特許第5910994号(P5910994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5910994
(24)【登録日】2016年4月8日
(45)【発行日】2016年4月27日
(54)【発明の名称】紙力剤およびこれを用いた紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/37 20060101AFI20160414BHJP
   D21H 21/18 20060101ALI20160414BHJP
   D21H 17/42 20060101ALI20160414BHJP
   D21H 17/44 20060101ALI20160414BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20160414BHJP
【FI】
   D21H17/37
   D21H21/18
   D21H17/42
   D21H17/44
   C08F220/56
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-105325(P2012-105325)
(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-234390(P2013-234390A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 国博
(72)【発明者】
【氏名】島本 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】美邊 翔
【審査官】 中尾 奈穂子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−073991(JP,A)
【文献】 特開2006−138029(JP,A)
【文献】 特開2006−348421(JP,A)
【文献】 特開平08−067715(JP,A)
【文献】 特開平08−269891(JP,A)
【文献】 特開2010−196192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
C08F 220/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気伝導度が1.5mS/cm以上のパルプ繊維スラリーに、(メタ)アクリルアミド、カチオン性ビニルモノマー、アニオン性ビニルモノマーおよび連鎖移動性モノマーを含む重合成分を共重合して得られる重量平均分子量350万〜800万の(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有する紙力剤であって、前記(メタ)アクリルアミド系共重合体の濃度を0.2重量%、かつpH7.0(25℃)とした場合におけるPCD電位計による測定電位が0mV以下である紙力剤を、パルプ繊維スラリーの固形分重量に対し、1.0重量%以上添加して抄紙することを特徴とする紙の製造方法
【請求項2】
紙力剤の(メタ)アクリルアミド系共重合体の重合成分として、さらに、架橋性モノマーを含有するものである請求項1に記載の紙の製造方法。
【請求項3】
紙力剤の(メタ)アクリルアミド系共重合体の重合成分の比率が、(メタ)アクリルアミド57〜97.8モル%、カチオン性ビニルモノマー1〜20モル%およびアニオン性ビニルモノマー1〜20モル%、連鎖移動性モノマー0.2〜2モル%、架橋性モノマー0〜1モル%である請求項1または2記載の紙の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙の製造に使用される紙力剤、およびこれを用いた紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より紙に強度を付与する紙力剤として、アニオン性、カチオン性又は両性のアクリルアミド系ポリマーが広く使用されている。
しかし、古紙の使用比率の増加により紙の原料であるパルプの短繊維化及び劣化が進み、また、環境対策として、紙または板紙の製造プロセスにおけるクローズド化から紙製造系内において、アニオン性の夾雑物が多量に存在することにより、パルプスラリーの電気伝導度を上昇させることから、イオン性を有するこれらの紙力剤は、その紙力増強効果を十分に発現することができない状況になっている。
【0003】
また、板紙などのより高い紙力が求められる紙の製造では、紙力剤の添加量を多くする必要があるが、このような場合いっそうの水質悪化を招くことから問題はより深刻である。
【0004】
かかる課題に対し、イオン性ポリアクリルアミド成分を添加する前に、特定のカルボキシメチルセルロースを添加して抄紙する紙の製造方法が提案されている(特許文献1)。
しかし、かかる方法では、抄紙条件によっては充分な効果が得られない場合があることや、イオン性ポリアクリルアミド成分以外にカルボキシメチルセルロースを添加しなければならず、コストアップになるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−194694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アニオン性夾雑物が多量に存在し、高い電気伝導度を有するパルプスラリーに対しても、パルプへの定着性に優れ、高い紙力増強効果を発現することができるアクリルアミド系紙力剤およびこれを用いた紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、紙力剤として用いるアクリルアミド系ポリマーの分子量を特定の範囲に設定し、特定条件下における紙力剤の水溶液または水分散液のPCD電位計による測定電位を特定の範囲とした紙力剤とすれば、上記課題の解決を図ることができることを明らかにしたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
電気伝導度が1.5mS/cm以上のパルプ繊維スラリーに、(メタ)アクリルアミド、カチオン性ビニルモノマー、アニオン性ビニルモノマーおよび連鎖移動性モノマーを含む重合成分を共重合して得られる重量平均分子量350万〜800万の(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有する紙力剤であって、前記(メタ)アクリルアミド系共重合体の濃度を0.2重量%、かつpH7.0(25℃)とした場合におけるPCD電位計による測定電位が0mV以下である紙力剤を、パルプ繊維スラリーの固形分重量に対し、1.0重量%以上添加して抄紙することを特徴とする紙の製造方法;紙力剤の(メタ)アクリルアミド系共重合体の重合成分として、さらに、架橋性モノマーを含有するものである前記紙の製造方法;紙力剤の(メタ)アクリルアミド系共重合体の重合成分の比率が、(メタ)アクリルアミド57〜97.8モル%、カチオン性ビニルモノマー1〜20モル%およびアニオン性ビニルモノマー1〜20モル%、連鎖移動性モノマー0.2〜2モル%、架橋性モノマー0〜1モル%である前記紙の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紙力剤は、アニオン性夾雑物が多量に存在し、高い電気伝導度を有するパルプスラリーに対しても、パルプへの定着性に優れ、高い紙力増強効果を発揮することができる。よって、(メタ)アクリルアミド系紙力剤およびこれを用いた紙の製造方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例5と比較例1の紙力剤を用い、それらの添加率を変化させて抄紙した場合において、得られた紙の圧縮強度との関係を表わした図である。
図2】実施例5と比較例1の紙力剤を用い、それらの添加率を変化させて抄紙した場合において、得られた紙の内部強度との関係を表わした図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の紙力剤は、(メタ)アクリルアミド、カチオン性ビニルモノマーおよびアニオン性ビニルモノマーおよび連鎖移動性モノマーを含む重合成分を共重合して得られる重量平均分子量350万〜800万の(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有してなる水溶液または水分散液である。
【0012】
本発明において、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドをいい(以下、(メタ)とは同様の意味である)、これらは単独使用または併用できるが、経済性の面からはアクリルアミドを単独使用するのがよい。(メタ)アクリルアミドの比率は、特に限定されないが、通常、十分な紙力効果を確保する観点から、(メタ)アクリルアミド系共重合体の重合成分の総モル和に対し57〜97.8モル%である。
【0013】
カチオン性ビニルモノマーとしては、たとえば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの無機酸もしくは有機酸の塩類、または該第3級アミノ基含有ビニルモノマーとメチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリンなどの四級化剤との反応によって得られる第四級アンモニウム塩を有するビニルモノマーなどが挙げられる。カチオン性ビニルモノマーの比率は、特に限定されないが、通常、十分な紙力効果を確保し、かつ、アクリルアミド共重合体の凝集による地合いの乱れを防止する観点から(メタ)アクリルアミド系共重合体の重合成分の総モル和に対し通常1〜20モル%、好ましくは2〜10モル%である。
【0014】
アニオン性ビニルモノマーとしては、たとえば(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸ビニルモノマー;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸等のジカルボン酸ビニルモノマー;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの有機スルホン酸ビニルモノマー;またはこれら各種有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩およびこれらのアンモニウム塩等があげられる。アニオン性ビニルモノマーの比率は、特に限定されないが、通常、十分な紙力効果を確保し、かつ、アクリルアミド共重合体の凝集による地合いの乱れを防止する観点からアクリルアミド系共重合体の重合成分の総モル和に対し通常1〜20モル%、好ましくは2〜10モル%である。
【0015】
連鎖移動性モノマーとしては、たとえば(メタ)アリルスルホン酸、またはこれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩およびこれらのアンモニウム塩等があげられる。連鎖移動性モノマーの比率は、特に限定されないが、通常、(メタ)アクリルアミド系共重合体の重合成分の総モル和に対し通常0.2〜2モル%とすることが、本発明で規定する分子量範囲のものを得やすくなることから好ましい。同様の観点からより好ましくは、0.5〜1モル%である。
【0016】
本発明のアクリルアミド系共重合体は、重合成分として、さらに、架橋性モノマーを含めることができる。架橋性モノマーとしては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルアミン、N−メチロールアクリルアミド等の2官能モノマー、トリアリルイソシアネート、N,N−ジアリルアクリルアミド等の3官能モノマー、テトラアリルオキシエタン等の4官能性モノマーや、アリル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド等のビニルモノマー等があげられる。架橋性モノマーを使用する場合、その比率は、ゲル化防止の観点から、(メタ)アクリルアミド系共重合体の重合成分の総モル和に対し通常1モル%程度以下、好ましくは0.5モル%以下である。
【0017】
本発明の紙力剤の特性である後述のPCD電位計による測定電位が200mVを超えなければ、カチオン性ビニルモノマー/アニオン性ビニルモノマーのモル%比は任意に選定できる。ただし、より好ましいPCD電位計による測定電位である0mVを超えないものを得やすくする観点から、カチオン性ビニルモノマー/アニオン性ビニルモノマーのモル%比を1以下とすることが好ましい。
【0018】
また、上記単量体組成を満たす限りにおいて、必要により、ノニオン性ビニルモノマーを併用してもよい。ノニオン性ビニルモノマーとしては、前記アニオン性ビニルモノマーのアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜8)、アクリロニトリル、スチレン類、酢酸ビニル、メチルビニルエーテルなどがあげられる。ノニオン性ビニルモノマーの使用比率は、通常、全重合成分の総モル和に対して、通常、10モル%以下、好ましくは、5モル以下である。10モル%を超えて使用する場合は、本発明の効果を損ねる可能性があるため好ましくない。
【0019】
本発明に用いられる共重合体の合成は、従来公知の各種方法により行うことができる。例えば、所定の反応容器に前記(メタ)アクリルアミド、カチオン性ビニルモノマーおよびアニオン性ビニルモノマーを含む重合成分および水を仕込み、ラジカル重合開始剤を加え、撹拌下、加温することにより目的とする水溶性の(メタ)アクリルアミド系共重合体を水溶液または分散液として得ることができる。反応温度は、通常50〜100℃程度、反応時間は1〜5時間程度である。モノマーの仕込み方法は同時重合、連続滴下重合等の従来公知の各種方法により行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、またはこれらと亜硫酸水素ナトリウムのごとき還元剤とを組み合わせた形のレドックス系重合開始剤等の通常のラジカル重合開始剤を使用できる。また、前記ラジカル重合開始剤には、アゾ系開始剤を併用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用量は、重合成分の総重量和に対し0.05〜2.0重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%である。0.05重量%では重合自体が十分に進行せず、2.0重量%を越える場合には高分子量ポリマーを得ることが困難である。
【0020】
こうして得られた(メタ)アクリルアミド系共重合体の重量平均分子量は350万〜800万(ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリエチレンオキサイド換算値)である。重量平均分子量が350万未満であると定着率が向上せず、十分な紙力効果が得られない。重量平均分子量が800万を超えるとカチオン性基、アニオン性基がパルプに対して有効に作用せず、定着率が向上しないため、十分な紙力効果が得られない。
【0021】
本発明の紙力剤は、前記(メタ)アクリルアミド系共重合体であるが、(メタ)アクリルアミド系共重合体の濃度を0.2重量%、かつpH7.0(25℃)とした場合におけるPCD電位計(Mutec社製)による測定電位が200mV以下であることを必須とする。前記測定電位は、測定対象とする紙力剤(水溶液または水分散液)を、さらに水で希釈または揮発するなどして紙力剤中の(メタ)アクリルアミド系重合体の濃度を0.2重量%に調整し、酸または塩基成分によりpHを7.0に調整した水溶液をPCD電位計で測定した値であり、実際に使用に供される紙力剤自体の測定値と必ずしも一致しない。前記測定電位が200mVを超えると、抄紙系、すなわち、各種製紙薬品を含むパルプ繊維スラリー全体が陽転(パルプスラリーをゼータ電位計にて測定した電位値が、0mVを超える状態のことを意味する。)し、紙力剤の定着率が向上しにくくなり、十分な紙力効果が得られない。なお、酸または塩基成分としては、特に限定されないが、希硫酸、塩酸などの酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
同様の観点から、紙力剤を固形分重量換算で、パルプ繊維スラリーの固形分重量に対し0.5重量%以上、特に1.0重量%以上の高い添加量で使用する場合には、PCD電位計による測定電位が0mVを超えないものとすることがより好ましい。
【0022】
本発明の紙力剤は、目的とする紙の種類や使用するパルプ繊維スラリーの種類に限定せずに、紙の製造に使用することができる。紙の種類としては、ライナー原紙、中芯原紙、紙管原紙、白板紙、クラフト紙、上質紙、新聞紙などが挙げられ、パルプ繊維スラリーとしては、クラフトパルプ、サルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプ、サーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率のパルプ、新聞古紙、雑誌古紙、ダンボール古紙、脱墨古紙等の古紙パルプなどが挙げられる。
【0023】
本発明の紙力剤の添加量は、抄紙系が陽転しない範囲で、上記紙やパルプ繊維スラリーの種類、抄紙条件によって適宜決定すればよいが、通常は、紙力剤を固形分重量換算で、パルプ繊維スラリーの固形分重量に対し、0.1〜3重量%程度である。
【0024】
さらに、本発明の紙力剤は、公知の紙力剤を使用した場合には紙力増強効果の発現が困難とされる高い電気伝導度を有するパルプスラリーに対しても、顕著な紙力増強効果を有するため、かかる抄紙条件を有する紙の製造において使用することが好ましい。具体的には、電気伝導度が1.5mS/cm以上のパルプ繊維スラリーに添加して抄紙する紙の製造において好適に使用することができる。
【0025】
例えば、より高い紙力効果が求められる板紙〔マニラボール、白ボール、チップボール、紙管原紙等〕等の製造においては、より高い添加量が必要であるが、高い添加量となるほど、抄紙条件の電気伝導度が上昇する傾向がある。本発明の紙力剤は、そのような条件であっても紙力効果の発現が維持されることから、高い紙力剤の添加量が求められる抄紙条件により適するものである。
【0026】
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら各例に限定されるものではない。尚、各例中、部及び%は特記しない限りすべて重量基準である。各例の物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0028】
(1)粘度
B型粘度計を用いて、25℃にて測定した。
(2)重量平均分子量
以下の測定条件にて測定した。
GPC本体:東ソー(株)製
カラム:東ソー(株)製ガードカラムPWXL1本およびGMPWXL2本(温度40℃)
溶離液:N/2酢酸緩衝液(N/2酢酸(和光純薬工業(株)製)+N/2酢酸ナトリウム(キシダ化学(株)製)水溶液、pH約4.2)
流速:0.8ml/分
検出器:
LALLS法;東ソー(株)製濃度検出器(RI−8010)および光散乱検出器(LS−8000)(室温)
RALLS法;ビスコテック社製TDA
MODEL301(濃度検出器および90°光散乱検出器および粘度検出器(温度40℃))
(3)PCD電位計による測定電位
PCD電位計PCD02(MUTEC社製)を用いて、(メタ)アクリルアミド系重合体の濃度を0.2重量%に調整し、酸塩基成分によりpHを7.0に調整した水溶液を測定した。
【0029】
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水350部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。一方の滴下ロートにアクリルアミド322部、イタコン酸19.2部、メタアリルスルホン酸ナトリウム5.4部、75%ジメチルアミノエチルアクリレ−トのベンジルクロライド4級化物水溶液70.6部、メチレンビスアクリルアミド0.76部およびイオン交換水672部を仕込み、硫酸によりpHを3に調整した。また、他方の滴下ロートに過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水180部を入れた。次に、両方の滴下ロートより系内にモノマーおよび触媒を約3時間かけて滴下した。滴下終了後過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水100部を投入し、固形分20.2%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体水溶液の性状値を表1に示す。
【0030】
実施例2
実施例1と同様の反応装置に、イオン交換水260部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。一方の滴下ロートにアクリルアミド321部、62.5%硫酸24部、80%アクリル酸水溶液28.1部、メタアリルスルホン酸ナトリウム6.6部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド48.7部、メチレンビスアクリルアミド0.8部およびイオン交換水1250部を仕込み、硫酸によりpHを3に調整した。また、他方の滴下ロートに過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水180部を入れた。次に、両方の滴下ロートより系内にモノマーおよび触媒を約3時間かけて滴下した。滴下終了後過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水170部を投入し、固形分20.4%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体水溶液の性状値を表1に示す。
【0031】
実施例3
実施例1と同様の反応装置に、イオン交換水304部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。一方の滴下ロートにアクリルアミド336部、62.5%硫酸20部、80%アクリル酸水溶液18.9部、メタアリルスルホン酸ナトリウム6.6部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド41.0部、メチレンビスアクリルアミド0.8部およびイオン交換水909部を仕込み、硫酸によりpHを3に調整した。また、他方の滴下ロートに過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水180部を入れた。次に、両方の滴下ロートより系内にモノマーおよび触媒を約3時間かけて滴下した。滴下終了後過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水185部を投入し、固形分20.5%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体水溶液の性状値を表1に示す。
【0032】
実施例4
実施例1と同様の反応装置に、アクリルアミド316部、62.5%硫酸23部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト47.3部、イタコン酸29.4部、メタアリルスルホン酸ナトリウム6.4部、メチレンビスアクリルアミド0.77部及びイオン交換水1260部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水340部を投入し、固形分20.3%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体水溶液の性状値を表1に示す。
【0033】
実施例5
実施例1と同様の反応装置に、イオン交換水330部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。一方の滴下ロートにアクリルアミド335部、62.5%硫酸16部、80%アクリル酸水溶液28.6部、メタアリルスルホン酸ナトリウム8.4部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト33部、メチレンビスアクリルアミド0.82部およびイオン交換水580部を仕込み、硫酸によりpHを3に調整した。また、他方の滴下ロートに過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水180部を入れた。次に、両方の滴下ロートより系内にモノマーおよび触媒を約3時間かけて滴下した。滴下終了後過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水100部を投入し、固形分25.3%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体水溶液の性状値を表1に示す。
【0034】
実施例6
実施例1と同様の反応装置に、アクリルアミド342部、62.5%硫酸16部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド32.5部、イタコン酸20.3部、メタアリルスルホン酸ナトリウム4.1部、メチレンビスアクリルアミド0.8部及びイオン交換水1760部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水470部を投入し、固形分15.3%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体水溶液の性状値を表1に示す。
【0035】
実施例7
実施例1と同様の反応装置に、アクリルアミド340部、62.5%硫酸16部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト32.6部、イタコン酸20.3部、メタアリルスルホン酸ナトリウム6.6部、メチレンビスアクリルアミド0.8部、硫酸アンモニウム200部及びイオン交換水1260部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水110部を投入し、固形分30.4%、粘度(25℃)が1,000mPa・sの共重合体分散液を得た。本実施例で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体分散液の性状値を表1に示す。
【0036】
比較例1
実施例1と同様の反応装置に、アクリルアミド342部、62.5%硫酸16.5部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト33.7部、80%アクリル酸水溶液29部、メタアリルスルホン酸ナトリウム0.9部及びイオン交換水1260部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水320部を投入し、固形分20.2%、粘度(25℃)が10,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体水溶液の性状値を表1に示す。
【0037】
比較例2
実施例1と同様の反応装置に、アクリルアミド345部、62.5%硫酸16部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド32.7部、イタコン酸20.4部、メタアリルスルホン酸ナトリウム1.7部及びイオン交換水1260部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水310部を投入し、固形分20.3%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例1で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体水溶液の性状値を表1に示す。
【0038】
比較例3
実施例1と同様の反応装置に、アクリルアミド329部、62.5%硫酸48.1部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト48.1部、イタコン酸16.6部、メタアリルスルホン酸ナトリウム5.7部、メチレンビスアクリルアミド0.79部及びイオン交換水1212部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水365部を投入し、固形分20.4%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例1で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体水溶液の性状値を表1に示す。
【0039】
比較例4
実施例1と同様の反応装置に、アクリルアミド332部、62.5%硫酸23.6部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト48.3部、イタコン酸13.3部、メタアリルスルホン酸ナトリウム5.7部、メチレンビスアクリルアミド0.79部及びイオン交換水1260部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水340部を投入し、固形分20.3%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体水溶液の性状値を表1に示す。
【0040】
比較例5
実施例1と同様の反応装置に、アクリルアミド310部、75%ジメチルアミノエチルアクリレ−トの4級化物水溶液102.3部、イタコン酸6.2部、メタアリルスルホン酸ナトリウム6.0部及びイオン交換水1250部を仕込み、窒素ガスを通じて反応系の酸素を除去した。系内を55℃にし攪拌下に重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部とイオン交換水10部を投入した。90℃まで昇温した後30分保温し、過硫酸アンモニウム0.4部とイオン交換水10部を投入して1時間保温した。重合終了後、イオン交換水270部を投入し、固形分20.3%、粘度(25℃)が8,000mPa・sの共重合体水溶液を得た。本実施例で用いたモノマー成分と比率、及び得られた共重合体水溶液の性状値を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
また、実施例中の略語の名称を以下に示す。
AM:アクリルアミド
DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMAPAA:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
DMAEA−BQ:ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド4級化物
AA:アクリル酸
IA:イタコン酸
SMAS:メタアリルスルホン酸ナトリウム
MBAA:メチレンビスアクリルアミド
【0043】
[紙力剤の性能評価1]
段ボ−ル古紙をナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアン・スタンダ−ド・フリ−ネス(C.S.F)350mlに調整した紙料に芒硝を添加して電気伝導度を2.0mS/cmとした。硫酸バンドを1.0%添加した後、各実施例および比較例で得られた重合体水溶液を紙力剤として対パルプ繊維スラリー固形分重量に対し、それぞれ表2に示す添加量(0.6%または1.6)添加した。各パルプ繊維スラリーのpHは6.5であった。当該スラリーのゼータ電位を測定した後、当該スラリーをタッピ・シートマシンにて脱水し、5kg/cm で2分間プレスして、坪量150g/m となるよう抄紙した。次いで回転型乾燥機で105℃において4分間乾燥し、23℃、50%R.H.の条件下に24時間調湿したのち、圧縮強度、内部強度、定着率を測定した。それらの結果を表2に示す。なお、電気伝導度、圧縮強度、内部強度、定着率は、以下の方法で測定した。
【0044】
(1)電気伝導度
pH/COND METER D−54((株)堀場製作所製)を用いて測定した。
(2)ゼータ電位
ゼータ電位計LAZER ZEE METER MODEL501(PEN KEM Inc.社製)を用いて、薬品添加後のパルプ繊維スラリーを80メッシュワイヤーにて濾過したろ液を測定した。
(3)圧縮強度
JIS P 8126に準拠して測定し、比圧縮強度(N・m/g)で示した。
(4)内部強度
J Tappi No.18−2に準拠して測定した。
(5)定着率
窒素分析装置(三菱化学(株)製)を用いて、得られた紙の窒素含有量を測定した後、下記の計算式から算出した。
定着率(%)=(紙力剤を添加して得られた紙の窒素含有量−紙力剤無添加で得られた紙の窒素含有量)÷(使用した紙力剤の理論窒素含有量)×100
【0045】
【表2】
【0046】
表2より、本発明の紙力剤は、重量平均分子量またはPCD電位計による測定電位(表中PCD測定電位)のいずれかが本願発明の範囲外となる紙力剤に対して、紙に高い強度を与えることが明らかといえる。
【0047】
[紙力剤の性能評価2]
つぎに、実施例5と比較例1の紙力剤を用い、それぞれ紙力剤について添加率を変更すること以外は、[紙力剤の性能評価1]と同様にして抄紙を行い、[紙力剤の性能評価1]と同様にして得られた紙の圧縮強度と内部強度を測定した。結果を表3に示す。また、図1および2に、圧縮強度および内部強度それぞれについての結果を示す。
なお、実施例5と比較例1の紙力剤は、各共重合体組成に共通のものが多く、重量平均分子量が異なるもの(それぞれ600万と150万)として選択した。
【0048】
【表3】
【0049】
表3、図1および2から明らかなように、本発明の紙力剤は、紙力剤添加率が0.5%未満の低い場合にも、紙に十分な圧縮強度および内部強度(紙力性能)を付与するが、添加率に応じて紙力性能の向上が図れ、特に、高い添加率において顕著な紙力性能を発揮するものといえる。
図1
図2