(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子部品素子を保持した表面実装型の電子部品用パッケージのベースを、導電性接合材を用いて回路基板に実装する表面実装型の電子部品用パッケージと回路基板との接続構造において、
前記電子部品用パッケージのベースには、回路基板に電気的に接続するための外部接続端子が主面に形成され、
前記外部接続端子上に、前記外部接続端子よりも小さいバンプが形成され、
当該ベースを回路基板に実装した際に生じる前記外部接続端子上の応力が減衰する応力減衰方向に沿った、前記外部接続端子の外周端縁から、前記バンプの外周端縁までの距離を距離dとし、
前記距離dは、0.06mm超0.45mm以下に設定されており、
前記バンプの厚みが19μm以上38μm以下の範囲であり、
前記導電性接合材において生じる最大ミーゼス応力は、5.00E+11Pa以下である表面実装型の電子部品用パッケージと回路基板との接続構造。
電子部品素子を気密封止する請求項2,8,9,10および11のいずれか1つに記載の表面実装型の電子部品用パッケージのベースと、蓋とから構成され、回路基板に実装する表面実装型の電子部品用パッケージ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載の技術では、回路基板にベースが半田により接合されているが、回路基板(ガラスエポキシ材料)とベース(セラミック材料)との熱膨張係数が異なるため、回路基板にベースを実装する際、熱疲労やクリープにより半田クラックが生じ、このクラックによりベースと回路基板との電気的接続が遮断するといった問題がある。なお、ここでいう半田クラックは、ベースに形成された外部接続端子に沿って生じる。
【0007】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、半田の耐久性を向上させて、パッケージの回路基板への電気的接続の遮断を抑えることができるパッケージのベース、およびパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるベースは、電子部品素子を保持し、導電性接合材を用いて回路基板に実装するパッケージのベースにおいて、回路基板に電気的に接続するための外部接続端子が主面に形成され、前記外部接続端子上に、前記外部接続端子よりも小さいバンプが形成され、当該ベースを回路基板に実装した際に生じる前記外部接続端子上の応力が減衰する応力減衰方向に沿った、前記外部接続端子の外周端縁から、前記バンプの外周端縁までの距離を距離dとし、前記距離dは、0.06mm超0.45mm以下に設定されており、最大ミーゼス応力は、5.00E+11Pa以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、前記導電性接合材を用いて回路基板に電気的に接続するための前記外部接続端子が主面に形成され、前記外部接続端子上に前記外部接続端子よりも小さいバンプが形成され、前記応力減衰方向に沿った前記距離dは、0.06mm超0.45mm以下に設定されるので、導電性接合材の耐久性を向上させて、前記パッケージの前記回路基板への電気的接続の遮断を抑えることが可能となる。さらに、最大ミーゼス応力を5.00E+11Pa以下に抑え、最大ミーゼス応力の低減によりクラックの発生量を抑えることが可能となる。
【0010】
すなわち、本発明によれば、前記バンプが前記外部接続端子上に形成されているので、前記導電性接合材にクラックが生じた場合であっても、前記導電性接合材のクラックは、前記ベースに形成された前記外部接続端子に沿って生じずに、前記外部接続端子の外周端縁から前記バンプの外周端縁に向かって生じ、途中でクラックを屈曲させる屈曲点が発生する。このクラックの屈曲点の発生により、クラックそのものの進展を遅らせることが可能となる。また、本発明によれば、前記バンプを形成していない従来技術のものに比べて、前記導電性接合材にクラックが生じた場合であっても前記ベースと前記回路基板との電気的接続が遮断するのを抑えることが可能となり、結果として前記導電性接合材の耐久性を向上させることが可能となる。また、前記バンプを形成していない従来技術のものに比べて、ひずみの方向が正負反転する距離を1.5倍以上伸ばすことができ、その結果、前記導電性接合材のクラック進展速度を抑制することが可能となる。
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる他のベースは、電子部品素子を保持し、導電性接合材を用いて回路基板に実装するパッケージのベースにおいて、回路基板に電気的に接続するための外部接続端子が主面に形成され、前記外部接続端子上に、前記外部接続端子よりも小さいバンプが形成され、当該ベースを回路基板に実装した際に生じる前記外部接続端子上の応力が減衰する応力減衰方向に沿った、前記外部接続端子の外周端縁から、前記バンプの外周端縁までの距離を距離dとし、前記距離dは、0.00mm超0.45mm以下に設定されており、前記外部接続端子の外周端縁と前記バンプの外周端縁とを最短距離で結ぶように通る線を仮想線とし、前記外部接続端子の表面に対する前記仮想線の角度が8°〜18°に設定されたことを特徴とする。
【0012】
この場合、前記外部接続端子の表面に対する前記仮想線の角度が8°以上18°以下に設定されるので、ひずみが正負反転することがなく、ひずみの正負反転による導電性接合材のクラック進展を抑制することが可能となる。
【0013】
前記構成において、前記外部接続端子は、前記主面の四隅に形成され、各前記外部接続端子における前記応力減衰方向は、前記主面の隅から中心に向かう方向であってもよく、本発明は、前記外部接続端子が四隅に形成された4端子の構成にも適用できる。
【0014】
前記構成において、前記外部接続端子は、前記主面の一対の辺それぞれに沿って対向して形成され、各前記外部接続端子における前記応力減衰方向は、前記主面の隅に近い当該外部接続端子の角部から、前記主面の中心点に近い当該外部接続端子の辺に向かう方向であってもよく、本発明は、前記外部接続端子が一対の辺に対向して形成された2端子の構成にも適用できる。
【0015】
前記構成において、前記外部接続端子は、前記主面の対角位置に形成され、各前記外部接続端子における前記応力減衰方向は、前記主面の隅に位置する当該外部接続端子の角部から、前記角部の対角位置にある当該外部接続端子の対角部に向かう方向であってもよい。
【0016】
この場合、各前記外部接続端子が当該ベースの主面に対角配置されるので、当該ベースと回路基板との間で熱膨張係数差が生じても、当該ベースが前記主面の中心点を中心に自転し、その応力を均一に分散させることが可能となる。
【0017】
前記構成において、前記応力減衰方向に沿って前記バンプの厚みが増してもよい。
【0018】
この場合、前記応力が減衰する方向に沿って、前記バンプの厚みが増すので、前記バンプの表面に沿ってクラックを発生させることが可能となり、前記バンプを形成していない従来技術のものに比べて、前記導電性接合材がクラックした場合であっても前記ベースと回路基板との電気的接続が遮断するのを抑えることが可能となり、結果として前記導電性接合材の耐久性を向上させることが可能となる。
【0019】
前記構成において、前記ベースと回路基板との熱膨張係数が異なってもよい。
【0020】
この場合、前記ベースと回路基板との熱膨張係数が異なるので、前記導電性接合材にクラックが発生しやすいが、バンプを形成していない従来技術のものに比べて、前記導電性接合材にクラックが発生した場合であっても前記ベースと回路基板との電気的接続が遮断するのを抑えることが可能となり、結果として前記導電性接合材の耐久性を向上させることが可能となる。
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるパッケージは、電子部品素子を気密封止する本発明にかかるベースと、蓋とから構成され、回路基板に実装することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、上記の本発明にかかるベースと、蓋とから構成され、回路基板に実装するので、導電性接合材の耐久性を向上させて、当該パッケージの回路基板への電気的接続の遮断を抑えることが可能となる。
【0023】
すなわち、本発明によれば、前記バンプが前記外部接続端子上に形成されているので、前記導電性接合材にクラックが生じた場合であっても、前記導電性接合材のクラックは、前記ベースに形成された前記外部接続端子に沿って生じずに、前記外部接続端子の外周端縁から前記バンプの外周端縁に向かって生じ、途中でクラックを屈曲させる屈曲点が発生する。このクラックの屈曲点の発生により、クラックそのものの進展を遅らせることが可能となる。また、本発明によれば、バンプを形成していない従来技術のものに比べて、前記導電性接合材にクラックが生じた場合であっても前記ベースと回路基板との電気的接続が遮断するのを抑えることが可能となり、結果として前記導電性接合材の耐久性を向上させることが可能となる。また、バンプを形成していない従来技術のものに比べて、ひずみの方向が正負反転する距離を1.5倍以上伸ばすことができ、その結果、前記導電性接合材のクラック進展速度を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、半田の耐久性を向上させて、パッケージの回路基板への電気的接続の遮断を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態では、表面実装型圧電振動デバイスとして、水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。なお、本実施形態にかかる水晶振動子は、高温及び低温の過酷な環境下で使用される車載用の電子機器に用いられ、特にECU(Engine Control Unit)などの主幹部分を担う電子機器に用いられる。
【0027】
本実施の形態にかかる水晶振動子1には、
図1に示すように、ATカット水晶からなる水晶振動片2(圧電振動片)と、この水晶振動片2を保持し、水晶振動片2を気密封止するためのベース3(パッケージ11の一部)と、ベース3に保持した水晶振動片2を気密封止するための蓋4(パッケージ11の一部)と、が設けられている。
【0028】
この水晶振動子1では、ベース3と蓋4とからパッケージ11が構成され、ベース3と蓋4とが接合材12により接合されて、気密封止された内部空間が形成される。この内部空間では、水晶振動片2が、ベース3に導電性接合材(図示省略)を用いて電気機械的に接合されている。ここで用いる導電性接合材には、導電性樹脂接着剤や金属バンプ、金属メッキバンプ、ろう材等が用いられる。
【0029】
次に、この水晶振動子1の各構成について
図1〜3を用いて説明する。
【0030】
−ベース3−
ベース3は、セラミック材料(例えばアルミナセラミック材料)からなり、
図1に示すように、底部と、ベース3の一主面31の外周に沿って底部から上方に延出した堤部と、から構成された箱状体に成形されている。このベース3は、セラミックの一枚板上にセラミックの直方体を積層して上部が開口した凹状に一体焼成してなる。
【0031】
ベース3の堤部の天面は、蓋4との接合面であり、この天面に、ガラスからなる封止部材(
図1に示す符号12参照)が形成されている。また、ベース3には、底部と堤部とによって囲まれたキャビティ33が形成され、このキャビティ33に水晶振動片2が配される。
【0032】
また、
図1,2に示すように、ベース3の側面34にキャスタレーション35が形成され、ベース3の裏面となる他主面32の四つの隅36に位置する。これらキャスタレーション35には、
図1に示すように、側面34から他主面32にかけて(キャスタレーション35の下半分において)配線パターン52(下記参照)が形成されている。
【0033】
また、ベース3には、
図1に示すように、水晶振動片2の励振電極(図示省略)それぞれと電気機械的に接合する2つの電極パッド51と、回路基板81と電気的に接続する2つの外部接続端子6と、2つの電極パッド51と2つの外部接続端子6とをそれぞれ導通させる配線パターン52とが、形成されている。これら電極パッド51と外部接続端子6と配線パターン52とによりベース3の電極5が構成される。電極パッド51はベース3の一主面31に形成され、外部接続端子6はベース3の他主面32に形成され、配線パターン52はベース3の一主面31、他主面32、およびキャスタレーション35に形成されている。これら電極パッド51と外部接続端子6と配線パターン52とは、WやMo等によるメタライズ膜の上面に、NiからなるNiメッキ層、AuからなるAuメッキ層の各層が形成されたものからなる。
【0034】
また、2つの外部接続端子6は、
図2に示すように、ベース3の他主面32の四つの隅36のうち対角位置に形成されている。2つの外部接続端子6は、同一形状からなり、直方体(3.2mm×2.5mm×0.85mm)に形成され、長辺方向に対して向かい合う対向領域61と、長辺方向に対して向かい合わない無対向領域62とからそれぞれ構成される。また、2つの外部接続端子6は、ベース3の他主面32の中心点38に対して点対称に配置され、無対向領域62が他主面32の隅36に位置し、対向領域61が、他主面32の一対の短辺37の中央位置371付近に位置する。これら外部接続端子6上には、
図1〜3に示すように、WやMo等によるメタライズ膜のバンプ7がそれぞれ形成されている。バンプ7は、外部接続端子6よりも平面積の小さい外部接続端子6と相似の形状からなる。本実施の形態では、バンプ7は、外部接続端子6に比べて対角線の平面視寸法が約0.2mm小さい外部接続端子6と相似の形状からなり、外部接続端子6上にバンプ7を重畳させた時に外部接続端子6の内側にバンプ7が配される。また、外部接続端子6の表面63と、バンプ7の表面71とは、平坦面であり、ベース3の他主面32と同じ方向とされる(同じ面方向である)。
【0035】
−蓋4−
蓋4は、セラミック材料(例えばアルミナセラミック材料)からなり、
図1に示すように、平面視矩形状の直方体の一枚板に成形されている。この蓋4の下面には、ベース3と接合するためのガラス封止材等の封止部材(
図1に示す符号12参照)が形成されている。この蓋4をベース3に配して不活性ガスの加熱炉による溶融接合などの手法により内部空間を気密封止することで、蓋4とベース3とによる水晶振動子1のパッケージ11が構成される。
【0036】
−水晶振動片2−
水晶振動片2は、ATカット水晶片の基板からなり、
図1に示すように、その外形は板状の直方体となっている。
【0037】
この水晶振動片2には、励振を行う一対の励振電極(図示省略)と、ベース3の電極パッド51と電気機械的に接合する一対の端子電極(図示省略)と、一対の励振電極を一対の端子電極に引き出す引出電極(図示省略)と、が形成されている。
【0038】
一対の励振電極は、両主面21,22に対向して形成され、例えば、基板側からCr、Auの順に積層して形成されたCr−Au膜により構成される。一対の端子電極は、他主面22に形成され、例えば、励振電極と同様に、基板側からCr、Auの順に積層して形成されたCr−Au膜により構成される。引出電極は、対向せずに両主面21,22や側面23に形成され、例えば、励振電極と同様に、基板側からCr、Auの順に積層して形成されたCr−Au膜により構成される。
【0039】
上記した構成からなる水晶振動子1では、ベース3と水晶振動片2とを、導電性接合材を介して電気機械的に接合する。この接合により、水晶振動片2の励振電極を、引出電極、端子電極、導電性接合材を介してベース3の電極パッド51に電気機械的に接合し、ベース3に水晶振動片2を搭載する。そして、水晶振動片2を搭載したベース3に蓋4を配し、ベース3と蓋4との封止部材(
図1に示す符号12参照)を用いてベース3と蓋4とを電気機械的に接合し、水晶振動片2を気密封止した水晶振動子1を製造する。
【0040】
水晶振動片2を気密封止した水晶振動子1を、回路基板81に搭載し、
図1,3に示すように、半田82(導電性接合材)を介して回路基板81に接合して、ベース3に形成した外部接続端子6と回路基板81とを電気的に接続する。
【0041】
ところで、上記した回路基板81に水晶振動子1を接合した際、厚み方向のひずみが半田に発生する。
【0042】
図1に示す水晶振動子1の場合、ひずみの原因となる応力は、ベース3の他主面32の隅36に位置するキャスタレーション35近傍の外部接続端子6の角部64で高く、この応力は、角部64から、角部64の対角位置にある対角部65に向かって減衰する(以下、ベース3の主面上における、応力が減衰する方向を応力減衰方向Aという)。
【0043】
そこで、上記の本実施の形態にかかる水晶振動子1を用いて、応力減衰方向Aに沿った、外部接続端子6の外周端縁66から、バンプ7の外周端縁72までの距離(
図3に示す矢印参照)を距離dとし、距離dを0.01mm〜0.40mmとした時のひずみを計算した。その結果を
図4,5に示す。
図4に示す計算では、バンプ7の厚みを38μmに設定し、
図5に示す計算では、バンプ7の厚みを19μmに設定している。
【0044】
図4に示すようにバンプ7の厚みを38μmに設定した場合、距離dが0.00mm超0.12mm以下であれば、ひずみは常に正であり、ひずみが反転することはない。そのため、距離dを0.12mm以下に設定した場合、ひずみが正負反転することによる半田のクラック進展を抑制することができる。また、距離dが0.06mm以上0.12mm以下であれば、ひずみが±0.0005以下となり、ひずみ自体を抑えることができる。そのため、距離dを0.06mm以上0.12mm以下に設定した場合、ひずみによるクラックの発生量を抑えることができる。特に、距離dが0.12mmである時に、ひずみの正負反転がなく、距離dが長く設定されるので好ましい。
【0045】
図5に示すようにバンプ7の厚みを19μmに設定した場合、距離dが0.00mm超0.12mm以下であれば、ひずみは常に正であり、ひずみが反転することはない。そのため、距離dを0.12mm以下に設定した場合、ひずみが正負反転することによる半田のクラック進展を抑制することができる。また、距離dが0.06mm以上0.12mm以下であれば、ひずみが±0.0005以下となり、ひずみ自体を抑えることができる。そのため、距離dを0.06mm以上0.12mm以下に設定した場合、ひずみによるクラックの発生量を抑えることができる。特に、距離dが0.12mmである時に、ひずみの正負反転がなく、距離dが長く設定されるので好ましい。
【0046】
上記のように、
図4,5から、バンプ7の厚みに関係なく、距離dに対する厚み方向の応力は同様の傾向を示すことが分かる。そのため、バンプ7の厚みに関係なく、距離dが0.12mm以下に設定されていることが好ましく、さらに、距離dが0.06mm以上0.12mm以下に設定されていることがさらに好ましい。なお、応力は、バンプ7を形成していない従来技術のものに比べて、バンプ7を形成した本実施の形態の方が、正負反転する距離を1.5倍以上伸ばすことができる。そのため、バンプ7を形成していない従来技術では、ひずみの正負反転による不具合が顕著となる。なお、ここでいうひずみによる不具合について、一般的にひずみが正となる領域(外部接続端子6の外周端縁66からの距離に関係)おいてクラックが発生および進展する。このひずみの正は、温度が反転すると負に反転する。一方、温度が反転する前にひずみが負となっていた領域は、温度が反転することで正となり、正となった領域においてクラックが進展する。このひずみの正となる領域と負となる領域との距離が短いほど、冷熱衝撃において温度が反転した際にクラックが特に進展し、クラックの進展速度が速くなる。このように、このひずみの正負の反転が、従来技術の不具合に関係する。
【0047】
次に、距離dを0.01mm以上0.45mm以下とした時の最大ミーゼス応力を計算した。その結果を
図6,7に示す。
図6に示す計算では、バンプ7の厚みを38μmに設定し、
図7に示す計算では、バンプ7の厚みを19μmに設定している。
【0048】
図6に示すようにバンプ7の厚みを38μmに設定した場合、距離dが0.06mm以上0.45mm以下であれば、最大ミーゼス応力が5.00E+11Pa以下に収まることが分かり、この範囲内であれば最大ミーゼス応力が小さいことが分かり、その結果、最大ミーゼス応力の低減によりクラックの発生量を抑えることができる。特に、距離dが0.12mmの時に、最大ミーゼス応力を最小に抑えることができる。
【0049】
図7に示すようにバンプ7の厚みを19μmに設定した場合、距離dが0.06mm以上0.45mm以下であれば、最大ミーゼス応力が5.00E+11Pa以下に収まることが分かり、この範囲内であれば最大ミーゼス応力が小さいことが分かり、その結果、最大ミーゼス応力の低減によりクラックの発生量を抑えることができる。特に、距離dが0.12mmの時に、最大ミーゼス応力を最小に抑えることができる。
【0050】
本実施の形態にかかる水晶振動子1は、高温及び低温の過酷な環境下で使用される車載用の電子機器に用いられるので、温度変化を試験対象とする冷熱衝撃試験(温度変化試験)を行った。この冷熱衝撃試験は、予め設定した複数の温度下において水晶振動子1(パッケージ11)が回路基板81へ電気的接続されているかの否かの試験である。具体的には、高温(+125℃)と低温(−55℃)とにおいて試験を行い、高温(+125℃)から低温(−55℃)、もしくは低温から高温に温度変化させたことを1サイクルとし、何サイクルまで水晶振動子1(パッケージ11)が回路基板81へ電気的接続されているかの試験を行った。この冷熱衝撃試験によれば、
図6,7に示す距離dが0.45mmである時、2000サイクルを満たすことができた。また、
図6,7に示す距離dが0.12mmである時、温度変化を試験対象とする冷熱衝撃試験において3000サイクルを満たすことができた。
【0051】
上記のように、
図6,7から、バンプ7の厚みに関係なく、距離dに対する厚み方向の最大ミーゼス応力は同様の傾向を示すことが分かる。そのため、バンプ7の厚みに関係なく、距離dが0.06mm以上0.45mm以下に設定されていることが好ましい。また、上記のように、距離dが0.12mmの時に、最大ミーゼス応力を最小に抑えることができる。
【0052】
図4〜7に示すことから、特に、距離dが0.06mm以上0.12mm以下に設定されることが好適であり、この場合、ひずみが正負反転することがなく、ひずみの正負反転による半田82のクラック進展を抑制することができ、さらに、最大ミーゼス応力を5.00E+11Pa以下に抑え、最大ミーゼス応力の低減によりクラックの発生量を抑えることができる。また、距離dが0.12mmである時に、ひずみを最小に抑え、さらに最大ミーゼス応力を最小に抑えることができる。
【0053】
次に、バンプ7の厚さを可変させて、バンプ7の厚さに対して、ひずみが反転する距離dを測定した。
【0054】
バンプ7の厚さが38μmの時に、距離dは0.12mmとなり、外部接続端子6の外周端縁66とバンプ7の外周端縁72とを通る線を仮想線Lとした場合、外部接続端子6の表面に対する仮想線Lの角度(以下、バンプ角度という)が18°となる。また、バンプ7の厚さが19μmの時に、距離dは0.11mmとなり、バンプ角度が10°となる。また、バンプ7の厚さが0.013mmの時に、距離dは0.0922mmとなり、バンプ角度が8°となる。このように、距離dが0.0922mm以上0.12mm以下の時、バンプ角度が8°以上18°以下に設定されることが好ましく、この範囲の距離dとバンプ角度との関係によれば、ひずみが正負反転することがなく、ひずみの正負反転による半田のクラック進展を抑制するのに好適である。
【0055】
上記の本実施の形態にかかる水晶振動子1によれば、半田82を用いて回路基板81に電気的に接続するための外部接続端子6がベース3の他主面32に形成され、外部接続端子6上に外部接続端子6よりも小さいバンプ7が形成され、ひずみが減衰する方向に沿った距離dは、0.00mm超0.45mm以下に設定されるので、半田82の耐久性を向上させて、パッケージ11の回路基板81への電気的接続の遮断を抑えることができる。
【0056】
すなわち、本実施の形態にかかる水晶振動子1によれば、バンプ7が外部接続端子6上に形成されているので、半田82にクラックが生じた場合であっても、半田82のクラックは、ベース3に形成された外部接続端子6に沿って生じずに、外部接続端子6の外周端縁66からバンプ7の外周端縁72に向かって(
図3に示す矢印参照)生じ、途中でクラックを屈曲させる屈曲点が発生する。このクラックの屈曲点の発生により、クラックそのものの進展を遅らせることができ、バンプ7を形成していない従来技術のものに比べて、半田82にクラックが生じた場合であってもベース3と回路基板81との電気的接続が遮断するのを抑えることができ、結果として半田82の耐久性を向上させることができる。また、バンプ7を形成していない従来技術のものに比べて、ひずみの方向が正負反転する距離を1.5倍以上伸ばすことができ、その結果、半田82のクラック進展速度ひずみの正負反転によって進展する半田82のクラックを抑制することができる。
【0057】
また、本実施の形態にかかる水晶振動子1のパッケージ11は、上記の本実施の形態にかかるベース3と、蓋4とから構成され、回路基板81に実装するので、上記の本実施の形態にかかるベース3による作用効果を有する。
【0058】
また、外部接続端子6は、ベース3の他主面32の四隅36のうち対角位置に形成され、各外部接続端子6における応力減衰方向Aは、ベース3の他主面32の隅36に位置する外部接続端子6の角部64から、角部64の対角位置にある対角部65に向かう方向である。すなわち、本実施の形態によれば、各外部接続端子6がベース3の他主面32に対角配置されるので、ベース3と回路基板81との間で熱膨張係数差が生じても、ベース3が他主面32の中心点38を中心に自転し、その応力を均一に分散させることができる。
【0059】
また、ベース3(セラミック材料)と回路基板81(ガラスエポキシ材料)との熱膨張係数が異なるので、半田82にクラックが発生しやすいが、バンプ7を形成していない従来技術のものに比べて、半田82がクラックした場合であってもベース3と回路基板81との電気的接続が遮断するのを抑えることができ、結果として半田82の耐久性を向上させることができる。すなわち、上記した本実施の形態による作用効果は、熱膨張係数が異なるベース3と回路基板81とを用いた場合、特に顕れる。
【0060】
なお、本実施の形態では、水晶振動片2にATカット水晶片を用いているが、これに限定されるものではなく、音叉型水晶振動片などの他の形態の水晶振動片であってもよい。
また、本実施の形態では、ベース3の封止部材として、ガラスを用いているが、これに限定されるものではなく、蓋4が金属蓋である場合、封止部材12としてWやMo等によるメタライズ膜の上面に、NiからなるNiメッキ層、AuからなるAuメッキ層の各層が形成されたものを用いたり、さらにこれら各層の上部に金属リングが形成されたものを用いても良い。
【0061】
また、本実施の形態では、蓋4としてセラミック材料を用いているが、これに限定されずに、ガラス材料や金属材料であってもよい。また、ベース3と蓋4との気密封止の手法としては、溶融接合に限らず、各種材料(ベース3や蓋4、封止部材12等)に応じて、溶接接合、ろう接などの他の手法を用いることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、外部接続端子6の平面視寸法を1.2mm×1.5mmとして、バンプ7の平面視寸法を1.0mm×1.3mmとしているが、これに限定されるものではなく、距離dが0.01mm〜0.45mmの範囲内に設定可能であれば、外部接続端子6およびバンプ7は任意の寸法に設定可能である。
【0063】
また、本実施の形態では、2つの外部接続端子6がベース3の他主面32の四隅のうち対角位置に形成されているが、これに限定されるものではなく、
図8に示すように、ベース3の他主面32の四隅すべてに外部接続端子6が形成されてもよい。この形態は、外部接続端子6が四隅36に形成された4端子の形態であり、各外部接続端子6における応力減衰方向Aは、ベース3の他主面32の隅36から中心(中心点38)に向かう方向である(
図8に示す矢印参照)。
【0064】
また、本実施の形態では、2つの外部接続端子6がベース3の他主面32の四隅36のうち対角位置に形成されているが、これに限定されるものではなく、
図9に示すように、ベース3の他主面32の一対の短辺37それぞれに沿って対向して形成されてもよい。
【0065】
図9に示す形態は、ベース3の一対の短辺37に沿って対向して形成された2端子の形態であり、短辺37の中央位置371にキャスタレーションが形成され、各外部接続端子6における応力減衰方向Aは、ベース3の他主面32の隅36に近い外部接続端子6の角部64から、角部64が形成された外部接続端子6の辺67に対向する対向辺68の中央位置69に向かう方向である(
図9に示す矢印参照)。すなわち、
図9に示す応力減衰方向Aは、他主面32の隅に近い当該外部接続端子6の角部64から、他主面32の中心点38に近い当該外部接続端子6の辺(対向辺68)に向かう方向とされる。
【0066】
この
図9に示す形態によれば、各外部接続端子6がベース3の他主面32に対称配置されるので、ベース3の他主面32における応力の発生を抑制することができ、熱膨張係数差の影響を緩和させることができる。その結果、クラックの発生そのものを抑えることができる。
【0067】
また、2つの外部接続端子6がベース3の他主面32の四隅36のうち対角位置に形成されているが、これに限定されるものではなく、
図10に示すように、ベース3の他主面32の一対の長辺39それぞれに沿って対向して形成されてもよい。
【0068】
図10に示す形態では、ベース3の一対の長辺39に沿って対向して形成された2端子の形態であり、長辺39の中央位置391にキャスタレーションが形成され、各外部接続端子6における応力減衰方向Aは、ベース3の他主面32の隅36に近い外部接続端子6の角部64から、角部64が形成された外部接続端子6の辺67に対向する対向辺68の中央位置69に向かう方向である(
図10に示す矢印参照)。すなわち、
図10に示す応力減衰方向Aは、他主面32の隅に近い当該外部接続端子6の角部64から、他主面32の中心点38に近い当該外部接続端子6の辺(対向辺68)に向かう方向とされる。
【0069】
この
図10に示す形態によれば、
図9に示す短辺対向の2端子形態による効果に加えて、熱膨張係数差の影響が大きなベース3の他主面32の長辺方向の応力の発生をより効果的に抑制することができ、ベース3の他主面32の短辺方向へ熱膨張係数差の影響を緩和させることができる。その結果、クラックの発生そのものをさらにより一層抑えることができる。
【0070】
上記の
図9,10に示す形態では、外部接続端子6の寸法がベース3の辺(短辺37または長辺39)の半分を超える長さに設定されている。このように、外部接続端子6の寸法がベース3の辺(短辺37または長辺39)の寸法に対して70%以上の比率に設定することで、対象となる辺方向に対する応力の発生を抑制することができる。
【0071】
また、本実施の形態では、外部接続端子6の表面63とバンプ7の表面71とが、平坦面であり、同じ方向に向いているが、外部接続端子6とバンプ7との形状はこれに限定されるものではなく、バンプ7の形状について、応力減衰方向Aに沿ってバンプ7の厚みが増してもよい。具体的に、バンプ7の表面71が外部接続端子6の表面63に対してテーパー状に形成されてもよく、また、バンプ7の表面71が曲面形成されてもよい。この場合、応力減衰方向Aに沿ってバンプ7の厚みが増すので、外部接続端子6の表面63に沿ってクラックを発生させることなく、バンプ7の表面71に沿ってクラックを発生させることができる。そのため、バンプ7を形成していない従来技術のものに比べて、半田82がクラックした場合であってもベース3と回路基板81との電気的接続が遮断するのを抑えることができ、結果として半田82の耐久性を向上させることができる。
【0072】
また、本実施の形態では、水晶振動片2は板状の直方体に成形されているが、これに限定されるものではなく、励振電極を形成する振動する領域の厚みを薄くし、高周波化に対応させてもよい。
【0073】
また、本実施の形態では、外部接続端子6が直方体に形成され、バンプ7が外部接続端子6上に直方体に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図11に示すように、外部接続端子6が平面視H字形状に形成され、外部接続端子6上に2つの直方体のバンプ7が形成されてもよい。この
図11に示す2つの直方体のバンプ7は、X方向(ベース3の長手方向であり、外部接続端子6の短手方向)に沿って並び、同一方向に向いている。また、これら2つのバンプ7は、応力減衰方向Aの線上に存在する。この
図11に示す外部接続端子6とバンプ7との構成によれば、応力減衰方向Aの線上に2つのバンプ7が存在するので、上記の本実施の形態に比べて、半田82の耐久性をさらに向上させることができる。すなわち、
図11に示す形態によれば、2つのバンプ7が、外部接続端子6上であって、応力減衰方向Aの線上に存在するので、半田82にクラックが生じた場合であっても、半田82のクラックは、ベース3に形成された外部接続端子6に沿って生じずに、外部接続端子6の外周端縁66からバンプ7の外周端縁72に向かって生じ(
図3参照)、途中でクラックを屈曲させる屈曲点が2つ発生する。この2つのクラックの屈曲点の発生により、クラックそのものの進展をさらに遅らせることができ、1つのバンプ7を形成した上記の実施の形態に比べて、半田82にクラックが生じた場合であってもベース3と回路基板81との電気的接続の遮断をさらに抑えることができる。
【0074】
また、
図11に示す形態とは異なる形態として、
図12に示すように、外部接続端子6が直方体に形成され、外部接続端子6上に2つの直方体のバンプ7が形成されてもよい。この
図11に示す2つの直方体のバンプ7は、X方向(ベース3の長手方向であり、外部接続端子6の短手方向)に沿って並び、同一方向に向いている。これら2つのバンプ7は、応力減衰方向Aの線上に存在する。この
図12に示す形態も、
図11に示す形態と同様の作用効果を有する。
【0075】
また、
図11に示す形態とは異なる形態として、
図13に示すように、外部接続端子6が直方体に形成され、外部接続端子6上に3つの直方体のバンプ7が形成されてもよい。この
図13に示す3つの直方体のバンプ7は、Y方向(ベース3の短手方向であり、外部接続端子6の長手方向)に沿って並び、同一方向に向いている。これら3つのバンプ7は、応力減衰方向Aの線上に存在する。この
図13に示す形態では、
図11に示す形態に比べて、さらにバンプ7の数が多いので、半田82の耐久性をさらに向上させることができる。
【0076】
また、本実施の形態では、外部接続端子6上に、1層からなるバンプ7が形成(積層)されているが、これに限定されるものではなく、複数層からなるバンプ7が形成されてもよい。特に、
図14に示すように、断面視階段状に形成されていることが好ましい。この
図14に示すバンプ7によれば、外部接続端子6上に、2層のバンプ73,74が順に形成されている。これらバンプ73,74は、応力減衰方向A(
図14では仮想線L参照)の線上に沿って順にそれぞれの外周端縁が配されてなる。そのため、バンプ73,74は、
図14に示すように断面視階段状に形成されている。この
図14に示すバンプ73,74を外部接続端子6上に形成することで、上記の実施の形態に比べて、クラックの仮想線L上に沿って生じる距離を長くすることができ、クラックの外部接続端子6に沿って生じるクラックの進展をさらに遅らせることができる。
【0077】
また、上記の実施の形態では、
図3や
図14に示すように、バンプ7,73,74の外周端縁72が直角に成形されているが、これに限定されるものではなく、バンプ7,73,74の外周端縁72がテーパ状に成形されたり、曲面に成形されてもよい。
【0078】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0079】
また、この出願は、2010年4月1日に日本で出願された特願2010−085232号に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。