特許第5910991号(P5910991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910991
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20160414BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20160414BHJP
【FI】
   H01M8/04 N
   H01M8/04 J
   !H01M8/12
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-81730(P2012-81730)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-211202(P2013-211202A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤木 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】大村 肇
(72)【発明者】
【氏名】田中 修平
(72)【発明者】
【氏名】相馬 邦造
(72)【発明者】
【氏名】星子 琢也
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−014921(JP,A)
【文献】 特開2011−134505(JP,A)
【文献】 特開2004−000920(JP,A)
【文献】 特開2012−124070(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/091029(WO,A1)
【文献】 特開平11−257879(JP,A)
【文献】 特表2007−526433(JP,A)
【文献】 特表2006−515490(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0123523(US,A1)
【文献】 特開2000−227299(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0129593(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電に利用されなかったガスの燃焼により発生する燃焼ガスと、燃焼ガスとは別経路で供給された酸化剤ガスと、の間で熱交換することにより、前記酸化剤ガスを加熱する熱交換器を備えた燃料電池ユニットにおいて、
前記熱交換器は、
加熱される酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路と、
前記酸化剤ガス流路上に配置されて前記熱交換器の一端側から他端側に向けて流れる前記酸化剤ガスの流れを蛇行させる複数のガイド部と、
前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスを導入する酸化剤ガス導入部と、
前記酸化剤ガス流路にて加熱された前記酸化剤ガスを、複数の燃料電池セルからなる燃料電池セル集合体へ供給する複数の酸化剤ガス導出部と、を備え、前記酸化剤ガスの流れを制限する開口部を、前記ガイド部より下流側でかつ、前記酸化剤ガス流路の下流側端部に備え、前記開口部は、この開口部よりも下流側に位置する前記複数の酸化剤ガス導出部への各距離が全て等しくなるように形成することを特徴とする燃料電池ユニット。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記酸化剤ガスを分流させる分流部と、分流した前記酸化剤ガスを再び合流させる合流部と、をそれぞれ形成し、前記酸化剤ガスが前記蛇行の振幅方向に流れようとする力を、分流した前記酸化剤ガスが互いに衝突することで緩和するよう前記分流部と前記合流部とを交互に配置する請求項1に記載の燃料電池ユニット。
【請求項3】
分流と合流とを繰り返す前記酸化剤ガスの前記蛇行の振幅が等しくなるよう、前記分流部は前記熱交換器における前記蛇行の振幅方向の中央に配置された板を具備し、前記合流部は、前記熱交換器における前記蛇行の振幅方向の中央に配置された開口を具備する請求項2に記載の燃料電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスにより発電を行う燃料電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料ガス(水素含有ガス)と酸化剤ガス(酸素含有ガス)とを反応させて電力を得ることができる燃料電池セルをケーシング内に複数配列し、それら複数の燃料電池セルからなる燃料電池セル集合体に燃料ガスと酸化剤ガスとを供給して発電する燃料電池ユニットが提案されている。この種の燃料電池ユニットとして、発電反応に使用されなかった燃料ガスと酸化剤ガスとが燃焼することで発生する燃焼ガスの熱により、セルの発電反応に使用する酸化剤ガスを加熱する熱交換器を備えたものが知られている。また、この熱交換器において、略直線状に延びる燃焼ガスの流路に対して複数回交差するように酸化剤ガスの流路を蛇行させることで、酸化剤ガスの燃焼ガスとの伝熱距離及び伝熱面積を増加させ、熱交換効率を高めるものも知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−014921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された酸化剤ガスの流路を蛇行させた熱交換器においては、熱交換器から燃料電池セル集合体へと酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス導出部を複数設けた場合、各酸化剤ガス導出部の配置によっては、各酸化剤ガス導出部へと供給される酸化剤ガスの流量が不均等になるおそれがある。例えば、蛇行の振幅方向が左右方向であり、酸化剤ガス導出部が左側及び右側にそれぞれ配置される場合、酸化剤ガスは左側及び右側に向かうことを交互に繰り返しつつ酸化剤ガス導出部側へと向かうため、その下流端では酸化剤ガスは左側あるいは右側のどちらか一方へと向かう流れとなり、その一方側の酸化剤ガス導出部へとより多くの酸化剤ガスが供給されることとなる。熱交換器の複数の酸化剤ガス導出部へ不均等に酸化剤ガスが供給されると、各酸化剤ガス導出部から燃料電池セル集合体へと供給される酸化剤ガスの流量に偏りが生じ、燃料電池セル集合体を構成する各燃料電池セルへ酸化剤ガスが均等に供給されないおそれがある。その場合、酸化剤ガスが不足する状態での無理な発電による燃料電池セルの劣化や破損も起こり得、燃料電池ユニットの発電反応が安定せず寿命も短くなってしまうことが懸念される。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、酸化剤ガスの流路を蛇行させた熱交換器において、酸化剤ガス導出部を複数設けた場合に各酸化剤ガス導出部へと酸化剤ガスが不均等に供給されることを防ぎ、酸化剤ガスを各燃料電池セルに均等に供給することが可能な燃料電池ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発電に利用されなかったガスの燃焼により発生する燃焼ガスと、燃焼ガスとは別経路で供給された酸化剤ガスと、の間で熱交換することにより、前記酸化剤ガスを加熱する熱交換器を備えた燃料電池ユニットにおいて、前記熱交換器は、加熱される酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路と、前記酸化剤ガス流路上に配置されて前記酸化剤ガスの流れを蛇行状にする複数のガイド部と、前記酸化剤ガス流路に酸化剤ガスを導入する酸化剤ガス導入部と、前記酸化剤ガス流路にて加熱された前記酸化剤ガスを、複数の燃料電池セルからなる燃料電池セル集合体へ供給する複数の酸化剤ガス導出部と、を備え、前記酸化剤ガスの流れを制限する開口部を、前記ガイド部より下流側でかつ、前記酸化剤ガス流路の下流側端部に備え、前記開口部は、この開口部よりも下流側に位置する前記複数の酸化剤ガス導出部への各距離が全て等しくなるように形成することを特徴とする燃料電池ユニットである。
【0007】
このように構成された本発明においては、酸化剤ガスの流れを制限する開口部が形成されているため、開口部に至るまでの酸化剤ガスの流れ方向に関わらず、その流れ方向が開口部から各酸化剤ガス導出部のいずれか一つに向けて偏りにくい。酸化剤ガスの流れ方向が偏りにくく、開口部から各酸化剤ガス導出部への各距離が全て等しくなるように形成されているため、各酸化剤ガス導出部へと供給される酸化剤ガスの流量が不均等になりにくい。そのため、各酸化剤ガス導出部へ供給される酸化剤ガスの流量が均等になり、各酸化剤ガス導出部から燃料電池セル集合体へ供給される酸化剤ガスの流量も均等になる。従って、燃料電池セル集合体を構成する各燃料電池セルに対しても酸化剤ガスが均等に供給され、酸化剤ガスが不足する状態での無理な発電による燃料電池セルの劣化や破損が防止されるため、燃料電池ユニットの発電反応が安定するとともに長寿命の燃料電池ユニットを得ることが可能となる。
【0008】
本発明は、好ましくは、前記ガイド部は、前記酸化剤ガスを分流させる分流部と、分流した前記酸化剤ガスを再び合流させる合流部と、をそれぞれ形成し、前記酸化剤ガスが前記蛇行の振幅方向に流れようとする力を、分流した前記酸化剤ガスが互いに衝突することで緩和するよう前記分流部と前記合流部とを交互に配置する。
【0009】
このように構成された本発明においては、分流部と合流部を交互に配置したため、酸化剤ガスが合流部にて合流する際に、分流部にて分流した酸化剤ガス同士が衝突する。衝突することで分流した酸化剤ガスが蛇行の振幅方向に流れようとする力、つまり乱流成分が緩和されるため、酸化剤ガス流路下流側端部の開口部に至る際に、より一層酸化剤ガスの流れ方向が蛇行の振幅方向のどちらか一方に偏ることがなく、スムーズに開口部から酸化剤ガス導出部へと流れていく。従って、燃料電池セル集合体を構成する各燃料電池セルに対しても酸化剤ガスがより均等に供給され、酸化剤ガスが不足する状態での無理な発電による燃料電池セルの劣化や破損が防止されるため、さらに燃料電池ユニットの発電反応が安定するとともに長寿命の燃料電池ユニットを得ることが可能となる。
【0010】
本発明は、好ましくは、分流と合流とを繰り返す前記酸化剤ガスの前記蛇行の振幅が等しくなるよう、前記分流部は前記熱交換器における前記蛇行の振幅方向の中央に配置された板を具備し、前記合流部は、前記熱交換器における前記蛇行の振幅方向の中央に配置された開口を具備する。
【0011】
このように構成された本発明においては、蛇行の振幅が等しくなるため、分流した酸化剤ガスが蛇行の振幅方向に流れようとする力が衝突によって大きく緩和される。そのため、より一層酸化剤ガスの流れ方向が蛇行の振幅方向のどちらか一方に偏ることがなく、スムーズに開口部から酸化剤ガス導出部へと流れていく。従って、燃料電池セル集合体を構成する各燃料電池セルに対しても酸化剤ガスがより均等に供給され、酸化剤ガスが不足する状態での無理な発電による燃料電池セルの劣化や破損が防止されるため、さらに燃料電池ユニットの発電反応が安定するとともに長寿命の燃料電池ユニットを得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃料電池ユニットによれば、酸化剤ガス導出部を複数設けた場合に各酸化剤ガス導出部へと酸化剤ガスが不均等に供給されることが防止される。従って、燃料電池セルスタックを構成する各燃料電池セルに対しても酸化剤ガスが均等に供給され、酸化剤ガスが不足する状態での無理な発電による燃料電池セルの劣化や破損が防止されるため、燃料電池ユニットの発電反応が安定するとともに長寿命の燃料電池ユニットを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における燃料電池モジュールの外観を示す斜視図。
図2図1の中央近傍における断面図であって、図1のA方向から見た断面を示す断面図。
図3図1の中央近傍における断面図であって、図1のB方向から見た断面を示す断面図。
図4図1のケーシングから一部の外板を取り除いた状態を示す斜視図。
図5図2に相当する、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す模式図。
図6図3に相当する、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す模式図。
図7】本発明の一実施形態における燃料電池セルスタックの構成を示す斜視図。
図8】本発明の一実施形態における燃料電池セルユニットを示す部分断面図。
図9】本発明の一実施形態に用いられる熱交換器の内部を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態における燃料電池モジュール(燃料電池ユニット)の外観を示す斜視図である。図1に示す燃料電池モジュール2は、固体電解質型燃料電池システムの一部を構成するものである。固体電解質型燃料電池システムは、燃料電池モジュール2と、図示しない補機ユニットとを備える。
【0015】
なお、図1においては、燃料電池モジュール2の高さ方向をy軸方向としている。このy軸に直交する平面に沿ってx軸及びz軸を定義し、燃料電池モジュール2の短手方向に沿った方向をx軸方向とし、燃料電池モジュール2の長手方向に沿った方向をz軸方向としている。図2以降において図中に記載しているx軸、y軸、及びz軸は、図1におけるx軸、y軸、及びz軸を基準としている。また、z軸の負方向に沿った方向をA方向とし、x軸の正方向に沿った方向をB方向としている。
【0016】
図1に示すように、燃料電池モジュール2は、燃料電池セル集合体(詳細は後述する)を内部に設けたケーシング56と、ケーシング56の上面に接触して設けられ発電用空気(酸化剤ガス)を加熱する熱交換器22とを備える。ケーシング56の内部は密封空間となっており、被改質ガス供給管60及び水供給管62が繋げられている。一方、熱交換器22には、発電用空気導入管74(酸化剤ガス導入部)と、燃焼ガス排出管82とが繋げられている。
【0017】
被改質ガス供給管60は、ケーシング56の内部に都市ガス等の被改質ガスを供給する管路である。水供給管62は、被改質ガスを燃料ガスに水蒸気改質する際に用いられる水を供給する管路である。発電用空気導入管74は、改質後の燃料ガスと発電反応を起こさせるための発電用空気を供給する管路である。燃焼ガス排出管82は、発電反応後の燃料ガスを燃焼した結果生じる燃焼ガスをケーシング56外部へ排出する管路である。
【0018】
次に、図2は燃料電池モジュール2をその中央近傍において図1のA方向から見た断面図、図3は燃料電池モジュール2をその中央近傍において図1のB方向から見た断面図、図4図1に示す燃料電池モジュール2から燃料電池セル集合体を覆うケーシング56の一部を取り外した状態を示す斜視図である。図2図4を参照しながら、燃料電池モジュール2の内部について説明する。
【0019】
図2図4に示すように、燃料電池モジュール2はその内部に、燃料電池セル集合体12と、燃料電池セル集合体12が発電を行う発電室10と、燃料電池セル集合体12の上方に形成された燃焼室18と、燃焼室18の上方に配置された改質ユニット20と、改質ユニット20の上方に形成される整流板21を有する。また、燃料電池セル集合体12の真下にはマニホールド68が設けられている。
【0020】
発電室10に設けられる燃料電池セル集合体12は、複数の燃料電池セルユニット16により構成される燃料電池セルスタック14を、長手方向(A方向)に向けて複数配列したものであり、ケーシング56により全体が覆われている。また、図4に示すように、燃料電池セル集合体12は、全体としてB方向よりA方向の方が長い略直方体形状であり、改質ユニット20側の上面、マニホールド68側の下面、図4のA方向に沿って延びる長辺側面と、図4のB方向に沿って延びる短辺側面と、を備えている。
【0021】
改質ユニット20は、ケーシング56の内部に導かれた被改質ガス供給管60及び水供給管62がともに繋がれている。より具体的には、図3に示すように、改質ユニット20の上流端である図中右側の端部に繋がれている。水供給管62から供給された水は、改質ユニット20内の上流端に設けられた蒸発混合器20aによって蒸発される。さらに、蒸発混合器20aは、この水蒸気と、被改質ガスと空気とを改質反応の種類に応じて適宜混合する。
【0022】
改質ユニット20内の蒸発混合器20aの下流側には、改質器20bが設けられている。改質器20bは、水蒸気改質により被改質ガスを燃料ガスへと改質し、この燃料ガスを改質ユニット20の下流端に接続された燃料供給管66の上端へ導入する。この燃料供給管66の下端側66aは、マニホールド68内に入り込むように配置されている。
【0023】
燃料電池セル集合体12の真下に設けられるマニホールド68の内部には、燃料供給管66の下端側66aが挿入されている。燃料供給管66の下端側66aの外周には、長手方向(A方向)に沿って図示しない複数の小穴が形成されている。改質ユニット20で改質された燃料ガスは、マニホールド68の長手方向における一端側(図3における左端)から他端側(図3における右端)に向けて導入され、これら複数の小穴(図示せず)によってマニホールド68内の他端側に向けて順次供給されるようになっている。マニホールド68に供給された燃料ガスは、燃料電池セル集合体12を構成する各燃料電池セルユニット16の内側にある燃料ガス流路(詳細は後述する)内に供給され、燃料電池セルユニット16内を上昇して、燃焼室18に至るようになっている。
【0024】
燃料電池セル集合体12の上方の燃焼室18では、発電反応に使用されなかった燃料ガスと発電用空気とが燃焼することで、燃焼ガスが発生する。この燃焼ガスは、燃焼室18内を上昇し、改質ユニット20の周囲を経て、整流板21に至る。改質ユニット20は燃焼ガスにより加熱され、蒸発混合器20aによる水の蒸発及び改質器20bによる水蒸気改質を行う。また、整流板21には、燃焼ガスを集合させる開口21aが形成されており、燃焼ガスをケーシング56の外部へと導く。
【0025】
続いて、発電用空気を燃料電池モジュール2の内部へ供給するための構造を、図2図6を参照しながら説明する。図5図2に対応する模式図であり発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図、図6図3に対応する模式図であり同様に発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図である。これらの図に示すように、改質ユニット20の上方のケーシング56上面に、熱交換器22が設けられている。熱交換器22には、複数の燃焼ガス配管70と、この燃焼ガス配管70の周囲に形成された発電用空気流路72(酸化剤ガス流路)とが設けられている。
【0026】
図6に示すように、熱交換器22の上面における他端側(図6における右端)には、発電用空気導入管74が取り付けられている。この発電用空気導入管74により、図示しない発電用空気流量調整ユニットから、発電用空気が熱交換器22内に導入されるようになっている。一方、熱交換器22の上側の一端側(図6における左端)には、図2及び図9に示すように、発電用空気流路72の出口ポート76a(酸化剤ガス導出部)が一対形成されている。この出口ポート76aは、一対の連絡流路76つながっている。さらに、ケーシング56の幅方向(B方向)における両側には、燃料電池セル集合体12との間を遮蔽する遮蔽板80が長手方向(A方向)にわたって形成されている。遮蔽板80とケーシング56との間の空間は、熱交換器22から供給された発電用空気を燃料電池セルユニット16に導く発電用空気供給路77として利用されている。
【0027】
図2及び図5に示すように、遮蔽板80とケーシング56との間の空間である発電用空気供給路77は、発電用空気流路72の出口ポート76aから連絡流路76を介して、発電用空気が供給されるようになっている。この発電用空気供給路77は、遮蔽版80と同様に、燃料電池セル集合体12の長手方向に沿って形成されている。さらに、図5及び図6に示すように、その下方側であり且つ燃料電池セル集合体12の下方側に対応する位置に、発電室10内の各燃料電池セルユニット16に向けて発電用空気を吹き出すための複数の吹出口78a、78bが形成されている。これらの吹出口78a、78bから吹き出す発電用空気は、各燃料電池セルユニット16の外側に沿って、下方から上方へ流れるようになっている。
【0028】
続いて、燃料ガスと発電用空気とが燃焼して生成される燃焼ガスを排出するための構造を図2図6を参照しながら説明する。燃焼室18では、発電反応に使用されなかった燃料ガスと発電用空気とが燃焼することで、燃焼ガスが発生する。この燃焼ガスは、燃焼室18内を上昇し、改質ユニット20の周囲を経て整流板21に至る。図2図5及び図6に示すように、整流板21には、燃焼ガスを集合させる開口21aが設けられている。
【0029】
開口21aを通じて集合した燃焼ガスは、熱交換器22の一端側(図6における左端)の下方で、ケーシング56内と連通するように開口された開口部である燃焼ガス導入部81へと導かれる。図6に示すように、熱交換器22内には、発電用空気流路72内の発電用空気を熱交換により加熱するための複数の燃焼ガス配管70が設けられており、燃焼ガス導入部81と連通している。これらの燃焼ガス配管70の下流端側には、燃焼ガス排出管82が接続され、燃焼ガスが外部に排出されるようになっている。
【0030】
次に、図7は本実施形態における燃料電池セルスタック14を示す斜視図である。図7を参照しながら燃料電池セルスタック14について説明する。図7に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16から構成され、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製のマニホールド上板68a及び上支持板100により支持されている。これらのマニホールド上板68a及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
【0031】
また、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と、隣接する燃料電池セルユニット16の空気極である外側電極層92の外周面とを電気的に接続するものである。
【0032】
さらに、燃料電池セルスタック14の端に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104に接続され、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0033】
次に、図8は本実施形態の燃料電池セルユニット16を示す部分断面図である。図8を参照しながら燃料電池セルユニット16について説明する。図8に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86を備えている。
【0034】
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0035】
燃料電池セルユニット16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する連通流路98が形成されている。
【0036】
続いて、熱交換器22について図9を参照しながらさらに説明する。図9は本実施形態に用いられる熱交換器22の内部を示す模式平面図である。上述したように、熱交換器22は、燃料電池セル集合体12での発電反応に使用されなかった燃料ガスと発電用空気とが燃焼することで発生する燃焼ガスの熱を利用して、発電反応に使用する発電用空気を加熱するものである。図9に示すように、本実施形態における熱交換器22内には、燃焼ガス導入部81から導入される燃焼ガスが流れる複数の燃焼ガス配管70が直線状に延設されている。また、燃焼ガス配管70の延設方向に対して直角方向に延びる複数のガイド板73(ガイド部)が設けられており、熱交換器22の筐体と燃焼ガス配管70との間の空間であって、ガイド板73で仕切られた空間で、発電用空気導入管74から導入される発電用空気が出口ポート76aへと流れる発電用空気流路72を形成している。
【0037】
ガイド板73は、熱交換器22の上面から下面にわたって略平板状に形成され、燃焼ガス配管70を支持する支持部材としても機能する。また、ガイド板73は、発電用空気導入管74から導入され、発電用空気流路72を一端側から他端側に向かって流れる発電用空気を分流させる分流部73aと、分流された発電用空気を再び合流させる合流部73bとを形成する。分流部73aは、1つのガイド板73を発電用空気の流れを遮り、分流した酸化剤ガス各々の前記蛇行の振幅が等しくなるように熱交換器22内の短手方向(発電用空気の蛇行の振幅方向)中央に配置し、短手方向両側のみが開口するようにすることで、発電用空気を2つに分流させる。一方、合流部73bは、2つのガイド板73を分流した発電用空気の流れを遮るように熱交換器22内の短手方向両側に配置し、中央のみが開口するようにすることで、分流部73aにて2つに分流された発電用空気を再び1つに合流させる。この分流部73aと合流部73bとを熱交換器22内にて交互に複数配置することで、発電用空気流路72は熱交換器22の短手中央を通る長手方向の軸を中心に対称となる2つの蛇行状の流路となり、発電用空気は燃焼ガス配管70と複数回交差するように流れる。
【0038】
各ガイド板73の内、最終段、即ち熱交換器22内の最も出口ポート76a側(図9における左端)に配置される2つのガイド板73は、分流部73aを形成する。つまり、最終段の2つのガイド板73は、熱交換器22内の短手方向両側に配置され、発電用空気の流れを制限する開口部75を形成する。この開口部75は、熱交換器22内の短手方向中央に形成されているため、開口部75から熱交換器22の短手方向両端に配置された各出口ポート76aへの各距離が等しくなる。発電用空気導入管74から導入される発電用空気は、分流部73a及び合流部73bにて分流及び合流を繰り返しながら蛇行して流れるとともに、燃焼ガス配管70内を流れる燃焼ガスとの熱交換により加熱される。加熱された発電用空気は、開口部75を通過して各出口ポート76aへと流れ込む。出口ポート76aへと導入された発電用空気は、連絡流路76及び発電用空供給路77を介して吹出口78a、78bから、燃料電池セル集合体12へと供給される。
【0039】
上述した本実施形態の燃料電池モジュール2に用いられる熱交換器22によれば、発電用空気の流れを制限する開口部75が、発電用空気流路72の下流側端部に形成されているため、開口部75に至るまでの発電用空気の流れ方向に関わらず、開口部75から各出口ポート76aへの発電用空気の流れ方向が開口部75により制限される。それにより、2つの出口ポート76aの内どちらか一方へと向けてその流れ方向が偏りにくい。また、開口部75が発電用空気流路72の短手方向中央、即ち開口部75から各出口ポート76aへの各距離が等しくなるよう形成されているため、開口部75によりその流れ方向を制限された発電用空気が、開口部75から各出口ポート76aへと向かう際に、それぞれ等距離を経て各出口ポート76aへと流れ込む。それにより、開口部75から各出口ポート76aへと流れ込む発電用空気の流量が不均等になりにくい。発電用空気の流れ方向が2つの出口ポート76aのうちどちらか一方に向けて偏らず、各出口ポート76aへ供給される発電用空気の流量が均等になるため、各出口ポート76aから連絡流路76を介して発電用空気供給路77へと供給される発電用空気の流量も均等になる。そのため、各発電用空気供給路77の吹出口78a、78bから燃料電池集合体12へと供給される発電用空気の流量も均等になり、各燃料電池セルユニット16に対しても均等に発電用空気が供給される。従って、発電用空気が不足する状態での無理な発電による燃料電池セルユニット16の劣化や破損が防止されるため、燃料電池モジュール2の発電反応が安定するとともに長寿命の燃料電池モジュール2を得ることが可能となる。
【0040】
また、上述した本実施形態の燃料電池モジュール2に用いられる熱交換器22によれば、発電用空気流路72の短手方向両側のみを開口させて発電用空気を2つに分流させる分流部73aと、発電用空気流路72の短手方向中央のみを開口させて分流された発電用空気を再び合流させる合流部73bとを交互に配置した。そのため、発電用空気が下流側へと流れる際に、分流部73aにて2つに分流された発電用空気同士が合流部73bにて衝突することが繰り返される。その衝突により2つに分流された発電用空気の発電用空気流路72の短手方向中央に向かう流れ成分が打ち消しあい、発電用空気が発電用空気導入管74から出口ポート76aへと向かって流れていくにあたり、その流れを乱す乱流成分、即ち発電用空気流路72の短手方向の流れ成分が緩和される。乱流成分が緩和されるため、発電用空気が発電用空気流路72下流側端部の開口部75に至る際に、発電用空気の流れ方向が2つの出口ポート76aのどちらか一方へと偏ることがなく、スムーズに開口部75から出口ポート76aへと流れていく。各出口ポート76aへ供給される発電用空気の流量がより均等になるため、各出口ポート76aから連絡流路76を介して発電用空気供給路77へと供給される発電用空気の流量もより均等になる。そのため、各発電用空気供給路77の吹出口78a、78bから燃料電池集合体12へと供給される発電用空気の流量もより均等になり、各燃料電池セルユニット16に対してもより均等に発電用空気が供給される。従って、発電用空気が不足する状態での無理な発電による燃料電池セルユニット16の劣化や破損がより防止されるため、さらに燃料電池モジュール2の発電反応が安定するとともに長寿命の燃料電池モジュール2を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
2…燃料電池モジュール(燃料電池ユニット)
10…発電室
12…燃料電池セル集合体
14…燃料電池セルスタック
16…燃料電池セルユニット
18…燃焼室
20…改質ユニット
20a…蒸発混合器
20b…改質器
21…整流板
21a…開口
22…熱交換器
56…ケーシング
60…被改質ガス供給管
62…水供給管
66…燃料供給管
66a…下端側
68…マニホールド
68a…マニホールド上板
70…燃焼ガス配管
72…発電用空気流路(酸化剤ガス流路)
73…ガイド板(ガイド部)
73a…分流部
73b…合流部
74…発電用空気導入管(酸化剤ガス導入部)
75…開口部
76…連絡流路
76a…出口ポート(酸化剤ガス導出部)
77…発電用空気供給路
78a、78b…吹出口
80…遮蔽板
81…燃焼ガス導入部
82…燃焼ガス排出管
84…燃料電池セル
86…内側電極端子
88…燃料ガス流路
90…内側電極層
90a…上部
90b…外周面
90c…上端面
92…外側電極層
94…電解質層
96…シール材
98…連通流路
100…上支持板
102…集電体
104…外部端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9