(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガスノズル圧縮部と前記ガスノズル整流部との境界、及び前記ガスノズル整流部と前記ガスノズル加速部の境界、がそれぞれなだらかな曲線形状であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のノズル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点を鑑みて、本発明は、効率よく湿式のブラスト加工を行うことのできるノズルおよび該ノズルを備えたブラスト加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、液体中に砥粒が分散したスラリを高圧ガスと共に固気液三相流として噴射して湿式のブラスト加工を行うためのノズルであって、前記ノズルは、ブラスト媒体導入部材を備えたノズルホルダと、一端に開口された高圧ガス導入部から他端に開口された高圧ガス噴射口に向けて高圧ガス流路が形成された中空形状のガスノズルと、一端に開口された連結部から他端に開口された噴射口に向けて固気液三相流の流路が形成された噴射ノズルと、を備え、前記高圧ガスの流路は、前記高圧ガス導入部から導入された高圧ガスを圧縮するためのガスノズル圧縮部と、前記ガスノズル圧縮部を通過した高圧ガスを加速するためのガスノズル加速部と、を備え、前記ガスノズルを流れた高圧ガスが、前記ブラスト媒体導入部材から前記砥粒を吸引して該高圧ガスと混合し、前記噴射ノズルからスラリを含んだ高圧ガスとして噴射されることを特徴とする。高圧ガス導入部より導入された高圧ガスはガスノズル圧縮部で圧縮することで加速され、その後ガスノズル加速部でさらに加速される。そのため、噴射ノズルより噴射される固気液三相流の噴射速度を速くすることができるので、効率よくブラスト加工を行うことができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に記載のノズルであって、前記ガスノズル圧縮部を通過した高圧ガスの流れを整流するためのガスノズル整流部をさらに備えることを特徴とする。ガスノズル圧縮部を通過した高圧ガスを整流することで、ガスノズル加速部に流入した高圧ガスの流れが乱れることを防ぐことができる。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明に記載のノズルであって、前記ガスノズル圧縮部は、縮径端に向けて連続的に縮径し、前記ガスノズル加速部は、拡径端に向けて連続的に拡径することを特徴とする。高圧ガスの流路を連続的に狭くすることで、高圧ガスの速度が速くなる。縮径端を通過した高圧ガスが急激に膨脹しないよう、高圧ガスの流路を広くすることで、高圧ガスが加速される。
【0010】
第4の発明は第3の発明に記載のノズルであって、前記ガスノズル整流部は前記縮径端および前記ガスノズル加速部の前記拡径端と反対側の拡径他端と同一形状の断面を連続して持つことを特徴とする。ガスノズル整流部をこのような形状とすることで、高圧ガス流の直進性を向上させることができる。
【0011】
第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれか1つに記載のノズルであって、前記ガスノズル圧縮部と前記ガスノズル加速部の境界がなだらかな曲線形状であることを特徴とする。前記ガスノズル圧縮部、前記ガスノズル整流部、および前記ガスノズル加速部のそれぞれの境界をなだらかなR形状とすることで、前記境界を通過する際に高圧ガス流が乱れることなくスムーズに流れる事ができる。
【0012】
第6の発明は、第1乃至第6の発明のいずれか1つに記載のノズルであって、前記ノズルの内部はスラリが吸引される混合室が形成されており、前記ガスノズルは、前記噴射ノズルとの距離を調整するために移動可能に前記ノズルホルダに嵌合されていることを特徴とする。高圧ガスがガスノズル噴射口より高速で噴射される際、噴射流の外郭では周りの空気を取り込もうとする剪断流が発生する。前記ガスノズルと前記混合室との距離を狭くすることで、混合室で発生する吸引力(負圧)を大きくすることができるが、狭すぎると前記ガスノズルと前記混合室との間隙をスラリが通過する際の障害となる。本発明によって、スラリを十分に吸引し、かつスラリが通過できるように、前記ガスノズルと前記混合室との距離を調整することができる。
【0013】
第7の発明は、第1乃至第6の発明のいずれか1つに記載のノズルであって、前記噴射ノズルは、一端に開口された連結部から他端に開口された噴射口に向けてスラリを含んだ高圧ガスの流路が形成された中空形状であり、前記スラリを含んだ高圧ガスの流路は、該スラリを含んだ高圧ガスを圧縮するための噴射ノズル圧縮部と、前記噴射ノズル圧縮部を通過したスラリを含んだ高圧ガスを整流するための噴射ノズル整流部と、を備えることを特徴とする。高圧ガスの噴射流と、これに合流したスラリと、からなる固気液三相流は、噴射ノズル圧縮部で加速された後、噴射ノズル整流部によって整流される。本発明によって、固気液三相流を高速で安定して噴射することができる。
【0014】
第8の発明は、第7の発明に記載のノズルであって、前記噴射ノズル圧縮部は縮径端に向けて連続的に縮径し、前記噴射ノズル整流部は前記縮径端に連結され、該縮径端と同一形状の断面を連続してもつことを特徴とする。固気液三相流の流路を連続的に狭くすることで、固気液三相流の速度が速くなる。しかし、固気液三相流に含まれる砥粒および液体は、気体に比べて十分に加速するために必要な時間が長い。噴射ノズル整流部を本発明のような形状とすることで、砥粒および液体が十分に加速されると共に固気液三相流の直進性が向上するので、固気液三相流を高速で安定して噴射することができる。
【0015】
第9の発明は、第7または第8の発明に記載のノズルであって、前記噴射ノズル圧縮部と前記ノズルホルダの内部の空間とによって、スラリが吸引される混合室が形成されることを特徴とする。混合室のメンテナンスは噴射ノズルを取り外すことで容易に行うことができる。また、混合室がノズルホルダのみに形成されている場合に比べ、製造しやすい。
【0016】
第10の発明は、第6乃至第9の発明のいずれか1つに記載のノズルであって、前記ガスノズルと前記噴射ノズルとの距離Lと、前記高圧ガス噴射口の径Dと、の比(L/D)が0.2〜5.0であることを特徴とする。前記距離Lが長すぎると、スラリを吸引する吸引力が弱くなりブラスト加工を行うのに十分な量のスラリを導入することができない。前記距離Lが短すぎると、スラリの流動抵抗が大きくなる、またはスラリが前記ガスノズルと前記混合室との空隙に堆積して、スラリが高圧ガスの流れに吸引される経路が閉止される。前記距離Lは、高圧ガス噴射口の径Dとの関係で決定され、その比(L/D)を前述の範囲とすることで、好適にブラスト加工を行うことができる。
【0017】
第11の発明は、第1乃至第5の発明に記載のノズルであって、前記ガスノズル加速部に、前記ブラスト媒体導入部材が連通し、前記高圧ガス導入部より導入された高圧ガスが前記ガスノズル加速部で加速している際に発生する吸引力でスラリを高圧ガスに吸引することを特徴とする。高圧ガスが流れる際、管体にブラスト媒体導入経路である小孔を配置すると前記小径近傍で吸引力が発生する。前記ガスノズル加速部では、高圧ガス流は高速であるので、より強力な吸引力を発生させることができる。また、小孔を大きくしても十分な吸引力を得ることができる。したがって、スラリの噴射量を増加、または砥粒の粒子径を大きくすることができるので、ブラスト加工の効率を向上させることができる。
【0018】
第12の発明は、第11の発明に記載のノズルであって、前記噴射ノズルは、一端に開口された連結部から他端に開口された噴射口に向けてスラリを含んだ高圧ガスの経路を形成する中空形状であり、前記連結部が前記ガスノズル噴射口に連結されていることを特徴とする。スラリはガスノズルの内部に吸引されて高圧ガスと混合された後、噴射ノズルを通り、噴射口より噴射されるので、噴射直後に噴射流が急激に膨張することなく高速で安定して噴射することができる。
【0019】
第13の発明は、第12の発明に記載のノズルであって、前記噴射ノズルは、噴射口と同一形状の断面を連続して持つ噴射ノズル整流部を備えることを特徴とする。固気液三相流に含まれる砥粒および液体は、気体に比べて十分に加速するために必要な時間が長い。噴射ノズル整流部を本発明のような形状とすることで、砥粒および液体が十分に加速されると共に固気液三相流の直進性が向上するので、固気液三相流を高速で安定して噴射することができる。
【0020】
第14の発明は、第2、3、4、5、11の発明のいずれか1つに記載のノズルであって、前記ガスノズルは、前記縮径端の面積S
gmと前記ガスノズル圧縮部の前記縮径端と反対側の縮径他端の面積S
giとの比(S
gm/S
gi)が0.1〜0.3であり、かつ前記拡径端の面積S
goと前記拡径端と反対側の拡径他端の面積S
gmとの比(S
go/S
gm)が1.5〜5.0であることを特徴とする。高圧ガスを前記ガスノズル圧縮部で加速し、これを前記ガスノズル加速部でさらに加速するためには、ガスノズルの縮径端の断面積S
gmと縮径他端との断面積S
giと拡径端の断面積S
goとの関係が重要であり、それらの比を前述の範囲より選択することで、高圧ガスを十分に加速することができる。
【0021】
第15の発明は、第14の発明に記載のノズルであって、前記ガスノズル加速部の壁面の傾斜角度が1.2〜5.0°であることを特徴とする。ガスノズル加速部を通過する高圧ガスが壁面より剥離したり、高圧ガス噴射口より噴射された直後に急激に膨張したりすることを防ぐことができるので、高速で固気液三相流を噴射することができる。
【0022】
第16の発明に記載のノズルは、第8または第13の発明に記載のノズルであって、前記噴射ノズル整流部の長さYと、該噴射ノズル整流部の断面積S
sとの比(Y/S
s)が0.2〜2.0mm
―1であることを特徴とする。噴射ノズル整流部によって砥粒および液体を十分に加速させ、また固気液三相流の直進性を向上させるには、噴射ノズル整流部の長さYとその断面積S
sとの関係が重要であり、その比を前述の範囲とすることが好ましい。
【0023】
第17の発明は、第1乃至第16の発明に記載のいずれか1つのノズルを備えたブラスト加工装置であって、前記ノズルを2つ以上と、 前記ノズルにスラリを供給するスラリ供給源と、前記スラリ供給源と前記ノズルの各々との間に配置されるスラリ分岐手段と、を備えることを特徴とする。前記ブラスト加工装置に2つ以上の前記ノズルを配置することで、被加工物の加工時間を短縮することができる。スラリ分岐手段を用いることで、それぞれのノズルに対して均等にスラリを投入することができる。
【0024】
第18の発明は、第17の発明に記載のブラスト加工装置であって、前記スラリ分岐手段は、天板と底板とで両端が閉止された円筒形状の筐体と、一端が天板と連結された中空形状のスラリ投入部材と、一端が底板に連結され、他端が前記ノズルに連結されている中空形状のスラリ供給部材と、を備えることを特徴とする。スラリ投入部材より筐体内に投入されたスラリは、筐体の底部近傍では均等に荷重がかかっているので、筐体の底部に配置されたそれぞれのスラリ供給部材から同じ量のスラリが排出される。よって、非常に簡単な構造でスラリを各ノズルに均等に供給することができる。
【0025】
第19の発明は、液体中に噴射材が分散されたスラリをノズル体の内部に導入すると共に、高圧ガスと前記スラリを混合し、被加工物に向けて固気液三相流として噴射することで、被加工物のブラスト加工を行うためのノズルであって、前記ノズルは、ノズルホルダと、ノズルの内部に高圧ガスを導入するためのガスノズルと、混合された前記高圧ガスと前記スラリをノズルの外部に噴射するための噴射ノズルを備えており、前記ガスノズルは、両端に高圧ガス導入口と高圧ガス噴射口とが各々開口された筒状であり、前記高圧ガス導入口から前記高圧ガス噴射口へ向かうガス流路を形成し、前記ガス流路は、一端面に高圧ガス導入口が配置された円筒形状の直胴部と、前記直胴部の他端面より縮径端に向けて連続して縮径するガスノズル圧縮部と、前記縮径端より拡径端に向けて連続して拡径するガスノズル加速部と、が同一軸心上に順に配置されていることを特徴とする。
【0026】
また、第20の発明は、液体中に噴射材が分散されたスラリをノズル体の内部に導入すると共に、高圧ガスと前記スラリを混合し、被加工物に向けて固気液三相流として噴射することで、被加工物のブラスト加工を行うためのノズルであって、前記ノズルは、ノズルホルダと、ノズルの内部に高圧ガスを導入するためのガスノズルと、混合された前記高圧ガスと前記スラリをノズルの外部に噴射するための噴射ノズルを備えており、前記ガスノズルは、両端に高圧ガス導入口と高圧ガス噴射口とが各々開口された筒状であり、前記高圧ガス導入口から前記高圧ガス噴射口へ向かうガス流路を形成し、前記ガス流路は、一端面に高圧ガス導入口が配置された円筒形状の直胴部と、前記直胴部の他端面より縮径端に向けて連続して縮径するガスノズル圧縮部と、前記縮径端に連結した同一の径を持つガスノズル整流部と、前記ガスノズル整流部の他端面に連結し拡径端に向けて連続して拡径するガスノズル加速部と、が同一軸心上に順に配置されていることを特徴とするノズル。第19または第20の発明に記載の様な構成とすることで、前述の課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によって、湿式のブラスト加工を効率良く行うことができるノズル、およびノズルを備えたブラスト加工装置を提供することができる。
【0028】
本発明における「縮径端に向けて連続的に縮径する」とは、径が増加することなく縮径端の径が最も小さくなることであり、径が一定である領域や段差が形成されていてもよい。また、「拡径端に向けて連続的に拡径する」とは、同様に、径が減少することなく拡径端の径が最も大きくなることであり、径が一定である領域や段差が形成されていてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明におけるノズルおよびブラスト加工装置の一例を第1実施形態として、図に基づいて説明する。なお、説明における左右上下方向は特に断りのない限り図中の方向を示す。また、本発明は実施形態に記載の形状に限られず、必要に応じて適宜変更することができる。
【0031】
図1に本実施形態におけるノズル10の概略図を示す。ノズル10は、両端が丸形状に開口された中空の四角柱形状のノズルホルダ11と、両端が丸形状に開口された円筒形状のガスノズル12と、両端が丸形状に開口された円筒形状の噴射ノズル13と、を備える。ノズルホルダ11の上方にはガスノズル12が嵌合できる大きさの開口部を備え、下方には噴射ノズル13が嵌合できる大きさの開口部を備えており、かつ上下の開口部は、ノズルホルダ11の円筒形である内部の空間を介して連通している。また、中空形状のブラスト媒体導入部材11aの一端面が、該ノズルホルダ11の一側面に連結されており、他端面であるブラスト媒体導入部11bとノズルホルダ11の内部の空間とは連通している。
【0032】
図2も参照する。噴射ノズル13は、ノズルホルダの下方に嵌合されており、ネジ(図示せず)でノズルホルダ11に係止されている。噴射ノズルの上端の開口部(連結部13d)は、ノズルホルダ11の内部の空間と同一の径であり、下方に位置する噴射ノズル縮径端13eに向かって縮径する噴射ノズル圧縮部13aを備える。該内部の空間と該噴射ノズル圧縮部13aとによって、混合室Mが形成されている。噴射ノズル縮径端13eには、
図2(A)に示すように、該噴射ノズル縮径端13eと同一の円形断面を連続して持つ形状の噴射ノズル直胴部13b(噴射ノズル整流部)が連結されている。前記噴射ノズル圧縮部13aと前記噴射ノズル直胴部13bとで固気液三相流の流路が形成されている。
【0033】
噴射ノズル圧縮部によって、固気液三相流の流路を緩やかに狭くすることで、固気液三相流を混合室Mの壁面で反射することなく加速することができる。
【0034】
前記噴射ノズル直胴部13bは、固気液三相流を整流して直進性を向上させることができるので、噴射口13fで噴射された直後に急激に膨張して減速されることを防ぐことができる。また、砥粒や液体は気体と真比重が異なるので、気体よりも加速させるための時間(距離)が必要であるので、前記噴射ノズル直胴部13bを配置することで、砥粒および液体を加速させることができる。しかし、噴射ノズル直胴部13bの長さY(
図5参照)が長すぎると、管壁が抵抗となって減速する。従って、固気三相流を整流することで直進性が向上し、かつ砥粒および液体を十分に加速する効果が得られ、かつ管内で減速しない為には、該噴射ノズル直胴部13bの断面積S
sに対する噴射ノズル直胴部13bの長さYの比(Y/S
s)を、0.2〜2.0mm
−1、好ましくは0.3〜1.8mm
−1の範囲より選択することが望ましい。
【0035】
なお、噴射ノズル13は要求される加工能力に影響を及ぼさない範囲で、任意に形状を変更することができる。例えば、
図2(B)に示すように噴射ノズル直胴部13bのみを配置してもよく、
図2(C)に示すように噴射ノズル縮径端13eに噴射ノズル拡径部13cを連結させてもよく、
図2(D)に示すように噴射ノズル圧縮部13aのみを配置してもよい。噴射ノズル13は、内壁の径がガスノズル12の噴射口12kの外壁の径より小さい箇所を備えるのが好ましい。
【0036】
図3をも参照する。ガスノズル12は、高圧ガス噴射口12kが混合室Mに位置するようにノズルホルダ11に嵌合されている。ガスノズル12は
図1の上下方向に移動可能であり、ネジ(図示せず)でノズルホルダ11に係止されている。ガスノズル12の設置位置を調整する際は、前記ネジを緩めた後、該ガスノズル12を上下方向に移動させて固定位置を決定し、再びネジを締めて固定する。
【0037】
ガスノズル12の最上面である高圧ガス導入部12fより高圧ガス(本実施形態では圧縮空気)が導入される。導入された高圧ガスは、高圧ガス噴射口12kより噴射され、混合室Mに導入される。高圧ガスの噴射によって、前記混合室Mは負圧になり、ブラスト媒体であるスラリは前記ブラスト媒体導入部11bより前記混合室Mに吸引される。吸引されたスラリは、混合室Mにて高圧ガスと混合された後、スラリと高圧ガスの固気液三相流として、噴射ノズル13の最下部である噴射口13fより噴射される。
【0038】
ノズル10の内部で発生する吸引力(負圧)が弱いと、ブラスト加工を行うのに十分なスラリを吸引することができない。負圧は、噴射された高圧ガスの噴射流が、その境界層で周囲の空気を巻き込む剪断力によって発生する。このため、ガスノズル12の先端(下端)側12jと高圧ガスの噴射方向側前方に位置する壁面、即ち噴射ノズル圧縮部13aの壁面との距離L(
図5参照)が短ければ周囲の空気が少ないため、より強い吸引力を得ることができる。しかし、この距離Lが短すぎると、ガスノズル12と噴射ノズル圧縮部13aの壁面との間隙にスラリが堆積し、この間隙が閉止されるため、スラリを吸引することができなくなる可能性がある。本実施形態のガスノズルは、前記ガスノズルが上下方向に移動可能に挿入されているため、スラリに含まれる砥粒の粒子径や含有率、およびスラリの粘度に合わせて前記距離Lを設定することができる。
【0039】
ガスノズル12の内部は、
図3(A)に示すように、上端が高圧ガス導入部12fであり、該高圧ガス導入部12fと同一の円形断面を連続して持つガスノズル直胴部12aと、該高圧ガス直胴部12aの他端に連結され、ガスノズル縮径端12hに向けて連続して縮径するガスノズル圧縮部12bと、該ガスノズル縮径端12hに連結され、ガスノズル拡径端12jに向けて連続して拡径するガスノズル加速部12cと、を備え、また高圧ガス導入部12fとガスノズル縮径端12hとガスノズル加速部12cとは同一軸心上に配置されている。高圧ガス導入部12fより導入された高圧ガスは、ガスノズル圧縮部12bにて圧縮されて加速された後、ガスノズル加速部12cで徐々に膨張されることでさらに加速され、高圧ガス噴射口12k(ガスノズル拡径端12j)より噴射される。高圧ガスを高速で噴射できるので、前記噴射口13fより噴射される固気液三相流の噴射速度も速いので、効率よくブラスト加工を行うことができる。また、高圧ガスの噴射速度が速いので、噴射流の境界層で発生する剪断力が強くなる。従って、混合室Mで発生する吸引力が強くなるので、前記ガスノズル12の先端と前記噴射ノズル圧縮部13aの壁面との距離Lを長くしてもスラリを吸引するための十分な負圧(吸引力)を得ることができる。即ち、本発明のガスノズル12を用いることで、スラリの噴射速度の向上と噴射するスラリ量の増加とを実現できるので、ブラスト加工の効率を向上させることができる。
【0040】
ガスノズル12の先端と噴射ノズル圧縮部13aとの間隙にスラリが堆積するのを防ぎ、かつブラスト加工を行うために十分なスラリを吸引するためには、前記ガスノズル12の先端と前記噴射ノズル圧縮部13aの壁面との距離Lと、前記高圧ガス噴射口12kの径D
g(
図5参照)と、の比(L/D
g)が重要であり、その比は0.2〜5.0の範囲で設定することが好ましいことを見いだした。前記比(L/D
g)が小さすぎると、スラリが堆積することで、スラリの吸引経路が閉止される。前記比(L/D
g)が大きすぎると、ブラスト加工を行うために十分な量のスラリを吸引するための負圧を得ることができない。
【0041】
また、ブラスト加工を行うための最適な高圧ガスの噴射圧力が0.2〜1.0MPaの場合、ガスノズル縮径端12hの面積S
gm(
図5参照)と、ガスノズル圧縮部12bにおけるガスノズル縮径端12hと反対側のガスノズル縮径他端12gの面積S
gi(
図5参照)との比(S
gm/S
gi)を0.1〜0.3、好ましくは0.1〜0.2の範囲から選択し、かつガスノズル拡径端12jの面積S
go(
図5参照)と前記ガスノズル縮径端12hの面積S
gmとの比(S
go/S
gm)を1.5〜5.0、好ましくは2.0〜4.0の範囲から選択するのが望ましい。高圧ガスの噴射圧力が0.1〜1.0MPaであれば、前記ガスノズル縮径端12hの面積S
gmと前記ガスノズル縮径他端12gの面積S
giとの比(S
gm/S
gi)を0.1〜0.3とすることで、高圧ガスはガスノズル圧縮部12bにて十分加速することができる。しかし、前記ガスノズル拡径端12jの面積S
goと前記ガスノズル縮径端12hの面積S
gmとの比(S
go/S
gm)が小さすぎると前記ガスノズル加速部12cでの膨張が不十分で高圧ガスが十分に加速することができず、ガスノズル噴射口12kより噴射された直後に急激に膨張するため、高圧ガスの流れが不安定になる。また、前記比(S
go/S
gm)が大きすぎると高圧ガスの流れが前記ガスノズル加速部12cの壁面より剥離して十分に加速することができない。
【0042】
また、前記ガスノズル加速部12cの壁面の傾斜角度θが小さすぎると前記ガスノズル加速部12cでの膨張が不十分で高圧ガスが十分に加速することができず、高圧ガス噴射口12kから噴射された直後に膨張して減速する。また、前記傾斜角度θが大きすぎると高圧ガスの流れが前記ガスノズル加速部12cの壁面より剥離して十分に加速することができない。前記傾斜角度θは1.2〜5.0°の範囲から選択するのが好ましい。
【0043】
また、ガスノズルの内部は、
図3(B)に示すように、ガスノズル縮径端12hと、ガスノズル加速部12cにおけるガス拡径端12jと反対側のガスノズル拡径他端12iとの間に、ガスノズル整流部12dを配置してもよい。ガスノズル整流部12dは、下方に向かってガスノズル縮径端12hと同一の円形断面を連続してもつ。ガスノズル整流部12dは、ガスノズル縮径端12hを通過した高圧ガスの流れを安定させることができるので、ガスノズル加速部13cに流入した際に急激に膨脹しようとする力を減少させることができる。その結果、高圧ガスはスムーズにガスノズル10を流れる事ができる。また、
図3(C)および
図3(D)に示すように、ガスノズル拡径端12jに、ガスノズル拡径端12jと同一の断面をもつガスノズル第二整流部12eを連結してもよい。本実施形態では、
図3(B)に示すガスノズル12を使用した。
【0044】
ガスノズル整流部12dの長さX
1(
図5参照)が短すぎると高圧ガスを整流する効果が得られず、長すぎると高圧ガスが通過する際に抵抗となり減速される。前記ガスノズル整流部12dの長さX
1と前記ガスノズル縮径端12hの面積S
gmとの比(X
1/S
gm)は0.1〜1.0mm
−1、好ましくは0.1〜0.5mm
−1の範囲から選択することが望ましい。同様に、ガスノズル第二整流部12eの長さX
2が短すぎると高圧ガスを整流する効果が得られず、長すぎると高圧ガスが通過する際に抵抗となり減速される。前記ガスノズル第二整流部12eの長さX
2と前記拡径端12jの面積S
goとの比(X
2/S
go)は0.02〜0.50mm
−1、好ましくは0.02〜0.30mm
−1の範囲より選択することが望ましい。
【0045】
また、
図4に示すように、ガスノズル直胴部12a、ガスノズル圧縮部12b、ガスノズル加速部12c、ガスノズル整流部12dの各々の境界をなだらかな曲線状(R形状)とすることが好ましい。角部をなくすことで、高圧ガスが前記境界を滑らかに通過することができる。
【0046】
次に、本実施形態のノズルを配置したブラスト加工装置について説明する。ブラスト加工装置20は、
図6に示すように被加工物Wのブラスト加工を行うためのブラスト加工室21と、スラリ槽22と、を備える。ブラスト加工室21内には、前記ノズル10が配置されており、固気液三相流の噴射方向(
図6では、ノズル10の下方)には、被加工物Wが載置されている載置手段Tが配置されている。
【0047】
スラリ槽22には、ブラスト媒体として、液体(本実施形態では水)に砥粒を混合したスラリが貯留されている。砥粒は、鉄および非鉄製のショットやグリッドやカットワイヤー、セラミックス系粒子、植物系粒子、樹脂系粒子といった、乾式および湿式を問わず一般にブラスト加工に用いることができるものであれば特に限定されない。前記砥粒はスラリ全体の5〜60体積%となるように水に混合されている。スラリ中の砥粒の沈降を防ぐために、前記スラリ槽22には砥粒を攪拌し分散させるための手段(図示せず)を配置した。
【0048】
スラリはホースを介してポンプPによって吸い上げられ、ノズル10のブラスト媒体導入部材11aおよび分級手段25に送られる。該ブラスト媒体導入部材11aに送られたスラリは、ガスノズル12の高圧ガス導入部12fに連結された圧縮空気発生源24(圧縮空気供給手段)より発生した圧縮空気(高圧ガス)の噴射により混合室Mに吸引されると共に圧縮空気と混合された後、固気液三相流として被加工物Wに向けて噴射され、被加工物Wのブラスト加工が行われる。
【0049】
ノズル10より噴射されたスラリおよびブラスト加工にて発生した被加工物Wの切削物等はブラスト加工室21に連結されたスラリ槽22に流入する。すなわち、スラリ槽22のスラリには、水と砥粒の他に、ブラスト加工によって摩耗または破砕されてブラスト加工に適さない大きさとなった砥粒や、ブラスト加工で生じた切削物等(以降、これらを「不要物」と記す)が含まれる。ポンプPによって吸い上げられたスラリの一部は分級手段25に送られ、ブラスト加工に適した砥粒と前記不要物とに分離される。分離された砥粒はスラリ槽22に戻され、ブラスト加工に再度使用される。前記不要物は選別手段26に送られ、液体と固形分に分離され、固形分はスラッジとしてスラッジ槽28に回収され、液体は貯液槽27に貯留される。貯液槽27に貯留された液体は、スラリ槽22に戻してもよく、またブラスト加工後の被加工物Wを洗浄するための洗浄液として使用してもよい。
【0050】
前記分級手段25は、分離する不要物の径または量に応じて湿式サイクロン式分級装置や比重選別装置等公知の手段を用いることができる。また、前記選別手段26は、選別するものの材質および大きさによって篩や磁力選別装置や遠心分離装置等の公知の方法を適宜用いることができる。例えば、砥粒および被加工物Wが磁性体であり、かつ篩では分離が困難な場合は磁力選別機を用いることができる。一例として、クロム・モリブデン鋼等の鍛造品(熱間・冷間)のバリを鉄製グリッド等の砥粒を用いて除去する場合に磁力選別機を好適に用いることができる。
【0051】
被加工物W全体のブラスト加工を行うために、被加工物Wをノズル10に対して相対的に走査させるための移動手段(図示せず)を前記載置手段Tまたはノズルを保持するための架台(図示せず)に連結させてもよい。本実施形態では、円形表面をもつ載置手段Tの軸心を中心にして被加工物を回転させる構造をもつ移動手段を該載置手段Tに連結させた。
【0052】
ブラスト加工室に配置されるノズル10の数量は、被加工物Wの寸法および形状に応じて適宜選択することができる。例えば、被加工物の寸法が大きい場合、
図7(A)の様に複数のノズル10を連接して配置することで、一度に加工することができる。被加工物Wが凹凸面を有する場合、
図7(B)の様に複数のノズル10を被加工物Wの凹凸面にあわせて配置することで凹凸面を同時に加工することができる。本実施形態では、
図7(A)の様に4つのノズル10を平行に連接させるように配置した。
【0053】
複数のノズル10を配置する場合、全てのノズル10に均等にスラリを供給する必要があるために、スラリ供給源(本実施形態では、スラリ槽22およびポンプP)とノズル10との間にスラリ分岐手段23を配置した。本実施形態では、ポンプPとノズル10の間にスラリ分岐手段23を配置した。
【0054】
本実施形態のスラリ分岐手段23は、
図8に示すように両端が閉止された円筒状の分岐手段本体23bと、分岐手段本体23bの一端面に配置されホースを介してポンプPに連結されるスラリ投入部材23aと、他端面に配置されホースを介してそれぞれのノズル10のブラスト媒体導入部材12aと連結されるスラリ供給部材23cと、で構成され、内部にはスラリ一次貯留室23tが形成されている。前記スラリ供給部材23cは配置するノズル10の数に応じて設置数を適宜選択することができる。本実施形態では、4つのスラリ供給部材23cを配置した。
【0055】
ポンプPにより吸い上げられたスラリは、スラリ投入部材23bよりスラリ一次貯留室23tに送られる。スラリ一次貯留室23t内のスラリは、全てのスラリ供給部材23cより排出されたのち、ホースを介してノズル10に送られる。その際、スラリ一次貯留室23tの内部はポンプPの吐出圧力により加圧されているので、全てのスラリ供給部材23cより均等な量のスラリが排出される。
【0056】
より精度良く全てのスラリ供給部材23cよりスラリが均等に排出される為には、ポンプPによるスラリの投入圧力および投入量にあわせ、分岐手段本体のスラリ一次貯留室23tの長さを適宜選択したほうがよい。そのため、
図8(B)に示すように、分岐手段本体23aの内壁に沿って図中上下方向に摺動可能な調整部材23dに前記スラリ投入部材23bを連結することで、スラリ一次貯留室の長さを適宜変更できる構造としてもよい。また、
図8(C)に示すように、スラリを各スラリ供給部材23cに効果的に誘導させるためのスラリ誘導部材23eをスラリ一次貯留室23tに配置してもよい。なお、スラリ分岐手段23は、スラリを複数のノズル10に供給することができれば、周知の他の構成であってもよい。
【0057】
第1実施形態にノズルを使用して、圧縮空気を0.4MPaで高圧ガス導入部12fより導入し、混合室Mで発生する吸引力を測定した結果を実施例1として説明する。本実施例では、ガスノズル縮径端12hの面積S
gmとガスノズル縮径他端12gの面積S
giとの比(S
gm/S
gi)、ガスノズル拡径端12jの面積S
goとガスノズル縮径端12hの面積S
gmとの比(S
go/S
gm)、ガスノズル加速部12cの傾斜角θ、ガスノズル12の先端から噴射ノズル圧縮部13aの壁面までの距離Lと前記高圧ガス噴射口12kの径D
gとの比(L/D
g)、ガスノズル整流部12dの長さX
1とガスノズル縮径端12hの面積S
gmとの比(X
1/S
gm)、ガスノズル第二整流部12eの長さX
2と前記拡径端12jの面積S
goとの比(X
2/S
go)、を表1に示すように設定した。
【0059】
混合室M内の負圧は−40kPa以下であればブラスト加工を行うのに十分なスラリを吸引できることから、実施例1−1〜9のノズル10はいずれも良好にスラリを混合室Mに吸引することができる。
【0060】
実施例1−6に記載のノズル10を用いて湿式ブラスト加工を行った結果を実施例2として説明する。砥粒としてホワイトアランダム(WA#800(新東工業株式会社製):平均粒子径;18μm)、鉄製グリッド(GH−3(新東工業株式会社製):平均粒子径;300μm)、ステンレス製グリッド(GRITTAL GH−20(キンセイマテック株式会社製):平均粒子径;200μm)、鉄製ショット(SB−3(新東工業株式会社製):平均粒子径;300μm)、アランダム(AF60(新東工業株式会社製):平均粒子径 250μm)を用い、10〜40体積%となるように水にそれぞれ分散させてスラリを作成した。噴射口13fとの距離を100mmとし、該スラリを被加工物(SS400製の板(60×60×t6mm))に向けて圧縮空気の噴射圧力を0.4MPaにて1分間噴射した。加工後、表面粗さ計(株式会社東京精密製)にて加工(切削)された最大深さ(以降、単に「加工深さ」と記す)を測定した。
【0061】
表2に示すように、いずれのスラリにおいても加工中にノズル10の混合室Mの内部でスラリが堆積して閉止することがなく連続して砥粒を噴射することができた。また、被加工物Wが切削されていたことにより、良好にブラスト加工を行うことができることがわかった。比較のために従来技術である、先行技術文献1にて開示された構造のノズルを用い、前記スラリを噴射したところ加工中に小孔が砥粒にて閉止され連続して砥粒の噴射を行うことができなかった。このことから、本発明のノズルは砥粒の粒子径およびスラリの性状によらず良好にブラスト加工を行うことができた。
【0063】
実施例2−1の加工条件で、噴射ノズル直胴部13bの長さYと該噴射ノズル直胴部13bの断面積S
sとの比(Y/S
s)を変えてブラスト加工を行った結果を実施例3として説明する。
図13に示すように、前記比(Y/S
s)が0.2mm
−1未満では加工深さが浅く、噴射ノズル直胴部13bの効果が得られない。0.3を越えると加工深さが深くなり、噴射ノズル直胴部13bによって加工効率が良くなったことがわかる。しかし、さらに噴射ノズル直胴部の長さを長くして前記比(Y/S
s)が2.0mm
−1を越えると、加工深さが減少する。これにより、ノズル直胴部を長くしすぎると、噴射ノズル直胴部の壁面が抵抗となって固気液三相流の流れが阻害されるので、加工能力が減少することが分かった。
【0064】
次に、ガスノズル加速部12cにブラスト媒体導入部11bを配置した例を、第2実施形態として説明する。なお、ここでは第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0065】
第2実施形態のノズル110は、
図9に示すように、両端が丸形状に開口された中空の四角柱形状のノズルホルダ111と、両端が丸形状に開口された中空の円筒形状のガスノズル112と、両端が丸形状に開口された中空の円筒形状の噴射ノズル113と、を備える。ノズルホルダ111の上方にはガスノズル112が嵌合できる大きさの開口部を備え、下方には噴射ノズル13が嵌合できる大きさの開口部を備えており、かつ上下の開口部は、ノズルホルダ111の円筒形である内部の空間を介して連通している。また、中空形状のブラスト媒体導入部材111aの一端面が、該ノズルホルダ111の一側面に連結されており、他端面であるブラスト媒体導入部111bとノズルホルダ111内部の空間とは連通している。
【0066】
噴射ノズル113は、ノズルホルダ111の下方に嵌合されており、ネジ(図示せず)でノズルホルダ111に係止されている。
図10(A)に示すように、噴射ノズル113の上端にはガスノズル112を嵌合できる凹部が配置されている。上端の開口部(ノズル連結部113d)はガスノズル112の高圧ガス噴射口112kと同一の形状であって、他端である噴射口113fに向かって連続して同一の径を持つ噴射ノズル直胴部113b(噴射ノズル整流部)によって固気液三相流の流れる経路が形成されている。
【0067】
前記噴射ノズル直胴部113bは、固気液三相流を整流して直進性を向上させることができるので、噴射口113fで噴射された直後に急激に膨張して減速されることを防ぐことができる。また、砥粒や液体は気体と真比重が異なり、気体よりも加速させるための時間(距離)が必要であるので、砥粒および液体を加速させることができる。しかし、噴射ノズル直胴部113bの長さYが長すぎると、管壁が抵抗となって減速する。従って、前述の効果が得られ、かつ管内で減速しない為には、噴射ノズル直胴部113bの長さYと該噴射ノズル直胴部113bの断面積S
sとの比(Y/S
s)を、0.2〜2.0mm
−1、好ましくは0.3〜1.8mm
−1の範囲より選択することが望ましい。
【0068】
ガスノズル112の内部は、
図11(A)に示すように、上端が高圧ガス導入部112fであり、該高圧ガス導入部112fと同一の円形断面を連続して持つガスノズル直胴部112aと、該高圧ガス直胴部112aの他端に連結され、ガスノズル縮径端112hに向けて連続して縮径するガスノズル圧縮部112bと、該ガスノズル縮径端112hに連結され、ガスノズル拡径端112jに向けて連続して拡径するガスノズル加速部112cと、を備え、また高圧ガス導入部112fとガスノズル縮径端112hとガスノズル加速部112cとは同一軸心上に配置されている。また、前記ガスノズル加速部112cに連通するように、円筒形の開口部(ブラスト媒体導入経路112m)が配置されている。
【0069】
ガスノズル112は、高圧ガス噴射口112kが噴射ノズル113の連結部(113d)と連結するようにノズルホルダ111に嵌合されており、ネジ(図示せず)でノズルホルダ111に係止されている。その際、前記ブラスト媒体導入経路112mの一端が混合室M内に位置している。
【0070】
高圧ガス導入部112fより導入された高圧ガスは、ガスノズル圧縮部112bにて圧縮されて加速された後、ガスノズル加速部112cで徐々に膨張されることで加速され、高圧ガス噴射口112k(ガスノズル拡径端112j)より噴射される。高圧ガスがガスノズル加速部112cを流れる際に、高圧ガス流の境界層で生じた剪断力によりブラスト媒体導入経路112mより高圧ガスの流れへ吸引する負圧が発生する。ブラスト媒体導入部111bより混合室Mに導入されたスラリは、ブラスト媒体導入経路112mより高圧ガスの流れに吸引され、固気液三相流となる。固気液三相流は、噴射ノズル113を通過し、噴射口113fより噴射される。高圧ガスの経路が直胴部112aのみで構成されたガスノズルに比べ、ガスノズル110内を流れる速度が速いので、ブラスト媒体導入経路112mの径を大きくしてもスラリを吸引するための十分な吸引力(負圧)を得ることができる。即ち、本発明のガスノズル112を用いることで、スラリの噴射速度の向上と噴射するスラリ量の増加とを実現できるので、ブラスト加工の効率を向上させることができる。
【0071】
ブラスト媒体導入経路112mは、ガスノズル112の軸心に対する角度αを15〜45°の範囲から選択して配置するのが好ましい。角度αが前述の範囲であれば、ガスノズル112内に導入されたスラリは、高圧ガスの流れに均一に分散することができるので、安定したブラスト加工を行うことができる。
【0072】
ガスノズル噴射口112kは、噴射ノズル連結部113dと連結されており、ガスノズル噴射口112kを通過した固気液三相流は、噴射ノズル直胴部113bを通り、噴射口113fより噴射される。前記噴射ノズル直胴部113bは、固気液三相流の流れを整流して、直進性を向上させることができるので、噴射口113fで噴射された直後に急激に膨張して減速されることを防ぐことができる。しかし、噴射ノズル直胴部113bの長さYが長すぎると、管壁が抵抗となって減速する。従って、固気液三相流を整流でき、かつ管内で減速しない為には、噴射ノズル直胴部113bの長さYと該噴射ノズル直胴部113bの断面積S
sとの比(Y/S
s)を、0.2〜2.0mm
−1、好ましくは0.3〜1.8mm
−1の範囲より選択することが望ましい。噴射ノズル113は、噴射口113fにおいて整流効果さえあれば、例えば
図10(B)に示すように連続して拡径する噴射ノズル拡径部113cを前記噴射ノズル直胴部113bの一端に連結させてもよく、また
図10(C)に示すように緩やかに連続して拡径する噴射ノズル拡径部113cのみを配置してもよい。
【0073】
また、ガスノズルの内部は、第1実施形態と同様に、ガスノズル縮径端112hとガスノズル拡径他端112iとの間に、ガスノズル整流部112dを配置してもよい(
図11(B)参照)。ガスノズル整流部112dは、下方に向かってガスノズル縮径端112hと同一の円形断面を連続してもつ。ガスノズル整流部112dは、ガスノズル縮径端112hを通過した高圧ガスの流れを安定させることができるので、ガスノズル加速部112cに流入した際に急激に膨脹しようとする力を減少させることができる。その結果、高圧ガスはスムーズにガスノズル110を流れる事ができる。
【0074】
また、第1実施形態と同様に、ガスノズル直胴部112a、ガスノズル圧縮部112b、ガスノズル加速部112c、ガスノズル整流部112dの各々の境界をなだらかな曲線状(R形状)とすることが好ましい。角部をなくすことで、高圧ガスが前記境界を滑らかに通過することができる。
【0075】
また、本実施形態のノズルを、第1実施形態と同様にブラスト加工装置に配置することができる。
【0076】
第2実施形態のノズル110を使用して、圧縮空気を0.4MPaで高圧ガス導入部112fより導入し、混合室Mで発生する吸引力を測定した結果を実施例4として説明する。本実施例では、ガスノズル縮径端112hの面積S
gmとガスノズル縮径他端112gの面積S
giとの比(S
gm/S
gi)、ガスノズル拡径端112jの面積S
goとガスノズル縮径端112hの面積S
gmとの比(S
go/S
gm)、ガスノズル加速部112cの傾斜角θ、ガスノズル整流部112dの長さX
1とガスノズル縮径端112hの面積S
gmとの比(X
1/S
gm)、を表3に示すように設定した。
【0078】
混合室M内の負圧は−40kPa以下であればブラスト加工を行うのに十分なスラリを吸引できることから、実施例4−1〜10のノズル110はいずれも良好にスラリを混合室Mに吸引することができる。
【0079】
実施例4−6に記載のノズル110において、噴射ノズル直胴部113bの長さYと該噴射ノズル直胴部113bの断面積S
sとの比(Y/S
s)を変えてブラスト加工を行った結果を実施例5として説明する。ブラスト加工に用いるスラリは、砥粒に鉄製グリッド(GH−3(新東工業株式会社製):平均粒子径;300μm)を用い、これを30体積%となるように水に分散させた。噴射口113fと被加工物(60×60×t6mmのSS400の板)との距離を100mmとして、0.4MPaの圧縮空気を用いて、該スラリを被加工物に向けて噴射した。
図14に示すように、前記比(Y/S
s)が0.2mm
−1未満では加工深さが浅く、噴射ノズル直胴部13bの効果が得られない。0.3を越えると加工深さが深くなり、噴射ノズル直胴部13bによって加工効率が良くなったことがわかる。しかし、さらに噴射ノズル直胴部の長さを長くして前記比(Y/S
s)が2.0mm
−1を越えると、加工深さが減少する。これにより、ノズル直胴部を長くしすぎると、噴射ノズル直胴部の壁面が抵抗となって固気液三相流の流れが阻害されるので、加工能力が減少することが分かった。
【0080】
(変更例)
例えば、
図13(A)に示す第1実施形態の変更例、
図13(B)に示す第2実施形態の変更例の様に、円筒形のノズルホルダを使用することができる。その他、ノズルの機能を損なわない範囲において、形状および構成を適宜変更することができる。
【0081】
実施形態および実施例に記載のブラスト加工のみならず、例えばスラリに防錆材や脱脂材等を混合させて複合的な加工を行うことができる。