(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プラント制御システムでは、差圧計、流量計、温度計等の物理量を検出するセンサやアクチュエータ、コントローラ等のフィールド機器が用いられる。フィールド機器には操作パネルが設けられており、操作パネルを用いてフィールド機器の操作を行う。この操作パネルは所謂タッチパネルである。操作パネルとしては静電容量式の他に赤外光を用いたタッチパネルが用いられる。フィールド機器の操作パネルに赤外光を用いた技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
図9は、従来のフィールド機器のタッチセンサスイッチ(以下、単にタッチセンサとする)を示している。このタッチセンサ101は、中央制御回路102と第1アンプ回路103と発光素子104と機器収納部105とガラスパネル106と受光素子107と第2アンプ回路108とレベル判定器109とを備えている。
【0004】
中央制御回路102はタッチセンサ101の全体の制御を行う。特に、発光素子104の駆動制御を行う。このために、中央制御回路102は第1アンプ回路103に対して発光信号S1を出力する。第1アンプ回路103は発光信号S1に基づいて駆動して、駆動電流i1を増幅して流す。この駆動電流i1が発光素子104に入力される。
【0005】
発光素子104は駆動電流i1が入力されることにより発光する。発光素子104が発光する光は赤外光L1である。中央制御回路102等の各種回路は機器収納部105の内部に格納されており、機器収納部105は光を透過しない非透過性の材質で構成されている。機器収納部105には第1開口領域A1および第2開口領域A2が形成されており、これらは開口していることから、光が通過する。
【0006】
よって、第1開口領域A1を赤外光L1が通過して、この赤外光L1はガラスパネル106に入射する。ガラスパネル106は機器収納部105の外部に設けられており、ガラスパネル106のうち機器収納部105と対向する面と反対面がタッチ面106Fとなっている。赤外光L1はガラスパネル106を透過するが、このときタッチ面106Fに指Fがタッチされている場合には、赤外光L1が反射する。一方、タッチ面106Fに指Fがタッチされていない場合には、赤外光L1はそのままガラスパネル106の外部に抜けていく。これにより、タッチセンサ101はフィールド機器の操作を行う操作パネルとして機能させることができる。
【0007】
指Fがタッチ面106Fをタッチしている場合に、赤外光L1は反射して、反射光L2となる。この反射光L2はガラスパネル106を透過して、第2開口領域A2から受光素子107に入力される。受光素子107は反射光L2を入力することで、受光電流i2を流す。この受光電流i2は第2アンプ回路108に入力される。第2アンプ回路108は受光電流i2を受光信号S2として増幅して生成する。
【0008】
受光信号S2はレベル判定器109に入力される。受光信号S2のレベルは反射光L2の強度レベルを示している。
図10に示すように、受光信号S2の強度レベルが閾値よりも高ければレベル判定値として「1」を生成する。一方、閾値よりも低ければレベル判定値として「0」を生成する。レベル判定器109が生成するレベル判定値はレベル判定値信号S3として中央制御回路102に入力される。
【0009】
中央制御回路102は所定のパターンの発光信号S1を出力している。例えば、
図10に示すように、「01010」のようなパターン(発光パターン)の発光信号S1を出力する。つまり、「0」のときには赤外光L1を発光せず、「1」のときに赤外光L1を発光するパターンとなる。
【0010】
指Fをタッチすることにより生じる反射光L2は赤外光L1の反射光であり、赤外光L1と同じ発光パターンを有している。この反射光L2が受光素子107に受光されることで受光電流i2が流れ、第2アンプ回路108により増幅されて受光信号S2が生成される。この受光信号S2の矩形波は発光信号S1の矩形波とほぼ同じである。従って、レベル判定器109によるレベル判定値のパターン(受光パターン)は、
図10に示すように、「01010」となる。
【0011】
中央制御回路102は発光パターンを生成しており、レベル判定器109から入力される受光パターンと発光パターンとを比較して、一致していればタッチ面106Fに指Fがタッチされていることを検出する。これをON検出とする。
図10の場合は、一致しているため、ON検出がされる。
【0012】
1回のON検出だけで、指Fがタッチ面106Fにタッチされていると確定することもできるが、発光パターンと受光パターンとが偶然に一致する可能性もある。そこで、1回のON検出を行うためのパターンを1周期として、複数周期で発光パターンと受光パターンとが一致(ON検出)していれば、指Fがタッチ面106Fにタッチされていると確定してもよい。これをON確定とする。
【0013】
図11はその状態を示しており、3回のON検出を行うことで、初めてON確定を行う。これにより、3回の全てで発光パターンと受光パターンとが偶然に一致しなければON確定にならないため、偶然の一致による誤検出を防ぐことができ、より確実にスイッチのON確定を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図9において、タッチ面106Fに指Fがタッチされていないときには、赤外光L1は外部に抜けていく。つまり、反射をしないため、反射光L2は生じない。従って、受光素子107には常に反射光L2が入射されることはなく、レベル判定器109が判定するレベル判定値は常に「0」になる。その状態を
図12に示している。
【0016】
しかし、タッチセンサ101が設置される状況下では、外乱光LNが受光素子107に入射されることがある。つまり、タッチ面106Fを指Fがタッチしていないにもかかわらず、外乱光LNがガラスパネル106を透過して受光素子107に受光される。
【0017】
図12は外乱光LNが入射されていない場合を示している。これにより、レベル判定器109が判定したレベル判定値は常に「0」になっている。よって、発光パターンと受光パターンとが異なっていることから、ON検出が行われることはない。つまり、スイッチはオンにされていない。一方、
図13は外乱光LNが入射されている場合を示している。これにより、外乱光LNはガラスパネル106を透過して受光素子107に受光される。
【0018】
外乱光LNは基本的には周期的なパターンを有している。例えば、蛍光灯は周期的なパターンを持つ光を蛍光する。これにより、発光信号S1の発光パターンが周期的な場合には、発光信号S1の発光パターンは外乱光LNと近いパターンとなることがある。この外乱光LNが受光素子107に受光されることで、受光信号S2は
図13に示すような矩形波となる。この外乱光の矩形波は受光信号S2の矩形波と非常に近いパターンになっている。
【0019】
従って、レベル判定器109でレベル判定を行った外乱光LNのパターンは、
図13に示すような「01010」といったパターンとなる。このため、指Fによりタッチ面106Fがタッチされていないにもかかわらず、中央制御回路102はON検出を行うことがある。
【0020】
発光パターンも外乱光LNのパターンも共に周期的であることから、ON検出が3回行われることがある。この場合は、中央制御回路102はON確定の判定を行う。これにより、スイッチのON操作がされたものと認識する。
【0021】
つまり、タッチセンサ101を操作していないにもかかわらず、外乱光LNによりスイッチのON操作をしたと誤って認識がされる。これにより、フィールド機器に予期しない誤作動が発生する。この誤作動は予期しない動作であり、フィールド機器に対して大きな影響を与える場合がある。
【0022】
そこで、フィールド機器のタッチセンサスイッチを操作するときに、外乱光によるスイッチ操作の誤検出を防止して、誤作動を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
以上の課題を解決するため、本発明のフィールド機器のタッチセンサスイッチは、スイッチがオンにされたことを検出するためのパルス光を発光する発光素子と、この発光素子が発光した前記パルス光の反射光を受光する受光素子と、前記発光素子が発光する前記パルス光の発光パターンを一定の繰り返し周期信号ではない任意なパターンで発生させる任意パターン発生器と、前記受光素子が受光した前記反射光の受光パターンと前記発光パターンとが一致しているときに、前記スイッチがオンにされたことを検出する比較器と、を備
え、前記任意なパターンは、前記比較器における前記反射光の受光パターンと前記発光パターンとの比較結果と無関係に予め規定されていることを特徴とする。
【0024】
このフィールド機器のタッチセンサスイッチによれば、パルス光の発光パターンを一定の繰り返し周期信号でない任意なパターンとして発生している。これにより、外乱光によってタッチセンサスイッチが操作されたと誤認識されることを防止することができる。従って、フィールド機器の誤作動が発生しないようにすることができる。
【0025】
また、前記任意パターン発生器は、前記発光パターンを1周期としたときに複数周期のそれぞれで前記発光パターンが異なるパターンとなるようにして発生させ、前記比較器は、全ての周期で前記発光パターンと前記受光パターンとが一致しているときに、前記スイッチがオンにされたことを検出することを特徴とする。
【0026】
複数周期で発光パターンを変化させることで、偶然に外乱光のパターンと発光パターンとが同じになったとしても、複数周期で異なる発光パターンを比較することから、外乱光の誤検出によるスイッチの誤作動をより確実に防ぐことができる。
【0027】
また、前記任意パターン発生器が発生する前記発光パターンは変更可能であることを特徴とする。
【0028】
外乱光のパターンと発光パターンとが一致する可能性はある。ただし、フィールド機器のタッチセンサスイッチは同一環境下で運用されており、外乱光と発光パターンとが一致したときには、発光パターンを変更する。これにより、外乱光の誤検出による誤作動をより確実に防ぐことができる。
【0029】
また、前記比較器は、前記受光素子が受光した前記反射光のレベルに対して複数の閾値を用いて判定することを特徴とする。
【0030】
反射光のレベルを複数の異なる閾値で比較することにより、反射光のパターンと外乱光のパターンとの区別をより高精度に行うことができる。これにより、外乱光の誤検出によるスイッチの誤作動をより確実に防ぐことができる。
【0031】
また、前記1周期の中で前記パルス光のレベルの高低に差をつけたパターンを発生する機能を持つことを特徴とする。
【0032】
複数の閾値を用いて受光レベルを比較するときに、発光パターンのレベルの高低に差を付けることで、外乱光の誤検出を防止することができ、より確実にスイッチの誤作動を生じないようにすることができる。
【0033】
また、前記受光素子が受光した光に基づく受光信号の経路に周波数フィルタを設けることにより特定周波数以外の光をカットすることを特徴とする。
【0034】
特定周波数以外の外乱光をカットすることで、外乱光の誤検出を防止し、また、タッチ動作の認識をより確実にすることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、パルス光の発光パターンを外乱光とは異なるパターンとして発生している。これにより、外乱光によってタッチセンサスイッチが操作されたと誤認識されることを防止することができる。従って、フィールド機器の誤作動が発生しないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。プラント制御システムにおける差圧計、流量計、温度計等の物理量を検出するセンサやアクチュエータ、コントローラ等のフィールド機器には操作パネルが用いられる。本実施形態では、この操作パネルをタッチセンサスイッチ(以下、タッチセンサ)とする。
【0038】
図1はタッチセンサ1の構成を示している。このタッチセンサ1は中央制御回路2と任意パターン発生器3と第1アンプ回路4と発光素子5と機器収納部6とガラスパネル7と受光素子8と第2アンプ回路9とレベル判定器10と比較器11とを備えて構成している。タッチセンサ1を操作することにより、フィールド機器の制御を行うことができる。
【0039】
中央制御回路2はタッチセンサ1の全体の制御を行っており、特に任意パターン発生器3の制御を行っている。任意パターン発生器3は中央制御回路2の制御により、任意のパターンのパルス信号を発光信号S1として発生させる。任意パターン発生器3が発生させる発光信号S1のパターンはパターン信号S4として比較器11に対して出力される。
【0040】
任意パターン発生器3は、一定周期ごとに任意のパターンのパルス信号を発光信号S1として発生させることができる。ここでは、任意パターン発生器3が発生するパターン(1周期の中のパターン)は非周期的であるものとする。
【0041】
任意パターン発生器3が発生したパターンの発光信号S1は第1アンプ回路4に入力される。第1アンプ回路4は発光信号S1に基づいて駆動して、駆動電流i1を増幅して発生させる。この駆動電流i1は発光素子5に入力される。発光素子5は駆動電流i1が入力されることによりパルス光を発光する。本実施形態では、パルス光は赤外光L1であるものとするが、赤外線以外の波長域の光であってもよい。
【0042】
機器収納部6は中央制御回路2等を格納する部材であり、光を透過しない非透過性の素材で構成されている。ただし、機器収納部6には第1開口領域A1および第2開口領域A2の2つの開口部が形成されている。発光素子5が発光した赤外光L1は第1開口領域A1を通過してガラスパネル7を透過する。
【0043】
ガラスパネル7は光透過性のガラス素材で形成されており、赤外光L1はガラスパネル7を透過する。ガラスパネル7の機器収納部6と対向する面と反対面にタッチ面7Fが形成されており、このタッチ面7Fに指Fをタッチすることにより、タッチセンサ1の操作を行う。つまり、フィールド機器の操作パネルの操作を行なう。なお、本実施形態ではガラスパネル7を用いているが、光を透過する素材であれば任意の素材を適用することができ、例えばアクリル製のパネルを適用することもできる。
【0044】
指Fがタッチ面7Fをタッチすることにより、赤外光L1は反射する。反射した赤外光L1は反射光L2となって、第2開口領域A2を通過して、受光素子8に入射する。受光素子8は入射した反射光L2に基づいて、受光電流i2を流す。この受光電流i2が第2アンプ回路9に入力される。
【0045】
第2アンプ回路9は受光電流i2を増幅して受光信号S2に変換する。この受光信号S2はレベル判定器10に入力される。レベル判定器10は受光信号S2のレベル(強度レベル)に応じてレベル判定値を生成する。受光信号S2のレベルが閾値よりも高ければ、レベル判定値として「1」を生成する。受光信号S2のレベルが閾値よりも低ければ、レベル判定値として「0」を生成する。生成したレベル判定値はレベル判定値信号S3として比較器11に入力される。
【0046】
比較器11はレベル判定器10から出力されるレベル判定値信号S3のパターン(受光パターン)と任意パターン発生器3から出力されるパターン信号S4のパターン(発光パターン)とを比較する。比較器11が比較を行うために、発光信号S1と受光信号S2との同期を取る。そして、比較の結果、両パターンが一致しているときには、指Fがタッチ面7Fをタッチしていることを検出する。これをON検出とする。このON検出は中央制御回路2に出力される。なお、比較器11は中央制御回路2の1つの機能として組み込んでもよいし、
図1のように中央制御回路2とは別個独立の回路として設けてもよい。
【0047】
以上が構成である。次に、動作について説明する。中央制御回路2は任意パターン発生器3を制御して、非周期的なパターンを持つ発光信号S1を生成する。その一例を
図2に示す。同図に示すように、任意パターン発生器3は「0100101000」のように非周期的な発光パターンの発光信号S1を生成する。
【0048】
ここで、周期的なパターンとは「010101」のように「0」と「1」とが交互に繰り返されるパターンである。
図2に示した発光信号S1のパターンは周期的なパターンとはなっておらず、非周期的なパターンとなっている。勿論、発光信号S1のパターンは
図2に示した例には限定されず、周期的なパターンでなければ、任意の非周期的なパターンを適用することができる。
【0049】
図2に示した発光信号S1の「0100101000」のパターンを1周期とする。この1周期のパターンの発光信号S1を第1アンプ回路4に出力する。第1アンプ回路4は発光信号S1の発光パターンに応じた駆動電流i1を流す。この駆動電流i1は発光素子5に入力される。
【0050】
これにより、発光素子5は前記の発光パターンで発光する。従って、赤外光L1の発光パターンも前記のパターンとなる。タッチ面7Fに指Fをタッチしているときには、反射光L2が受光素子8に受光される。反射光L2は赤外光L1が反射された赤外光であるため、赤外光L1と同じパターンを有している。
【0051】
受光素子8は反射光L2を受光することで、受光電流i2を流す。この受光電流i2は第2アンプ回路9に入力される。第2アンプ回路9は受光電流i2を増幅して受光信号S2を生成する。受光信号S2も前記のパターンを有している。この受光信号S2はレベル判定器10に入力される。
【0052】
レベル判定器10では閾値を基準として、受光信号S2のレベル判定を行っている。判定結果はレベル判定値信号S3として生成される。前述したように、発光信号S1と受光信号S2とは同期されており、受光信号S2は発光信号S1に対してタイミング的に僅かに遅れているが、
図2からも明らかなように、発光信号S1の発光パターンと受光信号S2の受光パターンとは同一になっている。
【0053】
これにより、比較器11は中央制御回路2に対してパターンが一致している旨を出力する。これに基づいて、中央制御回路2は、タッチ面7Fに指Fがタッチされていることを検出する。つまり、ON検出を行う。この1回のON検出で指Fがタッチ面7Fにタッチされていると確定してもよい。
【0054】
図1の構成の場合、指Fがタッチ面7Fをタッチしていない状態においては、赤外光L1を発光しても、ガラスパネル7から外部に抜けていく。ただし、指Fがタッチしていない状態において、外乱光LNが受光素子8に入射されることがある。これにより、第2アンプ回路9で受光信号S2が生成されて、レベル判定器10で外乱光LNのパターンが生成される。ただし、前述したように、外乱光LNは周期的なパターンを有している。
【0055】
つまり、外乱光LNのパターンは「0101010101」のように「0」と「1」とが交互に繰り返される周期的なパターンとなる。よって、非周期的な発光パターンとは異なるパターンとなる。非周期的な発光パターンはパターン信号S4として比較器11に入力されており、比較器11は外乱光LNの周期的な発光パターンと非周期的な赤外光L1の発光パターンとの比較を行う。
【0056】
従って、比較器11はパターンが一致していないことを検出する。よって、中央制御回路2にはパターンの一致(ON検出)が出力されないため、中央制御回路2は指Fがタッチ面7Fをタッチしていないと認識する。つまり、タッチセンサ1を操作していないと認識する。これにより、外乱光LNが受光素子8に入射されたとしても、ON検出をすることがなく、タッチ面7Fをタッチしていると誤検出をすることがなくなる。
【0057】
これにより、タッチセンサ1を操作していないにもかかわらず、外乱光LNによりタッチセンサ1を操作したと誤認識されることがなくなる。従って、外乱光LNによりフィールド機器に予期しない制御が発生した認識させることがなくなる。これにより、フィールド機器の誤作動を生じることはない。
【0058】
ところで、外乱光LNは周期的なパターンを有しているケースが多いが、中には非周期的なパターンが含まれている場合もある。この場合に、外乱光LNのパターンと任意パターン発生器3が発生する発光パターンとが偶然に一致することがある。つまり、外乱光LNのパターンが
図2に示した発光パターン「0100101000」と一致する可能性を完全には否定できない。
【0059】
そこで、複数回のON検出が行われたときに、タッチ面7Fに指Fがタッチされたことを確定するON確定を行うようにすることができる。ここでは、所定の発光パターンを1周期として、複数周期の発光パターンを任意パターン発生器3が発生する。同時に、全ての周期で非周期的な発光パターンを変化させるようにする。以下、
図3を参照して、発光パターンが2周期である場合について説明する。
【0060】
1周期目の発光パターンは前述した「0100101000」である。そして、任意パターン発生器3は、2周期目には、1周期目の発光パターンとは異なる非周期的な発光パターンを発生させる。その一例が
図3に示す「0110001000」である。
【0061】
1周期目の発光パターンに基づいて、発光素子5が赤外光L1を発光する。指Fがタッチ面7Fをタッチしているときには、反射光L2が受光素子8に入射する。この反射光L2の受光パターンは発光パターンと同じ「0100101000」になる。従って、比較器11はパターンが一致していることを検出するため、ON検出を中央制御回路2に出力する。これにより、中央制御回路2は1周期目のON検出を認識する。
【0062】
このとき、外乱光LNのパターンが偶然に1周期目の発光パターンと同じになる可能性がある。つまり、外乱光LNのパターンも「0100101000」になる。この場合、比較器11はパターンが一致していることを検出(ON検出)するため、中央制御回路2は1周期目のON検出を認識する。この時点では、受光パターンが反射光L2によるものか、外乱光LNによるものかを区別することはできていない。
【0063】
そこで、2周期目に1周期目とは異なる非周期的なパターンとして、任意パターン発生器3は「0110001000」となる発光パターンの赤外光L1を発生させる。指Fをタッチ面7Fにタッチしていることによる生じる反射光L2は受光素子8で受光される。
【0064】
従って、レベル判定器10は受光信号S2に基づいてレベル判定を行い、比較器11には「0110001000」の受光パターンが入力される。一方、任意パターン発生器3からは2周期目のパターン信号S4として「0110001000」が入力される。これにより、発光パターンと受光パターンとが一致しているため、2回目のON検出がされる。この2回目のON検出は中央制御回路2に入力される。
【0065】
中央制御回路2は1回目および2回目の両方でON検出を入力しているため、指Fによりタッチ面7Fがタッチされていることを確定するON確定を認識する。これにより、タッチセンサ1が操作されたことを認識して、操作された内容に応じてフィールド機器の制御を行う。
【0066】
前述したように、1周期目で偶然に発光パターンと外乱光LNのパターンとが一致する可能性がある。ただし、基本的には、発光パターンと外乱光LNのパターンとが完全に一致する可能性は低い。このため、1周期目であったとしても、ON検出を行う可能性は低いものとなる。
【0067】
そこで、比較器11は、2周期目においても発光パターンと外乱光LNのパターンとが一致するか否かの判定を行う。2周期目の発光パターンは1周期目の発光パターンと同様に非周期的ではあるが、発光パターンを変化させている。従って、1周期目および2周期目の両方において、発光パターンと外乱光LNのパターンとが一致する可能性はほぼなくなる。
【0068】
従って、1周期目(または2周期目)で偶然に発光パターンと外乱光LNのパターンとが一致したときには1回のON検出は行われるが、2回のON検出が行われることはない。従って、2回のON検出が行われたときに初めてON確定をすることで、外乱光LNに非周期的な成分が含まれていたとしても、外乱光LNによる誤作動を防止することができる。これにより、外乱光LNによるタッチセンサ1の誤作動を確実に防止することができ、フィールド機器に予期しない制御がされることがなくなる。
【0069】
ここでは、2回のON検出でON確定を行うようにしていたが、3回以上のON検出でON確定を行うようにしてもよい。この場合には、3周期以上の各周期で発光パターンを異ならせるようにする。これにより、外乱光LNによる誤作動の発生精度をより防止することができる。
【0070】
以上において、中央制御回路2は任意パターン発生器3が発生するパターンを変更可能にしている。前述したように、発光パターンと外乱光LNのパターンとが偶然に一致する可能性はある。この場合には、任意パターン発生器3が発生する発光パターンを変更する。タッチセンサ1は同じ環境下で使用されるため、外乱光LNのパターンと発光パターンが一致した場合には、発光パターンを変更する。これにより、同じ環境下で使用されるため、外乱光LNのパターンと発光パターンとが同じになることがなく、誤作動を防止することができる。
【0071】
また、本実施形態では、外乱光LNが周期的なパターンを有している場合について説明した。基本的には外乱光LNは周期的なパターンを有しているが、非周期的なパターンを有している場合もある。この場合には、逆に発光パターンを周期的にすることにより、発光パターンと外乱光LNのパターンとを区別することができる。従って、誤ったON検出による誤作動を防止することができる。要は、任意パターン発生器3が発生する発光パターンを外乱光LNのパターンとは異なるパターンにすればよい。
【0072】
次に、変形例1について説明する。
図4は変形例1におけるタッチセンサ1を示しており、
図1の構成に対して、周波数フィルタ12を追加している。周波数フィルタ12は特定周波数をフィルタリングする回路であり、ここでは受光信号S2の特定の周波数成分をフィルタリングしている。
【0073】
図5は、フィルタなしで低周波数の外乱光LNを受光している場合で、この状態で指Fをタッチ面7Fにタッチすると、外乱光LNが受光信号S2にのってしまう。
【0074】
このとき、発光信号S1のパターンが「01001000000」と受光信号S2のパターン「01111000000」が異なってしまい、比較器11はON検出を行えず、タッチ面7Fに指Fがタッチされていることを認識できない。
【0075】
低周波の外乱光としては、光の揺らぎのようなものがある。例えば、太陽光や木漏れ日は低周波数の光の揺らぎを生じる。
【0076】
外乱光LNが発光信号S1に対して高周波の場合も低周波の場合と同様である。
【0077】
図6は、周波数フィルタ12で低周波成分および高周波成分を抑圧している例で、外乱光LN1、外乱光LN2が入射している状態でも、タッチ面7Fに指Fがタッチされていることの認識をより確実に行うことができる。
【0078】
高周波成分を抑圧する度合いにより、低周波に歪みが発生し、パルスの立ち上がり、立ち下りを検出する波形となる。
【0079】
そして、
図6に示すように、発光信号S1のパターンを「0」、「1」、「2」で表現する。「0」は変化していない場合、「1」は発光信号S1の立ち上がり、「2」は発光信号S1の立ち下りを示している。従って、
図6の発光信号S1のパターンは「0120120000」となる。
【0080】
この発光パターンで発光した赤外光L1が指Fで反射して反射光L2となったとき、前述した場合と同様に受光素子8で反射光L2が受光される。そして、受光信号S2が周波数フィルタ12を通過する。このとき、
図6に示すように、矩形波に歪みを生じる。
【0081】
レベル判定器10では第1閾値および第2閾値の2段階の閾値で受光信号S2のレベルを比較している。受光信号S2のレベルが第1閾値より高ければ「1」、第2閾値より低ければ「2」、第1閾値と第2閾値との間にある場合には「0」となる。これは、前述の発光信号S1のパターン「0」、「1」、「2」に対応したものである。
【0082】
つまり、周波数フィルタ12により矩形波に歪みを生じることを考慮して、発光信号S1に変化がない場合に対応して、受光信号S2のレベルが第1閾値と第2閾値との間にあるときを「0」としている。また、発光信号S1が立ち上がるときに対応して、受光信号S2のレベルが第1閾値よりも高いときに「1」としている。さらに、発光信号S1が立ち下がるときに対応して、受光信号S2のレベルが第2閾値よりも低いときに「2」としている。
【0083】
従って、第1閾値と第2閾値とは周波数フィルタ12によりどの程度の歪みが矩形波に作用するかによって決定される。これにより、
図6に示すように、レベル判定器10が第1閾値および第2閾値と受光信号S2とを比較することにより生成される受光パターンは「0120120000」となる。
【0084】
よって、比較器11は発光信号S1の発光パターンと受光信号S2の受光パターンとが一致していることから、ON検出を行う。そして、中央制御回路2にON検出を出力することで、タッチ面7Fに指Fがタッチされていることを認識する。勿論、前述した実施形態のように、2回以上のON検出でON確定を行うようにしてもよい。
【0085】
次に、変形例2について説明する。変形例2の構成は
図1と同じである。ただし、レベル(強度)に差異のあるパターンの発光信号S1を発生する機能を持つ。
図7に示すように、発光信号S1は矩形波の振幅を大きくすることができ、また小さくすることもできる。
【0086】
発光信号S1において、振幅の大きい矩形波が立ち上がるときを「2」、振幅の小さい矩形波が立ち上がるときを「1」、変化がない場合および波形が立ち下がる場合を「0」とする。
図7に示す発光信号S1のパターンは「0200100000」となる。本変形例2では、受光信号S2も矩形波となっており、受光信号S2の受光パターンも発光パターンとほぼ同じになる。
【0087】
そして、レベル判定器10は第1閾値と第2閾値との2段階の閾値で受光信号S2のレベルを判定する。受光信号S2のレベル(強度)が第1閾値よりも高くなっている場合は「2」、受光信号S2のレベルが第1閾値と第2閾値との間にある場合には「1」、第2閾値よりも低い場合には「0」として判定を行う。第1閾値および第2閾値は発光信号S1の矩形波の振幅の高低に応じて設定を行う。
【0088】
従って、タッチ面7Fに指Fをタッチしているときに検出される受光信号S2のパターンは、
図7に示すように、「0200100000」となる。これは、発光信号S1のパターンと一致している。これにより、比較器11はパターンが一致していると判定して、ON検出を中央制御回路2に出力する。これにより、タッチ面7Fに指Fがタッチされていることが検出される。勿論、この場合においても、複数のON検出でON確定を判定してもよい。
【0089】
図8は外乱光LNが入射した場合を示している。外乱光LNが発光パターンと同じような非周期的なパターンであったとしても、1周期の中で常に矩形波の振幅は一定になる。従って、発光信号S1に対応する受光信号S2では第1閾値よりも高いレベルになっている箇所が、外乱光LNの場合は第1閾値よりも低くなる。従って、
図8に示すように、受光信号S2のパターンは「0100100000」となる。
【0090】
比較器11は発光パターンと受光パターンとが一致しないことを検出する。従って、ON検出を行わない。このように、発光信号S1の発光パターンの振幅に高低の差を設けることで、外乱光LNとの区別することができ、誤ったON検出を防ぐことができる。これにより、誤作動を起こすことがない。
【0091】
変形例1および変形例2では、第1閾値および第2閾値の2段階の閾値を用いて、受光信号S2を判定していたが、3段階以上の異なる閾値を用いて判定をしてもよい。変形例1では周波数をフィルタリングした場合、変形例2では発光信号S1の振幅に高低の差を設けた場合において、複数の閾値で比較することにより、反射光L2であるのか、外乱光LNであるかの区別をより明確に行うことができる。これにより、誤検出が行われることを回避することができる。
【0092】
つまり、複数段階の閾値を用いて、受光信号S2のレベルを比較することで、より高い精度で反射光L2と外乱光LNとの区別を行うことができる。これにより、スイッチの誤作動の防止を図り、フィールド機器に対して誤った制御がされることがない。