(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910971
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】締付固定部材の緩み検出装置
(51)【国際特許分類】
G01M 13/00 20060101AFI20160414BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
G01M13/00
G01L5/00 103E
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-109946(P2013-109946)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-228465(P2014-228465A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390034728
【氏名又は名称】イナバゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 吉久
(72)【発明者】
【氏名】浜橋 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】河原 宏太郎
(72)【発明者】
【氏名】川本 大介
【審査官】
後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−039523(JP,A)
【文献】
実開昭60−152947(JP,U)
【文献】
特開2011−069738(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0311066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00−13/04
99/00
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被固定部材を重ね合わせた一方側外面から締付固定部材の軸部を挿入して締付け固定する部材締付固定構造の当該締付固定部材の緩み検出装置において、
前記一方側外面と前記締付固定部材の頭部の間に取付金具を介在させ、該取付金具に形成した凹部内に、2つの電極が互いに非接触状態で表面から露出して設けられた電極基板と、該電極基板の前記2つの電極に一面側が当接するように配設された感圧導電性エラストマーからなる感圧センサと、該感圧センサの他面側に絶縁材からなるカバー部材とを順に重ねた厚みが前記凹部の深さより小さい時には厚さ調整部材を加えて大きくなるように配設した検出用センサ部材と、前記検出用センサ部材と前記取付金具の中央孔に挿入されて前記複数の被固定部材と共に当該検出用センサ部材および前記取付金具を締付け固定する軸部を有する締付固定部材と、前記電極基板の2つの電極と電気的に接続された制御手段とを備えて構成されることを特徴とする締付固定部材の緩み検出装置。
【請求項2】
前記制御手段が電圧値または抵抗値を計測し、予め設定しておいた所定の閾値を超えたときに緩みを検出することを特徴とする請求項1記載の締付固定部材の緩み検出装置。
【請求項3】
前記2つの電極が、前記電極基板の表面上に電極基板形状と同心円状に配設した2つの櫛歯形状の電極配線であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の締付固定部材の緩み検出装置。
【請求項4】
前記締付固定部材が、前記中央孔と前記複数の被固定部材に形成してある貫通孔に挿入されて前記複数の被固定部材の他方側外面へ突出した軸部を有するボルトと、前記軸部の前記他方側外面へ突出した部分に螺着したナットであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の締付固定部材の緩み検出装置。
【請求項5】
前記締付固定部材が、前記中央孔を通過して前記複数の被固定部材にねじ込む外周面にねじを形成した先細の軸部を有するネジであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の締付固定部材の緩み検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやネジなどの締付固定部材の緩みの検出装置に関し、感圧導電性エラストマーを使用して、例えば、自動車や工業用設備等に使用される締付固定部材の経時変化による緩みや、振動等の影響による緩みを検知する緩み締付固定部材の検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や工業用設備等には多くのボルトやネジなどの締付固定部材が使用されており、これら締付固定部材の緩みを点検する手法として締付固定部材本体に緩みによる回転を検出するためにマーキングを施してそのずれ量を確認する作業が行われおり、マーキングに係わる締付固定部材の緩み検出方法は幾つか提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、その他に緩みを検知する方法が幾つか提案されており、例えば、ネジ緩みの検出法について、ネジ止めされた2つ以上の部材間に圧力センサを設けて、その部材から受ける圧力変位を検出して緩みを検出するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−3658号公報
【特許文献2】特開平5−52684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のマーキングに係わる緩み検出方法では、締付固定部材の緩みの点検を検査員が定期的に現地に赴いて目視や画像認識にて確認する作業が行われており、手間と労力がかかってしまう。さらに、締結固定部材が多数ある場合や確認し難い場所への点検作業に時間を要する場合がある。
【0006】
また、上記の圧力センサを使用した手法では、ネジ止めされた2つ以上の被固定部材間に圧力センサを設けており、被固定部材間に圧力センサを設けるスペースの確保と被固定部材の形状加工が必要であり、被固定部材の組み立て構造上、圧力センサの配置に制限が出る場合がある。また、被締結部材単位におけるネジの緩みを検知することは可能であるが、ネジ単位における緩みを的確に検知することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その特徴とするところは、請求項1の発明においては、複数の被固定部材を重ね合わせた一方側外面から締付固定部材の軸部を挿入して締付け固定する部材締付固定構造の当該締付固定部材の緩み検出装置において、 前記一方側外面と前記締付固定部材の頭部の間に取付金具を介在させ、該取付金具に形成した凹部内に、2つの電極が互いに非接触状態で表面から露出して設けられた電極基板と、該電極基板の前記2つの電極に一面側が当接するように配設された感圧導電性エラストマーからなる感圧センサと、該感圧センサの他面側に絶縁材からなるカバー部材とを順に重ねた厚みが前記凹部の深さより小さい時には厚さ調整部材を加えて大きく
なるように配設した検出用センサ部材と、
前記検出用センサ部材と前記取付金具の中央孔に挿入されて前記複数の被固定部材と共に当該検出用センサ部材および前記取付金具を締付け固定する軸部を有する締付固定部材と、前記電極基板の2つの電極と電気的に接続された制御手段
とを備えて構成されるところにある。
【0008】
請求項2の発明は、前記制御手段が電圧値または抵抗値を計測し、予め設定しておいた所定の閾値を超えたときに緩みを検出することにある。
【0009】
請求項3の発明は、前記2つの電極が、前記電極基板の表面上に電極基板形状と同心円状に配設した2つの櫛歯形状の電極配線であることにある。
【0010】
請求項4の発明は、前記締付固定
部材が
、前記中央孔と前記複数の被固定部材に形成してある貫通孔に挿入されて前記複数の被固定部材の他方側外面へ突出した軸部を有するボルトと、前記軸部の前記他方側外面へ突出した部分に螺着したナットであることにある。
【0011】
請求項5の発明は、前記締付固定
部材が
、前記中央孔を通過して前記複数の被固定部材にねじ込む外周面にねじを形成した先細の軸部を有するネジであることにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボルトやネジなどの締結固定部材で締結固定される複数の被固定部材の一方側外面と締結固定部材の頭部の間に取付金具を介在させて締付ける構造において、前記取付金具の凹部内に前記電極基板と、前記感圧導電性エラストマーからなる感圧センサと、前記絶縁材からなるカバー部材とを順に重ねて、更に必要に応じて調整部材をも重ねて検出用センサ部材として配設し、この検出用センサ部材の全体の厚みが前記凹部の深さより大きくしてあるので、締付固定部材の締付により、取付金具を介して受ける圧力を感圧センサ部材が感知して、締付固定部材が緩みを起こした時点の圧力変化に伴った電気的変化を電極基板の電極と接続された制御手段が計測し、予め設定しておいた所定の閾値を超えたときに緩みを検出することから、各締結固定部材の緩みを瞬時に確認することができ、被固定部材、締結固定部材の脱落や分解等の事故を未然に防止することができ、且つ、点検作業時間を大幅に短縮することができる。締付部材が緩みを起すと、弾力性のある感圧導電性エラストマーからなる感圧センサが圧縮された状態から元の状態に復元しようとして電気抵抗が大きくなるという変化を伴うからである。
【0013】
また、前記取付金具と、前記電極基板、前記感圧センサ及び前記カバー部材、そして必要に応じて重ねた調整部材からなる検出用センサ部材は中央孔を有しているので、ここに締付固定部材の軸部を挿入して前記複数の被固定部材と共に簡単に固定できる。又、各部材の中央部に締結固定部材の軸部があり、この軸部に固定される頭部が取付金具の中央部を被固定部材方向へ締め付けているので、検出用センサ部の全面に均等に締付力や緩みが伝達され、検出精度が向上する。更に、被固定部材にセンサをそのまま取付ける構造であることから、締付固定部材毎に取り付けることができ、締付固定部材の1本単位における緩みを簡単に検出することができる。さらに、検出用センサ部材の配置場所を気にせず、低コストで取り付けることができる。
【0014】
加えて、前記電極基板に電極基板外形形状と同心円状に配設した櫛歯形状を有する電極の配線構造にすることにより、電極上に配設された感圧センサと2つの電極面との反応可能領域が広くなることで、より精度の高い締付固定部材の緩みを検出できる利点がある。
【0015】
前記締付固定部材がボルトとナットの場合には、複数の被固定部材に予め形成してある貫通孔と取付金具や検出用センサ部材の中央孔を一致させておいてから、それらの孔にボルトの軸部を挿通して、重なった複数の被固定部材の他方側外面に突出した部分にナットを螺着して締め付けるだけで良いので、作業が簡潔に行える。
【0016】
前記締付固定部材がネジの場合には、予め重ねた複数の被固定部材の一方側外面の所定の締結位置に凹部に検出用センサ部材が収納されている取付金具を合わせて、取付金具の中央孔からネジの軸部を挿入して前記一方側外面にその先細の先端が突き当たってから頭部にねじ回しを当てて複数の被固定部材に貫通孔を開けながら複数の被固定部材の全てに到着するまでねじ込んで行く。そして、頭部が取付金具に当接した時点で許容トルクまで締め付けて締付固定が完了するので、作業が簡単である。ネジの場合は、被固定部材がねじ込み可能な柔軟材料であること、比較的軽量で小型の部材である材料の場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例の要部断面説明図(a)と(a)のX−X方向視の感圧センサの通電領域図(b)である。
【
図3】電極基板における電極の他の概略配置図である。
【
図4】締め付けトルクと電圧特性を示すグラフ図である。
【
図5】本発明の応用例に係わる要部断面説明図である。
【
図6】本発明の他の実施例の要部断面説明図(a)と要部分解説明図(b)である。
【
図7】本発明の他の実施例の要部断面説明図である。
【
図8】本発明の他の実施例の要部断面説明図である。
【
図9】本発明の他の実施例の要部断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。この発明の締付固定部材の緩み検出装置1の実施例は、
図1に示すように、複数の被固定部材2を重ね合わせた一方側外面3と締付固定部材としてのボルト4の頭部5の間に検出用センサ部材6を収納する取付金具7を介在させて、これらにボルト4の軸部8を挿入して、重ね合わせた複数の被固定部材2の他方側外面9からの突出部分にナット10で締付け固定する部材締付固定構造の当該締付固定部材4の緩み検出装置である。
【0019】
前記被固定部材2は、例えば1つが自動車の構造体で他の1つがその部品である。この実施例においては被固定部材2は2つとしたが個数は問わない。そして、複数の被固定部材2には、貫通孔21が形成されている。
【0020】
前記取付金具7は、所定の厚みを有する金属製の材料からなる板材で、その一方側面の中央部に開口して所定の深さを有する凹部11が形成されており、他方側面の中央部にボルト4の軸部8を挿入するための中央孔12を有している。この取付金具7は、前記凹部11に配設する検出用センサ部材6に適切な圧力を付与させる機能を有し、さらに、検出用センサ部材6等の汚染を防止する機能を有する。
【0021】
前記取付金具7の凹部11内に収納される前記検出用センサ部材6は、
図2、
図3に示すように、全体としては平座金形状を有し、2つの電極13が互いに非接触状態で表面から露出して設けられた電極基板14と、該電極基板14の前記2つの電極13に一面側が僅かの間隔を空けて面するように配設された感圧導電性エラストマーからなる感圧センサ15と、該感圧センサ15の他面側に絶縁材からなるカバー部材16とを順に重ねたものからなるが、これら3つの部材の合計の厚みが前記凹部11の深さより大きくない場合には、調整部材17が更に重ね合わされて、前記凹部11の深さより大きくなるように調整される。これにより、ナット10を締め付けた時に、検出用センサ部材6の厚さ方向が圧縮されて、電極基板14の表面上の2つの電極13が感圧センサ15で繋がってその電圧信号が制御手段18に送信され、緩み状態が検知可能となる。また、この検出用センサ部材6の中央部には、前記取付金具7に形成した中央孔12の形成位置と一致するように、中央孔12が形成されている。取付金具7が通電性の材料からなる場合には、電極基板14や感圧センサ15が加圧されている場合にもその外周縁が取付金具7の凹部11の内周面と接触しないように、凹部11の直径よりも幾分小さく形成しておく必要がある。さらに、各部材の中央部に形成した中央孔12には、ボルト4の軸部8が挿入されて位置決めがなされるので、各部材は軸部8と直交する方向には移動しないが、軸部8の軸心方向に独自に移動することを防止するために各部材をあらかじめ接着剤等で固定するのが望ましい。
【0022】
前記調整部材17は、材質としては硬質の絶縁性材料が適し、その外径は凹部11の内径と同程度とすることにより、電極基板14や感圧センサ15の外周縁が凹部11の内周面と接触することを防止している。そして、前述のように検出用センサ部材6の全体の厚さが取付金具7の凹部11の深さより小さい場合には感圧センサ15が作用しないために、それを是正するためである。その厚さは、感圧センサ15の感度に合わせて適宜選択される。
【0023】
前記電極基板14は、ガラス繊維を混入したエポキシ樹脂、またはポリイミドを基材とした多層フィルム等の絶縁性部材からなり、2つの電極13は当該基板表面に金や銅等の導電性材料をメッキ又はそれに類する化学処理を施すことにより形成されている。2つの電極13には、それぞれ配線を通じて±の電流が流されて、電極基板14の表面上に非接接触の状態で配置されている。電極基板14の外形状が円であれば、同心円状に
図2に示す櫛歯電極として形成されたり、
図3に示すような単純な平行電極とされる。櫛歯形状であれば、電極13上に配設される感圧センサ15と2つの電極13面との反応可能領域が広くなることで、より精度の高い締付固定部材の緩みを検出できる利点が生じる。
【0024】
前記感圧導電性エラストマーからなる感圧センサ15は、ゴム又はエラストマー等の絶縁体中に、金属又はカーボン等の導電粒子を混入、分散させたものであり、無加圧時においては、個々の導電粒子が互いに分離して電気的に絶縁状態にあるが、連続的に圧力を加えて圧縮変形を生じさせた状態では個々の導電粒子が接近又は接触し合うことにより、電気抵抗値が次第に低下するもので、圧力に応じて電気抵抗が変化する性質を有している。感圧センサ3の厚さは、図示の実施例では、0.5mmとされているが、目的や要求に応じて感圧センサの厚さは0.3乃至2.5mm程度の範囲で適宜変更できる。
【0025】
前記カバー部材16は、例えば、ウレタン系ゴム等の絶縁材からなり、カバー部材16の厚さは前記感圧センサ15の厚みに応じて変更できる。
【0026】
前記制御手段18は、前記2つの電極13と電気的に接続されており、検査用センサ部材6からもたらされた信号により、ボルト4に対するナット10の緩みを検出して、それを検査員に判る状態で出力する。具体的には、警報ランプ、警報音、プリンタ、画像への出力、などが挙げられる。また、
図5に示すように、制御手段に信号送信機19を備えておけば、ワイアレス化が出来て遠隔地の受信機20でこれを受信することで、多数の緩み検出装置を1か所で常時監視することが可能となる。
【0027】
次に、上記構成からなるこの発明の締付固定部材の緩み検出手段の作用について説明する。まず、ボルト4の軸部8を取付金具7の中央孔12及び検出用センサ部材6の中央孔12に挿入しさらに複数の被固定部材2の貫通孔21にも挿入する。そして、軸部8の他方側外面9よりの突出部分にナット10を螺合して締め付ける。これによって、頭部5と被固定部材2の一方側外面3の間に取付金具7が挟まれて固定される。被固定部材2がボルト4が締め付けされていない状態では、被固定部材2と取付金具7の凹部11において、接合された電極基板14と感圧センサ15とカバー部材16の間に僅かな隙間があり、感圧センサ15に圧力が加わっておらず絶縁状態を保持している。ボルト4の他方側外面9よりの突出部分の軸部8へのナット10の締め付けにより取付金具7に圧力が加わると、カバー部材16を介して感圧センサ15に圧力が加わり圧縮変形することにより電気抵抗変化が生じて導通状態となり、この電気抵抗変化が前記2つの電極13により取り出され、制御手段18へ伝達される。この時の導通状態は
図1(b)に示す斜線の領域に感圧センサ15が圧縮変形するので、この領域にある2つの電極13が通電される。
【0028】
一方、締結されたボルト4にナット10の緩みが発生すると、取付金具7に加わっていた圧力が開放されてカバー部材16への加圧力が解除されるとともに感圧センサ15への加圧力も解除され、圧力に対応した電気抵抗値の変化が生じる。このとき、感圧センサ15中の導電粒子同士の接触面積が小さくなることにより電気抵抗値が上昇し、
図1に示す実施例では、制御手段18により電気抵抗値が1000kΩ以上を示したとき、被固定部材2と取付金具7の間に僅かな隙間が発生してボルト4の締付力が完全に開放された状態となった。従って、電気抵抗値の変化を観察すれば初期設定されたボルト4の締付け状態からの緩み具合を確認することができる。なお、発生した電気抵抗値は制御手段18で電圧に変換することができる。さらに、制御手段18は複数の信号入力端子を有しており、制御手段18を一台使用することで、一度に複数本のボルト4の緩みを計測することができる。
【0029】
ボルト4の締付け具合と電圧特性の関係を示す
図4のグラフにおいて、締め付けトルクに対応した電圧変化が確認できる。ナット10を締め付けた段階では締付けトルクが最大トルクに達した時に電圧値[V]は最大となり、ナット10の緩みが開始されて進行してゆくと締付けトルクが次第に小さくなるに伴い電圧値は小さくなる。そして更にナット10が緩むか、ボルト4の締付力が完全に解放された状態になると電圧値[V]は零になる。以上のことから、締付けトルクと対応した電気抵抗値の関係を予め調査し、電圧もしくは電気抵抗値の閾値を設定し、所定の閾値を超えたときに緩みを検知するよう制御することが可能である。また、この特性により電圧もしくは電気抵抗値から締付けトルクを推定することができる。
【0030】
以上の説明は、締付固定部材が、ボルト4とナット10の場合についてであるが、締結固定部材がネジの場合でも同様である。図示していないがネジは頭部に螺子回し用の−又は+の溝を形成しており、軸部は先細の先端部を有しているので、この軸部を取付金具7の中央孔12、検出用センサ部材6の中央孔12へ挿入し、その先端部が被固定部材2の一方側外面3に当接した段階で、頭部の螺子回しを押圧しながら回転してその先細の先端部が複数の被固定部材2内部へと貫通孔を形成しながら進行してゆくことにより、締付け固定できる。この場合においても、ボルト4、ナット10の場合と同様に、ネジの緩みを検出できる。
【0031】
この発明の他の実施例について、
図6を参照しながら説明する。この実施例が
図1に示す実施例と異なる点は、検出用センサ部材6が、感圧センサ15を挟んで電極基板14が各電極13毎に2つ挟んで存在して構成されている点である。締付トルクが生じた時には、2つの電極基板14が共に感圧センサ15に押し付けるために通電するので、
図1の実施例と同様の作用効果を生じる。
図1の実施例におけるカバー部材16は、電極基板14の電極13と反対側面が絶縁性部材であるので、これがカバー部材16を兼ねるためとくに必要ではないが、厚み調整のために入れてもよい。
【0032】
又、他の実施例は、
図7に示すように、2つの被固定部材2の一方側外面3と他方側外面9の両側に、それぞれ凹部11に検出用センサ部材6を収納した取付金具7を取り付けたことである。この緩み検出装置であると、2つの検出用センサ部材6で緩みを検出するので、より精度よく緩みの検出が可能となる。
【0033】
更に、他の実施例は、
図8に示すように、ボルト4の頭部5を直接に被固定部材2の一方側外面3に当てて、もう一方の被固定部材2からの突出部分のボルト4の軸部8にねじ込むナット10の内部に、検出用センサ部材6を収納し、他方側外面9に当接するようにしたものである。これによると、緩み検出装置1の部品点数を少なくできる。
【0034】
更に、
図9の実施例は、1つの被固定部材2にもう1つの被固定部材2を締付固定部材4の外周にねじを形成している先細の先端部を有する軸部8をねじ込んで取付したものである。頭部5と一方側外面3の間に検出用センサ部材6を収納した取付金具7が、
図1の実施例と同様に取り付けられている。この実施例の場合には、一方側外面3を有する非固定部材2にはあらかじめ貫通孔21が開けられているので、もう1つの被固定部材2に貫通孔を開けながらねじ込んで固定したものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明は、2以上被固定部材を締め付け固定するあらゆる個所に応用できるので、その利用は全技術分野に及ぶことから利用用途は極めて多大であり、産業への貢献は大きい。
【符号の説明】
【0036】
1 締付固定部材の緩み検出装置
2 被固定部材
3 一方側外面
4 ボルト(締付固定部材)
5 頭部
6 検出用センサ部材
7 取付金具
8 軸部
9 他方側外面
10 ナット
11 凹部
12 中央孔
13 電極
14 電極基板
15 感圧センサ
16 カバー部材
17 調整部材
18 制御手段
19 信号送信機
20 受信機
21 貫通孔