特許第5910883号(P5910883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 ワイテックスの特許一覧

<>
  • 特許5910883-無線タグ用複合アンテナ 図000002
  • 特許5910883-無線タグ用複合アンテナ 図000003
  • 特許5910883-無線タグ用複合アンテナ 図000004
  • 特許5910883-無線タグ用複合アンテナ 図000005
  • 特許5910883-無線タグ用複合アンテナ 図000006
  • 特許5910883-無線タグ用複合アンテナ 図000007
  • 特許5910883-無線タグ用複合アンテナ 図000008
  • 特許5910883-無線タグ用複合アンテナ 図000009
  • 特許5910883-無線タグ用複合アンテナ 図000010
  • 特許5910883-無線タグ用複合アンテナ 図000011
  • 特許5910883-無線タグ用複合アンテナ 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910883
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】無線タグ用複合アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/26 20060101AFI20160414BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20160414BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20160414BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   H01Q9/26
   H01Q7/00
   H01Q1/38
   G06K19/077 252
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-199261(P2012-199261)
(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-57130(P2014-57130A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】506267651
【氏名又は名称】株式会社 ワイテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100098198
【弁理士】
【氏名又は名称】旦 武尚
(72)【発明者】
【氏名】豊田 純一
(72)【発明者】
【氏名】小林 公人
(72)【発明者】
【氏名】赤木 忠則
(72)【発明者】
【氏名】岩田 和久
【審査官】 米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/110381(WO,A1)
【文献】 特開2008−217406(JP,A)
【文献】 特開2009−134709(JP,A)
【文献】 特開2009−284182(JP,A)
【文献】 特表2012−506079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/26
G06K 19/077
H01Q 1/38
H01Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行長辺と短辺とを有する環状導体の一方の長辺に無線タグ用ICチップを介在接続すると共に、他方の長辺をほぼ3等分した二つの給電点にそれぞれ前記各短辺の外側に対称配置した蛇行導体と先端容量装荷導体とを順次直列に接続して半波長ダイポールアンテナを構成する一方、このアンテナに前記給電点を有する長辺を含めて方形のループアンテナの1辺を非接触結合させることで、このループアンテナによる送受電磁波中の磁界波を前記ダイポールアンテナによる送受電磁波中の電界波に加えて送受信可能に構成した無線タグ用複合アンテナ。
【請求項2】
平行長辺と短辺とを有する環状導体の一方の長辺に無線タグ用ICチップを介在接続すると共に、他方の長辺をほぼ3等分した二つの給電点にそれぞれ前記各短辺の外側に対称配置した蛇行導体と先端容量装荷導体とを順次直列に接続して半波長ダイポールアンテナを構成する一方、前記給電点を有する長辺に方形のループアンテナの1辺を導通接続することで、このループアンテナによる送受電磁波中の磁界波を前記ダイポールアンテナによる送受電磁波中の電界波に加えて送受信可能に構成した無線タグ用複合アンテナ。
【請求項3】
ループアンテナの前記1辺の幅を他の3辺の幅よりも小さい長辺の幅と同等にすることで、前記1辺の電流密度を他の3辺の電流密度よりも強めてダイポールアンテナに加わるループアンテナの送受電磁波中の磁界波を強めたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線タグ用複合アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ用アンテナの改良に係り、特に本発明は、使用者が身に着けた無線タグでも、受信処理と応答送信とが確実にできる無線タグ用複合アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、無線タグ用電磁波の割り当て周波数としては、波長が約32.6cm程度でUHF帯920MHz程度の電磁波に移行したが、この帯域付近の電磁波を利用した無線タグ用アンテナとしては、例えば特許第4050206号公報(特許文献1)および特開2009−134709号公報(特許文献2)に記載の無線タグ用アンテナが周知である。
【0003】
上記特許文献1は、メアンダ(蛇行)形状の一対の放射素子の相対向する側の端部に給電して励振させる半波長ダイポールアンテナであって、一方の前記放射素子の給電点近傍と他方の前記放射素子の給電点近傍とを短絡するショートバーを、前記一対の放射素子から連続した線路として設けたダイポールアンテナである。
【0004】
特許文献2は、その公報中、図21のように細長い小判形の導体リングの長辺中央に無線タグ用ICチップを介在し、他方の長辺の2箇所には、それぞれ蛇行導体を経て端部導体を左右対称的に接続した上記公報中の段落「0196」記載のようなエイリアン・テクノロジー社製のALN−9540と称するダイポールアンテナの記載が有る。
【0005】
各特許文献1・2におけるダイポールアンテナをUHF帯・920MHz帯域の電磁波に応用したすると、左右一対のダイポールアンテナの長手寸法は、前記蛇行導体形状を適宜選定することで、上記電磁波の1/4波長である8.15cm以下に設定できると推測もでき、入退室管理カードとか、個人識別カードや競技者向けの安価なゼッケン等の現用一般的な無線タグ(以下現用一般の無線タグという)に利用できるものと推測てきる。
【0006】
ところが、これら各特許文献におけるダイポールアンテナは、送受電磁波中の電界波だけを送受信できるアンテナだから、水分を含む生体のように、静電シールド(電界遮蔽)作用が有る通常の使用者が身に着けた無線タグでは、電磁波中の電界波成分のシールド減衰が大きいので、送受信可能距離が極端に短くなり、使い物にならない場所も広範囲となるという根源的で切実な問題点が有る。
【0007】
また、上記ダイポールアンテナの電磁波中の電界波送受の指向性は、これを搭載した無線タグの肉厚方向にほぼ円形であると推測てき、タグの面方向に対しては、上記電界波の送受減衰が大きいので、特に無線タグを入れた通常の使用者の胸ポケット等の上下方向に対しては、電磁波の送受が著しく困難となり、高所や低所に設置した固定質問器(電磁波発射兼用受信チェック装置)に対する受信処理と送信応答とが著しく困難であるという本質的かつ大きい問題点が有る。
【0008】
したがって、前記各特許文献1・2のダイポールアンテナを用いた前記現用一般の無線タグの使用者は、例えば入退室その他の管理ゲート等の電磁波発射兼用受信チェック装置を通る度毎に、無線タグを身体から遠ざけ、上記チェック装置の電磁波送受面に対して無線タグを接近または接触させる必要が有るので、面倒かつ、厄介で煩わしいという根源的で切実な問題点が有る。
【0009】
そこで、無線タグ用アンテナの指向性を少しでも改善して通信可能距離を延ばすために、ダイポールアンテナ両端にループアンテナを接続したり、ダイポールアンテナ両端を幅方向に横切ってループアンテナを重ねた無線タグ用複合アンテナとして、特開2006−324766号公報(特許文献3)のような無線タグ用複合アンテナも周知である。
【0010】
この特許文献3は、アンテナおよびICチップを有し、データを電磁波で送受信可能な無線タグにおいて、1周の長さが1波長のループ構造を少なくとも2つ以上配置した構造または、上記ICチップを接続したダイポールアンテナに1辺の長さが2分の1波長と4分の1波長の長方形の無給電のループアンテナを重ねることで、通信可能距離を延ばせるとした無線タグである。
【0011】
上記特許文献3における1周の長さが1波長のループ構造を2つ以上配置した無線タグを前記UHF帯920MHz程度で波長が約32.6cm程度の電磁波を利用する場合は、1周の長さが上記1波長のループ構造を少なくとも2つ以上配置する必要が有る。
【0012】
したがって特許文献3では、例えば1辺が8.15cm程度の正方形ループアンテナ、または長辺が10cm・短辺が6.5cm程度の長方形のループアンテナを少なくとも2つ配置したアンテナ構造となってしまい、これでは、横幅8.5cm程度・縦寸法5.4cm程度の現用一般的な入退室管理カードとか、個人識別カードや競技者向けの安価なゼッケン等の無線タグには、全く利用できないという本質的かつ大きい問題点が有る。
【0013】
また、前記特許文献3における1辺の長さが2分の1波長と4分の1波長の長方形のループアンテナを配置した無線タグに、前記UHF帯920MHz程度で波長が約32.6cm程度の電磁波を利用した場合、上記ループ構造の大きさは、16.5cm×8.15cmのループアンテナ構造となってしまい、これでも横幅8.5cm程度・縦寸法5.4cm程度の現用一般的な入退室管理カードとか、個人識別カードや競技者向けの安価なゼッケン等の無線タグには、全く利用できないという根源的で切実な問題点が有る。
【0014】
さらに上記特許文献3は、ループアンテナによる送受電磁波中の磁界波を前記ダイポールアンテナによる送受電磁波中の電界波に加えて送受信するという技術的な意図が最初から無かったので、この文献3のどの実施例を見ても、ダイポールアンテナの両端部の幅方向にループアンテナを横切って接続または重合している。
【0015】
したがって、ダイポールアンテナに対するループアンテナの磁界結合が弱く、このループアンテナによる送受電磁波中の磁界波を前記ダイポールアンテナによる送受電磁波中の電界波に加えて送受信できず、通信可能距離を自ずと制限してしまうという本質的かつ大きい問題点が有る。
【0016】
この特許文献3における無線タグの肉厚方向の指向性は、送受電磁波中の電界波の指向性として、特許文献3の公報図面の図11から図13までの各図のように、無線タグの肉厚方向に対して8の字状であり、前記特許文献1のような円形の指向性に対し、特許文献3では、約3dBのレベル改善効果が有るとしている。
【0017】
ところが、送受電磁波中の磁界波に対する無線タグの肉厚方向の指向性と、送受電磁波中の磁界波に対する無線タグの面方向の指向性とは、それぞれ特許文献3の何処を見ても一切記載無く、示唆すらも無いので、この観点から見ても特許文献3には、送受電磁波中の磁界波に対する技術意図は、最初から無かったものと推測できる。
【0018】
また、特許文献3における送受電磁波中の電界波に対する無線タグの面方向の指向性は、前に述べた特許文献1のような円形の指向性では無く、特許文献3では上記公報図面の図11から図13までの各図のように5〜7dB減衰しているから、例えば胸ポケットに無線タグを入れた着身者の上下方向に対しては、電磁波の送受が不可能で、胸ポケットよりも高所や低所に設置した固定質問器(電磁波発射兼用受信チェック装置)に対する受信処理と送信応答とが不可能であるという根源的で切実な問題点が有る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第4050206号公報
【特許文献2】特開2009−134709号公報
【特許文献3】特開2006−324766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、使用者が身に着けた無線タグでも、受信処理と応答送信とが、かなり離れた場所でも確実にできる無線タグを加工性良く安価に多量提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記した本発明の目的は、平行長辺と短辺とを有する環状導体の一方の長辺に無線タグ用ICチップを介在接続すると共に、他方の長辺をほぼ3等分した二つの給電点にそれぞれ前記各短辺の外側に対称配置した蛇行導体と先端容量装荷導体(以下先端導体という)とを順次直列に接続して半波長ダイポールアンテナを構成する一方、このアンテナに前記給電点を有する長辺を含めて方形のループアンテナの1辺を非接触結合し、またはこの1辺を給電点を有する長辺に導通接続することで、このループアンテナによる送受電磁波中の磁界波を前記ダイポールアンテナによる送受電磁波中の電界波に加えて送受信可能に構成したことで達成できた。
【0022】
ただし、ループアンテナの前記1辺の幅を他の3辺の幅よりも小さい前記長辺の幅と同等にすることで、前記1辺の電流分布密度を他の3辺の電流分布密度よりも強めてダイポールアンテナに加わるループアンテナの送受電磁波中の磁界波を強めてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本件出願における請求項1および請求項2の各発明によれば、前記二つの給電点を有する長辺にループアンテナの1辺を非接触結合または導通接続することで、このループアンテナによる送受電磁波中の磁界波を前記ダイポールアンテナによる送受電磁波中の電界波に加えて送受信可能にできたので、水分を含む物体や生体のように、磁気シールド(磁気遮蔽)作用は無く、静電シールド(電界遮蔽)作用が有る通常の使用者が身に着けた無線タグでも、受信処理と応答送信とが、かなり離れた場所で確実にできるという優れた効果を奏し得た。
【0024】
本発明における請求項3の発明によれば、ループアンテナの前記1辺の幅を他の3辺の幅よりも小さい前記長辺の幅と同等にすることで、この長辺に対してインピーダンス整合特性や共振ポイントを変えずに、前記1辺の電流分布密度を他の3辺の電流分布密度よりも強くでき、ダイポールアンテナに加わるループアンテナの送受電磁波中の磁界波を強めたことで、送受信可能範囲をさらに拡大できるるという効果を付加できた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による無線タグの一例を示す平面図
図2】本発明に用いるダイポールアンテナの例を示す平面図
図3】本発明による無線タグの分解斜視図
図4】本発明による無線タグの一例を示す斜視図
図5】本発明による無線タグの一例を示す裏面図
図6】応答可能限界レベルチェックの実行例を示す説明図
図7図6の実行例に用いる無線タグの一例を示す平面図
図8図6の実行例に用いる無線タグの他の例を示す平面図
図9図6の実行例に用いる無線タグのさらに他の例を示す平面図
図10】応答可能限界距離の周波数特性チャート
図11】応答可能限界距離の指向特性チャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態の一例を説明すると、図1図2のようポリプロピレンなどで作ったほぼ長方形の絶縁フィルムFの表面に図2のように平行長辺1が短辺2よりも4倍程度長く、幅寸法が1.5mm程度の環状導体3を現用一般のプリント回路形成手段とか、帯金や金属箔の導電接着などの周知手段で定着すると共に、この環状導体3における一方の長辺1の中央に周知の無線タグ用ICチップ4を同図2のように介在接続する。
【0027】
一方、他方の長辺1を同図2のようにほぼ3等分した二つの給電点P・Pには、それぞれ前記各短辺2の外側に同図2のように対称的に配置した蛇行導体5と、これら各蛇行導体5のさらに外側に対称配置した板状の先端導体6とを上記図2のように順次直列に接続して左右一対で半波長のダイポールアンテナDを構成する。
【0028】
次いで、表面に前記ダイポールアンテナDを有する前記絶縁フィルムFの表面を図1図3のような絶縁性タグ板7の裏面の1辺付近に接着材等で定着し、先端導体6を含めて前記給電点P・Pを有する長辺1の部分における絶縁フィルムFの裏面にこのフィルムFを挟み、図1図3のような長方形のループアンテナLの1辺L1を重合定着し、または、上記1辺L1を長辺1に導通接続した後、他の3辺を前記タグ板7に図1図4のように接着材等で定着する。
【0029】
こうすることで、前記ループアンテナLによる送受電磁波中の磁界波を前記ダイポールアンテナDによる送受電磁波中の電界波に同相に加えることができ、水分を含む物体や生体のように、磁気シールド作用が無く、静電シールド作用が有る通常の使用者が身に着けた無線タグでも、受信処理と応答送信とが、送受電磁波中の磁界波により、かなり離れた場所で可能な図1図5のような無線タグ用複合アンテナを有する本発明による無線タグを構成できた。
【0030】
ただし、前記ループアンテナLは、周長が送受電磁波の波長(約32.6cm)よりも短い方形枠、例えば86×54mm程度の長方形で、3辺の幅が約5mm程度、前記1辺L1の幅が給電点P・Pを有する長辺1の幅と同等に帯金や金属箔等で作ったり、板金の打ち抜き加工等で作ったが、このループアンテナLは、絶縁フィルムFの裏面を含めてタグ板7の裏面に周知の導電プリントパターン形成手段で形成してもよい。
【0031】
本発明による無線タグ用複合アンテナは、以上のように前記環状導体3における二つの給電点を有する長辺1にループアンテナLの1辺を重合して結合したので、このループアンテナによる送受電磁波中の磁界波を前記ダイポールアンテナDによる送受電磁波中の電界波に加えて送受信可能にでき、磁気シールド作用が無く、静電シールド作用が有る通常の使用者が身に着けた無線タグでも、受信処理と応答送信とが、送受電磁波中の磁界波により、かなり離れた場所でも確実に可能になった。
【0032】
上記の事実を裏付ける根拠として、現用一般の電磁波発射兼用受信チェック装置に対し、磁気シールド作用が無く、静電シールド作用が有る通常の使用者が身に着けた無線タグ用各種アンテナの応答可能限界送信出力レベル(以下、応答可能限界レベルという)の実測値について以下に説明する。
【0033】
上記応答可能限界レベルの実測条件としては、図6のように床面11に置いた高さ1120mmの絶縁性の台12上に、水分を含む生体のように、磁気シールド作用が無く、静電シールド作用が有る通常の使用者が身に付けた無線タグの実測条件に近似させるために、20リットルの水を入れた現用一般の灯油貯蔵用ポリ容器13を載置し、この容器の垂直正面に同図6のように前記各種無線タグMをその中央部が床上高さ1120mmの位置に前記各長辺が上下になる方向に着脱可能に定着する。
【0034】
次いで、上記無線タグMの表面から400mm離れた前記床面11上に現用一般のワンパッチアンテナ(直線偏波)Aを上向きに定置すると共に、このアンテナには、送信出力を可変して前記応答可能限界レベルを測定できる現用一般の無線タグ用リーダ/ライタの送受信端子を周知の同軸ケーブルにより接続する。ただし、このリーダ/ライタには、米国のImpinj社製のリーダ/ライタを用いた。
【0035】
上記の実測条件に基づき、図1のような本発明による無線タグ用複合アンテナの前記応答可能限界レベルを測定した処、この実測値は23dBmであった。また図2のような本発明に用いるダイポールアンテナDの実測値と、前記特許文献2のダイポールアンテナの実測値と、図7のようにループアンテナの前記1辺L1を本発明に用いるICチップ4を有する長辺1に重合した無線タグの実測値では、これら三者共に応答可能限界レベルは28dBmであった。
【0036】
さらに、図8のように本発明によるダイポールアンテナにおける左右の先端導体6にループアンテナの長辺を特許文献3のように重合した無線タグMの応答可能限界レベルは30dBmであり、図9で示すように本発明による左右の蛇行導体5にループアンテナの長辺を重合した無線タグMの応答可能限界レベルは25dBmであつた。
【0037】
以上のように、本発明による無線タグ用複合アンテナは、特許文献2のアンテナよりも5dBm・本発明によるダイポールアンテナにおける左右の先端導体6に図8のようにループアンテナの長辺を重合したアンテナよりも7dBmそれぞれ応答可能限界レベルが向上したことが判明した。
【0038】
次に、800MHz〜1000MHz程度の使用周波数に対する各種無線タグ用アンテナの応答可能限界距離の実測値変化(以下、実測値変化という)を図10に示す周波数特性チャートに基づき説明するが、このチャートにおける縦軸は、上記応答可能限界距離(メートル)を表し、横軸は周波数(MHz)を示す。ただし、使用測定機器は、Voyantic社製Tagformance liteを用いた。
【0039】
上記応答可能限界距離の実測条件としては、高さ1.5m程度の絶縁性の可動台車上に置いた電磁波送受信水平ダイポールアンテナに対向させた水を入れない前記ポリ容器の垂直正面に各種無線タグを上記アンテナと同方向に一枚ずつ着脱可能に定着し、上記可動台車を動かして上記アンテナ電磁波放射面から無線タグの表面までの距離を測定した。
【0040】
その結果、前記図10における上部点線曲線は、前記図2に示す本発明に用いるダイポールアンテナの実測値変化であり、図10における上部実線曲線は、図1に示すような本発明による無線タグ用複合アンテナの実測値変化であるが、920MHz付近の応答可能限界距離は、両者共に12m程度で大差は無く、各アンテナ共に主として送受電磁波中の電界波による応答可能限界距離であると推測できる。
【0041】
また、磁気シールド作用が無く、静電シールド作用が有る普通の水を入れた状態の前記ポリ容器の垂直正面に定着した前記図2に示す本発明に用いるダイポールアンテナの実測値変化は、前記図10の下方における破線曲線の通りであり、これと同様に水を入れた状態のポリ容器の垂直正面に定着した図1に示すような本発明による無線タグ用複合アンテナの実測値変化は、同図10における下部実線曲線の通りである。
【0042】
此処で、上記両アンテナの920MHz付近の応答可能限界距離を対比すると、図2に示す本発明に用いるダイポールアンテナの応答可能限界距離は、3.2mであり、図1に示すような本発明による無線タグ用複合アンテナの応答可能限界距離は、約5.7mであり、したがって上記ダイポールアンテナよりも、本発明による無線タグ用複合アンテナの方が1.78倍遠い距離まで応答可能だから、水を入れた前記ポリ容器を用いた実測値データは、各アンテナ共に主として送受電磁波中の磁界波による応答可能限界距離であると推測できる。
【0043】
次に、920MHzにおける各種無線タグ用アンテナの応答可能限界距離に関する指向特性の実測値変化(以下、実測値変化という)を図11に示す指向特性チャートに基づき説明するが、このチャートにおける円周方向目盛は、電磁波発射兼用受信チェック装置における送受信アンテナに対する無線タグの表面角度、放射線方向の目盛は、応答可能限界距離をそれぞれ示す。
【0044】
上記応答可能限界距離の実測条件としては、高さ1.5m程度の絶縁台上に設けた水平ダイポールアンテナによるテスト用送受信アンテナ(以下、テストアンテナという)に対して、先ず、可動台車上のターンテーブルに置いた水を入れない前記ポリ容器の垂直正面を対向させる。
【0045】
次いで、上記垂直正面に各種無線タグをそのアンテナが前記テストアンテナと同方向に向けて一枚ずつ着脱可能に定着し、上記可動台車とターンテーブルを交互に動かして、上記テストアンテナ電磁波放射面に対する無線タグ表面の角度と、この角度の変化に対する上記電磁波放射面から無線タグの表面までの距離を測定することで、各種無線タグの指向特性と、応答可能限界距離とを実測した。
【0046】
その結果として、前記図11における外側点線曲線は、前記図2に示す本発明に用いるダイポールアンテナの実測値変化であり、図11における外側実線曲線は、図1に示すような本発明による無線タグ用複合アンテナの指向特性実測値変化であるが、前記テストアンテナに正面で対向した無線タグは、上記両者共に12m程度で大差は無く、上記アンテナに背面で対向した無線タグは、両者共に10m程度で、正面で対向したときよりも約2m短くなっているから、水を入れない前記ポリ容器を用いた実測値データは、各アンテナ共に主として送受電磁波中の電界波による応答可能限界距離であると推測できる。
【0047】
また、磁気シールド作用が無く、静電シールド作用が有る普通の水を入れた状態の前記ポリ容器の垂直正面に定着した前記図2に示す本発明に用いるダイポールアンテナの実測値変化は、前記図11の中央寄り破線曲線の通りの8の字状指向特性であり、これと同様に水を入れた状態のポリ容器の垂直正面に定着した図1に示すような本発明による無線タグ用複合アンテナの実測値変化は、同図11における中央寄り実線曲線の通りの8の字状指向特性となっている。
【0048】
此処で、上記両アンテナの指向特性と、応答可能限界距離を対比すると、前記テストアンテナに正面および背面で対向するダイポールアンテナの応答可能限界距離は、約4mであり、前記テストアンテナに正面および背面で対向する本発明による無線タグ用複合アンテナの応答可能限界距離は、約6mであり、したがって、これらの事柄からも上記ダイポールアンテナよりも、本発明による無線タグ用複合アンテナの方が約1.5倍遠い距離まで応答可能だから、水を入れた前記ポリ容器を用いた実測値データは、各アンテナ共に主として送受電磁波中の磁界波による応答可能限界距離であると推測できる。
【符号の説明】
【0049】
F…絶縁フィルム
1…長辺
2…短辺
3…環状導体
4…ICチップ
5…蛇行導体
6…先端導体
7…タグ板
P…給電点
D…ダイポールアンテナ
L…ループアンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11