特許第5910836号(P5910836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5910836オフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910836
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】オフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケット
(51)【国際特許分類】
   B41N 10/04 20060101AFI20160414BHJP
   B41N 6/00 20060101ALI20160414BHJP
   B41F 30/00 20060101ALI20160414BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20160414BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   B41N10/04
   B41N6/00
   B41F30/00 A
   B32B27/40
   B32B27/00 C
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-530646(P2013-530646)
(86)(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公表番号】特表2013-540061(P2013-540061A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】EP2011063125
(87)【国際公開番号】WO2012041568
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年3月28日
(31)【優先権主張番号】MI2010A001795
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513077232
【氏名又は名称】プリントグラフ ウォータレス ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】PRINTGRAPH WATERLESS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ アコバス、ロベルト
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−504234(JP,A)
【文献】 特開2003−305967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 10/04
B32B 27/00
B32B 27/40
B41F 30/00
B41N 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケットであって、ブランケットシリンダとブランケットとの間に配置され、かつ、少なくとも第1層及び第2層を含む多層構造からなり、アンダーブランケットを形成する層材料の全てがポリウレタンベース材料を含み、前記第1層ポリウレタンベース材料が前記第2層のポリウレタンベース材料とは異なっており、前記第1層のポリウレタンベース材料と前記第2層のポリウレタンベース材料との間の固有の化学的適合性又は物理的適合性を利用して前記第2層が前記第1層に対して直接的に接合されることを特徴とするアンダーブランケット。
【請求項2】
前記第1層及び第2層が互いに異なる弾性引張係数を有することを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケット。
【請求項3】
前記ポリウレタンベース材料が押出成形された熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のオフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケット。
【請求項4】
前記第1層及び第2層の少なくともいずれかが、使用目的に適した機械的特性を得るために添加される有機充填剤及び無機充填剤の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のオフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケット。
【請求項5】
全体的な厚さが0.1mm〜2.0mmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のオフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケット。
【請求項6】
前記第1層及び第2層の少なくともいずれかのポリウレタンベース材料が芳香族ポリウレタンであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のオフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケット。
【請求項7】
前記第1層及び第2層の少なくともいずれかのポリウレタンベース材料が脂肪族ポリウレタンであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のオフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケット。
【請求項8】
前記第1層及び第2層のみからなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のオフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケット。
【請求項9】
前記第1層及び第2層と、前記シリンダと接触するために前記第1層又は第2層の表面に施される接着層と、のみからなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のオフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケット。
【請求項10】
ポリウレタンベース材料を含む連続する少なくとも3つの層を備え、同3つの層の自然の化学的適合性又は物理的適合性を利用して同3つの層が互いに接合されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のオフセット印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケット。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のアンダーブランケットを有するブランケットを備えることを特徴とする、オフセット印刷機のブランケットシリンダ。
【請求項12】
請求項11に記載のブランケットシリンダを備えることを特徴とする、オフセット印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にオフセット印刷機である印刷機のブランケットシリンダのブランケット又はゴム被覆された布カバーのアンダーブランケットに関する。
本発明は、さらに、上記のアンダーブランケットを含むブランケットを備える特にオフセット印刷機である印刷機のブランケットシリンダ、及び、このようなブランケットシリンダを含むブランケットシリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
概して、オフセット印刷機は、プレートシリンダ、インクローラ、湿しローラ、上記のブランケットシリンダ、及び逆圧シリンダからなる。オフセット印刷においては、プレートにエッチングされた像はまずブランケットに転写され、ブランケットから紙シート、又はより概括的には非印刷媒体に転写される。
【0003】
印刷機のモデルによっては、装置自体を正確に機能させるために理想とするブランケットシリンダの径が製造者により指定されている場合もある。この径は、ブランケットとブランケットシリンダとの間にアンダーブランケットを介在させることにより理想的な寸法に調整される。
【0004】
アンダーブランケットは、様々な素材からなる層から形成され、主に、紙シート、ゴムが被覆された布、及び接着性ポリエステルシートからなる。
このアンダーブランケットも所望の厚さを有していない場合が多く、厚さを最適にするためにいくつかの層を手作業にて積み重ねなければならない場合が多い。この作業は比較的長時間を要し、注意力を必要とする。このため、ブランケットの交換はコストの高い作業となっている。
【0005】
さらに、従来のブランケットには、印刷機の機械的応力に適切に反応し得る機械的特徴を有していないという問題がある。
一般的に、印刷品質を低下させる恒久的な変形が発生する場合が多い。紙が使用されている場合には(厚みの大きいアンダーブランケットが必要である場合に、紙が広く使用されている)、工程において用いられる洗浄材又は湿し材に対する耐性が弱いため、材料を頻繁に交換しなければならない。同出願人による特許文献1には、一連のシート(例えばボール紙や、ポリウレタン等の合成材料)からなるアンダーブランケットが開示されている。これらのシートは、接着剤により一体化されているが、この接着剤はシートを個別に取り除くことができるように構成されている。このため、アンダーブランケットの厚さを所望の厚さにすることが容易となっている。
【0006】
特許文献2(同一出願人による)には、工程における機械的応力に適切に反応することができ、印刷品質を向上させ、さらに、ブランケット交換に要するコストを低減させることができる自己レベル調整アンダーブランケットが開示されている。
【0007】
上記の製品は、ポリエステル層に支持される、弾性特性を有するポリウレタンベース層を含む。このポリウレタンベース層は、所望の厚さを有するように直接的に形成される。しかし、この構成においては、2つの層の間の境界面が弱点となっている。時を経るにつれて、洗浄剤及び湿し剤の浸透と機械的応力とにより、基板からのポリウレタン層の剥離が発生し、その結果、印刷品質に問題が生じ、アンダーブランケットの早期交換が必要となる虞がある。
【0008】
基板からの剥離は、強い機械的応力のみにより生じる場合もあるが、この強い機械的応力は、印刷機において一般的にみられる問題に起因するものである。例えば、複数の紙シート/ボール紙がブランケットシリンダと逆圧シリンダとの間に同時に入った場合(専門用語ではスマッシュ(smash)と称する)、ブランケット及びアンダーブランケットの両方に強い機械的応力が加えられる。
【0009】
さらに、上記の構成は製造面においても短所を有する。すなわち、2つの材料の適切な接着を確実に行うためには、コストの高い特定の前処理をポリエステルに施す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第1323527号明細書
【特許文献2】欧州特許第1580022号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の技術課題は、従来技術の技術的短所を克服し得る、特にオフセット印刷機である印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケットを実現することである。
【0012】
上記技術課題に鑑み、本発明は、即時に所望する厚さにすることができ、ブランケットの交換を単純化し得る、特にオフセット印刷機である印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケットを提供することを目的とする。
【0013】
本発明の別の目的は、印刷時に加えられる機械的応力、ブランケット及びプレートに用いられる洗浄材、及び印刷工程において用いられる湿し材に対する耐性を有することにより、その性能が劣化することなく長期の使用に耐える、特にオフセット印刷機である印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケットを提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、層間の境界面において剥離の発生する虞がなく、寸法安定性が高く、製造が容易である多層構造を備える特にオフセット印刷機である印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は特にオフセット印刷機である印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケットに関する。このアンダーブランケットは、多層構造からなり、同多層構造が、少なくとも1つのポリウレタンベース材料を含む第1層と、同第1層を形成する前記ポリウレタンベース材料とは異なる少なくとも1つのポリウレタンベース材料を含む第2層とを少なくとも含み、前記第1層のポリウレタンベース材料と前記第2層のポリウレタンベース材料との間の固有の化学的適合性又は物理的適合性を利用して前記第2層が前記第1層に対して直接的に接合されることを特徴とする。
【0016】
好適には、前記第1層及び第2層が互いに異なる弾性引張係数を有する。好適な実施形態においては、前記第1層及び第2層の少なくともいずれかが、使用目的に適した機械的特性を得るために添加される有機充填剤及び無機充填剤の少なくともいずれかを含む。
【0017】
用途に応じて、膨張性ミクロスフェアや帯電防止剤等の、可変性質を有する添加剤を用いてもよい。
本発明の好適な実施形態においては、アンダーブランケットの全体的な厚さが0.1mm〜2.0mmである。
【0018】
アンダーブランケットの全体的な厚み寸法の許容誤差は、0.02mm以下であり、好適には、0.01mm以下である。
本発明の好適な実施形態においては、第1層及び2層の少なくともいずれかのポリウレタンベース材料が芳香族ポリウレタンである。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態においては、第1層及び2層の少なくともいずれかのポリウレタンベース材料が脂肪族ポリウレタンである。
本発明の好適な一実施形態においては、アンダーブランケットが第1層及び第2層のみからなる。
【0020】
本発明の別の好適な実施形態においては、アンダーブランケットは、前記第1層及び第2層と、前記シリンダと接触するために前記第1層又は第2層の表面に施される接着層と、のみからなる。さらに別の実施形態においては、アンダーブランケットは、ポリウレタンベース材料を含む連続する少なくとも3つの層を備え、同3つの層の自然の化学的適合性又は物理的適合性を利用して同3つの層が互いに接合されている。
【0021】
アンダーブランケットは、複数の層を、押出成形法、カレンダー法、塗布法等の周知の製造方法により別々に形成して、その後、これらの層の化学的適合性又は物理的適合性を利用して層を互いに接合することにより形成してもよい。
【0022】
または、上記の製造方法を用いて、層を積み重ねるように連続的に複数の層を形成してもよい。または、周知の共押出成形法、または上記の製造方法の組み合わせにより、複数の層を同時に形成してもよい。
【0023】
アンダーブランケットの装着を容易にするために、アンダーブランケットは、シリンダに接触する面において、完全または部分的に接着性を有するように構成されていてもよい。
【0024】
2つの層のいずれかのポリウレタンベース材料が、IS0527−2/1A/1に準拠した試験法による弾性率が2130Mpa±20%である参考特性を有する材料である場合に、最適な結果がもたらされることが確認されている。
【0025】
特に、ポリウレタンベース材料は押出成形された熱可塑性ポリウレタンである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
アンダーブランケットの好適かつ非限定的な実施形態を以下に記載する。
【実施例1】
【0027】
Lubrizol社によりESTALOC(登録商標)59003の製品名にて販売されているガラス繊維強化芳香族ポリエステルベースポリウレタンからなる、厚さ0.25mmの第1層を押出成形する。次に、Merquinsa社によりPEARLCOAT(登録商標)127Kの製品名にて販売されている芳香族ポリエステルベースポリウレタンからなる、厚さ0.40mmの第2層を押出成形するための基板として第1層が用いられる。
【実施例2】
【0028】
Lubrizol社によりETE 55DS3の製品名にて販売されている芳香族ポリエステルベースポリウレタンからなる、厚さ0.35mmの第1層を押出成形する。Lubrizol社によりESTANE(登録商標)54620の製品名にて販売されている芳香族ポリエステルベースポリウレタンからなる、厚さ0.7mmの第2層が、カレンダー法により第1層の上に直接的に施される。
【実施例3】
【0029】
上記のLubizol社のETE 55DS3からなる、厚さ0.09mmの第1層を押出成形する。次に、Lubrizol社によりESTANE(登録商標)54660の製品名にて販売されている芳香族ポリエステルベースポリウレタンからなる、厚さ0.038mmの第2層を塗布工程により第1層上に施す。最後に、シリンダへの接着及びその後の除去に適したアクリルベース接着剤を、カレンダー法により第1層の側面に厚さ0.032mmにて施す。
【実施例4】
【0030】
上記のLubrizol社のETE 55DS3からなる、厚さ0.35mmの第1層を押出成形する。次に、Lubrizol社によりESTANE(登録商標)54660の製品名にて販売されている芳香族ポリエステルベースポリウレタンからなる、厚さ0.65mmの第2層をカレンダー法により第1層に施す。最後に、上記のESTANE(登録商標)54660からなる、厚さ0.3mmの第3層を、ETE 5DS3の第1層の第2側面上に押出成形する。これにより、全体的な厚みが1.3mmである多層アンダーブランケットが形成される。
【実施例5】
【0031】
Lubrizol社のISOPLAST(登録商標)2530からなる、厚さ0.15mmの第1層を押出成形する。次に、Merquinsa社によりPEARLCOAT(登録商標)127Kの製品名にて販売されている芳香族ポリエステルベースポリウレタンからなる、厚さ0.85mmの第2層を押出成形するための基板として第1層の第1側面を用いる。最後に、ESTANE(登録商標)54660からなる、厚さ0.5mmの層をISOPLAST(登録商標)2530のフィルムの第2側面上に押出成形する。これにより、全体的な厚みが1.5mmである多層アンダーブランケットが形成される。
【0032】
ポリエステルベース層の数、厚さ、及び機械的特徴(弾性引張係数)を選択することにより、アンダーブランケットの全体的な機械的特性を非常に広範囲に変更することができる。これにより、特定の用途応じて機械的特性を適合することができるため、印刷品質を好適なものにすることが可能となっている。また、2つの層の間の境界面における理想的な化学的適合性又は物理的適合性によって、剥離耐性が非常に高くなっている。2つの層は、層を形成する材料中にポリウレタンをいずれも含む。
【0033】
前述の特にオフセット印刷機である印刷機のブランケットシリンダのブランケットのアンダーブランケットには多くの変更例が可能であり、このような変更例も本発明の範囲内である。さらに、詳細特徴については、他の技術的に同等の特徴と交換可能である。実施においては、すべての材料は、その寸法を含め、用途及び最新技術に応じて適宜変更することができる。