(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910581
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】結束バンドの取付構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20160414BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20160414BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
H02G3/30
F16B2/08 A
B60R16/02 610A
B60R16/02 623C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-163992(P2013-163992)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-33314(P2015-33314A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】岩田 誠
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−232222(JP,A)
【文献】
特開2013−21828(JP,A)
【文献】
特開平9−51624(JP,A)
【文献】
特開2003−143736(JP,A)
【文献】
特開平10−229283(JP,A)
【文献】
特開2012−205415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H02G 3/30
H02G 3/16
B60R 16/02
F16B 2/08
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持体の支持壁部に対して被保持体を結束バンドにより結束固定する、結束バンドの取付構造であって、
前記保持体の前記支持壁部と該支持壁部に交わる側壁部に跨って開口する凹所部と、
前記凹所部の側壁部開口と対向する底面から前記側壁部開口に向かって片持ち状に突出する係止突起が設けられており、
前記被保持体の周囲にリング状に配設された前記結束バンドのバンド本体が、前記側壁部開口から前記凹所部に挿し入れられて前記係止突起に係止された状態で、前記被保持体と共に前記結束バンドが締め付けられている
ことを特徴とする結束バンドの取付構造。
【請求項2】
前記係止突起の突出先端部に抜止突部が設けられている請求項1に記載の結束バンドの取付構造。
【請求項3】
前記側壁部が、相互に異なる方向に延出する第一側壁部と第二側壁部を有しており、前記凹所部が、前記第一側壁部と前記第二側壁部の両方に跨って開口している請求項1又は2に記載の結束バンドの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束バンドにより被保持体を保持体に結束固定するための、結束バンドの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に配索されるワイヤハーネス等の被保持体を、電気接続箱やブラケット等の保持体に取り付ける際に、結束バンドにより被保持体を保持体の支持壁部に結束固定する取付構造が広く採用されている。このような結束バンドの取付構造として、例えば、特開2008−232222号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。具体的には、保持体としての電気接続箱の支持壁部に2つの挿通穴を設け、一方の穴から挿し入れた結束バンドの先端部を他方の穴から引き出すことにより、結束バンドを保持体の支持壁部に係止させ、被保持体としてのワイヤハーネスと共に結束バンドを締め付けることにより、ワイヤハーネスが結束バンドにより電気接続箱に固定的に取り付けられるようになっている。
【0003】
ところが、保持体の支持壁部に設けられた2つの挿通穴の一方から挿し入れた結束バンドの先端部を他方から引き出す作業は、結束バンドの先端部を所望の方向に湾曲させる必要があり、非常に煩雑で作業時間を要するという問題があった。
【0004】
これに対して、特許文献1の
図5や、特開2013−21828号公報(特許文献2)には、保持体の支持壁部に設けた一方の挿通穴の内方に、結束バンドの先端部を他方の挿通穴へ向かって突出するように案内するガイド壁を設けて、結束バンドの先端部を確実に他方の挿通穴に向けて案内して、作業性の向上を図ることがなされている。
【0005】
しかしながら、保持体の支持壁部の奥方にこのようなガイド壁を設けることは、保持体の構造が複雑になり、製造コストが嵩むという問題を内在していた。さらに、剛性のある結束バンドを湾曲させるためには、特許文献1の如く2つの挿通穴の離隔距離をある程度長く確保したり、特許文献2の如く、ガイド壁の湾曲案内面の長さを長く確保する必要がある。従って、何れの場合も取付構造の大型化が避けられず、保持体に大きなスペースが確保できない場合には、ガイド壁を設けることができず、未だ改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−232222号公報
【特許文献2】特開2013−21828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、大きなスペースを要することなく、簡単な構造で保持体の支持壁部に結束バンドを容易に取り付けることができる、新規な結束バンドの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、保持体の支持壁部に対して被保持体を結束バンドにより結束固定する、結束バンドの取付構造であって、前記保持体の前記支持壁部と該支持壁部に交わる側壁部に跨って開口する凹所部と、前記凹所部の側壁部開口と対向する底面から前記側壁部開口に向かって片持ち状に突出する係止突起が設けられており、前記被保持体の周囲にリング状に配設された前記結束バンドのバンド本体が、前記側壁部開口から前記凹所部に挿し入れられて前記係止突起に係止された状態で、前記被保持体と共に前記結束バンドが締め付けられていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、保持体の支持壁部と側壁部に跨って開口する凹所部を設け、かかる凹所部内に係止突起を突設するという簡単な構造により、結束バンドの保持体への係止部を構成することができる。従って、従来構造の如き、保持体の支持壁部の内部にガイド壁を設ける構造に比して、構造を簡素化でき製造性の向上やコストの低減を図ることができる。
【0010】
しかも、結束バンドが係止される係止突起は、凹所部の開口を通じて外部に露呈されていることから、係止突起の視認性が確保されてアクセスが容易である。従って、従来構造の如き保持体の支持壁部に設けられた2つの挿通穴に目視確認できない状態で結束バンドの挿し入れを行う場合に比して、確実且つ速やかに結束バンドを係止突起に係止させることができ、取付作業性の向上を図ることができる。
【0011】
加えて、結束バンドを係止させる係止突起は、支持壁部と側壁部に開口する凹所部に突設されていることから、被保持体の周囲に結束バンドをリング状に配設した状態で、凹所部の開口幅の大きさになるよう予め湾曲させたバンド本体を側壁部開口から挿し入れて係止突起に係止させることができる。従って、結束バンドを湾曲させるために大きなスペースを確保する必要がなく、狭小エリアにも結束バンドの取付構造を設けることができるのである。このように係止突起に係止させた結束バンドを被保持体と共に結束することで、容易且つ良好な作業性やスペース効率をもって、保持体に対して被保持体が結束バンドにより固定的に取り付けられるのである。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記係止突起の突出先端部に抜止突部が設けられているものである。
【0013】
本態様によれば、係止突起の突出先端部に抜止突部が設けられていることから、車両振動等により、結束バンドが係止突起の先端側に変位される場合があっても、係止突起に結束バンドが干渉することにより、結束バンドの係止突起からの抜け出しが防止され、被保持体の保持体からの離脱が未然に防止できる。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記側壁部が、相互に異なる方向に延出する第一側壁部と第二側壁部を有しており、前記凹所部が、前記第一側壁部と前記第二側壁部の両方に跨って開口しているものである。
【0015】
本態様によれば、凹所部が異なる2方向に延出する第一側壁部と第二側壁部の両方に跨って開口していることから、係止突起の視認性やアクセス性が一層向上され、係止突起への結束バンドの係止作業を一層速やか且つ確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保持体の支持壁部と側壁部に跨って開口する凹所部を設け、かかる凹所部内に係止突起を突設するという簡単な構造により、結束バンドの保持体への係止部を構成できる。それ故、従来構造の如きガイド壁を設ける構造に比して、構造を簡素化でき製造性の向上やコストの低減を図ることができる。しかも、結束バンドが係止される係止突起は、凹所部の開口を通じて外部に露呈されていることから、係止突起の視認性が確保されてアクセスが容易である。加えて、被保持体の周囲に結束バンドをリング状に配設した状態で、バンド本体を側壁部開口から挿し入れて係止突起に係止させることができる。それ故、狭小エリアにも結束バンドの取付構造を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態としての結束バンドの取付構造が適用された電気接続箱を示す斜視図。
【
図2】
図1に示した結束バンドの結束前の拡大斜視図。
【
図3】
図1に示した係止突起を所定の位置から見た拡大図((a)A矢視図、(b)B矢視図)。
【
図4】本発明の他の実施形態としての電気接続箱を所定の位置から見た、
図3に相当する図((a)A矢視図、(b)B矢視図)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1〜3に、本発明の一実施形態としての結束バンドの取付構造を用いて、保持体たる電気接続箱10の後述する支持壁部24に対して被保持体たるワイヤハーネス12を結束バンド14により結束固定する構造が示されている。
図1に示されているように、電気接続箱10は、略ブロック形状のケース16内に図示しない種々の電気部品やバスバーやコネクタ等が配設されて構成されている。そして、取付脚部18がこのケース16の外面の2箇所から外方に延び出して形成されており、取付脚部18に貫設されたボルト挿通孔20に図示しない固定用ボルトを取り付けることにより、車両等に固定されるようになっている。ここで、ケース16と取付脚部18は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって一体形成されている。
【0020】
図1に示されているように、電気接続箱10のケース16の一角が略ブロック形状に切り欠かれて、凹所部22が形成されている。すなわち、凹所部22は、電気接続箱10のケース16において、ワイヤハーネス12が押し付けられて支持される支持壁部24と、支持壁部24と交わる側壁部26に跨って開口するように構成されているのである。ここで、側壁部26は、相互に異なる方向に延出する第一側壁部26aと第二側壁部26bを含んで構成されている。要するに、凹所部22は、支持壁部24に加えて、第一側壁部26aと第二側壁部26bの両方に跨って開口しているのである。
【0021】
また、
図1及び
図3に示されているように、凹所部22には、凹所部22の側壁部開口、例えば第一側壁部26aの開口28、と対向する底面30の中央部から開口28に向かって片持ち状に突出する略柱形状の係止突起32が設けられている。さらに、係止突起32の突出先端部には抜止突部34が設けられており、基端部よりも拡幅されたブロック形状とされている。なお、係止突起32は、その突出先端部が第一側壁部26aの開口28近傍に位置し且つ第一側壁部26aを越えて外方に突出しないように形成されている。
【0022】
上述の如き構造とされた電気接続箱10に対して、ワイヤハーネス12が、本実施形態の結束バンドの取付構造に従い、結束バンド14を用いて、結束固定される。より詳細には、結束バンド14は、
図2に示されているように、長方形断面の細長い平板形状とされたバンド本体36を備えており、このバンド本体36の長さ方向一方の端部に挿通係止部38が一体形成されている。周知のとおり、結束バンド14は合成樹脂材料で一体成形されており、バンド本体36が湾曲変形可能となっている。また、バンド本体36には、厚さ方向の一方となる片面において、鋸歯状の突起40がバンド本体36の長手方向に多数並んで形成されている。
【0023】
また、結束バンド14の挿通係止部38には、挿通孔42が形成されていると共に、この挿通孔42の内部に突出して係止片44が設けられている。そして、バンド本体36をリング状に湾曲させて先端部を挿通孔42に挿し入れることにより、バンド本体36の突起40に対して係止片44が係止されるようになっている。
【0024】
従って、まず結束バンド14のバンド本体36をワイヤハーネス12の周囲にリング状に配設した後、第一側壁部26aの開口28から凹所部22に挿し入れる。次に、結束バンド14のバンド本体36を、係止突起32の基端部に係止した状態で、結束バンド14を締め付ける。これにより、ワイヤハーネス12と共に結束バンド14が締め付けられて、保持体たる電気接続箱10の支持壁部24に対して被保持体たるワイヤハーネス12が結束バンド14により結束固定されるようになっているのである。
【0025】
このような本実施形態に従う結束バンドの取付構造によれば、電気接続箱10の支持壁部24と側壁部26に跨って開口する凹所部22を設け、かかる凹所部22内に係止突起32を突設するという簡単な構造により、結束バンド14の電気接続箱10への係止部としての係止突起32を構成することができる。それ故、従来構造の如きガイド壁を設けるような構造に比べて、構造を簡素化でき製造性の向上やコストの低減を図ることができるのである。
【0026】
しかも、結束バンド14が係止される係止突起32は、凹所部22の開口を通じて外部に露呈されていることから、係止突起32の視認性が確保されてアクセスが容易となる。それ故、従来構造の如き保持体の支持壁部に設けられた2つの挿通穴に目視確認できない状態で結束バンドの挿し入れを行う場合に比べて、確実且つ速やかに結束バンド14を係止突起32に係止させることができ、取付作業性の向上を図ることができる。
【0027】
さらに、係止突起32の突出先端部に抜止突部34が設けられていることから、車両振動等により、結束バンド14が係止突起32の先端側に変位される場合があっても、抜止突部34に結束バンド14が干渉することにより、結束バンド14の係止突起32からの抜け出しが防止されるので、ワイヤハーネス12の電気接続箱10からの離脱が未然に防げるのである。
【0028】
加えて、結束バンド14を係止させる係止突起32は、支持壁部24と側壁部26に開口する凹所部22に突設されていることから、ワイヤハーネス12の周囲に結束バンド14をリング状に配設した状態で、凹所部22の開口幅の大きさになるよう予め湾曲させたバンド本体36を第一側壁部26aの開口28から挿し入れて係止突起32に係止させることができる。それ故、結束バンド14を湾曲させるために大きなスペースを確保する必要がなく、狭小エリアにも結束バンドの取付構造を設けることができるのである。このように係止突起32に係止させた結束バンド14をワイヤハーネス12と共に結束することにより、容易且つ良好な作業性やスペース効率をもって、電気接続箱10に対してワイヤハーネス12が結束バンド14により固定的に取り付けられるのである。
【0029】
さらに、凹所部22が異なる2方向に延出する第一側壁部26aと第二側壁部26bの両方に跨って開口していることから、係止突起32の視認性やアクセス性が一層向上され、係止突起32への結束バンド14の係止作業を一層速やか且つ確実に行うことができる。
【0030】
次に、
図4を用いて、本発明の他の実施形態としての電気接続箱50について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。すなわち、かかる電気接続箱50は、(i)凹所部52において、第二側壁部26bに対する開口部が、第二側壁部26bから延出された延出壁部54によって塞がれている点に関して、上記実施形態と異なる実施形態を示すものである。
【0031】
本実施形態としての電気接続箱50においても、上記実施形態の電気接続箱10と同様に、本発明の結束バンドの取付構造を有利に適用できる。より詳細には、
図1及び
図4に示されているように、まず結束バンド14のバンド本体36をワイヤハーネス12の周囲にリング状に配設した後、第一側壁部26aの開口28から凹所部52に挿し入れる。次に、結束バンド14のバンド本体36を、係止突起32の基端部に係止した状態で、結束バンド14を締め付ける。これにより、ワイヤハーネス12と共に結束バンド14が締め付けられて、保持体たる電気接続箱50の支持壁部24に対して被保持体たるワイヤハーネス12が結束バンド14により結束固定される。
【0032】
ここで、本実施形態では、電気接続箱50の支持壁部24とそれに交わる1つの第一側壁部26aのみに凹所部52が開口している。これにより、凹所部52はもう1つの第二側壁部26bの延出壁部54によってカバーされることになることから、係止突起32に係止するバンド本体36等が他部材と干渉することを有利に防止できるようになるのである。
【0033】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、本発明の結束バンドの取付構造は、電気接続箱10,50の他、電線保持ブラケットやプロテクタやクリップ等、結束バンド14が装着される保持体に対して、被保持体を結束固定するものであればいずれも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
10,50:電気接続箱(保持体)、12:ワイヤハーネス(被保持体)、14:結束バンド、22,52:凹所部、24:支持壁部、26:側壁部、26a:第一側壁部、26b:第二側壁部、28:開口(側壁部開口)、30:底面、32:係止突起、34:抜止突部、36:バンド本体