(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910884
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 2/02 20060101AFI20160414BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20160414BHJP
H01M 2/34 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
H01M2/02 A
H01M2/10 E
H01M2/34 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-209196(P2012-209196)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-63686(P2014-63686A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 瞬
(72)【発明者】
【氏名】内田 眞弘
(72)【発明者】
【氏名】殿西 雅光
(72)【発明者】
【氏名】七元 克哉
【審査官】
松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭41−012513(JP,Y1)
【文献】
特開2014−063685(JP,A)
【文献】
実開昭58−186558(JP,U)
【文献】
特開2001−313009(JP,A)
【文献】
特開2010−067524(JP,A)
【文献】
特開2011−222198(JP,A)
【文献】
特表2010−527103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
H01M 2/10
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケースの外側周面を被覆して設けられた絶縁フィルムを有しており、
前記絶縁フィルムが、前記電池ケースの外側周面以外の面を覆うことなく、且つ、外側周面からはみ出ており、
前記電池ケースの外側周面からのはみ出し形状が、側面視において非対称形状である電池。
【請求項2】
前記絶縁フィルムにおいて前記電池ケースの上面よりも上側に延出した部分に接着部が設けられている請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記絶縁フィルムにおいて前記電池ケースの上面よりも上側に延出した部分に接着部が設けられていない請求項1記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ケースの外側面に絶縁フィルムが設けられる電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電池の電池ケースの外側面には、絶縁対策のために絶縁フィルムが設けられている。具体的には、特許文献1に示すように、絶縁フィルムを例えば熱収縮させて電池ケースを被覆した場合、絶縁フィルムが電池ケースの上面又は底面の一部を覆うことになる。
【0003】
しかしながら、このように絶縁フィルムが電池ケースの上面又は底面の一部を覆った場合、電池ケースの外側周面の端部を覆う絶縁フィルムが当該端部から離間して隙間が生じてしまう。このため、複数の電池の近接配置が阻害されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−83804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、電池ケースの外側周面の端部において、絶縁フィルムと電池ケースとの間に隙間が生じないようにすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る電池は、電池ケースの外側周面を被覆して設けられた絶縁フィルムを有しており、前記絶縁フィルムが、前記電池ケースの外側周面以外の面を覆うことなく、且つ、外側周面からはみ出ていることを特徴とする。
【0007】
また、前記絶縁フィルムにおいて前記電池ケースの上面から延出した部分に接着部が設けられていることが望ましい。
【0008】
前記絶縁フィルムにおいて前記電池ケースの上面から延出した部分に接着部が設けられていないことが望ましい。
【0009】
前記電池ケースの外側周面からのはみ出し形状が、側面視において非対称形状であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
このように構成した本発明によれば、絶縁フィルムが電池ケースの外側周面以外の面を覆わない構成としているので、絶縁フィルムを電池ケースの外側周面の端部に密着させることができ、複数の電池を近接配置し易くできる。また、絶縁フィルムが電池ケースの外側周面からはみ出ているので、互いに隣接する電池間の絶縁距離を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の電池を示す平面図及び2つの側面図。
【
図2】同実施形態の絶縁フィルムを取り外した状態の電池を示す平面図及び2つの側面図。
【
図3】同実施形態の電池ケース及び絶縁フィルムの配置態様を示す部分拡大断面図。
【
図4】変形実施形態の電池を示す平面図及び2つの側面図。
【
図5】変形実施形態の電池を示す平面図及び2つの側面図。
【
図6】変形実施形態の電池を示す長手方向から見た側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明に係る電池の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態の電池1は、例えば自動車に搭載される蓄電装置を構成するリチウムイオン二次電池である。なお、蓄電装置は、1つの電池1を用いて構成されたものであっても良いし、複数の電池を組み合わせて構成されたものであっても良い。
【0014】
具体的にこの電池1は、
図1及び
図2に示すように、内部に発電要素(不図示)が収容された電池ケース2と、当該電池ケース2の外側面に配置される絶縁フィルム3とを有する。なお、
図1は、絶縁フィルム3を取り外した状態の電池1を示している。
【0015】
電池ケース2は、概略直方体形状をなすものであり、平面視において長手方向及び短手方向を有する扁平形状をなすものである。そして、この電池ケース2は、正極端子T1及び負極端子T2が設けられた端子設置面である上面2aと、この上面2aの四辺それぞれに連続して設けられた4つの側面2b〜2eと、これら4つの側面2b〜2eの下端に連続する下面2fとを有する。なお、この下面2fは、前記端子設置面2aに対向する面である。
【0016】
なお、この電池ケース2の外側周面である4つの側面2b〜2eはそれぞれ、
図1及び
図2に示すように、平面部21と、当該平面部21の下端部に連続して形成されて前記平面部21から湾曲又は傾斜して形成されたコーナー部22とを有する。このコーナー部22は、各側面2b〜2eと下面2fとの間にそれぞれ形成されている。
【0017】
絶縁フィルム3は、絶縁性及び難燃性を有する樹脂フィルムであり、電池ケース2の外側周面である4つの側面2b〜2eに巻回されて被覆する1枚のシート状をなすものである。
【0018】
しかして本実施形態の電池1においては、特に
図3に示すように、電池ケース2の外側周面2b〜2eに設けられた絶縁フィルム3が、電池ケース2の外側周面2b〜2e以外の面を覆うことなく、且つ、外側周面2b〜2eから上側又は下側にはみ出ている。なお、
図3において、電池ケース2内部の発電要素は省略している。
【0019】
具体的には、絶縁フィルム3の上端部が、電池ケース2の上面2aを覆うことなく、且つ、外側周面である4つの側面2b〜2eそれぞれから上側にはみ出しており、電池ケース2の上面2aよりも上側に延出した延出部3xを有している。一方、絶縁フィルム3の下端部は、4つの側面2b〜2eにおける平面部21及びコーナー部22の境界又はその下側に位置しており、平面部21と平行な方向を向いている。つまり、絶縁フィルム3における各側面2b〜2eに設けられた部分それぞれが、断面視において、各側面2b〜2eの平面部21と平行な方向な直線形状をなしている。
【0020】
さらに、絶縁フィルム3は、前記電池ケース2の平面部21に接着剤により接着されている。このとき、絶縁フィルム3において電池ケース2の上面2aよりも上側に延出した延出部3xに、接着剤による接着部を設ける構成としても良いし、前記延出部3xに接着部を設けない構成としても良い。
【0021】
前記接着部を設けた場合には、外部に露出している接着部に周囲の異物が付着されるので、絶縁フィルム3及び電池ケース2の間、又は互いに隣接する電池1の間に異物が侵入しにくくなる。これにより、絶縁フィルム3の破損を防止することができ、隣接する電池1間の短絡を防止することができる。また、絶縁フィルム3の外面に異物がある場合、電池組み付け時に、電池1とその周囲の機器(隣接する電池含む)の間に異物が挟み込まれ、それらの間隔が不必要に広がってしまうが、前記接着部を設けることにより、間隔が無駄に広がることを防止できる。
【0022】
一方、前記接着部を設けない場合には、上面2aから延出した絶縁フィルム3に異物が付着することを防止できる。これにより、正極端子T1及び負極端子T2が存在する上面2aに異物が滞留することを防ぐことができる。また、上面2aから延出した絶縁フィルム3に異物が付着して、絶縁フィルム3の延出部3x部が折れてしまうことを防止できる。
【0023】
このように構成した本実施形態に係る電池1によれば、絶縁フィルム3が電池ケース2の外側周面2b〜2e以外の面(上面2a)を覆わない構成としているので、絶縁フィルム3を電池ケース2の外側周面2b〜2eの端部に密着させることができ、複数の電池1を近接配置し易くできる。また、絶縁フィルム3が電池ケース2の外側周面2b〜2eからはみ出した延出部3xを有しているので、互いに隣接する電池1間の絶縁距離を長くすることができる。
【0024】
さらに、絶縁フィルム3が、電池ケース2の平面部21に接着されているので、絶縁フィルム3と電池ケース2とを一層密着させることができ、電池ケース2と絶縁フィルム3外部との間の熱伝導効率を向上させることができる。これにより、電池1の冷却又は加熱が容易となる。
【0025】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0026】
例えば、絶縁フィルム3の外側周面2b〜2eからのはみ出し形状を、側面視において非対称形状としても良い。つまり、延出部3xの側面視形状を非対称形状としても良い。これならば、電池1の正極端子T1及び負極端子T2が視認しやすくなる。また、隣接する電池の端子同士を接続するバスバーを付けやすくすることもできる。
【0027】
具体的には、
図4に示すように、外側周面を短手方向から見た側面視において、つまり、正極端子T1及び負極端子T2の両方が左右に見える側面視において、絶縁フィルム3のはみ出し形状が非対称形状となるように構成することが考えられる。
図4においては、前記側面視において、中央部から正極端子T1側のはみ出し高さが中央部から負極端子T2側のはみ出し高さよりも高い場合を示している。バスバーによって隣接する電池1の正極端子T1及び負極端子T2を接続する場合には、当該バスバーによって接続される端子側において絶縁フィルム3のはみ出し高さが低くなるように構成する。これにより、端子T1、T2にバスバーを付けやすくすることができる。なお、側面視における非対称形状は、
図4に限られず、絶縁フィルム3のはみ出し形状によって、正極端子T1及び負極端子T2の位置が判別可能であれば、種々の形状とすることができる。
【0028】
また、
図5に示すように、外側周面を長手方向から見た側面視において、つまり、正極端子T1及び負極端子T2が重なって見える側面視において、絶縁フィルム3のはみ出し形状が非対称形状となるように構成することが考えられる。
図5においては、前記側面視において、中央部から一方側(側面2c側)のはみ出し高さが中央部から他方側(側面2b側)のはみ出し高さよりも低い場合を示している。バスバーによって隣接する電池1の正極端子T1及び負極端子T2を接続する場合には、当該バスバーが延出する側において、絶縁フィルム3のはみ出し高さが低くなるように構成する。これにより、端子T1、T2にバスバーを付けやすくすることができる。なお、側面視における非対称形状は、
図5に限られず、絶縁フィルム3のはみ出し形状によって、正極端子T1及び負極端子T2の位置が判別可能であれば、種々の形状とすることができる。
【0029】
また、1枚の絶縁フィルム3を電池ケース2に巻回する構成において、絶縁フィルム3のはみ出し形状を非対称形状する構成の他に、
図6に示すように、複数枚の絶縁フィルム3(
図6では、2枚の絶縁フィルム3a、3b)を電池ケース2の外側周面2b〜2eに貼り付ける構成において、各絶縁フィルム3のはみ出した部分の高さを互いに異ならせる構成としても良い。これによっても正極端子T1及び負極端子T2の位置が判別可能となる。
【0030】
さらに、前記実施形態では、絶縁フィルム3の上端部が、電池ケース2の上面2aを覆うことなく上面2aよりも上側にはみ出した構成であったが、絶縁フィルム3の下端部が、電池ケース2の下面2fを覆うことなく下面2fよりも下側にはみ出した構成としても良い。
【0031】
その上、前記実施形態では、角形電池について説明したが、円形電池に適用可能であることは言うまでも無い。また、電池を設置する向きについても、端子が上方に位置するような向きには限定されない。さらに、本発明は、キャパシタやコンデンサ等の蓄電素子にも適用可能である。
【0032】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・電池
2・・・電池ケース
2a・・・上面
2b〜2e・・・外側周面
2f・・・下面
3・・・絶縁フィルム