特許第5910726号(P5910726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910726
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】レーザー彫刻用樹脂印刷原版
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/12 20060101AFI20160414BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20160414BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20160414BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20160414BHJP
   B41C 1/05 20060101ALI20160414BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   B41N1/12
   C08F2/00 C
   B32B27/30 102
   B32B27/18 Z
   B41C1/05
   G03F7/00
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-502935(P2014-502935)
(86)(22)【出願日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2014050954
(87)【国際公開番号】WO2014129243
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2014年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-30778(P2013-30778)
(32)【優先日】2013年2月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】油 努
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−65115(JP,A)
【文献】 特開2001−272776(JP,A)
【文献】 特開2012−30368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/12
B32B 27/18
B32B 27/30
B41C 1/05
C08F 2/00
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および支持体上に樹脂層を有し、
樹脂層が
(A)反応性基を側鎖に有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、
(B)塩基性窒素を有するポリアミド、
(C)5〜7員環を有し、かつ重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物、および
(D)光重合開始剤、を含有するレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
【請求項2】
化合物(C)の分子量が300以下である請求項1に記載のレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
【請求項3】
化合物(C)が、水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基から選ばれる1種以上の官能基を有することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
【請求項4】
化合物(C)の5〜7員環が複素環を含む請求項1〜3いずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
【請求項5】
化合物(C)の5〜7員環が複素脂肪族環を含む請求項4に記載のレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
【請求項6】
化合物(B)がピペラジン環を含む請求項1〜5のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
【請求項7】
請求項1〜いずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂印刷原版を架橋するレーザー彫刻用樹脂印刷版架橋原版の製造方法
【請求項8】
請求項1〜いずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂印刷原版を架橋してレーザー彫刻用樹脂印刷版架橋原版を得る工程、および
前記架橋原板にレーザーをパターン照射し、樹脂層を彫刻しレリーフを得る工程
を有する印刷版の製造方法。
【請求項9】
請求項の工程の後、水または水を含む液体でレリーフをリンスする工程を有する印刷版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザー彫刻用樹脂印刷原版に関するものであり、特に耐刷力が向上し、印刷品質の向上したレーザー彫刻用樹脂印刷原版および印刷版の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面に凹凸を形成してレリーフ版を形成する方法としては、感光性エラストマー組成物あるいは感光性樹脂組成物を用い、原画フィルムを介してこれら組成物を紫外光で露光し、感光性樹脂組成物の画像となる部分を選択的に硬化させ、一方感光性樹脂組成物の未硬化部を現像液を用いて除去する方法、いわゆる「アナログ製版」が良く知られている。
【0003】
アナログ製版は、多くの場合、銀塩材料を用いた原画フィルムを必要とするため、原画フィルムの製造時間およびコストを要する。さらに、原画フィルムの現像に化学的な処理が必要で、かつ現像廃液の処理をも必要とすることから、環境衛生上の不利を伴う。
【0004】
アナログ製版に伴う課題を解決する手法として、感光性樹脂層上に、その場で(in situ) 画像マスク形成可能なレーザー感応式のマスク層要素を設けた樹脂凸版印刷原版が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの原版の製版方法は、デジタルデバイスで制御された画像データに基づいてレーザー照射を行い、マスク層要素から画像マスクをその場で形成し、その後はアナログ製版と同様に、画像マスクを介して紫外光で露光し、あるいは感光性樹脂層 および画像マスクを現像除去する製版方法で、樹脂凸版の業界では「CTP方式」と称されている。CTP方式は、上述した原画フィルムの製造工程に関わる課題を解決しているが、感光性樹脂層の現像で発生する廃液の処理に関する課題がある。
【0005】
現像工程および現像廃液に関する課題を解決する別の手段として、レーザーによる直接彫刻製版、いわゆる「レーザー彫刻」が多く提案されている。レーザー彫刻は、文字通りレーザーで彫刻することにより、レリーフとなる凹凸を形成する方法で、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができるという利点がある。例えば、抜き文字部分を印刷物に再現する部位を深く彫刻したり、微細網点を再現する部分では印圧に負けて網点が倒れないようにショルダーをつけた彫刻をすることができる。
【0006】
特許文献3〜5には、レーザー彫刻可能な樹脂凸版原版、あるいはレーザー彫刻によって得られた樹脂凸版が開示されている。特許文献8 には、ポリマーとして部分ケン化ポリ酢酸ビニルおよび重合可能な二重結合を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物が例示されている。
【0007】
しかし、部分ケン化ポリ酢酸ビニルおよびその誘導体は、印刷中の繰り返しの衝撃力に対して脆く、印刷中にレリーフにクラックが発生するなどの問題が発生していた。
【0008】
上述の問題を解決する方法として、例えば、特許文献6、7では、ポリ酢酸ビニル誘導体と塩基性窒素を有するポリアミドを配合することで上記問題を解決することが提案されている。しかしながら、この方法においてもレリーフを印刷機の版胴に貼り付ける際の引っ張り張力がかかった状態での印刷中の繰り返しの衝撃力に対するレリーフのクラック発生に対しては、依然として満足できるレベルではなかった。
【0009】
一方、印刷版用感光性樹脂組成物に用いる反応性基を、部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖に導入する方法が知られている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表平7−509789(欧州公開第0654151号)
【特許文献2】特開平9−171247号公報
【特許文献3】特開平11−170718号公報(第4頁)
【特許文献4】特開2000−168253号公報(第2−6頁)
【特許文献5】特開2001−328365号公報(第2−9頁)
【特許文献6】特開平11−65115号公報
【特許文献7】特開2001−272776号公報
【特許文献8】特開2006−2061号公報
【特許文献9】特開2007−79494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて、レーザー彫刻により再現性に優れたレリーフを形成することができ、しかも、強靱且つ耐刷性が向上したレーザー彫刻用樹脂印刷原版を提供することを目的とする。さらにレーザー彫刻によって、彫刻カスがレリーフに付着したとき、その彫刻カスの除去性に優れたレーザー彫刻用樹脂印刷原版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)支持体および支持体上に樹脂層を有し、
樹脂層が
(A)反応性基を側鎖に有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル、
(B)塩基性窒素を有するポリアミド、
(C)5〜7員環を有し、かつ重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物、および
(D)光重合開始剤、を含有するレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
【0013】
そして、原版の好ましい態様として、本発明では以下の構成のものを提供する。
(2)化合物(C)の分子量が300以下である前記レーザー彫刻用樹脂印刷原版。
(3)化合物(C)が、水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基から選ばれる1種以上の官能基を有することを特徴とする前記いずれかのレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
(4)化合物(C)の5〜7員環が複素環を含む前記いずれかのレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
(5)化合物(C)の5〜7員環が複素脂肪族環を含む前記レーザー彫刻用樹脂印刷原版。
(6)化合物(A)が、部分ケン化ポリ酢酸ビニルと酸無水物とを反応させてカルボキシル基をポリマー側鎖に導入し、そのカルボキシル基に不飽和エポキシ化合物を反応させることにより反応性基を導入した構造を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを含む前記いずれかのレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
(7)化合物(A)が
<酢酸ビニルと、不飽和カルボン酸もしくはその塩、または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体>をケン化して得られるケン化度60〜90モル%のアニオン変性ポリビニルアルコールに、不飽和エポキシ化合物を付加させた構造である、前記いずれかのレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
(8)化合物(A)が部分ケン化ポリ酢酸ビニルと、N−メチロール基を有するアクリル系化合物との反応により得られる構造を有する前記いずれかのレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
(9)化合物(B)がピペラジン環を含む前記いずれかのレーザー彫刻用樹脂印刷原版。
【0014】
さらに上記いずれかのレーザー彫刻用樹脂印刷原版を利用したものとして、本発明では以下の構成のものも提供する。
(10)いずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂印刷原版を架橋して得られたレーザー彫刻用樹脂印刷版架橋原版。
(10)’ 前記いずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂印刷原版を架橋するレーザー彫刻用樹脂印刷版架橋原版の製造方法。
(11)前記いずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂印刷原版を架橋してレーザー彫刻用樹脂印刷版架橋原版を得る工程、および
前記架橋原板にレーザーをパターン照射し、樹脂層を彫刻しレリーフを得る工程
を有する印刷版の製造方法。
(12)前記印刷版の製造方法において、これら工程の後、水または水を含む液体でレリーフをリンスする工程を有する印刷版の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レリーフを印刷機の版胴に貼り付ける際の引っ張り張力がかかった状態での印刷において、繰り返しの衝撃を受けた場合であっても、レリーフのクラックが発生しにくい印刷版を得ることができる。またさらにレーザー彫刻によって、彫刻カスがレリーフに付着したときでも、その彫刻カスの除去性に優れる印刷版が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
樹脂層が含有する成分(A)は反応性基を側鎖に有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルである。ここで反応性基とは、ラジカル反応により重合し、変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルを架橋しうる官能基のことである。一般に、このような官能基としては、通常はエチレン性二重結合、ビニル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
【0018】
このような反応性基を部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖に導入する方法として、以下の方法が例示される。
【0019】
部分ケン化ポリ酢酸ビニルと酸無水物とを反応させ、部分ケン化ポリ酢酸ビニルの水酸基を起点としてカルボキシル基をポリマー側鎖に導入する。そのカルボキシル基に、グリシジルメタクリレートに代表される不飽和エポキシ化合物を反応させることにより反応性基を導入する。他の方法としては酢酸ビニルと不飽和カルボン酸またはその塩との共重合体、または酢酸ビニルと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を部分ケン化し、このポリマーのもつカルボキシル基と不飽和エポキシ化合物とを反応させるものである。なかでも前者の方法で得られた部分ケン化ポリ酢酸ビニルが本発明のレーザー彫刻によるレリーフ再現性に優れる効果が顕著に現れることから好ましく使用される。
【0020】
このような反応性基は、化合物(A)中、0.08〜0.72モル/kg存在することが好ましく、さらに好ましくは0.12〜0.36モル/kgである。反応性基が少ないと、印刷時やリンス時にレリーフ欠けが生じやすくなる。反応性基が多すぎると、架橋後の樹脂の架橋密度が高くなり、柔軟性に乏しく、割れやすい樹脂層となることが多い。このようにして得られた反応性基を有する変性部分ケン化ポリ酢酸ビニル(A)として好ましいものは、少なくとも次の(I)、(II)、(III)の構造単位を有するものである。
【0021】
【化1】
【0022】
(上式(I)〜(III)において、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは末端に不飽和炭素−炭素結合を有する官能基である。)
化合物(A)の数平均重合度は300〜2000の範囲が好ましく、500〜1000がより好ましい。数平均重合度が小さすぎると印刷時に使用される水性インキに対する耐水性が低下する傾向がある。また、数平均重合度が大きすぎると、支持体上に樹脂層を設ける製造工程で樹脂層の溶液粘度が非常に高くなり、樹脂層の成型が困難となる傾向がある。
【0023】
反応性基を部分ケン化ポリ酢酸ビニルに導入する他の方法としては、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとN−メチロール基を有するアクリル系化合物との反応によって、部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖に反応性基を導入する方法である。N−メチロール基を有するアクリル系化合物の配合量は、部分ケン化ポリ酢酸ビニル100質量部に対し、2〜40質量部が好ましく、5〜30質量部の範囲がより好ましい。N−メチロール基を有するアクリル系化合物の配合量が40質量部より多いと、架橋後の樹脂の架橋密度が高くなり、柔軟性に乏しく割れやすい樹脂層となることが多い。また、2質量部より少ないと、反応性基が反応することで改善されるリンス時のレリーフ欠け防止などの効果が発現しにくくなる傾向がある。
【0024】
前記N−メチロール基を有するアクリル系化合物としては、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチル−N−メチロールアクリルアミド、N−メチル−N−メチロールメタクリルアミド、N−エチル−N−メチロールアクリルアミド、N−エチル−N−メチロールメタクリルアミドが例示される。特にN−メチロールアクリルアミドやN−メチロールメタクリルアミドが好ましい。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明の化合物(B)である塩基性窒素を有するポリアミドは、化合物(A)の配合によって生じることの多かったリンス時のレリーフ欠けや印刷時のレリーフ欠けの問題を改良できるものである。塩基性窒素を有するポリアミドは、主鎖または側鎖の一部分に塩基性窒素を含有する重合体である。塩基性窒素とは、アミド基でないアミノ基を構成する窒素原子である。そのようなポリアミドとしては、3級アミノ基を主鎖中に有するポリアミドを挙げることができる。塩基性窒素を有するポリアミドは、塩基性窒素を有する単量体を単独もしくは他の単量体を用いて縮重合、重付加反応などを行い、ポリアミドを得ることができる。塩基性窒素としては、ピペラジンやN,N−ジアルキルアミノ基が好ましく、より好ましくはピペラジンである。本発明で要されるポリアミドを提供するための塩基性窒素を有する単量体としては以下のものが例示される。
【0026】
N,N’−ビス(アミノメチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(β−アミノエチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(γ−アミノベンジル)−ピペラジン、N−(β−アミノエチル)ピペラジン、N−(β−アミノプロピル)ピペラジン、N−(ω−アミノヘキシル)ピペラジン、N−(β−アミノエチル)−2,5−ジメチルピペラジン、N,N−ビス(β−アミノエチル)−ベンジルアミン、N,N−ビス(γ−アミノプロピル)−アミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)−エチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)−テトラメチレンジアミンなどのジアミン類、N,N’−ビス(カルボキシメチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(カルボキシメチル)−メチルピペラジン、N,N’−ビス(カルボキシメチル)−2,6−ジメチルピペラジン、N,N’−ビス(β−カルボキシエチル)−ピペラジン、N,N−ビス(カルボキシメチル)−メチルアミン、N,N−ビス(β−カルボキシエチル)−エチルアミン、N,N−ビス(β−カルボキシエチル)−メチルアミン、N,N−ジ(β−カルボキシエチル)−イソプロピルアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス−(カルボキシメチル)−エチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス−(β−カルボキシエチル)−エチレンジアミンなどのジカルボン酸類あるいはこれらの低級アルキルエステル、酸ハロゲン化物、N−(アミノメチル)−N’−(カルボキシメチル)−ピペラジン、N−(アミノメチル)−N’−(β−カルボキシエチル)−ピペラジン、N−(β−アミノエチル)−N’−(β−カルボキシエチル)−ピペラジン、N−カルボキシメチルピペラジン、N−(β−カルボキシエチル)ピペラジン、N−(γ−カルボキシヘキシル)ピペラジン、N−(ω−カルボキシヘキシル)ピペラジン、N−(アミノメチル)−N−(カルボキシメチル)−メチルアミン、N−(β−アミノエチル)−N−(β−カルボキシエチル)−メチルアミン、N−(アミノメチル)−N−(β−カルボキシエチル)−イソプロピルアミン、N,N’−ジメチル−N−(アミノメチル)−N’−(カルボキシメチル)−エチレンジアミンなどのω−アミノ酸などがある。
【0027】
またこれらの単量体のほかにジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノ酸、ラクタムなどと併用して重合することによって本発明のポリアミドができる。これら塩基性窒素を含有する単量体成分は、全ポリアミド構成成分、すなわちアミノカルボン酸単位(原料としてラクタムの場合を含む)、ジカルボン酸単位およびジアミン構造単位の和に対して、10〜100モル%、さらに10〜80モル%であることが好ましい。この単量体成分が少なすぎると化合物(A)との相溶性が低下する傾向がある。
樹脂層は、5〜7員環を有し、かつ重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物(C)を含有する。一般に、嵩高い置換基である5〜7員環を有する化合物は、分子運動の障壁が高いため、周囲に存在する化合物の分子運動も制限される。よって、樹脂層に配合した場合、(A)成分の結晶化が抑制され、印刷中の繰り返しの衝撃力に対して耐性が向上することが期待される。このような化合物(C)の具体的な例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、スチレン及びその誘導体、N−フェニルマレイミド及びその誘導体、(メタ)アクリル酸−2−ナフチル、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
一方、化合物(C)が、分子内に少なくとも1つ以上の水酸基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有することが好ましい。分子内にこのような官能基を有することで、化合物(A)の水酸基と水素結合により相互作用し、化合物(A)の結晶化を抑制する効果が向上すると共に、化合物(A)との相溶性が良くなる。このような化合物(C)の具体的な例としては、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコール−(メタ)アクリル酸−安息香酸エステル、2−アクリロイルオキシエチル−フタル酸、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、[4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0029】
また、化合物(C)の5〜7員環が複素環であることがより好ましい。複素環を構成する元素としては、炭素の他に窒素、酸素、硫黄が例示される。複素環であることで、化合物(A)にある水酸基と、5〜7員環とが直接、水素結合により相互作用し、化合物(A)の結晶化を抑制する効果が向上すると共に、化合物(A)との相溶性が良くなり、化合物(C)が組成物中からブリードアウトしにくくなる。このような(C)成分の具体的な例としては、ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、ビニルカルバゾルが挙げられる。
【0030】
さらに、複素環が脂肪族環であることがより好ましい。複素環が脂肪族環であることで、環構造の分子運動が可能になるため、化合物(A)の水酸基と、5〜7員環が水素結合により相互作用しやすくなり、化合物(A)の結晶化を抑制する効果が向上すると共に、化合物(A)との相溶性が良くなり、感光性樹脂組成物中からの化合物(C)のブリードアウトを防ぐことができる。化合物(C)の具体的な例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリルオキシコハク酸イミド、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、ビニルカプロラクタム、2,2、6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0031】
また、樹脂層中に光重合開始剤(D)を加えるのが一般的である。光重合開始剤としては、光によって重合性の官能基を重合させることができるものであれば全て使用できる。なかでも、光吸収によって、自己分解や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などある。
【0032】
本発明の樹脂層に相溶性、柔軟性を高めるための相溶助剤としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン及びその誘導体、トリメチロールプロパン及びその誘導体、トリメチロールエタンおよびその誘導体、ペンタエリスリトールおよびその誘導体などの多価アルコール類を添加することも可能である。これらの多価アルコールは、樹脂層全体に対して、30質量%以下であることか好ましい。
【0033】
また、各成分の配合量としては、(A)〜(D)の和が樹脂層の50質量%以上であり、(A)100質量部に対して(B)が5〜200質量部、(C)が5〜200質量部、(D)が0.1〜20質量部の範囲であることが好ましい。この範囲にあることによって、樹脂層から樹脂層を構成する成分のブリードアウトがより防止されやすいこと、得られる印刷版におけるレリーフの強度がより向上すること、および適切な堅さが得られやすいこと、また彫刻カスがより少なくなること、およびその除去性がさらに優れる傾向にある。
本発明の樹脂層の熱安定性を上げる為に、従来公知の重合禁止剤を添加することができる。好ましい重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒドロキシアミン誘導体などが挙げられる。これらの配合量は、樹脂層全体に対して、0.001〜5質量%の範囲で使用することが一般的である。
【0034】
また、他の成分として、染料、顔料、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、香料などを添加することができる。
【0035】
次に、本発明のレーザー彫刻用樹脂印刷原版の構成についてあらためて説明する。本発明のレーザー彫刻用樹脂印刷原版は、少なくとも支持体および支持体の上に樹脂層を有する。
【0036】
支持体としては、ポリエステルなどのプラスチックシートやスチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴムシート、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属板を使用することができる。
【0037】
支持体の厚さは特に限定されないが、取扱性、柔軟性の観点から100〜350μmの範囲が好ましい。100μm以上であれば支持体としての取扱性が向上し、350μm以下であれば印刷原版としての柔軟性が向上する。
【0038】
支持体は、樹脂層との接着性を向上させる目的で、易接着処理されていることが好ましい。易接着処理の方法としては、サンドブラストなどの機械的処理、コロナ放電などの物理的処理、コーティングなどによる化学的処理などが例示できる。なかでもコーティングにより形成された易接着層は接着性の観点から好ましい。
【0039】
樹脂層の厚さは、十分なレリーフ深度を有し印刷適性を向上させる観点から、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。
【0040】
本発明の印刷原版は、表面保護や、異物屋汚れの付着防止の観点から、樹脂層上にカバーフィルムを有することが好ましい。樹脂層はカバーフィルムと直接接していてもよいし、樹脂層(G)とカバーフィルム(I)との間に1層または複数の層が存在していてもよい。樹脂層とカバーフィルムの間の層としては、例えば、樹脂層表面の粘着を防止する目的で設けられる粘着防止層などが挙げられる。
【0041】
カバーフィルムの材質は特に限定されないが、ポリエステル、ポリエチレンなどのプラスチックシートが好ましく使用される。カバーフィルム(I)の厚さは特に限定されないが、10〜150μmの範囲が取扱性、コストの観点から好ましい。またカバーフィルム表面は、原画フィルムの密着性向上を目的として粗面化されていてもよい。
【0042】
次に、本発明のレーザー彫刻用樹脂印刷原版の製造方法について説明する。例えば、化合物(A)、化合物(B)を、水/アルコール混合溶媒に加熱溶解した後に、化合物(C)、光重合開始剤(D)および必要に応じて可塑剤その他の添加剤等を添加し、撹拌して十分に混合し、樹脂組成物の溶液を得る。
【0043】
得られた溶液を、支持体に流延し、それを乾燥して樹脂組成物からなる樹脂層を形成する。この場合、前もって支持体の上に易接着層を設けてもよい。その後、必要により粘着防止層を塗布したカバーフィルムを樹脂層上に密着させることで印刷原版を得ることができる。また、乾燥製膜により樹脂シートを作製し、支持体とカバーフィルムでシートを挟み込むようにラミネートすることでも印刷原版を得ることができる。
【0044】
印刷原版はカバーフィルムと樹脂層の剥離を容易にするめ、その間に剥離補助層を有することができる。剥離補助層の形成方法は特に限定されない。薄膜形成の簡便さから、剥離補助層(L)成分を溶媒に溶解した溶液をカバーフィルム(I)上に塗布し、溶媒を除去する方法が特に好ましく行われる。溶媒の除去方法としては、例えば熱風乾燥、遠赤外線乾燥、自然乾燥などを挙げることができる。剥離補助層(L)成分を溶解する溶媒は特に限定されないが、水やアルコール、または水とアルコールの混合物が好ましく使用される。
【0045】
次に、本発明のレーザー彫刻用樹脂印刷原版を用いた印刷版の製造方法について説明する。本発明の印刷版は、下記する工程を順次経て製造することができる。
【0046】
すなわち、(1)印刷原版の樹脂層面に活性光線を照射して、二重結合を有する化合物を重合させて印刷版架橋原版を得る工程、次に(2)架橋原版の樹脂層をレーザーでパターン照射し、彫刻し、レリーフを形成する工程からなる。
【0047】
さらに、必要に応じて下記工程を含んでも良い。工程(2)に次いで、(3)水または水を含む液体でレリーフ表面をリンスして、レーザー照射によって発生した彫刻カスを除去する工程、(4)さらにレリーフ層を乾燥する工程である。さらに(5)レリーフ層に活性光線を照射し、さらに架橋させる工程、である。
【0048】
工程(1)は、樹脂層を光架橋させる工程であり、活性光線としては、可視光、紫外光、電子線などが挙げられるが、紫外光が最も一般的である。通常300〜400nmの波長を照射できる高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などを用いて行う。活性光線を照射する工程は、活性光線を透過する透明なカバーフィルムが設けられている場合、カバーフィルムを剥離する前後のいずれでもよい。活性光線を透過しないフィルムであれば、剥離した後に照射を行う。酸素の存在下では重合阻害が生じるので、樹脂層の上に、塩化ビニルに例示されるプラスチックフィルムを被せて真空ポンプで空気を抜いた状態で、活性光線を照射してもよい。また、樹脂層側から活性光線を照射するだけでもよいが、支持体が活性光線を透過する透明なフィルムならば、支持体側からも活性光線を照射することができる。
【0049】
樹脂層を架橋することで、第1にレーザー彫刻により形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。未架橋の樹脂層をレーザー彫刻すると、レーザー照射部の周辺に伝播した余熱により、本来意図していない部分が溶融、変形しやすく、シャープなレリーフが得られない。また、素材の一般的な性質として、低分子なものほど固形ではなく液状になり、すなわち粘着性が強くなる。架橋性レリーフ層を彫刻する際に発生する彫刻カスは、低分子の材料を多く用いるほど粘着性が強くなる。低分子である化合物(C)は架橋することで高分子になるため、発生する彫刻カスは粘着性が少なくなる傾向がある。
【0050】
上記工程(2)の架橋原版の樹脂層をレーザー彫刻する工程としては、形成したい画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋性レリーフ層に対して走査照射する方法があげられる。赤外レーザーが照射されると、樹脂層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱量が発生し、樹脂層中の分子は分子切断あるいはイオン化されて、選択的に樹脂層の一部が除去、すなわち彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は低く、もしくはショルダーをつけた形状となるよう彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができる。細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
【0051】
彫刻表面に彫刻カスが付着している場合は、上述のとおりレリーフ表面を液体でリンスして、彫刻カスを洗い流す工程(3)を追加しても良い。使用する液体は特に制限はないが、環境負荷の低い液体である水、および水を主成分とする液体が好適に用いられる。リンスの手段として、液体の流れで洗い流す方法、高圧液体をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式あるいは搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を液体の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられる。彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸を添加したリンス液を用いてもよい。
【0052】
彫刻表面をリンスする工程(3)を行った場合、彫刻された架橋性レリーフ層を乾燥してリンス液を揮発させる工程(4)を追加することが好ましい。
【0053】
さらに、必要に応じて架橋性レリーフ層をさらに架橋させる工程(5)を追加しても良い。追加の架橋工程(5)を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0054】
本発明のレーザー彫刻用樹脂印刷原版を用いて製造された印刷版は、凸版印刷用、ドライオフセット印刷用に用いることが最も適しているが、平版印刷用、凹版印刷用、孔版印刷用、フォトレジストとして使用することも可能である。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。
<変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルの合成>
合成例1:
日本合成化学工業(株)製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル“KL−05”(重合度約500、ケン化度80モル%)をアセトン中で膨潤させ、無水コハク酸1.0モル%を添加し、60℃で6時間撹拌して分子側鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して、未反応の無水コハク酸を除去し、さらにポリマーを乾燥した。酸価を測定したところ、10.0mgKOH/gであった。このポリマー100質量部をエタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200質量部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6質量部添加して反応させ、部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に反応性基を導入した。ポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応しポリマー側鎖中にメタクロイル基が0.24モル/kg導入されたことを電位差滴定法による分析結果から確認し、(A)成分である変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルA1を得た。
【0056】
合成例2:
酢酸ビニル99モル%、メタクリル酸を1モル%から得られた共重合体を、ケン化し、平均重合度650、ケン化度75モル%のアニオン変性ポリ酢酸ビニルを得た。このポリマー100質量部をエタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200質量部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6質量部添加して部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に反応性基を導入した。ポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応しポリマー側鎖中にメタクロイル基が0.22モル/kg導入されたことを電位差滴定法による分析結果から確認し、(A)成分である変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルA2を得た。
【0057】
合成例3:
日本合成化学工業(株)製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル“KL−05”(重合度約500、ケン化度80モル%)100質量部を100質量部の水に溶解し、N−メチロールアクリルアミド15質量部を添加し、酸触媒としてリン酸1質量部を加え、100℃4時間攪拌し反応させ、次いで水分を除去した、さらにそれと、N−メチロール基を有するアクリル系化合物とを反応させて化合物(A)である変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルA3を得た。
【0058】
<塩基性窒素を有するポリアミドの合成>
合成例4:
ε−カプロラクタム10質量部、N−(2−アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸との塩90質量部および水100質量部をステンレス製オートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に180℃で1時間加熱し、ついで水分を除去して水溶性ポリアミド樹脂である塩基性窒素を有するポリアミドを得た。
【0059】
重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物としては表1に記載したものを使用した。
【0060】
【表1】
【0061】
<易接着層(H)を有する支持体(F)の作製>
“バイロン”(登録商標)31SS(不飽和ポリエステル樹脂のトルエン溶液、東洋紡(株)製)260質量部および“PS−8A”(ベンゾインエチルエーテル、和光純薬工業(株)製)2質量部の混合物を70℃で2時間加熱後30℃に冷却し、エチレングリコールジグリシジルエーテル1分子とメタクリル酸2分子との付加物7質量部を加えて、2時間混合した。さらに、“コロネート”(登録商標)3015E(多価イソシアネート樹脂の酢酸エチル溶液、日本ポリウレタン工業(株)製)25質量部および“EC−1368”(工業用接着剤、住友スリーエム(株)製)14質量部を添加して混合し、易接着層(H)用塗工液1を得た。
【0062】
“ゴーセノール”(登録商標)KH−17(ケン化度78.5〜81.5モル%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)50質量部を“ソルミックス”(登録商標)H−11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)200質量部および水200質量部の混合溶媒中70℃で2時間混合した後、“ブレンマー”(登録商標)G(グリシジルメタクリレート、日本油脂(株)製)1.5質量部を添加して1時間混合し、さらに(ジメチルアミノエチルメタクリレート)/(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)質量比2/1の共重合体(共栄社化学(株)製)3質量部、“イルガキュア”(登録商標)651(ベンジルジメチルケタール、日本チバガイギー(株)製)5質量部、“エポキシエステル70PA”(プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)21質量部およびエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート20質量部を添加して90分間混合し、50℃に冷却後、“メガファック F−470”(DIC(株)製)を0.1質量部添加して30分間混合して易接着層(H)用塗工液2を得た。
【0063】
厚さ250μmの“ルミラー”(登録商標)T60(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)上に易接着層(H)用塗工液1を乾燥後膜厚が40μmになるようにバーコーターで塗布し、180℃のオーブンで3分間加熱して溶媒を除去した後、その上に易接着層(H)用塗工液2を乾燥膜厚が30μmとなるようにバーコーターで塗布し、160℃のオーブンで3分間加熱して、易接着層(H)が設けられた支持体(F)を得た。
【0064】
<カバーフィルム(I)の作製>
表面粗さRaが0.1〜0.6μmとなるように粗面化された厚さ100μmの“ルミラー”S10(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)に、“ゴーセノール”AL−06(ケン化度91〜94モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)を乾燥膜厚が1μmとなるように塗布し、100℃で25秒間乾燥し、アナログ版用のカバーフィルム(I)を得た。
【0065】
[評価方法]
各実施例および比較例における評価は、次の方法で行った。
【0066】
(1)破断点伸度
10cm×10cmのレーザー彫刻用樹脂印刷原版をケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)を備えた製版装置DX−A3(タカノ(株)製)で、大気下で、全面露光した(露光量:2400mJ/cm)。次いで、カバーフィルム(I)を剥離し、製版装置のブラシを備えた現像槽で25℃の水道水により1.5分間リンス工程を行い、その後、60℃で10分間乾燥した。再度ケミカル灯で、大気下で、全面露光(露光量:2400mJ/cm)し、易接着層(H)から樹脂シートを剥離し、厚さ600μmのシートを得た。その後、SD型レバー式試料裁断器(ダンベル(社)製)を用いて、平行部巾10mm、平行部長さ20mmを有する形状に断裁し、破断点伸度測定用シートを作製した。
【0067】
その後、100kgfのロードセルを備えた、“テンシロン(登録商標)”万能材料試験機RTM−100(オリエンテック(株)製)で、1cmのチャック間隔に測定用シートの平行部をセットし、100mm/minの速度で引っ張り、破断点伸度を測定した。十分な耐刷性を得るためには、硬化後の破断伸度が300%以上であることが好ましい。
【0068】
(2)彫刻適性
厚さが600μmのレーザー彫刻用印刷原版のカバーフィルム(I)側から、ケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)を備えた製版装置DX−A3(タカノ(株)製)で、大気下で、全面露光した(露光量:2400mJ/cm)。その後、カバーフィルム(I)のポリエステルフィルムのみを剥離した。剥離後の感光性印刷原版の最表面は乾燥膜厚1μmの部分ケン化ポリ酢酸ビニル層となっている。Adflex Direct 250L((株)コムテックス製)でレーザー彫刻し(彫刻速度:1000cm/秒、Pitch:10μm、Top:10%、Bottom:100%、Width:0.3mm)、133Lpi(1インチあたりの本数)のハイライト1%網点のレリーフを形成した。
【0069】
その後、製版装置DX−A3を用いて、25℃の水道水で1.5分間リンスを行い、その後、60℃の熱風乾燥機で10分間乾燥した。再度ケミカル灯で、大気下で全面露光(露光量:2400mJ/cm)して、画像再現性評価用印刷版を得た。
【0070】
得られた印刷版について、リンス後の彫刻カス残りの有無を25倍ルーペで確認し、133Lpi1%網点の深度をレーザー顕微鏡VK9500((株)キーエンス製)で測定した。
【0071】
(3)レリーフのクラック発生の評価(耐刷性)
1cm×3cmのベタ部を有する印刷版5個を用いて、M−3印刷適性試験機(宮腰機械製作所(株)製)により300μmの押し込み量で5万回、10万回、15万回、20万回回転させた後、印刷版のレリーフ表面を10倍の光学顕微鏡で観察し、100μm以上のレリーフのクラックが発生した印刷版の個数を計数した。
【0072】
(実施例1)
<樹脂組成物1用の組成物溶液1の調製>
攪拌用ヘラおよび冷却管を取り付けた3つ口フラスコ中に、表2に示す化合物(A)及び化合物(B)を添加し、“ソルミックス”(登録商標)H−11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)50質量部および水50質量部の混合溶媒を混合した後、攪拌しながら90℃2時間加熱し、化合物(A)および化合物(B)成分を溶解させた。70℃に冷却した後、その他の成分を添加し、30分攪拌し、樹脂組成物1用の組成物溶液1を得た。
【0073】
<樹脂シート1の製造>
ポリエステルフィルムに樹脂組成物1用の組成物溶液1を流延させ、60℃で2時間乾燥し、フィルムを剥がして、650μmの樹脂シート1を得た。樹脂シート1の膜厚の調整は、基板上に所定の厚みのスペーサーをはみ出している部分の組成物溶液1を、水平な金尺で掻き出すことによって行った。
【0074】
<樹脂印刷原版1の製造>
得られた樹脂組成物溶液1を、前記易接着層(H)を有する支持体(F)に流延し、60℃で2.5時間乾燥した。このとき乾燥後の版厚み(ポリエステルフィルム+樹脂層)が0.95mmとなるよう調節した。このようにして得られた樹脂層上に、水/エタノール=50/50(質量比)の混合溶剤を塗布し、表面に前記カバーフィルム(I)を圧着し、印刷原版を得た。得られた印刷原版を用いて、前記方法により印刷版の特性を評価した。結果を表3に示す。
【0075】
(実施例2〜9、比較例1〜3)
樹脂組成物の組成を表2のとおり変更した以外は実施例1と同様にして樹脂シートおよび印刷原版を作製した。評価結果を表3に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】