特許第5910787号(P5910787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5910787
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】フラックス回収装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20160414BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20160414BHJP
   B23K 3/08 20060101ALI20160414BHJP
   B23K 101/42 20060101ALN20160414BHJP
【FI】
   H05K3/34 503B
   B23K3/00 S
   B23K3/08
   B23K101:42
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-207811(P2015-207811)
(22)【出願日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年10月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昇
(72)【発明者】
【氏名】笠間 隆博
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−124621(JP,A)
【文献】 特開2001−239359(JP,A)
【文献】 特表2010−514572(JP,A)
【文献】 米国特許第03218193(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
B23K 3/00
B23K 3/08
B23K 101/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレーフラクサのノズルの噴出口から噴出されたフラックスを回収するフラックス回収装置であって、
前記フラックス回収装置は、
噴出したフラックスの一部を回収するため、前記フラックスを吸引する吸引筒と、
前記吸引筒に連結した排気ダクトと
を備えるとともに
前記吸引筒は、
前記スプレーフラクサのノズルの噴出口を囲繞するように配された吸引開口部を有し、
当該吸引開口部は、フラックスの吸引を一部遮蔽するため、前記噴出口直近の水平面内に水平遮蔽板を備え、
前記吸引開口部より余剰フラックスを吸引して回収するフラックス回収装置。
【請求項2】
前記吸引筒は、
前記噴出口に対して半割りされた第1、第2の吸引筒で構成され、夫々の吸引筒に前記吸引開口部を有する請求項1に記載のフラックス回収装置。
【請求項3】
前記水平遮蔽板は、
前記噴出口を回避する凹部を有する請求項1に記載のフラックス回収装置。
【請求項4】
前記吸引開口部は矩形状をしており、
前記吸引筒は、
当該吸引筒の矩形状の底部から鉛直上方向に延在し、且つ前記噴出口に対して近づく方向に折曲した形状を有する請求項1〜3のいずれかに記載のフラックス回収装置。
【請求項5】
前記吸引開口部は円弧形状をしており、
前記吸引筒は、
当該吸引筒の円弧形状の底部から鉛直上方向に延在し、且つ前記噴出口に対して近づく方向に折曲した形状を有する請求項1〜3のいずれかに記載のフラックス回収装置。
【請求項6】
前記吸引筒は、
前記スプレーフラクサが移動手段を有する場合に、移動式の前記スプレーフラクサと一体となって移動可能に、当該スプレーフラクサの側方に取り付けられる請求項1から5のいずれかに記載のフラックス回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板にフラックスを塗布するスプレーフラクサから噴出されたフラックスを回収するフラックス回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
噴流はんだ装置などを用いてプリント基板にはんだ付けする際、プリント基板のはんだ付け面に予めフラックスが塗布される。フラックス塗布装置の一例として、特許文献1には、フラックスを塗布する吹き口の長さをシャッタによって変更できるフラックス塗布装置が開示されている。
【0003】
フラックス塗布装置として、この他に、ノズルからプリント基板にフラックスを塗布するスプレーフラクサが使用される。スプレーフラクサは、霧状のフラックスを塗布するため、プリント基板に対して均一にフラックスを塗布できる。しかし、スプレーフラクサを用いるフラックス塗布装置では、フラックスを塗布する環境によっては、フラックスがプリント基板の外にも飛散して他の装置に悪影響を及ぼしてしまうことがある。
【0004】
スプレーフラクサのノズルから噴出されたフラックスが他の装置へ悪影響を及ぼさないようにするため、特許文献2には、筐体内に設けられた移動式のノズルから噴射されて気化し、筐体内に充満したフラックスを、筐体の外に排気する排気装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3910797号公報
【特許文献2】国際公開第2010/131751号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたフラックス塗布装置は、吹き口から噴出したフラックスの排気について何ら考慮しておらず、プリント基板に塗布されなかったフラックスが周囲に充満して他の装置に悪影響を及ぼしてしまう可能性がある。特許文献2に開示された排気装置で、スプレーノズルから噴出して筐体内に充満したフラックスを十分に排気するためには、筐体内全体を強力に吸引しなくてはならない。そのため、この排気装置は、プリント基板に塗布されるべきフラックスまでも排気してしまうという問題がある。また、フラックスが排気される前に周囲の装置等に付着すると冷やされて固着してしまうため、十分に回収できないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明はこのような課題を解決したものであって、スプレーフラクサのノズルから噴出されたフラックスの一部を効率よく回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために採った本発明の技術手段は、次の通りである。
(1)スプレーフラクサのノズルから噴出されたフラックスを回収するフラックス回収装置であって、フラックス回収装置は、噴出したフラックスの一部を回収するため、フラックスを吸引する吸引筒と、吸引筒に連結した排気ダクトとを備えるとともに、吸引筒は、スプレーフラクサのノズルの噴出口を囲繞するように配された吸引開口部を有し、吸引開口部は、フラックスの吸引を一部遮蔽するため、噴出口直近の水平面内に水平遮蔽板を備え、吸引開口部より余剰フラックスを吸引して回収するフラックス回収装置。
【0009】
(2)吸引筒は、ノズルの噴出口に対して半割りされた第1、第2の吸引筒で構成され、夫々の吸引筒に吸引開口部を有する前記(1)に記載のフラックス回収装置。
【0011】
)水平遮蔽板は、噴出口を回避する凹部を有する前記()に記載のフラックス回収装置。
【0012】
)吸引開口部は矩形状をしており、吸引筒は、当該吸引筒の矩形状の底部から鉛直上方向に延在し、且つ噴出口に対して近づく方向に折曲した形状を有する前記(1)〜()のいずれかに記載のフラックス回収装置。
【0013】
)吸引開口部は円弧形状をしており、吸引筒は、当該吸引筒の円弧形状の底部から鉛直上方向に延在し、且つ噴出口に対して近づく方向に折曲した形状を有する前記(1)〜()のいずれかに記載のフラックス回収装置。
【0014】
)吸引筒は、スプレーフラクサが移動手段を有する場合に、移動式のスプレーフラクサと一体となって移動可能に、当該スプレーフラクサの側方に取り付けられる前記(1)〜()のいずれかに記載のフラックス回収装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るフラックス回収装置によれば、スプレーフラクサのノズルの噴出口から噴出されたフラックスの一部を、強力な吸引力を必要とせずに効率よく吸引し、回収できる。そのため、プリント基板に均一なフラックス塗布を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る第1の実施の形態としてのフラックス回収装置1の構成例を示す斜視図である。
図2】フラックス回収装置1の構成例を示す図1のX1−X1断面図である。
図3】フラックス回収装置1の構成例を示す平面図である。
図4】フラックス回収装置1の動作例を示す図1のX1−X1断面図である。
図5】フラックス回収装置1の風速測定結果を示す平面図である。
図6】フラックス回収装置1の変形例としてのフラックス回収装置100の動作例を示す断面図である。
図7】フラックス回収装置1の変形例としてのフラックス回収装置101の構成例を示す概略平面図である。
図8】Aは、本発明に係る第2の実施の形態としてのフラックス回収装置2の構成例を示す概略平面図である。Bは、フラックス回収装置2の構成例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るフラックス回収装置の実施の形態について説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1図3を参照して、本発明に係る第1の実施の形態としてのフラックス回収装置1の構成例を説明する。本例においては、スプレーフラクサは固定されており、この固定されたスプレーフラクサに対してプリント基板が移動してプリント基板の必要箇所にフラックスを塗布する場合を一例として以下に説明を行うが、本発明はこの一例に限定されるものではなく、プリント基板に対してスプレーフラクサが移動する場合等においても適用可能である。
【0019】
図1に示すように、フラックス回収装置1は、スプレーフラクサ5のノズルの噴出口51からプリント基板4に向けて噴出されたフラックスF(図2参照)の一部でありプリント基板4に付着しなかった余剰のフラックスF1を回収するものである。フラックス回収装置1は、フラックスFを吸引する角筒の吸引筒10と、吸引筒10に連結した図2に示す排気ダクト6とを備える。
【0020】
吸引筒10は、フラックスFを塗布するプリント基板4の進行方向(図中の白抜き矢印参照)に対するノズルの噴出口51に対して前後するように半割りされた第1の吸引筒10Aと第2の吸引筒10Bとで構成される。すなわち、吸引筒10は、プリント基板4の進行方向に対し、上流側に位置する吸引筒10Aと、下流側に位置する吸引筒10Bとを備える。更に詳しくは、吸引筒10A、10Bは、夫々の長辺がプリント基板4の進行方向に対して直行且つ互いに平行になるように配置される。吸引筒10A、10Bは、スプレーフラクサ5が設置される取り付け板55上に、スプレーフラクサ5を挟んで対峙するようにして設置される。
【0021】
吸引筒10Aは、取り付け板55から鉛直上方向に延在する鉛直部10eと、鉛直部10eから所定の高さ位置において噴出口51に対して近づく方向に折曲する折曲部10fとを有する。本実施の形態において、折曲部10fは、鉛直部10eから鈍角に折曲する。折曲部10fのスプレーフラクサ5に対する内側の壁と外側の壁は、平行となるように折曲する。
【0022】
吸引筒10Bは、取り付け板55から鉛直上方向に延在する鉛直部10gと、鉛直部10gから折曲する折曲部10hとを有する。本実施の形態において、鉛直部10gは吸引筒10Aの鉛直部10eと同じ形状であり、折曲部10hは、吸引筒10Aの折曲部10fと同じ形状である。
【0023】
吸引筒10Aは、その上部に矩形状の吸引開口部10aを有する。吸引筒10Bは、その上部に矩形状の吸引開口部10bを有する。吸引開口部10a、10bは、これらがスプレーフラクサ5のノズルの噴出口51を囲繞するように配される。吸引開口部10a、10bは、プリント基板4のフラックス塗布面に対して水平な方向に開口する。吸引筒10は、この吸引開口部10a、10bより、ノズルの噴出口51から噴出した後にプリント基板4に付着しなかった余剰のフラックスF1(図2参照)を吸引して回収する。
【0024】
吸引筒10Aは、その底面1aに矩形状の開口からなる排出口10cを有し、吸引筒10Bは、その底面1bに矩形状の開口からなる排出口10dを有する。図2に示すように、取り付け板55の下方には、吸引筒10A、10Bと連通する排気ダクト6が設けられる。排気ダクト6には、その下方に図示しない排気装置が連結されている。取り付け板55には、排出口10c、10dを同じ大きさの矩形状をした開口が設けられ、この開口を介して、排出口10c、10dと排気ダクト6が連結される。これにより、吸引筒10A、10Bと排気ダクト6が連結される。
【0025】
図1に示すように、吸引開口部10a、10bは、スプレーフラクサ5のノズルの噴出口51から噴出した余剰のフラックスF1を吸引する際に、その吸引の一部を遮蔽するために、ノズルの噴出口51直近の水平面内に、矩形状の水平遮蔽板11を夫々備える。すなわち、水平遮蔽板11は、プリント基板4に塗布するためのフラックスFが吸引されてしまうことを回避するためのものであり、水平遮蔽板11の幅は、吸引筒10A、10Bとプリント基板4との距離や吸引筒10A、10Bの吸引力等によって選定される。水平遮蔽板11は、折曲部10f、10hにおける噴出口51側の面から吸引開口部10a、10b内の上端に、立体的に突出する形態で設けられる。
【0026】
図2に示すように、水平遮蔽板11は、吸引開口部10aの噴出口51近傍から吸引開口部10a内に向けて、吸引開口部10aに対して水平な矩形状に突出する。より詳しくは、水平遮蔽板11は、折曲部10fの内壁から上方に突出する断面矩形状の部材であって、その上端面が水平面となっている。この水平面は、ノズルの噴出口51と同じかそれ以上の高さとなっている。水平遮蔽板11は、吸引開口部10bの噴出口51近傍からも、吸引開口部10a内に向けて突出するのと同形状で突出する。
【0027】
図3に示すように、水平遮蔽板11の上面は、ノズルの噴出口51を回避するために、噴出口51の設けられる側の中心付近に半円弧状に切り欠かれた凹部12を有する。凹部12の大きさは、噴出口51を回避することができれば、いかなる大きさであってもよい。また、凹部12の形状は半円弧状に限られず、その他の円弧状や多角形状に切り欠かれていてもよい。
【0028】
本実施の形態において、既存のスプレーフラクサ5が使用される。フラックスFには有機溶剤が使用され、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)等が用いられる。図示はしないが、スプレーフラクサ5は、有機溶剤の収容されたタンクと、チューブ等で接続されている。スプレーフラクサ5は、吸引筒10Aの凹部12と吸引筒10Bの凹部12との間によって形成される空間に噴出口51が位置するように、支持部材53、54によって取り付けられる。
【0029】
図1に示すように、支持部材53は、取り付け板55に対して水平な取り付け面53aと、取り付け面53aから垂直に折れて延在する支持面53bとを有する。支持部材53は、支持面53bが取り付け面53aから上方に延在するようにして取り付けられる。取り付け面53aは、開孔53cを有する。ネジ53Aが開孔53cを介して取り付け板55の図示しないネジ孔に螺合することで、支持部材53が取り付け板55に取り付けられる。支持面53bは、図示しないネジでスプレーフラクサ5にネジ止めされる。
【0030】
支持部材54は、四角柱の両先端を同一方向且つ垂直に折り曲げた形状の凹部54aを有し、取り付け板55上に図示しないネジ等で支持されている。凹部54aは、支持部材53の取り付け面53aと同一の幅を有しており、取り付け面53aを凹部54aに入れることで、凹部54aが支持部材53を支持する。
【0031】
[フラックス回収装置1の動作例]
続いて、以下の各図面を参照して、フラックス回収装置1の動作例を説明する。
【0032】
図2に示した排気ダクト6に連結された図示しない排気装置が駆動することにより、排気ダクト6及び吸引筒10A、10B内の空間が排気される。図4に示すように、スプレーフラクサ5は、図中の白抜き矢印方向に搬送されるプリント基板4に向けて、上方にフラックスFを噴出させる。噴出したフラックスFは、プリント基板4に付着する。スプレーフラクサ5のノズルの噴出口51から噴出され、プリント基板4に付着しなかった余剰のフラックスF1は、吸引筒10A、10Bの吸引開口部10a、10bから吸引されて図中の点線矢印に示すように、吸引筒10A、10B内を下方に誘導される。吸引筒10A、10B内を下方に誘導されたフラックスF1は、排出口10c、10dから図2に示した排気ダクト6内に入り、図示しない排気装置に回収される。
【0033】
図5は、フラックス回収装置1の吸引開口部10a、10bの概略平面図である。吸引開口部10a、10b内及び凹部12内側の部分a1〜a11の11箇所に表記した数値は、その箇所における排気の風速の測定結果[m/秒]を示す。
【0034】
風速については、株式会社アイ電子技研製のマルチ環境計測器VSM-20(S-411プローブ)を用いて測定した。
【0035】
スプレーフラクサ5の位置する、吸引筒10Aと吸引筒10Bの凹部12の間を中心の部分a11として、吸引開口部10a、10bの外側の頂点周辺部分を、図の左上から時計回りに部分a1、a2、a3、a4とする。部分a1の内側且つ図中の右側を部分a5、部分a2の内側且つ図中の左側を部分a6、部分a3の内側且つ図中の左側を部分a7、部分a4の内側且つ図中の右側を部分a8とする。水平遮蔽板11の外側且つa1とa4とで上下に挟まれた部分をa9、水平遮蔽板11の外側且つa2とa3とで上下に挟まれた部分をa10とする。
【0036】
部分a1、a2の風速は、8.5[m/秒]であった。部分a3、部分a4の風速は、8.0[m/秒]であった。部分a5、部分a6の風速は、6.4[m/秒]であった。部分a7、部分a8の風速は、6.0[m/秒]であった。部分a9、部分a10の風速は、7.2[m/秒]であった。部分a11の風速は、0.9[m/秒]であった。
【0037】
これらの結果から、吸引筒10A、10Bの外側の部分a1〜a4の方が、内側の部分a5〜a7よりも風速が強いことがわかる。また、部分a11の風速は1.0[m/秒]よりも弱く、吸引筒10A、10Bからの吸引力による風は、部分a11にはほとんど影響を与えないことがわかる。すなわち、凹部12の間に設置されるスプレーフラクサ5のノズルの噴出口51から噴出するフラックスF(図4参照)は、吸引筒10A、10Bからの吸引力による風の影響をほとんど受けずに噴出する。
【0038】
図6は、フラックス回収装置1の吸引筒10A、10Bから水平遮蔽板11を取り除いた、変形例としての吸引筒100A、100Bを有するフラックス回収装置100の動作例を示している。スプレーフラクサ5の噴出口51からフラックスFがプリント基板4に向けて噴出する。水平遮蔽板11を取り除いたことにより、スプレーフラクサ5のノズルの噴出口51の周辺においても吸引筒100A、100Bによる吸引力を遮蔽するものがないため、噴出口51から噴出してプリント基板4に到達する前のフラックスFにも吸引力の影響を与えるが、フラックス塗布は十分な品質で行うことができる。そのため、フラックス回収装置100においても、スプレーフラクサ5から噴出されたフラックスFの一部のフラックスF1を、強力な吸引力を必要とせずに効率よく吸引して回収でき、プリント基板4に均一なフラックス塗布を行うことができる。
【0039】
フラックス回収装置1、100の動作例からわかるように本実施の形態のフラックス回収装置1は、吸引筒10A、10Bが夫々水平遮蔽板11を有することにより、噴出口51から噴出してプリント基板4に到達する前のフラックスFを、吸引筒10A、10Bが吸引することがなくなる。そのため、フラックス回収装置1は、プリント基板4に塗布されなかった余剰のフラックスF1のみを吸引するようになる。これにより、フラックス回収装置1は、フラックスFの塗布漏れを抑え、プリント基板4の所望の箇所に対して、より均一なフラックス塗布をすることができる。従って、吸引筒10A、10Bは、水平遮蔽板11備えることが好ましい。
【0040】
本実施の形態において、吸引筒10A、10Bを半割れされた形態として折曲部10f、10hを設けたため、吸引筒10A、10Bの間にスプレーフラクサ5を設置する空間を確保することができる。その上、スプレーフラクサ5を支持部材54のネジ止めを外して取り付け板55から取り外すことで、スプレーフラクサ5のメンテナンスが容易である。
【0041】
なお、吸引筒10は、2つに半割れされた形態に限られない。例えば、図7の平面図に示すように、フラックス回収装置1の変形例としてのフラックス回収装置101は、4つの吸引筒101Aが、スプレーフラクサ5を囲繞する形態となされてもよい。吸引筒101Aは、その上面に矩形状の吸引開口部101aを有している。吸引開口部101aは、スプレーフラクサ5側に対向する矩形の一つの頂点が吸引開口部101aの対角線に対して平行に切り欠かれた切欠部101cを有している。吸引開口部101aは、プリント基板4のフラックス塗布面に対して水平な方向に開口している。
【0042】
図6等に示した余剰のフラックスF1を吸引する際にその吸引の一部を遮蔽するために、吸引開口部101aには、スプレーフラクサ5のノズルの噴出口51直近の水平面内に、半円形状の水平遮蔽板101bが設けられる。すなわち、水平遮蔽板101bは、吸引開口部101aの噴出口51近傍から吸引開口部101a内に向けて、吸引開口部101aに対して水平な扇形状に突出している。水平遮蔽板101bは、吸引開口部101aにおける噴出口51側の面から吸引開口部101aの内に突出する形態で設けられる。
【0043】
吸引筒101Aは、水平遮蔽板101bを備えることが好ましい。フラックス回収装置101が水平遮蔽板101bを備える場合、その形状は扇形状に限られず、多角形状等であってもよい。切欠部101cは、噴出口51を回避することができれば、いかなる大きさでもよく、円弧状や矩形状に切り欠かれていてもよい。
【0044】
上述した通り、フラックス回収装置1は、吸引筒10A、10Bの吸引開口部10a、10bがスプレーフラクサ5のノズルの噴出口51を囲繞する構成とした。そのため、フラックス回収装置1は、スプレーフラクサ5から噴出されてプリント基板4に塗布されなかったフラックスF1を、強力な吸引力を必要とせずに効率よく吸引して回収できる。これにより、フラックス回収装置1は、プリント基板4に均一なフラックスFを塗布することができる。
【0045】
[第2の実施の形態]
続いて、図8を参照して、第2の実施の形態としてのフラックス回収装置2の構成例及び動作例について説明する。本実施の形態において、第1の実施の形態で使用したスプレーフラクサ5のノズルよりも細身のノズルが使用されるスプレーフラクサ25を用いる場合について説明する。本実施の形態において、第1の実施の形態と同じ符号及び名称のものは同じ機能を有するためその説明を省略する。図8Aは、スプレーフラクサ25とフラックス回収装置2の吸引開口部20a、20bとの位置関係を示す概略平面図である。図8Bは、その位置関係を示す側面断面図である。
【0046】
図8Bに示すように、フラックス回収装置2は、スプレーフラクサ25のノズルの噴出口52からプリント基板4に向けて噴出されたフラックスFの一部でありプリント基板4に付着しなかった余剰のフラックスF1を回収するものである。フラックス回収装置2は、フラックスFを吸引する断面半円形の筒状をした吸引筒20と、吸引筒20に連結した排気ダクト6とを備える。
【0047】
吸引筒20は、フラックスFを塗布するプリント基板4の進行方向(図中の白抜き矢印参照)に対し、スプレーフラクサ25のノズルの噴出口52に対して半割りされた第1の吸引筒20Aと第2の吸引筒20Bとで構成される。吸引筒20A、20Bの位置関係は、第1の実施の形態で説明した吸引筒10A、10Bの位置関係と同じである。
【0048】
図8Aに示すように、吸引筒20Aは、その上部に半円形状の吸引開口部20aを有し、吸引筒20Bは、その上部に半円形状の吸引開口部20bを有する。吸引開口部20a、20bは、これらがスプレーフラクサ25のノズルの噴出口52を囲繞するように配される。
【0049】
図8Bに示すように、吸引筒20A、20Bは、スプレーフラクサ25が設置される取り付け板56上に、半円形状の夫々の弦の中央近傍がスプレーフラクサ5と対峙するようにして設置される。吸引開口部20a、20bは、プリント基板4のフラックス塗布面に対して水平な方向に開口する。吸引筒20は、この吸引開口部20a、20bより、噴出口52から噴出した後にプリント基板4に付着しなかった余剰のフラックスF1を吸引して回収する。
【0050】
吸引筒20Aは、その底面2aに半円形状の開口からなる排出口20cを有し、吸引筒20Bは、その底面2bに半円形状の開口からなる排出口20dを有する。取り付け板56の下方には、排気ダクト6が設けられる。取り付け板56には、排出口20c、20dと同じ半円形状をした開口が設けられ、この開口を介して排出口20c、20dと排気ダクト6が連結されることにより、吸引筒20A、20Bと排気ダクト6が連結される。
【0051】
吸引筒20Aのスプレーフラクサ25に対する外側の円弧状の壁は、取り付け板56から鉛直上方向に延在する鉛直部20eと、鉛直部20eの所定の高さ位置において噴出口52に対して近づく方向に折曲する折曲部20fとを有する。本実施の形態において、折曲部20fは、鉛直部20eから鈍角に折曲する。吸引筒20Aのスプレーフラクサ25に対する内側の平面状の壁20iは、吸引開口部20aに向けて鉛直上方向に延在する。
【0052】
吸引筒20Bは、吸引筒20Aと同形状である。すなわち、吸引筒20Bの外側の円弧状の壁は、取り付け板56から鉛直上方向に延在する鉛直部20gと、鉛直部20gから所定の高さ位置において折曲する折曲部20hとを有する。吸引筒20Bの内側の壁20jは、吸引開口部20bに向けて鉛直上方向に延在する。
【0053】
吸引筒20A、20Bを上述した構成としたため、排出口20c、20dよりも吸引開口部20a、20bが、小さな半円形状となる。そのため、図示しない排気装置の吸引力を小さく設定しても、吸引開口部20a、20bにおける吸引力が増大し、吸引するフラックスF1を効率よく回収することができる。
【0054】
吸引開口部20a、20bは、スプレーフラクサ25から噴出した余剰のフラックスF1を吸引する際にその吸引の一部を遮蔽するために、スプレーフラクサ25のノズルの噴出口52直近の水平面内に、半円形状の水平遮蔽板21を夫々備える。水平遮蔽板21の幅は、吸引筒20A、20Bとプリント基板4との距離や吸引筒20A、20Bの吸引力等によって選定される。水平遮蔽板21は、吸引筒20の壁20i、20jの上部において吸引開口部20a、20bの内の上端に、立体的に突出する形態で設けられる。
【0055】
水平遮蔽板21は、吸引開口部20aの噴出口52近傍から吸引開口部20a内に向けて、吸引開口部20aに対して水平な半円状に突出し、水平遮蔽板21は、吸引開口部20bの噴出口52近傍から吸引開口部20b内に向けて、吸引開口部20bに対して水平な半円状に突出する。より詳しくは、水平遮蔽板21は、断面矩形状の部材であって、その上端面が半円状の水平面となっている。この水平面は、スプレーフラクサ25の噴出口52と同じかそれ以上の高さとなっている。水平遮蔽板21は、吸引開口部20bの噴出口52近傍からも、吸引開口部20a内に向けて突出するのと同形状で突出する。
【0056】
本実施の形態において、第1の実施の形態で説明したスプレーフラクサ5のノズルよりも細い既存のスプレーフラクサ25のノズルが使用される。スプレーフラクサ25は、取り付け板56上の吸引筒20Aと吸引筒20Bとの間の空間に、噴出口52が位置するように、第1の実施の形態で説明した支持部材53、54よりも細身の支持部材57、58によって取り付けられる。
【0057】
本実施の形態において、フラックス回収装置2は、第1の実施の形態で説明したフラックス回収装置1と同じく、吸引筒20A、20Bの吸引開口部20a、20bがスプレーフラクサ25のノズルの噴出口52を囲繞する構成とした。そのため、フラックス回収装置2もフラックス回収装置1と同様の動作をする。これにより、フラックス回収装置2は、スプレーフラクサ25から噴出されてプリント基板4に塗布されなかったフラックスF1を、強力な吸引力を必要とせずに効率よく吸引して回収できる。そのため、フラックス回収装置2は、プリント基板4に均一なフラックスFを塗布することができる。
【0058】
本実施の形態のフラックス回収装置2は、第1の実施の形態で説明したフラックス回収装置1と比べて、吸引筒20A、20Bの成形が容易である。
【0059】
フラックス回収装置2は、第1の実施の形態で説明したフラックス回収装置1と同じく、吸引筒20A、20Bは、水平遮蔽板21を備えることが好ましい。水平遮蔽板21を備える場合、その形状は半円状に限られず、多角形状等であってもよい。
【0060】
なお、第1の実施の形態で説明した凹部12と同様に、水平遮蔽板21の上面には、スプレーフラクサ25の噴出口52を回避するために、噴出口52の設けられる側の中心付近に切り欠かれてもよい。この切り欠きの大きさは、噴出口52を回避することができれば、いかなる大きさであってもよい。また、その切り欠き形状は半円弧状や、その他の円弧状、多角形状であってもよい。
【0061】
なお、以上の実施の形態において、スプレーフラクサ5、25を中心に、吸引筒が複数設けられたフラックス回収装置1、2、100、101について説明した。スプレーフラクサの周囲から均一に吸引できればこれに限られず、例えば吸引筒を半割りせず1つの吸引筒の中心にスプレーフラクサを設置する構成としてもよい。
【0062】
なお、スプレーフラクサ5、25は取り付け板55、56に固定され、吸引筒10、20、100A、100B、101も固定される形態としたが、これに限られない。移動手段を有する移動式スプレーフラクサの側面に直接、各吸引筒の側面を図示しないネジ等で取り付け、各吸引筒がスプレーフラクサと一体となって移動可能な形態としてもよい。そのとき、各吸引筒の底部には、排出口及び排気装置も移動可能に連結される。また、スプレーフラクサ自体に水平遮蔽板を取り付けて吸引筒内を移動可能な形態としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、プリント基板にフラックスを塗布するスプレーフラクサから噴出されたフラックスを回収するフラックス回収装置に適用して極めて好適である。
【符号の説明】
【0064】
1、2、100、101 フラックス回収装置
6 排気ダクト
10、20、100A、100B、101A 吸引筒
10A、20A 第1の吸引筒
10B、20B 第2の吸引筒
10a、10b 吸引開口部
10c、10d、20c、20d 排出口
11、21 水平遮蔽板
12 凹部
【要約】
【課題】スプレーフラクサから噴出されたフラックスの一部を効率よく回収する。
【解決手段】フラックス回収装置1は、スプレーフラクサ5から噴出されたフラックスを回収するものであって、噴出したフラックスの一部を回収するため、フラックスを吸引する吸引筒10と、吸引筒10に連結した排気ダクトとを備え、吸引筒10は、スプレーフラクサ5の噴出口を囲繞するように配された吸引開口部10a、10bを有し、吸引開口部10a、10bより余剰フラックスを吸引して回収する。
【選択図】図1
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