特許第5910791号(P5910791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910791
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】直流電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20160414BHJP
【FI】
   H02M3/28 C
   H02M3/28 H
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-501963(P2015-501963)
(86)(22)【出願日】2014年9月10日
(86)【国際出願番号】JP2014004640
(87)【国際公開番号】WO2015075854
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2015年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-240515(P2013-240515)
(32)【優先日】2013年11月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】板倉 良和
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−245476(JP,A)
【文献】 特開2003−333837(JP,A)
【文献】 特開2007−209044(JP,A)
【文献】 特開2003−111305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を入力して所定の電圧に変換して、直流電力に変換する直流電源部と、
前記直流電源部に接続されて、前記直流電力を出力するプラス端子及びマイナス端子と、
電子機器に設定された第一の入力電圧値を検出する通信部と、
前記直流電源部の出力する直流電力の電圧を、前記通信部から入力した前記第一の入力電圧値に設定する制御部と、
前記プラス端子及び前記マイナス端子の端子間に並列に接続され、前記直流電力を平滑化するコンデンサーを有し、前記第一の入力電圧値に基づいて前記コンデンサーに蓄積された電荷を放電させる残存電圧処理部を備え
前記プラス端子及び前記マイナス端子から電子機器が取外されて、他の電子機器が接続されたとき、
前記通信部は、他の電子機器に設定された第二の入力電圧値を受信し、
前記制御部は、前記直流電力の電圧を前記第二の入力電圧値に変更し、
前記残存電圧処理部は、前記第一の入力電圧値から前記第二の入力電圧値を減算した減算値に基づいて、前記コンデンサーに蓄積された電荷を放電し、
前記通信部が他の電子機器と通信ができないとき、
前記通信部は、前記第二の入力電圧値を最低電圧であると検出することを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
前記減算値が正の値のとき、
前記残存電圧処理部が、前記コンデンサーに蓄積された電荷を放電することを特徴とする請求項に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記減算値が負の値のとき、
前記残存電圧処理部が、前記コンデンサーに蓄積された電荷を放電しないことを特徴とする請求項に記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記第一の入力電圧値、又は、前記第二の入力電圧値が最低電圧のとき、
前記残存電圧処理部が、前記コンデンサーに蓄積された電荷を放電することを特徴とする請求項ないしのいずれかに記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記残存電圧処理部は、前記コンデンサーに並列に接続されたスイッチ部と抵抗の直列回路を有し、
前記スイッチ部をオンすることで、前記コンデンサーに蓄積された電荷を前記抵抗に放電することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の直流電源装置。
【請求項6】
前記通信部は、前記残存電圧処理部に接続された2本の電圧ラインで、前記第一の入力電圧値及び前記第二の入力電圧値を高電圧、低電圧の組合せで出力し、
前記スイッチ部は、前記組合せでオン又はオフになることを特徴とする請求項に記載の直流電源装置。
【請求項7】
二次電池と、
前記直流電源部の直流電力を前記二次電池に充電する充電回路と、
前記二次電池からの直流電力を電圧変換するDC/DC変換回路を備え、
前記二次電池の出力電力で電子機器へ出力する場合、前記DC/DC変換回路は、前記二次電池からの直流電力の電圧を、前記通信部から入力した電子機器に設定された第一の入力電圧値に変換することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の直流電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力の出力電圧を電子機器に合わせて変更できる直流電源装置に関するもので、特に、電子機器の入力電圧値に基づいて直流電力を平滑化するコンデンサーに蓄積された電荷の放電を制御するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の直流電源装置は、USBコネクタ等を介して電子機器へ直流電力を供給する。特許文献1に開示されているように、従来の直流電源装置は、電子機器に一定の電圧(5V)/一定の電流(例えば1.5A)の直流電力を供給している。この直流電源装置は、円筒形電池からの出力をDC/DCコンバータにより5Vに変換して安定した直流電力を出力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−131089号公報
【発明の概要】
【0004】
従来の直流電源装置は、一定の電圧(5V)/一定の電流(1.5A)の直流電力を供給しているので、電子機器に内蔵する二次電池が大容量の場合充電時間が長いという課題があった。充電電流を2倍、3倍と増加させることは、充電ケーブルの劣化を招く可能性がある。そこで近年、大容量の二次電池を有する電子機器に設定された入力電圧値を5Vから9Vや12Vに上昇させて急速充電を可能とする開発が行われている。しかし、この入力電圧値が9Vや、12Vの電子機器に対して直流電源装置の5V充電では、出力電圧が低いため時間当たりの供給電力が小さく、電子機器に充分な電力を短時間で供給することができなかった。この課題を解消するためには、直流電源装置も直流電力の電圧を高くすることが望ましい。さらに、設定された入力電圧値が5V、9V、12Vのいずれの電子機器にも充電できるように、直流電力の電圧を電子機器に合わせて変更できる直流電源装置が望ましい。
【0005】
しかし、直流電源装置の出力電圧を変更可能にした場合、直流電源装置が高電圧の出力状態で電子機器の接続が取外された直後に、入力電圧値が低電圧、或いは、最低電圧に設定された他の電子機器を接続されたとき、直流電力を平滑化するコンデンサーに有する残存エネルギー(残存電荷)が他の電子機器の入力電圧値を超える場合がある。その状態で直流電源装置を入力電圧値の低い他の電子機器に接続すると他の電子機器は入力電圧値より高い電圧が入力されるため、損傷、破壊などの問題を生じさせる。
【0006】
本発明は、直流電力の電圧を電子機器に合わせて変更可能にした直流電源装置で、さらに、直流電力の電圧を変更可能にした場合に生じる問題を解決した直流電源装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の直流電源装置は、交流電力を入力して所定の電圧に変換して、直流電力に変換する直流電源部と、前記直流電源部に接続されて、前記直流電力を出力するプラス端子及びマイナス端子と、電子機器に設定された第一の入力電圧値を検出する通信部と、前記直流電源部の出力する直流電力の電圧を、前記通信部から入力した前記第一の入力電圧値に出力電圧に設定する制御部と、前記プラス端子及び前記マイナス端子の端子間に並列に接続され、前記直流電力を平滑化するコンデンサーを有し、前記第一の入力電圧値に基づいて前記コンデンサーに蓄積された電荷を放電させる残存電圧処理部を備え、前記プラス端子及び前記マイナス端子から電子機器が取外されて、他の電子機器が接続されたとき、前記通信部は、他の電子機器に設定された第二の入力電圧値を受信し、前記制御部は、前記直流電力の電圧を前記第二の入力電圧値に変更し、前記残存電圧処理部は、前記第一の入力電圧値から前記第二の入力電圧値を減算した減算値に基づいて、前記コンデンサーに蓄積された電荷を放電し、前記通信部が他の電子機器と通信ができないとき、前記通信部は、前記第二の入力電圧値を最低電圧であると検出する。
【0008】
上記構成により、電子機器が取外された直後に他の電子機器が接続されても、出力電圧を電子機器に設定された入力電圧に合わせるので、過電圧入力により、電子機器が電気的な損傷、破壊することを防止できる。また、通信の不具合があっても、電子機器に直流電力を供給することができ、接続された電子機器が電気的な損傷、破壊することを防止できる。
【0011】
また、本発明の直流電源装置は、前記減算値が正の値のとき、前記残存電圧処理部が、前記コンデンサーに蓄積された電荷を放電する。
【0012】
上記構成により、設定された入力電圧が電子機器より他の電子機器が低くても、接続された他の電子機器が電気的な損傷、破壊することを防止できる。
【0013】
また、本発明の直流電源装置は、前記減算値が負の値のとき、前記残存電圧処理部が、前記コンデンサーに蓄積された電荷を放電しない。
【0014】
上記構成により、設定された入力電圧が電子機器より他の電子機器が高いとき、コンデンサーは他の電子機器の設定された入力電圧より低い電圧であるので、接続された他の電子機器が、電気的な損傷、破壊することを防止できる。さらに、コンデンサーに蓄積されている電荷は、他の電子機器への直流電力の平滑化に活用することができる。
【0015】
また、本発明の直流電源装置は、前記第一の入力電圧値、又は、前記第二の入力電圧値が最低電圧のとき、前記残存電圧処理部が、前記コンデンサーに蓄積された電荷を放電する。
【0016】
上記構成により、直前に接続されている電子機器に設定された入力電圧に関係なく、速やかに放電して、接続された電子機器が電気的な損傷、破壊することを防止できる。
【0019】
また、本発明の直流電源装置は、前記残存電圧処理部は、前記コンデンサーに並列に接続されたスイッチ部と抵抗の直列回路を有し、前記スイッチ部をオンすることで、前記コンデンサーに蓄積された電荷を前記抵抗に放電する。
【0020】
上記構成により、コンデンサーに蓄積された電荷を速やかに放電して、接続された電子機器が電気的な損傷、破壊することを防止できる。
【0021】
また、本発明の直流電源装置は、前記通信部は、前記残存電圧処理部に接続された2本の電圧ラインで、前記第一の入力電圧値及び前記第二の入力電圧値を高電圧、低電圧の組合せで出力し、前記スイッチ部は、前記組合せでオン又はオフになる。
【0022】
上記構成により、簡単な回路で通信部から残存電圧処理部に通信を行うことができ、接続された電子機器が電気的な損傷、破壊することを防止できる。
【0023】
また、本発明の直流電源装置は、二次電池と、前記直流電源部の直流電力を前記二次電池に充電する充電回路と、前記二次電池からの直流電力を電圧変換するDC/DC変換回路を備え、前記二次電池の出力電力で電子機器へ出力する場合、前記DC/DC変換回路は、前記二次電池からの直流電力の電圧を、前記通信部から入力した電子機器に設定された第一の入力電圧値に変換する。
【0024】
上記構成により、二次電池からの電力供給であっても、出力電圧を電子機器に設定された入力電圧に合わせるので、過電圧入力により、電子機器が電気的な損傷、破壊することを防止できる。
【0025】
本発明において、出力端子に並列に接続され、直流電力を平滑化するコンデンサーに蓄積された電荷を放電させる残存電圧処理部を備えることにより、出力電圧を電子機器に合わせて、高電圧から低電圧、或いは、最低電圧に変更するとき、接続された電子機器が、過電圧入力により、電子機器が電気的な損傷、破壊することを防止できる。これにより、直流電力の電圧を電子機器に合わせて変更可能にし、さらに、直流電力の電圧を変更可能にした場合に生じる問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態の直流電源装置を示す回路ブロック図である。
図2】本発明の実施の形態の直流電源装置における残存電圧処理回路19の回路図である。
図3】本発明の他の実施の形態の直流電源装置を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施例を、図を用いて詳細に説明する。図1は本発明の実施例を示す回路ブロック図で、スマートフォン、携帯電話、ゲーム機器等の二次電池を内蔵する電子機器30と、電子機器30に電力を供給する交流商用電力を直流電力に変換するACアダプター等の直流電源装置10とを示している。直流電源装置10は、接続された電池や、内蔵する電池より直流電力を供給するパック電池であっても良い。
【0028】
(直流電源装置10)
直流電源装置10は、AC電源40からの交流商用電力を入力して、複数の電圧の直流電力に変換する直流電源部11を備える。そして、直流電源部11は、プラス端子+、マイナス端子GNDから電気ケーブル20を介して、電子機器30に直流電力を供給する。
【0029】
直流電源部11は、AC電源40から交流商用電力を入力する入力回路12を備える。入力回路12は、AC100Vの商用電源に含まれる雑音を除去する入力フィルターと、入力された交流を直流に変換する整流回路を有している。
【0030】
そして、直流電源部11は、入力回路12からの交流を所定の電圧に変換する変換トランス13と、変換トランス13の交流出力を整流して直流に変換する整流回路14とを備えている。整流回路14には、雑音を除去する出力フィルターが含まれる。また、入力回路12の整流回路の直流を高周波の交流に変換するスイッチング部15と、スイッチング部15のスイッチング素子をPWM制御して直流出力を制御するフィードバック回路16を備える。
【0031】
さらに、直流電源部11は、整流回路14からの出力電圧と、電子機器30とのインターフェース回路である通信部18からの入力信号に基づく電子機器30の設定された入力電圧値とを検出し、出力電圧の制御を行う2次側の制御回路17を備える。制御回路17は、整流回路14からの出力電圧と電子機器30の入力電圧値の検出結果により、フィードバック回路16を制御する制御信号を出力する。制御回路17の制御信号により、直流電源部11は、直流電力の出力電圧を電子機器30に設定された入力電圧値に設定する。
【0032】
(電気ケーブル20)
電気ケーブル20は、電子機器30と接続されるUSBコネクタ等のコネクタ21を備え、コネクタ21はプラス入力端子+、マイナス入力端子−に加え、通信部18と通信する通信端子D+、通信端子D−とを有している。
【0033】
(電子機器30)
電子機器30は、コネクタ21の各端子と接続される入力部31を備えている。入力部31は、二次電池32の充電を制御する充電回路や、入力電力を二次電池32又は負荷34に供給する切替回路を有している。負荷34は、電子機器30を制御するプロセッサ、液晶ディスプレイ(LCD)、メモリ等で、DC/DC変換回路33を介して電力が供給される。
【0034】
入力部31は、充電制御機能を有しており、リチウムイオン電池である二次電池32の最大充電電圧を約4.2Vに制限した定電圧定電流方式を行うため、入力した電圧を二次電池32への充電電圧として4.2V以下に制御している。入力部31は、入力電圧値(5V、9V,12V)を4.2V以下に降圧した比率分、充電電流を増大させて入力電力を維持している。よって、入力電圧値が9V、12Vのときは、入力電力値が5Vのときに比べて、電圧を低減して、電流値をその比率分大きくすることができるので、急速に充電することができる。
【0035】
また、入力部31は、通信端子D+、通信端子D−へ信号を出力する通信回路も備えている。入力部31の通信回路は、電子機器30に設定された入力電圧値に対応した信号を出力する。
【0036】
(電子機器30から直流電源装置10への通信)
直流電源装置10は、コネクタ21の通信端子D+、通信端子D−から電子機器30の入力電圧値の信号を通信部18で入力し、検出する。例えば、電子機器30に設定された入力電圧値が5V、9V、12Vのいずれかの場合、通信部18は電子機器30に設定された入力電圧値が5V、9V、12Vのいずれかであると検出し、表1のように対応した電圧出力を2本の電圧ラインに通信電圧V1、V2として出力する。
【0037】
【表1】
【0038】
ここで、入力部31の通信回路がない、或いは、通信回路が故障している電子機器30に対して、通信部18は通信が成立しないので、電子機器30の入力電圧値を最低電圧の5Vであると検出する。そして、通信部18は、電圧ラインの通信電圧V1、V2から、表1のように通信電圧(V1=高電圧、V2=高電圧)を出力する。また、電子機器30に設定された入力電圧値を、直流電源装置10に通信(伝達)、検出する方法、通信部18から制御回路17に伝達する方法は、本実施例の方法に限らず、種々の方法が採用できる。
【0039】
通信部18は、2本の電圧ラインで制御回路17、後述する残存電圧処理回路19に接続されており、通信電圧V1、V2を出力する。
【0040】
制御回路17は、通信部18からの通信電圧V1、V2を検出し、電子機器30に設定された入力電圧値が5V、9V、12Vのいずれかであることを識別し、整流回路14からの直流電力の電圧が、識別した入力電圧値となるように、フィードバック回路16を制御する。
【0041】
以上の構成を備える本実施例の直流電源装置10は、コネクタ21に適合する端子を有していれば、入力電圧値が、5V、9V、12Vのいずれに設定された種々の電子機器30でも接続することが可能で、電子機器の入力電圧値に適した直流電力を供給することができる。
【0042】
ここで、第一の入力電圧値(9V又は12V)を出力している状態の直流電源装置10より、プラス端子+とマイナス端子GNDに接続された電子機器30が取外されたとき、直流電源装置10は、後述する平滑化するコンデンサーC1に残った電荷により、出力電圧が高いままである場合がある。もし第一の入力電圧値(9V又は12V)を出力している状態の直流電源装置10より、電子機器30の接続が取外された直後に、入力電圧値が第二の入力電圧値(5V)に設定された他の電子機器30が接続されたとき、コンデンサーC1の残存エネルギー(残存電荷)が第二の入力電圧値(5V)を超える電圧で、かつ、接続された他の電子機器30に出力された場合、他の電子機器30は過電圧の入力により電気的な損傷、破壊する恐れがある。
【0043】
(残存電圧処理回路19)
本実施例において、直流電源装置10は、プラス端子+とマイナス端子GNDの端子間と並列に接続された直流電力を平滑化するコンデンサーC1を有する残存電圧処理回路19を備えている。そして、残存電圧処理回路19は、通信部18からの2本の電圧ラインに接続されて、通信電圧V1,V2を入力する。制御回路17が通信部18での通信結果に基づいて直流電源部11からの出力電圧を低下させるとき、或いは、最低電圧とするとき、残存電圧処理回路19はコンデンサーC1に蓄積された電荷を放電させる。
【0044】
言い換えると、直流電源装置10から第一の入力電圧値が設定された電子機器30が取外され、第二の入力電圧値が設定された他の電子機器30が接続されたとき、第一の入力電圧値から第二の入力電圧値を減算した減算値が正の値のとき、或いは、第一の入力電圧値又は第二の入力電圧値が最低電圧(5V)のとき、残存電圧処理回路19はコンデンサーC1に蓄積された電荷を放電させる。逆に、第一の入力電圧値から第二の入力電圧値を減算した減算値が負の値のとき、残存電圧処理回路19はコンデンサーC1に蓄積された電荷を放電させない。
【0045】
図1に示すように、残存電圧処理回路19は、プラス側ラインが直流電源装置10の出力電圧Vbusであるプラス端子+のラインに接続され、マイナス側ラインが直流電源装置10のマイナス端子GNDのラインに接続されている。
【0046】
次に、残存電圧処理回路19の回路構成を図2に示す。残存電圧処理回路19は、プラス端子+とマイナス端子GNDの端子間と並列に、整流回路14から出力される直流電力を平滑化する1000〜2000μFのコンデンサーC1と抵抗R9(1kΩ)が接続され、コンデンサーC1から電荷を放電する50〜200Ωの抵抗R8(ブリーダ抵抗)を接続している。抵抗R9は直流電流の出力を安定させるため配置されているが、抵抗R8に比べ抵抗値を5倍以上に大きくしているので、抵抗R8のように急速に放電するはことない。つまり、抵抗R9は、ブリーダ抵抗としての役割を果たさない。また、抵抗R9を配置しない場合でも、抵抗R8はブリーダ抵抗として同様の効果を得ることができる。
【0047】
通信部18からの通信電圧V1は、比較器U1のブラス側に入力され、比較器U1の出力は逆方向に接続されたダイオードD1に接続されている。通信部18からの通信電圧V2は、比較器U2のブラス側に入力され、比較器U2の出力は逆方向に接続されたダイオードD2に接続されている。ダイオードD1とダイオードD2は接続されて、比較器U3のマイナス側と抵抗R1(100kΩ)を介して出力電圧Vbusのラインに接続されている。
【0048】
このダイオードD1とダイオードD2の接続により、比較器U1、U2の両方の出力電圧が高電圧のときのみ、つまり、通信部18からの通信電圧V1、V2共に高電圧のとき、比較器U3の入力が、基準電圧Vref(=2.5V)からの基準電圧(抵抗R2(5kΩ)、R3(3kΩ)の分圧)より、小さくなり、比較器U3の出力が低電圧となる。比較器U3の出力線は、抵抗R4(10kΩ)を介してPNP型のトランジスターQ1のベースに接続されており、トランジスターQ1はベースに低電圧が印加されるとオン状態となる。このトランジスターQ1と、抵抗R5(3kΩ)と、R6(2.5kΩ)との直列接続ラインは、直流電源装置10のプラス端子+のラインと、直流電源装置10のマイナス端子GNDのラインに接続されている。
【0049】
よって、直流電源装置10の出力電圧Vbusの分圧が、比較器U4のマイナス側に入力され、基準電圧Vref(=2.5V)に比較され、出力電圧Vbusが6V以上で、比較器U4から低電圧が出力される。比較器U4の出力線は、抵抗R7(1kΩ)を介してPNP型のトランジスターQ2のベースに接続されている。トランジスターQ2は、抵抗R8と直列に接続された回路を形成し、その回路がコンデンサーC1に対して並列に接続されている。そして、トランジスターQ2はベースに低電圧が印加されるとオン状態となり、コンデンサーC1に蓄積された電荷が、抵抗R8にて放電される。つまり、トランジスターQ2は、2本の電圧ラインから入力した通信電圧V1、V2の組合せでオン又はオフになる。そして、トランジスターQ2はオン/オフすることで、コンデンサーC1の電荷の放電をオン/オフするスイッチ部としての役割を果たす。
【0050】
これにより、直流電源装置10の出力電圧Vbusが6V未満になると、比較器U4のマイナス入力が、基準電圧Vrefより、小さくなるので、比較器U4の出力が高電圧となり、トランジスターQ2がオフ状態となり、コンデンサーC1に蓄積された電荷の放電が停止される。
【0051】
従って、第一の入力電圧値(9V又は12V)に対応した電子機器30の接続が取外された直後の直流電源装置10は、コンデンサーC1に第一の入力電圧値(9V又は12V)近傍の電圧を有している。そして、直ぐに、直流電源装置10が第二の入力電圧値(5V)に対応した他の電子機器30に接続したとき、通信部18が入力電圧値が第二の入力電圧値(5V)であることを検出し、2本の電圧ラインに通信電圧V1、V2の両方が第二の入力電圧値(5V)に対応した電子機器30に対応した高電圧を出力することにより、残存電圧処理回路19にてコンデンサーC1に蓄積された電荷が放電される。この放電により、出力電圧Vbusが、低電圧となるので、第二の入力電圧値(5V)に対応した電子機器30が、過電圧で損傷することはない。
【0052】
また、電子機器30の設定された入力電圧値が上昇したとき、例えば、第一の入力電圧値(5V又は9V)を出力している状態の直流電源装置10より、電子機器30の接続が取外された直後に、第二の入力電圧値(9V又は12V)に対応した他の電子機器30を接続したときは、表1のように、電圧ラインの通信電圧V1、V2のいずれかが、低電圧となる。そして、比較器U3のマイナス入力側が低電圧となって、比較器U3の出力が高電圧となり、トランジスターQ1がオフとなり、比較器U4の出力が高電圧となることより、トランジスターQ2がオフ状態となる。つまり、コンデンサーC1に蓄積された電荷は放電されずに、コンデンサーC1に蓄積されたままである。
【0053】
なお、本実施の形態において、図1のように直流電源装置10は、制御回路17を直流電源部11の内部に配置するとしたが、図3のように直流電源装置10bは、制御回路17と、制御回路を内部に有しない直流電源部11bとを備えた構成としてもよい。
【0054】
なお、本実施の形態において、直流電源装置10は内蔵の二次電池を有していないが、直流電源装置10が内蔵の二次電池と、直流電源部11の直流電力を二次電池に充電する充電回路と、二次電池からの直流電力を電圧変換するDC/DC変換回路を備える構成としてもよい。直流電源装置10が内蔵の二次電池の出力電力を電子機器30へ供給する場合、直流電源装置10に設けられたDC/DC変換回路は、内蔵の二次電池からの直流電力の電圧を、通信部から入力した電子機器に設定された入力電圧値に変換して電子機器へ出力する。
【0055】
なお、本実施の形態において、直流電源装置10と電子機器30を電気ケーブル20で接続して、出力電力、及び、電子機器30の設定された入力電流値を入出力するとしたが、無接点で入出力するとしてもよい。その場合は、直流電源装置10に出力電圧を送電する送電コイルと、電子機器30に直流電源装置10の出力電力を受電する受電コイルを配置し、通信部18と入力部31の通信を無線通信で行う。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明にかかる直流電源装置は、直流電力の電圧を変更可能にした場合に生じる問題を解決することが可能となるので、直流電力の電圧を電子機器に合わせて変更できる直流電源装置に等として有用である。
【符号の説明】
【0057】
10、10b 直流電源装置
11、11b 直流電源部
12 入力回路
13 変換トランス
14 整流回路
15 スイッチング部
16 フィードバック回路
17 制御回路
18 通信部
19 残存電圧処理回路
+ プラス端子
GND マイナス端子
C1 コンデンサー
R1〜R9 抵抗
U1〜U4 比較器
D1、D2 ダイオード
Q2、Q1 トランジスター
Vbus 出力電圧
Vref 基準電圧
V1、V2 通信電圧
20 電気ケーブル
21 コネクタ
+ プラス入力端子
− マイナス入力端子
D+、D− 通信端子
30 電子機器
31 入力部
32 二次電池
33 DC/DC変換回路
34 負荷
40 AC電源
図1
図2
図3