Mw)は5,000であった。
【0125】
[2]レジスト下層膜形成用組成物の調製
<調製例1>
上記樹脂(A−1)10部を、溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)90部に溶解した。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、調製例1のレジスト下層膜形成用組成物(J−1)を得た。
【0126】
<調製例2>
上記樹脂(A−2)10部を、溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)90部に溶解した。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、調製例2のレジスト下層膜形成用組成物(J−2)を得た。
【0127】
<調製例3>
上記樹脂(A−3)10部を、溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)90部に溶解した。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、調製例3のレジスト下層膜形成用組成物(J−3)を得た。
【0128】
<調製例4>
上記樹脂(A−4)10部を、溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)90部に溶解した。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、調製例4のレジスト下層膜形成用組成物(J−4)を得た。
【0129】
<調製例5>
上記樹脂(A−5)10部を、溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)90部に溶解した。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、調製例5のレジスト下層膜形成用組成物(J−5)を得た。
【0130】
<比較調製例1>
上記樹脂(B−1)10部を、溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)90部に溶解した。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、比較調製例1のレジスト下層膜形成用組成物(j−1)を得た。
【0131】
[3]レジスト下層膜の形成
<実施例1>
直径8インチのシリコンウェハー上に、調製例1で調製したレジスト下層膜形成用組成物(J−1)をスピンコートした後、ホットプレート内にて250℃で120秒間加熱して、膜厚0.3μmのレジスト下層膜を形成した。
【0132】
<実施例2〜10及び比較例1〜2>
表1に示すレジスト下層膜形成用組成物を用い、加熱条件としたこと以外は実施例1と同様の工程を経て、実施例2〜10及び比較例1〜2のレジスト下層膜を得た。
【0133】
なお、実施例1〜10及び比較例1〜2のレジスト下層膜において、レジスト下層膜のIR測定により、1700〜1900cm−1のピークによってキノン構造の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
<評価>
実施例1〜10及び比較例1〜2の各レジスト下層膜について、下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0136】
<エッチング耐性>
直径8インチのシリコンウェハー上に、得られた各レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートした後、ホットプレート内にて表1に示す条件にて加熱して、膜厚300nmのレジスト下層膜を形成し、このレジスト下層膜をエッチング装置「EXAM」(神鋼精機社製)を用いて、CF/Ar(CF:100mL/min、Ar:100mL/min;RFパワー:200W)でエッチング処理した。エッチング処理前後の膜厚を測定して、エッチングレートを算出し、下記の基準でエッチング耐性を評価した。
「○」:エッチングレートが150nm/min以下の場合
「×」:エッチングレートが150nm/minを超える場合
【0137】
<有機溶媒耐性>
直径8インチのシリコンウェハー上に、得られた各レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートした後、ホットプレート内にて表1に示す条件にて加熱して、膜厚300nmのレジスト下層膜を形成した。このレジスト下層膜に対して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20mLを塗布し、23℃1気圧で60秒間静置した後、乾燥させた。このシリコンウェハー上の下層膜の膜厚を測定して、下層膜の膜厚減少量を測定し、下記の基準で有機溶媒耐性を評価した。なお、評価結果が○又は△の場合、下層膜として十分に使用可能と判断できる。
「○」:レジスト下層膜の膜厚減少量が1nm未満の場合
「△」:レジスト下層膜の膜厚減少量が1nm以上5nm未満の場合
「×」:レジスト下層膜の膜厚減少量が5nm以上の場合
【0138】
<塩基性溶液剥離性>
直径8インチのシリコンウェハー上に、膜厚0.2μm塗布型Low−k膜を成し、この上に、得られた各レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートした後、ホットプレート内にて表1に示す条件にて加熱して、膜厚0.3μmのレジスト下層膜を形成した。その後、得られたレジスト下層膜上に3層レジストプロセス用ケイ素含有中間層組成物溶液をスピンコートし、200℃60秒間加熱して、膜厚0.05μmの中間層被膜を形成した。次いで、得られた中間層被膜上に、ArF用レジスト組成物溶液をスピンコートし、130℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、膜厚0.2μmのレジスト被膜を形成した。この積層物をエッチング装置「EXAM」(神鋼精機社製)を用いて、O(O:100mL/min、;RFパワー:100W)でArFレジスト層を剥離し、続いてCF/Ar(CF:100mL/min、Ar:100mL/min;RFパワー:100W)でケイ素含有中間層組を剥離し、さらにケイ素含有中間層が完全に剥離された後にレジスト下層膜に対してCF/Ar(CF:100mL/min、Ar:100mL/min;RFパワー:100W)でエッチングした。このエッチングガス処理された膜を50℃の10%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の中に10分間浸し、2−プロパノール中に10分間浸し、水洗し、乾燥した。このシリコンウェハー上の下層膜の膜厚を測定して、下層膜残膜の膜厚を測定し、下記の基準で下層膜溶媒剥離性を評価した。なお評価結果が、○又は△の場合、塩基性溶液で容易に除去されると判断できる。
「○」:レジスト下層膜残膜の膜厚が5nm未満の場合
「△」:レジスト下層膜残膜の膜厚が5nm以上10nm未満の場合
「×」:レジスト下層膜残膜の膜厚が10nm以上の場合
【0139】
表1に示されるように、実施例1〜10で得られた各レジスト下層膜は、レジスト下層膜として十分なエッチング耐性及び有機溶媒耐性を有している上で、エッチング後の塩基性溶液(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)によって容易に除去されることがわかった。特に、実施例1〜5で得られた各レジスト下層膜は、加熱条件が好ましく、有機溶媒耐性と塩基性溶液剥離性に特に優れていることがわかった。また、塩基性溶液剥離性の評価において、形成されたLow−k膜のパターンは、塩基性溶液に浸した後も、変形等特段の影響を受けていないことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明のパターン形成方法は、基板への影響を抑え、かつ容易にレジスト下層膜を除去することができるため、レジストパターンを効率的に形成することができるので、特に低誘電材料が使用されている集積回路素子等の製造に好適に用いることができる。