(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁被覆の導電マットmから生体に交流高電圧を印加して治療を実行する電位治療器において、交流昇圧トランスTにおける2次コイルL2の高圧端P1に、この高圧端に向けたダイオードD1と抵抗R1との並列回路に対し、保護兼用分圧抵抗Ro を直列接続した第1分圧回路B1の1端を接続すると共に、この分圧回路B1の他端と前記2次コイルL2における大地電位の接地端P2との間には、この接地端に向けたダイオードD2に抵抗R2を直列接続した第2分圧回路B2を接続し、前記各分圧回路B1・B2間における分圧出力端bから得た、正電圧と負電圧との波高値比率がほぼ1対3の高圧交流を高圧ケーブルにより、導電マットmに生体印加交流として給電可能に構成することで、導電マットmだけに直列の保護用抵抗を省略すると共に、導電マットmの対接地インピーダンスを低減することで、導電マットmの使用形態の変動に伴う生体印加交流の正電圧と負電圧との波高値比率の変動を抑制可能に構成したことを特徴とする交流電位治療器。
【背景技術】
【0002】
従来の交流電位治療器としては、例えば本件出願人が先に提案した特許第260957
4号公報(特許文献1)のように、交流昇圧トランスの高圧2次コイルの両端に設けた正
電圧ブリーダ回路により、生体印加交流の正電圧と負電圧との波高値比率を約1対3に設
定し、健康な人体内における正負イオンの理想的な存在比率に等しい割合で生体に交流電
位を印加することで、電位治療効果に有効性と即効性を持たせ、かつ生体拒否反応の発生
を防止した交流電位治療器が周知である。
【0003】
この特許文献1は、その段落0009と公報図面および、本願添付の
図3のように、商
用電源ACに1次コイルL1を接続した昇圧トランスTにおける高圧2次コイルL2の高
圧端P1と接地端P2との間に、高圧端に向けたダイオードD1と抵抗R1との並列回路
に、抵抗R2と接地端に向けたダイオードD2との直列回路を直列に接続することで、こ
れら各回路の相互接続部b1から正電圧と負電圧との波高値比率がほぼ1対3の高圧交流
を得ると共に、この高圧交流を10MΩ程度の保護用抵抗R0を経た保護出力端b2から
前記導電マットmに生体印加交流として給電する交流電位治療器である。
【0004】
ただし、この文献1では、上記段落と公報図面および、本願添付の
図3のように、トラ
ンス1次コイルL1の大地電位ラインEと、2次コイルL2の接地端P1との間に1MΩ
程度の保護用抵抗Rを接続することで、上記接地端P2を大地電位保持している。
【0005】
また、この文献1の段落0010には、「家屋の床などに対して絶縁シートにより大地
と絶縁して敷設した導電マットm上に患者の腰などの患部をあてがうと、正電圧と負電圧
との波高値比率がほぼ1対3の交流高電位を患部に印加できる。」との記載が有るが、こ
のような交流電位治療器は、この特許文献1に限らず、例えば特開昭58−146361
号公報(特許文献2)や、特許第4217814号公報(特許文献3)などの従来例は、
高圧交流を10MΩ(メグオーム)程度の保護用抵抗を経て絶縁被覆の導電マットmに生
体印加交流として給電していた。
【0006】
上記のような従来の導電マット給電手段では、保護出力端b2の対接地インピーダンス
(抵抗)が、
図3における12MΩ程度の抵抗R2の値に、前記10MΩ程度の保護用抵
抗R0の値を加えた22MΩ程度とかなり大きな抵抗値になり、これら各抵抗の値が大き
くなればなる程、導電マットの配置場所や、使用形態の変動に伴う生体印加交流の正電圧
と負電圧との波高値比率の変動が大きくなるという本質的な大きい問題点を生じる。
【0007】
ところが、上記特許文献1〜3の交流電位治療器を含めて現用一般の交流電位治療器は
、前記の問題点を初めとして、波高値比率の変動を解決しようとする着眼点と製品開発意
図が最初から無かったらしく、現在でも依然として分圧抵抗とは別の保護用抵抗R0を経
た高圧交流電圧を、導電マットmと生体患部との間に存在する絶縁被覆の誘電率に応じ、
使用形態の変動に対応したキャパシタンスを介し生体に印加している。
【0008】
上記キャパシタンスは、導電マットmの配置場所とか、生体患部に対する導電マット絶
縁被覆の密接のさせ方、仕方等の導電マットの使用形態の変動に対して大きく変動し、例
えば、木造家屋における2階和室の絶縁性ベッド上に載置した30×40cm程度の方形
導電マットの絶縁被覆上に片腕を載せた程度の場合は、導電マットと生体患部や大地との
間のキャパシタンスは、浮游容量を含めて、およそ220pF(ピコファラッド)程度で
、70Hzにおけるインピーダンスは、約10MΩ程度である。
【0009】
この反面、上記の場合と同様な使用条件の導電マット全面に身体を横たえて使用する場
合には、絶縁被覆の導電マットと生体や大地との間のキャパシタンスは、浮游容量を含め
て、およそ5倍の1100pF程度となり、70Hzにおけるインピーダンスは、約2M
Ω程度と約5分の1に低下する。
【0010】
具体的には、
図3における2次コイルL2の出力電圧を波高値で14KV(キロボルト
)とし、ダイオードD1と並列の抵抗R1を18MΩ・他の抵抗R2を12MΩに設定し
、導電マットmを外した無負荷状態の保護出力端b2と、大地電位ラインEとの間の生体
印加交流電圧eを対接地インピーダンスが約100MΩ程度の高圧プローブを用いたオシ
ロスコープにより測定した結果、上記保護出力端b2の負電圧は、12.7KV・正電圧
は、5.46KVで、正電圧と負電圧との波高値比率は、1:2.33であった。
【0011】
次いで、保護出力端b2に導電マットmを
図3のように接続し、生体印加交流を10M
Ω程度の保護用抵抗R0と導電マットmの絶縁被覆とを経て生体患部に印加した使用状態
で、保護出力端b2と大地電位ラインEとの間における生体印加交流電圧eを前記のよう
な高圧プローブを用いたオシロスコープにより測定した。
【0012】
全面に生体患部を密接させた導電マットmのインピーダンスは前記のように約2MΩだ
から、保護出力端b2の負電圧は、14×1/6=2.33KV・正電圧は、0.61K
Vとなり、正電圧と負電圧との波高値比率は、0.61:2.33=1:3.82となる
一方、片腕を載せた導電マットmのインピーダンスは、前記のように約10MΩだから、
保護出力端b2の負電圧は、14×1/2=7.0KV・正電圧は、2.14KVとなり
、正電圧と負電圧との波高値比率は、2.14:7.0=1:3.27となった。
【0013】
その結果、導電マットの配置場所や、使用形態の変動に伴う生体印加交流の正電圧と負
電圧との波高値比率の変動差は、3.82−3.27=0.55となり、各波高値比率の
平均値3.55に対し、15.5%も変動するという不安定要素が発生するため、交流電
位治療器として使えない場合も生じるという根源的で切実な問題点が有る。
【0014】
上記問題点の原因としては、片腕を載せた程度の導電マットと、全面に患部を密接した
導電マットとの正電圧差が前記のように、2.14−0.61=1.53KVであっても
、相互接続部b1の正電圧差は、保護用抵抗R0の電圧降下により、ほぼ半減した0.7
6KVとなるから、抵抗R2に流れる正の分流電流の増加による電圧降下も極く僅かとな
り、導電マットの正電圧上昇分を、さほど抑制できないためと推測できる。
【0015】
すなわち、導電マットmの配置場所や使用形態の変動により、
図3における保護出力端
b2の交流正電圧が低下すると、その低下分に応じ、抵抗R1と保護用抵抗R0の電圧降
下は増加するが、相互接続部b1の電圧は、さほど変化せず、また、保護出力端b2の交
流正電圧が上昇すると、その上昇分に応じて抵抗R1と保護用抵抗R0の電圧降下は減少
するが、相互接続部b1の電圧は、さほど変化しないためが原因として推測できる。
【0016】
これら各特許文献1〜3のほかに、特開2006−239032号公報(特許文献4
)のように、交流昇圧トランスの高圧2次コイルに中間タップを設け、このタップ電圧を
用いた高圧分圧回路を有する交流電位治療器も周知である。
【0017】
この従来例は、中間タップと他の電気部品間または/および中間タップと高圧2次コイ
ルの線間等に生じるリークとか、レヤーショートの発生を防ぐため、高圧電気安全確保の
観点から、上記中間タップを境として2次コイルを接地側と高圧側とに分け、昇圧トラン
スのボビンとして、1次コイルボビンの他に上記低圧側と高圧側に1個ずつ、計3個のボ
ビンが必要となるので、昇圧トランスが大型かつ、コスト高になるという根源的で切実な
問題点が有る。
【0018】
このような問題点が有る高圧2次コイルの上記中間タップを用いずに、前記従来例にお
ける保護用抵抗を本発明のように、抵抗値を変えず分圧抵抗としても兼用可能に接続変更
することで、導電マットの対接地インピーダンス(抵抗)を低減させれば、前記特許文献
1〜3における不安定要素は軽減できる筈であるが、このような手段により、導電マット
の配置場所や、使用形態の変動に伴う生体印加交流の正電圧と負電圧との波高値比率の変
動を抑制した交流電位治療器は、未だ現世には存在していない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための形態例を図面と共に説明すると、本発明の交流電位治療
器は、周波数が例えば50〜100Hz程度・電圧が波高値で14KV程度の正弦波交流
高電圧を導電マットmから、その絶縁被覆を介し生体に印加して電位治療を施す電位治療
器を構成するに当たり、商用交流自体や、
図1のように上記周波数の交流電圧を発生させ
得る現用一般のインバータ電源回路による交流電源Aに昇圧トランスTの1次コイルL1
を接続する。
【0028】
図1における上記トランスTの高圧2次コイルL2の接地端P2と、商用交流入力ライ
ンとの間に1MΩ・3W程度の保護用抵抗Rを接続することで、上記接地端P2を柱上ト
ランス等におけるアース線により大地電位にしたり、接地端P2をユーザーが大地に埋め
たアース棒等に接続することで、上記接地端P2の電位を大地電位に保持する。
【0029】
一方、前記2次コイルL2の高圧端P1に、
図1のように上記高圧端P1に向けた高圧用ダイオードD1と、18MΩ・3W程度の抵抗R1との並列回路に対し、10MΩ・3W程度の保護兼用分圧抵抗Ro を直列接続した第1分圧回路B1の1端を接続すると共に、この分圧回路B1の他端と前記2次コイルL2における大地電位の接地端P2との間には、この接地端P2に向けた高圧用ダイオードD2に12MΩ・3W程度の抵抗R2を直列接続した第2分圧回路B2を接続するのであるが、これら各抵抗の値は、前記段落0010に記載済の特許文献1における各抵抗の定数に応じて設定した。
【0030】
次いで、
図1に示す各分圧回路B1・B2間における分圧出力端bから得た、正電圧と負電圧との波高値比率がほぼ1対3の高圧交流を高圧ケーブルにより、導電マットmに生体印加交流として給電可能に構成することで、前記従来例における導電マットmだけに直列の前記保護用抵抗R0を省略すると共に、導電マットの対接地インピーダンスを低減することで、導電マットmの使用形態の変動に伴う生体印加交流の正電圧と負電圧との波高値比率の変動を抑制可能に構成できた。
【0031】
ただし、
図1における第1分圧回路B1内のダイオードD1と抵抗R1との並列回路と
保護兼用分圧抵抗Ro の接続位置、または/および、第2分圧回路B2内のダイオードD
2と抵抗R2の接続位置を
図2のように互いに置換してもよい。
【0032】
すなわち、高圧2次コイルL2の高圧端P1に保護兼用分圧抵抗Ro の1端を
図2のよ
うに接続すると共に、この抵抗Ro の他端と前記分圧出力端bとの間に前記並列回路を接
続したり、分圧出力端bに抵抗R2の1端を接続し、この抵抗R2の他端と前記接地端P
2との間にダイオードD2を接続しても同効である。
【0033】
本発明による交流電位治療器は、以上のような構成となしたので、これを使用するには
、家屋の床などに対して大地と絶縁して敷設した絶縁被覆の導電マットm上に患者の腰な
どの患部をあてがうと、正電圧と負電圧との波高値比率が所定比率、例えばほぼ1対3の
交流高電位を絶縁被覆を経て印加できる。
【0034】
具体的には、
図1に示す本発明の実施形態における電源電圧や、抵抗R1・R2・保護
兼用分圧抵抗Ro の各抵抗値を、前記段落0010における文献1の各部電圧測定時に用
いた電源電圧や、各抵抗値に対応した抵抗値にそれぞれ設定して前記分圧出力端bと、大
地電位ラインEとの間の生体印加交流電圧eを前記と同様な測定条件で測定した。
【0035】
先ず、トランス2次コイルL2の交流電圧を14KVとし、ダイオードD1に並列の抵
抗R1を18MΩ・3W、保護兼用分圧抵抗Ro の抵抗値を10MΩ・3W、抵抗R2を
12MΩ・3Wにそれぞれ設定した後、分圧出力端bから導電マットmを外した無負荷状
態の分圧出力端bと、大地電位ラインEとの間の生体印加交流電圧eを前記オシロスコー
プにより測定した結果、上記分圧出力端bの負電圧は、12.7KV・正電圧は、4.0
7KVで、正電圧と負電圧との波高値比率は、1:3.13であった。
【0036】
次いで、分圧出力端bに導電マットmを
図1のように接続し、生体印加交流を導電マッ
トmの絶縁被覆を経て生体患部に印加した使用状態で、分圧出力端bと大地電位ラインE
との間における生体印加交流電圧eを前記と同様に測定した。
【0037】
その結果として、全面に生体患部を密接させた導電マットmのインピーダンスは前記の
ように約2MΩだから、分圧出力端bの負電圧は、14×1/6=2.33KV・正電圧
は、0.82KVとなり、正電圧と負電圧との波高値比率は、0.82:2.33=1:
2.84となる一方、片腕を載せた程度の導電マットmのインピーダンスは、前記のよう
に約10MΩだから、分圧出力端bの負電圧は、14×1/2=7.0KV・正電圧は、
2.38KVとなり、正電圧と負電圧との波高値比率は、2.38:7.0=1:2.9
4となった。
【0038】
したがって、導電マットmの配置場所や、使用形態の変動に伴う生体印加交流の正電圧
と負電圧との波高値比率の変動差は、2.94−2.84=0.10となり、各波高値比
率の平均値2.89に対し、波高値比率の変動率は僅か0.34%だから、前記段落00
13に記載の特許文献1における波高値比率の変動率、15.5%に対して本発明におけ
る波高値比率の変動率は、殆ど零となったので、導電マットの配置場所や、使用形態の変
動に伴う生体印加交流の正電圧と負電圧との波高値比率の変動を抑制できた。
【0039】
本発明が上記作用を奏し得た理由は、導電マットmの配置場所や、使用形態の変動に伴
う導電マットmと生体患部との間における前記キャパシタンス増加により、導電マットm
の生体印加交流電圧が低下すれば、この低下分に応じて第1分圧回路B1の電圧降下は増
加するが、第2分圧回路B2の電圧降下が減少するため、上記電圧低下分を抑制できるも
のと推測できる一方、前記キャパシタンス減少により、上記生体印加交流電圧が上昇すれ
ば、これに応じて第1分圧回路B1の電圧降下は減少するが、第2分圧回路B2の電圧降
下が増加するため、上記電圧上昇分を抑制できる。
【0040】
要するに本発明によれば、導電マットmの配置場所や、使用形態の変動に伴う導電マッ
トmの生体印加交流電圧が変動しても、この電圧変動を相殺するように第1・第2各分圧
回路B1・B2の電圧降下がそれぞれ自動的に増減するので、導電マットmの配置場所や
、使用形態の変動に伴う生体印加交流の正電圧と負電圧との波高値比率の変動を抑制でき
た結果、前記各従来例における不安定要素を払拭できた。
【0041】
ただし、正電圧と負電圧との波高値比率を1対3に限りなく近付けたり、前記分圧出力
端bの出力電圧を可及的に高く設定するには、前記各抵抗R1・R2や、保護兼用分圧抵
抗Ro の抵抗値をそれぞれ2次コイル高圧端P1の電圧と共に適宜選定することで、上記
波高値比率を1対3に近付けたり、上記出力電圧の設定ができるが、これらの設定事項は
設計上の問題だから、その詳細は省略する。