特許第5910862号(P5910862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910862
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 29/00 20060101AFI20160414BHJP
   F25B 27/02 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   F25B29/00 421
   F25B27/02 J
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-30240(P2012-30240)
(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公開番号】特開2013-167388(P2013-167388A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏行
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−183775(JP,A)
【文献】 特開2011−174679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 25/02,27/02,29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内を冷暖房させる空気調和装置であって、
室内機の冷房運転時において前記室内機から吐出された冷媒を圧縮させるとともに前記室内機の暖房運転時において室外機から吐出された冷媒を圧縮させるコンプレッサと、
前記コンプレッサを駆動するエンジンと、
前記室内機の前記冷房運転時において前記コンプレッサで圧縮された冷媒を熱交換させて凝縮させるとともに前記暖房運転時には蒸発器として機能する室外熱交換器と、
作動流体を吸着剤に吸着させる吸着モードと、前記吸着剤に吸着された前記作動流体を前記吸着剤から脱離させる脱離モードとを交互に実行可能な吸着部と、前記吸着モードおよび前記脱離モードの実行に伴い前記作動流体の気化潜熱により冷却作用を発生させて前記冷媒を冷却する冷却部と、前記脱離モードの実行に伴い前記吸着剤から脱離した気体状の前記作動流体を凝縮させる吸着式ヒートポンプ用凝縮器と、前記吸着モードの実行に伴い発熱した前記吸着剤と熱交換した流体と外気とを熱交換する吸着式ヒートポンプ用熱交換器と、を有し、前記室内機の前記冷房運転時において駆動されるとともに前記暖房運転時に停止する吸着式ヒートポンプと、
外気を前記吸着式ヒートポンプ用凝縮器、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器および前記室外熱交換器に供給する送風経路を形成する送風要素と、を備え、
前記室内機の前記暖房運転時に、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器には、前記コンプレッサを駆動するエンジンの廃熱経路を通る流体が流通し、
前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器は、前記室外熱交換よりも前記送風経路の上流側で前記室外熱交換に隣接し、
前記吸着式ヒートポンプ用凝縮器は、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器よりも前記送風経路の上流側で前記吸着式ヒートポンプ用熱交換の少なくとも一部に隣接している空気調和装置。
【請求項2】
前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器の少なくとも一部と、前記吸着式ヒートポンプ用凝縮器とは、互いに接触している請求項1に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室内の空気の温度を調整する空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置においては、消費電力1kWあたりの冷暖房効率を示すCOP(Coefficient of Performance,成績係数)を高めることが要請されている。そこで、空気調和装置として、水等の作動流体を吸着可能なシリカゲル等の吸着剤を有する吸着式ヒートポンプを搭載したものが知られている(特許文献1〜3参照)。この種の空気調和装置は、吸着式ヒートポンプで得られた冷却作用により、室内機の冷房運転時において室内機から吐出されコンプレッサで圧縮された冷媒を予備的に冷却させることにより、冷房運転時のCOPを向上させることを意図したものである。
【0003】
一般的な吸着式ヒートポンプは、作動流体(例えば水)を脱着可能な吸着剤(例えばシリカゲル)を収容する吸着部と、吸着部から脱離した気体状の作動流体を凝縮し液化させる吸着用凝縮器と、吸着用凝縮器で液化した作動流体を気化させる冷却部と、を持つ。冷却部でこのとき生じる気化潜熱により、空気調和装置用の冷媒を直接的または間接的に冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−195184号公報
【特許文献2】特開平8−296921号公報
【特許文献3】特開2011−174679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した吸着式ヒートポンプを搭載する空気調和装置は、水等の作動流体を吸着可能なシリカゲル等の吸着剤を有する吸着部の他に、吸着剤から脱離させたガス状の作動流体を凝縮させる吸着用凝縮器と、吸着用凝縮器で凝縮された作動流体を気化させて気化潜熱により冷却作用を発生させる冷却部と、吸着モードの実行により昇温した吸着部を冷却させることにより昇温された吸着式ヒートポンプ用冷却流体を外気との熱交換により冷却させる吸着用熱交換器とを有する。
【0006】
上述した吸着式ヒートポンプを空気調和装置に搭載する場合、冷房運転時においては、空気調和装置の冷媒を吸着式ヒートポンプによって冷却できるので冷房効率が向上する。しかし本願の発明者等は、空気調和装置のAPFを年間を通して向上させるべく更なる鋭意研究を重ねた結果、吸着式ヒートポンプを搭載した空気調和装置においては冬季における暖房運転効率を向上させ難いことを見出した。これは以下の理由による。
【0007】
上述したように吸着式ヒートポンプにおける吸着用凝縮器は、一般に、気体状の作動流体を空冷することで凝縮させる。空気調和装置の室外機は、吸着用凝縮器以外の凝縮器およびラジエータ等の熱交換器を複数含む。これらの各種熱交換器を流通する流体(空気調和装置用の冷媒、エンジン用のクーラント、吸着式ヒートポンプ用のクーラント等)は、何れも、吸着用凝縮器を流通する作動流体よりも高温である。したがって吸着用凝縮器は、室外機の最も外側に配置される。ところで、例えば冬季においては空気調和装置を冷房運転しない。この場合には、吸着式ヒートポンプは停止し、吸着用凝縮器における作動流体の流れもまた停止している。上述したように吸着用凝縮器は室外機の最も外側に位置しているため、外気により冷却される。外気温が低かったり雪が降ったりすると、吸着用凝縮器に霜がついたり、吸着用凝縮器に積雪したりする。
【0008】
空気調和装置の室外熱交換器を流通する流体(空気調和装置用の冷媒)はエンジン用クーラント(所謂エンジン冷却水)に比べて低温である。このため室外熱交換機は、室外機における吸着用凝縮器の内側に、吸着用凝縮器に隣接して配置されるのが一般的である。暖房運転時には、室外熱交換機は作動流体を気化させる蒸発器として機能するが、上述したように、吸着用凝縮器に霜がついていたり積雪していたりする場合には、室外熱交換器が吸着用凝縮器によって冷却される。このため、室外熱交換器による作動流体の気化工程が効率良く行われ難く、空気調和装置の暖房効率が向上し難い場合がある。室外熱交換機を除霜運転する(つまり、空気調和装置を一時的に冷房運転し、室外熱交換機に温かい作動流体を流通させる)ことで、室外熱交換機を昇温することもできる。しかし、この除霜運転によっても、吸着用凝縮器を除霜および除雪可能な程度に加熱することは困難である。このため、暖房運転時における空気調和装置の暖房効率をさらに向上させることは困難であった。
【0009】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、暖房運転時における吸着用凝縮器の着霜や積雪を抑制できる空気調和装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る空気調和装置は、室内を冷暖房させる空気調和装置であって、作動流体を吸着剤に吸着させる吸着モードと、前記吸着剤に吸着された前記作動流体を前記吸着剤から脱離させる脱離モードとを交互に実行可能な吸着部と、前記吸着モードおよび前記脱離モードの実行に伴い前記作動流体の気化潜熱により冷却作用を発生させる冷却部と、前記脱離モードの実行に伴い前記吸着剤から脱離した気体状の前記作動流体を凝縮させる吸着式ヒートポンプ用凝縮器と、前記吸着モードの実行に伴い発熱した前記吸着剤と熱交換する吸着式ヒートポンプ用熱交換器と、を有する吸着式ヒートポンプと、室内機の冷房運転時において前記室内機から吐出された冷媒を圧縮させるとともに前記室内機の暖房運転時において前記室外機から吐出された冷媒を圧縮させるコンプレッサと、前記コンプレッサを駆動するエンジンと、前記コンプレッサで圧縮された冷媒を熱交換させて凝縮させる室外熱交換器と、装置外部の冷却風を前記吸着式ヒートポンプ用凝縮器、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器および前記室外熱交換器に供給する送風経路を形成する送風要素と、を備え、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器には、前記コンプレッサを駆動するエンジンの廃熱経路を通る流体が流通し、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器は、前記室外熱交換機よりも前記送風経路の上流側で前記室外熱交換機に隣接し、前記吸着式ヒートポンプ用凝縮器は、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器よりも前記送風経路の上流側で前記吸着式ヒートポンプ用熱交換機の少なくとも一部に隣接しているものである。
【0011】
以下、空気調和装置を、単に空調装置と略する。また、吸着式ヒートポンプ用熱交換機を、単に吸着用熱交換器と略する。吸着式ヒートポンプ用凝縮器を、単に吸着用凝縮器と略する。空調装置のコンプレッサを駆動するエンジンを単にエンジンと略する。
【0012】
本発明の空調装置によれば、エンジンの廃熱経路を通る流体を吸着用熱交換器に流通させている。このため吸着用熱交換器は、冷房運転時にも暖房運転時にも、エンジンの廃熱によって暖められる。このような吸着用熱交換機の少なくとも一部を吸着用凝縮器に隣接させることで、吸着用凝縮器を暖めることができる。よって冬季にも吸着用凝縮器には着霜や積雪し難い。また、吸着用熱交換機に着霜や積雪があった場合にも、吸着用熱交換器によって除霜および除雪できる。このため、室外熱交換器は吸着用凝縮器によって冷却され難く、室外熱交換器による作動流体の気化を効率良く行うことができる。すなわち、本発明の空調装置によると、冬季における暖房効率悪化を抑制できる。
【0013】
また、本発明の空調装置は、吸着式ヒートポンプを備えることで、冷房効率に優れる。さらに、吸着用凝縮器は、吸着用熱交換機および室外熱交換器よりも送風流路の上流側に位置しているため、冷房運転時にも効率良く冷却される。このため、本発明の空調装置によると、夏期における冷却効率悪化を抑制できる。つまり、本発明の空調装置によると、通年での冷暖房効率を向上させ得る。
【0014】
本発明の空気調和装置において、吸着用熱交換器の少なくとも一部と、吸着用凝縮器とは、互いに接触していることが好ましい。この場合、吸着用熱交換機によって吸着用凝縮器を効率良く暖めることができ、吸着用凝縮器の着霜や積雪をさらに抑制でき、冬季における暖房効率をさらに向上させ得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明の空調装置は、吸着式ヒートポンプを備えることで冷房効率に優れ、かつ、暖房運転時における吸着用凝縮器の着霜や積雪を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1モード実施時における実施形態の空調装置の構成を模式的に表すブロック図である。
図2】第2モード実施時における実施形態の空調装置の構成を模式的に表すブロック図である。
図3】実施形態の空調装置における室外機の構成を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体例を挙げ、本発明の空調装置を説明する。
【0018】
(実施形態)
<空調装置>
図1は実施形態の空調装置の概念を模式的に表す。空調装置は室内の空気の温度を調整する。空調装置は吸着式ヒートポンプ2をもつ室外機1を持つ。吸着式ヒートポンプ2は、ケース20と、ケース20内に設けられた第1吸着部21および第2吸着部22と、気化潜熱を発生させる冷却部23と、第1四方弁24と、第2四方弁25と、ケース20に設けられた第1ポート31〜第8ポート38を持つ。第1吸着部21および第2吸着部22は、水等の作動流体を吸着可能なシリカゲル、活性炭、活性アルミナ等の多孔質の吸着剤を持つ。第1四方弁24は、第1吸着部21側の第1通路26と、第2吸着部22側の第2通路27とを切り替える。第2四方弁25は、第1吸着部21側の第1通路26と、第2吸着部22側の第2通路27とを切り替える。具体的には、第1四方弁24および第2四方弁25を切り替えることで、後述する第1モードおよび第2モードに対応する。第1モードにおいては、第1吸着部21側の第1通路26を後述するエンジン用クーラント通路9に接続して、後述するエンジン14と熱交換したクーラント(エンジン用クーラント)を第1通路26に流通させる。またこのとき、第2吸着部22側の第2通路27を後述する吸着用クーラント通路6に接続して、後述する吸着用熱交換器52を通過したクーラント(吸着用クーラント)を第2通路27に流通させる。第2モードにおいては、第1吸着部21側の第1通路26を吸着用クーラント通路6に接続して、第1通路26に吸着用クーラントを流通させる。またこのとき、第2吸着部22側の第2通路27をエンジン用クーラント通路9に接続して、第2通路27にエンジン用クーラントを流通させる。なお、エンジン用クーラントおよび吸着用クーラントは、流通経路が異なり温度が異なるだけで、同じものである。
【0019】
更に、図1に示すように、吸着剤から脱離させたガス状の作動流体を凝縮させる通風可能な吸着用凝縮器50がケース20の外方に設けられている。冷却部23は、吸着用凝縮器50で凝縮された液体状の作動流体を連通路45を介して受けると共に、液体状の作動流体を気化させて気化潜熱により冷却作用を発生させる。吸着式ヒートポンプ2には作動流体を循環させる作動流体通路40が設けられている。図1に示すように、吸着式ヒートポンプ2内の作動流体通路40は、冷却部23、第1弁41、第1吸着部21、第2弁42、第8ポート38、吸着用凝縮器50、第7ポート37、第3弁43、第2吸着部22、第4弁44、冷却部23を順に連通させると共に、吸着用凝縮器50と冷却部23とを連通させる連通路45を持つ。
【0020】
吸着用クーラント通路6(吸着式ヒートポンプ用クーラント通路)には、クーラントが流通する。吸着用クーラント通路6は、クーラントによって、吸着式ヒートポンプ2の第1吸着部21および第2吸着部22を交互に冷却する。吸着用クーラント通路6は、吸着式ヒートポンプ2の第1ポート31、通風可能な吸着用熱交換器52、ポンプ60(吸着式ヒートポンプ用クーラント搬送手段)、第2ポート32を介して、吸着式ヒートポンプ2内の第1通路26または第2通路27に連絡している。
【0021】
室内機8に連絡する冷媒通路74は、室内機8から冷媒を室外熱交換器7に帰還させる復路74yと、室外熱交換器7から冷媒を室内機8に向けて移動させる往路74xとをもつ。冷媒通路74において、室外熱交換器7の上流には、コンプレッサ83が設けられている。コンプレッサ83は、室内機8から吐出された冷媒を圧縮させて高温高圧化させる。コンプレッサ83はエンジン14により駆動される。
【0022】
図3に示すように、空調装置の室外機1は、2階建ての基体15に配置されている。具体的には、基体15の一階部分はエンジンルームであり、エンジン14、コンプレッサ83等が配置されている。基体15の二階部分には、送風ファン10が配設されている。送風ファン10は外気を基体15の外部から基体15の内部に取入れ、さらに基体15の上方に送風する。室外熱交換器7、吸着用凝縮器50、吸着用熱交換機52、後述するエンジン用ラジエータ91は、基体15の二階部分(つまり、送風ファン10により形成される送風経路11上)に配置され、通風可能である。室外熱交換器7は二分割されている。吸着用熱交換機52もまた二分割され、各室外熱交換機7の外側にそれぞれ一つずつ配置されている。各室外熱交換機7と、それに隣接する各吸着用熱交換機52とは、僅かに(実施形態においては20mm程度)離間している。一方の吸着用熱交換機52の外側には、吸着用凝縮器50が一体的に配置されている。つまり、吸着用凝縮器50と吸着用熱交換機52とは一体化され互いに接触している。吸着用凝縮器50は基体15の最外方に配置され、基体15内部における送風経路11の最上流側に配置されている。エンジン用ラジエータ91は室外熱交換機7よりもさらに内側(送風経路11)の下流側に配置されている。
【0023】
送風要素としての送風ファン10が駆動すると、冷却風を通過させる送風経路11が形成される。吸着式ヒートポンプ2の運転に用いられる吸着用凝縮器50および吸着用熱交換機52の熱交換機能を良好に得るためには、送風ファン10により取入れられ吸着用凝縮器50および吸着用熱交換機52を冷却する冷却風17の温度は、35℃以下が好ましく、25℃以下が更に好ましい。
【0024】
〔冷房運転〕
図1および2に示すように、冷房運転時においては、室内機8から冷媒通路74の復路74yに吐出された冷媒は、コンプレッサ83で圧縮されて高温高圧となり、室外熱交換器7に供給される。室外熱交換器7は送風経路11に設けられており、コンプレッサ83で圧縮された冷媒を冷却して凝縮させ、冷媒の液体化を進行させる。このように冷媒の凝縮が行われると、室外熱交換器7は凝縮熱を放出する。
【0025】
冷媒通路74のうち室外熱交換器7から室内機8に向かう往路74xは、吸着式ヒートポンプ2の冷却部23に連通する迂回路76をもつ。迂回路76は、往路74xから冷却部23に向かう往路76xと、冷却部23から帰還する復路76yと、冷媒を迂回路76に迂回させる迂回弁(三方弁)75とを持つ。冷房運転時においては、迂回弁75は迂回路76側に連通するよう切り換えられている。室外熱交換器7とコンプレッサ83との間には、室外熱交換器7に供給する冷媒量を制御する冷媒弁73が設けられている。冷媒通路74のうち往路74xは、室外熱交換器7の出口7pから導出されており、迂回弁75、迂回路76の往路76x、第5ポート35を経て吸着式ヒートポンプ2の冷却部23を通過し、復路76y,第6ポート36,往路74xを経て室内機8に連絡している。
【0026】
室内機8は、冷房時において室外熱交換器7で凝縮された冷媒を膨張させ得る室内膨張弁80と、冷房時において蒸発器として機能できる室内熱交換器82とを持つ。すなわち、室内の冷房時に吸着式ヒートポンプ2が運転されるときには、室外熱交換器7で凝縮された冷媒は、冷媒通路74の往路74xを流れ、迂回弁75、迂回路76および第5ポート35を介して吸着式ヒートポンプ2の冷却部23に供給されて、冷却部23により予備冷却される。その後、呼び冷却された冷媒は、第6ポート36から吐出されて室内機8に供給され、室内膨張弁80によって膨張し、更に、室内熱交換器82で低温低圧化されて蒸発し、室内の冷房作用を発生させる。
【0027】
このように室内熱交換器82によって蒸発した気体状の冷媒は、冷媒通路74の復路74yを流れ、コンプレッサ83で再び圧縮されて高温高圧とされた後、室外熱交換器7で再び凝縮されて液体化される。なお、室外熱交換器7で凝縮した冷媒を吸着式ヒートポンプ2の冷却部23に供給しないときには、迂回弁75を切り替える。すると、迂回弁75を通過した冷媒は、迂回路76に流入せず、往路74xを直進して室内機8に供給される。その結果、室外熱交換器7から吐出された冷媒を冷却部23に流すことなく、つまり予冷させることなく、迂回弁75を介して室内機8に直接供給する。
【0028】
エンジン14にはクーラントが流通している。エンジン用クーラント通路9は、吸着式ヒートポンプ2の第1吸着部21および第2吸着部22を交互にクーラントにより加熱する。エンジン用クーラント通路9は、ポンプ90(エンジン用クーラント搬送手段)を持つ。エンジン14で加熱されたクーラントは、ポンプ90により、エンジン14の出口14pから吐出され、第3ポート33から吸着式ヒートポンプ2内の第1通路26または第2通路27に供給される。その後、第1通路26または第2通路27に供給されたクーラントは、更に、吸着式ヒートポンプ2の第4ポート34から吐出され、エンジン三方弁92、ポンプ90を介してエンジン14の入口14iに帰還する。
【0029】
エンジン用ラジエータ91は入口ポートA,出口ポートBを持つ。エンジン14で加熱されたクーラントの水温が過剰に高いときには、第4ポート34から吐出されたクーラントをラジエータ通路93、エンジン用ラジエータ91に供給するようにエンジン三方弁92を制御する。この結果、第4ポート34から吐出されたクーラントは、ラジエータ通路93を介して入口ポートAに供給され、エンジン用ラジエータ91の放熱で冷却された後、出口ポートBから吐出され、エンジン三方弁92、ポンプ90および入口14iを介してエンジン14に帰還する。なおエンジン14で加熱されたクーラントの水温が適温域であるときには、クーラントの過冷を防止すべく、クーラントをエンジン用ラジエータ91に供給させないように、エンジン三方弁92を作動させる。なお、各弁の切り替え制御は、制御部100によって行われる。
【0030】
〔吸着式ヒートポンプ〕
吸着式ヒートポンプ2の動作について説明する。まず、第1吸着部21の脱離モードおよび第2吸着部22の吸着モードを実行する第1モードについて説明する。
【0031】
(第1モード)
図1に示すように、第1モードでは、第1弁41および第3弁43が閉鎖され、第2弁42および第4弁44が開放されている。この状態で、制御部100は第1四方弁24および第2四方弁25を制御する。具体的には、第1四方弁24によって吸着式ヒートポンプ2内の第1通路26をエンジン用クーラント通路9に接続し、第2通路27を吸着用クーラント通路6に接続する。この状態で、ポンプ90が作動すると、エンジン14で加熱された高温のクーラントは、出口14p、エンジン用クーラント通路9の往路9x、第3ポート33、第1四方弁24、第1通路26を介して第1吸着部21に供給されて第1吸着部21を加熱し、更に第2四方弁25、第4ポート34、エンジン用クーラント通路9の復路9y、通路9u、エンジン三方弁92、ポンプ90を介してエンジン14に帰還する。このように高温のクーラントで第1吸着部21が加熱されて脱離モードを行う。更に、ポンプ60が作動するため、吸着用熱交換器52で冷却された低温のクーラントは、吸着用熱交換器52の出口52pから吐出され、吸着用クーラント通路6の往路6x、ポンプ60、第2ポート32、第1四方弁24、第2通路27を介して第2吸着部22に供給されて、第2吸着部22を冷却させる。このとき第2吸着部22の熱によりクーラントは加熱され、更に、第2通路27、第2四方弁25、第1ポート31、吸着用クーラント通路6の復路6yを介して入口52iから吸着用熱交換器52に帰還し、吸着用熱交換器52で冷却風17により冷却される。このようにクーラントで第2吸着部22が冷却されて吸着モードを行うため、第2吸着部22の過熱が抑えられ、第2吸着部22における気体状の作動流体の吸着が継続して進行する。
【0032】
第1モードでは、前述したように第1吸着部21が加熱されるため、第1吸着部21の吸着剤に吸着されていた作動流体(一般的には水)が第1吸着部21から脱離して気体状となり、第2弁42および第1通路28fを介して、ポート50fから吸着用凝縮器50に移動し、吸着用凝縮器50において冷却風17により冷却されて凝縮する。これにより、作動流体は吸着用凝縮器50において液化し、吸着用凝縮器50は凝縮熱を放出する。この場合、第1弁41および第3弁43は閉鎖されているため、第1吸着部21から脱離した気体状の作動流体(一般的には水蒸気)は、冷却部23および第2吸着部22に移動しない。吸着用凝縮器50において凝縮した液体状の作動流体(一般的には水)は、重力により、連通路45を介して冷却部23に移動する。
【0033】
また第1モードでは、吸着用クーラント通路6から第2通路27を流れるクーラントにより第2吸着部22が冷却されるため、第2吸着部22の圧力が低下する。ここで、第1弁41および第3弁43は閉鎖され、第4弁44は開放されるため、第2吸着部22の圧力低下に伴い、冷却部23の圧力が低下し、よって、冷却部23に収容されている液体状の作動流体の気化が進行する。冷却部23における気体状の作動流体(一般的には水)は、開放されている第4弁44を介して第2吸着部22に移動し、第2吸着部22に吸着される。このとき第1弁41および第3弁43は閉鎖されているため、冷却部23における気体状の作動流体は、第1吸着部21および吸着用凝縮器50には移動しない。ところで、第2吸着部において吸着剤が作動流体を吸着する吸着作用は、発熱を誘発する。この結果、気体状の作動流体を吸着した第2吸着部22は加熱される。この場合、第2通路27を流れるクーラントにより第2吸着部22は冷却される。よって第2吸着部22の過剰昇温が防止され、第2吸着部22の吸着性能が維持される。
【0034】
(第2モード)
次に、第2吸着部22の脱離モードおよび第1吸着部21の吸着モードを実行する第2モードについて説明する。図2に示すように、第2モードでは、第1モードとは逆に、第2弁42および第4弁44が閉鎖され、第1弁41および第3弁43が開放される。この状態で、制御部100は、エンジン用クーラント通路9が第2通路27に接続され、吸着用クーラント通路6が第1通路26に接続されるように、第1四方弁24および第2四方弁25を制御する。この結果、エンジン14で加熱された高温のクーラントは、ポンプ90の作動により、エンジン14の出口14p、エンジン用クーラント通路9の往路9x、第3ポート33、第1四方弁24および第2通路27を介して、第2吸着部22に供給され、第2吸着部22を加熱する。その後、クーラントは第2通路27、第2四方弁25、第4ポート34を介してエンジン用クーラント通路9の復路9yに帰還する。そしてクーラントは通路9u、エンジン三方弁92、ポンプ90を通り、エンジン14の内部に帰還する。更に、ポンプ60が作動するため、吸着用熱交換器52で冷却された低温のクーラントは、吸着用熱交換器52の出口52pから吐出され、吸着用クーラント通路6の往路6x、第2ポート32、第1四方弁24および第1通路26を介して第1吸着部21に供給される。そしてクーラントは、第1吸着部21を冷却し、第2四方弁25、第1ポート31、吸着用クーラント通路6の復路6yを通り、入口52iから吸着用熱交換器52に帰還し、吸着用熱交換器52で冷却される。このとき気体状の作動流体は吸着用熱交換器52により冷却されて凝縮する。このため吸着用熱交換器52は凝縮熱を放出する。このように第2モードでは、エンジン14により加熱された高温のクーラントにより第2吸着部22が加熱されるため、第2吸着部22に吸着されていた作動流体が第2吸着部22の吸着剤から脱離して気体状となる。気体状の作動流体は、開放状態の第3弁43、第2通路28s、ポート50sを介して吸着用凝縮器50に移動し、吸着用凝縮器50で冷却されて凝縮する。このため作動流体は吸着用凝縮器50において液体状になり、吸着用凝縮器50は凝縮熱を放出する。このとき第4弁44および第2弁42は閉鎖されているため、第2吸着部22で発生した気体状の作動流体は、冷却部23には移動しない。
【0035】
第2モードでは、ポンプ60が作動し、クーラント(吸着用クーラント)により第1吸着部21が冷却されるため、第1吸着部21の圧力が低下する。このとき第2弁42は閉鎖され、第1弁41は開放されているため、冷却部23の圧力が低下し、冷却部23において作動流体の気化が進行する。このため冷却部23は気化潜熱により冷却される。冷却部23の気体状の作動流体は、第1弁41を介して第1吸着部21に移動し、第1吸着部21に吸着される。このとき第1吸着部21は吸着熱により発熱する。しかし第1通路26にはクーラントが流通しているため、第1吸着部21はクーラントにより冷却され、第1吸着部21の過剰昇温は抑制される。
【0036】
このように、吸着式ヒートポンプ2における第1吸着部21および第2吸着部22は、作動流体を吸着剤に吸着して発熱する吸着モードと、吸着剤に吸着された作動流体を吸着剤から脱離する脱離モードとを所定時間毎に交互に実行させる。所定時間は吸着剤、作動流体の種類や量等に応じて適宜設定される。上記したように、冷房運転時には吸着式ヒートポンプ2が運転され、第1モードおよび第2モードによって冷却部23は冷却される。このため、室外熱交換器7で凝縮され冷却部23に流入した空調装置用の冷媒は、冷却部23により予備冷却される。このため、実施形態の空調装置によると、冷房運転時の冷房効率を向上させることができる。なお、冷房運転時すなわち吸着式ヒートポンプ2の作動時には、吸着用凝縮器50および吸着用熱交換器52は加熱される。
【0037】
〔暖房運転〕
暖房運転時には、制御部100は吸着式ヒートポンプ2を停止させる。このとき、室内機8において暖房運転に使用された冷媒は、液体状または気液二相状となる。この冷媒は、図1における流通経路とは逆に、室内機8から冷媒通路74の往路74xに吐出される。往路74xに吐出された冷媒は、更に室外膨張弁99で膨張され、その後室外熱交換器7に供給される。このため暖房時には、室外熱交換器7は冷媒を気化させる蒸発器として機能する。室外熱交換器7から吐出された気体状の冷媒は冷媒弁73を介してコンプレッサ83に流入する。そして冷媒はコンプレッサ83で圧縮されて高温高圧となり、冷媒通路74の復路74yから室内機8に流れ、室内熱交換器82において凝縮されて凝縮熱を発生させる。この結果、室内が暖房される。
【0038】
ところで、上述したように、暖房運転時には吸着式ヒートポンプ2は停止しているため、吸着用凝縮器52、第1吸着部21、第2吸着部22および冷却部23へのクーラントの流通を停止している。すなわち、このとき吸着用凝縮器50は加熱されず、冬季においては、図3に示すように基体15の最外側に位置する吸着用凝縮器50に着霜または積雪する可能性がある。しかし、このとき空調装置自体は動作しているため、空調装置の実質的な駆動源であるエンジン14もまた動作している。したがって、エンジン14によって加熱されたクーラントによって吸着式熱交換器52を加熱することができ、ひいては加熱された吸着式熱交換器52によって吸着用凝縮器50を加熱することができる。具体的には、制御部100は暖房運転時においても、定期的に第1四方弁24および第2四方弁25の切り替え制御を行う。第1四方弁24および第2四方弁25が第1吸着部21側の第1通路26とエンジン用クーラント通路9とを接続すると、第1吸着部21内部の吸着剤および作動流体がエンジン用クーラントによって暖められる。その後、第1四方弁24および第2四方弁25が第1吸着部21側の第1通路26と吸着用クーラント通路6とを接続すると、吸着用クーラントが第1吸着部21内部の吸着剤および作動流体によって暖められる。暖められた吸着用クーラントは吸着用熱交換器52に流入し吸着用熱交換器52を暖めるとともに、吸着用熱交換器52に一体化されている吸着用凝縮器50を暖める。このため、吸着用熱交換器52によって吸着用凝縮器50の霜や雪を溶かすことができる。同様に、第1四方弁24および第2四方弁25が第2吸着部22側の第2通路27とエンジン用クーラント通路9とを接続すると、第2吸着部22内部の吸着剤および作動流体がエンジン用クーラントによって暖められる。その後、第1四方弁24および第2四方弁25が第2吸着部22側の第2通路27と吸着用クーラント通路6とを接続すると、吸着用クーラントが第2吸着部22内部の吸着剤および作動流体によって暖められる。暖められた吸着用クーラントは吸着用熱交換器52に流入し吸着用熱交換器52を暖めるとともに、吸着用熱交換器52に一体化されている吸着用凝縮器50を暖める。このため、吸着用熱交換器52によって吸着用凝縮器50の霜や雪を溶かすことができる。よって、実施形態の空調装置は冬季の暖房運転効率にも優れる。
【0039】
なお、吸着用クーラントの温度は、吸着モードにおいて発熱した吸着剤の過剰な温度上昇を抑制できる程度の温度であれば良く、例えば夏期における外気温よりも高くても良い。吸着用クーラントは、エンジン用クーラントと併用することもできるし、エンジン用クーラントとは異なる流体であっても良い。吸着用クーラントがエンジン用クーラント以外の流体である場合、この吸着用クーラントはエンジン用クーラントと熱交換しても良い。或いは、エンジン用クーラントとは全く異なる経路を流通し、エンジンの廃熱により直接的または間接的に暖められても良い。吸着用クーラントとエンジン用クーラントとを併用すれば、空調装置の部品点数を低減でき、コストダウンできる利点がある。実施形態では制御部100の制御によって吸着用クーラントを間接的に暖めたが、エンジン用クーラント通路9を一部分岐させて吸着用クーラント通路6に合流させ、吸着用クーラントをエンジン14によって加熱しても良い。また、その他エンジン14の廃熱を用いる方法で吸着用クーラントを暖めても良い。何れの場合にも、エンジン14の廃熱を有効利用することで、冬季にも吸着用凝縮器50を暖めることができ、暖房運転効率を向上させることができる。
【0040】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。例えば、室外機1の各構成要素の配置は図3に示す配置に限定されない。また、吸着部を3個以上の複数個設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の空調装置は、住家、店舗、工場、倉庫、その他の建物用の空調装置として好ましく利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1は室外器、10は送風ファン(送風要素)、11は送風経路、2は吸着式ヒートポンプ、21は第1吸着部、22は第2吸着部、23は冷却部、14はエンジン、15は基体、50は吸着用凝縮器(吸着式ヒートポンプ用凝縮器)、52は吸着用熱交換器(吸着式ヒートポンプ用熱交換器)、40は作動流体通路、6は吸着用クーラント通路、60はポンプ(吸着用クーラント用のポンプ)、7は室外熱交換器、73は冷媒弁、74は冷媒通路、76は迂回路、8は室内機、80は室内膨張弁、82は室内熱交換器、83はコンプレッサ、9はエンジン用クーラント通路、90はポンプ(エンジン用クーラント用のポンプ)、91はエンジン用ラジエータ、92はエンジン三方弁、100は制御部を示す。
図1
図2
図3